説明

交通流計測装置および交通流計測方法

【課題】撮像手段(カメラ)の撮像画像を用いて、各種交通流を精度よく計測する。
【解決手段】通過車両を撮像する撮像手段101と、撮像画像から見かけの車両前端及び車両後端を認識する車両端認識手段102と、認識された見かけの車両前端および車両後端を路面上の位置に換算する路面位置換算手段103と、この換算結果に基づいて車両認識を行う車両認識手段104と、該車両認識手段が認識する車両の数を計測し、撮像手段の設置地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識手段106を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路上を撮像して得られる画像から走行する車両の台数、車種、時間占有率などの交通流を計測する交通流計測装置および交通流計測方法に関するものである。
なお、「交通流」とは、道路上を走行していく車両などのことであり、車両などによって発生する様々な現象を流れとしてとらえようとする際に、その対象を「交通流」と呼ぶ。
また、「交通流計測」とは、通常は、車両の通行台数、速度、車間距離、各種の占有率などを計測することである。
また、「時間占有率」とは、ある地点において、車両がどのくらいの時間割合で存在していたかを表したものであり、全く交通のないところでは時間占有率は0%、1分(60秒)のうち、6秒だけ車両が存在した場合は、時間占有率は10%となる。
【背景技術】
【0002】
例えば、特公昭58−27556号公報(特許文献1)には、「周期的な超音波を道路上方から直下に向けて送信し、その反射波の受信までの時間差で感知器直下を通過する車両の高さを計測し、車種を計測したり、また路面からの反射を認識することで車両と車両の間隔を認識して台数を計測している」従来の超音波方式の車両感知器が示されている。
【0003】
また、特開2000−163691号公報(特許文献2)には、道路上を撮像して得られた映像を画像処理することより、道路上を走行する車両の通過台数、速度、車種などの交通情報を計測する交通流計測装置であって、「道路を撮像する撮像手段と、道路上のある地点に車両検知領域を設定し、撮像手段から得た画像データを処理し、前記車両検知領域を通過した車両を検知し車両検知信号を出力する車両検知手段と、車両の進行方向に対して一定の間隔で設定された2つの車両検知領域間における車両検知信号の立ち上がり時刻と立ち下がり時刻の情報に基づいて交通流の情報を算出する算出手段とを備えた」交通流計測装置が示されている。
【0004】
そして、特開2000−163691号公報には、「2つの車両領域の一方の車両検知信号の立ち上がりから他方の車両検知信号の立ち上がりまでの時間と、一方の車両検知信号の立ち下がりから他方の車両検知信号の立ち下がりまでの時間を比較することにより、検知された領域が車両か、車両によってできた影かを判定することができるので、高精度に車両の台数を計測でき、また、車両後部の通過時間と検知ライン間距離Lより、通過車両の平均速度を計測できる」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭58−27556号公報
【特許文献2】特開2000−163691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特公昭58−27556号公報(特許文献1)に示された従来の超音波方式の車両感知器では、周期的に超音波を道路に向けて送信し、感知器直下の車両の有無を判断し、車種を決定していた。
また、「車両あり」と判断される時間がどれだけ継続するかを、何周期分(超音波方式の車両感知器が定期的に送信する超音波の周期のいくつか分)にわたって連続して検出されることで、車両が感知器の下を通過するのに要する時間を判断していた。
この方式では、車両の大小を車両の高低で見わけて簡単に通過する車両の車種を決定したり、通過する車両の台数を計測することはできるが、車両の速度を計測することができないという問題があった。
【0007】
また、特開2000−163691号公報(特許文献2)に示された交通流計測装置では、車両検知領域が固定であるため、以下の課題がある。
(A)車両検知領域が固定であるため、動画像の処理周期でしか車両の存在の有無を知りえず、超音波式車両感知器の周期的にしか車両を感知できないという問題を解決できていない。
(B)車両の台数を計測することはできるが、車高や車長を計測できるわけではない。
【0008】
この発明は、上述したような問題点を解決するためになされたものであり、路面を通過する車両の台数を精度よく認識できる交通流計測装置および交通流計測方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る交通流計測装置は、車両が通過する路面の上方に設置され、通過する車両を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像する画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識手段と、前記車両端認識手段が認識する車両の前記前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、前記後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算手段と、前の時点の画像から認識され換算された前記前端路面位置から所定の範囲にある前記前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された前記後端路面位置から所定の範囲にある前記後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識手段と、前記車両認識手段が認識する車両の数を計測して、前記撮像手段の設置地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識手段とを備えたものである。
【0010】
また、この発明に係る交通流計測方法は、車両が通過する路面の上方に設置された撮像手段によって通過する車両を撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにおいて撮像される画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識ステップと、前記車両端認識ステップで認識される車両の前記前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、前記後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算ステップと、前の時点の画像から認識され換算された前記前端路面位置から所定の範囲にある前記前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された前記後端路面位置から所定の範囲にある前記後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識ステップと、前記車両認識ステップにより認識される車両の数を計測して、前記撮像手段が設置されている地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識ステップとを有しているものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る交通流計測装置は、車両が通過する路面の上方に設置され、通過する車両を撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像する画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識手段と、前記車両端認識手段が認識する車両の前記前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、前記後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算手段と、前の時点の画像から認識され換算された前記前端路面位置から所定の範囲にある前記前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された前記後端路面位置から所定の範囲にある前記後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識手段と、前記車両認識手段が認識する車両の数を計測して、前記撮像手段の設置地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識手段とを備えたので、路面を通過する車両の台数を精度よく認識できる。
【0012】
また、この発明に係る交通流計方法は、車両が通過する路面の上方に設置された撮像手段によって通過する車両を撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップにおいて撮像される画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識ステップと、前記車両端認識ステップで認識される車両の前記前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、前記後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算ステップと、前の時点の画像から認識され換算された前記前端路面位置から所定の範囲にある前記前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された前記後端路面位置から所定の範囲にある前記後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識ステップと、前記車両認識ステップにより認識される車両の数を計測して、前記撮像手段が設置されている地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識ステップとを有しているので、路面を通過する車両の台数を精度よく認識できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1による交通流計測装置の構成を概念的に示す図である。
【図2】カメラの設置状態を示す図である。
【図3】車両の形状によって、走行中の車両の「見かけの車両前端位置」が変化することを説明するための図である。
【図4】路面位置換算手段で得られた結果を説明するための図である。
【図5】実施の形態2による交通流計測装置の構成を概念的に示す図である。
【図6】実施の形態3による交通流計測装置の構成を概念的に示す図である。
【図7】時間占有率の算出を説明するための図である。
【図8】実施の形態4による交通流計測装置の構成を概念的に示す図である。
【図9】実施の形態5による交通流計測装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態例について説明する。
なお、各図間において、同一符号は、同一あるいは相当のものであることを表す。
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1による交通流計測装置の構成を概念的に示す図であり、図1は、実施の形態1における交通流計測の処理手順も示している。
図1において、101は撮像手段(映像取得手段であるカメラを含む)、102は車両端認識手段(車両端認識部)、103は路面位置換算手段(路面位置換算部)、104は車両認識手段(車両認識部)、105は速度算出手段(速度算出部)、106は通過車両台数認識手段(通過車両台数認識部)である。
また、図2は、撮像手段101の主たる構成要素であるカメラ10の設置状態を示す図である。
【0015】
図1および図2に基づいて、本実施の形態による交通流計測置を説明する。
図2に示すように、本実施の形態では、従来の超音波方式の車両感知器に相当するセンサとして撮像手段であるカメラ10を使用し、カメラ10を道路上の通過車両を見渡せる位置に設置する。
カメラ10は、路面をまたぐように設けられた門型の構造物の上で、車両の通行区分の直上に設置するのが望ましいが、路側に設けられた直柱上またはF型柱によって、路側から道路上へ乗り出した位置への設置でもかまわない。
この状態で、カメラ10が撮影できる範囲をカメラ10の至近の地点から少し遠方まで見渡せるように、カメラの角度を設定する。つまり、センサ(即ち、カメラ10)直下を走行する車両が数秒間程度以上撮像できるように、カメラ10を設置する。
なお、図2において、11はカメラ10が設置される門型の構造物、12はカメラ10が撮像する車両、太い実線部分は、カメラ10から車両12が存在しているように見えている路面部分である。
【0016】
次に、図1に基づいて、本実施の形態による交通流計測置動作について説明する。
撮像手段101は、車両12がカメラ10の直下を通過して、カメラ10の画角内に進入してくると、カメラ10によって車両12の映像を取得する。
撮像手段101による車両映像の取得は、動画像として連続的に行われるが、以下では取得された映像(即ち、画像)1枚ずつに対して行われる処理について説明する。
撮像手段101のカメラ10で取得された映像(画像)は、車両端認識手段(車両端認識部)102によって、見かけの車両前端(図2のF′)と見かけの車両後端(図2のE)の検出処理を行う。
なお、車両の前端あるいは後端は、車両の最も前方あるいは後方の端の位置であるべきであるので、厳密にそうなっていない場所については、「見かけの」という言葉で表現している。
図2において、“E”は見かけの車両後端であり、かつ路面上の点であるが、“F′”は見かけの車両前端で、“F”はそれが路面上の位置であったときの点である。
【0017】
車両端検出のための画像処理には、例えば、道路面を背景にして変化している部分、即ち、車両の端を検出する処理を実行すればよい。
見かけの車両前端は、運転席上部の屋根の位置(図2のF′、図3のF2′)になったり、ボンネットの先端上部の位置(図3のF1′)になったりする。
なお、図3は、車両の形状によって、走行中の車両の「見かけの車両前端位置」が変化することを説明するための図である。
例えば、図3に示したような形状の車両では、カメラ10に近い位置を車両12が走行中は、ボンネット先端上部を「見かけの車両前端」と認識し、車両12がカメラ10から遠ざかるにつれて、ある位置から運転席上部の屋根の位置を「見かけの車両前端」と認識するようになる。
「見かけの車両後端」は、車両後部バンパの下端になるが、通常は車両の下影(即ち、空が明るい場合に、車両の下にできる「車両とほぼ同じ大きさの影」の領域)が路面上にあって、比較的容易に識別可能である。
従って、この位置(図2のE)が見かけの車両後端となる。
なお、見かけの車両前端と車両後端は、画像における座標として認識される。見かけの車両前端が存在する座標を前端座標と呼び、車両後端が存在する座標を後端座標と呼ぶ。
【0018】
この段階では車両の高さは不明であるので、見かけの車両前端の位置は正確にはわからない。
路面位置換算手段(路面位置換算部)103では、前端座標と後端座標を、それぞれ同じ座標に存在する路面上の位置である前端路面位置と後端路面位置に換算する。
路面上の位置は、カメラ10の設置地点からの距離が予め分かっており、交通流計測装置はカメラ10の設置地点からの距離により路面位置を処理する。
【0019】
車両認識手段(車両認識部)104は、路面位置換算手段(路面位置換算部)103で得られた前端路面位置と後端路面位置をカメラ10直下の位置からの距離で表現して、前の時点での画像から認識され換算されたものから所定範囲の距離にあるものを同一車両と判断して、時間の経過にともなう変化すなわち軌跡を生成する。カメラ10の直下ではない地点からの距離で表現してもよい。
前端路面位置の軌跡を前端の軌跡と呼び、後端路面位置の軌跡を後端の軌跡と呼ぶ。
速度算出手段(速度算出部)105は、前端の軌跡の傾きから車両前端の見かけの速度(車両前端速度)を求め、後端の軌跡のから車両後端の見かけの速度(車両後端速度)を求める。
なお、軌跡が曲線の場合は、その接線の傾きから速度を求める。車両を前から撮影する場合は、車両前端速度の方が小さくなるので、車両前端速度または車両後端速度のどちらか小さい方から車両の速度を求める。車両の速度や車高などを求めない場合は、車両速度検出手段(速度算出部)105は、無くてもよい。
【0020】
図4は、路面位置換算手段(路面位置換算部)103および車両認識手段(車両認識部)104で得られた結果を示す図であり、カメラ10からの距離を縦軸に、時刻を横軸にとってプロットした一例を表している。
なお、車両認識手段(車両認識部)104は、異なる時点での画像から認識され換算された前端路面位置および後端路面位置について、同一車両のものであるかどうかを判断すればよく、図4のような軌跡をプロットしなくてもよい。
同一車両と判断するのは、ある時点の画像から認識され換算された前端路面位置(後端路面位置)と、その直前または所定時間内の画像からの前端路面位置(後端路面位置)とが所定の範囲内にある場合を同一車両と判断する。
所定の範囲の幅は、路面位置に応じて可変にするなどしてもよく、想定される見かけの速度に対して適切に決める。
また、所定の範囲の幅は、画像上での座標の変化に対して決めてもよい。
その場合でも、前端路面位置(後端路面位置)が所定の範囲にある場合を、同一車両と認識することになる。
【0021】
図4において、30は、カメラ直下の位置である座標原点である。
カメラ10の直下は、画角外で見えない一般的なカメラ配置を想定している。
そのため、カメラ10に映る位置は、カメラ10の撮像範囲内となる地点(位置31)から遠方となる。
図4に示した線32、線34は、「見かけの車両前端」である前端路面位置の時間経過による変化をプロットした前端の軌跡である。
線33、線35は、「見かけの車両後端」のプロット結果である後端の軌跡である。
【0022】
車両10を後方から撮像することを想定したカメラの配置では、より傾きの大きい(見かけの速度が速い)「見かけの車両前端」と傾きの小さい(見かけの速度が遅い)「見かけの車両後端」が対になって表現される。
速度算出手段(速度算出部)104で算出される「見かけの速度」は、この線32、線33、線34、線35の傾きに相当する。
車両認識手段(車両認識部)104は、傾きが大きい線32とその後側(カメラに近い側)で隣接する傾きが小さい線33とを同一車両と認識する。そして、その後の大きい線34と傾きの小さい線35を、後を走行している他の車両のものと認識する。
なお、車間距離が極度に近い場合などで、前端または後端のどちらかが認識できない場合は、前端または後端だけでも1台の車両と認識する。
また、片端(前端または後端)が一時的に認識できない場合は、この片端が認識出来るときに同一車両と認識できる他端(片端が前端の場合は後端、後端の場合は前端)が同一のものは、同一車両と認識する。
【0023】
最後にこれらの結果(即ち、「見かけの車両前端」、「見かけの車両後端」を交互に一つづつ対にして車両を認識した結果)を総合し、通過車両台数認識手段(通過車両台数認識部)106で車両の通過台数を計測する。
図4では、2台分の「傾きの大きい線と傾きの小さい線の対」が確認できるので、2台の通過車両があったと認識されることとなる。
車両端認識手段102で車両の前端および後端を抽出する際に、前端と後端の間の画像から抽出した前端と後端が同一車両のものであるかどうかを認識し、後の処理で利用できるようにデータとして出力するようにしてもよい。
車両認識手段(車両認識部)104での車両の認識では、車両の持つ物理的な制約を利用してもよい。
例えば、傾きが急すぎて車両の高さの制約を超える前端の軌跡を無視する。前端の軌跡と後端の軌跡の間の距離から計算される車両の長さが制約を越える場合は、2台の車両として認識する。
【0024】
なお、図4の見かけの車両前端や見かけの車両後端のプロットは直線であり、この間の速度変化がないように見えるが、一般的には車両の加減速に従って曲線を描く。
また、図4では、説明を簡単にするために直線で表現したもので、必ずしも一定速度で走行している車両だけを対象にしているわけではないことはいうまでもない。
【0025】
以上説明したように、本実施の形態による交通流計測装置は、車両12が通過する路面の上方に設置され、通過する車両を撮像する撮像手段101と、撮像手段101が撮像する画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識手段102と、車両端認識手段102が認識する車両の前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算手段103と、前の時点の画像から認識され換算された前端路面位置から所定の範囲にある前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された後端路面位置から所定の範囲にある後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識手段104と、車両認識手段104が認識する車両の数を計測して、撮像手段101の設置地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識手段106とを備えている。
【0026】
また、本実施の形態による交通流計測方法は、車両が通過する路面の上方に設置された撮像手段によって通過する車両を撮像する撮像ステップと、撮像ステップにおいて撮像される画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識ステップと、車両端認識ステップで認識される車両の前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算ステップと、前の時点の画像から認識され換算された前端路面位置から所定の範囲にある前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された後端路面位置から所定の範囲にある後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識ステップと、車両認識ステップにより認識される車両の数を計測して、撮像手段が設置されている地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識ステップとを有している。
【0027】
特公昭58−27556号公報に示されているような超音波式の車両感知器は、一定時間ごとに車両の存在を確認して車両を認識するので、極端に高速で走行する車両や短い車間距離で走行している車両は、誤って2台を1台と認識する可能性がある。
また、特開2000−163691号公報(特許文献2)に示された交通流計測装置では、車両検知領域が固定であるため、以下の課題がある。
(A)車両検知領域が固定であるため、動画像の処理周期でしか車両の存在の有無を知りえず、超音波式車両感知器の周期的にしか車両を感知できないという問題を解決できていない。
(B)車両の台数を計測することはできるが、車高や車長を計測できるわけではない。
【0028】
さらに、速度の精度もよくない。
検知ライン間の距離が例えば50mとすると、時速60kmの車両は3秒で通過する。
毎秒30コマの通常TV方式で画像を撮像すると、複数の検知ライン間を走行するのに要するコマ数は90コマ程度になる。実際の通過時間が同じであっても、撮像する時刻との関係でコマ数は変動する。
2個の検知ラインで1コマづつ合計で2コマの誤差が発生しうる。距離が50mで時速60kmの場合には、90コマに対する2コマすなわち2%程度の誤差が存在する。時速が早くなり、距離が短くなれば、誤差の割合は増大する。
【0029】
本実施の形態による交通流計測装置では、車両の前端の軌跡と後端の軌跡を求めて車両の隣接する前端の軌跡と後端の軌跡の対を1台の車両と認識するので、渋滞している場合や追い越しが発生している場合でも、車両台数を従来よりも正確に数えることができる。
また、車両の速度を測定する場合も、画像の解像度の精度で車両の前端と後端の位置を把握するので、速度の測定精度も向上する。
【0030】
実施の形態2.
図5は、実施の形態2による交通流計測装置の構成を概念的に示す図であり、実施の形態2における交通流計測の処理手順も示している。
本実施の形態による交通流計測装置は、実施の形態1による交通流計測装置において、更に、速度算出手段(速度算出部)105の出力を、車高算出手段(車高算出部)107に出力するように構成したことである。
もともと、車両前端も車両後端も同一の車両を見ているものであるので、本来の速度は同一である。
車両前端の速度が車両後端の速度よりも速い理由は、「見かけの車両前端」の本当の位置が、ボンネットの先端であったり運転席の屋根の先端であったりして、実際には路面からの高さがあるにもかかわらず、これを無視したことに原因がある。
【0031】
車高算出手段107は、この見かけの速度の大小から見かけの車両前端部が、本来どの高さになったのかを算出するもので、以下の式に従って算出する。
tc=h(1−v/vc)
ここで、tcは見かけの車両前端の本来の高さ、hはカメラの設置高さ、vは見かけの車両後端速度、vcは見かけの車両前端速度である。
車両は、たいていの場合は箱形の形状をしているので、ある程度遠方にある車両の見かけの車両前端部の高さは、ほぼ車両の高さを表していると考えられる。
車高は車種により決まるので、算出した車高から車種を決定することもできる。
ここでは、車両を後から撮影する場合で説明したが、前から撮影する場合には、見かけの速度が速くなるのは車両後端の方になるので、車両前端と車両後端の速度を入れ替えて車高を算出する。
【0032】
実施の形態3.
図6は、実施の形態3による交通流計測装置の構成を概念的に示す図であり、実施の形態3における交通流計測の処理手順も示している。
実施の形態2による交通流計測装置の構成を示した図5との違いは、速度算出手段(速度算出部)105の出力を、時間占有率算出手段(時間占有率算出部)108と車長算出手段(車長算出部)109にも出力するようにしたことである。
時間占有率算出手段(時間占有率算出部)108は、速度算出手段(速度算出部)105が認識する見かけの車両前端部と見かけの車両後端部の速度を元にして、カメラ直下の地点を当該車両が通過するのに要した時間(存在時間と呼ぶ)を算出する。
車長算出手段109は、時間占有率算出手段(時間占有率算出部)108が算出する存在時間に速度算出手段(速度算出部)105が算出する時速を掛けて車長を算出する。
【0033】
図7は、「時間占有率」の算出を説明するための図である。
カメラ直下の位置30は、カメラ10の画角外であり、実際に車両の監視はできないが、画角内に入ってからの様子から、カメラ直下の通過時刻を推定することが可能である。
具体的には、画角内のどこかの瞬間における前端または後端の位置と、算出された速度から、カメラ直下位置で前端または後端が通過する時刻を計算で求める。
同一車両と判断する前端と後端の通過時刻の差が、カメラ直下の位置での車両の存在時間である。
カメラ直下の場合に限り、車両のどの高さの位置を見込んでいるかということは関係なくなって、実際の通過時刻と一致する。
図7のカメラ直下の位置での時間軸に平行な直線上における範囲36や範囲37は、2台の車両がそれぞれカメラ直下を通過するのに要した時間を表現しており、これは即ちカメラ設置位置の地点における車両の存在時間割合を直ちに算出可能であることを示している。
【0034】
この値(即ち、カメラ設置位置の地点における車両の存在時間割合)は、そのまま「時間占有率」であり、周期的に超音波を発信する超音波方式の車両感知器がサンプリング周期単位でしか時間割合を認識できないのに比べて、より詳細な時間比率を算出することが可能である。
本実施の形態においては、時間占有率と車長の両方を算出したが、どちらかだけを算出してもよい。
【0035】
以上説明したように、本実施の形態による交通流計測装置は、所定の時点での前端路面位置と車両前端速度とから撮像手段101の下の位置での車両の前端の通過時刻を求め、所定の時点での後端路面位置と車両後端速度とから撮像手段101の下の位置での車両の後端の通過時刻を求め、同一車両の前端の通過時刻から後端の通過時刻までの時間が、全経過時間に占める比率を時間占有率として算出する時間占有率算出手段を備えている。
従って、本実施の形態によれば、正確な時間占有率を算出することが可能であり、道路の混雑具合などをより詳細に知ることができる。
【0036】
実施の形態4.
図8は、実施の形態4による交通流計測装置の構成を概念的に示す図であり、実施の形態4における交通流計測の処理手順も示している。
前述した実施の形態3による交通流計測装置の構成を示した図6との違いは、車高算出手段(車高算出部)107が通過する車両の車高を算出したことの情報、時間占有率算出手段(時間占有率算出部)108が時間占有率を算出したことの情報、あるいは車長算出手段(車長算出部)109が通過する車両の車長を算出したことの情報を元にして、撮像手段101が撮像する車両10の画像(映像)を蓄積する映像蓄積手段(映像蓄積部)110を更に設けたことである。
なお、前記以外の時点での画像を保存するようにしたり、周期的に画像を保存したり、ユーザからの指示があった時点の画像を保存したりするようにしてもよい。
なお、映像蓄積手段(映像蓄積部)110に蓄積された画像(映像)は、蓄積された画像(映像)を再生することが可能である。
【0037】
超音波方式の車両感知器は、どのような車両を感知したものであるかを確認するすべがないが、本発明ではセンサをカメラとしたため、そのときの映像(即ち、車両認識手段104が通過する車両を認識したときときの車両の映像、車高算出手段107が通過する車両の車高を算出したときの車両の映像、あるいは時間占有率算出手段108が時間占有率を算出したとき車両の映像報)を蓄積すれば、簡単にどの車両を計測したのかを確認することが可能である。
更に、より正確な交通流データの取得が必要な場合は、映像蓄積手段(映像蓄積部)110に蓄積された画像(映像)と照合することによって、計測した交通流データ(即ち、車両台数、車高、時間占有率)の信頼性を確認することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態による交通流計測装置は、実施の形態1〜実施の形態3による交通流計測装置において、撮像手段101が撮像する画像(映像)を記録し、記録した画像を再生できる画像蓄積手段(映像蓄積部)110を備えている。
また、画像蓄積手段110は、車高算出手段107が車両の車高を算出したとき、時間占有率算出手段108が時間占有率を算出したとき、あるいは車長算出手段(車長算出部)109が通過する車両の車長を算出したときに、撮像手段101が撮像する車両の画像が記録される。
従って、本実施の形態によれば、車高算出手段107が車両の車高を算出したときの車両の画像(映像)、時間占有率算出手段108が時間占有率を算出したときの車両の画像(映像)、あるいは車長算出手段(車長算出部)109が通過する車両の車長を算出したときの車両の画像(映像)を容易に確認することが可能である。
【0039】
実施の形態5.
図9は、実施の形態5による交通流計測装置の構成を説明するための図である。
前述した実施の形態1〜実施の形態4では、撮像手段としてのカメラは、1台のカメラ10だけであり、カメラ10は一方向を監視しており、車両の後方からだけ交通流を計測することを考えていた。(車両の前方から計測する場合でも、遠去、近接の関係が逆転するだけであり、本質は変わらない)
しかし、通過車両台数、車高、時間占有率などの交通流を算出する地点がカメラの設置地点であることを考慮すると、その地点の両側(即ち、前方側および後方側)を監視対象範囲として処理を行い、それぞれの結果をつき合わせて(照合して)計測値を算出する方が、より算出値の正確性が高まる。
【0040】
照合の具体的な内容としては、後方から撮影したときの前端の高さAと、前方から撮影したときの後端の高さBがあったとき、例えば、AとBとの計測値が著しく(例えば0.5メートル程度以上)食い違った場合、どちらか高い方の値を正しい車高として採用する、というようなことが考えられる(トラックの運転台前縁と低い荷台の後端の組合せや、逆にコンテナ運搬車のような運転台側が低い場合のような状況を想定)。
また、道路の方向によって、朝夕の太陽高度の低い時間帯で逆光の影響できれいに車両を撮影することができなくなるような状況でも、両方向からの映像を照合し、外乱(この場合は太陽光)の影響の少ない方のデータを採用するなどの使い方も考えられる。
このように、両方向で撮像した画像を処理して得られる結果を利用することにより、交通流計測の精度が向上できる。
【0041】
本実施の形態は、このような考え方に対応するためのもので、カメラを前方向きと後方向きの2式用意してそれぞれに同じ処理を実行させ、同一の車両と思われるデータをそれぞれ照合することで、より高精度な計測を可能とするものである。
例えば、車高を算出する場合、車両前端を使って車高を求める処理と車両後端(車両後端の上部)を使って車高を求める処理を2回行い、それぞれの処理で得られる結果を照合することにより、より正確な(高精度な)計測が可能となる。
【0042】
なお、図9において、10は、門型構造物11の頂上部に設置され、道路を走行する車両12を後方から撮像する第一の撮像手段である第一のカメラである。
また、20は、カメラ10と接近して柱11の頂上部に設置され、道路を走行する車両13を前方から撮像する第二の撮像手段である第二のカメラである。
【0043】
以上述べたように、本実施の形態による交通流計測装置は、実施の形態1〜3の交通流計測装置において、撮像手段101は、通過する車両を後方から撮像する第一の撮像手段(カメラ10)と通過する同一車両を前方から撮像する第二の撮像手段(カメラ20)を有し、第一の撮像手段(カメラ10)から得られる画像に基づいて得られる第一のデータと前記第二の撮像手段(カメラ20)から得られる画像に基づいて得られる第二のデータを照合する機能を備えている。
また、前記第一のデータおよび第二のデータは、通過する車両の数、車両高さ、あるいは時間占有率である。
従って、本実施の形態によれば、第一の撮像手段から得られる画像に基づいて得られる第一の撮像手段から得られる画像に基づいて得られる第一のデータと第二の撮像手段から得られる画像に基づいて得られる第二のデータを照合してどちらか妥当と思われる方を採用することが可能であり、通過する車両の数、車両高さ、あるいは時間占有率などの交通流をより正確に計測することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
この発明は、撮像して得られる画像を用いて、走行する車両の台数、車種、時間占有率などを精度よく計測できる交通流計測装置の実現に有用である。
【符号の説明】
【0045】
10 第一のカメラ 11 門型構造物
12 車両 13 車両
20 第二のカメラ 101 撮像手段
102 車両端認識段 103 路面位置換算手段
104 車両認識手段 105速度算出手段
106 通過車両台数認識手段 107 車高算出手段
108 時間占有率算出手段 109 車長算出手段
110 映像蓄積手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が通過する路面の上方に設置され、通過する車両を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像する画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識手段と、
前記車両端認識手段が認識する車両の前記前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、前記後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算手段と、
前の時点の画像から認識され換算された前記前端路面位置から所定の範囲にある前記前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された前記後端路面位置から所定の範囲にある前記後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識手段と、
前記車両認識手段が認識する車両の数を計測して、前記撮像手段の設置地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識手段とを備えた交通流計測装置。
【請求項2】
前記前端路面位置の時間の経過にともなう変化から求めた車両前端速度または前記後端路面位置の時間の経過にともなう変化から求めた車両後端速度のどちらか小さい方を車両の速度とする車両速度算出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の交通流計測装置。
【請求項3】
前記車両前端速度vcと、前記車両後端速度v、前記撮像手段の設置高さをhとから、車両高さtcを算出する車高算出手段とを備えたことを特徴とする請求項2に記載の交通流計測装置。
【請求項4】
所定の時点での前記前端路面位置と前記車両前端速度とから前記撮像手段の下の位置での車両の前記前端の通過時刻を求め、所定の時点での前記後端路面位置と前記車両後端速度とから前記撮像手段の下の位置での車両の前記後端の通過時刻を求め、同一車両の前記前端の通過時刻から前記後端の通過時刻までの時間が、全経過時間に占める比率を時間占有率として算出する時間占有率算出手段を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の交通流計測装置。
【請求項5】
所定の時点での前記前端路面位置と前記車両前端速度とから前記撮像手段の下の位置での車両の前記前端の通過時刻を求め、所定の時点での前記後端路面位置と前記車両後端速度とから前記撮像手段の下の位置での車両の前記後端の通過時刻を求め、同一車両の前記前端の通過時刻から前記後端の通過時刻までの時間に車両の前記速度を掛けて車長を求める車長算出手段を備えたことを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項に記載の交通流計測装置。
【請求項6】
前記撮像手段が撮像する画像を記録し、記録した画像を再生できる画像蓄積手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の交通流計測装置。
【請求項7】
車両が通過する路面の上方に設置され、前記撮像手段とは反対方向に通過する車両を撮像する第二の撮像手段を備え、
前記第二の撮像手段が撮像した画像を処理した結果も用いることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の交通流計測装置。
【請求項8】
車両が通過する路面の上方に設置された撮像手段によって通過する車両を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップにおいて撮像される画像における車両の前端および後端が存在する座標である前端座標および後端座標を認識する車両端認識ステップと、
前記車両端認識ステップで認識される車両の前記前端座標を同じ座標に存在する路面上での位置である前端路面位置に、前記後端座標を対応する同じ座標に存在する路面上での位置である後端路面位置に換算する路面位置換算ステップと、
前の時点の画像から認識され換算された前記前端路面位置から所定の範囲にある前記前端路面位置を同一車両のものと認識し、前の時点の画像から認識され換算された前記後端路面位置から所定の範囲にある前記後端路面位置を同一車両のものと認識する車両認識ステップと、
前記車両認識ステップにより認識される車両の数を計測して、前記撮像手段が設置されている地点を通過する車両の数として認識する通過車両台数認識ステップとを有する交通流計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−224895(P2010−224895A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71821(P2009−71821)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】