説明

伝熱板の製造方法及び伝熱板

【課題】水密性及び気密性を高めることが可能な伝熱板の製造方法及び伝熱板を提供することをと課題とする。
【解決手段】表面11に凹設された凹部14と凹部14の底面14aに開口する一対の供給部15及び排出部16とを備えた本体2と、表面31から突出し内部が中空に形成された凸部34を備えた蓋部材3と、を有し、凹部14の底面14aと凸部34とで形成された流路部36に、供給部15及び排出部16を介して熱輸送流体が流れる伝熱板1を形成する伝熱板の製造方法であって、本体2の凹部14に蓋部材3を載置する蓋部材載置工程と、突合部J1に沿って回転ツールGを移動させて摩擦攪拌接合を行う蓋部材固定工程と、凸部34周りに回転ツールGを移動させて、凹部14の底面14aと蓋部材3の裏面32との重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う密封工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱板の製造方法及び伝熱板に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材同士を接合する方法として、摩擦攪拌接合(FSW=Friction Stir Welding)が知られている。摩擦攪拌接合とは、回転ツールを回転させつつ金属部材同士の突合部に沿って移動させ、回転ツールと金属部材との摩擦熱により突合部の金属を塑性流動させることで、金属部材同士を固相接合させるものである。
【0003】
例えば、特許文献1に示すように、半導体製造装置において冷却用に使用されるヒートプレート(伝熱板)は、板状を呈する本体と、本体の表面に形成された凹部を封止する蓋部材とを摩擦攪拌接合によって一体化して形成されている。
【0004】
具体的には、本体は、本体の表面に凹設された第一凹部と、第一凹部の底面に凹設された第二凹部とを有する。蓋部材は、第一凹部に隙間無く配置される形状を呈している。伝熱板は、第一凹部の側壁と蓋部材の側面との突合部に対して摩擦攪拌接合を行うことにより一体成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−257490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の伝熱板の製造方法では、第一凹部の側壁と蓋部材の側面との突合部のみを摩擦攪拌接合するだけであるため、例えば第一凹部の底面と蓋部材の裏面との間には微細な隙間が形成されている。かかる隙間は伝熱板の水密性及び気密性を低下させる要因になっていた。
【0007】
本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであり、水密性及び気密性を高めることが可能な伝熱板の製造方法及び伝熱板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段として、本発明は、本体に凹設された凹部の底面に、内部が中空に形成された凸部を備えた蓋部材を載置し、前記凹部の底面と凸部の内面との間に熱輸送流体の流路となる流路部を具備する伝熱板を製造する方法であって、前記本体の前記凹部に前記蓋部材を載置する蓋部材載置工程と、前記凹部の側壁と前記蓋部材の側面との突合部に沿って回転ツールを移動させて摩擦攪拌接合を行う蓋部材固定工程と、前記凸部周りに回転ツールを移動させて、前記凹部の底面と前記蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して摩擦攪拌接合を行う密封工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
かかる製造方法によれば、本体に凹設された凹部の側壁と蓋部材の側面との突合部を摩擦攪拌するとともに、凹部の底面と蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して、熱輸送流体が流れる凸部周りに摩擦攪拌接合を行うことにより、流路部周辺の微細な隙間を塞ぐことができる。これにより、伝熱板の水密性及び気密性を高めることができる。
【0010】
また、前記密封工程では、前記回転ツールを前記凸部の周りで一周させることが好ましい。また、前記密封工程では、前記回転ツールの移動軌跡を前記凸部の周りでオーバーラップさせて摩擦攪拌接合によって形成させる塑性化領域の一部を重複させることが好ましい。かかる製造方法によれば、流路部周辺の密閉性をさらに高めることができるため、水密性及び気密性を高めることができる。
【0011】
また、前記密封工程では、前記回転ツールを前記凸部に対して右回りに移動させるときは前記回転ツールを右回転させ、前記回転ツールを前記凸部に対して左回りに移動させるときは前記回転ツールを左回転させることが好ましい。
【0012】
かかる製造方法によれば、回転ツールのシアー側が流路部から離間した部位に位置する。このため、空洞欠陥が発生したとしても、本体の流路部から離間した部位(シアー側)に発生することとなり、熱輸送流体が外部に漏れにくくなるので、接合部の密閉性能を低下させることがない。
【0013】
また、前記密封工程では、前記回転ツールの先端を前記本体に接触させつつ摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、重ね合わせ部を確実に摩擦攪拌接合することができる。
【0014】
また、前記密封工程では、前記回転ツールの中心から前記凸部の開口周縁までの距離を前記回転ツールの半径よりも大きく設定することが好ましい。かかる製造方法によれば、摩擦攪拌による凸部の変形を防止することができる。
【0015】
また、前記密閉工程では、前記蓋部材の外側から摩擦攪拌を開始するとともに、前記蓋部材の外側で摩擦攪拌を終了することが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋部材の外側に摩擦攪拌の開始位置及び終了位置が形成されるため蓋部材の変形を防止することができる。
【0016】
また、前記凸部の開口周縁から前記凹部の側壁までの距離を、前記密閉工程で用いる前記回転ツールのショルダ部の外径の2倍以上に設定することが好ましい。かかる製造方法によれば、重ね合わせ部の領域を十分に確保できるため、重ね合わせ部に対して確実に摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0017】
また、前記蓋部材固定工程では、使用する回転ツールの先端が前記凹部の底面に達しない程度に設定して摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋部材の過度の変形を防止しつつ蓋部材を本体に接合することができる。
【0018】
また、前記蓋部材固定工程では、前記回転ツールを前記突合部に沿って一周させて摩擦攪拌接合を行うことが好ましい。また、前記蓋部材固定工程では、前記回転ツールの移動軌跡を前記突合部においてオーバーラップさせ、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域の一部を重複させることが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋部材を確実に密閉することができるため、水密性及び気密性を高めることができる。
【0019】
また、前記蓋部材固定工程では、前記回転ツールの進行方向右側に前記蓋部材が位置するように設定した場合は、前記回転ツールを右回転させ、前記回転ツールの進行方向左側に前記蓋部材が位置するように設定した場合は、前記回転ツールを左回転させることが好ましい。かかる製造方法によれば、回転ツールのシアー側が流路部から離間した部位に位置する。このため、空洞欠陥が発生したとしても、伝熱板の流路部から離間した部位(シアー側)に発生することとなり、熱輸送流体が外部に漏れにくくなるので、接合部の密閉性能を低下させることがない。
【0020】
また、前記突合部は、平面視矩形を呈しており、前記蓋部材固定工程では、前記突合部の一方の対角同士を先に摩擦攪拌接合した後に、他方の対角同士を摩擦攪拌することが好ましい。また、前記突合部は、平面視矩形を呈しており、前記蓋部材固定工程では、前記突合部の一方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合した後に、他方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合することが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋部材をバランスよく固定することができ、蓋部材の本体に対する位置決め精度が向上する。
【0021】
また、前記密封工程を行う前に、前記重ね合わせ部において回転ツールを移動させて前記本体と前記蓋部材とを仮接合する仮接合工程をさらに含むことが好ましい。蓋部材が大きい場合、蓋部材固定工程を行うと摩擦攪拌の熱収縮によって蓋部材の中央部分が浮き上がってしまい、本体と蓋部材との間に隙間ができてしまう可能性があった。しかし、かかる製造方法によれば、突合部の内側において、本体と蓋部材とを仮接合しておくことで、蓋部材固定工程の際の蓋部材の浮き上がりを防止又は矯正することができる。
【0022】
また、回転ツールを用いて前記本体の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程をさらに含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、本体の表面側に行う摩擦攪拌によって熱収縮が発生し、伝熱板が反ったとしても、本体の裏面側からも摩擦攪拌によって熱収縮を発生させることにより伝熱板の平坦性を高めることができる。
【0023】
また、前記矯正工程では、前記本体及び蓋部材の表面側への摩擦攪拌による入熱量よりも、前記本体及び蓋部材の裏面側への摩擦攪拌による入熱量を少なく設定することが好ましい。また、前記矯正工程では、前記本体及び前記蓋部材の表面側に形成される塑性化領域の体積よりも、前記本体及び前記蓋部材の裏面側に形成される塑性化領域の体積を少なく設定することが好ましい。
【0024】
要するに、摩擦攪拌接合された金属部材に残存する熱量は、残存熱量(J)=入熱量−抜熱量で現され、本体の表面側から行う摩擦攪拌と裏面側から行う摩擦攪拌の残存熱量が等しくなれば伝熱板が平坦になると考えられる。
かかる製造方法によれば、矯正工程における入熱量が、本体の表面側における入熱量よりも少なくなるため、接合された伝熱板に残存する熱量の不均衡を是正することができる。これにより、金属部材が反ってしまうのを防ぐことができ、金属部材の平坦性を高めることができる。
【0025】
また、前記蓋部材固定工程及び前記密封工程で形成された前記本体の裏面側に凸となる反りを、前記本体の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて矯正する矯正工程をさらに含むことが好ましい。かかる製造方法によれば、伝熱板の反りを是正して平坦性を高めることができる。
【0026】
また、本発明は、表面に凹設された凹部を備えた本体と、内部が中空に形成された凸部を備え前記本体に載置された蓋部材と、を有し、前記凹部の底面と前記凸部の内面との間に熱輸送流体の流路となる流路部を具備する伝熱板であって、前記凹部の底面と前記蓋部材の裏面との重ね合わせ部が摩擦攪拌接合により一体成形されており、前記流路部の周囲に摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域が形成されていることを特徴とする。
【0027】
かかる構成によれば、本体に凹設された凹部の側壁と蓋部材の側面との突合部を摩擦攪拌するとともに、凹部の底面と蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して熱輸送流体が流れる凸部周りに摩擦攪拌接合を行うことにより、流路部周辺の微細な隙間を塞ぐことができる。これにより、水密性及び気密性の高い伝熱板を形成することができる。また、例えば蓋部材にプレス加工等して凸部を形成することにより、熱輸送流体の流れる流路部を比較的容易に形成することができる。つまり、本体側に流路部を形成する場合に比べて設計の自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、水密性及び気密性の高い伝熱板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第一実施形態に係る伝熱板を示した分解斜視図である。
【図2】図1のI−I線断面図である。
【図3】(a)は、小型回転ツール、(b)は、大型回転ツールを示した側面図である。
【図4】第一実施形態に係る蓋部材固定工程を示した図であって、(a)は、平面図、(b)は、(a)のII−II線断面図である。
【図5】第一実施形態に係る密閉工程を示した平面図である。
【図6】図5のIII−III線断面図である。
【図7】第二実施形態に係る伝熱板を示した平面図である。
【図8】密閉工程後を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、断面図である。
【図9】第三実施形態に係る矯正工程を示した図であって、(a)は、斜視図、(b)は、平面図である。
【図10】第三実施形態に係る矯正工程を説明するための模式断面図であって、(a)は、密閉工程、(b)は、矯正工程を示す。
【図11】第三実施形態に係る矯正工程を示した断面図である。
【図12】仮接合工程を示した図であって、(a)は、平面図、(b)は、(a)のIV−IV線断面図である。
【図13】実施例を示した図であって、(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る伝熱板の製造方法及び伝熱板について図面を適宜参照して詳細に説明する。まず、本発明に係る伝熱板の製造方法によって形成される伝熱板1について説明する。
【0031】
伝熱板1は、図1及び図2に示すように、本体2に、蓋部材3を摩擦攪拌接合によって固定して形成される。伝熱板1は、例えば、伝熱板1の周囲に配置される装置を冷却するために使用される。
【0032】
本体2は、略直方体の外観を呈し、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金等摩擦攪拌可能な部材から形成されている。本体2は、本体2の表面(上面)11に凹設された凹部14と、凹部14に開口する複数の供給部15及び排出部16とを有する。
【0033】
本体2は、本実施形態ではアルミニウム又はアルミニウム合金から形成したが、他の金属部材で形成してもよい。また、本体2は、本実施形態では外観視略直方体としたが、多角柱体、円柱体等であってもよい。
【0034】
凹部14は、蓋部材3が配置される部位である。凹部14は、本体2の表面11に形成されており、平面視矩形を呈する底面14aと、底面14aから垂直に立設する4つの側壁14bとを有する。側壁14bの高さは、蓋部材3の厚みと略同等に形成されている。
【0035】
供給部15及び排出部16は、本体2の裏面12から凹部14の底面14aまで連通する貫通孔である。供給部15は、本体2の外部から熱輸送流体を流入させる。一方、排出部16は、本体2から外部へ熱輸送流体を流出させる。本実施形態では、一対の供給部15及び排出部16を6群設けているが、個数は適宜設定すればよい。供給部15及び排出部16の断面形状は適宜設定すればよい。熱輸送流体は、本実施形態では水を用いるが、他の液体又は気体であってもよい。
【0036】
蓋部材3は、図1及び図2に示すように、本体2の凹部14に載置される部材であって、摩擦攪拌接合によって本体2と一体形成される。蓋部材3の表面31には、表面31から突出する複数の凸部34(本実施形態では6個)が所定の間隔をあけて形成されている。図2に示すように、凸部34の内部は中空に形成されている。凸部34は、平面視した場合に一対の供給部15及び排出部16を内部に含むように配設されている。
【0037】
蓋部材3を本体2の凹部14に載置すると、蓋部材3の裏面32が凹部14の底面14aに当接する。また、蓋部材3の側面33が、凹部14の側壁14bに当接する。蓋部材3を本体2の凹部14に載置することで、凸部34の内面34gと凹部14の底面14aとで流路部36が形成される。流路部は、熱輸送流体が流れる部位である。
【0038】
本実施形態では、凸部34は、平板状の金属部材をプレス成形によって形成しているが、他の方法で成形してもよい。凸部34の形状や個数は伝熱板1の用途に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
次に、後記する摩擦攪拌で用いる小型の回転ツール(以下、「小型回転ツールF」という。)及び小型回転ツールFよりも大型の回転ツール(以下、「大型回転ツールG」という。)について図3を用いて説明する。
【0040】
図3の(a)に示す小型回転ツールFは、工具鋼など本体2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部F1と、このショルダ部F1の下端面F11に突設された攪拌ピン(プローブ)F2とを備えて構成されている。小型回転ツールFの寸法・形状は、本体2の材質や厚さ等に応じて設定すればよいが、少なくとも、大型回転ツールG(図3の(b)参照)よりも小型にする。このようにすると、大型回転ツールGを用いる場合よりも小さな負荷で摩擦攪拌接合を行うことが可能となるので、摩擦攪拌装置に掛かる負荷を低減することが可能となり、さらには、小型回転ツールFの移動速度(送り速度)を大型回転ツールGの移動速度よりも高速にすることも可能になるので、摩擦攪拌接合に要する作業時間やコストを低減することが可能となる。
【0041】
ショルダ部F1の下端面F11は、塑性流動化した金属を押えて周囲への飛散を防止する役割を担う部位であり、本実施形態では、凹面状に成形されている。ショルダ部F1の外径Xの大きさに特に制限はないが、本実施形態では、大型回転ツールGのショルダ部G1の外径Yよりも小さくなっている。
【0042】
攪拌ピンF2は、ショルダ部F1の下端面F11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。また、攪拌ピンF2の周面には、螺旋状に刻設された攪拌翼が形成されている。攪拌ピンF2の外径の大きさに特に制限はないが、本実施形態では、最大外径(上端径)Xが大型回転ツールGの攪拌ピンG2の最大外径(上端径)Yよりも小さく、かつ、最小外径(下端径)Xが攪拌ピンG2の最小外径(下端径)Yよりも小さくなっている。攪拌ピンF2の長さLは、蓋部材3の厚み(図2参照)よりも小さく形成されている。
【0043】
図3の(b)に示す大型回転ツールGは、工具鋼など本体2よりも硬質の金属材料からなり、円柱状を呈するショルダ部G1と、このショルダ部G1の下端面G11に突設された攪拌ピン(プローブ)G2とを備えて構成されている。ショルダ部G1の下端面G11は、小型回転ツールFと同様に、凹面状に成形されている。攪拌ピンG2は、ショルダ部G1の下端面G11の中央から垂下しており、本実施形態では、先細りの円錐台状に成形されている。攪拌ピンG2の長さLは、蓋部材3の厚み(図2参照)よりも大きく形成されている。
【0044】
次に、伝熱板の製造方法について説明する。本実施形態に係る伝熱板の製造方法では、
(1)準備工程、(2)蓋部材固定工程、(3)密封工程を行う。
【0045】
(1)準備工程
準備工程では、本体2及び蓋部材3を成形する成形工程と、本体2及び蓋部材3に対して脱脂処理を行う脱脂工程と、本体2に蓋部材3を載置する蓋部材載置工程とを行う。
【0046】
成形工程では、厚板の金属部材を切削加工及び穴あけ加工して本体2を成形する。また、薄板の金属部材にプレス加工を行って蓋部材3を成形する。本体2及び蓋部材3の成形方法は公知の成形方法で行えばよい。
【0047】
脱脂工程では、本体2及び蓋部材3に付着した汚れを除去する。脱脂工程では、本体2及び蓋部材3を脱脂溶液に浸けて本体2及び蓋部材3に付着した油分や切削屑等を除去する。
【0048】
蓋部材載置工程では、本体2の凹部14に蓋部材3を載置する。図4の(a)に示すように、蓋部材3は、凹部14に隙間なく載置される。凹部14の側壁14bと蓋部材3の側面33とが突き合わされて突合部J1が形成される。また、図4の(b)に示すように、凹部14の底面14aと蓋部材3の裏面32とが重ね合わされて重ね合わせ部18が形成される。
【0049】
(2)蓋部材固定工程
蓋部材固定工程では、図4の(a)及び(b)に示すように、突合部J1に沿って小型回転ツールFを移動させて本体2と蓋部材3とを接合する。
【0050】
蓋部材固定工程では、図4の(a)に示すように、小型回転ツールFを右回転させつつ、突合部J1上に設定した開始位置s1に挿入した後、突合部J1に沿って移動させる。小型回転ツールFの押込み量、送り速度等は適宜設定すればよい。
【0051】
小型回転ツールFの移動について具体的に説明する。蓋部材固定工程では、小型回転ツールFの中心(軸芯)が突合部J1上を移動するように、突合部J1に沿って小型回転ツールFを移動させる。このとき、突合部J1の周囲の本体2と蓋部材3は、一体的に塑性流動化されて塑性化領域w1が形成される。「塑性化領域」とは、小型回転ツールFの摩擦熱によって加熱されて現に塑性化している状態と、小型回転ツールFが通り過ぎて常温に戻った状態の両方を含むこととする。
【0052】
本実施形態の蓋部材固定工程では、突合部J1は、平面視略矩形を呈しており、突合部J1の一方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合した後に、他方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合する。このようにすれば、蓋部材3をバランスよく固定することができ、蓋部材3の本体2に対する位置決め精度が向上する。
【0053】
蓋部材固定工程では、図4の(b)に示すように、攪拌ピンF2の長さが蓋部材3の厚みよりも小さく、塑性化領域w1が凹部14の底面14aに接触しない程度に設定されている。摩擦攪拌接合を行うと、蓋部材3のような比較的薄い部材は、熱収縮によって変形する可能性が高い。したがって、攪拌ピンF2の長さ及び小型回転ツールFの押込み量を小さく設定することにより、蓋部材3の変形を防ぐことができる。
【0054】
本実施形態では、小型回転ツールFを右回転させつつ、進行方向右側に蓋部材3が位置するように摩擦攪拌接合を行う。つまり、塑性化領域w1のうち、シアー側(被接合部に対する小型回転ツールFの外周の相対速さが、小型回転ツールFの外周における接線速度の大きさに移動速度の大きさを加算した値となる側)が本体2に位置するように設定する。また、フロー側(被接合部に対する小型回転ツールFの外周の相対速さが、小型回転ツールFの外周における接線速度の大きさから移動速度の大きさを減算した値となる側)が蓋部材3に位置するように設定する。
【0055】
シアー側では、メタルが強く攪拌されて高温軟化し、バリとなって排出され易いと考えられる。このため、進行方向左側はメタルが不足するので、トンネル状空洞欠陥が形成される可能性がある。一方、フロー側では、メタルの攪拌が比較的弱く、バリとなって排出され難いと考えられ、比較的緻密な塑性化領域が形成される。つまり、本実施形態によれば、シアー側が本体2に位置するように設定したため、仮に、摩擦攪拌によって空洞欠陥が発生したとしても、本体2側であって突合部J1よりも外側位置の離間した部分に発生することとなり、熱輸送流体が外部に漏れにくくなるので、接合部の密閉性能を低下させることはない。
【0056】
なお、蓋部材固定工程では、小型回転ツールFの攪拌ピンF2の長さを大きくしたり、小型回転ツールFを深く押し込んだりして、塑性化領域w1と底面14aとを接触させてもよい。また。本実施形態では、一方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合した後に、他方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合するようにしたが、一方の対角同士を摩擦攪拌接合した後に、他方の対角同士を摩擦攪拌接合してもよい。
【0057】
また、本実施形態では、断続的に蓋部材固定工程を行ったが、連続して摩擦攪拌接合を行ってもよい。連続して摩擦攪拌接合を行う場合には、突合部J1における小型回転ツールFの回転方向(自転方向)が、移動方向(公転方向)と同じ方向となるようにする。具体的には、小型回転ツールFを蓋部材3に対して右回りに移動させた場合は小型回転ツールFも右回転させる。また、小型回転ツールFを連続させて摩擦攪拌接合を行う場合は、前記回転ツールの移動軌跡を前記突合部においてオーバーラップさせ、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域の一部を重複させることが好ましい。かかる製造方法によれば、蓋部材3を確実に密閉することができるため、水密性及び気密性を高めることができる。
【0058】
(3)密封工程
密封工程では、図5及び図6に示すように、凹部14の底面14aと、蓋部材3の裏面32とが重なり合う重ね合わせ部18に対して蓋部材3に形成された各凸部34周りに摩擦攪拌接合を行う。密封工程では、図5に示すように、本体2の長手方向の一方側に設定した開始位置SM1から終了位置EM1まで大型回転ツールGを移動させる第一密封工程、開始位置SM2から終了位置EM2まで大型回転ツールGを移動させる第二密封工程、開始位置SM3から終了位置EM3まで大型回転ツールGを移動させる第三密封工程を含む。第一密封工程乃至第三密封工程は、開始位置及び終了位置を除いては略同等の工程である。
【0059】
例えば、第二密封工程では、図5に示すように、本実施形態では、本体2の表面11に設定した開始位置SM2に大型回転ツールGを左回転させながら挿入して、下端面G11が(図3の(b)参照)本体2の表面11に接触したら蓋部材3に向けて大型回転ツールGを移動させる。突合部J1を横断したら、凸部34aに対して左回りに大型回転ツールGを移動させて、凸部34a周りに一周させる。さらに、大型回転ツールGを凸部34b側に移動させて、凸部34bに対して左回りに大型回転ツールGを移動させて、凸部34b周りに一周させる。大型回転ツールGが本体2の表面11に設定した終了位置EM2に達したら大型回転ツールGを本体2から離脱させる。大型回転ツールGを離脱させると、本体2の表面11には抜け穴が不可避的に形成されるが、当該抜け穴を肉盛溶接等により補修するのが好ましい。
【0060】
図5及び図6に示すように、密封工程によれば、各凸部34周りに塑性化領域W1が形成される。図6に示すように、本実施形態では、大型回転ツールGの攪拌ピンG2が凹部14の底面14aに達するように摩擦攪拌接合を行うため、重ね合わせ部18を確実に摩擦攪拌することができる。
【0061】
本実施形態では、大型回転ツールGを左回転させつつ、凸部34に対して左回りに移動させる。これにより、前記したシアー側は凸部34から離間した位置に形成される。つまり、仮に塑性化領域内に接合欠陥が形成されたとしても、凸部34の内部に形成される流路部36から離間した位置に形成されるため、熱輸送流体が漏れるのを防止することができる。ちなみに、大型回転ツールGを右回転させた場合は、凸部34に対して右回りに大型回転ツールGを移動させればよい。
【0062】
また、図6に示すように、密封工程では、大型回転ツールGの中心から凸部34の開口周縁35までの距離E1を、大型回転ツールGのショルダ部G1の半径よりも大きくなるように設定するのが好ましい。このようにすれば、凸部34の変形を防ぐとともに、流路部36の内部に塑性化領域W1が流入するのを防ぐことができる。
【0063】
また、図6に示すように、凹部14の側壁14bから凸部34の開口周縁35までの距離E2を大型回転ツールGのショルダ部G1の外径の2倍よりも大きく設定することが好ましい。このようにすれば、重ね合わせ部18の領域を十分に確保することができるため摩擦攪拌の作業性を高めることができる。
【0064】
なお、密封工程において、開始位置SM1乃至SM3及び終了位置EM1乃至EM3は、突合部J1よりも外側であれば、他の位置であっても構わない。また、本体2にタブ材を添設して当該タブ材に開始位置及び終了位置を設けてもよい。このようにすれば、伝熱板1に抜け穴が形成されるのを防ぐことができる。また、大型回転ツールGを挿入する開始位置SM1乃至SM3には、予め下穴を形成してもよい。このようにすれば、大型回転ツールGを挿入する際の圧入抵抗を低減することができる。
【0065】
以上説明した伝熱板1によれば、図6に示すように、本体2の凹部14の底面14aと、蓋部材3の凸部34の内面34gとで熱輸送流体が流れる流路部36が形成される。供給部15から流入した熱輸送流体は、流路部36内を流れた後、排出部16を介して本体2の外部に排出される。これにより、凸部34の周囲に配設された装置(図示省略)が冷却される。
【0066】
伝熱板1によれば、突合部J1を摩擦攪拌接合するとともに、凹部14の底面14aと蓋部材3の裏面32との重ね合わせ部18に対して、熱輸送流体が流れる凸部34周りに摩擦攪拌接合を行うことにより、流路部36周辺の微細な隙間を塞ぐことができる。これにより、伝熱板1の水密性及び気密性を高めることができる。
【0067】
また、伝熱板1は、各凸部34周りで塑性化領域W1がオーバーラップするように形成されるため、流路部36を確実に密閉することができる。
【0068】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。図7に示すように、第二実施形態に係る伝熱板1Aは、蓋部材固定工程及び密閉工程の接合ルート及び蓋部材3に形成された凸部の形状が第一実施形態と相違する。なお、第二実施形態については、第一実施形態と相違する点についてのみ詳細に説明する。
【0069】
本実施形態に係る蓋部材3は、図7に示すように、平面視L字状の四つの凸部61,61・・・と、平面視直線状の三つの凸部62,63,63とを有する。凸部61,62,63は、蓋部材3の表面31に凸設されており内部が中空に形成されている。凸部61は、蓋部材3の各角部と凸部61の各角部とが対向するように配置されている。凸部62は、蓋部材3の中央を横断するように形成されている。凸部63は、凸部62の両脇に一対形成されている。凸部61,62,63は共に、内部に一対の供給部15及び排出部16を内包するように形成される。蓋部材3は、プレス成形により形成されている。
【0070】
本実施形態に係る蓋部材固定工程では、突合部J1に沿って小型回転ツールFを一周させて摩擦攪拌接合を行う。図7に示すように、蓋部材固定工程では、本体2の表面11上に設定した開始位置s1に小型回転ツールFを右回転させつつ挿入した後、突合部J1に沿って移動させる。小型回転ツールFが突合部J1に対して一周したら、突合部J1上に形成された塑性化領域w1上に沿って小型回転ツールFを所定の距離分オーバーラップさせて突合部J1の外部に設定された終了位置e1で小型回転ツールFを離脱させる。かかる工程によれば、本体2と蓋部材3とを接合するとともに突合部J1を確実に密閉することができる。また、小型回転ツールFを右回転させつつ、蓋部材3に対して右回りに移動させているため、仮に接合欠陥が形成されたとしても本体2側、つまり、流路部から遠い位置に形成されるため熱輸送流体の漏れを防ぐことができる。
【0071】
なお、蓋部材固定工程の開始位置s1及び終了位置e1は、本体2の周りにタブ材を添設して当該タブ材上に設定してもよい。
【0072】
密閉工程では、図7に示すように、各凸部61,62,63周りに大型回転ツールGを移動させて重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。例えば、凸部61に対しては、本体2の表面11に開始位置SM4及び終了位置EM4を設定し、大型回転ツールGを右回転させながら、凸部61に対して右回りに凸部61の形状に沿って大型回転ツールGの移動軌跡を設定する。密閉工程では、密閉工程で形成されたそれぞれの塑性化領域の一部が重複するように摩擦攪拌の開始位置SM4及び終了位置EM4を設定するのが好ましい。
【0073】
同様に、凸部62では、本体2の表面11に開始位置SM5及び終了位置EM5を設定し、大型回転ツールGを右回転させながら凸部62の周囲に沿って右回りに大型回転ツールGの移動軌跡を設定する。凸部63では、蓋部材3の表面31に開始位置SM6及び終了位置EM6を設定し、大型回転ツールGを右回転させながら凸部63の周囲に沿って右回りに大型回転ツールGの移動軌跡を設定する。
【0074】
第二実施形態によれば、伝熱板1Aの蓋部材3に形成された各凸部61,62,63周りを大型回転ツールGで一周させて摩擦攪拌接合を行うため、各凸部61,62,63と本体2とで形成された流路部(図示省略)周りを確実に密閉することができる。
【0075】
ここで、例えば前記した特許文献1に示すように、従来、熱輸送流体が流れる流路部は本体の表面を切削加工して形成していた。具体的には、例えば、金属部材に対して径の異なる切削工具を複数回移動させて成形していたため、本体2の成形工程が煩雑であるとともに、本体2の材料のロスも大きかった。しかし、本実施形態によれば、蓋部材3をプレス加工により成形するため、複雑な形状の凸部であっても容易に成形することができる。また、本実施形態では、本体2には穴あけ加工のみで済むため材料のロスを少なくすることができる。
【0076】
[第三実施形態]
本発明の第三実施形態では、前記した第一実施形態の各工程を行った後、さらに、矯正工程を行う点で第一実施形態と相違する。矯正工程は、伝熱板1を製造した際に、伝熱板1が熱収縮によって反った(歪んだ)場合に適宜行う。本実施形態では、密封工程までの工程は、第一実施形態と同等であるため、矯正工程について詳細に説明する。なお、伝熱板1の表面を表面Za、裏面を裏面Zbとする。
【0077】
図8の(a)及び(b)に示すように、第一実施形態では、伝熱板1の表面Za側からのみ摩擦攪拌接合を行ったため、表面Zaに形成された塑性化領域W1,w1が熱収縮すると、伝熱板1は、表面Za側に凹状となるように反って(歪んで)しまう可能性がある。
【0078】
矯正工程では、かかる伝熱板1の反りを是正することを目的として行う。矯正工程は、摩擦攪拌を利用して矯正する摩擦攪拌矯正工程と、伝熱板1に曲げ応力を付与して矯正する曲げ矯正工程のいずれかを行えばよい。
【0079】
(摩擦攪拌矯正工程)
摩擦攪拌矯正工程では、図9に示すように、伝熱板1の裏面Zb(本体2の裏面12)側から摩擦攪拌を行って、裏面Zb側にも熱収縮を発生させて伝熱板1の反りを是正する。摩擦攪拌矯正工程は、準備工程と、摩擦攪拌を行う摩擦攪拌矯正工程とを含む。
【0080】
準備工程では、図9の(a)に示すように、伝熱板1の表裏を逆にした後、伝熱板1の表面Za(図8の(b)参照)側に土台Dを配置する土台配置工程と、本体2の側面13にタブ材51を添設するタブ材配置工程とを含む。
【0081】
土台配置工程では、伝熱板1の表裏を逆にするとともに、伝熱板1の外縁と同等の形状からなり枠状に形成された金属製の土台Dに伝熱板1を配置する。土台Dの厚さは少なくとも伝熱板1の凸部34の高さよりも大きく形成する。これにより、伝熱板1を裏返した場合に、凸部34(図8参照)が例えば摩擦攪拌装置のテーブルに接触するのを防止することができる。
【0082】
タブ材配置工程では、図9の(a)に示すように、本体2の側面13にタブ材51を溶接により接合する。タブ材51の表面は、伝熱板1の裏面Zbと面一に形成する。タブ材51は、摩擦攪拌矯正工程の際に、摩擦攪拌の開始位置及び終了位置を設定する部材である。なお、タブ材は必ずしも配置する必要は無く、伝熱板1の裏面Zb内に開始位置及び終了位置を設定してもよい。
【0083】
摩擦攪拌矯正工程では、図9の(a)及び(b)に示すように、小型回転ツールFを用いて伝熱板1の裏面Zbに対して摩擦攪拌を行う。摩擦攪拌矯正工程のルートは、本実施形態では、中心地点j’を囲み、かつ、摩擦攪拌矯正工程によって形成される塑性化領域W3が中心地点j’に対して放射状となるように設定する。
【0084】
摩擦攪拌矯正工程では、図9の(a)に示すように、タブ材51の表面に開始位置SK1を設定し、小型回転ツールFの攪拌ピンをタブ材51に押し込む(押圧する)。小型回転ツールFのショルダ部の一部がタブ材51に接触したら、伝熱板1に向かって小型回転ツールFを相対移動させる。そして、伝熱板1の裏面Zbにおける地点f’、地点a’、地点c’及び地点h’付近で平面視凸状となるとともに、地点g‘、地点d’、地点b’及び地点e’付近で平面視凹状となるように小型回転ツールFを相対移動させて摩擦攪拌を行う。図9の(b)に示すように、伝熱板1の中心線(一点鎖線)に対して線対称となるように塑性化領域W3が形成される。本実施形態では、開始位置SK1と終了位置EK1をタブ材51に設け、一筆書きの要領で摩擦攪拌を行う。これにより、摩擦攪拌を効率よく行うことができる。摩擦攪拌矯正工程が終了したら、タブ材51を切除する。摩擦攪拌矯正工程では、伝熱板1の表面Za側に行った摩擦攪拌の入熱量よりも、伝熱板1の裏面Zb側に行った摩擦攪拌の入熱量が小さくなるように摩擦攪拌を行う。
【0085】
図10の(a)は、第三実施形態に係る矯正工程を説明するための模式断面図であって、(a)は、密閉工程、(b)は、矯正工程を示す。
前記した密閉工程では、図10の(a)に示すように、伝熱板1の表面Za側において、高速回転した大型回転ツールGが挿入されると、伝熱板1内に摩擦熱が伝達される(入熱)。この際、伝熱板1の裏面Zbは摩擦攪拌装置のテーブルHに密接しているため、摩擦熱の一部は、矢印Nに示すように本体2の裏面12の全体からテーブルHに放出(抜熱)される。
【0086】
ここで、第三実施形態に係る摩擦攪拌矯正工程では、伝熱板1の表面Za側で行った摩擦攪拌と同等の入熱量で裏面Zbに対しても摩擦攪拌を行えば、伝熱板1の反りが矯正するとも考えられる。しかし、図10の(b)に示すように、前記した密閉工程を終えると、伝熱板1に熱収縮が発生して伝熱板1が裏面Zb側に凸となるように反っているため、伝熱板1の表裏を逆にすると、伝熱板1の表面Zaと土台Dとが当接部U,Uのみで当接する。摩擦攪拌矯正工程時には、当接部U,Uでしか熱が放出(抜熱)されないため、摩擦攪拌矯正工程で伝熱板1の表面Za側と同じ入熱量で摩擦攪拌を行うと、矢印N’に示すように熱が放出されにくく伝熱板1の内部に熱が残存することになる。これにより、伝熱板1の表裏で同等の入熱量で摩擦攪拌を行うと、伝熱板1の裏面Zb側による摩擦攪拌での残存熱量が大きくなってしまい伝熱板1の反りが戻りすぎてしまう。
【0087】
つまり、摩擦攪拌接合された伝熱板1に残存する熱量は、残存熱量(J)=入熱量−抜熱量で現され、伝熱板1の表面Za側から行う摩擦攪拌と裏面Zb側から行う摩擦攪拌の残存熱量が等しくなれば伝熱板1が平坦になると考えられる。
したがって、第三実施形態に係る矯正工程では、伝熱板1の表面Za側に行った摩擦攪拌(蓋部材固定工程及び密閉工程)の入熱量よりも、伝熱板1の裏面Zb側に行う摩擦攪拌(摩擦攪拌矯正工程)の入熱量を少なく設定する。摩擦攪拌矯正工程での入熱量を少なくすることで、伝熱板1の表面Za側から行った摩擦攪拌によって伝熱板1に残存する熱量と、伝熱板1の裏面Zbから行った摩擦攪拌によって伝熱板1に残存する熱量の均衡を図ることができる。これにより、伝熱板1の反りが戻りすぎることなく、伝熱板1の平坦性を高めることができる。
【0088】
なお、本実施形態では、小型回転ツールFの軌跡、即ち、塑性化領域W3の形状が、中心地点j’を囲み、かつ、中心地点j’に対して略放射状となるように形成したが、これに限定されるものではない。伝熱板1の反り具合に応じて、摩擦攪拌矯正工程のルートを適宜設定すればよい。
【0089】
本実施形態の摩擦攪拌矯正工程では、伝熱板1の表面Za側で用いる大型回転ツールGよりも小型の小型回転ツールFを用いて摩擦攪拌を行うことで、入熱量を少なく設定したが、例えば、伝熱板1の裏面Zbでの回転ツールの移動軌跡を短くしてもよい。言い換えると、伝熱板1の表面Za側に形成される塑性化領域の体積の和よりも、伝熱板1の裏面Zb側に形成される塑性化領域の体積の和を少なく設定することにより、入熱量を調整してもよい。
【0090】
(曲げ矯正工程)
曲げ矯正工程では、伝熱板1に対して物理的に応力を作用させて伝熱板1の反りを矯正する。曲げ矯正工程では、伝熱板1の裏面Zbから、表面Za側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて、摩擦攪拌により形成された伝熱板1の反りを矯正する。矯正工程では、以下に記すプレス矯正、衝打矯正及びロール矯正の三種類の方法からいずれか一以上の方法を選択して行えばよい。まず、プレス矯正について説明する。
【0091】
(プレス矯正)
前記した密封工程が終了したら、摩擦攪拌で発生したバリを除去するとともに、図11に示すように、伝熱板1の裏面Zbが上方を向くように裏返し、土台Dの上に載置する。公知のプレス装置Pを用いて、伝熱板1の裏面Zbの中心地点に対して押圧する。プレス装置Pによって伝熱板1に圧力が加えられると、ポンチPaが伝熱板1を下側に押し、土台Dが伝熱板1の両端側を上側に押すため、伝熱板1には曲げモーメントが作用する。この曲げモーメントは伝熱板1の表面Za側に引張応力を発生させるため、伝熱板1が強制的に下側に凸に撓ませられる。
【0092】
プレス装置の押圧力は、伝熱板1の厚みや材料によって適宜設定すればよいが、伝熱板1の表面Za側が下に凸となって、表面Zaに引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させることが好ましい。
【0093】
また、プレス矯正では、中心地点だけでなく伝熱板1の裏面Zbの他の地点に対しても押圧を行ってもよい。伝熱板1の反り具合に応じてバランスよく押圧することで平坦性をより高めることができる。また、伝熱板1とポンチPaとの間に例えば平板状の補助部材を設けてもよい。
【0094】
(衝打矯正)
次に、衝打矯正について説明する。衝打矯正については、プレス矯正と近似するため、
具体的な図示は省略する。衝打矯正とは、例えばハンマーなどの衝打具を用いて伝熱板に発生した反りを矯正することをいう。衝打矯正は、プレス装置Pに替えてハンマー等の衝打具で伝熱板1を衝打する点を除いては、プレス矯正と略同等である。
【0095】
衝打矯正は、プレス矯正と比べると、プレス装置等を準備する手間が省けるため、作業を容易に行うことができる。また、衝打矯正は、作業が容易であるため伝熱板1が小さい場合や薄い場合に有効である。なお、衝打矯正を終了した後は、衝打により発生したバリを除去することが好ましい。
【0096】
(ロール矯正)
次に、ロール矯正について説明する。ロール矯正については、公知のロール矯正を行うため具体的な図示は省略する。伝熱板の表裏に一対の平板状の補助部材を当接させた後、一対の補助部材を挟むようにして一対のロール状部材を移動させて矯正する。ロール状部材を移動させると伝熱板には曲げモーメントが作用して、伝熱板の表面側に引張応力を発生させるため伝熱板が強制的に撓ませられる。この移動を繰り返して往復動させることによって、反りを矯正していくことが可能になる。
【0097】
以上説明した第三実施形態によれば、伝熱板1を製造した際に、摩擦攪拌による熱収縮によって伝熱板1に反りが発生したとしても、当該反りを是正して伝熱板1の平坦性を高めることができる。
【0098】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。第四実施形態は、前記した蓋部材固定工程を行う前に、本体2と蓋部材3とを接合する仮接合工程を行う点で第一実施形態と相違する。第四実施形態は、仮接合工程を行う点を除いては、第一実施形態と同等であるため、相違点のみ説明する。
【0099】
図12に示すように、前記した蓋部材載置工程を行って本体2に蓋部材3を載置したら仮接合工程を行う。仮接合工程は、摩擦攪拌接合によって本体2に蓋部材3を仮接合する工程である。
【0100】
仮接合工程では、図12の(a)及び(b)に示すように、蓋部材3の表面31の上方から適所に大型回転ツールGを押し込んで、凹部14の底面14aと蓋部材3の裏面32との重ね合わせ部18に対して摩擦攪拌接合を行う。仮接合工程は、比較的短いルートを設定して摩擦攪拌接合を行う。仮接合工程によって本実施形態では4箇所の塑性化領域W5が形成される。本実施形態では、蓋部材3の上方から四箇所に仮接合工程を行ったが、ルートや接合箇所数は適宜設定すればよい。
【0101】
例えば、蓋部材3が大きい場合、前記した蓋部材固定工程を行うと摩擦攪拌の熱収縮によって蓋部材3の中央部分が浮き上がってしまい、本体2と蓋部材3との間に隙間ができてしまう可能性がある。しかし、仮接合工程によれば、突合部J1の内側において、本体2と蓋部材3とを仮接合しておくことで、蓋部材固定工程の際の蓋部材3の浮き上がりを防止又は矯正することができる。なお、仮接合工程は、本実施形態では、蓋部材固定工程を行う前に行ったが、蓋部材固定工程を行った後に行ってもよい。
【0102】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、密閉工程における大型回転ツールGの移動ルートは、前記したルートに限定されず他のルートであってもよい。
【0103】
[実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。本発明に係る実施例は、図13の(a)及び(b)に示すように平面視正方形の金属部材200の表面Za及び裏面Zbにそれぞれ3つの円を描くように摩擦攪拌を行い、表面Za側で発生した反りの変形量と、裏面Zb側で発生した反りの変形量を測定した。表面Za側で発生した反りの変形量の値と、裏面Zb側で発生した反りの変形量の値が近いほど、金属部材200の平坦性が高いことを示す。
【0104】
金属部材200は、平面視500mm×500mmの直方体であって、厚みが30mm、60mmの二種類の部材を用いてそれぞれ測定を行った。金属部材200の素材は、JIS規格の5052アルミニウム合金である。
【0105】
摩擦攪拌の軌跡である3つの円は、金属部材200の中心に設定した地点j又は地点j’を中心とし、表面Za及び裏面Zbともに半径r1=100mm(以下、小円ともいう)、r2=150mm(以下、中円ともいう)、r3=200mm(以下、大円ともいう)に設定した。摩擦攪拌の順序は、小円、中円、大円の順番で行った。
【0106】
回転ツールは、表面Za側及び裏面Zb側ともに同じ大きさの回転ツールを用いた。回転ツールのサイズは、ショルダ部の外径が20mm、攪拌ピンの長さが10mm、攪拌ピンの根元の大きさ(最大径)が9mm、攪拌ピンの先端の大きさ(最小径)が6mmのものを用いた。回転ツールの回転数は、600rpm、送り速度は、300mm/minに設定した。また、表面Za側及び裏面Zb側ともに回転ツールの押込み量は一定に設定した。図13に示すように、表面Za側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けてそれぞれ塑性化領域W21乃至塑性化領域W23とする。また、裏面Zb側において形成された塑性化領域を小円から大円に向けて塑性化領域W31乃至W33とする。当該実施例における各測定結果を以下の表1〜表4に示す。
【0107】
表1は、金属部材200の板厚が30mmであって、表面Za側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j(基準j)と各地点(地点a〜地点h)との高低差を示している。「FSW後」は、基準jをゼロとして、3つの円の摩擦攪拌を行った後において、基準jと各地点との高低差を示している。「表面側変形量」は、各地点における(FSW後−FSW前)の値を示している。「表面側変形量」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。「FSW前」及び「FSW後」のマイナス値は、基準jよりも下方に位置していることを意味する。
【0108】
【表1】

【0109】
表2は、金属部材200の板厚が30mmであって、表面側から小円、中円、大円の摩擦攪拌を行った後、反って(歪んで)しまった金属部材200に対して、裏面側からも小円、中円、大円のそれぞれの摩擦攪拌を行った場合の金属部材200の各地点の測定値を示した表である。「FSW前」は、摩擦攪拌を行う前において、中心地点j’(基準j’)と各地点(a’〜h’)との高低差を示している。
「FSW1」は、図13を参照するように、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量1」は、各地点における(FSW1−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量1」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW2」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)に加えてさらに、中円(半径r2)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量2」は、各地点における(FSW2−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量2」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
「FSW3」は、基準j’をゼロとして、小円(半径r1)、中円(半径r2)に加えてさらに、大円(半径r3)の摩擦攪拌を行った後の、基準j’と各地点との高低差を示している。「裏面側変形量3」は、各地点における(FSW3−FSW前)の値を示している。「裏面側変形量3」の最下欄は、地点a〜地点hの平均値を示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表3は、金属部材200の板厚が60mmであって、表面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表3の各項目は、表1の各項目と略同等の意味を示す。
【0112】
【表3】

【0113】
表4は、金属部材200の板厚が60mmであって、表面側から小円、中円、大円の摩擦攪拌を行った後、裏面側から摩擦攪拌を行った場合の測定値を示した表である。表4の各項目は、表2の各項目と略同等の意味を示す。
【0114】
【表4】

【0115】
表1の「表面側変形量」の平均値(1.61)と、表2の「裏面側変形量1」の平均値(2.04)とを比較すると、「裏面側変形量1」の値の方が大きい。同様に、「裏面側変形量2」の平均値(2.95)及び「裏面側変形量3」の平均値(3.53)も、「表面側変形量」の平均値(1.61)よりも大きな値となっている。つまり、金属部材200の板厚が30mmの場合は、裏面側から小円の摩擦攪拌のみを行っただけでも、金属部材200の反りが戻りすぎてしまう。したがって、金属部材200が30mmの場合は、小さい回転ツールを用いるなどして表面側よりも裏面側の入熱量を少なくすれば、金属部材200の平坦性を高めることができる。
【0116】
表3の「表面側変形量」の平均値(0.98)と、表4の「裏面側変形量2」の平均値(0.91)とを比較すると、両者の変形量が近似している。したがって、金属部材200の板厚が60mmの場合は、裏面側から小円及び中円の摩擦攪拌を行ったときに、金属部材200の平坦性が高いことが確認できた。つまり、板厚が60mmの場合は、小さい回転ツールを用いるなどして表面側よりも裏面側の入熱量を少なくすれば、金属部材200の平坦性を高めることができる。
【符号の説明】
【0117】
1 伝熱板
2 本体
3 蓋部材
11 本体の表面
12 本体の裏面
13 本体の側面
14 凹部
14a 凹部の底面
14b 凹部の側壁
15 供給部
16 排出部
18 重ね合わせ部
31 蓋部材の表面
32 蓋部材の裏面
33 蓋部材の側面
34 凸部
35 開口周縁
36 流路部
F 小型回転ツール
G 大型回転ツール
J1 突合部
W 塑性化領域
w 塑性化領域




【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体に凹設された凹部の底面に、内部が中空に形成された凸部を備えた蓋部材を載置し、前記凹部の底面と凸部の内面との間に熱輸送流体の流路となる流路部を具備する伝熱板を製造する方法であって、
前記本体の前記凹部に前記蓋部材を載置する蓋部材載置工程と、
前記凹部の側壁と前記蓋部材の側面との突合部に沿って回転ツールを移動させて摩擦攪拌接合を行う蓋部材固定工程と、
前記凸部周りに回転ツールを移動させて、前記凹部の底面と前記蓋部材の裏面との重ね合わせ部に対して摩擦攪拌接合を行う密封工程と、を含むことを特徴とする伝熱板の製造方法。
【請求項2】
前記密封工程では、前記回転ツールを前記凸部の周りで一周させることを特徴とする請求項1に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項3】
前記密封工程では、前記回転ツールの移動軌跡を前記凸部の周りでオーバーラップさせて摩擦攪拌接合によって形成させる塑性化領域の一部を重複させることを特徴とする請求項2に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項4】
前記密封工程では、
前記回転ツールを前記凸部に対して右回りに移動させるときは前記回転ツールを右回転させ、
前記回転ツールを前記凸部に対して左回りに移動させるときは前記回転ツールを左回転させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項5】
前記密封工程では、前記回転ツールの先端を前記本体に接触させつつ摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項6】
前記密封工程では、前記回転ツールの中心から前記凸部の開口周縁までの距離を前記回転ツールの半径よりも大きく設定することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項7】
前記密閉工程では、前記蓋部材の外側から摩擦攪拌を開始するとともに、前記蓋部材の外側で摩擦攪拌を終了することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項8】
前記凸部の開口周縁から前記凹部の側壁までの距離を、前記密閉工程で用いる前記回転ツールのショルダ部の外径の2倍以上に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項9】
前記蓋部材固定工程では、使用する回転ツールの先端が前記凹部の底面に達しない程度に設定して摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項10】
前記蓋部材固定工程では、前記回転ツールを前記突合部に沿って一周させて摩擦攪拌接合を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項11】
前記蓋部材固定工程では、前記回転ツールの移動軌跡を前記突合部においてオーバーラップさせ、摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域の一部を重複させることを特徴とする請求項10に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項12】
前記蓋部材固定工程では、
前記回転ツールの進行方向右側に前記蓋部材が位置するように設定した場合は、前記回転ツールを右回転させ、
前記回転ツールの進行方向左側に前記蓋部材が位置するように設定した場合は、前記回転ツールを左回転させることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項13】
前記突合部は、平面視矩形を呈しており、
前記蓋部材固定工程では、前記突合部の一方の対角同士を先に摩擦攪拌接合した後に、他方の対角同士を摩擦攪拌することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項14】
前記突合部は、平面視矩形を呈しており、
前記蓋部材固定工程では、前記突合部の一方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合した後に、他方の対辺の中間部分を摩擦攪拌接合することを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項15】
前記密封工程を行う前に、前記重ね合わせ部において回転ツールを移動させて前記本体と前記蓋部材とを仮接合する仮接合工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項14のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項16】
回転ツールを用いて前記本体の裏面側から摩擦攪拌を行う矯正工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項17】
前記矯正工程では、前記本体及び蓋部材の表面側への摩擦攪拌による入熱量よりも、前記本体及び蓋部材の裏面側への摩擦攪拌による入熱量を少なく設定することを特徴とする請求項16に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項18】
前記矯正工程では、前記本体及び前記蓋部材の表面側に形成される塑性化領域の体積よりも、前記本体及び前記蓋部材の裏面側に形成される塑性化領域の体積を少なく設定することを特徴とする請求項16に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項19】
前記蓋部材固定工程及び前記密封工程で形成された前記本体の裏面側に凸となる反りを、前記本体の表面側に引張応力が発生するような曲げモーメントを作用させて矯正する矯正工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至請求項15のいずれか一項に記載の伝熱板の製造方法。
【請求項20】
表面に凹設された凹部を備えた本体と、
内部が中空に形成された凸部を備え前記本体に載置された蓋部材と、を有し、
前記凹部の底面と前記凸部の内面との間に熱輸送流体の流路となる流路部を具備する伝熱板であって、
前記凹部の底面と前記蓋部材の裏面との重ね合わせ部が摩擦攪拌接合により一体成形されており、前記流路部の周囲に摩擦攪拌接合によって形成された塑性化領域が形成されていることを特徴とする伝熱板。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−11232(P2011−11232A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−157644(P2009−157644)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(000004743)日本軽金属株式会社 (627)
【Fターム(参考)】