説明

交通情報提供装置

【課題】交通情報を生成するための処理負荷を低減しつつ、路側インフラを用いて提供される交通情報を補完できるようにする。
【解決手段】サービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報をサービス対象車両より取得し(S300)、当該走行エリア予測情報に基づいてサービス対象車両の走行エリアを予測し(S304)、予測したサービス対象車両の走行エリアを対象エリアとしてプローブ情報に基づく交通情報を生成し(S306)、当該プローブ情報に基づく交通情報により、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を補完した交通情報をサービス対象車両に通知する(S308)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サービス対象車両に交通情報を提供する交通情報提供装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路の交通情報をドライバーに提供する技術として、財団法人道路交通情報通信システムセンターによるVICS(Vehicle Information and Communication System:なお、「VICS」は上記財団法人の登録商標)が広く知られている。このVICSは、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)から収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、ビーコンによる狭域通信やFM放送等の広域通信によってドライバーに提供するものである。
【0003】
このようなシステムでは、路側センサが設置されていない場所では定点観測情報を収集することができないため、交通情報の精度が低くなるという欠点がある。
【0004】
そこで、多数のプローブ車両に、位置データ、速度データ等のプローブ情報を収集する車載端末を搭載し、これらの車載端末により収集されたプローブ車両から渋滞情報等を生成すると共に、各種の路側センサ(車両感知器やループコイル等)を介して得られたVICS情報を用いて渋滞情報等の交通情報を生成し、この交通情報に、プローブ車両に搭載された車載端末により収集された補足交通情報を加味した高度交通情報を生成し、VICSセンタより、光ビーコン、電波ビーコン、FM多重信号のメディアを介して車両に送信するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−139556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載されたようなシステムにおいては、時々刻々と変化する交通状況に対応するため、多数の車両に搭載された車載端末より送信される新しい情報を用いて、常時、補足交通情報を生成する必要がある。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載されたシステムのような構成では、広範囲(例えば、全国)に位置する多数のプローブ車両に搭載された車載端末により収集された走行情報を用いて、VICS情報を用いて生成された交通情報を補完する必要があるため、計算量が膨大で処理部の負荷が大きく、交通情報を十分に補完することができないといった問題がある。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みたもので、交通情報を生成するための処理負荷を低減しつつ、路側インフラを用いて提供される交通情報を補完できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、複数の車両に搭載され、当該搭載車両の走行状況を表すプローブ情報を収集する機器により収集されたプローブ情報を蓄積記憶したデータベースと、サービス対象車両に搭載された車載器と通信する通信手段と、通信手段を介してサービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報をサービス対象車両より取得し、当該走行エリア予測情報に基づいてサービス対象車両の走行エリアを予測する走行エリア予測手段と、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を受信する交通情報受信手段と、走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリアを対象エリアとしてプローブ情報に基づく交通情報を生成し、当該プローブ情報に基づいて生成した交通情報により、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を補完した交通情報をサービス対象車両に通知する交通情報通知手段と、を備えたことを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、サービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報をサービス対象車両より取得し、当該走行エリア予測情報に基づいてサービス対象車両の走行エリアを予測し、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を受信し、走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリアを対象エリアとしてプローブ情報に基づく交通情報を生成し、当該プローブ情報に基づいて生成した交通情報により、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を補完した交通情報がサービス対象車両に通知されるので、交通情報を生成するための処理負荷を低減しつつ、路側インフラを用いて提供される交通情報を補完することができる。
【0011】
また、走行エリア予測手段は、請求項2に記載の発明のように、サービス対象車両の現在の状況とサービス対象車両の走行履歴からサービス対象車両が走行する走行エリアを予測することができ、請求項3に記載の発明のように、サービス対象車両の現在の状況と目的地設定履歴からサービス対象車両が走行する走行エリアを予測することもできる。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、プローブ情報には、車両の位置および速度を表す情報が含まれており、交通情報通知手段は、データベースから走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置および速度を表す情報に基づいて渋滞の最後尾および渋滞の先頭を特定し、当該渋滞の最後尾および渋滞の先頭より特定される渋滞情報を含むように交通情報を生成することを特徴としている。
【0013】
このような構成によれば、データベースから走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置および速度を表す情報に基づいて渋滞の最後尾および渋滞の先頭を特定し、当該渋滞の最後尾および渋滞の先頭より特定される渋滞情報を含むように交通情報を生成するので、路側インフラが整備されていない場所で発生した渋滞情報をサービス対象車両に通知することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、交通情報通知手段は、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報と同一区間の渋滞情報がプローブ情報を用いて特定された場合には、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報を通知し、プローブ情報を用いて特定した同一区間の渋滞情報を通知しないことを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報と同一区間の渋滞情報がプローブ情報を用いて特定された場合には、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報を通知し、プローブ情報を用いて特定した同一区間の渋滞情報を通知しないので、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報とプローブ情報を用いて特定された渋滞情報が相違してユーザに混乱を与えてしまうといった状況を回避することができる。
【0016】
また、請求項6に記載の発明は、プローブ情報には、車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報が含まれており、交通情報通知手段は、データベースから走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報に基づいて道路上に障害物が存在する地点を推定し、当該道路上に障害物が存在する地点を表す情報を含むように交通情報を生成することを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、データベースから走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報に基づいて道路上に障害物が存在する地点を推定し、当該道路上に障害物が存在する地点を表す情報を含むように交通情報が生成されるので、交通情報取得手段により取得された交通情報では通知することのできない交通情報をサービス対象車両に通知することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る交通情報提供装置の概略構成を示す図である。
【図2】交通情報提供装置の制御部による統合プローブデータベース生成処理のフローチャートである。
【図3】交通情報提供装置の制御部による行動分析処理のフローチャートである。
【図4】交通情報提供装置の制御部による交通情報提供処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る交通情報提供装置の概略構成を図1に示す。本交通情報提供装置1は、交通情報を提供する情報提供センタに設置されたサーバとして構成されている。
【0020】
交通情報提供装置1は、通信装置10、記憶装置11、表示部12および制御部13を備えている。
【0021】
通信装置10は、通信網2を介して各種端末と通信するための装置である。
【0022】
記憶装置11は、各種情報の記憶および読み出しを行うための装置である。本実施形態では記憶装置11として、大容量ハードディスクドライブが用いられている。
【0023】
表示部12は、液晶等のディスプレイを有し、制御部13より入力される映像信号に応じた映像をディスプレイへ表示させる。
【0024】
制御部13は、CPU、RAM、ROM、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUはROMまたは記憶装置11に記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。
【0025】
交通情報提供装置1は、通信網2を介して交通情報センタ(VICSセンタ)、運送会社事務所、タクシー配車センタ、プローブ情報を収集するための情報収集装置を搭載したマイカー、イベント情報提供会社、サービス対象車両と通信することが可能となっている。
【0026】
また、本実施形態において、トラック、タクシー、一般ユーザが所有するマイカーをプローブ車両として、これら多数のプローブ車両に搭載された各種機器により各車両の位置(緯度経度)、車速等を含むプローブ情報が収集され、各車両のプローブ情報が交通情報提供装置1へ送信されるようになっている。
【0027】
トラックには、車両の位置(緯度経度)、車速、積荷情報、入庫時間、出庫時間、燃費等の運行管理情報を収集する運行管理装置40が搭載されている。なお、車両の位置(緯度経度)は、GPS受信機(図示せず)を用いて検出され、車速は車速センサ(図示せず)を用いて検出される。また、車両の位置(緯度経度)および車速は、一定時間毎に収集される。
【0028】
運行管理装置40には、記録装置41が接続されており、運行管理装置40により収集された運行管理情報は、記録装置41の挿入口に挿入された記憶媒体42に記憶されるようになっている。記憶媒体42に記憶された運行管理情報は、運送会社事務所のサーバ43によって読み出され、運送会社事務所のサーバ43の記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ)で記憶保持されるようになっている。
【0029】
また、運送会社事務所のサーバ43は、運行管理情報から積荷情報等の交通情報の提供に不要な情報を削除したトラックプローブ情報を情報提供センタに設置された交通情報提供装置1へ送信する処理を実施する。
【0030】
タクシーには、車両の位置(緯度経度)、車速、実車または空車を表す情報、燃費等のタクシー情報を収集するタクシープローブ装置50が搭載されている。なお、車両の位置(緯度経度)は、GPS受信機(図示せず)を用いて検出され、車速は車速センサ(図示せず)を用いて検出される。また、車両の位置(緯度経度)および車速は、一定時間毎に収集される。
【0031】
タクシープローブ装置50は、タクシー無線装置としての機能と、プローブ情報を収集する機能を兼ね備えている。タクシープローブ装置50には、業務用無線通信を行うための通信機51が接続されている。タクシープローブ装置50とタクシー配車センタのサーバ52の間の通信は業務用無線を用いて行われる。
【0032】
タクシープローブ装置50により収集されたタクシー情報は、業務用無線通信を介してタクシー配車センタへ送信され、タクシー配車センタのサーバ52の記憶装置(例えば、ハードディスクドライブ)で記憶保持されるようになっている。
【0033】
タクシー配車センタのサーバ52は、タクシー情報から実車または空車を表す情報等の交通情報の提供に不要な情報を削除したタクシープローブ情報を情報提供センタに設置された交通情報提供装置1へ送信する処理を実施する。
【0034】
マイカーには、車両の位置(緯度経度)、車速、急ブレーキ操作の有無、急ハンドル操作の有無、降雨の有無、スリップ発生情報を収集する車載端末60が搭載されている。なお、車両の位置(緯度経度)は、GPS受信機(図示せず)を用いて検出され、車速および急ブレーキ操作は車速センサ(図示せず)より出力される信号により検出され、急ハンドル操作は、ステアリングの舵角に応じた信号を出力する舵角センサ(図示せず)を用いて検出され、降雨の有無は雨滴センサ(図示せず)を用いて検出され、スリップ発生情報は、スリップ検出装置を(図示せず)を用いて検出される。また、車両の位置(緯度経度)、車速は、一定時間毎に収集される。
【0035】
車載端末60には、通信網2に接続するための通信機61が接続されており、車載端末60により収集された走行情報は、通信網2を介して情報センタの交通情報提供装置1へ送信される。
【0036】
情報提供センタに設置された交通情報提供装置1には、通信網2を介して各マイカーから車載端末60により収集された走行情報が送信されるようになっている。交通情報提供装置1は、車載端末60より送信される走行情報をマイカープローブ情報として記憶装置11に蓄積記憶させる処理を実施する。
【0037】
また、交通情報提供装置1には、通信網2を介してイベント情報提供会社のサーバ70が接続されるようになっている。イベント情報提供会社のサーバ70は、各種施設で実施されるイベントに関するイベント情報を交通情報提供装置1へ通知するようになっている。なお、イベント情報には、イベント名、イベント開催日時、集客人数等の情報が含まれる。
【0038】
交通情報提供装置1は、予め登録されたサービス対象車両に対して、交通情報の提供を行う。サービス対象車両には、車載器としてナビゲーション装置80が搭載されている。また、ナビゲーション装置80には、通信網2に通信接続するための通信機81が接続されている。
【0039】
ナビゲーション装置80は、現在位置を特定するための位置検出器、地図データを読み取るための地図データ読み取り装置、各種映像を表示する表示装置、各種操作を行うための操作部および制御部(いずれも図示せず)を備えている。
【0040】
ナビゲーション装置80の制御部は、CPU、ROM、RAM、I/O等を備えたコンピュータとして構成されており、CPUは、ROMに記憶されたプログラムに従って各種処理を実施する。制御部の処理としては、位置検出器より入力さえる現在位置を特定するための情報に基づいて現在位置を特定する現在地特定処理、地図上の現在位置に自車位置マークを重ねて表示する地図表示処理、ユーザ操作に応じて目的地を検索する目的地検索処理、出発地から目的地に至る最適な案内経路を探索する経路探索処理、案内経路に従って走行案内を行う走行案内処理、目的地設定履歴、走行履歴等の履歴情報を記憶する走行履歴記憶処理等がある。
【0041】
交通情報センタ(VICSセンタ)は、各種の路側インフラ(車両感知器やループコイル等)を用いて収集した車両台数や車両速度等よりなる定点観測情報に基づいて、各路線での渋滞やリンク旅行時間を含む交通情報を集計し、その交通情報を、電波ビーコン、光ビーコン、FM多重放送を利用してドライバーに提供する。
【0042】
情報提供センタの交通情報提供装置1は、記憶装置11に記憶されたトラックプローブ情報、タクシープローブ情報、マイカープローブ情報を統合した統合プローブデータベースを生成する。この統合プローブデータベースは、過去の一定期間の渋滞状況に基づいて渋滞予測等を行うための統計情報と、車両運行中に発生する様々な突発事象(事故、工事等による渋滞・車線規制など)を特定するためのリアルタイム情報を統合したものとして構成される。
【0043】
交通情報提供装置1の制御部13による統合プローブデータベース生成処理のフローチャートを図2に示す。
【0044】
制御部13は、まず、記憶装置11よりマイカープローブ情報の読み込み(S100)、次に、記憶装置11よりトラックプローブ情報の読み込み(S102)、次に、記憶装置11よりタクシープローブ情報の読み込みを行う(S104)。
【0045】
次に、S100〜S104にて読み込んだ各プローブ情報をまとめた統合プローブデータベースを生成し、生成した統合プローブデータベースを記憶装置11に記憶させる(S106)。このようにして、様々な特性を有するプローブ情報をまとめた統合プローブデータベースが記憶装置11に記憶される。
【0046】
また、交通情報提供装置1の制御部13は、サービス対象車両に搭載されたナビゲーション装置80から目的地設定履歴および走行履歴を取得して行動分析する行動分析処理を実施する。
【0047】
図3に、この行動分析処理のフローチャートを示す。制御部13は、ナビゲーション装置80からサービス開始の要求があると、図3に示す処理を実施する。
【0048】
まず、ユーザのプロフィール情報を取得する(S200)。具体的には、ナビゲーション装置80からユーザのプロフィール情報を取得する。このプロフィール情報には、ナビゲーション装置80を特定するための機器ID、交通情報提供サービスの契約者名称等が含まれる。
【0049】
次に、目的地設定履歴および走行履歴情報を収集する(S202)。具体的には、ナビゲーション装置80に対して目的地設定履歴および走行履歴情報の送信を要求し、この要求に応じてナビゲーション装置80より送信される目的地設定履歴および走行履歴情報をプロフィール情報に含まれる機器IDと関連付けて記憶装置11に記憶させる。
【0050】
次に、行動分析更新を行う(S204)。具体的には、過去の一定期間の目的地設定履歴および走行履歴情報を、曜日別、時間帯別に分類することで、曜日別、時間帯別の行動分析を行う。例えば、月曜日〜金曜日の7時〜8時の時間帯に自宅から特定施設(例えば、会社)まで走行する複数の走行履歴が存在する場合、このサービス対象車両は、月曜日〜金曜日の7時〜8時の時間帯に、自宅から特定施設(例えば、会社)まで走行するものと分析することができる。このような行動分析が繰り返し実施され、行動分析結果が更新される。
【0051】
情報提供センタの交通情報提供装置1は、通信装置10を介してサービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報をサービス対象車両より取得し、当該走行エリア予測情報に基づいてサービス対象車両の走行エリアを予測し、予測したサービス対象車両の走行エリアを対象エリアとしてプローブ情報に基づく交通情報を生成し、当該プローブ情報に基づく交通情報により交通情報センタより取得した交通情報を補完するようにした交通情報を生成し、当該交通情報をサービス対象車両に提供する交通情報提供処理を実施する。
【0052】
図4に、この交通情報提供処理のフローチャートを示す。交通情報提供装置1の制御部13は、サービス対象車両に搭載されたナビゲーション装置80からサービス開始の要求があると、図3に示す処理と並行して、図4に示す処理を周期的に実施する。
【0053】
まず、サービス対象車両の行動分析結果を取得する(S300)。具体的には、図3に示した処理にて記憶装置11に記憶された行動分析結果を取得する。
【0054】
次に、現在の状況を特定する(S302)。具体的には、現在の曜日、時間帯、サービス対象車両の位置(緯度経度)を特定する。なお、サービス対象車両の位置は、サービス対象車両に搭載されたナビゲーション装置80より取得する。
【0055】
次に、今回の走行エリアを予測する(S304)。具体的には、サービス対象車両の行動分析結果と現在の状況に基づいて、今回、サービス対象車両が走行する可能性のある走行エリアを予測する。ここでは、サービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報として、曜日別、時間帯別に分類された過去の一定期間の目的地設定履歴および走行履歴情報と、現在の曜日、時間帯、サービス対象車両の位置(緯度経度)を取得し、今回、サービス対象車両が走行する可能性のある走行エリアを予測する。なお、本実施形態では、サービス対象車両が走行する走行経路を予測し、この走行経路を含む一定領域をサービス対象車両が走行する可能性のある走行エリアを予測する。なお、今回の走行で設定された目的地が目的地設定履歴に含まれている場合には、サービス対象車両の位置から今回の走行で設定された目的地に至る最適経路を探索し、この最適経路を含む一定領域をサービス対象車両が走行する可能性のある走行エリアとして予測する。また、サービス対象車両が走行する走行経路の予測が困難な場合には、サービス対象車両の位置を中心とする一定範囲内をサービス対象車両が走行する可能性のある走行エリアとして予測する。
【0056】
次に、予測した走行エリアについてプローブ情報に基づく渋滞情報を計算する(S306)。具体的には、走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、この抽出したプローブ情報を用いて渋滞情報を計算する。
【0057】
例えば、統合プローブデータベースのマイカープローブ情報に含まれる車両の位置および速度から、高速道路上の同一地点で、複数のプローブ車両が減速して一定車速未満となったことを判定した場合、その地点を渋滞の最後尾として特定する。また、高速道路上の同一地点で、複数のプローブ車両が加速して一定車速以上となったことを判定した場合、その地点を渋滞の先頭として特定する。
【0058】
次に、交通情報センタより提供されている渋滞情報を、プローブ情報を用いて特定した渋滞情報で補完して通知する(S308)。具体的には、交通情報センタより提供されている渋滞情報に、プローブ情報を用いて特定した渋滞情報を付加してサービス対象車両に送信する。ただし、交通情報センタより提供されている渋滞情報と同一区間の渋滞情報がプローブ情報を用いて特定された場合には、交通情報センタより提供されている渋滞情報を優先し、プローブ情報を用いて特定された渋滞情報を通知しないようにようにする。
【0059】
なお、サービス対象車両に搭載されたナビゲーション装置80は、この交通情報センタより提供されている渋滞情報に、プローブ情報を用いて特定した渋滞情報を付加した画面を生成し、表示画面上に表示させる。
【0060】
次に、予測した走行エリアについて路上の落下物の有無を判定する(S310)。具体的には、予測した走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、この抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報に基づいて路上の落下物の有無を判定する。道路上に落下物が存在する地点では、落下物との衝突を回避するため、各車両で急ブレーキ操作および急ハンドル操作が行われる。なお、プローブ情報に含まれる急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報と、車両の位置、速度から路上に存在する落下物の地点を特定することができる。
【0061】
ここで、予測した走行エリア内に路上の落下物があると判定された場合、路上の落下物(障害物)があることを表す障害物情報をサービス対象車両に送信する。
【0062】
なお、サービス対象車両に搭載されたナビゲーション装置80は、この交通情報センタより提供されている渋滞情報に、プローブ情報を用いて特定した障害物情報を付加した画面を生成し、表示画面上に表示させる。
【0063】
また、予測した走行エリア内に路上の落下物がないと判定された場合には、障害物情報を送信することなく、本処理を終了する。
【0064】
上記した構成によれば、サービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報をサービス対象車両より取得し、当該走行エリア予測情報に基づいてサービス対象車両の走行エリアを予測し、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を受信し、走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリアを対象エリアとしてプローブ情報に基づく交通情報を生成し、当該プローブ情報に基づいて生成した交通情報により、路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を補完した交通情報がサービス対象車両に通知されるので、交通情報を生成するための処理負荷を低減しつつ、路側インフラを用いて提供される交通情報を補完することができる。
【0065】
また、複数の車両に搭載され、当該搭載車両の走行状況を表すプローブ情報を収集する機器により収集されたプローブ情報を蓄積記憶したデータベースから走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置および速度を表す情報に基づいて渋滞の最後尾および渋滞の先頭を特定し、当該渋滞の最後尾および渋滞の先頭より特定される渋滞情報を含むように交通情報を生成するので、路側インフラが整備されていない場所で発生した渋滞情報をサービス対象車両に通知することができる。
【0066】
また、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報と同一区間の渋滞情報がプローブ情報を用いて特定された場合には、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報を通知し、プローブ情報を用いて特定した同一区間の渋滞情報を通知しないので、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報とプローブ情報を用いて特定された渋滞情報が相違してユーザに混乱を与えてしまうといった状況を回避することができる。
【0067】
また、複数の車両に搭載され、当該搭載車両の走行状況を表すプローブ情報を収集する機器により収集されたプローブ情報を蓄積記憶したデータベースから走行エリア予測手段により予測されたサービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報に基づいて道路上に障害物が存在する地点を推定し、当該道路上に障害物が存在する地点を表す情報を含むように交通情報が生成されるので、交通情報取得手段により取得された交通情報では通知することのできない交通情報をサービス対象車両に通知することが可能である。
【0068】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々なる形態で実施することができる。
【0069】
例えば、上記実施形態では、交通情報提供装置1からサービス対象車両に搭載されたナビゲーション装置80に交通情報を通知する構成を示したが、ナビゲーション装置に限定されるものではなく、例えば、交通情報提供サービスの契約者が所有する携帯電話や携帯端末等に交通情報を通知するように構成してもよい。
【0070】
また、上記実施形態では、プローブ情報に基づいて路上の障害物の有無を判定し、路上の障害物の有無を表す交通情報をサービス対象車両に通知する構成を示したが、このような交通情報に限定されるものではなく、例えば、プローブ情報に基づいて降雨の発生状況、スリップ発生状況等を判定し、降雨の発生状況、スリップ発生状況等を交通情報としてサービス対象車両に通知するように構成してもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、プローブ情報に含まれる車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報に基づいて道路上に障害物が存在する地点を推定したが、これらの全ての情報を用いることなく、例えば、車両の位置および急ハンドルを表す情報に基づいて道路上に障害物が存在する地点を推定するようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、交通情報センタ(VICSセンタ)より提供される交通情報に含まれる渋滞情報と同一区間の渋滞情報がプローブ情報を用いて特定された場合には、交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報を通知し、プローブ情報を用いて特定した同一区間の渋滞情報を通知しないように構成したが、例えば、交通情報センタ(VICSセンタ)より提供される交通情報に含まれる渋滞情報とプローブ情報を用いて特定した同一区間の渋滞情報の精度を比較し、精度の高い渋滞情報をサービス対象車両に通知するように構成してもよい。なお、渋滞情報の精度は、例えば、過去の実際の渋滞発生状況(渋滞発生地点、渋滞終了地点、渋滞区間長、渋滞度等)と渋滞情報の差分から特定することができる。
【0073】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、交通情報取得手段に相当し、通信装置10が通信手段に相当し、S300〜S304が走行エリア予測手段に相当し、S306〜S314が交通情報通知手段に相当する。
【符号の説明】
【0074】
1 交通情報提供装置
10 通信装置
11 記憶装置
12 表示部
13 制御部
40 運行管理装置
50 タクシープローブ装置
60 車載端末
80 ナビゲーション装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両に搭載され、当該搭載車両の走行状況を表すプローブ情報を収集する機器により収集されたプローブ情報を蓄積記憶したデータベースと、
サービス対象車両に搭載された車載器と通信する通信手段と、
前記通信手段を介して前記サービス対象車両が走行する走行エリアを予測するための走行エリア予測情報をサービス対象車両より取得し、当該走行エリア予測情報に基づいて前記サービス対象車両の走行エリアを予測する走行エリア予測手段と、
路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を受信する交通情報受信手段と、
前記走行エリア予測手段により予測された前記サービス対象車両の走行エリアを対象エリアとして前記プローブ情報に基づく交通情報を生成し、当該プローブ情報に基づいて生成した交通情報により、前記路側インフラを用いて収集された走行情報に基づいて生成された交通情報を補完した交通情報を前記サービス対象車両に通知する交通情報通知手段と、を備えたことを特徴とする交通情報提供装置。
【請求項2】
前記走行エリア予測情報には、前記サービス対象車両の過去の走行履歴が含まれており、
前記走行エリア予測手段は、前記サービス対象車両の現在の状況と前記サービス対象車両の走行履歴から前記サービス対象車両が走行する走行エリアを予測することを特徴とする請求項1に記載の交通情報提供装置。
【請求項3】
前記走行エリア予測情報には、ユーザにより目的地に設定された目的地設定履歴が含まれており、
前記走行エリア予測手段は、前記サービス対象車両の現在の状況と前記目的地設定履歴から前記サービス対象車両が走行する走行エリアを予測することを特徴とする請求項1または2に記載の交通情報提供装置。
【請求項4】
前記プローブ情報には、車両の位置および速度を表す情報が含まれており、
前記交通情報通知手段は、前記データベースから前記走行エリア予測手段により予測された前記サービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる前記車両の位置および速度を表す情報に基づいて渋滞の最後尾および渋滞の先頭を特定し、当該渋滞の最後尾および渋滞の先頭より特定される渋滞情報を含むように前記交通情報を生成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の交通情報提供装置。
【請求項5】
前記交通情報通知手段は、前記交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報と同一区間の渋滞情報がプローブ情報を用いて特定された場合には、前記交通情報取得手段により取得された交通情報に含まれる渋滞情報を通知し、前記プローブ情報を用いて特定した前記同一区間の渋滞情報を通知しないことを特徴とする請求項4に記載の交通情報提供装置。
【請求項6】
前記プローブ情報には、車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報が含まれており、
前記交通情報通知手段は、前記データベースから前記走行エリア予測手段により予測された前記サービス対象車両の走行エリア内で収集されたプローブ情報を抽出し、当該抽出したプローブ情報に含まれる前記車両の位置、速度、急ブレーキおよび急ハンドルを表す情報に基づいて道路上に障害物が存在する地点を推定し、当該道路上に障害物が存在する地点を表す情報を含むように前記交通情報を生成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の交通情報提供装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−8148(P2013−8148A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139612(P2011−139612)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】