説明

仮囲い等の支柱を鉛直姿勢で結合支持する支持杭とこの支持杭と支柱の締結装置

【課題】 地中に埋込んだ杭の鉛直度に狂いがあっても、その埋込まれた杭の上部に結合して支持される仮囲いパネル等の支柱を、その鉛直度を簡単に修正しつつ支持杭に結合させて支持することができるようにした支持杭と、その杭に支柱を鉛直姿勢で結合支持させるための締結装置を提供すること。
【解決手段】 仮囲い用支柱の支持杭1と、この杭1の上部に脱着可能に締結される支柱32と、これら両者間に介在して前記支柱32の鉛直度を調節すると共に当該支柱32と前記杭1の締結をする締結機構11とを備え、前記締結機構11は、前記杭1の上端に結合される第一フランジ板12と支柱下端に結合される第二フランジ板14とが、いずれか一方のフランジ板と一体のドーム状部13を介して対向し、かつ、前記ドーム状部13に当接したフランジ板14が、前記支柱32の鉛直度を調節するために、水平面内での傾きを変更可能に締結される締結手段15を備えたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外における工事現場等にて仮設される仮囲いパネルやその他の各種の屋外仮設物(例えば、簡易フェンス、簡易道路標識、大型テント、仮設住宅等)の支柱を地面上に鉛直に設置するために使用される支柱の支持杭、及び、その支柱を前記杭に鉛直姿勢で支持させて結合する締結装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、屋外における工事現場においては、図6及び図7に示すように、安全上、その他の見地からその現場を仮囲いパネルにより囲むことが行われているが、仮囲いパネルを地面GR上に設置する場合の一般的な設置態様は、次の通りである。まず、鋼管製の支柱の支持杭42、43を前後2列状で、横方向に所定間隔置きに地中にハンマー等によって打込み、次に、複数本のパネル支持用支柱44の下端部を前列の複数本の杭42の上端部に締め金具45によって締結すると共に、前後の杭42、43の上端部間と、後列の杭43の上端部と各支柱44の上端側との間と、後列の杭43の上端部間に、それぞれ補強用の鋼管46、47、48を水平及び斜めに掛け渡してこれらを締め金具45によってそれぞれ締結し、更に、上下複数本のパネル取付け用鋼管49を複数本の支柱44の前面側において、上,下、中間の複数箇所に架け渡し、締め金具45によって水平状に締結している。
【0003】
そして、最後に、複数本のパネル取付け用鋼管49の前面に、工事区域の外側に向けて仮囲いを形成するパネル単体41aをそれぞれ引っ掛け金具50によって、垂直状で互いに連結した状態に、着脱自在に係止することにより、仮囲いパネル41の設置を完成するものであった。
【0004】
しかし、このような、仮囲いパネル41等の地面GR上への設置方法では、組立て工数が多く、作業効率が甚だ悪い。特に、複数本の杭42、43をハンマーなどによって地中に打込む際、これらの杭42、43の鉛直度に狂いが生じ易く、各杭42,43の鉛直度が狂うと各杭42,43の上端にそれぞれ締結される支柱44の鉛直度にも狂いが生じて、仮囲い用の各パネル単体41aを鉛直状に設置することができなくなるという問題がある。
【0005】
従って、杭42、43の地中へ打込む際、これらの杭42、43の鉛直度に狂いが生じないように、その打込み作業に多くの時間を掛けて慎重に行なわなければならず、これが作業効率の低さを助長している。また、杭42,43が鉛直に埋設できていない場合には、支柱44と杭42との結合時に、その締め金具45によって支柱44の鉛直性を出すようにしているので、一層作業効率が悪くなっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の仮囲いの設置状況による問題点に鑑み、地中に埋込んだ杭の鉛直度に狂いがあっても、その埋込まれた杭の上部に結合して支持される仮囲いパネル等の支柱を、その鉛直度を簡単に修正しつつ支持杭に結合させて支持することができるようにした支持杭と、その杭に支柱を鉛直姿勢で結合支持させるための締結装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明の仮囲い用支柱の支持杭の構成は、仮囲い用支柱の支持杭と、この杭の上部に脱着可能に締結される支柱と、これら両者間に介在して前記支柱の鉛直度を調節すると共に当該支柱と前記杭の締結をする締結機構とを備え、前記締結機構は、前記杭の上端に結合される第一フランジ板と支柱下端に結合される第二フランジ板とが、いずれか一方のフランジ板と一体のドーム状部を介して対向し、かつ、前記ドーム状部に当接したフランジ板が、前記支柱の鉛直度を調節するために、水平面内での傾きを変更可能に締結される締結手段を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明における支持杭と支柱の締結装置の構成は、支持杭の上端とその杭に支持される支柱下端の間に配置して前記杭の上端側に前記支柱を鉛直姿勢で支持し当該杭に結合するための締結機構であって、前記杭の上端に結合される第一フランジ板と、支柱に結合される第二フランジ板と、いずれか一方のフランジ板の上部に形成されたドーム状部と、前記両フランジ板の間を締結するボルト,ナットなどによる締結手段とを備え、第二フランジ板の第一フランジ板に対する対面角を前記締結手段の締結具合を調節することにより調整して、第二フランジ板に結合される支柱の鉛直度を調整するようにしたことを特徴とするものである。
【0009】
上記の本発明支持杭は、下端に向かって先細りの錐形状に形成されているものが望ましい。また、本発明締結装置を適用する杭は、前記の錐形状杭のほか、公知の杭や他の形状の杭であってもよい。
【0010】
また、本発明杭及び本発明締結装置では、支柱の鉛直度を修正するための締結手段を複数本のボルトナット、或は、締結幅を変更できるクランプ体で構成する。
【0011】
更に、本発明では、支柱の鉛直度を修正するために杭と支柱の締結装置に、操作棒を脱着可能に装着するための装着部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明支持杭は、その杭の上部に仮囲いパネル等の支柱を締結する際、ドーム状部によってその支柱の鉛直度を簡単に修正して締結することができるので、仮囲いパネル等を鉛直姿勢で地面上に設置する作業の大幅な時間短縮をはかることができる。
【0013】
支持杭と支柱を結合する本発明締結装置は、支持杭が地中に鉛直に埋設されない場合でも、その杭に支持される支柱を鉛直に立設することがができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明支持杭とこの杭を支柱へ締結装置の実施の形態例について、図1〜図4により説明する。
【0015】
まず、図1,図2及び図3に示すように、本発明において支持杭1は、その下端1aに向かって先細り形状の錐形状部2に構成されている。そして、錐形状部の外周には、螺旋状リブ2aが形成されこの錐形状部2が構成されている。なお、本発明では、螺旋状の溝によっても錐形状部2を形成してもよい。前記杭1の錐形状部2の上半側は、少なくとも1段又は数段階のテーパー部3とそれぞれに連続した大径部4によってその上端1bに向かってほぼ階段状に先太りとなる形状に構成されている。
【0016】
上記杭1の上端に設けられる支柱を支持して結合する手段は、後述する締結機構11(以下、締結装置11ともいう)が前記杭1の上端1bの上に設置されて構成される。即ち、締結機構11は、杭1の上端1bにこの杭1の軸心に対して直角に固着された第一フランジ板12と、そのフランジ板12の上面中央に一体に設けられたドーム状部13と、該ドーム状部13の上に載せた形で当接する第二フランジ板14と、両ブランジ板13,14の締結手段である複数本(図の例では4本)のボルトナット15とによって構成されている。ここで、第二フランジ板14の外周には円弧状の長穴による3個以上(この実施例では4個)のボルト挿通穴16が形成されている。
【0017】
また、第二フランジ板14の外側周面には、このフランジ板14の平面内での角度、或は、水平面に対する傾きを変更するためのツール(工具)となる操作棒Tの装着部となる穴17が、少なくとも1個、図のこの実施例では4個形成されている。
【0018】
図1〜図3の実施例において、支持杭1と、その杭1に支持される支柱を結合する締結機構11は以上のように構成されていて、図4と図5に例示するように、屋外における工事現場にて、仮囲いパネル31等を地面GR上に設置する場合に使用する。
【0019】
まず、支持杭1を横方向に所定間隔置きに地中に埋込む。この埋込みは、杭1に縦荷重(垂直荷重)をかけた状態でこの杭1を回転操作することにより、錐形状部2のねじ作用を利用して、この杭1を地中内に容易に、垂直状に埋込む(ねじ込むこと)ことができる。なお、杭1に縦荷重をかけつつ回転を与える工具としては、一例として、さく岩機程度の大きさのエアドライバー状の工具を用いるとよい。
【0020】
杭1が地中に埋設されたら、仮囲いパネル31を支える支柱32を各杭1の上部に締結機構11によって後述するように鉛直姿勢で支持させて結合し、各支柱32の上下部と中間に、複数本のパネル取付け用鋼管34を締め金具35によって水平状に締結してパネル支持枠体を形成する。
【0021】
そして、パネル支持枠体におけるパネル取付け用鋼管34の前面(工事区域とは反対側、例えば道路側)に、仮囲いパネル31におけるパネル単体31aを、それぞれ引っ掛け金具36によって、各パネル単体31a同士が互いに垂直状に連結された状態に着脱自在に係止し、仮囲いパネル31の設置を完成する。
【0022】
本発明において、支持杭1に結合立設される各支柱32は、図1に例示したH型鋼S1、或は、図2に例示した2本の鋼管を前後に並べて結合一体化した複合鋼材S2などの支柱32が適宜使用できる。そして、これらの支柱32の下端32aには、図3に示した杭1の上端1bに設けた第一フランジ板12と同一形状の第二フランジ板14が水平に固着されている。この第二フランジ板14には、杭1の第一フランジ板12に設けた複数本のボルト15を通すための円弧長穴状をなすボルト挿通穴16(図3参照)が形成されている。図3に示した穴16は、フランジ板12の外周に通じる切欠(図示せず)を備えたものであってもよい。切欠があるとボルトを通し易い。
【0023】
ここで、地中内に埋込まれる各杭1は、必ずしも鉛直に埋設できるものではないから、鉛直度が狂ったものがある(殆んどの杭1は厳密な鉛直に立設されるものではないといってもよい)。
【0024】
そこで、本発明においては、図1,図2に示すように、地中に埋込んだ各杭1の上部に各支柱32を支持して結合する際に、各支柱32の下部と一体の第二フランジ板14を前記杭1の上部の第一フランジ板12の上面にあるドーム状部13の上に載置し、各支柱32の鉛直度を下部のドーム状部13の球面を利用してその都度簡単に調節できるようにしたのである。
【0025】
各支柱32の鉛直度の調節は、各杭1の上端の第一フランジ板12と各支柱32の下端の第二フランジ板14に通した複数のボルトナット15の締結度合を調節しつつ、第二フランジ板14の装着部17に工具Tを入れて当該フランジ板14の傾きをドーム状部13を支点にして変更することにより、ドーム状部13の上で支柱下端のフランジ板14の傾きを水平な向きに修正してからボルトナット15を締結固定し、各支柱32を各杭1の上に正確な鉛直度で固定することができるのである。本発明では、ボルトナット15に代え、図示しないが、締結幅(上下幅)が変更できるクランプ体により2枚のフランジ板12と14の周縁を調整された上下のクランプ幅で緊圧して、フランジ板14を水平に修正し固定することもできる。
【0026】
以上の説明においては、ドーム状部13が支持杭1の上端に設けた第一フランジ板12の上に一体に形成されていたが、本発明においては、ドーム状部13を、支柱32の下端に設けたフランジ板14の下面に、下向きに設けた態様を採ることができる。
【0027】
ドーム状部13がフランジ板14に下面に下向きに設けられた場合も、支柱32の鉛直度の調節は、図1〜図3により説明した先の実施形態の場合と同様である。
【0028】
本発明における支持杭と支柱の結合をする締結機構11は、当該機構11を独立した部品として形成することにより本発明締結装置11の一例に形成される。この締結装置11は、支持杭側の第一フランジ板12と支柱側の第二フランジ板14と、両フランジ板12,14の間に介在させたドーム状部13と、前記両フランジ板12,14をつなぐボルト・ナット15などによる締結手段により構成されるものであるが、支持杭側の第二フランジ板12は、予め支持杭1の上端に溶接やバヨネット結合などにより固着していてもよく、或は、締結装置11を独立の部品として用意しておき、支持杭1を地中に埋設するとき、又は、埋設してから第一フランジ板12を支持杭上端に固着するようにしてもよい。締結装置11が独立部品であると、実施例の錐形状以外の態様に形成された支持杭と、この杭に結合して支持される支柱にも適用できるので便利である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
以上に本発明の実施の形態例について述べたが、本発明は上記の実施の形態例に限定されることなく、本発明の技術的思想に基づき各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態例では、地中埋込み用杭上に仮囲いパネルの支柱を締結する締結機構11を説明したが、本発明は、屋外における小規模な工事現場等にて仮設される各種の屋外設置物等である、簡易フェンス、道路標識、大型テント、仮設住宅その他の仮設物の支柱を地面上に垂直に設置するために使用される地中埋込み用の支持杭、及び、その杭と支柱の締結装置としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】仮囲いパネルの支柱の一例と本発明支持杭との締結機構を説明する側面図。
【図2】仮囲いパネルの支柱の別例と本発明支持杭との締結機構を説明する側面図。
【図3】締結機構の第二フランジ板とドーム状部を説明するための平面図。
【図4】図1の杭と支柱を用いて仮設した仮囲いパネルの背面側を示した背面図。
【図5】図4の右側面図。
【図6】従来の仮囲いパネルの屋外設置構造における仮囲いパネルの背面側を示した背面図。
【図7】図6の右側面図。
【符号の説明】
【0031】
1 本発明支持杭
1a 杭の下端
1b 杭の上端
11 締結機構
12 杭の上端の第一フランジ板
13 ドーム状部
14 支柱下端の第二フランジ板
15 ボルトナット
16 ボルト挿通穴
T 操作棒
31 仮囲いパネル
32 支柱
32a 支柱の下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮囲い用支柱の支持杭と、この杭の上部に脱着可能に締結される支柱と、これら両者間に介在して前記支柱の鉛直度を調節すると共に当該支柱と前記杭の締結をする締結機構とを備え、前記締結機構は、前記杭の上端に結合される第一フランジ板と支柱下端に結合される第二フランジ板とが、いずれか一方のフランジ板と一体のドーム状部を介して対向し、かつ、前記ドーム状部に当接したフランジ板が、前記支柱の鉛直度を調節するために、水平面内での傾きを変更可能に締結される締結手段を備えたことを特徴とする仮囲い支柱の支持杭。
【請求項2】
締結手段は、2つのフランジ板の間に架設された複数本のボルトナット又は締付幅を変更できるクランプ体で構成された請求項1の支持杭。
【請求項3】
支持杭は下端に向かって先細りの錐形状に形成されている請求項1又は2の支持杭。
【請求項4】
支柱下端側のフランジ板の外周上には、操作棒を脱着可能に装着するための操作棒装着部が形成されている請求項1〜3のいずれかの支持杭。
【請求項5】
支持杭の上端とその杭に支持される支柱下端の間に配置して前記杭の上端側に前記支柱を鉛直姿勢で支持し当該杭に結合するための締結機構であって、前記杭の上端に結合される第一フランジ板と、支柱に結合される第二フランジ板と、いずれか一方のフランジ板の上部に形成されたドーム状部と、前記両フランジ板の間を締結するボルト,ナットなどによる締結手段とを備え、第二フランジ板の第一フランジ板に対する対面角を前記締結手段の締結具合を調節することにより調整して、第二フランジ板に結合される支柱の鉛直度を調整するようにしたことを特徴とする支持杭と支柱の締結装置。
【請求項6】
第一フランジ板は予め支持杭の上端に固着されているか、又は、支持杭を地中に埋設するとき、若しくは、埋設してから当該杭の上端に固着する請求項1の締結装置。
【請求項7】
締結手段が複数本のボルトナット又は複数の締結幅を変更できるクランプ体で構成されている請求項5又は6の締結装置。
【請求項8】
第二フランジ板の外側周面には、操作棒を脱着可能に装着するための操作棒の装着部が形成されている請求項5〜7のいずれかの締結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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