説明

代謝を調節するための材料および方法

本発明は、様々な生物学的要因と関連する生物学的状態を治療するために、生物学的要因を調節するための材料および方法を提供する。本発明の1つの態様において、高コレステロール血症および/または高コレステロール血症と関連する合併症を治療するために、システアミン化合物が患者に投与される。別の態様において、リスク患者における糖尿病の発症を予防するために、および/または糖尿病関連合併症の発症を治療もしくは予防するために、システアミン化合物が患者に投与される。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2004年5月3日に出願された米国仮出願第60/567,899号および2004年12月20日に出願された同第60/637,618号の恩典を主張する。これらの出願は、図、表、または図面を含めて、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の背景
コレステロールは、正常な生物学的機能に必要とされる体内の天然物質である。例えば、コレステロールは、肝臓における胆汁酸の合成、細胞膜の製造および修復、ビタミンDの生産、ならびにステロイドホルモンの合成に用いられる。コレステロールの外因性供給源および内因性供給源がある。例えば、平均的な米国人は毎日約450mgのコレステロールを摂取し、肝臓および他の組織において、さらに500〜1,000mgを生産する。別の供給源は、毎日、腸に分泌される500〜1,000mgの胆汁コレステロールである。約50パーセントが再吸収される(腸肝循環)。
【0003】
コレステロールは血漿リポタンパク質を介して血流中を循環する。血漿リポタンパク質は、血中で脂質を輸送する、脂質およびタンパク質の複合組成物の粒子である。コレステロールを含有する特殊な種類のリポタンパク質、すなわち、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)、およびトリグリセリドがある。
【0004】
LDLは、通常、循環コレステロールの約75パーセントを運ぶ。LDLは、肝臓から体内の肝臓外組織へのコレステロールの送達を担っていると考えられている(肝臓において、食事性供給源からコレステロールが合成される、または得られる)。用語「コレステロール逆輸送」は、肝臓外組織から肝臓へのコレステロールの輸送について説明している(肝臓において、コレステロールが異化および排泄される)。
【0005】
LDLから遊離した遊離コレステロールが細胞内に蓄積する時、3つの重要な代謝結果がある。第1に、細胞によるコレステロール新規合成の速度を制御する酵素であるHMG-CoA還元酵素の合成が低下する。第2に、酵素アシルコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)が活性化される。ACATは、遊離コレステロールを、コレステロールの細胞貯蔵形態であるコレステロールエステルにエステル化する。第3に、コレステロールの蓄積によって、細胞の新たなLDL受容体の合成が抑制される。このフィードバック機構は、循環からの細胞のLDL取り込みを低下させる。
【0006】
対照的に、血漿HDL粒子は、組織コレステロールのスカベンジャーとして作用することによって、逆輸送プロセスにおいて大きな役割を果たしているように見える。HDLはまた、血流からの非コレステロール脂質、酸化コレステロール、および他の酸化生成物の除去を担っている。高濃度の血漿HDLは冠状動脈疾患を防ぐだけではなく、アテローム性動脈硬化巣の後退を実際に誘導する可能性があると仮説が立てられている(すなわち、Badimon et al., Circulation 86:(Suppl.III)86-94 (1992); Dansky and Fisher, Circulation 100:1762-3 (1999)を参照されたい)。
【0007】
現在、推定1億500万人の米国人成人が、望ましくない(高い)コレステロール濃度(すなわち、総血中コレステロール濃度200ミリグラム/デシリットル(mg/dL)以上)を有する。このうち4200万人が240mg/dL以上のコレステロール濃度を有し、健康リスクの高い集団とみなされている。(Centers for Disease Control: National Center for Health Statistics, 出版American Heart Association, Heart and Stroke Statistics - 2003 Update. Dallas, TX: AHA, 2002)。
【0008】
また、細胞膜においてコレステロールを有用なものとしている、まさしくその特性(すなわち、水不溶性)のために、コレステロールは多量に血中を循環している時に潜在的に死を招くものとなる。例えば、高コレステロールは、一般的に、心臓発作、アテローム性動脈硬化症、および循環障害のリスクの増大と関連している。さらに、胆石症、アテローム性動脈硬化症、高脂血症、および一部の脂質貯蔵病などの様々な疾患がコレステロール異化障害によって引き起こされる。
【0009】
例えば、アテローム性動脈硬化症は、動脈壁内でのコレステロールの蓄積を特徴とする、ゆっくりと進行する疾患である。アテローム性動脈硬化病変の形成における酸化型LDLの役割に関して、説得力のある証拠が提出されている。(Chisolm, Clin. Cardiol,. 14:I-25-I-30 (1991))。LDLが酸化されると、LDLの特性および細胞相互作用機構が大幅に変化する。これらの変化によって、酸化型LDLは、アテローム性動脈硬化病変の発生の様々なレベルにおいて有害に作用する。
【0010】
多くの証拠から、望ましくないコレステロール濃度の低下がアテローム性動脈硬化合併症を軽減または予防することが分かっている。正常体重を維持し、血漿中の脂質濃度を最小限にする食事に加えて、コレステロール濃度を下げる治療法は、高コレステロールを悪化させる要因の排除、および(リポタンパク質の生産を減らすことによって、または血漿からリポタンパク質を除去する効率を高めることによって)血漿中のリポタンパク質濃度を下げる治療剤の投与を含む。例えば、最近の研究から、ビタミンEまたはβカロチンなどの酸化防止物質を摂取すると(おそらく、LDLの酸化を阻止することによって)個体の心臓発作のリスクが低下することが分かっている(NY Times, p. A9, cols. 1-6, Nov. 19, 1992を参照されたい)。
【0011】
望ましい/健康な血清コレステロール濃度を維持するさらなる方法には、コレステロール低下剤(すなわち、ラボスタチン(lavostatin)、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、およびアトルバスタチン)の使用が含まれる。患者におけるコレステロール低下薬物の長期効果のいくつかの臨床試験から、心臓病死亡および心臓病発生率が減少することが分かっている。(Lipid Research Clinics Investigators, Arch Intern Med. 152:1399-1410 (1992)を参照されたい)。これらの薬物は血清コレステロールをかなり減らすことができるが、全てではないにしても大部分は望ましくない副作用を有する。
【0012】
エストロゲンは血清LDLに対して有益な効果を有することが証明されているが、長期エストロゲン療法は様々な障害(子宮癌リスクの増加、もしかすると乳癌リスクの増加を含む)に結び付けられてきた。癌リスクの低下を試みる最近示唆された治療法(例えば、プロゲストゲンおよびエストロゲンの組み合わせの投与)では、患者は定期的な出血を経験する。これは、ほとんどの老年女性に受け入れられない。さらに、プロゲステロンとエストロゲンの組み合わせは、エストロゲンの血清コレステロール低下効果を弱めるように見える。エストロゲン療法に関連する重大な望ましくない効果についての懸念は、望ましくないコレステロール濃度を下げるための代替療法(これは、血清LDLに対して望ましい効果を生じるが、望ましくない効果を引き起こさない)を開発する必要性を裏付けている。
【0013】
糖尿病は高コレステロールと関係していることが多く、治療法のない慢性疾患である。現在、米国において約1820万人、すなわち人口の6.3%が糖尿病を有する。約1300万人が診断されているが、520万人は疾患を自覚していないと見積もられている。2000年における疾患による6番目の主な死因として、糖尿病は、医療制度に、毎年、推定1320億ドルを費やさせている。National Diabetes Information Clearinghouse, NIH Publication No. 04-3892, 2003年11月。糖尿病に関連する経済的なコストより重大なのは、生活の質の低下、重大な健康上の合併症/結果、および糖尿病関連死である。
【0014】
糖尿病は、20〜74才の成人における失明の新たな症例の主な原因であり、毎年約12,000〜24,000件の新たな症例がある。糖尿病はまた末期腎疾患の主な原因でもあり、年間新規症例の約44%を占めている。2001年単独では、糖尿病のために約42,800人が末期腎疾患(腎不全)の治療を開始した。糖尿病を有する人の約60〜70パーセントが軽度〜重度の糖尿病性神経損傷を有する。重度の糖尿病性神経損傷は下肢切断につながることがある。実際に、非外傷性下肢切断の60%超が糖尿病を有する人に対して行われる。2002〜2003年では、約82,000件の非外傷性下肢切断が糖尿病を有する人に対して行われた。糖尿病を有する人は、脳卒中にかかる可能性が2〜4倍高い。さらに、糖尿病を有する成人の心臓病死亡率は、糖尿病を有さない人より約2〜4倍高い。
【0015】
糖尿病は、高い血中グルコース濃度を特徴とする疾患の一群である。高い血中グルコース濃度は、インシュリンの生産、インシュリンの働き、またはその両方の欠陥に起因する。糖尿病は何年も診断されないことがあるために、多くの人は、命を脅かす合併症の1つが発症した後でしか糖尿病にかかっていると自覚しない。糖尿病の原因はまだ分かっていないが、遺伝的要因と、肥満および運動不足などの環境要因の両方が重要な要因であることが、よく受け入れられている。
【0016】
糖尿病の一群である1型糖尿病(またはインシュリン依存性糖尿病もしくは若年発症糖尿病)は、身体の免疫系が、ホルモンインシュリンを作る膵臓細胞を破壊する時に発症する。インシュリンは血中グルコース濃度を調節する。1型糖尿病は、通常、小児および若年成人において起こるが、疾患の発症はどの年齢でも起こり得る。1型糖尿病は、診断された全ての糖尿病症例の約5〜10パーセントを占める。1型糖尿病の危険因子には、自己免疫、遺伝的要因および環境要因が含まれる。1型糖尿病と診断された個体は、注射またはポンプによってインシュリンを毎日送達することを必要とする。
【0017】
糖尿病の別の群である2型糖尿病(または非インシュリン依存性糖尿病もしくは成人発症糖尿病)は、身体がインシュリンを十分に作れない、または適切に使用できないことに起因する代謝障害である。この疾患は、通常、細胞がインシュリンを適切に使用しない障害であるインスリン抵抗性として始まり、インシュリンの必要が生じるにつれて、膵臓はインシュリン生産能力を徐々に失う。2型糖尿病は、糖尿病の90〜95パーセントを占める、この疾患の最も一般的な形である。老年米国人の数の増加ならびに肥満有病率の増加および座りがちなライフスタイルが原因で、2型糖尿病は流行に近づいている。
【0018】
妊娠糖尿病は、妊娠女性において診断されるグルコース不耐性の一形態を指している。妊娠中では、妊娠糖尿病は、乳児の合併症を避けるために、妊産婦の血中グルコース濃度を正常化する治療を必要とする。妊娠糖尿病女性のある割合(5〜10パーセント)は妊娠後に2型糖尿病を有する。妊娠糖尿病にかかっていた女性が5〜10年以内に糖尿病を発症する確率は20〜50パーセントである。
【0019】
高インスリン血症は、膵臓細胞によるインシュリンの過剰生産を指す。多くの場合、高インスリン血症はインスリン抵抗性の結果として起こる。インスリン抵抗性は、インシュリンの働きに対する細胞の抵抗性によって定義される状態である。前記のようにインスリン抵抗性は、正常量のインシュリンが亜正常の生物学的(代謝)応答を生じさせる状態/障害である。例えば、インシュリン治療を受けている糖尿病患者では、治療用量のインシュリンが正常人のインシュリン分泌速度を超える時はいつでも、インスリン抵抗性が存在するとみなされる。
【0020】
高インスリン血症と高血圧が関連付けられている。インシュリンは、とりわけ、血管細胞の増殖を促進し、腎臓のナトリウム貯留を増大するように作用する。これらの後者の機能はグルコース濃度に影響を及ぼすことなく達成することができ、高血圧の既知の原因である。ナトリウム貯留が血液量を増大させると同時に、末梢脈管構造の成長は、例えば、末梢毛細血管の狭窄を引き起こし得る。従って、高インスリン血症におけるインシュリン濃度の低下は、高いインシュリン濃度によって引き起こされる異常な血管成長および腎臓ナトリウム貯留を防ぎ、それによって高血圧を緩和することができる。
【0021】
グルコースホメオスタシス(または代謝)障害は、血糖値が正常より高いが、糖尿病として分類できるほど高くない状態を指す。将来の糖尿病および心血管疾患の危険因子とみなされる2つのカテゴリーがある。2時間の経口糖負荷試験後のグルコース濃度が140〜199mg/dlの時に、耐糖能障害(IGT)が起こる。IGTは2型糖尿病の主な危険因子であり、成人の約11パーセントすなわち約2000万人の米国人に存在する。65才以上の人の約40〜45パーセントが2型糖尿病またはIGTのいずれかを有する。8時間空腹時血漿グルコース試験後のグルコース濃度が110mg/dlを超えるが、126mg/dl未満である時に、空腹時糖障害(impaired fasting glucose:IFG)が起こる。
【0022】
アテローム性動脈硬化症の発症が早すぎること、ならびに心血管疾患および末梢血管疾患の割合が高いことは、糖尿病患者の独特の特性である。高脂血症は、これらの疾患の重要な増悪要因である。高脂血症は、一般的に、血流中の血清脂質の異常な増加を特徴とする状態であり、アテローム性動脈硬化症および心臓病の発症における重要な危険因子である。脂質代謝障害の概説については、例えば、Wilson, J. et al., (ed.), Disorders of Lipid Metabolism, Chapter 23, Textbook of Endocrinology, 9th Edition, (W. B. Sanders Company, Philadelphia, Pa. U.S.A. 1998)を参照されたい。
【0023】
血清リポタンパク質は循環中の脂質の担体である。血清リポタンパク質は、密度に従って(すなわち、カイロミクロン、超低密度リポタンパク質(VLDL)、中密度リポタンパク質(IDL)、低密度リポタンパク質(LDL)、および高密度リポタンパク質(HDL)に)分類される。高脂血症は、通常、一次性高脂血症または二次性高脂血症として分類される。一次性高脂血症は、一般的に、遺伝子欠陥によって引き起こされるのに対して、二次性高脂血症は、一般的に、他の要因(例えば、様々な疾患状態、薬物、および食事性要因)によって引き起こされる。または、高脂血症は、高脂血症の一次原因および二次原因の組み合わせに起因し得る。高いコレステロール濃度は、冠状動脈疾患、狭心症、頚動脈疾患、脳卒中、脳動脈硬化症、および黄色腫を含む多くの疾患状態と関連する。
【0024】
異脂肪血症、すなわち血漿中のリポタンパク質の異常な濃度は糖尿病患者間で頻繁に出現し、糖尿病被験者間の冠状動脈事象および冠状動脈死の発生率増加の主な原因の1つであることが示された(例えば、Joslin, E. Ann. Chim. Med. (1927) 5: 1061-1079)を参照されたい)。それ以後の疫学試験によって関連が確かめられ、糖尿病被験者間での冠状動脈死は非糖尿病被験者と比較して数倍高いことが分かった(例えば、Garcia, M. J. et al.,「Morbidity and mortality in diabetics in the Framingham population. Sixteen year follow-up study」, Diabetes, 23:105-11 (1974);およびLaakso, M. and Lehto, S.,「Epidemiology of risk factors for cardiovascular disease in diabetes and impaired glucose tolerance」, Atherosclerosis, 137 Suppl:S65-73 (1998)を参照されたい)。糖尿病被験者間で、いくつかのリポタンパク質異常が述べられている(Howard B. , et al.,「Lipoprotein composition in diabetes mellitus」, Artherosclerosis, 30:153-162 (1978) )。
【0025】
糖尿病のよくある特徴である高血糖は、肝臓および末梢組織によるグルコース利用の低下ならびに肝臓によるグルコース生産の増加によって引き起こされる。グルコキナーゼ(GK)は、肝臓および膵臓β細胞における主なグルコースリン酸化酵素であり、血中グルコースホメオスタシスの調節において重要な役割を果たしている。特に、2型糖尿病患者(Caro, J. F. et al., Hormone metabolic Res., 27;19-22, 1995)において、一部の糖尿病動物モデル(Barzilai, N. and Rossetti, L. J Biol. Chem., 268:25019-25025, 1993)において、この酵素の濃度は低い。
【0026】
前記のように、体内の実質的に全ての主要な器官系が糖尿病によって損なわれる。合併症には、失明、腎不全、心臓病、脳卒中、四肢切断、神経感覚の消失、歯の早期消失、ハイリスク妊娠、および出生時欠損をもって生まれた乳児が含まれ得る。現在、米国において、インシュリン注射が、150万人を超える1型糖尿病患者にとって利用可能な唯一の治療法であり、1600万人を超える2型糖尿病患者の多くにとって最後の治療経過になる。2型糖尿病の治療は、通常、食事療法、運動、経口血糖降下剤(例えば、チアゾリジンジオン、より重篤な場合では、インシュリン)の組み合わせからなる。しかしながら、臨床で利用可能な血糖降下剤は、その使用を制限する副作用を有することがある。または薬剤がある特定の患者で有効でない場合がある。
【0027】
I型の場合、インシュリンは、通常、主な治療経過である。インシュリンが早くから発見され、その後に糖尿病治療において広範囲に用いられ、後になって、スルホニル尿素、ビグアニド、およびチアゾリジンジオン(例えば、トログリタゾン、ロシグリタゾン、またはピオグリタゾン)が経口血糖降下剤として発見および使用されたのにもかかわらず、糖尿病治療は依然として満足のゆくものではない。インシュリン不足をものともせずにグルコース取り込みにプラスの影響を及ぼす栄養療法は、糖尿病治療に関連する長期治療費に大きな影響を及ぼすだろう。
【0028】
アディポネクチンすなわちAcrp30(Hu, E. et al,「AdipoQ is a novel adipose-specific gene dysregulated in obesity」, J. Biol. Chem., 271:10697-10703 (1996) )は、複数の生物学的機能を有する脂肪細胞由来ホルモンである。肥満、2型糖尿病、および冠状動脈性心疾患が血漿アディポネクチン濃度の低下と関連し、アディポネクチンがインビトロで推定アテローム産生抑制性を有し得ることが報告されている(Ouchi, N. et al,「Adipocyte-derived plasma protein, adiponectin, suppresses lipid accumulation and class A scavenger receptor expression in human monocyte-derived macrophages」, Circulation, 103:1057-1063 (2001); Yokota, T. et al,「Adiponectin, a new member of the family of soluble defense collagens, negatively regulates the growth of myelomonocytic progenitors and the functions of macrophages」, Blood, 96:1723-1732 (2000))。
【0029】
Acrp30循環濃度の急性増加が肝臓グルコース生産を低下させることも報告されている(Berg, A. H. et al,「The adipocyte-secreted protein Acrp30 enhances hepatic insulin action」, Nat. Med., 7:947-953 (2001); Combs, T. P. et al.,「Endogenous glucose production is inhibited by the adipose-derived protein Acrp30」, J. Clin. Invest., 108:1875-1881 (2001))。さらに、球状Acrp30が筋肉における脂肪酸酸化を増大させ、マウスにおいて体重減少を引き起こすことが報告されている(Fruebis, J. et al,「Proteolytic cleavage product of 30-kDa adipocyte complement-related protein increases fatty acid oxidation in muscle and causes weight loss in mice」, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 98:2005-2010 (2001))。さらに、球状ドメイン(球状アディポネクチンすなわちgAd)のみからなるアディポネクチンを用いた治療が筋肉における脂肪酸酸化を増大させ、それによって、脂肪萎縮マウスおよび肥満マウスにおけるインスリン抵抗性を寛解させるのに対して、完全長アディポネクチンを用いた治療もgAdを用いた治療にほど遠いが寛解させることが報告されている(Yamauchi, T. et al,「The fat-derived hormone adiponectin reverses insulin resistance associated with both lipoatrophy and obesity」, Nat. Med., 7:941-946 (2001))。
【0030】
最近、アディポネクチンは骨格筋においてAMPキナーゼ(AMPK)を急性的に活性化し、従って、脂肪酸酸化およびグルコース取り込みを刺激することが報告され(Yamauchi, T. et al,「Adiponectin stimulates glucose utilization and fatty-acid oxidation by activating AMP-activated protein kinase」, Nat. Med., 8:1288-1295 (2002))、アディポネクチンはPPARαを慢性的に活性化して、筋肉における脂肪酸酸化を増大させるが、組織TG含有量を少なくすることが報告された(これらの効果は、完全長アディポネクチンよりgAdを用いた場合で大きい)(Yamauchi, T. et al,「Globular adiponectin protected ob/ob mice from diabetes and ApoE-deficient mice from atherosclerosis」, J. Biol. Chem., 278:2461-2468 (2002))。興味深いことに、肝臓において、完全長アディポネクチンは単独ではAMPKを急性的に活性化して、糖新生関連分子を減少させ、脂肪酸酸化を刺激する。さらに、完全長アディポネクチンは単独ではAMPKを慢性的に活性化して、肝臓において脂肪酸酸化を刺激し、組織TGレベルを少なくする。これらの変化は全てインビトロにおけるインシュリン感受性を高めるように働く(Yamauchi, T. et al, Nat. Med., 8:1288-1295 (2002); Yamauchi, T. et al, J. Biol. Chem., 278:2461-2468 (2002))。
【0031】
上記の知見は、アディポネクチンが肥満、心血管疾患、および糖尿病に潜在的に関与していることを示唆している。肥満のマウスおよびヒトにおいて、生産および循環アディポネクチン濃度は抑制される(Hu, et al., J. Biol. Chem., 271:10697-107032 (1996); Arita, et al., 「Paradoxical decrease of an adipose-specific protein, adiponectin, in obesity」, Biochem. Biophys. Res. Commun., 257: 79-83 (1999))。低い血漿アディポネクチン濃度は冠状動脈性心疾患の危険因子である可能性があり、2型糖尿病でも濃度は有意に低い(Ouchi, et al., Circulation. 100:2473-2476 (1999); Hotta, et al., Diabetes. 50:1126-1133 (2001))。アディポネクチンがグルコースを減少させ、インスリン抵抗性を逆転させる能力は、アディポネクチンが糖尿病薬としての用途を有し得ることを示唆している(Yamauchi, et al., Nat. Med. 7:941-946 (2001); Berg, et al. Nat. Med. 7:947-953 (2001))。さらに、タンパク分解によって切断されたアディポネクチン断片は肥満動物において体重減少を引き起こすことが示された(Fruebis, et al. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98:20 (15-2010 (2001))。このタンパク質は、少なくとも4つの細胞タイプに直接的または間接的に影響を及ぼす。アディポネクチンは、ヒト大動脈内皮細胞においてNF-κBを介したシグナルを調節し、これは、おそらく単球の接着低下の原因となる(Ouchi, et al.,「Adiponectin, an adipocyte-derived plasma protein, inhibits endothelial NF-kappaB signaling through a cAMP-dependent pathway」, Circulation, 102:1296-1301 (2000))。このタンパク質は骨髄球系前駆細胞の分化を抑制し、2種類の単球細胞株に対して別個の影響を及ぼす(Yokota, Blood. 96:1723-1732 (2000) )。アディポネクチンはまた肝細胞において代謝変化を誘導し得る(Yamauchi, et al., 2001; Berg, et al. 2001)。
【0032】
知られている限り、システアミン化合物は、異常に機能する代謝(すなわち、グルコース代謝または脂質代謝)を治療するための生物学的要因(例えば、アディポネクチン濃度および血中尿酸濃度)の調節において有用であると以前に報告されたことがない。
【発明の開示】
【0033】
発明の簡単な概要
本発明は、生物学的状態(例えば、異常なグルコース代謝または脂質代謝)を治療するために、システアミン化合物を投与することによって、少なくとも1つの生物学的要因を調節するための材料および方法を提供する。本発明に従って調節される、意図される生物学的要因は、インシュリン様成長因子(例えば、インシュリン様成長因子1すなわちIGF-1)、血糖値、インシュリン濃度、Cペプチド濃度、トリグリセリド濃度、遊離脂肪酸濃度、血中尿酸濃度、微量アルブミン尿濃度、グルコース輸送体発現、アディポネクチン濃度、総血清コレステロール濃度、高密度リポタンパク質(HDL)濃度、および低密度リポタンパク質(LDL)濃度を含むが、これに限定されない。
【0034】
本明細書において開示されるシステアミン化合物を投与することによって治療することができる生物学的状態は、高コレステロール血症、高インスリン血症、血糖異常、高尿酸血症、高トリグリセリド濃度(高LDL濃度を含む)、肥満、心血管疾患、高血圧、高血糖、グルコース不耐性、低HDL濃度、糖尿病(1型および2型)、ならびに高コレステロールまたは糖尿病に関連する他の任意の症状、合併症、状態、または疾患を含むが、これに限定されない。本発明によれば、患者へのシステアミン化合物の投与は、このような生物学的状態(例えば、糖尿病または高コレステロール)およびこのような生物学的状態に関連する任意の関連症状、合併症、状態、または疾患の発症を遅らせることができ、さらには予防することができる。
【0035】
本発明は、異常な脂質代謝を治療および/もしくは予防するための方法、または異常な脂質代謝に関連する合併症の発症を予防、遅延、および/もしくは治療するための方法を提供する。より具体的には、本発明は、システアミン化合物を患者に投与することによって、高コレステロールまたは高コレステロール血を治療および/もしくは予防するための材料および方法、または高コレステロール血症(もしくは高コレステロール)に関連する合併症の発症を予防、遅延、および/もしくは治療するための材料および方法を提供する。本明細書において具体的に例示されるのは、総血中コレステロール濃度、遊離脂肪酸濃度、LDL濃度および/またはトリグリセリド濃度を下げるためのシステアミン化合物の使用である。さらに、HDL濃度を上げるために、システアミン化合物を患者に投与することができる。
【0036】
さらに、本発明は、糖尿病を治療するための材料および方法を提供する。好ましい態様において、本発明は、糖尿病関連症状を治療および/または予防するための独特の材料および方法、ならびに糖尿病に関連する合併症、状態、または疾患の発症を予防または遅延するための材料および方法を提供する。合併症、状態、または疾患は、例えば、背景糖尿病性網膜症(background diabetic retinopathy)、黄斑浮腫、白内障、リポイド類壊死症、肥満、高インスリン血症、高血圧、高血糖、糖尿病性皮膚障害、真菌感染、心血管疾患、うっ血性心不全、腎臓病、血糖異常、高尿酸血症、高トリグリセリド、高HDL濃度、肥満(特に、腹部型の肥満)、および糖尿病性ニューロパシーなどであり、これらは全て糖尿病と一般的に関連しており、本発明に従ってシステアミン化合物を投与することによって予防または治療することができる。
【0037】
好ましい態様において、システアミン化合物は、生物学的状態の観察可能な症状を有さないが、生物学的状態を発症しやすいことが確かめられている患者に投与される(以下、このような患者は「リスク患者」と呼ぶ)。特定の態様において、患者は、システアミン化合物の投与前に2型糖尿病を発症するリスクを特定するために評価される。最近、2型糖尿病の臨床的発症に先行する重要なマーカーとして、様々なマーカーが特定されている。2型糖尿病のリスク患者を特定するために、当業者に公知の方法を用いて検出することができる免疫学的マーカーは、インシュリンに対する自己抗体(IAA)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、および島細胞(例えば、IA-2と呼ばれる、チロシンホスフェートファミリーの中の受容体型の島細胞メンバー)に対する自己抗体(ICA)を含むが、これに限定されない。本発明に従って使用することができる、このようなマーカーを検出することによって2型糖尿病のリスク患者を特定する方法は、米国特許第6,391,651号および同第6,316,209号を含むが、これに限定されない。
【0038】
別の態様において、患者は、システアミン化合物の投与前に高コレステロールを発症するリスクを特定するために評価される。最近、高コレステロール(または高コレステロール血症もしくは高脂血症)の臨床的発症に先行する重要なマーカーとして、様々なマーカーが特定された。高コレステロールのリスク患者を特定するために、当業者に公知の方法を用いて検出することができるマーカーは、C反応性タンパク質(CRP)(Yeh, E. T.,「C-reactive protein is an essential aspect of cardiovascular risk factor stratification」, Can J Cardiol., 20(Suppl B):93-96B (2004年8月) を参照されたい)、アポリポタンパク質 CIII、および血漿中ホモシステイン濃度 (Geisel, J et al.,「The impact of hyperhomocysteinemia as a cardiovascular risk factor in the prediction of coronary heart disease」, Clin Chem Lab Med. , 41 (11):1513-7(2003)を参照されたい)を含むが、これに限定されない。本発明に従って使用することができる、このようなマーカーを検出することによって高コレステロール(または高コレステロール血症もしくは高脂血症)のリスク患者を特定する方法は、米国特許出願第2004/0198656号を含むが、これに限定されない。
【0039】
リスク患者に、高コレステロール血症が発症する素因があるかどうか確かめるために、単独でまたは組み合わせて使用することができる、さらなる要因は、遺伝(すなわち、家族性高コレステロール血症)、高血圧、喫煙活動、アルコールの摂取、糖尿病、肥満、身体の不活動、年齢、および性別(すなわち、50歳以上の閉経後女性)、ならびにストレスを含むが、それに限定されるわけではない。
【0040】
使用方法において、システアミン化合物は、生物学的状態に関連する症状および/もしくは生物学的状態に関連する合併症を治療するために、生物学的状態に関連する症状および/もしくは生物学的状態に関連する合併症の発症を遅延するために、または生物学的状態に関連する症状および/もしくは生物学的状態に関連する合併症を寛解させるために、生物学的状態(すなわち、糖尿病または高コレステロール)の診断前または診断後に、患者に投与される。本発明によれば、本発明の組成物は、治療効果を引き出すために任意の時間に(例えば、不定時にまたは決まっていない時間に)投与することができる。
【0041】
本発明によって、患者へのシステアミン化合物の投与が、肝臓、筋肉、脂肪細胞、および他の組織におけるグルコース輸送体(glut4)発現を増大できることが初めて発見された。さらに、システアミン化合物を患者に投与すると、インシュリン様成長因子1(IGF-1)が減少する、Cペプチドが減少する、血中尿酸濃度が下がる、微量アルブミン尿濃度が下がる、アディポネクチン濃度が上がる。システアミン化合物の投与による、これらの生物学的要因および他の生物学的要因の調節は、患者のインシュリン感受性を改善することができる、高インスリン血症を軽減することができる、ホメオスタシスモデル評価(HOMA)値を下げることができる、高血糖を下げることができる、およびグルコース不耐性を下げることができる。
【0042】
また、本願によれば、患者へのシステアミン化合物の投与は、糖尿病に関連する、もしくは高コレステロールに関連する合併症もしくは状態を表し得る、またはこれらに発達し得る生物学的要因を調節することが観察されている。前記のように、患者へのシステアミン化合物の投与は、患者におけるインシュリン濃度、グルコース濃度または血糖値、C-ペプチド濃度、インシュリン様成長因子、血中尿酸濃度、遊離脂肪酸濃度、アディポネクチン(adiponectine)濃度、glut4発現、トリグリセリド濃度、高密度リポタンパク質(HDL)濃度、低密度リポタンパク質(LDL)濃度、および微量アルブミン尿濃度に影響を及ぼし得ることが発見されている。特に、患者へのシステアミン化合物の投与は、高インスリン血症を軽減することができる、インシュリン様成長因子1(IGF-1)を減少することができる、C-ペプチド濃度を下げることができる、組織におけるglut4発現を増大することができる、遊離脂肪酸濃度を下げることができる、血中尿酸濃度を下げることができる、アディポネチン(adiponetine)濃度を上げることができる、トリグリセリド濃度を下げることができる、LDL濃度を下げることができる、HDL濃度を上げることができる、微量アルブミン尿濃度を下げることができる。
【0043】
これら生物学的要因は全て、糖尿病または高コレステロールに関連する症状、合併症、または状態の診断および/または発症と関連するので(Reist, GC et al., 「Changes in IGF activities in human diabetic vitreous」, Diabetes, 53 (9):2428-35 (2004年9月) ; Janssen JA and Lamberts, SW,「The role of IGF-I in the development of cardiovascular disease in Type 2 diabetes mellitus: is prevention possible?」Eur J Endocrinol., 146 (4):467-77 (2002); Chakrabarti, S et al.,「C-peptide and retinal microangiopathy in diabetes」, Exp Diabesity Res., 5 (1):91-6 (2004年1〜3月); Gottsater, A. et al.,「Plasma adiponectin and serum advanced glycated end-products increase and plasma lipid concentrations decrease with increasing duration of Type 2 diabetes」, Eur J Endocrinol., 151(3):361-6 (2004年9月) ; Tseng, CH.,「Independent association of uric acid levels with peripheral arterial disease in Taiwanese patients with Type 2 diabetes」, Diabet Med., 21(7):724-9 (2004年7月) ; Liese, AD et al.,「Microalbuminuria, central adiposity and hypertension in the non-diabetic urban population of the MONICA Augsburg survey 1994/95」, J Hum Hypertens., 15 (11):799-804(2001)、およびWollesen, F. et al.,「Peripheral atherosclerosis and serum lipoprotein (a) diabetes」, Diabetes Care., 22 (1):93-8 (1999)を参照されたい)、糖尿病または高コレステロールに関連する合併症および状態を治療するために、ならびにリスク患者におけるこのような生物学的状態の発症を予防するために、システアミン化合物の投与を記載のように使用することができる。本発明に従って治療または予防される、意図される合併症は、高インスリン血症、血糖異常、高尿酸血症、高トリグリセリド、高HDLコレステロール、高血圧、肥満、アテローム性動脈硬化症、心血管疾患、脳血管血栓症または出血、脳卒中、アンギナ、冠状動脈血栓症、冠状動脈性心疾患(すなわち、心不全)、間欠性跛行、および四肢の虚血を含むが、これに限定されない。
【0044】
本発明によれば、糖尿病診断前または糖尿病診断の開始時に患者にシステアミン化合物を投与すると、糖尿病または高コレステロールが発症しないように、またはシステアミン化合物の非存在下で観察されるものより小さな程度で発症するように、患者の代謝を変えることができる。前記の生物学的要因を調節することによって、本発明の材料および方法は、生物学的状態(例えば、糖尿病または高コレステロール)ならびに対応する症状を治療および/または予防することができ、ならびに生物学的状態に関連する合併症または状態を治療および/または予防することができる。例えば、異常なグルコース代謝またはインスリン抵抗性を有するが、最も悪化した糖尿病を有さない被験体(例えば、肥満患者)は、システアミン活性の結果としての改善したグルコース利用およびインスリン抵抗性(すなわち、グルコース輸送体およびアディポネクチンならびに脂質代謝の観察されたシステアミン調節)のために、糖尿病を発症しないはずである。
【0045】
本発明によれば、糖尿病と診断された患者または糖尿病に関連する合併症、状態、もしくは疾患に罹患している患者に投与される1日量のシステアミン化合物は、約0.1mg〜約1,000mg/kg患者体重(BW)のシステアミン化合物である。
【0046】
1つの態様において、糖尿病を治療するために、システアミンが、毎日、不定時に患者に投与される。ここで、治療的有効量のシステアミンは、約0.1mg〜400mg/kg患者BWまたは等モル量のシステアミン化合物である。別の態様において、糖尿病を治療するために、塩酸システアミンが、毎日、不定時に患者に投与される。ここで、治療的有効量の塩酸システアミンは、約1.0mg〜600mg/kg BWまたは等モル量のシステアミン化合物である。好ましくは、本発明に従って糖尿病を治療するために、一日量が約30mg/kg BW未満のシステアミンまたは等モル量のシステアミン化合物が患者に投与される。
【0047】
本発明の態様において、高コレステロール血症を治療および/もしくは予防するために、または高コレステロール血症に関連する合併症の発症を遅延するために患者に投与されるシステアミン化合物の1日量は、約1mg/kg体重〜300mg/kg体重でもよい。好ましくは、システアミン化合物は、不定時に、約5mg/kg体重〜150mg/kg体重/日で投与される。より好ましい態様において、約10mg〜100mg塩酸システアミン/kg体重または等モル量のシステアミン化合物が患者に毎日投与される。
【0048】
システアミン化合物は、単独で、または他の公知のコレステロール低下剤もしくは治療方法と同時に投与することができる。意図されるコレステロール低下剤もしくは治療方法は、食事摂取の変化、身体活動の増加、体重減少、閉経後の女性におけるホルモン補充療法、ならびに薬物(すなわち、ロバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、胆汁酸樹脂、ニコチン酸またはナイアシン、およびフィブラート)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0049】
本発明の別の態様において、システアミン化合物は、糖尿病を治療するために、ならびに糖尿病関連合併症を予防するために、および/または糖尿病関連合併症の重篤度を軽減するために、糖尿病と診断された患者に投与される。関連する態様において、システアミン化合物は、糖尿病および糖尿病関連合併症を予防および/または治療するために、糖尿病を治療するのに用いられる他の公知の薬剤(すなわち、インシュリン、スルホニル尿素、ビグアニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、D-フェニルアラニン)と組み合わせて投与される。
【0050】
別の態様において、システアミン化合物を含む本発明の組成物が提供される。システアミン化合物を含む本発明の組成物は、固体の形で取り扱うために、および後の放出(すなわち、アルカリ環境への曝露、溶媒の作用、または溶融による放出)を容易にするために、気体、液体、または化合物を包接複合体として固定する「包接化合物ホスト材料」を含む。
【0051】
発明の詳細な開示
本発明は、異常なグルコース代謝または脂質代謝などの生物学的状態を治療するために、システアミン化合物を投与することによって少なくとも1つの生物学的要因を調節するための材料および方法を提供する。本発明に従って調節される、意図される生物学的要因は、インシュリン様成長因子(例えば、インシュリン様成長因子1すなわちIGF-1)、血糖値、インシュリン濃度、Cペプチド濃度、トリグリセリド濃度、遊離脂肪酸濃度、血中尿酸濃度、微量アルブミン尿濃度、グルコース輸送体発現、アディポネクチン濃度、高密度リポタンパク質(HDL)濃度、および低密度リポタンパク質(LDL)濃度を含むが、これに限定されない。
【0052】
好ましくは、本発明は、患者において高コレステロール(または高コレステロール血症もしくは高脂血症)の発症を治療または予防するための材料および方法、ならびに/あるいは高コレステロール(または高コレステロール血症もしくは高脂血症)に関連する合併症、状態、または疾患の発症を治療または遅延/予防するための材料および方法を提供する。本発明はまた、好ましくは、糖尿病および糖尿病関連症状ならびに糖尿病に関連する合併症、状態、および/または疾患の発症を治療および/または予防する。
【0053】
本明細書で使用する用語「治療(treatment)」またはその任意の変形(すなわち、治療する(treat)、治療(treating)など)は、本発明の材料および/または方法を用いた、生物学的状態(例えば、高コレステロール血症または糖尿病)と診断された患者の任意の治療を意味する。本明細書で使用する用語「治療」とは、(i)生物学的状態に関連する症状をまだ示していないリスク患者における、関心対象の生物学的状態に関連する症状の呈示の予防もしくは遅延、(ii)生物学的状態と診断された患者における、関心対象の生物学的状態に関連する症状の寛解、(iii)リスク患者もしくは生物学的状態と診断された患者における、関心対象の生物学的状態(すなわち、高コレステロール血症および/または糖尿病)に関連する合併症、状態、もしくは疾患に関連する症状の呈示の予防、遅延、もしくは寛解、ならびに/または(iv)状態の軽減(すなわち、高コレステロール血症および/もしくは糖尿病、または関連する合併症、状態、もしくは疾患の後退)を含む。
【0054】
本明細書で使用する「高コレステロール血症」(高コレステロール、コレステロール過剰血症、高脂血症、または高コレステロール血とも知られる)は、当業者により正常とみなされる濃度と比較して高い、総血清コレステロール濃度またはLDL濃度および/もしくはトリグリセリド濃度を特徴とする状態を意味する。例えば、米国立衛生研究所は、総血清コレステロールの正常濃度または最適濃度が血液1dL当たりコレステロール200mg未満であり、LDLの正常濃度または最適濃度が血液1dL当たりLDL 100mg未満であると述べた。本発明のある特定の態様によれば、高コレステロール血症は、総血清コレステロール濃度が約200mg/dL以上であり、LDL濃度が100mg/dL以上である状態を含む。当業者に理解されるように、高コレステロール血症の診断において用いられる特徴は変わりやすく、本発明において示される高コレステロール血症を定義するために、最新の基準(例えば、米国立衛生研究所によって開示された基準)を使用することができる。
【0055】
高コレステロール血症の治療を必要とする患者の特定は、当業者の知識および能力の範囲に十分入っている。例えば、臨床検査によって求められるような、当業者に正常とみなされる濃度を上回る血清コレステロール濃度またはLDLコレステロール濃度を有する個体は、高コレステロール血症の治療を必要とする患者である。さらなる例として、当技術分野における臨床医は、臨床検査、理学的検査、および病歴/家族歴を用いて、高コレステロール血症に罹患している患者ならびに高コレステロール血症を発症しやすい患者を容易に特定することができ、従って、個体が、高コレステロール血症の治療を必要とする患者であるかどうか容易に確かめることができる。
【0056】
本明細書で使用する「動脈硬化症」とは、アテローム性動脈硬化病変またはアテローム性動脈硬化巣の発症および成長を特徴とする疾患状態を意味する。アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする患者の特定は、当業者の知識および能力の範囲に十分入っている。例えば、高コレステロール血症の結果として、臨床的に重大なアテローム性動脈硬化症を罹患している患者、またはアテローム性動脈硬化症を発症するリスクのある患者は、高コレステロール血症に関連する合併症の治療を必要とする患者とみなされる。
【0057】
本明細書で使用する用語「糖尿病」とは、全ての糖尿病状態を意味することが意図される。糖尿病状態は、糖尿病、遺伝的糖尿病、1型糖尿病、2型糖尿病、および妊娠糖尿病を含むが、それに限定されるわけではない、用語「糖尿病」はまた、グルコース不耐性をもたらす、インシュリンの相対的または絶対的な不足を特徴とする慢性疾患を意味する。I型糖尿病はインシュリン依存性糖尿病(IDDM)とも呼ばれ、例えば、若年発症糖尿病も含む。I型は、主に、膵臓β細胞の破壊によるものである。2型糖尿病は非インシュリン依存性糖尿病(NIDDM)とも知られ、部分的には、食事後のインシュリン放出障害を特徴とする。インスリン抵抗性はまた、2型糖尿病の発生につながる要因になり得る。遺伝的糖尿病は、β細胞の機能および調節を妨げる変異によるものである。
【0058】
本明細書で使用する「糖尿病」は、約130mg/dlより高い、もしくは約130mg/dlの空腹時血中グルコース濃度、または約75gのグルコース負荷を経口投与した約2時間後にもしくは食事後に評価される、約180mg/dlより高い、もしくは約180mg/dlの血漿グルコース濃度として特徴付けられる。当業者に理解されるように、糖尿病の特定において用いられる特徴は変わりやすく、本発明において示される糖尿病を定義するために、最新の基準(例えば、世界保健機関によって開示された基準)を使用することができる。
【0059】
用語「糖尿病」はまた、高血糖(慢性高血糖を含む)、グルコースホメオスタシス障害または耐糖能障害、およびインスリン抵抗性を有する個体を含むことが意図される。高血糖個体における血漿グルコース濃度は、例えば、信頼性の高い診断指示薬より求められるような、正常より高いグルコース濃度を含む。このような高血糖個体は、糖尿病の明らかな臨床症状を発症するリスクがある、または発症しやすい。
【0060】
本明細書で使用する用語「高コレステロール血症合併症」は、一般集団より、高コレステロール血症と診断された患者においてよく生じる医学的問題/臨床的問題を意味する。本明細書において意図されるように、高コレステロール血症に関連する合併症は、心血管疾患(すなわち、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、高血圧、アンギナ、心臓発作/心不全、心不整脈)、膵炎、糖尿病、肥満、および脳血管疾患(すなわち、出血性脳卒中)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0061】
本明細書で使用する用語「糖尿病合併症」は、糖尿病と診断された患者においてよく生じる医学的問題/臨床的問題を意味する。本明細書において意図されるように、糖尿病合併症は、糖尿病の結果として血管および/または神経の変化から生じる医学的問題/臨床的問題を含む。これらは、皮膚状態(すなわち、細菌感染、真菌感染、糖尿病性皮膚障害、リポイド類壊死症、糖尿病性(diabeticorum)(すなわち、糖尿病性水疱)、発疹状黄色腫症、皮膚アレルギー反応、指硬化症(digital scleroris)、播種状環状肉芽腫、および黒色表皮腫)、歯肉疾患、眼疾患(すなわち、緑内障、白内障、網膜症)、腎臓病、ニューロパシー(すなわち、全身性ニューロパシー、遠位性全身性多発ニューロパシー、近位性ニューロパシー、大腿ニューロパシー、神経障害性関節症(neuropathic antrhropathy)、脳神経障害、自律神経ニューロパシー(authonomic neuropathy)、圧迫性ニューロパシー、および糖尿病性筋萎縮症)、高インスリン血症、血糖異常、高尿酸血症、肥満、高コレステロール血症、心血管疾患/障害(すなわち、高血圧、心臓病、心臓発作、脳卒中)を含み、これに限定されない。
【0062】
本明細書で使用する用語「患者」は、本発明による組成物を用いた治療が提供される生物(哺乳動物を含む)について説明する。開示された治療方法から利益を得る哺乳動物種は、類人猿、チンパンジー、オランウータン、ヒト、サル、ならびに家畜化された動物(すなわち、ペット)(例えば、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、およびハムスター)を含むが、これに限定されない。
【0063】
本明細書で使用する「同時投与」および「同時に投与する」は、ある特定の生物学的状態を治療するための生物学的要因の調節において、本発明の方法(システアミン化合物の投与)との使用に適した化合物または治療法を投与することを含む。ある特定の態様において、システアミン化合物は、糖尿病または高コレステロール血症の治療において有用なことが知られているさらなる治療剤と同時に投与される。例えば、本発明によれば、システアミン化合物は、高コレステロール血症の治療において有用な治療法もしくは薬剤(すなわち、身体活動の増加、食事摂取の変化、アルコール摂取および喫煙の減少/停止、治療剤(例えば、ラボスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、およびアトルバスタチン)の投与)、または高コレステロール血症に関連する合併症、状態、もしくは疾患の治療において有用な治療法もしくは薬剤と同時に投与することができる。
【0064】
他の態様において、システアミン化合物は、糖尿病の治療における使用に適した少なくとも1種類のさらなる治療剤(すなわち、インシュリンおよび/もしくは血糖降下化合物)、または糖尿病に関連する合併症、状態、もしくは疾患の治療における使用に適した少なくとも1種類のさらなる治療剤と同時に投与することができる。
【0065】
本発明によれば、治療剤はシステアミン化合物と混合した状態で(例えば、薬学的組成物で)提供することができる。または、薬剤およびシステアミンは別個の化合物として提供することができる(例えば、別個の薬学的組成物が連続して、同時に、または異なる時間で投与される)。好ましくは、システアミン化合物と、高コレステロール血症および/または糖尿病を治療するための公知の薬剤(または治療法)が別々に投与される場合、システアミン化合物および公知の薬剤が相互作用できないように互いに時間をあけて投与されない。
【0066】
本明細書で使用する「システアミン化合物」への言及は、システアミン、様々なシステアミン塩(システアミン化合物の薬学的に許容される塩を含む)、ならびに、例えば、体内で容易に代謝されてシステアミンを生じることができるシステアミンのプロドラッグを含む。本発明の範囲内には、システアミンの類似体、誘導体、抱合体、および代謝産物も含まれ、これらは、生物学的状態の治療、リスク患者における生物学的状態の予防、または関心対象の生物学的状態に関連する合併症、状態、もしくは疾患の治療において、本明細書に記載のような、生物学的要因を調節する能力を有する。システアミンの様々な類似体、誘導体、抱合体、および代謝産物は周知であり、当業者に容易に用いられ、例えば、米国特許第6,521,266号、同第6,468,522号、同第5,714,519号、および同第5,554,655号に示される化合物、組成物、および送達方法を含む。
【0067】
本明細書において意図されるように、システアミン化合物は、システアミンの内因性生成を増強することが知られている化合物(パントテン酸を含む)を含む。パントテン酸は、哺乳動物において、多くの生理学的反応に重要な物質であるコエンザイムAに変換される天然ビタミンである。システアミンはコエンザイムAの成分であり、コエンザイムA濃度が上がると循環システアミン濃度が上がる。アルカリ金属塩(例えば、第三リン酸マグネシウムおよび硫酸マグネシウム(magnesium sulphite)(エプソム塩))はコエンザイムAの形成を増強する。さらに、コエンザイムAからシステアミンへの分解は、クエン酸などの還元剤の存在によって高められる。従って、パントテン酸とアルカリ金属塩の組み合わせはコエンザイムAの生成を高め、それに伴ってシステアミンの生成を高める。従って、本発明の1つの態様において、本明細書において示されるシステアミンの利点は、天然の代謝プロセスを介して(例えば、コエンザイムAの働きを介して、もしくはシステインの代謝産物として)(図1および2を参照されたい)、またはパントテン酸の投与によって、システアミンの内因性生成を促進することによって実現することができる。
【0068】
本明細書で使用する用語「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容され、かつシステアミン化合物の活性を大きく減少または阻害しない任意のシステアミン化合物塩を意味する。適切な例には、有機酸もしくは無機酸(例えば、酢酸、酒石酸、トリフルオロ酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、メタン、スルホン酸、硫酸、リン酸、硝酸)を用いた酸添加塩、または塩化物が含まれる。
【0069】
本明細書で使用する用語「有効量」は、望ましい生物学的応答を誘発するのに必要な量を意味する。本発明によれば、システアミン化合物の有効量は、生物学的状態の治療(例えば、高コレステロール血症と診断された患者における総血中コレステロール濃度の低下、またはリスク患者における糖尿病の発症の予防)において使用するための、少なくとも1つの生物学的要因における観察可能な効果(すなわち、アディポネクチン濃度の観察可能な増加)をもたらすのに必要な量である。有効量は、総血清コレステロール濃度または血中グルコース濃度を1%〜85%減少させるのに必要な量を含んでもよい。ある特定の態様において、有効量は、生物学的状態に関連する合併症(すなわち、糖尿病または高コレステロール血症に関連する合併症、例えば、肥満、網膜症、緑内障、白内障、心臓病、脳卒中、高血圧、ニューロパシー、皮膚障害、歯肉疾患など)の重篤度を、5%、10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、および100%減少させる。
【0070】
本発明は、システアミン化合物を投与することによって様々な生物学的要因を調節するための有益な材料および方法を初めて提供する。1つの態様において、本発明の材料および方法は、患者へのシステアミン化合物の投与によって、高コレステロール血症および/または高コレステロール血症に関連する合併症、ならびに糖尿病および/または糖尿病に関連する合併症を治療する。本明細書において具体的に例示されるのは、高コレステロール血症および/または糖尿病の診断前または診断後の、患者へのシステアミン化合物の投与である。好ましい態様において、高コレステロール血症、糖尿病、または高コレステロール血症もしくは糖尿病のいずれかに関連する合併症、状態、もしくは疾患を治療するために、塩酸システアミン(ならびに/またはその類似体、誘導体、およびプロドラッグ)が患者に投与される。好ましくは、システアミン化合物(例えば、塩酸システアミン)の投与は不定時に行われる。
【0071】
システアミン化合物は、糖尿病の治療に用いられる他の公知の薬剤および/または療法(すなわち、インシュリン、スルホニル尿素、ビグアニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、D-フェニルアラニン)、ならびに/または高コレステロール血症および/もしくは糖尿病に関連する合併症の治療に用いられる他の公知の薬剤および/もしくは療法と同時に投与することができる。本発明の他の態様において、システアミン化合物は、高コレステロール血症の治療に用いられる材料および/または方法(食事摂取の改善(すなわち、食事中の飽和脂肪およびコレステロールの量の減少)、身体活動の増加、体重減少、アルコール摂取/喫煙の減少または停止、ホルモン補充療法、ならびにコレステロール低下薬(すなわち、スタチン、胆汁酸捕捉剤、ニコチン酸、およびフィブリン酸)を含むが、それに限定されるわけではない)と同時に投与することができる。
【0072】
他の態様において、システアミン化合物は、高コレステロール血症に関連する合併症を治療するために用いられる材料および/または方法と同時に投与することができる。高コレステロール血症に関連する合併症を治療するために用いられる材料および/または方法は、心血管疾患を治療するための薬および方法(すなわち、ライフスタイルの変化(食事摂取、身体活動、喫煙の減少もしくは停止)、β遮断薬、ベナゼプリル、ラミプリル、および/またはトルセミドの使用)、動脈硬化症を治療するための薬および方法(すなわち、ライフスタイルの変化、α受容体遮断薬の使用)、アテローム性動脈硬化症を治療するための薬および方法(すなわち、ライフスタイルの変化、アスピリンまたはace阻害剤の使用)、脳卒中を治療するための薬および方法(すなわち、抗血小板薬、抗凝血薬の使用)、高血圧を治療するための薬および方法(すなわち、ライフスタイルの変化、高血圧薬の使用)、膵炎を治療するための薬および方法(すなわち、抗生物質、H2受容体拮抗薬の使用)、糖尿病を治療するための薬および方法(すなわち、インシュリン)、ならびに肥満を治療するための薬および方法(すなわち、食事摂取の変化)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0073】
システアミン化合物は、I型糖尿病、II型糖尿病、ならびに関連する状態および症状を治療するために、インシュリンと同時に投与することができる。II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、糖尿病により引き起こされる高血圧、肥満、または血管、眼、腎臓、神経、自律神経系、皮膚、結合組織、もしくは免疫系への損傷の場合、システアミン化合物は、インシュリンの代わりに血糖降下化合物と同時に投与されてもよい。または、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、糖尿病により引き起こされる高血圧、肥満、または血管、眼、腎臓、神経、自律神経系、皮膚、結合組織、もしくは免疫系への損傷を治療するために、システアミン化合物はインシュリンおよび血糖降下化合物と同時に投与されてもよい。システアミン化合物と同時に投与することができる、さらなる化合物および/または療法は、遺伝子に基づく療法;インシュリンおよびインシュリン投与方法(すなわち、インシュリンポンプ、皮下インシュリン注入、吸入器);スルホニル尿素(すなわち、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、トルブタミド、クロルプロプラミド);インシュリン分泌促進物質(すなわち、レパグリニド、ナテグリニド);αグルコシダーゼ阻害剤(すなわち、アカルボース、ミグリトール);ビグアニド;ならびにチアゾリジンジオン(すなわち、ロシグリタゾン、ピアグリタゾン)を含むが、それに限定されるわけではない。
【0074】
本発明の組成物は、様々な投与経路で(例えば、経口投与可能な形態(例えば、錠剤、カプセルなどを含む))、または非経口経路、静脈内経路、筋肉内経路、経皮経路、頬経路、皮下経路、坐剤経路、もしくは他の経路を介して使用することができる。このような組成物は、本明細書において総称して「薬学的組成物」と呼ばれる。典型的に、薬学的組成物は、単位剤形(すなわち、ヒトが摂取するための単位量として適した物理的に別個の単位であり、それぞれの単位は、1つまたは複数の薬学的に許容される他の成分(すなわち、希釈剤または担体)と共同して望ましい治療効果を生じるように計算された所定量の活性成分を含む)でもよい。
【0075】
本発明のシステアミン化合物は、薬学的に有用な組成物を調製するための公知の方法に従って処方することができる。製剤は多くの情報源において説明されている。情報源は周知であり、当業者に容易に入手可能である。例えば、Remington's Pharmaceutical Science (Martin EW [1995] Easton Pennsylvania, Mack Publishing Company、19thed.)は、本発明と共に使用することができる製剤について述べている。非経口投与に適した製剤には、例えば、滅菌した注射用水溶液(酸化防止物質、緩衝液、静菌薬、および溶質(これは、意図されるレシピエントの血液と製剤を等張にする)を含んでもよい)、ならびに滅菌した水性懸濁液および非水性懸濁液(懸濁剤および増粘剤を含んでもよい)が含まれる。製剤は、単回量または複数回の用量で容器(例えば、密封したアンプルおよびバイアル)に入れられてもよく、使用前に滅菌液体担体(例えば、注射用水)の条件しか必要としない、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存されてもよい。即時注射用溶液および懸濁液は、滅菌した粉末、顆粒、錠剤などから調製されてもよい。前記で詳細に述べられた成分に加えて、本発明の製剤は、問題になっている製剤の種類と関連する、当技術分野において従来からある他の薬剤を含むことができると理解されるはずである。
【0076】
1つの態様において、システアミン化合物および担体(例えば、包接化合物ホスト材料)を含む組成物が提供される。本明細書に記載の「包接化合物ホスト材料」は、水溶解性を高めるように、化学的安定性を高めるように、ならびに/または生物学的膜へのおよび生物学的膜を通過する薬物(例えば、システアミン化合物)送達を高めるようにシステアミン化合物と相互作用する。包接化合物ホスト材料などの担体を用意することによって、安定化されたシステアミン化合物分子は、毒性を誘導しない投与量で、患者へ安全に送達できると考えられる。さらに、このような担体材料は、腸などのアルカリ環境においてコーティングの溶解を可能にするコーティング材料(すなわち、腸溶コーティング)を含んでもよい。
【0077】
本発明に従って使用することができる包接化合物ホスト材料は、その全体が本明細書に組み入れられる米国特許出願第20040033985号に開示されるものを含む。意図される包接化合物ホスト材料には、タンパク質(例えば、アルブミン)、クラウンエーテル、ポリオキシアルキレン、ポリシロキサン、ゼオライト、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム、コレスチミド、セベラマー、セルロース誘導体、デキストラン誘導体、デンプン、デンプン誘導体、およびその薬学的に許容される塩が含まれる。意図されるセルロース誘導体およびデキストラン誘導体には、DEAE-セルロース、グアニジノエチルセルロース、またはDEAE-Sephadexが含まれる。本発明の組成物に含まれる好ましいデンプンまたはデンプン誘導体には、シクロデキストリン、老化デンプン(retrograded starch)、分解デンプン、老化デンプンおよび分解デンプンの組み合わせ、疎水性デンプン、アミラーゼ、デンプン-ジエチルアミノエチルエーテル、およびデンプン-2-ヒドロキシエチルエーテルが含まれる。
【0078】
本発明によれば、好ましい包接化合物ホスト材料は、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体(すなわち、メチルβ-シクロデキストリン(M-β-CD)、ヒドロプロピルβ-シクロデキストリン(HP-β-CD)、ヒドロエチルβ-シクロデキストリン(HE-β-CD)、ポリシクロデキストリン、エチルβ-シクロデキストリン(E-β-CD)、および分枝シクロデキストリンを含むが、これに限定されない。当業者であれば、本発明に従って、任意のシクロデキストリンもしくはシクロデキストリン混合物、シクロデキストリンポリマー、または修飾シクロデキストリンを使用できることを理解するだろう。シクロデキストリンは、Wacker Biochem Inc., Adrian, MichiganまたはCerestar USA, Hammond, Indiana、ならびに他の供給業者から入手することができる。シクロデキストリンまたはその誘導体を用いた包接複合体の形成は、蒸発減、酸素、酸、可視光および紫外線による攻撃、ならびに分子内反応および分子間反応から構成要素(すなわち、システアミン化合物)を保護する。
【0079】
シクロデキストリンの一般化学式は(C6O5H9)nである。本発明の組成物における包接化合物ホスト材料の含有量は約1〜80wt%でもよい。好ましくは、本発明の組成物における包接化合物ホスト材料の含有量は約1〜60wt%である。使用される包接化合物ホスト材料の実際の量は、システアミン化合物および本発明の組成物の調製に用いられる治療剤がもしあればその実際の含有量に大きく左右される。
【0080】
本発明に従うシステアミン化合物の投与は、当業者に現在知られているまたは将来知られる任意の適切な方法および技法によって達成することができる。好ましい態様において、システアミン化合物は、特許を受けることができ、かつ容易に摂取される経口製剤(例えば、丸剤、トローチ剤、錠剤、ガム、飲料など)に処方される。次いで、摂取は、高コレステロール血症および/または糖尿病の診断時、診断前、または診断後に行われる。
【0081】
本発明によれば、組成物は、活性成分として有効量のシステアミン化合物、および1つまたは複数の種類の無毒の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む。本発明において使用するための、このような担体の例には、エタノール、ジメチルスルホキシド、グリセロール、シリカ、アルミナ、デンプン、ソルビトール、イノシタール(inosital)、キシリトール、D-キシロース、マンニオール(manniol)、粉末セルロース、結晶セルロース、タルク、コロイド状二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム(magnesium cabonate)、リン酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムカルシウム、水酸化アルミニウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、レシチン、ならびに等価な担体および希釈剤が含まれる。
【0082】
望ましい治療的処置のために、このような投与量を投与するために、本発明の組成物は、高コレステロール血症の場合、典型的に、担体または希釈剤を含む全組成物の約0.1%〜95%を構成し、糖尿病の場合、典型的に、担体または希釈剤を含む全組成物の約0.1%〜45%を構成する。使用される投与量は、治療を受ける個体の年齢、体重、健康状態、または性別に基づいて変更することができる。
【0083】
本発明のある特定の態様において、システアミン化合物および少なくとも1つ種類のさらなる治療剤(すなわち、身体の運動、食事摂取の改善、および体重減少)を同時投与する前に、インシュリン依存性糖尿病(IDDM)を発症するリスクを特定するために、患者が評価される。最近、IDDMの臨床的発症に先行する重要なマーカーとして、様々なマーカーが特定されている。無症候患者における糖尿病感受性を評価するために当業者に公知の方法を用いて検出することができる免疫学的マーカーは、インシュリンに対する自己抗体(IAA)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)、および島細胞(例えば、IA-2と呼ばれる、チロシンホスフェートファミリーの中の受容体型の島細胞メンバー)に対する自己抗体(ICA)を含むが、これに限定されない。本発明に従って使用することができる、このようなマーカーを検出することによって糖尿病感受性の無症候患者を特定するための方法は、米国特許第6,391,651号および同第6,316,209号を含むが、これに限定されない。
【0084】
1つの態様において、生物学的要因を調節するために患者に投与されるシステアミン化合物の投与量は、1日当たり不定時に約1mg/kg体重〜約1,000mg/kg体重である。好ましくは、生物学的状態を治療するために、塩酸システアミンが、毎日、約30mg/kg体重未満で投与される。
【0085】
1つの態様において、糖尿病を治療するために、システアミンが毎日、不定時に患者に投与される。ここで、治療的有効量のシステアミンは、患者体重1キログラム当たり約0.1mg〜400mgまたは等モル量のシステアミン化合物である。別の態様において、糖尿病を治療するために、塩酸システアミンが毎日、不定時に患者に投与される。ここで、治療的有効量の塩酸システアミンは、約1.0mg〜600mg/kg BWまたは等モル量のシステアミン化合物である。好ましくは、本発明に従って糖尿病を治療するために、一日量が約30mg/kg BW未満のシステアミンまたは等モル量のシステアミン化合物が患者に投与される。
【0086】
本発明の1つの態様において、高コレステロール血症を治療および/もしくは予防するために、または高コレステロール血症に関連する合併症の発症を遅延するために患者に投与されるシステアミン化合物の1日量は、約1mg/kg体重〜300mg/kg体重でもよい。好ましくは、1日当たり不定時に、約5mg/kg体重〜150mg/kg体重のシステアミン化合物が投与される。より好ましい態様において、毎日、約10mg〜100mg/kg体重の塩酸システアミンまたは等モル量のシステアミン化合物が患者に投与される。
【0087】
以下は、本発明を実施するための手順を例示する実施例である。これらの実施例は限定するものと解釈してはならない。特別の定めのない限り、全てのパーセントは重量パーセントであり、全ての溶媒混合物比は体積比である。
【0088】
実施例1
19匹の雄のGoto-Kakizaki Wistarラット(GKラット)(体重300±20g)をスチールケージに入れて飼育した(1ケージ当たり3〜4匹のラット)。ケージを2日毎に交換した。室内温度および相対湿度は、それぞれ、23±3℃および65±1%に保った。飼料および飲料水を与えた。GKラットを1ヶ月順応させた。全てのGKラットが糖尿病の症状(すなわち、頻繁な摂食、頻繁な飲水、頻繁な排尿、ならびに高い血漿グルコースおよびインスリン抵抗性)を示した時に、GKラットを無作為に3つの群に分けた(対照群では7匹のラット、処置I群および処置II群ではそれぞれ6匹のラット)。
【0089】
前期:
実験の1日前、17:00に、全ての群から飼料を全て取り出したが、飲料水は取り出さなかった。2日目の09:30に、全てのGKラットの空腹時血漿グルコースを測定した。10:00に、糖負荷試験(2g/kg BW)を行い、全てのGKラットの血漿グルコース濃度も測定した。3日目に、対照群のGKラットに食塩水(2ml/ラット)を経口投与し、処置I群および処置II群のGKラットに、メトホルミン溶液(17mg/kg体重(BW),1日1回2ml,09:30)を経口投与した。このレジメは、その後の数日間にわたって行った。9日目に、空腹時血漿グルコースを測定し、全ての群における全てのGKラットに対して、再度、経口糖負荷試験を行った。
【0090】
中期:
10日目に、処置II群のGKラットのレジメを、その後の6日間にわたって、メトホルミンと塩酸システアミンの経口投与(メトホルミン17mg/kg BW、塩酸システアミン15mg/kg BW)に変更したのに対して、対照群および処置I群のレジメは変更しなかった。このレジメは6日間行った。
【0091】
後期:
レジメを変更して6日後に、空腹時血漿グルコースを測定し、糖負荷試験を行い、全ての群における全てのGKラットに対して、血液試料および組織試料(肝臓、十二指腸、膵臓腺、脂肪、および筋肉)を集めた。血液試料を3時間4℃で保存し、3500rpmで10分間遠心分離した。次いで、血清を集め、-20℃で保存した。組織試料を集めたら液体窒素に入れ、次いで、-80℃で保存した。
【0092】
実施した糖負荷試験はGKラットを一晩絶食させる工程を含んだ。翌日、09:30に、空腹時血漿グルコースを測定した。10:00に、グルコース溶液(2g/kg BW)を経口投与した。0時間、0.5時間、1時間、2時間、および3時間で、血液試料を尾静脈から集め、次いで、血漿グルコース試験装置を用いて行った。
【0093】
この血清試験法は、放射能測定によって血清インシュリン濃度を測定する工程、ならびに公知の試験キットおよびプロトコールを用いてコレステロール、遊離脂肪酸、およびトリグリセリドを測定する工程を含んだ。
【0094】
実施例の前期、中期、および後期の全ての群におけるGKラットの経口糖負荷試験結果を、それぞれ、表1、表2、および表3ならびに図3、図4、および図5に示した。これらの期間の空腹時血漿グルコース濃度の変化を表に示し、図6にまとめた。これらの結果は、メトホルミンのみの経口投与によって、十二指腸血漿グルコース濃度およびインスリン抵抗性がある程度まで低下することを示している。しかしながら、メトホルミンが塩酸システアミンと同時に投与された時、予想もしなかった改善された結果が観察された。具体的には、メトホルミンおよび塩酸システアミンの両方が投与された時、血漿インシュリン濃度および遊離脂肪酸濃度(糖尿病を示す)は、メトホルミン(またはシステアミン化合物)が単独で投与された場合より低かった(図7〜10を参照されたい)。さらに、メトホルミン/塩酸システアミン投与を止めた後に、血漿インシュリンよび遊離脂肪酸の低濃度は、メトホルミンまたはシステアミン化合物のいずれかが単独で投与された場合より長く維持されると予想される。
【0095】
(表1) 前期に行われた糖負荷試験

【0096】
(表2) 中期に行われた糖負荷試験(メトホルミン経口投与の6日後)

【0097】
(表3) 後期に行われた糖負荷試験(メトホルミン+塩酸システアミン経口投与の6日後)

【0098】
実施例2-非糖尿病ラットに対するメトホルミンおよびシステアミン化合物の同時投与の効果
32匹の雄Wistarラット(Shanghai Slaccas Laboratory Animal Centerから購入)(約13週齢および体重約300g)を、動物施設において2週間、1つ1つのケージに入れて順応させた。食物および水を自由に与えた。
【0099】
Wistarラットを無作為に4つの群に分けた。それぞれの群は8匹のラットを含んだ。群1(対照、n=8)は、胃管栄養法によって食塩水(2ml/ラット)で処置した。群2(DC15、n=8)は、胃管栄養法によって塩酸システアミン(15mg/kg 体重(BW)、水道水2mlに溶解)で処置した。群3(DC22.5、n=8)は、胃管栄養法によって塩酸システアミン(22.5mg/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置した。群4(DC30、n=8)は、胃管栄養法によって塩酸システアミン(30mg/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置した。動物は全て27日間にわたって10:00に処置した。
【0100】
4つの動物群は異なるケージに入れて同じ部屋で飼育した。ケージは、実験全体を通して食糞を減らすためにワイヤメッシュの底を備えた。28日目の22:00から翌日の9:30まで、ラットを一晩絶食させた。ラットをグルコース(2g/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置し、グルコース投与の2時間後に、血液を尾静脈から集めた。
【0101】
血漿グルコース濃度は、Glucotrendr2装置(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)によって求めた。血漿インシュリン濃度は、ラジオイムノアッセイ法(Insulin RIA Kit, NO:0410, Shanghai Radioimmunoassay Research Institutionから購入)によって求めた。空腹時血漿グルコースに対する効果および空腹時血漿インシュリン濃度に対する効果を表4に示した。略語STDは、平均についてのデータのばらつき、すなわち「標準偏差」を示す。略語pは、結果の有意水準を示す。
【0102】
(表4) 正常Wistarラットにおける空腹時グルコース濃度および空腹時インシュリン濃度に対する塩酸システアミンの用量依存的効果

【0103】
DC30(群4)について得られた結果は、対照群(群1)と比較した時に統計的に差があった(p=0.037)。DC22.5(群3)は血中グルコース濃度の減少を示したが、結果は、対照群と比較した時に統計的に有意でなかった(p=0.082)。
【0104】
結果から、塩酸システアミンは、正常な空腹Wistarラットにおいて、血中グルコース濃度を下げる用量依存的な効果をもたらすことが示唆される。塩酸システアミンは、正常な空腹Wistarラットにおいて血中インシュリン濃度に影響を及ぼさない。
【0105】
実施例3-糖尿病ラットに対するメトホルミン(実施例1より高い用量)およびシステアミン化合物の同時投与の効果
36匹のGoto-Kakizaki Wistar(GK)ラット(Shanghai Slaccas Laboratory Animal Centerから購入)(約13週齢および体重321〜323g)を、動物施設において2週間、1つ1つのケージに入れて順応させた。食物および水を自由に与えた。
【0106】
36匹のGKラットを、体重(BW)および血漿グルコース濃度に基づいて4つの群に分けた。群1(対照、n=10)は、胃管栄養法によって食塩水(2ml/ラット)で処置した。群2(DC、n=6)は、胃管栄養法によって塩酸システアミン(22.5mg/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置した。群3(メトホルミン、Met、n=10)は、胃管栄養法によってメトホルミン(34mg/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置した。群4(Met+DC、n=10)は、最初の10日間、メトホルミン(34mg/kg BW/日、水道水2mlに溶解)で処置し、次の10日間、塩酸システアミン(22.5mg/kg BW)およびメトホルミン(34mg/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置した。動物は全て20日間にわたって10:00に処置した。
【0107】
4つの動物群は、異なるケージに入れて同じ部屋(温度23±3℃、相対湿度65±1%)で飼育した。ケージは、実験全体を通して食糞を減らすためにワイヤメッシュの底を備えた。糖負荷試験を行う前に22:00から翌日の9:30まで、ラットを一晩絶食させた。糖負荷試験のために9:30に、ラットをグルコース(2g/kg BW、水道水2mlに溶解)で処置し、グルコース注射の0.5時間後、1時間後、2時間後、および3時間後に、血液を尾静脈から集めた。血漿グルコース濃度は、Glucotrendr2装置(Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)によって求めた。血漿インシュリン濃度は、ラジオイムノアッセイ法(Insulin RIA Kit, NO:0410, Shanghai Radioimmunoassay Research Institutionから購入)によって求めた。血漿グルコース濃度に対する効果を表5に示し、血漿インシュリン濃度に対する効果を表6に示した。
【0108】
(表5) GK糖尿病ラットにおける塩酸システアミン(DC)単独および塩酸システアミン(DC)+メトホルミンについての糖負荷試験(平均±STD, mmol/L)

【0109】
メトホルミンが投与された群の場合、1時間、2時間、および3時間で得られた結果は対照群と統計的に差がある(p<0.05、表中にで示した)。塩酸システアミンがメトホルミンと同時に投与された場合、1時間、2時間、および3時間で得られた結果は、メトホルミンだけしか投与されていない群と統計的に差がある(p<0.05、表中にで示した)。メトホルミンおよび塩酸システアミンの同時投与について、0.5時間で得られた結果は対照群と比較して小さい(p=0.059、表中に+で示した)
【0110】
(表6) GK糖尿病ラットにおけるインシュリン(IU/L)およびアディポネクチン(ng/ml)に対する塩酸システアミン(DC)の効果(平均±STD)

【0111】
グルコース摂取の1時間後、2時間後、および3時間後の時点における、メトホルミンが単独で投与された群のグルコース濃度に関する表6からの結果は、それぞれの対照群と統計的に有意な差があった。塩酸システアミンは単独で、GK糖尿病ラットにおいてグルコース濃度にもインシュリン濃度にも影響を及ぼさなかった。メトホルミン投与は、低いが統計的に有意でないインシュリン濃度をもたらした。しかしながら、メトホルミンが塩酸システアミンと同時に投与された時、空腹時を除く全ての時点で、グルコース濃度低下の改善(特に、メトホルミンが単独で投与された時のメトホルミンの治療効果と比較した場合)が観察された。
【0112】
アディポネクチンはシステアミンによって有意に増大したが、メトホルミン単独では増大しないことも観察された。これは、システアミン化合物の単独投与が、リスク患者における糖尿病または高コレステロール血症の発症の予防に有用であり得ることを示唆している。なぜなら、アディポネクチンは、どちらの生物学的状態の発症にも重要な役割を果たしているからである。
【0113】
(表7) GK糖尿病ラットの様々な組織におけるglut4発現に対する塩酸システアミン(DC)およびメトホルミンまたはその組み合わせの効果(平均±STD)(対照濃度と比較して何倍変化したかで表した)

【0114】
表5〜7に示したように、システアミン化合物(例えば、塩酸システアミン)は、GKラットの肝臓、筋肉、脂肪細胞における総glut4の発現を有意に増大することができる。この増大は、筋肉と比較して肝臓および脂肪細胞において非常に大きい。このような活性は、システアミン化合物が、glut4発現に関連する生物学的状態の発症の予防だけではなく、低glut4発現に関連する生物学的状態の治療に有用であり得ることを示唆している。例えば、これらの結果に基づいて、システアミン化合物は、低glut4発現に関連する合併症、状態、または疾患の治療に有用であり得る。
【0115】
メトホルミン単独でも、測定された全ての組織において総glut4発現レベルを増大させたが、有意に増大しなかった。しかしながら、メトホルミンがシステアミン化合物と同時に投与された時に、総グルコース輸送体(glut4)発現レベルはさらに上昇した。
【0116】
実施例4-糖尿病ヒトに対するシステアミン化合物の投与の効果
中国にあるnational reference center for diabetesにおいて、小規模の非盲検無作為化試験を行った。II型糖尿病と診断された60人の患者(男女、30〜75歳)を募集した。全被験者に説明を行い、参加する同意を得た。糖尿病の診断は、1999年のWHO基準に基づいて行った。さらに、選択された患者は、以下の基準:(1)糖尿病歴5年未満、(2)空腹時血漿グルコース濃度7〜14mmol/L、(3)血清トリグリセリド濃度2.5mmol/L以上、(4)尿タンパク質排泄30mg/日以上、および(5)過去1ヶ月間の抗脂質薬およびACE阻害剤の非摂取を満たした。以下の状態:(1)心臓、肝臓、および/または腎臓の機能不全、(2)過去3ヶ月間の急性糖尿病合併症および/または任意の急性心血管合併症もしくは他の慢性疾患、ならびに(3)妊娠または授乳中の患者は、この試験から排除した。
【0117】
患者は、4つの群(それぞれ15人の患者からなる)に無作為に分けた。対照群の被験者には抗糖尿病薬を投与しなかった。システアミン単独(DC)群は、540mg/日の塩酸システアミンで治療した。メトホルミン単独(Met)群において、メトホルミンの用量は、2ヶ月間、変更しなかった。DC+Met群について、患者は、追加の100mg/日の塩酸システアミンを含めて、最初に投与された同量のメトホルミンのままであった。全ての患者を2ヶ月間治療し、分析のために試験開始時、試験の1ヵ月後、および2ヵ月後に試料を集め、測定した。本明細書に記載の結果は、試験の1ヵ月後に集められ、測定された試料からのものである。
【0118】
(表8) 糖尿病患者における脂質およびインシュリンに対する塩酸システアミンの効果

【0119】
(表9) 糖尿病患者における脂質およびインシュリンに対するメトホルミンの効果

【0120】
(表10) 糖尿病患者における脂質およびインシュリンに対するメトホルミンとシステアミンの組み合わせの効果

【0121】
表8〜10に示したように、塩酸システアミンの投与は、空腹時インシュリン(FINS)、HOMA(ホメオスタシスモデル評価)、および血中尿酸(UA)濃度を有意に減少させる。対照的に、メトホルミンが単独で投与された時、IGF-1しか減少しなかった。このような結果は、インスリン抵抗性を改善するために、システアミン化合物を患者に投与できることを示唆している。さらに、結果から、塩酸システアミンの投与は、患者のインシュリン様成長因子1(IGF1)、Cペプチド(CP)、および微量アルブミン尿を有意に減少させることが分かる(微量アルブミン尿の減少は明白であるが、統計的に有意でない)。このことは、糖尿病に関連する合併症およびインスリン抵抗性症候群を治療または予防するために、システアミン化合物を単独で、またはさらなる治療剤と組み合わせて使用できることを示唆している。略語FBSは空腹時血糖を表す。
【0122】
実施例5-脂肪食ラットにおける塩酸システアミンの効果
(表11) 脂肪食ラットにおける塩酸システアミンの効果

表11に示したように、用量11.25mg/kgおよび22.5mg/kgのシステアミンは、脂肪食ラットにおけるトリグリセリド濃度およびコレステロール濃度を下げることができる。システアミンは脂肪食ラットにおいてHDLを上げ、LDLを下げる傾向があるが、これは有意なものでない。さらに、指示された用量のシステアミンは尿酸および遊離脂肪酸を有意に減少させる。これらの結果は、高コレステロール血症を発症するリスクのある患者(すなわち、無症候性の異常脂質代謝を有する患者)へのシステアミン化合物の投与が、このような投与から利益を得る可能性があることを示唆している。さらに、これらの結果は、高コレステロール血症(または異常脂質代謝)と診断された患者へのシステアミン化合物の投与が、生物学的状態と関連する症状を(このような治療を用いて排除できなくとも)軽減する可能性があることを示唆している。さらに、システアミン化合物の投与は、異常脂質代謝または高コレステロール血症に関連する任意の合併症、状態、または疾患の発症の遅延、さらには予防に治療的に有効である可能性がある。
【0123】
実施例6-製剤
本発明の組成物は、約1〜95wt%のシステアミン化合物および約1〜80wt%の担体(例えば、包接化合物ホスト材料)を含む。ある特定の態様において、本発明の組成物は、システアミン化合物と同時に投与された時に治療結果を確実にする投与量のさらなる治療剤をさらに含む。
【0124】
本実施例において、包接化合物ホスト材料は、主に、シクロデキストリンおよび/またはその誘導体を含む。シクロデキストリン誘導体は、メチルβ-シコルデキストリン(cycoldextrin)(M-β-CD)、ヒドロプロピルβ-シコルデキストリン(HP-β-CD)、ヒドロエチルβ-シコルデキストリン(HE-β-CD)、ポリシクロデキストリン、エチルβ-シクロデキストリン(E-β-CD)、および分枝シコルデキストリンを含む群より選択される。システアミン含有組成物における包接化合物ホスト材料の実行可能な含有量は1〜80wt%であるが、包接化合物ホスト材料の好ましい実行可能な範囲1〜60wt%、より好ましい実行可能な範囲10〜40wt%も使用することができる。使用される包接化合物ホスト材料の実際の量は、システアミン化合物、およびシステアミン含有組成物の調製に用いられる1つまたは複数の種類のさらなる治療剤がもしあればその実際の含有量に左右される。
【0125】
ある特定の態様において、本発明に従って作成される組成物は小さな顆粒の形をしており、顆粒はそれぞれ実質的に0.28〜0.90mmの好ましい直径を有する。これらの顆粒はマイクロカプセル化法を用いて調製される。この方法は、包接特性を有する巨大分子物質を使用することを伴う。使用することができる物質の1つが前記の包接化合物ホスト材料(主に、シクロデキストリンを含む)である。包接化合物ホスト材料は、システアミンおよび/または1つもしくは複数の種類のさらなる治療剤の分子を包み込み、それによって、組成物中のシステアミン化合物および/または治療剤が周囲の光、熱、空気、および水分から保護および遮断される、分子カプセルとして働く巨大分子物質である。従って、システアミン化合物の安定性が保たれる。マイクロカプセル化法において用いられる包接化合物ホスト材料は、好ましくは、バチルス属(Bacillus)の存在下でシクロデストリングリコシドトランスフェラーゼとデンプンを反応させることによって生成される、6〜12個のグルコース分を有する環式多糖化合物である。急性、亜急性、慢性の毒性試験を用いた様々な試験から、この巨大分子物質は患者において毒性レベルを下げることが分かっている。マイクロカプセル化プロセスの後に、それぞれの顆粒は、前記のコーティング材料の少なくとも1つの層、好ましくは複数の層を用いてコーティングすることができる。
【0126】
以下は、システアミン化合物について前記で述べられた製剤を調整する方法の一例である。ポリテトラフルオロエチレンと連結し、ポリテトラフルオロエチレンでコーティングされた撹拌機を備えるジャケット付きリアクタにおいて、主に窒素が雰囲気である状態で、エタノールに溶解した75wt%塩酸システアミン溶液4080gを添加する。使用するシステアミンの純度、融点、および燃焼残渣(burning residue)は、それぞれ、好ましくは、98%以上、66〜70℃、および0.05%以下である。次いで、同様に、窒素ガスの保護の下で、1200gのβ-シクロデキストリンをリアクタに添加する。(β-シクロデキストリンの品質は食品添加物の条件に従う。特に、乾燥ベースの純度は98%を超える。乾燥による重量減少は10.0%未満である。燃焼残渣は0.2%未満である。重金属の含有量は10ppm未満である。ヒ素含有量は2ppm未満である)。次いで、混合物を40℃で3時間加熱する。次いで、加熱を止め、その後、攪拌を2時間続ける。次いで、得られた生成物を40〜50℃の温度で真空乾燥させた後に粉砕し、ふるい(例えば、40メッシュ)にかける。組成物の成分と接触し得る全ての装置部品は、好ましくは、ステンレス鋼で作られるべきである。
【0127】
タンク型ミキサーにおいて、乾燥した環境の保護下で、4200g(乾燥ベース)のシステアミン化合物(説明したように包接プロセスを受けている)、2600gの充填剤、ならびに1200gの崩壊剤および1700gの結合剤を添加する。次いで、これらの成分を徹底的に混合し、適量の無水エタノールを添加し、次いで、それと混合してもよい。結果として生じる混合物は中程度の硬さを有する軟らかい材料であり、その結果、手のひらで軽く持つことでボールの形にすることができる。次いで、ボールの形をした、結果として生じた生成物は、軽く触ることでばらばらにすることができる。窒素の保護の下で、混合物を造粒機でペレット化した後に、結果として生じた小さな顆粒を直ぐに流動層乾燥機に投入し、次いで、実質的に真空の環境で40〜50℃の温度で乾燥させる。
【0128】
次いで、以下の配合:酢酸フタル酸セルロース8.0g、ポリエチレングリコールテレフタレート2.4ml、酢酸エチル33.0ml、および酢酸イソプロピル33.6mlを用いた方法によって、腸溶コーティング材料を調製する。結果として得られる、前記で得られた顆粒は、窒素の保護の下で、前記の腸溶コーティング材料の少なくとも1つの層(好ましくは、複数の層)で均一にコーティングされる。腸溶コーティング材料はアルカリ環境でしか溶解しない。これにより、システアミン化合物は患者の胃にとどまっている間、組成物から早く逃げ出さない。前記のように、システアミン化合物は患者の胃の胃粘膜を有害に刺激し得る。
【0129】
次いで、結果として得られた、システアミン含有組成物の顆粒を、実質的に真空の乾燥機において、40〜50℃の温度で完全に乾燥させる。次いで、全ての溶媒を除去する。次いで、結果として得られた顆粒を室温まで冷却し、カンチレバーダブルへリックスブレンダ(cantilever double helix blender)によって、マイクロカプセルと適量の着香剤および芳香剤を混合した。システアミン含有組成物は、内部に塩酸システアミンおよびシクロデキストリンがあり、外部が腸溶コーティング材料でコーティングされているマイクロカプセルである。
【0130】
生成された組成物は、滑らかな表面、優れた流動特性を有する小さな粒子(すなわち、微粒子)の形状を示し、様々な動物飼料と混合しやすい。組成物の各顆粒の直径は、好ましくは、0.28〜0.90mmである。組成物は優れた安定性も有する。組成物が密封プラスチックバッグで包装され、乾燥した冷暗所で1年間保存された後に、その特性は変化しないことが分かっている。
【0131】
前記の特定の構造を有する組成物は、システアミン化合物それ自体より多くの機能的利点を有する。第1に、システアミン化合物、および組成物に含まれる1つもしくは複数の種類のさらなる治療剤がもしあればその活性は、生成後に保たれる。第2に、組成物は、患者の胃に顕著な副作用を引き起こさないはずである。第3に、組成物の活性は保存中に保たれるだけではなく、より重要なことに、患者の腸に到達するまで胃腸管(gastro-tract)を通過する時にも保たれる。
【0132】
本明細書において言及または引用された全ての特許、特許出願、および刊行物は、本明細書の明白な開示と一致する程度まで、全ての図および表を含めて、その全体が参照として組み入れられる。
【0133】
本明細書に記載の実施例および態様は例示にすぎず、本明細書に記載の実施例および態様を考慮すれば様々な修正または変更が当業者に示唆され、本願の精神および範囲に含まれることが理解されるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0134】
(図1)システアミンの代謝経路を示す。
(図2)コエンザイムAの構成成分としてのシステアミンを示す。
(図3)本発明の材料および方法の有効性を証明する、マウスモデルにおいて行われた経口糖負荷試験の結果を示す。
(図4)本発明の材料および方法の有効性を証明する、マウスモデルにおいて行われた経口糖負荷試験の結果を示す。
(図5)本発明の材料および方法の有効性を証明する、マウスモデルにおいて行われた経口糖負荷試験の結果を示す。
(図6)本発明の材料および方法の有効性を証明する、マウスモデルにおいて行われた空腹時血漿グルコース試験の結果を示す。
(図7〜図10)本発明の材料および方法の有効性を証明する、マウスモデルにおいて行われた血清試験の結果を示す。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的要因と関連する生物学的状態と診断された患者に、有効量のシステアミン化合物を任意の不定時に投与する工程を含む、生物学的状態を治療するために少なくとも1つの生物学的要因を調節するための方法。
【請求項2】
生物学的要因が、グルコース輸送体発現、インシュリン様成長因子、C-ペプチド濃度、血中尿酸濃度、微量アルブミン濃度、アディポネクチン濃度、インシュリン濃度、グルコース濃度、血糖値、遊離脂肪酸濃度、トリグリセリド濃度、高密度リポタンパク質濃度、および低密度リポタンパク質濃度からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
生物学的要因と関連する生物学的状態が、高コレステロール血症、高脂血症、高インスリン血症、血糖異常、高尿酸血症、高トリグリセリド濃度、肥満、心血管疾患、高血圧、高血糖、グルコース不耐性、低密度および高密度リポタンパク質濃度、1型および2型糖尿病、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、脳血管血栓症、脳血管出血、脳卒中、アンギナ、冠状動脈血栓症、冠状動脈性心疾患、間欠性跛行、ならびに四肢の虚血からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
生物学的状態が高コレステロール血症または高脂血症であり、システアミン化合物の有効量が約1.0mg〜約300mg/kg体重/日または等モル量である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
システアミン化合物の有効量が約5.0mg〜約150mg/kg体重/日または等モル量である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
システアミン化合物が塩酸システアミンであり、有効量が約10mg〜100mg/kg体重/日または等モル量である、請求項4記載の方法。
【請求項7】
システアミン化合物と他の公知のコレステロール低下剤を同時に投与する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項8】
他の公知の薬剤が、ラボスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、胆汁酸樹脂、ニコチン酸、ナイアシン、およびフィブラートからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
システアミン化合物と、高コレステロール血症または高脂血症と関連する合併症を治療するのに用いられる他の公知の物質を同時に投与する工程をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項10】
他の公知の物質が、β遮断薬、ベナゼプリル、ラミプリル、トルセミド、α受容体遮断薬、アスピリン、ace阻害剤、抗血小板薬、抗凝血薬、高血圧薬、抗生物質、H2受容体遮断薬、およびインシュリンからなる群より選択される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
生物学的状態が糖尿病であり、システアミン化合物の有効量が約0.1mg〜約1,000mg/kg体重/日または等モル量である、請求項3記載の方法。
【請求項12】
システアミン化合物がシステアミンであり、システアミンの有効量が約0.1mg〜約400mg/kg体重/日または等モル量である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
システアミン化合物が塩酸システアミンであり、塩酸システアミンの有効量が約1.0mg〜約600mg/kg体重/日または等モル量である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
システアミン化合物がシステアミンであり、システアミンの有効量が約30mg/kg体重/日または等モル量である、請求項11記載の方法。
【請求項15】
システアミン化合物が塩酸システアミンであり、塩酸システアミンの有効量が、約15mg/kg体重/日、22.5mg/kg体重/日、もしくは30mg/kg体重/日、または等モル量である、請求項11記載の方法。
【請求項16】
システアミン化合物が塩酸システアミンであり、塩酸システアミンの有効量が約540mg/kg体重/日または等モル量である、請求項11記載の方法。
【請求項17】
システアミン化合物と、糖尿病を治療するのに用いられる他の公知の薬剤を同時に投与する工程をさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項18】
他の公知の薬剤が、インシュリン、スルホニル尿素、ビグアニド、α-グルコシダーゼ阻害剤、チアゾリジンジオン、メグリチニド、およびD-フェニルアラニンからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
他の公知の薬剤が、グリブリド、グリピジド、グリメピリド、トルブタミド、クロルプロプラミド、レパグリニド、ナテグリニド、アカルボース、ミグリトール、ロシグリタゾン、およびピアグリタゾンからなる群より選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
システアミン化合物の有効量が約0.1mg〜約1,000mg/kg体重/日または等モル量である、請求項1記載の方法。
【請求項21】
システアミン化合物の有効量が約30mg/kg体重/日未満または等モル量である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
投与用の固体型システアミン化合物を提供するために、システアミン化合物を包接化合物ホスト材料にカプセル化する工程をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項23】
包接化合物ホスト材料が、タンパク質、クラウンエーテル、ポリオキシアルキレン、ポリシロキサン、ゼオライト、コレスチラミン、コレスチポール、コレセベラム、コレスチミド、セベラマー、セルロース誘導体、デキストラン誘導体、デンプン、デンプン誘導体、およびその薬学的に許容される塩からなる群より選択される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
包接化合物ホスト材料が、システアミン化合物の小さな顆粒を形成するためのシクロデキストリンを含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
顆粒の大きさが約0.28〜0.90mmの直径を有する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
シクロデキストリンがシクロデキストリングリコシドトランスフェラーゼであり、バチルス属(Bacillus)の存在下でシクロデキストリングリコシドトランスフェラーゼとグルコース分子を反応させる工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項27】
システアミン化合物を撹拌機に添加する工程、包接ホスト材料を撹拌機に添加する工程、混合物を加熱して固体生成物を形成する工程、および固体生成物を真空乾燥させる工程をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
固体生成物の腸溶コーティングを行う工程をさらに含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
システアミン化合物および包接化合物ホスト材料を含む、組成物。
【請求項30】
約1〜95%wtのシステアミン化合物を含む、請求項29記載の組成物。
【請求項31】
約1〜80%wtの包接化合物ホスト材料を含む、請求項29記載の組成物。
【請求項32】
約1〜60%wtの包接化合物ホスト材料を含む、請求項31記載の組成物。
【請求項33】
約10〜40%wtの包接化合物ホスト材料を含む、請求項32記載の組成物。
【請求項34】
包接化合物ホスト材料がシクロデキストリンまたはその誘導体である、請求項29記載の組成物。
【請求項35】
包接化合物ホスト材料が、メチルβ-シコルデキストリン(cycoldextrin)(M-β-CD)、ヒドロプロピルβ-シコルデキストリン(HP-β-CD)、ヒドロエチルβ-シコルデキストリン(HE-β-CD)、ポリシクロデキストリン、エチルβ-シクロデキストリン(E-β-CD)、および分枝シコルデキストリンからなる群より選択される、請求項34記載の組成物。
【請求項36】
組成物が、直径を有する小さな顆粒の形で調製される、請求項29記載の組成物。
【請求項37】
小さな顆粒の直径が実質的に0.28〜0.90mmである、請求項36記載の組成物。
【請求項38】
小さな顆粒がマイクロカプセル化法を用いて調製される、請求項36記載の組成物。
【請求項39】
システアミン化合物が塩酸システアミンであり、包接化合物ホスト材料がシクロデキストリンである、請求項29記載の組成物。

【公表番号】特表2007−536244(P2007−536244A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511497(P2007−511497)
【出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/015306
【国際公開番号】WO2005/107730
【国際公開日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(506370803)オメガ バイオ‐ファーマ(アイ.ピー.3)リミテッド (1)
【Fターム(参考)】