説明

人員拘束装置用インフレータ

【課題】飛翔体による破裂板の破壊とガス流出経路の維持が容易なインフレータの提供。
【解決手段】加圧ガスが充填されたボトル部12と、点火器26が収容され、ガス排出口22を備えたディフューザ部20の間が破裂板19で閉塞され、点火器26と破裂部材19との間にガス流出経路24が形成され、流出経路24には飛翔体30が配置されている。飛翔体30は、開口部に近い側の周壁部が外側に拡径された弾性を有するフレアー部を有し、飛翔体30は、ガス流出経路24の壁面によりフレアー部が押し縮められるようにして固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載されるエアバッグ装置等の人員保護装置に用いられるインフレータに関する。
【背景技術】
【0002】
加圧ガスのみを使用したインフレータでは、ガスを封入するボトル部分の開口部が破裂部材で閉塞されており、作動時には何らかの方法で破裂部材を破壊してガスを排出する機構を採用している。破裂部材を破壊する方法としては、点火器からの燃焼生成物(高温ガスや火炎、衝撃波等)を直接破裂部材に当てる方法、飛翔体を介在させて、燃焼生成物によって飛翔体を飛翔させ、破裂部材に当てる方法等が知られている。
【0003】
特許文献1には、飛翔体120を飛翔させて、ハウジング48の反対側に存在する破裂板62を破壊する機構のインフレータが開示されている。飛翔体120は、加圧ガスが充填されたハウジング48内において、破裂板62に対向する位置に配置されている。飛翔体120は、端部180が尖っており、その反対側端部にはスロット200が形成され、ガイド82の中にはめ込まれている。飛翔体120は、イグナイター104の作動で飛翔し、破裂板62を破る。
【0004】
特許文献1の構造では、飛翔体120が加圧状態のハウジング48内部に配置されており、ガスのシールが必要となるため、ガイド82に対して飛翔体端部180を溶接しなければならない(溶接186)。また、加圧ガスの充填圧に打ち勝って、さらに溶接186の強度に打ち勝って飛翔体120を飛翔させ、破裂板62を破壊する必要があるため、点火器104の出力は非常に大きなものにしなければならない。
【0005】
また特許文献1では、飛翔体120に形成されたスロット200は、飛翔体120がガイド82から抜け出るときに、ガスの通り道になるものである。そして、図7に見られるように、飛翔体120がガイド82から完全に放出されたとき、スロット200側が拡張しているが、ガスの流れはイグナイター104(及び106)側からディフューザ部64に対して一方通行であること、ディフューザ部64の大きさは飛翔体120に比べて十分大きいことから、飛翔体120によってディフューザ部64内のガス流路が閉塞されるという問題が生じる余地はない。
【特許文献1】米国特許第5,690,357号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、飛翔体で破裂部材を破裂させるタイプのガス発生器であり、飛翔体の取り付け及び固定が容易であり、作動後には、飛翔体で確実に破裂部材を破壊でき、かつ作動後のガス流出経路が確実に維持できるインフレータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(請求項1)
本発明は、課題の解決手段として、
一端側が閉塞され、他端側に開口部を持ち、内部に加圧ガスが充填されたボトル部と、前記ボトル部の開口部側に固着された、点火器が収容され、かつガス排出口を備えたディフューザ部とを有している人員拘束装置用インフレータであり、
前記ボトル部と前記ディフューザ部の間が破裂部材で閉塞されており、
前記ディフューザ部内にガス流出経路が形成され、前記流出経路には飛翔体が配置されており、
前記飛翔体が、カップ形状で、開口部に近い側の周壁部が外側に拡径されたフレアー部を有し、少なくとも前記フレアー部が弾性を有するものであり、
前記飛翔体が、底面が前記破裂部材側に位置し、開口部側が前記点火器側に位置するように配置され、前記ガス流出経路の壁面により前記弾性を有するフレアー部が押し縮められるようにして固定されている、インフレータを提供する。
【0008】
ディフューザ部内のガス流出経路は、破裂部材で閉塞された箇所からガス排出口に至るまでの経路であり、ディフューザ部の内壁面により形成されているものである。また、点火器がガス流出経路の一部を形成していてもよい。ガス流出経路は、ディフューザ部内に他の部材を配置して、前記部材により、ガス流出経路の一部又は全部が形成されるようにしてもよい。飛翔体は、ガス流出経路の内の破裂部材に面した空間に配置されている。
【0009】
飛翔体は、底面、周壁部及び開口部を有するカップ形状であり、更に開口部に近い側の周壁部が外側に拡径されたフレアー部を有している。飛翔体全体又は少なくともフレアー部は弾性を有している。前記した弾性を付与するためには、金属や樹脂等の弾性を有する部材で形成する方法、フレアー部に相当する周壁部において、周方向に均等間隔をおき、かつ軸方向に複数のスリットを形成する方法等を適用できる。
【0010】
飛翔体は、底面が破裂部材側に位置し、開口部側が点火器側に位置するように配置されており、フレアー部がガス流出経路の壁面により押し縮められるようにして(即ち、フレアー部がガス流出経路の壁面を押すようにして)固定されている。このようにして、フレアー部とガス流出経路が圧接状態にあるため、飛翔体が流出経路内の所定位置で固定されている。よって、作動時において、流出経路から飛翔体が飛び出したときは、押し縮められていたフレアー部が外側に拡がって、流出経路の内径よりも大きくなるので、飛び出した飛翔体が排出されるガス流によって逆戻りし、流出経路を塞ぐことが防止される。
【0011】
飛翔体は、点火器の作動時により発生する燃焼生成物を効率よく利用できるように、点火器の作動部(点火薬を収容した部分)をフレアー部で覆うように配置されることが好ましい。
【0012】
(請求項2)
本発明は、課題の解決手段として、前記ガス流出経路内には、ガスの流出を阻害しないように筒状部が形成され、前記筒状部内には、前記飛翔体が配置されており、前記飛翔体が、そのフレアー部が前記筒状部の内壁面に圧接されて固定されている、請求項1記載のインフレータを提供する。
【0013】
(請求項3)
本発明は、課題の解決手段として、前記筒状部が、周壁面においてガスを流出させるためのスリット又は穴を有している、請求項2記載のインフレータを提供する。
【0014】
ガス流出経路内に筒状部を形成することにより、前記筒状部と飛翔体(特にフレアー部)との寸法関係を調整しておけば、飛翔体の固定が容易にできるほか、前記筒状部を飛翔体の誘導路として機能させれば、破裂部材の破壊も容易にできるようになる。
【0015】
筒状部は、ディフューザ部の内壁面と一体に形成することができるほか、別途、ガス流出経路内に筒状部材を配置して、それを筒状部とすることもできる。
【0016】
筒状部は、ガスの流れを阻害しないように形成するが、ガスを流出させるためのスリットや穴を形成してもよいし、スリットや穴を有する筒状部材を用いることもできる。
【0017】
(請求項4)
本発明は、課題の解決手段として、前記ガス流出経路には、前記飛翔体の底面に近接した位置において、前記飛翔体が軸方向に移動することを防止するための突起が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のインフレータを提供する。
【0018】
(請求項5)
本発明は、課題の解決手段として、前記ガス流出経路には、前記飛翔体の周壁面に近接した位置において、前記飛翔体が軸方向に移動することを防止するための凹凸が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のインフレータを提供する。
【0019】
飛翔体のフレアー部による固定に加えて、突起や凹凸を形成することにより、作動前において、特に飛翔体の軸方向への移動防止効果を高めることができる。
【0020】
(請求項6)
本発明は、課題の解決手段として、前記飛翔体が、内部に伝火薬が収容されたものである、請求項1〜4のいずれか1項記載のインフレータを提供する。
【0021】
飛翔体に伝火薬を収容したものを用いることにより、次の作用(I)、(II)をすることができる。
【0022】
(I)点火器の作動で生じた燃焼生成物により、伝火薬ケースが飛ばされ、破裂部材に衝突して前記破裂部材が破壊される。また同時に伝火薬も燃焼生成物によって着火される。
【0023】
(II)前記(I)で破裂部材が破壊された後、伝火薬ケースがボトル内部に飛び出す。そして伝火薬ケース内の伝火薬は燃焼状態であるため、ボトル内部の加圧ガスが加温される。
【0024】
伝火薬ケースに収容される伝火薬は、粉状のものでもよいし、成形体でもよいし、防湿性を確保するため、粉又は成形体がアルミニウムや樹脂等の容器に充填されたものでもよい。
【0025】
伝火薬としては、従来から使用されているボロン硝石(B/KNO)や、RDX(ヘキサヒドロトリニトロトリアジン)、PETN(ペンタエリスリトールテトラニトレート)、TAGN(トリアミノグアニジンニトレート)、HMX(シクロテトラメチレンテトラ−ニトラミン)、CL−20(ヘキサニトロヘキサアザイソブルツイタン)、NTO(ニトロトリアゾロン)、TNAZ(トリニトロアゼテイジン)、MTV(マグネシウム/テフロン(登録商標)/バイトン)およびそれらの混合物を用いることができる。
【0026】
また伝火薬として、燃料としてニトログアニジン、酸化剤として塩基性硝酸銅あるいは硝酸ストロンチウム、バインダーとしてカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩を用いたものを使用することもできる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のインフレータは、作動時において、飛翔体により破裂部材が破壊されてガス流出経路が開放された後、飛翔体のフレアー部の作用により、飛翔体が飛び出した後のガス流出経路が閉塞されることがなく、ガス流出経路が確実に維持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
(図1のガス発生器)
以下、図面により本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明のガス発生器10の長さ方向への断面図である。図2(a)は、飛翔体の平面図、図2(b)は、伝火薬を有する飛翔体の軸方向断面図である。
【0029】
ガス発生器10は、ボトル部12とディフューザ部20からなり、ボトル部12は一端側に開口部14を有し、他端側は閉塞されている。内部空間13には、ヘリウム、アルゴン、窒素等のガスが50,000kPaの充填圧力で充填されている。ボトル部12は幅方向の断面が円形であり、開口部14も同様に円形である。
【0030】
ボトル部12の開口部14側には、ディフューザ部20が溶接されている。ディフューザ部20はディフューザハウジング21により外殻が形成され、作動時に加圧ガスを外部に放出するためのガス排出口22を有している。
【0031】
ボトル部12の開口部14側は、ディフューザ部20に溶接固定された破裂板19で閉塞されている。これにより作動前においては、ボトル部12の内部空間13は高圧の気密状態に維持されている。
【0032】
ディフューザ部20には、着火部26aに点火薬を備えた公知の点火器26が収容固定されている。ディフューザ部20内において、破裂板19で閉塞された箇所からガス排出口22までの空間がガス流出経路24となる。
【0033】
ガス流出経路24内には、ディフューザ部20の内壁と一体になった筒状部27が形成されており、内部に飛翔体30が配置されている。筒状部27で囲まれた空間が、飛翔体30の収容空間であり、作動後にはガス流出経路24の一部となる空間である。
【0034】
筒状部27は、点火器26側の開口部周壁において、周方向に等間隔で、かつ軸方向に三角形や四角形等の切り欠き部が形成されたものである。前記切り欠き部が形成されていない周壁27aは点火器の着火部26aを完全に覆うような位置まで延びているが、前記切り欠き部が形成されている周壁27bは、着火部26aを半分程度覆う長さになっている。
【0035】
飛翔体30は、図2(a)に示すように、本体部31と複数のスリットで分割されたフレアー部32を有しており、インフレータ10に取り付ける前の状態では、フレアー部32の外径は本体部31の外径よりも大きくなっている。なお、フレアー部32は分割されていなくてもよい。飛翔体30は、樹脂又は金属からなり、弾性を有するものである。
【0036】
飛翔体30は、底面31aが破裂板19に正対し、フレアー部32が着火部26aを包囲するようにして嵌め込まれており、更に図1と図2(a)の対比から理解されるように、フレアー部32が筒状部27の内壁面により押し縮められた状態で嵌め込まれている。
【0037】
底面31aは、ディフューザ部20の破裂板19に近接した位置に形成されている環状突起25に当接されており、破裂板19には接触していない。底面31aと突出部25の当接状態は、図1のようなものに限定されず、例えば、底面31aの周縁に本体部31と一体の樹脂製リム(突出部)を形成し、樹脂製リムと環状突起25を当接させるようにしてもよい。
【0038】
飛翔体30は、図2(a)に示すような外観で、内部が中空のものでもよいし、図2(b)に示すような内部に伝火薬が収容されたものを用いることもできる。
【0039】
図2(b)に示す飛翔体30は樹脂製のものであり、本体部31とフレアー部32を有し、本体部31とフレアー部32の間が蓋33で閉塞されており、内部空間(伝火薬収容室)34に図示していない伝火薬が充填されている。蓋33は中央部に開口部35を有しており、開口部35は薄いアルミテープ36で閉塞されている。
【0040】
次に、図1のインフレータ10を備えたエアバッグ装置の動作について説明する。なお、飛翔体30として、図2(b)に示すような伝火薬が収容されたものを用いた。
【0041】
車両が衝撃を受けたとき、車載センサやコントロールユニットから着火電流が点火器26に流れ、点火器26が作動する。点火器26の着火部26aに充填された着火薬が、電流によって発火し、燃焼生成物を発生させる。
【0042】
このとき燃焼生成物は、飛翔体30の蓋33に衝突して、飛翔体30全体を破裂板19側に飛翔させる。着火部26aは、フレアー部32と蓋33によって周囲から覆われているため、燃焼生成物が効率よく蓋33に衝突する。飛翔体30は、環状突起25に当接されているため、環状突起25との衝突により、本体部31を変形させながら飛翔する。
【0043】
同時に燃焼生成物が開口部35を閉塞したアルミテープ36を破って、伝火薬収容室34内に侵入する。これによって伝火薬が着火され、伝火薬からも燃焼生成物が発生する。この一部は開口部35から噴出することで、飛翔体30の推進力にもなる。
【0044】
飛翔体30は、破裂板19に衝突して破壊する。そして内部空間13に入り込むが、この段階でも伝火薬は燃焼しているため、伝火薬から高温の熱やガスが放出され、内部空間13の加圧ガスが暖められる。
【0045】
破裂板19が破壊され、飛翔体30がボトル12内部に移動することにより、加圧ガス排出経路24が大きく開放され、内部空間13の加圧ガスは、ガス流出経路24を通り、ガス排出口22からエアバッグ内部に排出される。
【0046】
内部空間13に放出された飛翔体30のフレアー部32は、押し縮められた状態から解放されて拡径され、飛翔体30が配置されていたガス流出経路24(周壁27)の内径よりも十分に大きくなっている。よって、内部空間13からガス排出口22に向かうガス流により、飛翔体30がガス流出経路24に戻って閉塞することはなく、ガス流出経路24が確実に維持される。
【0047】
また放出されたガスは、ボトル12内部で暖められたガスを含んでいるため、ボトル12内の高圧状態から一気に圧力が開放されることによるガスの温度低下が防止され、必要なエアバッグの膨脹圧が維持される。
【0048】
(図3のガス発生器)
以下、図面に基づいて本発明の他実施形態を説明する。図3(a)は、本発明のガス発生器100の長さ方向への断面図、図3(b)は(a)の部分拡大図である。
【0049】
ボトル12の開口部に接続されたディフューザ部120は、ディフューザハウジング128によって外殻が形成されている。ディフューザハウジング128は、周壁面128aと閉塞端面128bを有しており、周壁面128aには複数のガス排出口22が設けられている。ガス排出口22は、内側からシールテープで閉塞されていてもよい。
【0050】
閉塞端面128bには環状の脆弱部150が形成されている。この脆弱部150は、閉塞端面128bに対して環状の切り込みが形成された部分である。この脆弱部150を含む閉塞端面128bが、図1に示す破裂板19に相当する。
【0051】
ディフューザハウジング128の内部には、点火器126が収容され、残部空間には、図2(b)で示す飛翔体30が収容されている。点火器126は、点火器カラー141に対して樹脂142で固定されている。飛翔体30が収容されている空間(収容空間)が、図1に示すガス流出経路24に相当する。
【0052】
ディフューザ部120には、飛翔体30を取り囲むように筒状部材145が配置されている。筒状部材145は、一端部が閉塞端面128bに当接され、反対端部が点火器126に当接された状態で配置されている。周壁部には、連通孔151が形成され、内周面には凸凹が形成されている。
【0053】
ディフューザ部120は、閉塞端面128b側の径が小さくされた縮径部128cを有しており、縮径部128cの内周面が筒状部材145の外周面に当接されている。このため、ディフューザ部120に筒状部材145を挿入したときに、筒状部材145の位置決めが容易にできる。縮径部128cと筒状部材145は当接されているが、縮径部128cを除く周壁部と筒状部材145との間には、環状の間隙131が形成されている。
【0054】
連通孔151は、ガス排出口22と半径方向に重ならない位置に形成されており、筒状部材145の長さ方向中央部よりも点火器126に近い側に形成されている。連通孔151は、更に点火器126側に近い位置に形成することもできる。また、図3において、ガス排出口22は、連通孔151と重ならない位置で、より点火器側126に近い位置に形成することもできる。
【0055】
飛翔体30は、フレアー部32が筒状部材145の内周面で押し縮められるように嵌め込まれており、更にフレアー部32の先端が前記内周面の凹凸に当接されている。これによって、飛翔体30の点火器126側への移動が阻止される。飛翔体30は、ディフューザハウジング128の閉塞端面128bにも当接しているため、作動前には、飛翔体30が筒状部材145内部でがたつくことがない。
【0056】
次に、図3のガス発生器100を備えたエアバッグ装置の動作について説明する。車両が衝撃を受けたとき、車載センサやコントロールユニットから着火電流が点火器126に流れ、点火器126が作動して、着火薬からの燃焼生成物が発生する。
【0057】
そして燃焼生成物は、飛翔体30を軸方向に押すと同時に、開口部35から飛翔体30内部に侵入して伝火薬を着火させ、伝火薬からも燃焼生成物が発生する。このとき、連通孔151は、フレアー部32によって部分的に閉塞されており、燃焼生成物が連通孔151から排出されることが抑制される。したがって、発生した燃焼生成物は効率よく蓋33に当たるため、飛翔体30を飛翔させるエネルギーのロスを抑えることができる。
【0058】
続いて、飛翔体30は、閉塞端面128bの脆弱部150を破壊して、ボトル12内部に飛び出す。この段階でも伝火薬は燃焼しているため、伝火薬から高温の熱やガスが放出され、内部空間13の加圧ガスが暖められる。
【0059】
脆弱部150が破壊され、飛翔体30がボトル12内部に移動することにより、ガス流出経路が大きく開放され、内部空間13の加圧ガスは、ガス流出経路を通って、連通孔151、環状間隙131を経由して、ガス排出口22からエアバッグ内部に排出される。
【0060】
このとき、内部空間13放出された飛翔体30のフレアー部32は、押し縮められた状態から解放されて拡径され、飛翔体30が配置されていたガス流出経路の内径よりも十分に大きくなっている。よって、内部空間13からガス排出口22に向かうガス流により、飛翔体30がガス流出経路に戻って閉塞することはなく、ガス排出経路が確実に維持される。
【0061】
また放出されたガスは、ボトル12内部で暖められたガスを含んでいるため、ボトル12内の高圧状態から一気に圧力が開放されることによるガスの温度低下が防止され、必要なエアバッグの膨脹圧が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のインフレータの軸方向断面図。
【図2】(a)は、飛翔体の平面図、(b)は、別実施形態の飛翔体の軸方向断面図。
【図3】(a)は、他実施形態のインフレータの軸方向断面図、(b)は、(a)の部分拡大図。
【符号の説明】
【0063】
10 インフレータ
12 ボトル
19 破裂板
20 ディフューザ部
26 点火器
27 筒状部材
30 飛翔体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が閉塞され、他端側に開口部を持ち、内部に加圧ガスが充填されたボトル部と、前記ボトル部の開口部側に固着された、点火器が収容され、かつガス排出口を備えたディフューザ部とを有している人員拘束装置用インフレータであり、
前記ボトル部と前記ディフューザ部の間が破裂部材で閉塞されており、
前記ディフューザ部内にガス流出経路が形成され、前記流出経路には飛翔体が配置されており、
前記飛翔体が、カップ形状で、開口部に近い側の周壁部が外側に拡径されたフレアー部を有し、少なくとも前記フレアー部が弾性を有するものであり、
前記飛翔体が、底面が前記破裂部材側に位置し、開口部側が前記点火器側に位置するように配置され、前記ガス流出経路の壁面により前記弾性を有するフレアー部が押し縮められるようにして固定されている、インフレータ。
【請求項2】
前記ガス流出経路内には、ガスの流出を阻害しないように筒状部が形成され、前記筒状部内には、前記飛翔体が配置されており、前記飛翔体が、そのフレアー部が前記筒状部の内壁面に圧接されて固定されている、請求項1記載のインフレータ。
【請求項3】
前記筒状部が、周壁面においてガスを流出させるためのスリット又は穴を有している、請求項2記載のインフレータ。
【請求項4】
前記ガス流出経路には、前記飛翔体の底面に近接した位置において、前記飛翔体が軸方向に移動することを防止するための突起が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のインフレータ。
【請求項5】
前記ガス流出経路には、前記飛翔体の周壁面に近接した位置において、前記飛翔体が軸方向に移動することを防止するための凹凸が形成されている、請求項1〜3のいずれか1項記載のインフレータ。
【請求項6】
前記飛翔体が、内部に伝火薬が収容されたものである、請求項1〜5のいずれか1項記載のインフレータ。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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