説明

伝送装置及びその光出力レベル制御方法

【課題】伝送装置及びその光出力レベル制御方法に関し、対向側の伝送装置で光受信の信頼性を十分確保しつつ、光出力レベルを低く抑え、光信号送受信部における消費電力を削減する。
【解決手段】親装置20から送信された光信号を受光(11)して光入力レベルを計測し、該光入力レベルと、自装置の受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分から、光入力レベル余裕度を計算(12)する。光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを生成(13)し、該情報を含む保守情報通知用のパケットを、対向する親装置20へ送信する。親装置20で、受信した保守情報通知用のパケットから光入力レベル余裕度の情報を抽出し、光入力レベル余裕度の情報に基づいて、光送信器(24)の出力レベルを調整する出力レベル調整値を計算(23)し、該出力レベル調整値の情報に従った出力レベルで光信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送装置及びその光出力レベル制御方法に関し、特に、光ケーブルを介して双方向通信を行うメディアコンバータ等の伝送装置及びその光出力レベル制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6にEthernet(登録商標)通信機器として用いられるメディアコンバータ等の伝送装置の構成例を示す。同図において、31はユーザ回線に備えられるスイッチ機器等の通信機器であり、ユーザの情報端末機器(図示省略)が接続される。10はユーザ側の伝送装置(子装置)であり、20は局舎側の伝送装置(親装置)であり、32は親装置(局舎側)20に接続された監視制御装置である。局舎側の伝送装置(親装置)20は、更に基幹側回線のネットワークに接続される。
【0003】
メディアコンバータは、異なる伝送媒体(例えば光ファイバーと銅線ケーブル)を接続し、信号を相互に変換する装置であり、図6に示す構成例では、親装置(局舎側)20と子装置(ユーザ側)10とに備えられる。子装置(ユーザ側)10と親装置(局舎側)20との間は、数km〜数十km程度の光ケーブルで接続され、その間で双方向光通信が行われる。
【0004】
上記の光ケーブルによる双方向光通信の区間は、規格で定義された最大距離まで通信可能となるようにし、また、光ケーブルの伝送特性が最悪の場合を想定し、更に光コネクタ等の接続損失を組み入れた上で、確実に通信可能な信号レベルとなるよう、子装置(ユーザ側)10及び親装置(局舎側)20の光入出力レベルに余裕を持たせた設定を行う。
【0005】
光伝送装置の入出力レベルの設定に関して、下記の特許文献1等には、自装置に入力される光信号レベルに応じて自装置の出力レベルを制御すると共に、該光信号レベルの増減情報を対向装置に送信し、対向装置では該増減情報に応じて光信号レベルを制御することにより、光アッテネータやAGC(Automatic Gain Control)回路を不要にした光通信システムが示されている。また、下記の特許文献2等には、光波長多重伝送装置の開通時の光レベル調整機能等について示されている。
【特許文献1】特開平5−56002号公報
【特許文献2】特開2008−177840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際に設置される子装置(ユーザ側)10と親装置(局舎側)20との間は、規格で定義された最大距離より伝送距離がかなり短い場合が多く、また、光ケーブルや光コネクタの損失が想定値より随分少ない場合もあり、そのような場合、受信側の伝送装置で受信可能な最小受光レベルに対して、相当の余裕を持たせ過ぎた光入出力レベルの状態で運用されていることとなる。
【0007】
これは、光通信の信頼性を十分確保しつつも、伝送装置の最適な運用条件として過剰な光入出力レベルを設定し、無駄な電力を消費していることになる。本発明は、対向側の伝送装置で光受信の信頼性を十分確保しつつ、光出力レベルを低く抑え、光信号送受信部における消費電力の削減を図ることを目的とする。
【0008】
また、運用中の伝送装置の経年変化等で、光ケーブルや光コネクタの伝送特性の劣化が進行し、受信側の伝送装置に入力される光レベルが低下すると、光入力レベルが受信可能レベルより下回り、受信データのエラーが発生する原因となる。本発明は、このようなエラー発生を未然に防ぐことを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する伝送装置は、対向する伝送装置から送信された光信号を受光し、該光信号の光入力レベルを計測する光受信器と、前記光受信器で計測された光入力レベルと、自装置の受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分から、光入力レベル余裕度を計算する入力レベル余裕度計算部と、前記光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを生成する送信信号生成部と、前記光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを、前記対向する伝送装置へ送信する光送信器と、を備えたものである。
【0010】
また、対向する伝送装置から送信された光信号を受信する光受信器と、前記光受信器で受信した受信信号を処理し、受信された保守情報通知用のパケットに含まれる、前記対向する伝送装置における受光レベルと受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分を示す光入力レベル余裕度の情報を抽出する受信信号処理部と、前記光入力レベル余裕度の情報に基づいて、自装置における光送信器の出力レベルを調整する出力レベル調整値を計算する出力レベル値計算部と、前記出力レベル調整値の情報に従った出力レベルで光信号を送信する光送信器と、を備えたものである。
【0011】
また、前記光入力レベル余裕度の情報が、前記対向する伝送装置における受光レベルが前記目標入力レベルより小さい場合の差分を示しているとき、前記出力レベル値計算部は、自装置における光送信器の出力レベルを、該差分だけ高いレベルとなるよう調整する出力レベル調整値を計算することを特徴とするものである。
【0012】
また、前記光入力レベル余裕度の情報が、前記対向する伝送装置における受光レベルが前記目標入力レベルより小さい場合の差分を示し、前記出力レベル値計算部で、自装置における光送信器の出力レベルを、該差分だけ高いレベルとなるよう調整する出力レベル調整値を計算したとき、該出力レベル調整値が最大出力レベルを超える場合、前記対向する伝送装置における受光レベルが目標入力レベル以下である旨を通知するアラーム信号を送出することを特徴とするものである。
【0013】
また、対向する伝送装置と光ケーブルを介して双方向通信を行う伝送装置の光出力レベル制御方法おいて、前記対向する伝送装置から送信された光信号を受光し、該光信号の光入力レベルを計測し、該光入力レベルと、自装置の受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分から、光入力レベル余裕度を計算するステップと、前記光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを生成し、該光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを、前記対向する伝送装置へ送信するステップと、前記対向する伝送装置で、受信した前記保守情報通知用のパケットから前記光入力レベル余裕度の情報を抽出するステップと、前記光入力レベル余裕度の情報に基づいて、光送信器の出力レベルを調整する出力レベル調整値を計算するステップと、前記出力レベル調整値の情報に従った出力レベルで光信号を送信するステップと、を含むものである。
【発明の効果】
【0014】
対向装置の光入力レベル余裕度に合わせて光出力レベルを低下させることにより、対向側の伝送装置で光受信の信頼性を十分確保しつつ、光信号送受信部における消費電力を削減することができる。この光出力レベル制御による光モジュール1個当たりの消費電力低減量は微少であっても、伝送装置に多数の光ケーブルが収容される場合が多く、伝送装置の運用中は、1日中毎日休み無く光信号の出力を行うので、1伝送装置全体の省電力化に大きな効果を奏する。
【0015】
また、発光する光出力素子(レーザ素子)に流す電流を可能な限り低く抑えることとなり、光出力素子(レーザ素子)の発熱を抑えるとともに、光出力素子(レーザ素子)の寿命を長期化させることができる。
【0016】
更に、受信側の光入力レベルの余裕度(マージン)が減少してきた場合に、出力側の光出力レベルを上昇させるよう調整することにより、受信側での受信データエラー発生を事前に回避することができる。また、受信側の光入力レベルの余裕度(マージン)不足が調整可能な範囲を超える場合は、アラーム信号を通知することにより、未然に回線障害の予防を喚起することができ、光通信の信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明による伝送装置の構成例を示す。同図の構成例は、子装置10の光入力レベル余裕度に合わせて親装置20の光出力レベルを制御する構成例を示している。図1において、子装置10内の光受信器11は、対向する親装置20から入力される光信号の光入力レベルを計測し、該光入力レベル値を入力レベル余裕度計算部12に出力する。
【0018】
入力レベル余裕度計算部12は、自装置の受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルと、上述の光受信器11で計測された光入力レベル値との差分から、光入力レベル余裕度を計算し、該光入力レベル余裕度の情報を、送信信号生成部13に出力する。
【0019】
送信信号生成部13は、該光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを生成し、該保守情報通知用のパケットを光送信器14に出力する。光送信器14は、該光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを、対向する伝送装置である親装置20へ送信する。
【0020】
親装置20の光受信器21は、対向する伝送装置である子装置10から光信号を受信し、受信信号を受信信号処理部22に出力する。受信信号処理部22は、受信信号を処理し、受信された保守情報通知用のパケットに含まれる光入力レベル余裕度の情報を抽出し、該光入力レベル余裕度の情報を出力レベル値計算部23に出力する。
【0021】
出力レベル値計算部23は、上述の光入力レベル余裕度の情報に基づいて、自装置における光送信器24の出力レベルを調整する出力レベル調整値を計算し、該出力レベル調整値を光送信器24に出力する。光送信器24は、該出力レベル調整値の情報に従った出力レベルで光信号を送信する。
【0022】
図2に光入力レベルと光出力レベルとの相関を示す。送信側の伝送装置(図1の場合、親装置20)は、最大出力レベルと最小出力レベルと間の実出力レベルにて光信号を出力する。送信側から送出された光信号は、伝送路(光ケーブル)透過時にレベル低下し、受信側の伝送装置(図1の場合、子装置10)の受信可能な最大入力レベルと最小入力レベルと間の実入力レベルで光信号が入力される。
【0023】
受信側の伝送装置では、最小入力レベルから確実に受信される安全度を見込んだ一定レベルのマージンを付加した目標入力レベルと実入力レベルとの差分を、光入力レベル余裕度として算出する。即ち、実入力レベルが目標入力レベルを超えている度合いを光入力レベル余裕度とする。図2の場合は入力レベルに余裕が有る状態である。
【0024】
図3は図2と同様に、光入力レベルと光出力レベルとの相関を示し、光入力レベルに余裕が有る場合に送信側の光出力レベルを調整する例を示している。送信側の伝送装置(図1の場合、親装置20)は、受信側の伝送装置(図1の場合、子装置10)から通知された光入力レベル余裕度の分だけ、光出力レベルを低下させるよう調整する。受信側の伝送装置は、受信可能最小レベルからマージンを加算した目標入力レベルで、光信号を受光することとなる。
【0025】
図4は図2及び図3と同様に、光入力レベルと光出力レベルとの相関を示し、光入力レベルがマージン不足の場合に送信側の光出力レベルを調整の例を示している。送信側の伝送装置(図1の場合、親装置20)は、受信側の伝送装置(図1の場合、子装置10)から、受光レベルが目標入力レベルより低いことを示す光入力レベル余裕度の情報が通知され、送信側の伝送装置は、該光入力レベル余裕度の分だけ(不足の分だけ)、光出力レベルを上昇させる調整を行う。受信側の伝送装置は、受信可能最小レベルからマージンを加算した目標入力レベルで光信号を受光することとなる。
【0026】
図5は図2〜図4と同様に、光入力レベルと光出力レベルとの相関を示し、光入力レベルマージン不足で、出力側の伝送装置の光出力レベルが最大レベルの場合の例を示している。受信側の伝送装置(図1の場合、子装置10)は、光入力レベルがマージン不足であり、その旨を示す光入力レベル余裕度の情報を、送信側の伝送装置(図1の場合、親装置20)に通知する。
【0027】
しかし、送信側の伝送装置(図1の場合、親装置20)では、最大出力レベルで光出力を行っており、光出力レベルを現在の出力レベル以上に上昇させることができないため、光入力レベルの調整は不可能である。この場合は、送信側の伝送装置において、対向側の伝送装置がマージン不足(即ち、受光レベルが目標入力レベル以下)であることを示すアラーム信号を、監視制御装置32等へ通知するとともに、対向側の伝送装置にも保守情報通知用のパケット等により通知する。こうすることにより、未然に光回線の障害の予防を喚起することができ、光通信の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による伝送装置の構成例を示す図である。
【図2】光入力レベルと光出力レベルの相関(入力レベルに余裕が有る例)を示す図である。
【図3】光入力レベルと光出力レベルの相関(光出力レベル調整の例)を示す図である。
【図4】光入力レベルと光出力レベルの相関(マージン不足時の調整の例)を示す図である。
【図5】光入力レベルと光出力レベルの相関(マージン不足時の調整不可の例)を示す図である。
【図6】メディアコンバータ等の伝送装置の構成例を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ユーザ側の伝送装置(子装置)
11 光受信器
12 入力レベル余裕度計算部
13 送信信号生成部
14 光送信器
20 局舎側の伝送装置(親装置)
21 光受信器
22 受信信号処理部
23 出力レベル値計算部
24 光送信器
31 スイッチ機器等の通信機器
32 監視制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する伝送装置と光ケーブルを介して双方向通信を行う伝送装置おいて、
前記対向する伝送装置から送信された光信号を受光し、該光信号の光入力レベルを計測する光受信器と、
前記光受信器で計測された光入力レベルと、自装置の受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分から、光入力レベル余裕度を計算する入力レベル余裕度計算部と、
前記光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを生成する送信信号生成部と、
前記光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを、前記対向する伝送装置へ送信する光送信器と、
を備えた伝送装置。
【請求項2】
対向する伝送装置と光ケーブルを介して双方向通信を行う伝送装置において、
前記対向する伝送装置から送信された光信号を受信する光受信器と、
前記光受信器で受信した受信信号を処理し、受信された保守情報通知用のパケットに含まれる、前記対向する伝送装置における受光レベルと受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分を示す光入力レベル余裕度の情報を抽出する受信信号処理部と、
前記光入力レベル余裕度の情報に基づいて、自装置における光送信器の出力レベルを調整する出力レベル調整値を計算する出力レベル値計算部と、
前記出力レベル調整値の情報に従った出力レベルで光信号を送信する光送信器と、
を備えた伝送装置。
【請求項3】
前記光入力レベル余裕度の情報が、前記対向する伝送装置における受光レベルが前記目標入力レベルより小さい場合の差分を示しているとき、前記出力レベル値計算部は、自装置における光送信器の出力レベルを、該差分だけ高いレベルとなるよう調整する出力レベル調整値を計算することを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。
【請求項4】
前記光入力レベル余裕度の情報が、前記対向する伝送装置における受光レベルが前記目標入力レベルより低い場合の差分を示し、前記出力レベル値計算部で、自装置における光送信器の出力レベルを、該差分だけ高いレベルとなるよう調整する出力レベル調整値を計算したとき、該出力レベル調整値が最大出力レベルを超える場合、前記対向する伝送装置における受光レベルが目標入力レベル以下である旨を通知するアラーム信号を送出することを特徴とする請求項2に記載の伝送装置。
【請求項5】
対向する伝送装置と光ケーブルを介して双方向通信を行う伝送装置の光出力レベル制御方法おいて、
前記対向する伝送装置から送信された光信号を受光し、該光信号の光入力レベルを計測し、該光入力レベルと、自装置の受信可能最小光入力レベルにマージンを付加した目標入力レベルとの差分から、光入力レベル余裕度を計算するステップと、
前記光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを生成し、該光入力レベル余裕度の情報を含む保守情報通知用のパケットを、前記対向する伝送装置へ送信するステップと、
前記対向する伝送装置で、受信した前記保守情報通知用のパケットから前記光入力レベル余裕度の情報を抽出するステップと、
前記光入力レベル余裕度の情報に基づいて、光送信器の出力レベルを調整する出力レベル調整値を計算するステップと、
前記出力レベル調整値の情報に従った出力レベルで光信号を送信するステップと、
を含むことを特徴とする伝送装置の光出力レベル制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−154375(P2010−154375A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331804(P2008−331804)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】