説明

交通情報取得システム

【課題】粒度の高い交通情報が伝播先相手にとって有益かを判断することなく不必要な情報をも伝送する課題があった。また交通情報の有効範囲や有効期間を局所的・限定的に制御できないといった問題があった。
【解決手段】上記課題を解決するために、交通情報の取得位置と取得時刻を保持し、相手方の移動方向を特定し、取得位置に接近する方向で移動中であると判断した場合にのみ情報を伝播する。また取得位置から一定距離外へ移動、または一定時間経過すると情報を棄却するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動式携帯型端末装置において道路の渋滞や事故の交通データを取得するための方法及びそのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の渋滞情報や事故といった交通情報は日々いたる場所で多々発生しており、運転中の車は絶えず交通情報を受信して自身の今後の交通に役立たせている。現在の交通情報の伝播方法は、道路上に設置されたセンサー等により収集された交通情報をセンター側のサーバへ伝達し、サーバ側が情報の整理等を行い、各車へ配信する方式である。各運転中の車は、センター側で処理された交通情報を受信して自車に搭載するナビゲーションシステムに地図と共に表示することができる。
【0003】
例えば、従来技術として特許文献1で示す特開2009−216584号公報に記載のように、端末と端末とは異なる場所に設置されたサーバとを備え、端末は現在位置を表す現在位置情報を取得し、現在位置情報を含む端末情報をサーバに送信し、サーバから受信した案内情報を端末の利用者に提示する。
【0004】
このような方法では、絶えず発生する大量の交通情報を処理するのには適しているが、交通情報を取得する場所が、例えば交通量の多い道路に限られてしまい、交通量の少ない道路におけるきめ細かな交通情報を扱うことが可能かどうかが課題である。例えば普段通行するローカルな道路で道路工事が行われ、通行するのに時間を要するような場合、当該交通情報を取得するセンサが普段交通量が少ないために設置されておらず取得されない。
サーバ型の交通情報配信システムの場合、よりきめ細かな交通情報を取得するためにはセンサの設置数を増加させなければならず、システムに投資する対費用効果が課題である。
このため、センサの設置位置を交通量の多い道路に限定せざるを得ず、きめ細やかな交通情報を扱うことは困難である。
【0005】
また一方で、特許文献2で示す特開2009−105928号公報に記載のように、携帯型データ送受信端末装置を用いた情報伝達方法が開示されている。この技術では、受信した電子メール等のデータを送受信可能な別の携帯型データ送受信端末装置に伝達することができる。この技術を自動車の交通情報に応用して、携帯型データ送受信端末装置を自動車に搭載して、交通情報(例えば道路工事)などのデータを他の自動車に搭載した携帯型データ送受信端末装置に伝達することは可能である。これにより、先の特許文献1によるサーバ型の情報伝播方式では困難であった交通情報の粒度を向上させることは可能である。しかし特許文献2で示す技術を応用した場合、別の携帯型データ送受信端末装置との間で送受信可能かどうかのみでデータを送信してしまうので、例えば道路工事区間を通過済みの別の自動車へ情報を伝播してしまう可能性がある。交通情報の粒度を向上させても、送信先である相手方にとって有益でなければ、受信側にとっては単なる雑音でしかなく、本当に必要な情報を受信側で選別しなければならない課題が解決できていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−216584号公報
【特許文献2】特開2009−105928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上から、粒度の高い交通情報を伝播する場合、その交通情報の有益性の判断が技術課題である。
【0008】
特許文献1の場合、センサの設置数が費用の関係で限定されてしまうので交通情報の粒度がない。逆にセンサの設置数が限定されているので、取得した交通情報の有益性は、取得した道路の交通量が多いことから既に有益であると判断されている。特許文献2の場合、先に説明した通り交通情報の粒度を向上させることは可能ではあるが、相手方にとって有益な情報かどうかを判断していない。そのため取得した交通情報を伝播しても、全く役に立たない情報を伝播してしまう。先の道路工事に関する情報などは、相手が道路工事を行う方向に移動する場合にのみ有益であるはずである。そのためには、相手方にとって有益かどうかを取得した交通情報の位置と送信する相手の移動方向とから判断しなければならない。このように粒度の高い交通情報の有効範囲や有効期間は局所的でかつ限定的であるにもかかわらず制御できないといった問題があった。
【0009】
そこで本発明では、粒度の高い交通情報を取得し、伝播するのに有益かどうかを判断し、相手にとって有益な情報であると判断した場合にのみ、交通情報を伝播することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、取得した交通情報の有益性を、取得時刻と取得位置との2つ情報から判断するようにする。例えば取得位置の場合、相手側装置の移動方向を特定し、取得位置に接近する方向であった場合に相手側装置にとって有益であると判断して転送する。また取得した情報は、取得位置から予め定められた範囲内でのみ有効とし、保持している装置が範囲外に移動した場合に情報を棄却する。取得時刻においては、取得後ある一定時間内情報を保持しておき、一定時間を経過すると削除するようにする。このように相手方装置へ伝送する際に相手方の移動方向を特定し、接近方向であれば伝達するようにすることで、相手にとって有益な情報のみを伝播することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、粒度の高い交通情報を、取得位置から一定距離の範囲内、また取得時刻から一定の時間内交通情報を複数の装置間で共有することができる。また情報伝播においても、取得位置に接近する方向で移動する装置に対してのみ伝播するので、不必要な情報伝播を防止でき、本当に必要とする粒度の高い交通情報のみに限定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動車と道路間の交通情報取得方法を示した説明図である。
【図2】自動車と自動車間の交通情報取得方法を示した説明図である。
【図3】車載型交通情報取得装置のハードウェア構成図である。
【図4】固定型交通情報取得装置のハードウェア構成図である。
【図5】車載型交通情報取得装置間で交通情報を伝播するモデルを示した実施例1における説明図である。
【図6】車載型交通情報取得装置で記憶する交通情報計測テーブルである。
【図7】車載型交通情報取得装置で記憶する交通情報伝達テーブルである。
【図8】車載型交通情報取得装置が交通情報を計測するフローチャートである。
【図9】車載型交通情報取得装置が他の車載型交通情報取得装置に交通情報を転送するフローチャートである。
【図10】車載型交通情報取得装置で記憶する特殊情報テーブルである。
【図11】特殊状況で取得した閾値を用いて判断するためのフローチャートである。
【図12】移動式携帯型端末装置が取得した情報を他の移動式携帯型端末装置へ伝播するモデルを示した実施例2における説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための第1の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、自動車101と道路102間における交通情報取得の実施方法を示した説明図である。本発明は、車載型交通情報取得装置103と固定型交通情報取得装置104で実現されており、車載型交通情報取得装置103を搭載した自動車101が道路102に設置または埋め込まれた固定型交通情報取得装置104付近を通過すると、車載型交通情報取得装置103は固定型交通情報取得装置104に記録されている各種情報を取得する。
【0015】
図2は、自動車101と自動車101間における交通情報取得の実施方法を示した説明図である。車載型交通情報取得装置103を搭載した自動車101-aは、順方向に進行して自動車101-aの前を走り、かつ車載型交通情報取得装置103を搭載する自動車101-b、および順方向に進行して自動車101-aの後を走り、かつ車載型交通情報取得装置103を搭載する自動車101-cと交通情報の送受信を行なう。さらに、車載型交通情報取得装置103を搭載した自動車101-aは、逆方向に進行し、かつ車載型交通情報取得装置103を搭載する自動車101-dとすれちがう際に、交通情報の送受信を行なう。
【0016】
図3は、図1で示した車載型交通情報取得装置103の各要素を詳細に示したハードウェア構成図である。通信デバイス201は、他の自動車101に搭載した車載型交通情報取得装置103および道路側の固定型交通情報取得装置104と通信を行い、交通情報および位置情報の送受信を行なう。外部デバイス接続202は、CPU203から送られたデータを出力するため、外部出力装置(例えばモニタ、携帯端末など)と車載型交通情報取得装置103を接続する。CPU203は、内蔵するROM204のプログラムデータに基づき、通信デバイス201の送受信動作、RAM205に記録されている情報の書込・読出制御を行う。RAM205は、CPU203が通信デバイス201、タイマー206、衝突感知センサー207、入力デバイス208から受取った位置情報、交通情報、時刻情報、衝突検知情報を、CPU203の処理に基づいて、計測情報記憶部401、交通情報記憶部402、特殊情報記憶部403、に記録する。
【0017】
タイマー206はCPU203に時刻情報を送信する衝突感知センサー207は、車載型交通情報取得装置103を搭載した自動車101が衝突したことを検知すると、その情報をCPU203に送信する。衝突感知に伴い、衝突情報として記憶し他の自動車に搭載した車載型交通情報取得装置や固定型交通情報取得装置に伝達することを狙いとしている。入力デバイス208は、交通情報を出力する際の設定を入力するためのデバイスであり、設定情報が入力されると、その情報をCPU203に送信し、情報を受信したCPU203は、その情報を外部出力デバイス接続202に送信する。これによりユーザが必要とする情報を選択したり、表示する情報の内容を絞るなどの情報表示におけるユーザインターフェースを提供するのに用いる。また、直接ユーザからの入力情報を受け付ける処理を実施する。
【0018】
ハードディスク209は、RAMに格納されている種々の情報を記憶するのに用いる。
また車載型位置情報取得制御プログラムを格納し、車載型位置情報取得装置103が起動したときに当該制御プログラムをロードして制御を開始することもできる。
【0019】
図4は、図1で示した固定型交通情報取得装置104の各要素を詳細に示したハードウェア構成図である。通信デバイス301は、自動車101に搭載した車載型交通情報取得装置103と通信を行い、交通情報の送受信および位置情報の送信を行なう。固定型交通情報取得装置104は、車載型交通情報取得装置103が取得した情報を一旦受領して記憶し、他の自動車が通過した際に記憶した情報を伝達する中継器の機能を有している。交通情報の伝達において、自動車間のすれ違いにのみ情報の授受を依存するだけでは、交通量の少ない場合に効果を発揮しない。そこで交通量の少ない道路に当該固定型交通情報取得装置104を設置し、当該固定型交通情報取得装置104を通過した自動車が、当該固定型交通情報取得装置104と車載型交通情報取得装置103との間で交通情報の送受を行うことで、他の自動車とすれ違わなくとも交通情報を取得することができる。
【0020】
CPU302は、内蔵するROM303のプログラムデータに基づき、通信デバイス301の送受信動作、RAM305に記録されている情報の書込・読出制御を行う。RAM305は、CPU302が通信デバイス301、タイマー206から受取った交通情報、時刻情報を、CPU302の処理に基づいて、交通情報記憶部402、各種情報記憶部501に記録する。また固定型交通情報取得装置104は、ハードディスク306を内蔵しており、RAMに記憶されている種々の情報を格納するのに用いる。また固定型交通情報取得制御プログラムを格納し、固定型交通情報取得装置104が起動した際に、当該制御プログラムをRAMにロードして実行を開始することも可能である。
【0021】
図5は、本実施例において具体的に自動車が道路を通行しながら情報を収集する際のモデルを示した説明図である。まず説明上道路にa地点(501)からf地点までの複数の地点が設定されているものとする。今、自動車A502がa地点を通過し、b地点とc地点の間の渋滞区間503を通過した後、e地点とf地点の間で対向車線を走行中の自動車B504とすれ違った場合を想定する。自動車A502に搭載する車載型交通情報取得装置511は、渋滞区間503を通過した際に渋滞であることを検知し、対向車線を走行中の自動車B504が搭載する車載型交通情報取得装置512へ渋滞区間の情報を伝達する。その後、自動車B504がa地点を通過した後に、先の自動車A501と同じ方向を走行中の後続自動車Cとすれ違う際、自動車B504に搭載する車載型交通情報取得装置512が、自動車C505に搭載する車載型交通情報取得装置513へ、先の渋滞情報を伝達する。
【0022】
また自動車B504は、渋滞区間503を通過する直前に、反対方向を移動中の別の自動車D506とすれ違ったとする。このとき自動車B504に搭載する車載型交通情報取得装置512は既に渋滞区間503の渋滞情報を保持しているが、自動車D506の移動方向が渋滞区間503から遠方の方向へ移動中であるために情報伝達しない。既にD506の自動車にとっては有益な情報ではないからである。逆に自動車B504は、自動車D506が搭載する車載型交通情報取得装置から自動車A502と同様の渋滞区間503に関する渋滞情報を取得することになる。この場合同一情報を保持することになるので、例えば古いほうのデータを棄却してもよい。また冗長に2つの情報をそのまま保持しておいても良い。
【0023】
図6は、上述図5で記載したモデルに基づいて、自動車A501に搭載する車載型交通情報取得装置511が記憶する交通情報計測テーブルを示した図である。地点欄601は、図5で記載した地点を示すものである。位置情報欄602は、各地点の位置情報を記憶したもので、具体的にはGPSデバイス210等により取得した緯度と経度の2つの情報を記憶してもよい。図6の602欄では、例えば地点a501における位置情報として、GPSデバイス210より取得した緯度をLa−x、経度をLb−xとして表記している。他の地点も同様である。
【0024】
また時刻欄603は、当該地点を通過したときの時刻を記憶する。平均速度欄604は、前の地点から現在の地点までに係った距離と時刻から算出した平均速度を記録し、距離欄605は、前の地点から現在の地点までの距離を算出して記憶する。
【0025】
図6において、地点aと地点bとの間の平均速度が30km/hであるのに対し、地点bと地点cとの間の平均速度が6km/hであり、渋滞地区であったことを検知している。渋滞地区かどうかは予め定めた閾値に基づいて判定する。例えば図6の場合、10km/hを閾値として判断する。判断した結果、渋滞地区であったと判断した場合は、状態欄606にその旨を記録する。それ以外の結果を判断した場合、状態欄606は無記入かまたは伝達する情報がないことを示す記号「−」を記録してもよい。状態欄606は、伝達すべき情報がある場合に記録される。
【0026】
図7は、上述図5で説明したモデルに基づいて、自動車B504の車載型交通情報取得装置512が取得した交通情報を記録する交通情報伝達テーブルである。時刻欄701は、車載型交通情報取得装置512が自動車A502の車載型交通情報取得装置511より情報を取得した時刻を記録する。状態欄702は、車載型交通情報取得装置511より取得した状態を記録する。図7では、b地点とc地点の間の渋滞区間503に関する情報が記録されている。位置情報1欄703は、渋滞区間503の開始位置を記録する。位置情報2欄704は、渋滞区間503の終了位置を記録する。位置情報1欄703と位置情報2欄704は、具体的には緯度・経度の情報を記録している。計測時刻欄705は、自動車A502の車載型交通情報取得装置511が渋滞であると検出した時刻を記録している。平均速度欄705も同様、自動車A502の車載型交通情報取得装置511が算出した平均速度を記録する。距離欄707も同様、自動車A502の車載型交通情報取得装置511が算出した距離を記録する。また、図7の交通情報伝達テーブルに記録される情報のうち、他の自動車に搭載されている車載型交通情報取得装置から伝達される情報は、702乃至707に記載された情報である。
【0027】
以上、説明した図6の交通情報計測テーブルと図7の交通情報伝達テーブルは、車載型交通情報取得装置が両方保持・記憶するテーブルである。車載型交通情報取得装置では、先に示した図3のハードウエア構成図のうち、交通情報計測テーブルを計測情報記憶部401に、交通情報伝達テーブルを交通情報記憶部402に格納する。また固定型交通情報取得装置の場合、図7で示した交通情報伝達テーブルを保持すればよく、図4で示した交通情報記憶部402に格納すればよい。
【0028】
図8は、車載型交通情報取得装置が交通情報を計測するためのフローチャートである。
本フローチャートでは、自動車が一定の距離を走行する毎に走行時間を算出して平均速度を計測する処理を示している。まずGPSデバイス210で自動車の位置情報を取得する(ステップ801)。位置情報は、図6および図7で示したように緯度・経度に関する情報とする。また取得した位置情報は一旦記憶しておく。次に、前に記憶した位置情報と現在記憶した位置情報との差分を算出し、走行距離を算出する(ステップ802)。走行距離は、取得した位置情報に基づいて算出するだけでなく、他の走行距離を算出可能な計測器から取得しても良い。
【0029】
次に基点となる地点からの走行距離が、予め定めた値に達しているかどうか、即ち予め定めた距離を自動車が走行したかどうかを判断する(ステップ803)。ここでは予め1000mという値を定めて計測する場合を説明する。一定距離を走行していなかったと判断した場合(no)は、ステップ801に戻り一定距離の走行を検知するまで本ステップを繰り返し実施する。また一定距離を走行したと判断した場合(yes)は、ステップ804に進み、まず一定距離に達した時点の時刻を算出(ステップ804)する。次に前回計測した時点の時刻との差異から、一定距離を走行するのに要した時間を算出(ステップ805)する。以上の時間と距離から平均速度を算出する(ステップ806)。また算出した時刻、距離および位置情報を図6で示すテーブルの各欄に格納し記憶する。
【0030】
算出した平均速度が予め定めた値より小さいかどうかを判断(ステップ807)。この判定は、先に走行した一定距離の区間に渋滞が発生していたかどうかを判断するのに用いている。例えば予め定めた値を10km/hとした場合、一定距離を走行するのに要した平均速度が10km/h以上であれば、渋滞は発生していないと判断する。また10km/h以下であれば、渋滞が発生していたと判断する。算出した平均速度が予め定めた値と同じか、あるいは大きい場合は、渋滞は発生していないと判断(no)する。このとき、図6で示す交通情報計測テーブルの状況欄606に何も記録しないか、または「−」という渋滞ではないという情報を記録する。またYesと判断した場合は、ステップ808において当該区間において渋滞が発生していたと判断して、図6で示す交通情報計測テーブルの状況欄606に「渋滞」と記録する。
【0031】
また本フローチャートでは、一定間隔の走行距離を検知して平均速度を算出していたが、一定時間の間隔を検知して走行距離を計測し、平均速度を算出する方法であってもよい。
【0032】
図9は、計測した情報を他の自動車が搭載する車載型交通情報取得装置に転送するためのフローチャートである。まず伝達すべき情報があるかどうか、図6で示す交通情報計測テーブルの状況欄606を参照して判断する(ステップ901)。「渋滞」と示す情報が記憶されていなければ処理を終了する。「渋滞」と示す情報が記憶されていれば、次のステップ902に進む。ステップ902は、他の自動車(以降他車と呼ぶ)が自分の自動車(以降自車と呼ぶ)の近傍を走行しているかどうかを判断する。具体的には、自車が搭載する車載型交通情報取得装置の通信デバイス201が、他車が搭載する車載型交通情報取得装置の通信デバイスとの間で無線による通信が確立できるかどうかで判断する。これは通常の無線通信を装備した携帯端末が、近傍に位置する他の携帯端末を探索する技術で確立できる。
【0033】
他車が自車より距離的に離れている場合は、自車の通信デバイス201は、他車との無線通信を確立することができない。この場合、自車の近傍に他車が存在しないと判断し、ステップ901に戻る。伝達すべき情報である「渋滞」情報は、ある一定時間(例えば30分もしくは1時間)を経過すると削除する。有益な情報は時間と共にその価値が下がるため、一定時間を経過した情報を削除する必要があるためである。また情報を有している自動車が情報を取得した位置からあらかじめ定めた距離以上に離れた場合に削除してもよい。考え方は、時間と同じであり、ある一定距離以上離れるとその情報のもつ価値が下がるものと考え、伝達すべき情報ではなくなったと判断して削除すればよい。
【0034】
従って、伝達すべき情報が存在するが伝達すべき相手がいなかった場合、一旦相手を検知するまで待つことにはなるが、その間に一定時間を経過したか、または一定距離以上はなれた場合、情報が削除されるので、処理をステップ901に戻して、毎回伝達すべき情報の有無を確認する。
【0035】
仮に図5のモデルにおける自動車A502を自車とし、自動車B504を他車として説明する。自動車A502の通信デバイス210が、自動車B504の接近に伴い相互間の無線通信が可能な状態を検知した場合、ステップ903に進む。次にステップ903では、ステップ904からステップ908までの処理を一定間隔経過する度に連続して行うための判定を行う。この場合の一定時間は、先に述べた情報を削除する間隔(例えば30分もしくは1時間)よりもかなり短時間(例えば1秒もしくは5秒)に設定する。一定時間が経過するまでステップ903の判定を繰り返し、一定時間が経過した場合にステップ904へ進む。ステップ904では、自車の現在位置と移動方向を算出する。現在位置は、GPSデバイス210で緯度と経度を取得する。また直前のタイミングで取得した位置情報との差異から、自車の移動方向を算出する。例えば図5のモデルにおける自動車A502の場合、移動方向として「東」と算出する。次に他車から他者の位置情報を通信経由で取得し、自車で算出したのと同じ方法で他車の移動方向を特定する(ステップ905)。
例えば図5のモデルの場合、他車である自動車B504の移動方向が「西」であると算出する。次に自車と他車との双方間の距離を算出する。
【0036】
また自車と他車の移動方向を検知するため、少なくとも2地点の位置情報を測定しなければならない場合がある。従って1地点での位置情報を取得し、次の一定時間経過(ステップ903)を待って2地点目の位置情報を取得すればよい。または方角を電気的に特定できるデバイスもある。例えばデジタルコンパスのように、デバイスの向いている方位を電気的に検知して方位情報として提供できるデバイスである。このデジタルコンパスを装備する場合、自車は位置情報と共に方角を特定し、また他車から位置情報とともに移動方向を伝達してもらうことも可能である。この場合は2地点の位置情報を取得する必要はない。
【0037】
次に自車と他車の2つの移動方向から情報伝達の必要性を判断する(ステップ907)。例えば図5のモデルにおける自動車A502は、「渋滞」情報を有して「東」方向を走行し、自動車B504は自動車A502の移動方向と反対方向に走行している。このとき自動車A502は、自動車A504の移動方向が反対方向であることを判断することができるので、この場合「渋滞」情報を伝達すべきであると判断する。
【0038】
このようなステップ907における判断は、他に様々な判定内容を想定できる。例えば、他車の移動方向が図5で示す渋滞区間503に接近する方向かどうかを判断してもよい。例えば図5では示していないが、他車の移動方向が「北」であった場合、当該車は渋滞区間503に接近する方向には走行していないと判断することができる。この場合、自車は伝達すべき情報は有するものの、伝達する必要性がないと判断してよい。
【0039】
このような判定を用いると、渋滞区間503において検知された「渋滞」情報は、渋滞区間503からある一定距離の間を走行する自動車間で共有されることになる。例えば、「情報」の削除タイミングを、その保有した自動車が検知した場所から5km以上離れたときに削除したとする。この5km以内に他の自動車と通信可能な状態となり他の自動車が渋滞区間へ接近していると判定された場合、その情報は他の自動車へ伝達される。仮に他の自動車が渋滞区間503を通り過ぎても渋滞区間503より5km以内であれば他の自動車へ更に伝達されることになる。このように、検知された情報は、検知された位置から一定距離の範囲内を通過する他装置間でバトンのように伝播され共有される。また「情報」は一定時間を経過(例えば30分とか1時間)すると削除するので、有益な情報が一定時間、一定距離の範囲で他の装置間と共有することができる。
【0040】
ステップ908は、伝達すべきと判断した場合に続く判定処理である。ここでは例えば先にステップ906で算出した双方の距離が最小となる地点を検知する。つまり自動車A502が自動車B504とのすれ違いを検知し、距離が最小となる地点をすれ違いの地点であると判断する。そしてすれ違いの地点において「渋滞」情報を伝達する(ステップ909)。この情報伝達のタイミング(ステップ908)は、処理の上で省略することも可能である。必要なのは一度送付した同じ情報を同じ他の装置に伝播するのを防止できれば良い。または同じ情報を伝播しても、受けて側が同じ情報であると判断して当該情報を棄却することで防止することは可能である。図9では、すれ違いのタイミングのみで情報伝達するように制御しており、情報伝達のタイミングでない場合は、再度ステップ904から907の処理を繰り返す処理に戻して、次のタイミングを検知している。
【0041】
ステップ909は、情報を他車へ伝達するステップである。情報伝達は無線による通信で行う。具体的には図6の交通情報計測テーブルに記憶されている「渋滞」情報に基づいて、図7の交通情報伝達テーブルに格納すべき情報を伝達する。
【0042】
図9のフローチャートについて、図5で示した自動車A502と自動車B504との間の情報伝達について説明した。このときステップ901において伝達すべき情報の有無を、図6で示す交通情報計測テーブルに記憶する状態欄602を参照して判断すると述べた。これが、図5で示した自動車B504が、別の自動車C505へ情報伝達する場合においても図9のフローチャートで処理を実施すればよい。この場合、自動車Aから取得した情報は図7の交通情報計測テーブルに記憶されているので、ステップ901における参照先を交通情報計測テーブルからも参照して伝達すればよい。自動車B504がe地点からa地点までを走行中に計測した情報で仮に別の渋滞情報を図6の交通情報計測テーブルに記憶していた場合、自動車B504は、自動車A502から取得した渋滞情報のみならず、自動車B504が自身で計測した渋滞情報も併せて伝達すればよい。
【0043】
以上は、図5で示したモデルに基づいて、3つの自動車A502、B504、C505の間での情報伝達について説明した。これらの情報伝達は、各々移動する自動車に搭載された車載型交通情報取得装置511、512、513で行われる。つまり「渋滞」を検知した自動車A502が自動車B504とすれ違い、また「渋滞」情報を取得した自動車B504が自動車C505とすれ違うことを前提として交通情報の伝達を実施している。次に先に説明した固定型交通情報取得装置が図5の地点aと地点dに装備されている場合(図示はしていない)を説明する。 自動車A502が地点dを通過すると仮定する。この時自動車A502に搭載する車載型交通情報取得装置511は、図8のフローチャートで既にb地点とc地点の間に渋滞区間503があることを検知し、図6で示す交通情報計測テーブルに「渋滞」情報を格納しているものとする。この場合、自動車A502に搭載する車載型交通情報取得装置511は、図9で示すフローチャートを実施して、d地点に装備された固定型交通情報取得装置に伝達することができる。この場合、図9で示した各ステップの「他車」を固定型交通情報取得装置と読み替えればよい。ただ固定型交通情報取得装置は道路に固定的に装備されているため、自動車A502の車載型交通情報取得装置511は、ステップ905で移動方向を算出することができない。この場合、ステップ902の「他の通信媒体を検知?」において、自動車A502の車載型交通情報取得装置511が相手が「固定」であることを検知できればよい。例えば、自動車A502の車載型交通情報取得装置511が通信可能な他の媒体を検知した際に、固定型交通情報取得装置から「固定」であることを示す装置種別情報を取得すればよい。自動車A502の車載型交通情報取得装置511は、固定型交通情報取得装置とのすれ違いを検知して情報伝達する。
【0044】
d地点に装備された固定型交通情報取得装置(図示していない)は、自身が自動車A502より取得した情報に基づいて、自動車B504の接近を検知し、すれ違いのタイミングで情報伝達する。これは図9のフローチャートに従って実施すればよい。この場合、ステップ904で示した「自車の移動方向」は算出しない。その代わりステップ905で示す「他車の移動方向」を算出し、当該自動車が渋滞区間503へ接近する方向へ移動する車であるかどうかをステップ907で判断すればよい。
【0045】
a地点に装備された固定型交通情報取得装置(図示していない)も、自動車B504が上述のd地点と同様の処理を実施することで情報を伝達することができ、更に自動車C505が通過する際に、同様の処理により情報を伝達することができる。
【0046】
固定型交通情報取得装置を例えば道路に沿って複数装備しておき、相互に通信することで情報を共有することも可能である。これにより、固定型交通情報取得装置を通過した自動車に装備された車載型交通情報取得装置から取得した情報を、他の固定型交通情報取得装置に伝播することができる。また情報には検知した位置情報と検知した時刻を取得しているので、仮に検知した位置から一定距離の範囲内にある固定型交通情報取得装置が、一定距離の範囲外にある固定型交通情報取得装置を検知した場合、情報を伝達しないように制御しても良い。また情報を伝達しても良く、その場合は受領した固定型交通情報取得装置が、検知した位置情報と自身の位置情報とを比較して、取得した情報が一定距離の範囲外であることを判断し、取得した情報を棄却しても良い。いずれにしても、固定型交通情報取得装置を複数装備することで、仮に自動車B504が走行する車線の交通量が少なくすれ違いを期待できない状況下であっても、自動車A502の車載型交通情報取得装置が検知した渋滞情報を的確に伝達することができる。
【0047】
以上、図5で示したモデルに基づいて、地点bと地点cの間を渋滞区間503として検知した場合の例を説明した。上述のモデルでは、どの区間においても通常10km/h以下であれば渋滞であると検知することが前提である。しかしながら、道路の状況は区間に応じて変化しており、一定の閾値を用いて判断することができない場合がある。例えば、地点bと地点cの間は、別の道路と交差する交差点があり、赤信号で停止しなければならない時間が長かったとする。この場合、算出した平均速度が閾値以下となり「渋滞」と誤認識する可能性がある。このように予め定めた閾値を用いることで誤認識を回避する方法について、以下説明する。
【0048】
図10は、車載型交通情報取得装置に具備された特殊情報記憶部に格納される特殊情報テーブルである。特殊情報テーブルは、信号待ち等の特殊状況下で算出された平均速度を記憶する。具体的には1001欄と1002欄で、信号待ち等の特殊状況を検知した区間を定義するための位置情報であり、GPSデバイス210等により取得した緯度・経度を記憶する。ここでは地点bと地点cの位置情報が各々格納されている。計測時刻欄1003は、特殊状況を検知した時刻を記憶する。平均速度欄1004は、当該区間(位置情報欄1と位置情報欄2の間)を走行した際に算出した平均速度を記憶する。距離欄1005は、当該区間の距離を記憶する。状況欄1006は、特殊状況が「信号待ち」によることを記憶する。
【0049】
このように「信号待ち」という、渋滞と判断してはならない特殊状況を判断し、記憶し、平均速度の判定において渋滞でないと判断するのに用いる。具体的には、算出した平均速度を閾値として用いる。実測値を用いて信号待ちの分を考慮することで、信号待ちという特殊状況においても「渋滞」であるとの誤判断を防止することができる。
【0050】
またこの区間を通過する他の自動車へ当該特殊状況の情報を伝達することで、平均速度の判定に利用することも可能である。図9で示したフローチャートにおいて、上述では計測した交通情報計測テーブル(図6)の情報を「伝達すべき情報」として用いたが、図10で示した特殊情報テーブルに記憶する情報を「伝達すべき情報」として加えればよい。
【0051】
また特殊情報テーブルに記憶された情報は、「渋滞」情報のようにある過渡的な情報ではなく普遍的な情報である。このような特殊情報は時間の経過や一定距離範囲を検知して削除する必要はなく、同区間を交通する頻度が多いほど再利用される可能性が高いのでパーマネントに記憶しておけばよい。また必要に応じて画面I/Fを通じてユーザからの削除要求を受け付ければよい。
【0052】
固定型交通情報取得装置においても同じ特殊情報記憶部501を備えており、図10で示した特殊情報テーブルに種々の情報を記憶して、他の通過する自動車に搭載する車載型交通情報取得装置に伝達すればよい。固定型交通情報取得装置の場合、同じ特殊状況下の情報を様々な自動車から伝達される可能性がある。この場合は、複数個の同じ情報を保持しておき、取得した複数の平均速度値から平均値を算出して、他の自動車へ伝達してもよい。また取得した複数の平均速度値のうちで最小値を特定し、他の自動車へ伝達しても良い。
【0053】
図11は、既定の閾値による渋滞判定を行うだけでなく、特殊状況下を判断して情報を活用するための処理を行うフローチャートである。図11のフローチャートは、図8で示したフローチャートと類似しているが、方式が若干異なる。図8は、一定距離の間隔で計測しているが、図11では一定時間の間隔で計測している。
【0054】
ステップ1101は、一定時間間隔を特定するために現在時刻を取得する。ステップ1102では、一定時間が経過したかを判定し、一定時間が経過するまでステップ1101の現在時刻の取得を継続する。一定時間が経過した場合、ステップ1103において、自車の位置をGPSデバイス210よりその緯度と経度を取得する。ステップ1104において、先の時刻で取得した位置情報と今回の時刻で取得した位置情報との差分から、走行距離を算出する。ステップ1105は、算出した走行距離と、走行に要した時間(一定時間)とに基づいて平均速度を算出する。
【0055】
ステップ1106において、まず特殊情報テーブルに記憶されている特殊情報のうち、当該区間に関する特殊情報があるかどうかを判断する。例えば図10の特殊情報テーブルに記憶する2つの位置情報と、ステップ1103で取得した位置情報とを比較して判断する。なければ既定値(例えば10km/h)を渋滞判定の閾値として用いる(ステップ1107)。あれば特殊情報で記憶されている平均速度(8km/h)を渋滞判定の閾値として用いる(ステップ1108)。
【0056】
次にステップ1109において、先のステップ1105で算出した平均速度と閾値とを比較する。平均速度が閾値以上であれば特に「渋滞」ではないと判断して処理をステップ1101に戻し、次の計測に取り掛かる。もし平均速度が閾値以下であった場合、その理由が渋滞によるものか、信号待ちによるものかの判断情報をユーザへ提示し、ユーザに選択してもらう。車載型交通情報取得装置103は、外部出力デバイス接続202を有しており、判断情報を画面表示することが可能である。ユーザには、平均速度が閾値以下であった場合の理由として、例えば「渋滞」か「信号待ち」かのどちらを選択してもらう。ユーザの選択した情報を入力デバイス208により取得する。理由が「渋滞」か「信号待ち」かどうかを判断(ステップ1111)し、渋滞であった場合は渋滞として交通情報計測テーブルに格納する(ステップ1112)。信号待ちであった場合は、特殊情報として特殊情報テーブルに格納する(1113)。
【0057】
渋滞か信号待ちかをユーザ入力により判別しているが、本来であれば走行中であるため極力ユーザ入力を必要とせず自動判別できる方法を採用することが望ましい。例えば、一定間隔を短くし、平均速度が閾値以下であると連続的に判断する回数を算出する。具体的には、一定間隔を1分間隔とし、平均速度が閾値以下であると判断された場合、ステップ1112による「渋滞」との判断をする前に、判断した回数を計上(+1)してステップ1101に戻り、次の計測を開始する。これが連続して3回以上閾値以下であると判断した場合、即ち回数が3回以上に達した場合にステップ1112の「渋滞」判断を行う。また3回目に平均速度が閾値以上に変化した場合は、回数をクリアし、「渋滞」ではなく「信号待ち」と判断してステップ1113を行えばよい。以上のように、道路の状況に応じて判断基準を変更することで、より肌理の細かい交通情報を計測して伝播することが可能となる。
【0058】
また車載型交通情報取得装置103には、衝突検知センサー207を具備し、自動車自身の衝突を検知する機能を有する。衝突した自動車自身が他の交通の妨げとなり、衝突後渋滞を招く恐れがあるため、自身で検知した衝突情報を他の自動車に伝達するために用いる。衝突情報と類似する情報としては、エンストやガソリン切れ、故障などがある。いずれにしても自身が交通の妨げになっていることを通知すればよい。
【0059】
検知した情報は、図7に示した交通情報テーブルに格納すればよい。例えば衝突を検知して自車が走行不能となった位置情報をGPSデバイス210より取得して位置情報1欄703に記憶する。また検知した時刻を計測時刻欄706に記憶し、「衝突」を状況欄702に記憶する。交通情報テーブルは、他の自動車へ伝達する情報として利用されるので、自身が走行不能により渋滞を招くおそれがあるという情報を、走行中の他の自動車へ伝播することが可能となる。
【0060】
尚、図8、図9および図11で示したフローチャートは、CPU上で稼働するプログラムで実現するが、プログラムを予めROM204に格納しておいて、実行時に主記憶メモリであるRAM205に読み出して実行するだけでなく、これらのプログラムを予め可搬型記憶媒体に格納しておき、可搬型記憶媒体のドライバ(図示していない)から読み出して主記憶メモリであるRAM205に格納して実行してもよい。また図6、図7、図10で示したテーブルに格納された情報は、主記憶メモリであるRAM205の各々の記憶部に格納するだけでなく、ハードディスク209に格納して保持し、必要に応じて主記憶メモリであるRAM205に読み書きすることも可能である。
【実施例2】
【0061】
次に第2の実施例について説明する。第1の実施例では、車載型交通情報取得装置および固定型交通情報取得装置に基づいて交通情報のやり取りを行う例を説明した。しかしながら交通情報の伝達は無線による通信で行うこと、またこれらを実現する装置のハードウエア構成が一般的なコンピュータと同等であることに着眼すると、単に車載型の装置による交通情報だけに限らず、より一般的な情報伝達に応用することが可能である。例えば装置を携帯電話や携帯型コンピュータといった移動式携帯型端末装置である。このような移動式携帯型端末装置で行った場合のモデルを図12で説明する。
【0062】
図12は、移動式携帯型端末装置が取得した情報を他の携帯端末装置へ伝播するモデルを示す。まず移動式携帯型端末装置A102が地点aにおいてある情報p1203を取得し、b地点の方向へ移動しているとする。図12では、説明のためにa地点を中心とした半径R1205の円を描画している。この円は、取得した情報p1203が情報として有効である範囲を示す。情報p1203を保持した移動式携帯型端末装置Aが円の外側へ移動すると、情報p1203を棄却する。
【0063】
ここで半径R1205の範囲内において移動していた移動式携帯型端末装置Aが、別の移動式携帯型端末装置B1204とすれ違うことを想定する。このとき移動式携帯型端末装置B1204は、地点cから地点aに向けて移動中であったとする。移動式携帯型端末装置A1202は、移動式携帯型端末装置B1204の移動方向を図8で示したフローチャートに基づいて算出し、保有している情報p1203を伝達する必要があるかどうかを判断する。移動式携帯型端末装置A1202は移動式携帯型端末装置B1204が地点aに接近する方向で移動中であること算出するので、情報p1203を伝達する必要があると判断し、移動式携帯型端末装置B1204とのすれ違いを検知して、情報p1203を移動式携帯型端末装置B1204へ送信する。その後、移動式携帯型端末装置A1202はa地点に向けて半径Rの外側へ移動するので、外側に位置した時点で算出された自身の位置情報から外側であることを判断し、情報p1203を棄却する。
【0064】
更に、移動式携帯型端末装置B1204がa地点を通過してd地点へ移動中であり、移動式携帯型端末装置A1202から取得した情報p1203の有効範囲である半径R1205の範囲内において、別の移動式携帯型端末装置C1205とD1206とすれ違うことを想定する。移動式携帯型端末装置B1204は、図9で示したフローチャートに基づいて、まず伝達すべき情報があるかを判断する。B1204は情報p1203を保持しているので、次に通信可能な移動式携帯型端末装置を検知する。図12の場合、e地点より移動中のC1205とf地点へ移動中のD1206を検知する。次に検知した各々の移動式携帯型端末装置の移動方向と距離を算出し、各々の移動方向から情報を伝達する必要があるかを判断する。図12においてB1204は、C1205の移動方向がa地点に接近する方向であると判断する。このときC1205の移動方向が確実にa地点を通過するものであると限定して判断する必要はない。移動方向が接近する方向であればよい。一方、B1204は、D1206の移動方向がa地点より遠方に移動する方向であると判断する。B1204は、a地点方向に接近中のC1205に対して情報p1203を伝達する。
しかしD1206に対しては情報を伝達する必要はないと判断する。
【0065】
また携帯端末装置の場合、位置情報を平面的に捉えるだけでなく、取得した高度を位置情報に加えることも可能である。この場合、3次元空間上に半径Rの球を想定して、情報の伝達を行えばよい。
【0066】
また取得した情報には、情報を検知した計測時刻も保有しているので、移動式携帯型端末装置が半径Rの円・球内に位置していても、ある一定時間を経過していた場合、情報を棄却することができる。
【0067】
また情報の取得手段は、単にユーザからの入力情報を受け付けても良い。このとき、受け付けた時点の時刻を計測時刻とし、また受け付けた場所をGPSデバイス210等によって計測して取得すればよい。また車載型交通情報取得装置のようにセンサから自動的に情報を取得し、取得した時刻である計測時刻と位置情報を確定して処理を行えばよい。また、情報の保持手段も、先の実施例1で説明した図6、図7等のテーブルを利用すればよい。
【0068】
また先の実施例1において説明した固定型交通情報取得装置においても、移動式携帯型端末装置の電波を送受信するアンテナ装置に、固定型交通情報取得装置と同様のハードウエア構成を有するコンピュータを保持し、移動式携帯型端末装置が検出した情報p1203を保持して他の移動式携帯型端末装置に伝播しても良い。
【0069】
このように、検知した情報を装置の移動方向から伝播する必要があるかどうかを判断し、検知時刻から一定期間、検知位置から一定距離の範囲内で移動する装置に対して伝播することで、検知位置に接近中の装置に対して的確に情報伝播することが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
103…車載型交通情報取得装置、104…固定型交通情報取得装置、201…通信デバイス、202…外部出力デバイス接続、203…CPU、204…ROM、205…RAM、206…タイマ、207…衝突感知センサー、208…入力デバイス、209…ハードディスク、210…GPSデバイス、401…計測情報記憶部、402…交通情報記憶部、403…特殊情報記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を記憶する記憶部と無線による通信を行う通信部を有した移動式携帯型端末装置であって、
前記移動式携帯型端末装置が前記情報を取得した取得位置を特定する位置情報取得部と、
第二の移動式携帯型端末装置が移動する第二の移動方向を前記通信手段により取得する第二の移動方向取得部とを有し、
前記第二の移動方向が前記取得位置へ接近する方向であった場合に、前記記憶部に記憶されていた前記情報を前記第二の移動式携帯型端末装置に前記通信手段を用いて転送することを特徴とする移動式携帯型端末装置。
【請求項2】
前記移動式携帯型端末装置は、更に、
前記位置情報取得手段によって取得した現在位置と前記取得位置との間の距離を算出する距離算出部を有し、
前記距離が予め定めた値を超えていない場合に、前記記憶部に記憶されている前記情報を前記第二の移動式携帯型端末装置に前記通信手段を用いて転送する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動式携帯型端末装置。
【請求項3】
前記移動式携帯型端末装置は、更に、
前記距離が予め定めた値を超えていた場合に、前記記憶部に記憶されていた前記情報を棄却する情報棄却部を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の移動式携帯型端末装置。
【請求項4】
前記移動式携帯型端末装置は、更に、
前記情報を取得した取得時刻と、現在の時刻である現在時刻とを取得する時刻情報取得部とを有し、
前記現在時刻と前記取得時刻との差が予め定められた値以内であった場合に、前記記憶部に記憶されている前記情報を前記第二の移動式携帯型端末装置に前記通信手段を用いて転送する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動式携帯型端末装置。
【請求項5】
前記移動式携帯型端末装置は、更に、
前記現在時刻と前記取得時刻との差が予め定められた前記値を超えていた場合、前記記憶部に記憶されている前記情報を棄却する情報棄却部を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の移動式携帯型端末装置。
【請求項6】
前記移動式携帯型端末装置は、
自動車に搭載する車載型交通情報取得装置であり、前記情報は交通情報である
ことを特徴とする請求項1乃至5に記載する移動式携帯型端末装置。
【請求項7】
前記第二の移動式携帯型端末装置は、道路に設置した固定型交通情報取得装置である
ことを特徴とする請求項6に記載する移動式携帯型端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−238144(P2011−238144A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110727(P2010−110727)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】