説明

交通信号機制御システム,信号機制御装置,交通信号機制御方法およびプログラム

【課題】青信号点滅時における横断歩道歩行者の事故を回避または減少させる。
【解決手段】信号機制御装置5が歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を簡易基地局3A,3Bに送信し、簡易基地局3A,3Bが通信エリア内に存在する携帯端末6から端末識別情報を取得して信号機制御装置5に送信し、簡易基地局3A,3Bから受信した端末識別情報の内、複数の簡易基地局3A,3B共通に取得された端末識別情報があるかを信号機制御装置5が照合し、あった場合に、信号機制御装置5がその数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者の道路横断時における交通信号機制御システム,信号機制御装置,交通信号機制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
歩行者の道路横断時における交通信号機制御システムの従来例としては、例えば、特開2005−50161号公報(特許文献1)や特開2003−123192号公報(特許文献2)がある。
【0003】
特許文献1においては、
・路面上の横断歩道標示の各横帯線内部にそれぞれアンテナ素子を備えておき、
・移動タグを装着した杖や携帯端末等を持った人が横断歩道の歩行を開始すると、アンテナ素子を介してタグリーダが移動タグから識別コードを読み取り、
・読み取った識別コードが健常者でなかった場合(視覚障害者,車椅子等)に、歩行者用信号機の青信号灯の点灯時間を延長するよう制御する、
ことが記載されている。
【0004】
また、特許文献2においては、
・弱者(身体障害者等)が所持する携帯端末がGPS(Global Positioning System)機能
により位置情報を取得し、取得した位置情報を端末識別番号とともに信号機に備えられている基地局に送信し、
・基地局は受診した端末識別番号,位置情報を管理センターに送信し、
・管理センターは端末識別番号,位置情報を基に弱者の現在位置を監視し、弱者が事前登録された横断歩道を横断していると判断したときに交通管制センターに通知し、
・交通管制センターは該当歩行者用信号機の制御(青信号時間の延長)を行う、
ことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−50161号公報(段落「0040」、「0064」〜「0068」、図1)
【特許文献2】特開2003−123192号公報(段落「0034」〜「0035」、「0038」〜「0042」、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1においては、横断歩道標示内部にアンテナ素子を一定間隔で備えるようにしているため、横断歩道の数を考慮すると大量のアンテナ素子が必要になるという問題がある。また横断歩道上の帯線体と一体化してアンテナ素子を設置するため、車両通行等に起因する道路表面劣化によるアンテナ素子剥離等の問題も生じる。
【0007】
また、上述した特許文献2においては、携帯端末が取得,送信した位置情報に基づいて弱者が横断歩道横断中か否かを管理センターで判定しているため、携帯端末に位置検出機能を備えなければならないという問題がある。
【0008】
さらに、上述した特許文献1または2においては、身体障害者等の弱者を対象に青信号の延長制御を行っている。しかし、弱者,健常者に関わらず、青信号の点滅時等のようにもうすぐ赤信号に切り替わるようなタイミングで横断歩道を渡ろうとする人がいることも事実であり、こうした場合、横断歩道を渡りきる前に信号を切り換えることは横断歩行者に危険が生じる可能性がある。こうした危険を少なくするための青信号延長対策が望まれる。
【0009】
本発明の目的は、以上の課題を解決する交通信号機制御システム,信号機制御装置,交通信号機制御方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の交通信号機制御システムは、横断歩道の両端付近に位置する交通信号機の各々に設置され横断歩道の一部分を共通の通信エリアとする複数の簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを備えた交通信号機制御システムであって、
前記簡易基地局は、前記信号機制御装置からの携帯端末検出要求受信時に通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得して前記信号機制御装置に送信する手段を有し、
前記信号機制御装置は、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを照合する手段と、あった場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有する。
【0011】
本発明の第2の交通信号機制御システムは、本発明の第1の交通信号機制御システムにおいて、前記信号機制御装置は、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があった場合に、その数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の交通信号機制御システムは、横断歩道の一部分を通信エリアとする簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを備えた交通信号機制御システムであって、
前記簡易基地局は、前記信号機制御装置からの携帯端末検出要求受信時に通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得して前記信号機制御装置に送信する手段を有し、
前記信号機制御装置は、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有する。
【0013】
本発明の第4の交通信号機制御システムは、本発明の第3の交通信号機制御システムにおいて、前記信号機制御装置は、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の交通信号機制御システムは、本発明の第1,第2,第3または第4の交通信号機制御システムにおいて、前記青信号灯点滅時は、青信号灯点滅開始時、青信号灯点滅開始から所定時間経過後、青信号灯点灯開始から所定時間経過後、または、赤信号灯点灯の所定時間前のいずれかであることを特徴とする。
【0015】
本発明の第1の信号機制御装置は、横断歩道の両端付近に位置する交通信号機の各々に設置され横断歩道の一部分を共通の通信エリアとする複数の簡易基地局と接続される信号機制御装置であって、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを照合する手段と、あった場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有する。
【0016】
本発明の第2の信号機制御装置は、本発明の第1の信号機制御装置において、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があった場合に、その数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする。
【0017】
本発明の第3の信号機制御装置は、横断歩道の一部分を通信エリアとする簡易基地局に接続される信号機制御装置であって、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有する。
【0018】
本発明の第4の信号機制御装置は、本発明の第3の信号機制御装置において、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする。
【0019】
本発明の第5の信号機制御装置は、本発明の第1,第2,第3または第4の信号機制御装置において、前記青信号灯点滅時は、青信号灯点滅開始時、青信号灯点滅開始から所定時間経過後、青信号灯点灯開始から所定時間経過後、または、赤信号灯点灯の所定時間前のいずれかであることを特徴とする。
【0020】
本発明の第1の交通信号機制御方法は、交通信号機と簡易基地局が設置された横断歩道において、前記簡易基地局と横断歩行者が携帯する携帯端末との交信により横断状況を判断し、前記横断状況に応じて歩行者用信号機の青信号の時間延長を行うか否かを決定することを特徴とする。
【0021】
本発明の第2の交通信号機制御方法は、横断歩道の両端付近に位置する交通信号機の各々に設置され横断歩道の一部分を共通の通信エリアとする複数の簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを用いた交通信号機制御方法であって、
前記信号機制御装置が歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信するステップと、前記簡易基地局が通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得し前記信号機制御装置に送信するステップと、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを前記信号機制御装置が照合するステップと、あった場合に、前記信号機制御装置がその数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長するステップとを有する。
【0022】
本発明の第3の交通信号機制御方法は、横断歩道の一部分を通信エリアとする簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを用いた交通信号機制御方法であって、
前記信号機制御装置が歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信するステップと、前記簡易基地局が通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得し前記信号機制御装置に送信するステップと、前記信号機制御装置が前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に、その数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長するステップとを有する。
【0023】
本発明の第1のプログラムは、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を簡易基地局に送信する機能、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを照合する機能、あった場合に、その数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長する機能、をコンピュータに実現させる。
【0024】
本発明の第2のプログラムは、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を簡易基地局に送信する機能、前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に、その数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長する機能、をコンピュータに実現させる。
【発明の効果】
【0025】
本発明においては、横断歩道に備えた簡易基地局と横断歩行者が携帯する携帯端末との交信により、青信号灯点滅時に横断歩道を歩行中の人が存在するかを検出し、存在した場合に青信号灯点滅時間を延長させるよう制御している。これにより、青信号の点滅時にもうすぐ赤信号に切り替わるタイミングで横断歩道を渡っている人がいた場合、青信号灯点滅時間を延長させることにより赤信号への切り替えを遅らせるため、横断歩行者の危険を回避または減少できるという効果が得られる。
【0026】
また、本発明においては、横断歩行者の存在を簡易基地局と携帯端末の交信により検出しているため、横断歩道上に歩行者検出素子等を配置したり携帯端末に特別な機能を備えることなく、横断歩行者の存在を検出できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0028】
図1は本発明の一実施の形態における横断歩道近辺の斜視図であり、図2は本発明の一実施の形態の構成を示す図である。図1,図2を参照すると、本発明の交通信号機制御システムは、車両用信号機1A,1Bと、歩行者用信号機2A,2Bと、簡易基地局3A,3Bと、簡易基地局3A,3Bに設置されたアンテナ4A,4Bと、信号機制御装置5と、携帯端末6とを備えている。図1を参照すると、車両用信号機1A,歩行者用信号機2A,簡易基地局3Aおよびアンテナ4Aは横断歩道の一端側に、また、車両用信号機1B,歩行者用信号機2B,簡易基地局3Bおよびアンテナ4Bは横断歩道の他端側に、それぞれ設置されている。信号機制御装置5については、横断歩道の一端側,他端側のいずれでもよいが、図1においては一端側に設置した場合を示している。なお、車両用信号機1Aと車両用信号機1Bの外観,構成や機能は同じであり、同様に、歩行者用信号機2A,2B、簡易基地局3A,3B、アンテナ4A,4Bについてもそれぞれ同じである。また、車両用信号機1A,1B、歩行者用信号機2A,2B、簡易基地局3A,3Bと信号機制御装置5との間は図示しないケーブルにより接続されている。
【0029】
車両用信号機1A,1Bは、青信号灯,黄信号灯,赤信号灯が設けられた交通信号機であり、これらの信号灯の点灯動作は、信号機制御装置5が歩行者用信号機2A,2Bの点灯動作に連動させて制御する。歩行者用信号機2A,2Bは、青信号灯,赤信号灯が設けられた交通信号機であり、これらの信号灯の点灯動作は信号機制御装置5により制御される。
【0030】
簡易基地局3A,3Bは、携帯端末6が通話等のために通信する通常の基地局とは異なり、交通信号機が備わった横断歩道近辺の狭いエリアを通信エリアとする擬似的な基地局である。この簡易基地局3A,3Bは、車両用信号機1A,1Bや歩行者用信号機2A,2Bが設置されている支柱の上部に設置される。また、この簡易基地局3A,3Bは、図示しない制御装置と記憶装置を有している。記憶装置には、携帯端末6に送信する所定の位置情報(簡易基地局3A,3Bの存在場所とは異なる場所の位置情報)や、種々の携帯端末6の通信方式データ(周波数や方式)が予め格納されている。制御装置はCPU(Central Processing Unit)等であり、プログラムにより動作を制御される。この制御装置は、
・予め記憶装置に登録された位置情報をアンテナ4A,4Bを介して通信エリア内に存在する携帯端末6に送信し、携帯端末6からの位置情報登録要求情報に含まれる携帯端末6の識別情報を取得する機能と、
・取得した携帯端末6の識別情報を信号機制御装置5に送信する機能と、
を備えている。
【0031】
アンテナ4A,4Bは、簡易基地局3A,3Bのそれぞれに付随するアンテナである。これらのアンテナ4A,4Bは、それぞれ図1に示すような通信エリアを有しており、横断歩道の中間部分がアンテナ4Aとアンテナ4Bの共通の通信エリアとなっている。詳細には、アンテナ4Aの通信エリアは横断歩道の他端より少し手前のエリアまで、アンテナ4Bの通信エリアは横断歩道の一端より少し手前のエリアまで、また、アンテナ4A,4Bとも赤信号で停止中の車両が通信エリア外になるよう通信エリアが決定される。このために、アンテナ4A,4Bのそれぞれには上記の通信エリアとなるような指向性を持ったものを選択して備えるものとする。以上のような通信エリアにしたのは、横断歩道の手前に居る人や赤信号で停車中の車両内に居る人の携帯端末6を検出しないようにし、横断歩道を歩行中の人の携帯端末6の検出だけを行うようにするためである。
【0032】
信号機制御装置5は、制御部51と、記憶部52と、カウンタ53とを備えている。制御部51はCPU(Central Processing Unit)等の制御装置であり、プログラムにより動
作を制御される。この制御部51は、
・交通信号機(車両用信号機1A,1Bおよび歩行者用信号機2A,2B)の各信号灯の点灯切替動作を制御する機能と、
・歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯が点滅開始して所定時間後に、携帯端末6の検出を簡易基地局3A,3Bに要求する機能と、
・簡易基地局3A,3Bから受信した携帯端末6の識別情報の内、簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報があるかを照合する機能と、
・簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報があった場合、その数に応じて歩行者用信号機2A,2Bの青信号点滅時間を延長する機能と、
を備えている。
記憶部52は読み出し,書き込み可能な記憶装置であり、信号切替時間登録領域521と青信号延長時間登録領域522とを含んでいる。信号切替時間登録領域521には、図3(信号切替時間登録領域521に格納されるデータの一例を示す図)に示すように、車両用信号機1A,1Bおよび歩行者用信号機2A,2Bの各信号灯の点灯時間情報が格納されている。なお、歩行者用信号機2A,2Bの赤信号灯は青信号灯点滅時間が経過した時点で点灯し、車両用信号機1A,1Bの赤信号灯が点灯した時点で消灯するよう制御される。また、車両用信号機1A,1Bの赤信号灯は黄信号灯点灯時間が経過した時点で点灯し、歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯点滅時間が経過した時点で消灯するよう制御される。従って、図3に示す信号切替時間登録領域521には赤信号灯の点灯時間については特に設定されていない。青信号延長時間登録領域522には、図4(青信号延長時間登録領域522に格納されるデータの一例を示す図)に示すように、簡易基地局3A,3Bの両方で取得された携帯端末6の数と、それに対応した青信号延長時間情報が格納されている。
カウンタ53は、例えば、ダウンカウンタであり、制御部51から設定された時間から所定時間(例えば、1秒)ずつ減算し0秒になると制御部51に通知する機能を備えている。
【0033】
携帯端末6は、携帯電話機,PHS(Personal Handyphone System)等の携帯通信端末であり、簡易基地局3A,3Bとの間で無線通信する機能を備えている。詳細には、簡易基地局3A,3Bから位置情報(簡易基地局3A,3Bの存在場所とは異なる場所の位置情報)を受信し、位置登録を簡易基地局3A,3Bに要求する機能を備えている。この機能は、携帯通信端末が場所を移動して他の基地局の通信エリアに入ったときに行われる通常の機能であり、本発明に用いる携帯端末6はこの他に特別な機能は要求されない。
【0034】
次に、本発明の一実施の形態の動作について図1〜図5を参照して説明する。図5は、本発明の一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【0035】
信号機制御装置5の制御部51は、信号切替時間登録領域521に格納された各信号灯の点灯時間情報(図3参照)に基づいてカウンタ53を設定し点灯制御している。制御部51は、車両用信号機1A,1Bの黄信号灯の点灯時間が終了したときに赤信号灯を点灯するとともに(ステップA1,A2)、歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯を点灯させる。このとき、制御部51はカウンタ53に青信号灯点灯時間(点滅状態になる前の定常点灯状態の時間であり、図3においては15秒間)を設定し、0秒にカウントダウンされるまで青信号灯を点灯させる(ステップA3,A4)。その後、青信号灯の点灯時間が経過すると、制御部51は青信号灯を点滅状態にする。このとき、制御部51はカウンタ53に青信号灯点滅時間(図3においては5秒間)を設定し、0秒にカウントダウンされるまで青信号灯を点滅させる(ステップA5,A6)。そして、歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯が点滅状態になって所定時間(例えば、2秒)が経過すると(ステップA7)、制御部51は簡易基地局3A,3Bに対して携帯端末6の検出を要求する(ステップA8)。
【0036】
携帯端末6の検出要求を受信した簡易基地局3A,3Bは、図示しない内部の記憶装置に予め登録された位置情報を読み出し、アンテナ4A,4Bを介して通信エリア内に送信する。この位置情報は、簡易基地局3A,3Bが設置されている場所を通信エリアとする図示しない通常の基地局の位置情報(基地局コード)とは異なるものであり、例えば、通常の基地局には存在しない架空の基地局コードである。これにより、位置情報としての架空の基地局コードを受信した携帯端末6は、受信した基地局コードと内部に登録されている登録基地局コードとを照合する。しかし、照合の結果、一致しないため、携帯端末6はそれまで位置登録を行っていた基地局の通信エリアから別の基地局の通信エリアに移動したものと判断する。そして、携帯端末6は位置登録要求信号と自己の識別情報(携帯端末6のそれぞれに固有に割り当てられたIDコード)と受信した基地局コードとを位置登録要求情報として簡易基地局3A,3Bに送信する。なお、簡易基地局3A,3Bは、図示しない内部記憶装置に予め種々の携帯端末6にて利用可能な通信方式(周波数や方式)を表す通信方式データを記憶しており、この通信方式データに基づいて通信方式を切り替えながら架空の基地局コードを送信している。そして、簡易基地局3A,3Bはそれぞれの通信エリアに存在する携帯端末6から位置登録要求情報を受信すると、位置登録要求情報に含まれる携帯端末6の識別情報を取得して信号機制御装置5に送信する(ステップA9)。
【0037】
信号機制御装置5の制御部51は、簡易基地局3A,3Bからそれぞれ受信した携帯端末6の識別情報を基に、簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報があるかを照合する(ステップA10)。簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報がなかった場合は、制御部51は青信号灯の点滅時間の延長は不要と判断し、青信号灯点滅時間(図3においては5秒)の経過後に赤信号灯点灯に切り替える(ステップA11→ステップA15,A16)。
【0038】
簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報があった場合は、制御部51はその数を判別する(ステップA12)。そして、制御部51は、簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報が所定数未満か所定数以上か(図4においては、4未満か4以上か)に応じて、青信号灯点滅時間の延長時間を青信号延長時間登録領域522から取得する。図4に示す青信号延長時間登録領域522においては、4未満の場合は3秒延長、4以上の場合は5秒延長と設定されている。簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報の数が、例えば5であったとすると、制御部51は青信号延長時間登録領域522から延長時間が5秒であることを取得する。そして、その時点のカウンタ53の残値に5秒を上積みしてカウンタ53を再設定する。例えば、その時点のカウンタ53の残値が3秒であったとすると、3秒+5秒(延長時間)=8秒としてカウンタ53を再設定することになる。これにより、通常(簡易基地局3A,3Bの両方で取得された携帯端末6が存在しなかった場合)であれば後3秒後に青信号灯点滅状態から赤信号灯点灯状態に切り替わるのが、8秒後に切り替わるように制御されることになる(ステップA13,A14)。次に、制御部51は歩行者用信号機2A,2Bにおいて、青信号灯点滅時間の経過後に赤信号灯点灯に切り替える(ステップA15,A16)。その後、制御部51は、車両用信号機1A,1Bの赤信号灯を消灯し、青信号灯を点灯させる(ステップA17,A18)。この後は、制御部51は、車両用信号機1A,1Bの青信号灯の点灯時間(図3においては50秒間)経過後に黄信号灯の点灯に切り替え、黄信号灯の点灯時間(図3においては5秒間)が終了するとステップA1の動作に戻って処理を繰り返すことになる。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態においては、交通信号機の支柱に備えた簡易基地局3A,3Bと携帯端末6との交信により、青信号灯点滅時に横断歩道を歩行中の人が存在するかを検出し、存在した場合に青信号灯点滅時間を延長させるよう制御している。これにより、青信号の点滅時にもうすぐ赤信号に切り替わるタイミングで横断歩道を渡っている人がいた場合、青信号灯点滅時間を延長させることにより赤信号への切り替えを遅らせるため、横断歩行者の危険を回避または減少できるという効果が得られる。
【0040】
また、本実施の形態においては、青信号灯点滅時における横断歩道歩行中の人の存在を簡易基地局3A,3Bと携帯端末6の交信により検出するようにしている。このため、横断歩道上に歩行者検出素子等を配置したり携帯端末6に特別な機能を備えることなく、横断歩道歩行中の人の存在を検出できるという効果が得られる。
【0041】
次に、本発明の他の実施の形態について図面を参照して説明する。図6は、本発明の他の実施の形態における横断歩道近辺の斜視図である。
【0042】
本実施の形態が一実施の形態と異なる点は、一実施の形態においては2台の簡易基地局3A,3Bを備えていたのに対し、本実施の形態においては1台の簡易基地局3を備えるようにした点である。図6を参照すると、簡易基地局3が横断歩道の中間部分の地上数メートル位の場所に設置されている。この簡易基地局3に付随しているアンテナ4は、図6に示すように横断歩道の中間部分を通信エリアとする指向性を備えている。
【0043】
次に、本実施の形態の動作について図5(一実施の形態の動作を示すフローチャート)を参照して説明する。
【0044】
図5のステップA1〜ステップA7およびステップA15〜ステップA18の動作については、本実施の形態においてもそのまま適用されるため説明を省略し、一実施の形態と異なる点のみ説明する。
・ステップA8において、「制御部51は簡易基地局3A,3Bに対して携帯端末6の検出を要求する」を、「制御部51は簡易基地局3に対して携帯端末6の検出を要求する」に置き換える。
・ステップA9において、「簡易基地局3A,3B」を「簡易基地局3」に、「アンテナ4A,4B」を「アンテナ4」にそれぞれ置き換える。また、「簡易基地局3A,3Bはそれぞれの通信エリアに存在する携帯端末6から位置登録要求情報を受信する」を、「簡易基地局3は通信エリアに存在する携帯端末6から位置登録要求情報を受信する」に置き換える。
・ステップA10において、「簡易基地局3A,3Bからそれぞれ受信した携帯端末6の識別情報を基に、簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報があるかを照合する」を、「簡易基地局3から携帯端末6の識別情報を受信したかを確認する」に置き換える。
・ステップA11において、「簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報がなかった場合は、」を、「簡易基地局3により取得された識別情報がなかった場合は、」に置き換える。
・ステップA12において、「簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報があった場合は、制御部51はその数を判別する」を、「簡易基地局3により取得された識別情報があった場合は、制御部51はその数を判別する」に置き換える。
・ステップA13,A14において、「簡易基地局3A,3Bの両方で取得された識別情報が所定数未満か所定数以上か」を、「簡易基地局3で取得された識別情報が所定数未満か所定数以上か」に置き換える。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態においては、横断歩行者を検出する簡易基地局3を2台から1台にしたことにより、システムの簡素化が図れるという効果がさらに得られる。
【0046】
次に、本発明の応用例,変形例等について説明する。
【0047】
・上述した一実施の形態および他の実施の形態のステップA7,A8(図5)においては、歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯が点滅状態になって所定時間(例えば、2秒)経過後に、制御部51が簡易基地局3A,3Bに携帯端末6の検出を要求している。このとき、所定時間の経過を待たずに青信号灯が点滅状態になった時点で携帯端末6の検出を要求してもよいし、青信号灯点灯開始から所定時間経過時、または、赤信号点灯の所定時間前の時点で携帯端末6の検出を要求するようにしてもよい。
【0048】
・上述した一実施の形態および他の実施の形態においては、横断歩道上の携帯端末6の数によって青信号灯点滅の延長時間を決めているが、横断歩道上に1台以上の携帯端末6が存在していれば、数に関係なく所定時間の延長を行うようにしてもよい。
【0049】
・上述した一実施の形態においては2台の簡易基地局3A,3Bを、また、他の実施の形態においては1台の簡易基地局3を備えるとして説明したが、3台以上の簡易基地局を備えるようにしてもよい。これにより、横断歩道上の携帯端末6の検出エリアをさらに細かく指定可能になるという効果が得られる。
【0050】
・上述した一実施の形態および他の実施の形態においては、車両用信号機1A,1Bの赤信号点灯と歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯点灯、および、歩行者用信号機2A,2Bの赤信号灯点灯と車両用信号機1A,1Bの青信号灯点灯を同時に行っている。これに対し、車両用信号機1A,1Bの赤信号点灯から所定時間(例えば、2秒間)経過後に、歩行者用信号機2A,2Bの青信号灯を点灯させるようにしてもよい。また、歩行者用信号機2A,2Bの赤信号点灯から所定時間経過後に、車両用信号機1A,1Bの青信号灯を点灯させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施の形態における横断歩道近辺の斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態の構成を示す図である。
【図3】信号切替時間登録領域521に格納されるデータの一例を示す図である。
【図4】青信号延長時間登録領域522に格納されるデータの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施の形態における横断歩道近辺の斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1A,1B 車両用信号機
2A,2B 歩行者用信号機
3,3A,3B 簡易基地局
4,4A,4B アンテナ
5 信号機制御装置
51 制御部
52 記憶部
521 信号切替時間登録領域
522 青信号延長時間登録領域
53 カウンタ
6 携帯端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断歩道の両端付近に位置する交通信号機の各々に設置され横断歩道の一部分を共通の通信エリアとする複数の簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを備えた交通信号機制御システムであって、
前記簡易基地局は、前記信号機制御装置からの携帯端末検出要求受信時に通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得して前記信号機制御装置に送信する手段を有し、
前記信号機制御装置は、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを照合する手段と、あった場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有することを特徴とする交通信号機制御システム。
【請求項2】
前記信号機制御装置は、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があった場合に、その数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする請求項1記載の交通信号機制御システム。
【請求項3】
横断歩道の一部分を通信エリアとする簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを備えた交通信号機制御システムであって、
前記簡易基地局は、前記信号機制御装置からの携帯端末検出要求受信時に通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得して前記信号機制御装置に送信する手段を有し、
前記信号機制御装置は、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有することを特徴とする交通信号機制御システム。
【請求項4】
前記信号機制御装置は、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする請求項3記載の交通信号機制御システム。
【請求項5】
前記青信号灯点滅時は、青信号灯点滅開始時、青信号灯点滅開始から所定時間経過後、青信号灯点灯開始から所定時間経過後、または、赤信号灯点灯の所定時間前のいずれかであることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の交通信号機制御システム。
【請求項6】
横断歩道の両端付近に位置する交通信号機の各々に設置され横断歩道の一部分を共通の通信エリアとする複数の簡易基地局と接続される信号機制御装置であって、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを照合する手段と、あった場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有することを特徴とする信号機制御装置。
【請求項7】
複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があった場合に、その数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする請求項6記載の信号機制御装置。
【請求項8】
横断歩道の一部分を通信エリアとする簡易基地局に接続される信号機制御装置であって、歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信する手段と、前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に歩行者用信号機の青信号灯点滅時間を所定時間延長する手段とを有することを特徴とする信号機制御装置。
【請求項9】
前記簡易基地局から受信した端末識別情報の数に応じて青信号灯点滅延長時間を決定することを特徴とする請求項8記載の信号機制御装置。
【請求項10】
前記青信号灯点滅時は、青信号灯点滅開始時、青信号灯点滅開始から所定時間経過後、青信号灯点灯開始から所定時間経過後、または、赤信号灯点灯の所定時間前のいずれかであることを特徴とする請求項6,7,8または9記載の信号機制御装置。
【請求項11】
交通信号機と簡易基地局が設置された横断歩道において、前記簡易基地局と横断歩行者が携帯する携帯端末との交信により横断状況を判断し、前記横断状況に応じて歩行者用信号機の青信号の時間延長を行うか否かを決定することを特徴とする交通信号機制御方法。
【請求項12】
横断歩道の両端付近に位置する交通信号機の各々に設置され横断歩道の一部分を共通の通信エリアとする複数の簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを用いた交通信号機制御方法であって、
前記信号機制御装置が歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信するステップと、前記簡易基地局が通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得し前記信号機制御装置に送信するステップと、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを前記信号機制御装置が照合するステップと、あった場合に、前記信号機制御装置がその数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長するステップとを有することを特徴とする交通信号機制御方法。
【請求項13】
横断歩道の一部分を通信エリアとする簡易基地局と、交通信号機の点灯切替制御を行う信号機制御装置とを用いた交通信号機制御方法であって、
前記信号機制御装置が歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を前記簡易基地局に送信するステップと、前記簡易基地局が通信エリア内に存在する携帯端末から端末識別情報を取得し前記信号機制御装置に送信するステップと、前記信号機制御装置が前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に、その数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長するステップとを有することを特徴とする交通信号機制御方法。
【請求項14】
歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を簡易基地局に送信する機能、前記簡易基地局から受信した端末識別情報の内、複数の前記簡易基地局共通に取得された端末識別情報があるかを照合する機能、あった場合に、その数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長する機能、をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項15】
歩行者用信号機の青信号灯点滅時に携帯端末検出要求を簡易基地局に送信する機能、前記簡易基地局から少なくとも一つの端末識別情報を受信した場合に、その数に応じて延長時間を決定し青信号灯点滅時間を前記延長時間分延長する機能、をコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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