説明

仮接着材組成物、及び薄型ウエハの製造方法

【課題】仮接着及び剥離が容易である仮接着材。
【解決手段】(A)下記の(A1)と(A2)とのヒドロシリル化により得られた、重量平均分子量15,000以上のオルガノポリシロキサン、
(A1):T単位シロキサン単位35〜99モル%及びM単位のシロキサン単位1〜25モル%を含み、ケイ素原子に結合したアルケニル基をケイ素原子結合全有機基の2モル%以上含有し、且つ、重量平均分子量が2,000を超えるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(A2)特定の、ケイ素原子結合水素原子を少なくとも2個を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン又はヒドロシリル基含有化合物、
及び、
(B)沸点220℃以下の有機溶剤、
を含有してなる仮接着材組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱によって基板どうしの接合、基板と支持体との接合、及び接合されたもの間剥離をコントロールすることができる仮接着材組成物、並びに、該接着材を用いる薄型ウエハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
3次元の半導体実装は、より一層の高密度、大容量化を実現するために必須となってきている。3次元実装技術とは、1つの半導体チップを薄型化し、さらにこれをシリコン貫通電極(TSV;through silicon via)によって結線しながら多層に積層していく半導体作製技術である。これを実現するためには、半導体回路を形成した基板を非回路形成面(「裏面」ともいう)研削によって薄型化し、さらに裏面にTSVを含む電極形成を行う工程が必要である。シリコン基板の裏面研削工程では、研削面の反対側に裏面保護テープを貼り、研削時のウエハ破損を防いでいる。しかし、このテープは有機樹脂フィルムを基材に用いており、柔軟性がある反面、強度や耐熱性が不十分であり、裏面での配線層形成プロセスを行うには適しない。
【0003】
そこで半導体基板をシリコン、ガラス等の支持体に接着材を介して接合することによって、裏面研削、裏面電極形成の工程に十分耐えうるシステムが提案されている。この際に重要なのが、基板を支持体に接合する際の接着材である。これは基板を支持体に隙間なく接合でき、後の工程に耐えるだけの十分な耐久性が必要で、さらに最後に薄型ウエハを支持体から簡便に剥離できることが必要である。このように、最後に剥離することから、本明細書では、この接着材を仮接着材と呼ぶことにする。
【0004】
これまでに公知の仮接着材と剥離方法としては、光吸収性物質を含む接着材を高強度の光を照射し、接着材層を分解することによって支持体から接着材層を剥離する技術(特許文献1:特開2004-64040号公報)、及び、熱溶融性の炭化水素系化合物を接着材に用い、加熱溶融状態で接合・剥離を行う技術(特許文献2:特開2006-328104)が提案されている。前者の技術はレーザ等の高価な装置が必要であり、かつ基板1枚あたりの処理時間が長くなるなどの問題があった。また後者の技術は加熱だけで制御するため簡便である反面、200℃を超える高温での熱安定性が不十分であるため、適用範囲は狭かった。
【0005】
また、シリコーン粘着剤を仮接着材層に用いる技術が提案されている(特許文献3:米国特許第7541264号公報)。これは基板を支持体に付加硬化型のシリコーン粘着剤を用いて接合し、剥離の際にはシリコーン樹脂を溶解、或いは分解するような薬剤に浸漬して基板を支持体から分離するものである。そのため剥離に非常に長時間を要し、実際の製造プロセスへの適用は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-64040公報
【特許文献2】特開2006-328104公報
【特許文献3】米国特許第7541264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、仮接着が容易であり、且つ、剥離も容易で、生産性を高めることができる仮接着材及びこれを使用する薄型ウエハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、オルガノポリシロキサンと、希釈溶剤である有機溶媒とからなる組成物が上記目的の達成に有効であることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、
(A)下記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)とヒドロシリル基含有化合物(A2)との白金族金属系触媒の存在下でのヒドロシリル化反応により得られた、重量平均分子量15,000以上のオルガノポリシロキサン、
(A1):
(I)R1SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を35〜99モル%、
(II)R23SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を0〜49モル%、
(III)R456SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1〜25モル%
[ここで、R1〜R6は非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表す]
を含有し、
且つ、ケイ素原子に結合したアルケニル基をケイ素原子に結合した全有機基の2モル%以上含有し、
且つ、重量平均分子量が2,000を超えるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
【0010】
(A2)平均組成式(1):
7SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、R7はアルケニル基以外の1価の炭化水素基である。a及びbはそれぞれ0.75≦a≦2.5、0.05≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす数である。)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は、一般式(2):
【0011】
【化1】

(式中、R及びRは独立にアルケニル基以外の1価の炭化水素基であり、Xは2価の有機基である。)
で表されるビスヒドロシリル化合物、又はこれらの組み合わせであって、上記オルガノポリシロキサン(A1)の総アルケニル基に対してケイ素原子に結合した水素原子数が0.4〜1.0モル倍となる量のヒドロシリル基含有化合物、
並びに、
【0012】
(B)沸点220℃以下の有機溶剤、
を含有してなる仮接着材組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の仮接着材は、加熱によって接合と剥離をコントロールすることができる。該仮接着材は200℃以下の温度で対象どうしを貼り合わせることが可能で、且つ200℃以上での熱安定性に優れている。該仮接着材組成物用いた本発明の薄型ウエハの製造方法は生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例における剥離性試験の方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
<仮接着材組成物>
−(A)オルガノポリシロキサン−
・(A1):アルケニル基含有オルガノポリシロキサン
(A1)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、R1SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を35〜99モル%、好ましくは50〜95モル%、R23SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を0〜49モル%、好ましくは10〜40モル%、R456SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1〜25モル%、好ましくは3〜20モル%含有する。本明細書においては、M単位、D単位及びT単位の語はここに定義の意味で用いる。
【0016】
上記において、置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等のアルキル基のアルキル基、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基などの炭化水素基、並びに、これらの炭化水素基の水素原子の少なくとも一部が、例えば塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などにより置換された置換炭化水素基、例えば、シアノメチル基、トリフルオロプロピル基等があげられる。好ましくはメチル基、ビニル基、n-プロピル基及びフェニル基である。特に高い耐熱性を維持する上でフェニル基の含有量は重要であり、フェニル基含有量は全有機置換基の40モル%以上であることが好ましく、より好ましくは50〜90モル%である。
【0017】
また、置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6の中にアルケニル基が必須のものとして含有されている。本発明で「アルケニル基」は直鎖状のアルケニル基及び環状のアルケニル基(即ち、シクロアルケニル基)を包含する意味で用いられる。このアルケニル基は(A2)のSiH基を含む化合物と反応させるために導入しており、反応性の観点から、ケイ素原子と結合をしている炭素原子から最も遠い位置に二重結合を有するものが好ましい。また、T単位のR1よりも、R2〜R6に含有されることが、ヒドロシリル化の反応性がより良好であること、及び分子量の増加速度の点で好ましい。アルケニル基の具体例としては、上述のように、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などの炭素原子数2〜8のアルケニル基が挙げられるが、反応性の観点からビニル基が好ましい。
【0018】
アルケニル基の含有量は、(A1)中のケイ素原子に結合した全有機基少なくともの2モル%は必要で、2.5モル%以上が好ましく、10モル%以下であることが好ましい。2モル%より少ない場合、ヒドロシリル化による生成物の分子量増加が小さくなり、得られるオルガノポリシロキサン(A)が耐熱性等の物性に劣るものとなり易い。
【0019】
該オルガノポリシロキサン(A1)において、T単位35モル%より少ない場合、オルガノポリシロキサン(A1)は40℃を超えない温度で固体となり難い。このような(A1)を用いて合成されたポリオルガノシロキサン(A)は、同じく40℃を超えない温度で固体となり難く、流動性のある粘ちょう物質、或いは液状物になりやすいため、好ましくない。また、またオルガノポリシロキサン(A1)は、反応性の末端基、即ちシラノール基や加水分解性残基を有することは、後述するオルガノポリシロキサン(A)の熱安定性の観点から好ましくない。従ってオルガノポリシロキサン(A1)の末端に非縮合反応性のM単位を導入する構造が好ましく、該M単位の含有量は1モル%以上であることが好ましい。
【0020】
D単位は任意的に存在してもよい構造単位であるが、49モル%より多くなる場合、オルガノポリシロキサン(A)は40℃を超えない温度で固体になり難く、流動性のある粘ちょう物質、或いは液状物になりやすい。従って支持体とウエハとの接合が不十分となり、裏面研削、或いはその後の加工で積層体を構成するウエハと支持体がずれる等の不具合が生じる恐れがある。
【0021】
M単位の含有量は、1モル%以上、25モル%以下であり、好ましくは3〜20モル%である。1モル%より少ない場合、得られるオルガノポリシロキサン(A)は有機溶剤に可溶で、且つ、シラノール基や加水分解性残基等の反応性末端基を十分低減した構造とすることが困難である。25モル%より多い場合、該オルガノポリシロキサン(A)は多くの末端を有する構造になり、相対的に分子量が小さくなるため不適である。
【0022】
該オルガノポリシロキサン(A1)は実質的に非縮合反応性であり、たとえその分子末端に前記定義のM単位にて封止されていない縮合反応性残基、即ちシラノール基、アルコキシシリル基等の加水分解性残基が残存したとしても、これら縮合反応性残基の含有量は可能な限り少ない方が好ましい。シラノール基、アルコキシシリル基のような縮合反応性末端残基が分子内に多量に存在すると、熱がかかった際に縮合反応による架橋が生成し、基板の剥離性が大きく変化してしまうため好ましくない。シラノール基の水酸基、及びアルコキシシリル基(Si−OR;ここで、Rは原料として用いたアルコキシシランのアルコキシ残基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基等)のような縮合反応性残基の総量が、全オルガノポリシロキサン(A1)中の4質量%以下、より好ましくは2質量%以下であることが好ましい。M単位の導入は、このような縮合反応性末端基を所望の量まで減じることができる。縮合反応性残基は合計で2質量%以下であることが望ましい。
【0023】
該オルガノポリシロキサン(A1)の分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて、ポリスチレン標準物質によって作製した検量線に則って得られる重量平均分子量(本明細書では、「重量平均分子量」とはこれを意味する。)の値で、2000より大きいことが好ましい。2000以下であると、得られるポリオルガノシロキサン(A)の接着強度が低下し、また耐熱性が損なわれるため適さない。より好ましい重量平均分子量の範囲としては、3000〜80,000程度、さらに好ましくは3000〜50,000程度が好ましい。
【0024】
また、オルガノポリシロキサン(A1)は、T単位、D単位、M単位に加え、SiO4/2で表されるシロキサン単位(Q単位)を含有してもよい。Q単位の含有量としては、0.1〜30モル%が好ましく、0.2〜20モル%がより好ましい。
【0025】
Q単位が30モル%より多くなる場合、生成したオルガノポリシロキサン(A)は固形になりやすいが、分子内部での架橋が高度に進むため、溶剤に対する溶解性が低下するか、軟化点の最適範囲内での制御が困難になるため適さない。
【0026】
Q単位を含有する(A1)成分のオルガノポリシロキサンの典型例として、
(I)前記T単位40〜98.9モル%、
(II)前記D単位0〜48.9モル%、
(III)前記Q単位0.1〜30モル%、及び
(IV)前記M単位1〜25モル%
からなるオルガノポリシロキサンがあげられる。
【0027】
(A1)成分のオルガノポリシロキサンは公知の方法で製造できる。例えば、加水分解縮合反応により、所望のシロキサン単位に対応し、形成し得るオルガノクロロシラン及び/又はオルガノアルコキシシラン、あるいはその部分加水分解縮合物を、すべての加水分解性基(塩素原子、アルコキシ基等)を加水分解するのに過剰の水と、原料シラン化合物及び生成するオルガノポリシロキサンを溶解可能な有機溶剤との混合溶液中へ混合し、加水分解縮合反応させることで得られる。所望の重量平均分子量のオルガノポリシロキサンを得るには、反応温度及び時間、水、有機溶剤の配合量を調節することで可能である。使用する際、不要な有機溶剤を除去し、粉体化して使用してもよい。
【0028】
・ヒドロシリル基含有化合物(A2):
上記のオルガノポリシロキサン(A1)の分子どうしが、ヒドロシリル基含有化合物(A2)にて連結されて高分子量化し、オルガノポリシロキサン(A)を生成する。
【0029】
ヒドロシリル基含有化合物(A2)は、平均組成式(1):
7SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、R7はアルケニル基以外の1価の炭化水素基である。a及びbはそれぞれ0.75≦a≦2.5、0.05≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす数である。)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は、一般式(2):
【0030】
【化2】

(式中、R及びRは独立にアルケニル基以外の1価の炭化水素基であり、Xは2価の有機基である。)
で表されるビスヒドロシリル化合物、又はこれらの組み合わせであるヒドロシリル基含有化合物である。
【0031】
該ヒドロシリル基含有化合物(A2)は、上記オルガノポリシロキサン(A1)の総アルケニル基に対してケイ素原子に結合した水素原子数が0.4〜1.0モル倍となる量で用いられる。
【0032】
平均組成式(1)において、aは1価炭化水素基Rの含有量を示す。aが0.75より小さい場合、相対的にbの値、即ちSiH基の含有量が多くなる。成分(A1)のアルケニル基とのヒドロシリル化反応を考えた場合、SiH量が多すぎると得られる架橋度が高すぎて生成物がゲル化しやすい。また反応後にSiH基が多量に残存すると、熱劣化による発ガスの可能性が高くなり好ましくない。aが2.0より大きい場合、今度は架橋に関与するSiH基量が少なすぎて生成物の分子量が所要の値まで上昇せず、耐熱性が不十分であるため好ましくない。bの値は、さらにケイ素原料の入手し易さから1.0以下が好ましく、また架橋反応を十分進行させるためには0.05以上が好ましい。
【0033】
平均組成式(1)及び一般式(2)において、R、R及びRで表されるアルケニル基以外の1価炭化水素基としては、例えばR1〜R6について例示した、非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基のうち、アルケニル基以外のものを例示することができ、メチル基、プロピル基、フェニル基が好ましい。また、一般式(2)においてXで表される2価の有機基としては、例えば、2価の炭化水素基、具体的には炭素原子数1〜10の2価の飽和脂肪族炭化水素基、例えばメチレン基、エチレン基、直鎖状若しくは分岐した−C−基;2価の芳香族炭化水素基、例えばフェニレン基が使用できる。メチレン基、エチレン基、−C−基、フェニレン基が好ましく、耐熱性の観点からは特にフェニレン基が好ましい。
【0034】
(A2)成分としては、平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン及び一般式(2)で表されるビスヒドロシリル化合物を一種単独でも二種以上を組み合わせても使用することができる。
【0035】
成分(A1)と(A2)との反応において、(A1)中の総アルケニル基に対する(A2)中の総SiH基の割合は、0.4〜1.0モル倍となるようにする。好ましくは0.5〜0.8モル倍である。この割合が0.4モル倍より少ないと生成物の分子量の増加が不十分となり、所望の特性が得難い。この割合が1.0モル倍より大きい場合、生成する樹脂(オルガノポリシロキサン(A))の架橋密度が高すぎてゲル化する恐れがある。また、反応系においてSiH基が過剰となり生成樹脂内に残存し易く、接合後の耐熱試験の際に発泡の原因となり好ましくない。
【0036】
平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの例としては、一般式(3)で表される、両末端にSiH基を有する直鎖ポリシロキサンが使用できる。
【0037】
【化3】

【0038】
一般式(3)において、R8〜R11は、炭素原子数1〜8の1価の炭化水素基、具体的にはメチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基が使用できる。特に好ましくはメチル基、フェニル基が好ましい。また耐熱性の観点から、フェニル基含有量は20モル%以上であることが好ましい。
【0039】
nは0〜38の範囲が好ましい。より好ましくは、0〜2が好ましい。nが38より大きい場合、(A2)とアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)の相溶性が悪くなり、また末端SiH基の反応性が低下するため不適である。
【0040】
上記のようにして得られるポリオルガノシロキサン(A)は重量平均分子量が15,000以上であり、好ましくは20,000以上であり、より好ましくは22,000以上である。また、この重量平均分子量は1,000,000以下でよく、より好ましくは800,000以下である。重量平均分子量が15,000未満であると、接着層の耐熱性が悪くなり、ボイドが発生しやすくなるという不都合が生じる。
【0041】
オルガノポリシロキサン(A)は、好ましくは40〜300℃、より好ましくは40〜230℃、さらに好ましくは40〜200℃の温度範囲内に軟化点を有し、かつ40℃を越えない温度、好ましくは0〜30℃の範囲で固体であることものが適する。
【0042】
−(B)有機溶剤−
成分(B)は、成分(A)のオルガノポリシロキサンを溶解して塗布液を形成する。該塗布液は、スピンコート等、公知の塗膜形成方法によって膜厚(乾燥後)1〜150μmの薄膜を形成できるものであれば好ましい。より好ましい膜厚は5〜120μm、より好ましくは10〜100μmである。
【0043】
また、沸点が220℃を超える有機溶剤は、塗工後の加熱乾燥によっても揮発しにくく、膜内に留まる可能性があり、これが基板接合後の加熱プロセスで高温に晒される際、界面で気泡を形成する要因になりうるので好ましくない。
【0044】
成分(B)として適する、沸点220℃以下の、好ましくは50〜220℃の有機溶剤の例としては、次のものが挙げられる。
【0045】
・炭化水素系:ペンタン、へキサン、シクロヘキサン、デカン、イソドデカン、リモネン;
・ケトン系:アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン;
・エステル系:酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート;
・エーテル系:テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル;
・アルコール系:エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
【0046】
中でもイソドデカン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルが適する。
【0047】
−その他の成分−
上記(A)成分及び(B)成分の他、必要に応じて、例えば塗布性を向上させるため、公知の界面活性剤を添加してもよい。具体的には、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0048】
また、耐熱性をさらに高めるため、公知の酸化防止剤、シリカ等のフィラーを添加してもよい。
【0049】
<薄型ウエハの製造方法>
本発明の薄型ウエハの製造方法は、半導体回路を有するウエハと該ウエハの厚みを薄くするために用いる支持体との接着層として、前述の仮接着剤組成物を用いることを特徴とする。本発明の製造方法により得られる薄型ウエハの厚さは、典型的には5〜300μm、より典型的には10〜100μmである。
【0050】
本発明の薄型ウエハの製造方法は(a)〜(e)の工程を有する。
[工程(a)]
工程(a)は、回路形成面及び回路非形成面を有するウエハの回路形成面を、上述した仮接着材組成物からなる接着層を介して支持体と接合する工程である。回路形成面及び回路非形成面を有するウエハは、一方の面が回路形成面であり、他方の面が回路非形成面であるウエハである。本発明が適用できるウエハは、通常、半導体ウエハである。該半導体ウエハの例としては、シリコンウエハのみならず、ゲルマニウムウエハ、ガリウム−ヒ素ウエハ、ガリウム−リンウエハ、ガリウム−ヒ素−アルミニウムウエハ等が挙げられる。該ウエハの厚さは、特に制限はないが、典型的には600〜800μm、より典型的には625〜775μmである。
【0051】
支持体としては、シリコン板、ガラス板、石英板等が使用可能である。本発明においては、支持体を通して接着層に放射エネルギー線を照射する必要はなく、支持体の光線透過性は不要である。
【0052】
接着層は、上述した仮接着材組成物からなる層である。接着層はウエハの回路形成面と支持体の片面のどちらか一方又は両方に形成され、その後ウエハの回路形成面が接着層を介して支持体表面と接合される。接着層のウエハ回路形成面又は支持体表面への形成は、前記仮接着材組成物を当該面に塗布し、乾燥して(B)成分の有機溶剤を除去して形成する。乾燥は80〜200℃で加熱すればよい。
【0053】
本発明の接着層は加熱によって軟化する。接着層中の樹脂(オルガノポリシロキサン(A))が軟化する温度範囲は好ましくは40〜300℃、より好ましくは40〜230℃、さらに好ましくは40〜200℃であり、この温度にて減圧下、ウエハと支持体を均一に圧着することで、ウエハが支持体と接合した積層体が形成される。より具体的には、ウエハと支持体を設置したチャンバー内を、減圧下、上記温度範囲に加熱することで接着層中のオルガノポリシロキサン(A)が軟化又は融解した後、ウエハと支持体を接触させ、加熱圧着することで、界面に気泡を挟むことなく、一様な接合界面を形成できる。接着層を介してウエハを支持体と接合するとき、支持体の温度は上記温度範囲であることが好ましい。これら接合温度にて接着層中のオルガノポリシロキサンが十分軟化するため、ウエハの貼り合わせされる面に存在する凹凸を隙間なく埋め込むことができる。圧着は、63N/cm以下、好ましくは1〜32N/cm以下の圧力下、より好ましくは2〜23N/cm以下の圧力下で行う。即ち、例えば8インチウエハの場合には20kN以下、好ましくは10kN以下、より好ましくは7kN以下の荷重下で貼り合わせ可能である。
【0054】
ウエハ貼り合わせ装置としては、市販のウエハ接合装置、例えばEVG社のEVG520IS、850TB;SUSS社のXBC300等が挙げられる。
【0055】
[工程(b)]
工程(b)は、支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削する工程、即ち、工程(a)にて貼り合わせて得られた積層体のウエハ裏面側を研削して、該ウエハの厚みを薄くしていく工程である。ウエハ裏面の研削加工の方式には特に制限はなく、公知の研削方式が採用される。研削は、ウエハと砥石に水をかけて冷却しながら行うことが好ましい。ウエハ裏面を研削加工する装置としては、例えば(株)ディスコ製 DAG−810(商品名)等が挙げられる。
【0056】
[工程(c)]
工程(c)は、回路非形成面を研削したウエハ、即ち、裏面研削によって薄型化されたウエハの回路非形成面に加工を施す工程である。この工程にはウエハレベルで用いられる様々なプロセスが含まれる。例としては、電極形成、金属配線形成、保護膜形成等が挙げられる。より具体的には、電極等の形成のための金属スパッタリング、金属スパッタリング層をエッチングするウェットエッチング、金属配線形成のマスクとするためのレジストの塗布、露光、及び現像によるパターンの形成、レジストの剥離、ドライエッチング、金属めっきの形成、TSV形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成など、従来公知のプロセスが挙げられる。
【0057】
[工程(d)]
工程(d)は、工程(c)で加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、即ち、薄型化したウエハに様々な加工を施した後、ダイシングする前に支持体から剥離する工程である。剥離方法としては、主にウエハと支持体を、加熱しながら、水平反対の方向にスライドさせることにより両者を分離する方法、積層体のウエハ又は支持体の一方を水平に固定しておき、加熱しながら他方を水平方向から一定の角度を付けて持ち上げる方法、及び、研削されたウエハの研削面に保護フィルムを貼り、ウエハと保護フィルムをピール方式で剥離する方法等、特に制限なく採用することができる。
【0058】
本発明には、これらの剥離方法すべてに適用可能であるが、水平スライド剥離方式がより適している。積層体は加熱され、接着層が融解、或いは軟化した状態で力をかけることでウエハは支持体から剥離される。加熱温度は、本発明で用いる接着材では好ましくは50〜300℃、より好ましくは60〜230℃、更により好ましくは70〜200℃である。
【0059】
これらの剥離を行う装置としては、EVG社のEVG850DB、SUSS社のXBC300(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0060】
[工程(e)]
工程(e)は、剥離したウエハの回路形成面に残存する接着材を除去する工程である。残存する接着材の除去は、例えば、ウエハを洗浄することにより行うことができる。
【0061】
工程(e)には、接着層中のオルガノポリシロキサンを溶解するような洗浄液であればすべて使用可能であり、具体的には、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等のケトン類、酢酸ブチル、安息香酸メチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のセロソルブ類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類が挙げられ、好ましくはケトン類、エステル類、セロソルブ類であり、特に好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、n−メチル−2−ピロリドン、アセトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノールである。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上組み合わせて用いてもよい。また、除去しにくい場合は、上記溶剤に、塩基類、酸類を添加してもよい。塩基類の例としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、アンモニア等のアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアンモニウム塩類が使用可能である。酸類としては、酢酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの有機酸が使用可能である。添加量は、洗浄液中濃度で、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。また、残存物の除去性を向上させるため、既存の界面活性剤を添加してもよい。洗浄方法としては、上記液を用いてパドルでの洗浄を行う方法、スプレー噴霧での洗浄方法、洗浄液槽に浸漬する方法が可能である。温度は10〜80℃、好ましくは15〜65℃が適する。
【実施例】
【0062】
・調製例1
(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)の合成)
攪拌装置、冷却装置、温度計を取り付けた1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35g、を仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロルシラン127g(0.6モル)、ジフェニルジクロルシラン56g(0.2モル)、メチルビニルジクロルシラン14.1g(0.1モル)、トリメチルクロルシラン9g(0.1モル)を仕込み、フラスコ内に攪拌しながら1時間で滴下し、滴下終了後、さらに80℃で1時間攪拌熟成を行った。室温まで冷却しながら静置して分離してきた水相を除去し、引き続き10%硫酸ナトリウム水溶液を混合して10分間撹拌後、30分間静置し、分離してきた水相を除去する水洗浄操作をトルエン相が中性になるまで繰り返して反応を停止した。エステルアダプターを取り付け、オルガノポリシロキサンを含むトルエン相を加熱還流してトルエン相から水を除去し、内温が110℃に達してから更に1時間続けた後、室温まで冷却した。得られたオルガノポリシロキサン溶液を濾過して不溶物を除去し、引き続き減圧蒸留によりトルエンを除去して、固体のオルガノポリシロキサン(樹脂a1−1)134gを得た。
【0063】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位60モル%とD単位30モル%とM単位10モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン100gあたりシラノール基を0.03モル含有し、外観は無色透明固体で重量平均分子量は9,100であった。また、この樹脂の軟化点は80℃であった。
この樹脂a1−1をシクロペンタノン溶液に固形分濃度75%で溶解した溶液を、樹脂溶液Rとする。
【0064】
・調製例2
(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)の合成)
調製例1において、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロルシラン148g(0.8モル)、メチルビニルジクロルシラン11.3g(0.08モル)、ジメチルビニルクロルシラン26.5g(0.12モル)を仕込んだ以外は同様に調製して、固体のオルガノポリシロキサン(樹脂a1−2)120gを得た。
【0065】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位80モル%とD単位8モル%とM単位12モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン100gあたりシラノール基を0.02モル含有し、外観は無色透明固体で重量平均分子量は6,200であった。また、この樹脂の軟化点は74℃であった。
【0066】
・調製例3
(オルガノポリシロキサン(A)の合成)
(A1)成分として調製例1で得た固形のオルガノポリシロキサン(樹脂a1−1)100gをプロピレングリコールモノエーテルアセテート100gに溶解し、固形分濃度50%の溶液を調製した。この溶液に、白金触媒を樹脂に対して白金原子で100ppm添加し、60℃に加温した状態で、(A2)成分として1,1,2,2−テトラメチルジシロキサン3.75gを滴下したところ、反応による発熱を観測した。(A1)に対する(A2)量は、H/Vi比で0.75に相当する。80℃で2時間反応を行い、反応を完結させた。その後、減圧留去にて濃縮することにより、固形分濃度75%の樹脂溶液Pを得た。また、この樹脂のGPCにて重量平均分子量Mwを測定したところ27,000であった。
【0067】
・調製例4
(オルガノポリシロキサン(A)の合成)
オルガノポリシロキサン(樹脂a1−2)100gを(A1)成分として用い、パラビス(ジメチルシリル)ベンゼン5.2gを(A2)成分として用いる以外は、調製例3と同様な反応を行い、重量平均分子量34,200、固形分濃度75%の樹脂溶液Qを得た。(A1)に対する(A2)量は、H/Vi比で0.8に相当する。
【0068】
・比較調製例1
(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)対応品の合成)
調製例1において、1Lフラスコに、水234g(13モル)、トルエン35gを仕込み、オイルバスにて80℃に加熱した。滴下ロートにフェニルトリクロルシラン53g(0.25モル)、ジフェニルジクロルシラン101g(0.4モル)、メチルビニルジクロルシラン35.3g(0.25モル)、トリメチルクロルシラン11g(0.1モル)を仕込んだ以外は同様に調製して、粘ちょうなオルガノポリシロキサン(比較樹脂1)142gを得た。
【0069】
得られたオルガノポリシロキサンは、T単位25モル%とD単位65モル%とM単位10モル%とを含み、末端はオルガノポリシロキサン100gあたりシラノール基を0.01モル含有し、外観は無色透明固体で重量平均分子量は11,700であった。また、この樹脂は室温で流動性があるものであり、冷却して作製した試料から観測された軟化点は23℃であった。
【0070】
・比較調製例2
(オルガノポリシロキサン(A)対応品の合成)
オルガノポリシロキサン(比較樹脂1)100gと、1,1,2,2−テトラメチルジシロキサン8.8gとを用い、調製例3と同様な反応を行い、重量平均分子量14,200、固形分濃度75%の樹脂溶液Sを得た。この反応では反応成分のH/Vi比は0.75に相当する。
【0071】
[実施例1、2及び比較例1、2]
8インチシリコンウエハ(厚さ:725μm)の片面全面に樹脂溶液(P、Q、R、S)を用い、スピンコートにて表1記載の膜厚(乾燥後)を有する接着層を全面に形成した。直径8インチのガラス板を支持体とし、この支持体と、接着層を有するシリコンウエハを真空貼り合わせ装置内で表1に示す条件にて貼り合わせ、積層体を作製した。
【0072】
その後、下記試験を行った。また、剥離性、洗浄除去性については、別途実験基板を作製し評価を行った。結果を表1に示す。
【0073】
−タック感試験−
スピンコート後の塗膜をホットプレート上に150℃で2分間置いて乾燥させ、膜内の溶剤を完全に除去した後、得られた薄膜について指触によるタック感を調べた。タック感がない場合に良好と評価して「良好」と示し、タック感がある場合には不良と評価して「不良」と示した。
【0074】
−接着性試験−
8インチのウエハ接合は、EVG社のウエハ接合装置520ISを用いて行った。接合温度は表1に記載の値、接合時のチャンバー内圧力は10−3mbar以下、荷重は5kNで実施した。接合後、室温まで冷却した後の界面の接着状況を目視で確認し、界面での気泡などの異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0075】
−裏面研削耐性試験−
グラインダー(DAG810 DISCO製)を用いてシリコンウエハの裏面研削を行った。最終基板厚50μmまでグラインドした後、光学顕微鏡にてクラック、剥離等の異常の有無を調べた。異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0076】
−耐熱性試験−
シリコンウエハを裏面研削した後の積層体を窒素雰囲気下の250℃オーブンに2時間入れた後、270℃のホットプレート上で10分加熱した後の外観異常の有無を調べた。外観異常が発生しなかった場合を良好と評価して「○」で示し、外観異常が発生した場合を不良と評価して「×」で示した。
【0077】
−剥離性試験−
基板の剥離性は、模擬的に以下の実験によって評価を行った。
別途6インチシリコンウエハ上に上記接着層を形成し、このウエハをホットプレート上で表1の温度で加熱しながら、35mm×35mm×厚さ0.725mにカットされたシリコン基板(以下、シリコン小片という)を押し当て接着させた。その後、上記耐熱試験と同様の条件に晒したのち、ボンドテスター(DAGE製、シリーズ4000)を用いて以下の剥離性試験を実施した。
【0078】
図1は剥離性試験の方法を示す図である。図1に示すとおり、シリコンウエハ1と、シリコンウエハ1上に形成した接着層2と、接着層2を介してシリコンウエハ1上に接着させたシリコン小片3とからなる試験体を真空チャックつきヒータ4に固定した。180℃に加熱しながら上記ボンドテスターのプローブ5を矢印6の方向に動かしてシリコン小片3の側部に水平方向に押し当てて、徐々に押す力を増加させて行き、シリコン小片3がスライドし始めたときの力を計測した。水平方向の押す力が1N以下でシリコン小片がスライドしたものを良好と評価して「○」で示し、1Nより大きい力が必要だったものを不良と評価して「×」で示した。
【0079】
−洗浄除去性試験−
上記剥離性試験終了後の6インチウエハ(耐熱試験条件に晒されたもの)を、接着層を上にしてスピンコーターにセットし、洗浄溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを噴霧し、ウエハ上にプロピレングリコールモノメチルエーテルを載せた。23℃で2分静置した後、ウエハ上のプロピレングリコールモノメチルエーテルを捨て、新たに同様にしてプロピレングリコールモノメチルエーテルを載せて静置する同様の操作を2回繰り返した後、ウエハを回転させながらイソプロピルアルコール(IPA)を噴霧してリンスを行なった。その後、外観を観察し残存する接着材樹脂の有無を目視でチェックした。樹脂の残存が認められないものを良好と評価して「○」で示し、樹脂の残存が認められたものを不良と評価して「×」で示した。
【0080】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の仮接着材組成物は、例えば、半導体製造分野において、半導体ウエハの非回路形成面を切削する際に回路形成面を支持体に接着し、切削後容易に剥離するなど、ウエハどうし、ウエハと支持体との仮接着に有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 シリコンウエハ
2 接着層
3 シリコン小片
4 真空チャック付きヒータ
5 プローブ
6 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)とヒドロシリル基含有化合物(A2)との白金族金属系触媒の存在下でのヒドロシリル化反応により得られた、重量平均分子量15,000以上のオルガノポリシロキサン、
(A1):
(I)R1SiO3/2で表されるシロキサン単位(T単位)を35〜99モル%、
(II)R23SiO2/2で表されるシロキサン単位(D単位)を0〜49モル%、
(III)R456SiO1/2で表されるシロキサン単位(M単位)を1〜25モル%
[ここで、R1〜R6は非置換又は置換の炭素原子数1〜10の1価炭化水素基を表す]
を含有し、
且つ、ケイ素原子に結合したアルケニル基をケイ素原子に結合した全有機基の2モル%以上含有し、
且つ、重量平均分子量が2,000を超えるアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(A2)平均組成式(1):
7SiO(4−a−b)/2 (1)
(式中、R7はアルケニル基以外の1価の炭化水素基である。a及びbはそれぞれ0.75≦a≦2.5、0.05≦b≦1.0、かつ0.8≦a+b≦2.6を満たす数である。)
で示され、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、又は、一般式(2):
【化1】

(式中、R及びRは独立にアルケニル基以外の1価の炭化水素基であり、Xは2価の有機基である。)
で表されるビスヒドロシリル化合物、又はこれらの組み合わせであって、上記オルガノポリシロキサン(A1)の総アルケニル基に対してケイ素原子に結合した水素原子数が0.4〜1.0モル倍となる量のヒドロシリル基含有化合物、
並びに、
(B)沸点220℃以下の有機溶剤、
を含有してなる仮接着材組成物。
【請求項2】
アルケニル基含有オルガノポリシロキサン(A1)が有するアルケニル基がビニル基であり、かつ、非置換又は置換の1価炭化水素基R1、R2、R3、R4、R5及び/又はR6に含まれている請求項1に係る仮接着材組成物。
【請求項3】
平均組成式(1)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが式(3):

(式中、nは0〜38の整数、R〜R11は独立に置換又は非置換の1価の炭化水素基である。)
で表される、請求項1又は2に係る仮接着材組成物。
【請求項4】
(A1)成分のオルガノポリシロキサンが、
(I)前記T単位)40〜98.9モル%、
(II)前記D単位0〜48.9モル%、
(III)前記Q単位0.1〜30モル%、及び
(IV)前記M単位1〜25モル%
からなるオルガノポリシロキサンである、請求項1〜3のいずれか1項に係る仮接着材組成物。
【請求項5】
(a)回路形成面及び回路非形成面を有するウエハの前記回路形成面を、請求項〜4のいずれか1項に記載の仮接着材組成物からなる接着層を介して、支持体に接合する工程、
(b)支持体と接合したウエハの回路非形成面を研削する工程、
(c)回路非形成面を研削したウエハの回路非形成面に加工を施す工程、
(d)加工を施したウエハを支持体から剥離する工程、ならびに
(e)剥離したウエハの回路形成面に残存する接着材組成物を除去する工程
を含むことを特徴とする薄型ウエハの製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−144616(P2012−144616A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3097(P2011−3097)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】