説明

伝送状況表示方法

【課題】FPU受信基地局の受信電界強度においてFPU送信機から伝送可能な余裕度を瞬時に識別可能な伝送状況表示方法を提供する。
【解決手段】FPU送信機aは、FPU受信基地局bへ番組素材を電波で送信する。FPU受信基地局bは受信した電波から伝送レートの符号化率ごとの余裕度を含む受信状態信号を生成し、生成した受信状態信号と番組素材とを合成して遠隔監視制御装置Xに送信する。受信I/F部1は合成された信号を受信し、復調部2に入力する。復調部2は入力された信号を復調する。受信状態信号抽出部3は、合成された信号から受信状態信号を識別し、余裕度を取得する。次に受信状態信号抽出部3はメモリ5から余裕度に対応する表示量を読み出す。受信状態信号抽出部3は、表示部4に余裕度に対応する表示量を表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線伝送装置の伝送状況表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビの中継放送では、放送局外で撮影等された番組素材を、移動中継車に搭載したFPU(Field Pickup Unit)送信機からマイクロ波で送信し、送信された電波をFPU受信基地局で中継して、FPU受信基地局からTSL(Transmitter to Studio Link)回線等により放送局に伝送することが多い。
【0003】
マイクロ波は直進伝播する性質のため、電波の伝播経路に山や建造物等があると電波が遮断される。そのため、FPU受信基地局は山頂等の高い場所に設置され、無人であることが多い。そこで、FPU受信基地局の回転アンテナは、FPU送信機からの電波を受信するために、送信される電波の方角へ向くように回転アンテナの方向が遠隔制御される(以下、「方調」という)。
【0004】
また、FPU受信基地局での電界強度(以下、「受信電界強度」という)は、アンテナの方向によって変化する。受信電界強度が低下した場合、アナログ伝送ではノイズ等の混入が増えて映像が乱れ、ディジタル伝送では受信電界強度が最低受信電界強度を下回るとエラー訂正不可能となり突然映像が映らなくなる。そのため、高い品位の映像を伝送するためにもアンテナの方調は重要である。
【0005】
そこで、近年、遠隔制御されるアンテナの方調を簡易にするために、GUI(Graphical User Interface)を用いた技術が知られている。
【0006】
例えば、電波の遮蔽地帯を避けてアンテナの方調を簡易に行うために、回転パラボラアンテナの垂直角度線と、回転パラボラアンテナの水平角度線に該当する地形断面表示線の縦断面図とを、回転パラボラアンテナを遠隔制御する制御装置の画面上に表示する技術が知られている(特許文献1参照)。この技術によれば、オペレータは、垂直角度線と縦断面図とが重なって表示されるときに、回転パラボラアンテナの方向に電波遮蔽地帯があることを容易に判断できる。
【0007】
また、FPU受信基地局の回転アンテナの方調を遠隔制御する遠隔制御センタは、放送局に設置されることが多い。そのため、方向調整モード時に映像信号圧縮率を高めて画質を低下させてNULLデータを多く発生させ、そのNULLデータを中継地点の受信状態信号に置き換えて放送局に送信する技術が知られている(特許文献2参照)。この技術によれば、中継地点であるFPU受信基地局の伝送状況を放送局のモニタに表示できるので、伝送状況を確認しながら回転アンテナを遠隔制御可能である。
【0008】
また、上記したように、最低受信電界強度を下回ると放映不可能となるため、中継地点であるFPU受信基地局の受信電界強度を用いて、現在受信中の受信電界強度で伝送可能な情報量(以下、「余裕度」という)を、受信電界強度と最低受信電界強度との差で数値化して、放送局のモニタに表示する技術も知られている。
【0009】
例えば、図3は、回転アンテナを遠隔制御する従来の方調支援画面例である。図3の方調支援画面は、伝送レート毎の余裕度を示す判定結果91と、ビット誤り率を示す受信BERメータ92と、受信電界強度を示す受信電界メータ93と、信号を振幅と位相とで表すコンスタレーション94と、遅延波等を示す信号波形95とを有する。
【0010】
判定結果91は、FPU送信機から所定の伝送レートで送信された情報を、FPU受信基地局の現在の受信電界強度において受信した場合の余裕度を表している。
【0011】
判定結果91では、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)、SD(スペースダイバーシティ)のそれぞれの符号化率をH(High)、M(Middle)、L(Low)の三段階で伝送された場合の、現在の受信電界強度における余裕度を表示している。符号化率は、例えばQAMの場合、Hを5/6、Mを3/4、Lを1/2と設定する等して、伝送する符号化率に差をつけて適宜設定される。
【0012】
なお、エラー訂正可能な下限値である最低受信電界強度は変調方式及びその符号化率によって異なる。そのため、受信電界強度で伝送可能な情報量である余裕度(現在の受信電界強度−最低受信電界強度)も、変調方式及びその符号化率によって異なるので、判定結果91では9つの伝送レートの余裕度を表示している。オペレータは、この余裕度を確認することで、現在の受信電界強度において最適な伝送レートを特定できる。
【0013】
判定結果91の余裕度と色との対応表が表1である。
【表1】

【0014】
表1では、余裕度が「11dB以上」の場合、余裕度レベルを「余裕でOK」とし、表示色を「青」とする。また、余裕度が「5〜10dB」の場合、余裕度レベルを「OK」とし、表示色を「緑」とする。以下同様に、余裕度が「1〜4dB」の場合、余裕度レベルを「ギリギリOK」とし、表示色を「黄」とし、余裕度が「−3〜0dB」の場合、余裕度レベルを「ギリギリNG」とし、表示色を「赤」とし、余裕度が「−3dB未満」の場合、余裕度レベルを「NG」とし、表示色を「白」とする。このように、表1では余裕度を5段階の余裕度レベルに分けているので、対応する表示色は5つとなっている。
【0015】
図3に示すように、従来例では余裕度が色別に表示されるので、オペレータはいくつかの色を覚えるだけで、どの伝送レートで番組素材を送信すればよいか判断できる。
【特許文献1】特開2005-073007号公報
【特許文献2】特開2007-251861号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、従来例の図3のように余裕度を色別に表示する形態では、余裕度の表示種類が多いと対応する色数が多くなるため、オペレータは、瞬時にどの余裕度レベルが表示されているのか判断しづらかった。
【0017】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、FPU受信基地局の受信電界強度においてFPU送信機から伝送可能な余裕度を瞬時に識別可能な伝送状況表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の方法は伝送状況表示方法に関する。この伝送状況表示方法は、電波の受信手段から出力された受信状況を表示手段に表示する伝送状況表示方法であって、前記受信手段の受信電界強度の余裕度に応じて表示領域の大きさを段階的に変化させて前記表示手段に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、FPU受信基地局の受信電界強度においてFPU送信機から伝送可能な余裕度を瞬時に識別可能とすることができる効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明に係る実施形態の遠隔監視制御装置Xを用いた方調支援システムの構成例である。
【0021】
まず、移動中継車のFPU送信機aから所定の伝送レート(例えば変調方式16QAMで符号化率1/2)でFPU受信基地局bに電波を伝播する。
【0022】
FPU受信基地局bは、回転アンテナで電波を受信すると、公知の技術(例えば上記した特開2007-251861号公報)を用いて、FPU受信基地局bにおける受信状態信号とFPU送信機aから送信された番組素材とを合成した信号を遠隔監視制御装置Xに送信する。
【0023】
具体的には、FPU受信基地局bは、受信した電波を基に受信状態信号を生成する。この受信状態信号は、BER値や受信電界強度、受信電界強度における所定の伝送レート及び符号化率の余裕度等からなる。FPU受信基地局bが算出する余裕度は、現在受信している受信電界強度とそれぞれの変調方式及び符号化率の最低受信電界強度との差である。ここでは、FPU受信基地局bは、余裕度を算出するために、QAM、OFDM、SDの変調方式に対する符号化率H、M、Lとそれらの最低受信電界強度とを対応させた表を有しているものとする。
【0024】
FPU送信機aから送信された番組素材には、伝送レートの調整のためにNULLデータが挿入されている。そこで、FPU受信基地局bは生成した受信状態信号を番組素材内のNULLデータ位置に挿入して、受信状態信号と番組素材とを合成して、遠隔監視制御装置Xに送信する。
【0025】
このように、FPU受信基地局bが受信状態情報を算出して遠隔監視制御装置Xに送信するので、FPU受信基地局bと遠隔監視制御装置Xとの間の伝送経路状のエラー混入による情報劣化を考慮することなく、FPU受信基地局bの正確な受信状態を伝送できる。なお、遠隔監視制御装置Xは、放送局に設置されても良いし、独立した遠隔監視センターに設置されても良いし、FPU送信機aに設置されても良い。FPU送信機aに設置する場合、FPU受信基地局bは受信状態信号のみ送信すると良い。この場合、例えば携帯電話等の低速回線を用いて、遠隔監視制御装置Xを簡易かつ移動性に優れた構成にできる。
【0026】
次に、本実施形態の特徴である遠隔監視制御装置Xの構成を説明する。
まず、受信I/F部1は、受信状態信号と番組素材とが合成された信号を受信して、復調部2に出力する。復調部2は、受信した信号にエラー訂正等の復調処理を行い、受信状態信号抽出部3に出力する。受信状態信号抽出部3は、復調処理された信号から番組素材と受信状態信号とを識別し、受信状態信号から複数の伝送レート及び符号化率の余裕度を取得する。
【0027】
次に、受信状態信号抽出部3は、取得した複数の伝送レート及び符号化率の余裕度に対応する表示量をメモリ5から読み出す。受信状態信号抽出部3は、読み出した表示量を表示部4に表示させる。なお、メモリ5には、余裕度と表示量とを対応させた表とが予め記憶されているものとする。
【0028】
次に、表示部4に表示させる表示量の表示例について図2を参照して説明する。図2は、表示部4で表示される方調支援画面の1例である。図2で、図3と同様の構成には同一の符号を付け、説明を省略する。図2の方調支援画面は、図3と判定結果41が相違する。
【0029】
判定結果41は、従来技術の図3と同様にQAM、OFDM、SDをそれぞれH、M、Lの3段階の符号化率で表し、合計9つの升目に余裕度を表示する。
【0030】
表2は、従来技術の表1の中で表示色の列を表示量とした以外、表1の構成と同一である。つまり、本実施形態の特徴は、余裕度を表示色ではなく表示量で表す点にある。余裕度を示す表示量は、升目の枠内における表示領域の大きさで表され、余裕度に応じて表示領域の大きさを段階的に変化させて表す。
【表2】

【0031】
具体的には、表示量は表示量の全体の最大値を「100%」(升目の枠の大きさ)として、例えば余裕度レベルが「余裕でOK」のときに表示領域の大きさを「100%」の大きさで表す。また、余裕度レベルが「OK」のときに表示領域の大きさを全体の「75%」の大きさで表す。以下同様に、余裕度レベルが「ギリギリOK」のときに「50%」、「ギリギリNG」のときに「25%」、「NG」のときに「0%」となるように表示領域の大きさを変化させる。
【0032】
表示領域の大きさを100%で表示するときは、升目の枠と表示領域の大きさとを一致させると良い。表示領域の大きさは、升目の枠を基準とすることで視認性が高まるからである。また、表示領域の大きさを変化させるときは、升目の枠内の中心を基準として枠と同形状で表示領域の大きさを変化させても良いし、升目の下辺を基準として、下辺を0%で上辺を100%として棒状に表示領域の大きさを変化させても良い。また、表示領域の大きさの形状は四角に限らず丸や三角であっても良いことは言うまでもない。
【0033】
このように、余裕度を表示量で表すことによって、表示される色数を表示量の1色にすることができ、視認時に混乱が生じない。また、オペレータは、表示量の表示領域の大きさが大きいか小さいかを確認するだけで伝送可能か否かを瞬時に判断できる。
【0034】
また、FPU送信機aから現在送信されている伝送レート及び符号化率と同一の伝送レート及び符号化率が判定結果41の升目内にある場合、その該当する升目の枠等を他の升目の枠等と識別可能に色を変えても良い。この場合、オペレータは、FPU送信機aから現在送信されている伝送レート及び符号化率で伝送可能か否かや、他の伝送レートに変更すべきか否かを瞬時に判断できる。
【0035】
また、余裕度を量(表示領域の大きさ)と色とで表してもよい。この場合、余裕度の余裕度レベルが「ギリギリOK」以上の場合と「ギリギリNG」以下の場合とで、表示量の色を別にすると良い。この場合、オペレータは、伝送可能か否かで余裕度を判断できるので、伝送可能な伝送レートの特定をより早くでき、緊急時の中継放送等に役立つ。
【0036】
また、図2では余裕度を5段階に分けて表示したが、適宜段階数に合わせて表示する領域の大きさを変更すればよい。領域の大きさは定量的に変化させても良いし、比例的に変化させても良い。ここで、定量的に変化させるとは、例えば25%刻みずつのように、一定量ずつ領域の大きさが変化することをいう。また、比例的に変化させるとは、例えば0%、10%、30%、70%・・・のように領域の大きさの差に比例して領域の大きさが変化することをいう。表示領域の大きさを比例的に変化させる場合、高い余裕度レベルと低い余裕度レベルとの差が、定量的に変化させる場合と比べて大きくなるので、オペレータは一見して伝送可能か否かを判断できる。
【0037】
以上の本実施形態を概説すると、本実施形態の伝送状況表示方法は、電波の受信手段から出力された受信状況を表示手段に表示する伝送状況表示方法であって、前記受信手段の受信電界強度の余裕度に応じて表示領域の大きさを段階的に変化させて前記表示手段に表示することを特徴とする。これにより、FPU受信基地局bのアンテナの方調に応じた受信電界強度の余裕度に応じて表示領域の大きさが拡大又は縮小されるので、オペレータは習熟度に関係なく、電波の受信手段であるFPU受信基地局bのアンテナの方調から伝送モードの決定までを直感的に簡易に行うことができる。
【0038】
また、前記表示領域の大きさは、余裕度に応じて定量的又は比例的に変化させても良い。これにより、オペレータは、所定の伝送レート及び符号化率において余裕度の余裕無しから余裕有りまでの視認性を高めることができる。
【0039】
また、前記表示領域は、伝送可能な表示領域の色と伝送不可能な表示領域の色とで相違しても良い。これにより、オペレータは所定の伝送レート及び符号化率で伝送可能か否かを瞬時に判断することができる。
【0040】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々様々に変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、所定のレベルを複数段階に分けて表示する形態に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る遠隔監視制御装置Xの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る方調支援の表示画面例である。
【図3】従来の方調支援の表示画面例である。
【符号の説明】
【0043】
1・・・受信I/F部
2・・・復調部
3・・・受信状態信号抽出部
4・・・表示部
5・・・メモリ
41、91・・判定結果
92・・受信BERメータ
93・・受信電界メータ
94・・コンスタレーション
95・・信号波形
a・・・FPU送信機
b・・・FPU受信基地局
X・・・遠隔監視制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波の受信手段から出力された受信状況を表示手段に表示する伝送状況表示方法であって、
前記受信手段の受信電界強度の余裕度に応じて表示領域の大きさを段階的に変化させて前記表示手段に表示することを特徴とする伝送状況表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−290580(P2009−290580A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−141262(P2008−141262)
【出願日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】