説明

伝送状態表示方法

【課題】無線伝送の伝送障害を過去のアンテナ方向調整が完了した受信電波状態データで推定し、操作画面上に表示する
【解決手段】電子地図を利用した操作画面を用いた無線伝送の遠隔制御の表示方法において、予想電界と実際の受信電界の差が所定以下である(前記受信基地局のアンテナ方向調整が完了したと判断される)状態において、予想電界と実受信電波状態との伝送運用データを記録しておき、その伝送運用データから前記無線伝送の受信電波状態と伝送障害となる地域とを推定し、操作画面上に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線伝送を用いた遠隔制御監視システムにおける、伝送状態表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に係る遠隔制御監視システムの例として、FPU(Field Pick-up Unit)を用いた基地局間の固定無線伝送を含むマイクロ基受信地局システムが挙げられる。当該システムで用いられる操作端末の画面表示例を図1に示す。
一般にマイクロ受信基地局システムでは、回転アンテナ受信装置を制御し、基地局から近距離にある送信点からの電波を該回転アンテナ受信装置で受信し、当該システムの基地局設備および固定無線伝送を用いて本局まで伝送する。図1は、前記マイクロ受信基地局システムの前記操作端末における、方向調整操作画面の例である。各監視情報の表示として、受信部の受信電界を視覚的に表すメータ(101)があり、受信電界の値としてBL値(102)があり、回転受信アンテナ装置の角度(103)があり、前記回転受信アンテナ装置の状態を表す監視部分(104)があり、受信部の設定と状態を表す監視部分(105)があり、地図上の基地局点から電波送信点までの距離とアンテナ装置および送信出力から算出される予想電界表示(106)があり、前記回転受信アンテナ装置を制御する制御部分(107)があり、デジタル受信であれば受信のBER(Bit Error Rate)を表示する部分(108)及び受信マージンを表示する部分(109)があり、送信地点と受信地点の情報を表示・設定するプロフィール釦(110)があり、方調支援データを表示するための釦(111)があり、アンテナの位置と方向を示す地図画面(112)があり、地図上に基地局点(113)があり、送信点(114)があり、前記回転受信パラボラアンテナの方向線がある例が挙げられる。
【0003】
このとき、該操作端末には、前記地図画面において任意地点での地形高度情報を保持し、地図上で選択した送信点から受信点までの見通し可否を表示するような機能がある。これは、伝送確立時の事前伝送可否判断において、非常に有用な情報である。また、前記予想電界表示は送信点と受信点の距離、および各々のアンテナ利得や電波の送信出力、送信周波数などによって算出されており、この情報も伝送可否に有用と言える。しかし、現状のシステムでは都市圏などの高層建造物や海上伝搬などで問題となる伝送障害情報などの表示機能は乏しく、またアンテナのデッドゾーンを表示するにあたっても、操作者が明示的に入力した情報を表示するに留まっている。
【0004】
また、FPUリモコンの伝送障害を推定表示する方法として、伝送状態情報と位置情報と移動状況情報とを関連付けて記録する伝送状態表示方法(特許文献1参照)や、移動する送信装置の位置情報と対応する受信状態(BL値、BER、マージン等)を取得してデータ化し記録媒体に保存、その保存データを基に受信状態を地図表示している表示器に表示する方法(特許文献2参照)や、伝送障害等の運用実績ログ情報を記録し、ログ情報から、地図の表示画面に、それぞれの情報を関連付けて表示し、ログ情報を関連付けて、伝送障害を再現し解析する方法(特許文献3参照)があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−297722号公報
【特許文献2】特開2007−134915号公報
【特許文献3】特開2008−205727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の課題に鑑み、伝送路の障害情報を過去の無線伝送運用実績から推定し、表示する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、電子地図を利用した操作画面を用いた無線伝送の遠隔制御の表示方法において、予想電界と実際の受信電界の差が所定以下である(前記受信基地局のアンテナ方向調整が完了したと判断される)状態において、前記無線伝送路の予想電界と受信電波状態との伝送運用データを記録しておき、前記遠隔制御の記録した伝送運用データから前記無線伝送の受信電波状態と伝送障害となる地域とを推定し、前記操作画面に前記無線伝送の受信電波状態と伝送障害となる地域とを表示することを特徴とする伝送状態表示方法である。
【0008】
さらに上記において、送信点および受信点の東西南北と高度との位置情報と山などの障害物の東西南北と高度との位置情報とアンテナ指向性と送信周波数から算出されるフレネルゾーンと送信出力とから予想電界を算出することを特徴とする伝送状態表示方法である。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように本発明によれば、既存の予想電界、高度情報を用いた見通し情報に加え、運用実績を用いた統計的な減衰量を明示することで、操作者の伝送可否判断を現状より効果的に支援する。また、ユーザに意識的な作業・操作を強いることなく長期にわたり通常どおりシステムを使用して実績を蓄積することにより、信頼性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来の方向調整画面を示す模式図
【図2】運用時の記録確認エリア時間軸を示す模式図
【図3】運用実績テーブルを示す模式図
【図4A】障害予想簡易表示(画面)を示す模式図
【図4B】実績数値表示・詳細リンクのポップアップ(画面)を示す模式図
【図4C】詳細実績表示(画面)を示す模式図
【図5】全体フローチャート
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
以下本発明の一実施例の伝送状態表示方法を図2から図5を用いて説明する。
【0012】
まず、運用中と判断される状態を特定するにあたっては、既存の該システムにて導入されている運用中を示す状態(例えば、INUSE、回線LOCK、ON AIR、などとして画面上に表示されることが多い)、もしくは操作者が方向調整を完了したことを該操作画面上のGUIによって明示的に通知した時点(操作者がデータ登録制御を行った時点)などを記録対象のタイミングとする。当然、該予想電界は、該無線伝送における送信点および受信点の東西南北と高度との位置情報と山などの障害物の東西南北と高度との位置情報、アンテナ指向性と送信周波数から算出されるフレネルゾーン、および送信出力から算出されたものである。ここで、該無線伝送における予想電界と実受信電界の差に注目する。また、合わせて画面上に図2のような情報記録確認メッセージを表示させる。内容は前記予想電界と実受信電界の差(201)、記録取消釦(202)である。これは、天候など運用者に了解済の電界低下がないことを確認し、もし明らかな電界低下であるならば記録電界の調整もしくは記録を行わないように支援するためのものである。この時、記録するのは日時、該アンテナの角度、送・受信点の位置、該無線伝送における予想電界と実受信電界とBER(Bit Error Rate)などの受信電波状態及び、予想電界と実受信電界の差などである。また、障害表示時の表示処理効率を上げるため、予め図3のようなアンテナ角度をキーとした一定角度範囲ごとの該電界差データテーブルを作成しておく。これは、角度ごとの実績を瞬時に導出できるようにするためのものである。内容は、運用実績数(301)と平均電界減衰(302)である。
【0013】
以上の実績を基に、該操作端末の方向調整画面において、障害実績表示(図4A)を導入する。この機能は、前記図3のテーブル情報を画面地図上に図示するものである。方法は該当する角度範囲に平均電界減衰量を色変換するなどして表示する。これにより、操作者はその方向で予想される減衰量を一目で確認できる。これは、外部のデータによるものでなく、当システムの実績データにより導出されたものであるため、信頼性は非常に高くなる。操作者も、障害物の有り無しではなく、実減衰電界として数値で示されることから、客観的な判断が容易になると考えられる。また、詳細データを見たい場合は、当該角度にマウスカーソルを合わせた場合などに、表示GUIなどを表示させ(図4B)、それから実績テーブル図3と別に記録されている運用ごとの送信点位置、電界差などを図示(図4C)する。(全データからの選出は当該角度をキーとすれば容易に可能である。)これらの実績確認での地図表示では、電子地図の従来機能を用いて、地域の拡大縮小、地図の方向を回転させるなど、操作者が分かりやすい視点での表示を模索しながら利用可能であることはもちろんである。
【0014】
つまり、電子地図を利用した操作画面を用いた無線伝送の受信基地局の遠隔制御の表示方法において、運用時の伝送状態のデータを登録し、伝送可否推定に用いる伝送状態の実績データとする。さらに、受信点から捉えた任意点の送信点データの位置・角度属性により複数の実績データを分類する。また、送信点および受信点の東西南北と高度との位置情報と山などの障害物の東西南北と高度との位置情報とアンテナ情報と送信出力と送信周波数とから算出された予想電界と実際の受信電界の差が所定以下であることをアンテナ方向調整の完了の確認として、方向調整と伝送可否判断とを支援するものである。
【0015】
ここで、実績データについては、人為的に事前にGUIを用いて明示的にデータを登録・削除を行わせてもよい。これは、本手法導入前の過去の運用データを有効利用するための方法である。
【符号の説明】
【0016】
101:受信部の受信電界を視覚的に表すメータ、102:受信電界の値としてのBL値、103:回転受信アンテナ装置の角度、104:回転受信アンテナ装置の状態を表す監視部分、105:受信部の設定と状態を表す監視部分、106:予想電界表示、107:回転受信アンテナ装置を制御する制御部分、108:受信のBERを表示する部分、109:受信マージンを表示する部分、110:送信地点と受信地点の情報を表示・設定するプロフィール釦、111:方調支援データを表示するための釦、112:アンテナの位置と方向を示す地図画面、113:地図上の基地局点、114:地図上の送信点、
201:予想電界と実受信電界の差)、202:記録取消釦、
301:運用実績数、302:平均電界減衰、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子地図を利用した操作画面を用いた無線伝送の遠隔制御の表示方法において、予想電界と実際の受信電界の差が所定以下である(前記受信基地局のアンテナ方向調整が完了したと判断される)状態において、前記無線伝送路の予想電界と受信電波状態との伝送運用データを記録しておき、前記遠隔制御の記録した伝送運用データから前記無線伝送の受信電波状態と伝送障害となる地域とを推定し、前記操作画面に前記無線伝送の受信電波状態と伝送障害となる地域とを表示することを特徴とする伝送状態表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−23935(P2011−23935A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166573(P2009−166573)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】