説明

伝送装置

【課題】VCATで伝送を行うネットワークのノードに備えられ、伝送路中の複数のパスをメンバーとしてLCASを実行する伝送装置において、LCASの障害復旧に関わる動作を伝送路のプロテクション処理に依存させて制御できるようにし、無駄なスイッチを発生させず且つ必要な場合には即時に救済を実行できるようにする。
【解決手段】受信側(LCASsink)の伝送装置において、メンバー障害検出条件を、メンバーとしているパスごとに設定可能なLCAS制御手段を含むものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーチャルコンカチネーション(Virtual Concatenation:VCAT)方式で伝送を行うネットワークにおいてLCAS(Link Capacity Adjustment Scheme)を実行する伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCAS技術は、ITU−T(TELECOMMUNICATION STANDARDIZATION SECTOR OF INTERNATIONAL TELECOMMUNICATION UNION)のG.7042/Y.1305で標準化されているように、VCAT(ITU-T G.707/Y.1322)の帯域を動的に変更(増加/削減)し、パス(PATH)レベルの障害に対してトラフィックを止めずに帯域変更することを可能にする。このパスレベルで検出する障害には、AIS−P、UNEQ−P、PLM−P、TIM−P、パスの過剰ビットエラー、パスの信号劣化、LOM(VCATのマルチフレーム異常)、MND(LCAS時、一部のメンバーの遅延が過剰)などが含まれる。このような障害検出により、伝送装置において、LCASのメンバー(member)として使用できないパスを自動的に切り離し、残りのメンバーで運用可能となる仕組みが備えられている(例えば特許文献1,2)。
【0003】
一方、SONET/SDHなどの伝送路では、伝送路自体がパスを保護できるプロテクションを有しているので、一時的に障害が発生したときに、SONET/SDHのレイヤ(Layer)で復旧が可能な場合もあり得る。ITU-T Rec. G.7042/Y.13051又はITU-T Rec. G.808.1では、このような入れ子式のプロテクションに対して、上位レイヤ(本例の場合はLCASになる)が無駄にスイッチしないように、障害検出確定までの待ち時間としてHold Off Timer (HOタイマ)を用い、一定時間障害を検出させない手段を上位レイヤに用意することが、勧告されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−359627号公報
【特許文献2】特開2006−013562号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記勧告のHOタイマ方式の場合、障害から復旧できないパス(例えば予備用のパスなどの伝送路でプロテクションの対象外になっているパス)についても一律に、HOタイマに係る時間はLCASで救済が実行されない、という課題がある。これを改善するためにHOタイマを短く設定する手法もあり得るが、この場合には、本来なら伝送路のプロテクションで救済できるはずのパスについて、その救済の途中でLCASにおいて障害であるものと判定されてしまい、無駄なスイッチが発生し得るという課題が生じる。
【0006】
現在、HOタイマの値は、標準的なSONET/SDHの障害復旧時間が50msec以内なので、50msecを超えるものとされ、且つあまり長くない時間が望ましいため、例えば100msecに設定される。この場合に、LCASで運用しているパスであって、伝送路では冗長救済の対象になっていないパスに障害が生じたとき、理想的には、障害検出から即時にLCASで救済すべきであるにも関わらず、100msecの時間が経ってから復旧が行われることになってしまう。
【0007】
また、パスの過剰ビットエラーの検出アルゴリズムは、時間的に離散した検出方式なので、ネットワークの途中で検出されるタイミングとLCASで利用すべく終端ノードの伝送装置で検出されるタイミングとが必ずしも一致しない。このために、HOタイマがそもそも役目をなさない場合がある。
【0008】
以上の背景に鑑みると、LCASを実行する伝送装置において、無駄なパスのスイッチを発生させず且つ必要な場合には即時にパスの救済を実行することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためにここで提案する伝送装置は、VCATで伝送を行うネットワークのノードに備えられ、伝送路中の複数のパスをメンバーとしてLCASを実行する伝送装置であって、受信側のメンバー障害検出条件を、メンバーとしているパスごとに設定可能なLCAS制御手段を含むものとする。
【発明の効果】
【0010】
この提案に係る伝送装置によると、メンバーとなっているパスごとに障害の検出条件を変えることができるので、例えば、プロテクションを有する伝送路のパスについてはLCASの障害検出を無効とする一方、プロテクションの無い伝送路のパスについてはLCASの障害検出をHOタイマ無しで確定させるといった、パスの状況に応じた条件設定が可能である。したがって、LCASの障害復旧に関わる動作を伝送路のプロテクション処理に依存させて制御することが可能となり、データ転送に係るサービス帯域の無駄な帯域低下を排除でき、ネットワークの性能を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1に、実施形態に係るネットワークの全体図を示す。図1では、伝送装置NE1から伝送装置NE2の方向へデータを転送する状態を示している。ノードに備えられた伝送装置NE1は、標準に従ったVCATを実行すると共にLCASを実装した装置であり、この例では4本のパスを伝送路に使用してデータ転送を行っている。なお、送信(LCASsource)側のVCAT/LCAS部分の構成は標準的なものであり、詳細は省略する。
【0012】
本実施形態の伝送路はSONETで構成される伝送網であり、VCATで使用する4本のパスのうち、2本のパスPATH1,PATH2はプロテクション方式を持たない伝送路(un-protected network)を通り、残りの2本のパスPATH3,PATH4はプロテクション方式を有する伝送路(protected network)を通って、伝送装置NE2へ接続されている。受信(LCASsink)側の伝送装置NE2は、VCAT/LCASを実装した装置であり、LCAS制御手段11,12,13,14により、メンバーとなっているパスごとにメンバー障害検出条件を設定することができるものとなっている。
【0013】
図中、パスPATH1,PATH2に対するLCAS制御手段11,12は、メンバー障害(MSU_L Member Signal Unavailable, LCAS-enabled criteria)の検出を行う設定(Member fail detect)とされ、パスPATH3,PATH4に対するLCAS制御手段13,14は、メンバー障害の検出を行わない設定(Detector disable)とされている。さらに本実施形態の場合、プロテクション方式をもたないパスPATH1,PATH2に対しては、障害検出確定までの待ち時間(HOタイマ)無しでメンバー障害の検出を行い、高速でLCASによる回線復旧を行えるようにしている。すなわち、プロテクションが無いため、当該伝送路自体での障害復旧は期待できないので、伝送装置NE2でLCASメンバーの障害検出を通常通り行い、LCAS標準に従ってメンバーステータス(パスの状態)をFailとして送信側へ通知することで、LCAS上で障害復旧能力をもたせている。一方、LCASでメンバー障害の検出を行わない設定にしてあるパスPATH3,PATH4は、プロテクションがあるので、伝送路自体によって50msecほどで障害復旧が期待できる。そこで、LCASで不要なスイッチを行わないように、メンバー障害の検出を停止させ、メンバーステータスをFail通知しないようにしてある。
【0014】
この結果、プロテクション有りの伝送路における救済に対してLCASの低速な復旧動作を無駄に起動することなく、且つ、プロテクション無しの伝送路における障害に対しては、本来のLCASによる救済機能を、HOタイマによる遅延を抑止して実施できる。
【0015】
図2は、LCAS制御手段におけるメンバー(パス)ごとの障害検出部の構成例を示している。
【0016】
AIS−P、UNEQ−P、PLM−P、TIM−Pは、SONET/SDHにおいて検出されるパスのアラームである。パスの過剰ビットエラー、パスの信号劣化は、SONET/SDHにおいて、所定のビットエラーレート閾値を超えた場合に検出されるものである。これら過剰ビットエラー及び信号劣化の検出については、障害の検出を確定させるまでの待ち時間と障害状態を解除するまでの待ち時間とに関するタイマ(timer)を動作させるかどうか設定できるようになっている。また、AIS−P、UNEQ−Pを検出した場合には過剰ビットエラー、信号劣化の状態をクリアできるようにしてある。LOM、MNDの障害は、VCAT/LCASで検出されるものである。このLOM、MNDについても、障害検出を確定させるまでの待ち時間と障害状態を解除するまでの待ち時間とに関するタイマ(timer)を動作させるかどうか設定できるようになっている。
【0017】
これら各障害の検出情報は、メンバー障害検出条件とするかどうか設定するスイッチを通してメンバーのMSU_Lへ接続される。MSU_Lは、メンバー障害検出全体を有効とするか否か設定するスイッチを通してVCAT/LCAS処理部15へ信号を出力する。このようなLCAS制御手段は、ハードウエア、ソフトウエア、あるいはこれらの組み合わせのいずれかで構成することができる。
【0018】
当該実施形態における伝送装置NE2の動作について、通常動作と比較しながら説明する。まず、図3〜図5に、HOタイマの使用に関係したタイムチャートを示している。
【0019】
図3は、HOタイマが無い場合のデータ転送に係るサービス帯域を示したものである。ネットワークの途中における状態は省略し、受信(LCASsink)側における障害時の状態をタイムチャートで示している。この例では、AIS−Pが発生し、その40msec後に伝送路のプロテクションによりパスが切り替えられて障害が復旧した状態を示している。
【0020】
AIS−Pの発生に伴って、VCATは組み立て不可となり、帯域(Bandwidth)が一時的にゼロ、すなわちデータが通過できない状態となる。この直後にLCASが当障害を検出してMST=FAILを通知するため、一時的削減(temporary remove)の状態(LCAStemp-RMV)に入る。この時点からVCATの組み立てが再開されるので、データは通過可能となるが、障害の発生したパスはVCATで使用されないため、LCAStemp-RMV中、帯域は障害前よりも減少した状態で運用される。このLCAStemp-RMVは、障害状態を解除する待ち時間WTR(Wait to restore)の間、維持される。すなわち、AIS−Pの発生から40msec後に伝送路のプロテクションによる切り替えで障害は復旧するが、この後もLCAStemp-RMVは、LCASWTRタイマによる待ち時間WTRの間、維持される。当該待ち時間WTRは、過度の障害応答を避けるため10sec程度に設定されるので、障害復旧後も不要な帯域減少状態が継続されることとなる。
【0021】
図4は、HOタイマを適用した場合のサービス帯域を示したものである。この例におけるHOタイマは、一例として100msecに設定してある。図3の例と同様、AIS−Pが発生し、その40msec後に伝送路のプロテクションによるパス切り替えで障害が復旧した状態を示している。
【0022】
AIS−Pの発生に伴って、VCATは組み立て不可となり、帯域が一時的にゼロ、すなわちデータが通過できない状態となる。LCASは、HOタイマによる100msecの待ち時間を越えて障害が継続しない限りMST=FAILを通知しないので、該100msecの間は、LCAStemp-RMVの状態とはならず、伝送路での障害復旧を想定した待ち状態となる。LCASにおいてLCAStemp-RMVとしないので、VCATでは、伝送路での復旧があるまで組み立て不可が継続し、帯域ゼロが継続する。AIS−Pの発生から40msec後に伝送路のプロテクションによるパス切り替えで障害が復旧すると、これに伴いVCATの組み立てが回復し、帯域は障害発生前の状態に戻る。このように、伝送路自体による障害復旧が想定できる場合は、HOタイマの導入で不要なLCASの障害復旧動作を停止させることができ、無用な帯域低下を避けることができる。
【0023】
図5は、HOタイマを適用した場合において障害が復旧できないときのサービス帯域を示している。つまり、HOタイマを適用した場合の課題を説明する図である。この例では伝送路にプロテクションが無いために障害が復旧されない場合を示している。
【0024】
AIS−Pの発生に伴って、VCATは組み立て不可となり、帯域が一時的にゼロ、すなわちデータが通過できない状態となる。LCASは、障害検出を確定させる待ち時間を決めるHOタイマによる100msecの時間を越えて障害が継続しない限りMST=FAILを通知しないので、該100msecの間は、LCAStemp-RMVの状態とはならず、伝送路での障害復旧を想定した待ち状態となる。しかし本例では、伝送路にプロテクションが無くて障害が復旧されないため、100msecを超えて障害が継続する。すると、LCASにおいてHOタイマに従いMST=FAILが通知されるので、この時点でLCAStemp-RMVとなる。したがって、このHOタイマによる100msecの間、帯域ゼロ、すなわちデータの通過できない状態が継続されることになる。
【0025】
図6は、BLSR(Bidirectional Line Switched Ring)方式の伝送路において、障害復旧される回線と障害復旧されない回線とをLCASで使用する場合の設定を示した実施形態である。すなわち、GR-1230-CORE等を適用して、SONET上にBLSRによる障害復旧可能なリングを構成した伝送路を通して、LCAS運用している実施形態である。
【0026】
BLSRでは、障害復旧対象のパス(図6中のW:Protected traffic)と、障害復旧に備えた予備パス(図6中のP:Extra traffic)と、が利用可能とされている。そのP側の予備パスは、障害発生時にW側パスの迂回経路として使用されるので、W側パスで障害復旧が行われるとP側パスは使用できなくなる、という性質を有する。したがって、すべての帯域を保証する必要がない場合には、LCASの一部のメンバーとしてこのようなP側パスを割り当てることにより、予備パス回線を有効に利用して通常時の帯域を増加させる運用が可能である。
【0027】
本実施形態によれば、障害復旧対象のパスとその復旧用の予備パスとに対して異なる障害検出条件の設定が可能である。例えば図6の場合、プロテクション有りの伝送路であるW側パスは障害検出を無効に設定し、プロテクション無しの伝送路であるP側パスは障害検出を有効に設定し且つ障害検出を確定させるまでの待ち時間(HOタイマ)をゼロに設定する。このようなパスごとのLCASメンバー障害検出条件を設定してある場合に、伝送路に障害が発生したときのサービス帯域について、図7に状態を示している。
【0028】
リング内で障害が発生すると、W側の伝送路及びP側の伝送路の双方でAIS−P(W−AIS−P,P−AIS−P)がほぼ同時に発生する。このときに、W側は、障害検出設定を無効にしてあるので、LCAStemp-RMVの状態になることはない(W−temp-RMV)。一方、P側は、HOタイマ無しで障害を即時検出する設定にしてあるので、直ちにLCAStemp-RMVの状態になる(P−temp-RMV)。その後、40msecが経過すると、W側は障害が復旧して障害前の帯域が維持され、そしてP側は、W側パスの冗長救済に使用されるので、障害の状態が継続されることになる。この結果、W側の障害復旧と共に該W側を使用した迅速なデータの疎通が可能となっている。
【0029】
次に、パスの過剰ビットエラー、信号劣化に対する伝送路のプロテクションに関連する制御を説明する。GR-1400-COREに従えば、過剰ビットエラー(Excessive BER)又は信号劣化(SD condition)を検出した後、該ビットエラーの状態を解除するには、確実に復旧したことを保証する目的及び周期的にスイッチを繰り返さないようにする目的で、待ち時間が規定されている。例えば、SONETのSTS−1(Synchronous Transport Signal level 1)でビットエラーレートの閾値が10−6設定の場合に、ビットエラー状態から通常状態へ遷移するまでの待ち時間は、10secから設計次第では20secが規定される。一方、プロテクションを有する伝送路においては、過剰ビットエラー又は信号劣化に応じて救済が実行され、当該ビットエラーからの復旧が想定される。この救済によるパスの切替時に、短い間ではあるが一時的にAIS−Pが発生されるので、当該AIS−Pを基にして障害状態から通常状態への遷移を高速に行う。
【0030】
図8は、ビットエラーを検出し、これを解除するときのサービス帯域を示している。すなわち、現在使用中の回線においてファイバー劣化や光送信部品の劣化などが生じ、ビットエラーが徐々に増加した場合の状態を示している。
【0031】
ビットエラーが徐々に増加して予め設定された閾値まで悪化すると、GR-1400-COREで規定された過剰ビットエラー又は信号劣化が、LCASSinkである受信側の伝送装置で検出される。ほぼ同時に、伝送路でも過剰ビットエラー又は信号劣化が検出され、パスの切替動作が行われる。実際に受信側伝送装置で受信している信号は、この時点で正常な状態に復旧するが、GR-1400-COREで規定された過剰ビットエラー又は信号劣化の状態は、上記待ち時間のために直ぐには解除されない。したがって、この情報をそのままLCASの障害情報として利用すると、LCAStemp-RMVが継続し、帯域減少の状態が無用に継続されてしまう。そこで、図2のLCAS制御手段に示すように、AIS−P又はUNEQ−Pが受信されたときには、過剰ビットエラー又は信号劣化を解除する設定にしてある。
【0032】
図8において、信号劣化(SD condition)の検出後、AIS−Pの発生で解除される障害情報について、SD detectで示してある。LCASのメンバー障害検出条件にこのSD detectを使用することにより、LCAStemp-RMVの継続期間、すなわち帯域が減少している時間は、ほぼ、実際に運用不可能な期間に限定することができる。
【0033】
他の実施形態として、伝送路のプロテクションに伝送装置も関与している場合、該伝送装置において、プロテクションを実行する場合により確実にLCASの障害復旧動作を制御することが可能である。図9は、例えばSONETのUPSR(Unidirectional Path Switched Ring)によってプロテクションを行っていて、受信側の伝送装置においてプロテクション動作が発生した場合の制御を示している。なお、図9ではLCASのメンバー中の1メンバー(member n)のみを図示しているが、複数のパスに関して同様の制御を行う。また、伝送路のプロテクションは、UPSRなどのパススイッチ手段に限定されるものではなく、他の冗長方式でも、伝送装置がプロテクションを実行することを検出可能であれば適用可能である。
【0034】
図9では、UPSRからLCAS部(LCAS/VCAT)へデータを取り出す部分にパススイッチPATH−SWが設けられており、W側で障害が検出された場合、P側へパススイッチPATH−SWを切り替えて、障害の復旧を行う。このような構成を含む場合は、プロテクションを行うことが伝送装置において確実に検出されるため、LCASに関する動作を自装置内判断で制御可能となる。
【0035】
このような制御では、プロテクションの開始から実際に切替が完了するまでの間、LCAS制御手段において、LCASメンバーの障害検出を一時的に自動停止させることができる。この場合、自動停止の開始は、切替条件を満たした時点が好ましく、自動停止の完了は、切替後にパス障害の解消を検出した時点が好ましい。当該制御において、自動停止制御が起動する前にLCASの障害復旧動作が始動してしまった場合でも、待ち時間WTRを経ずにLCAStemp-RMVを強制解除して、即時に帯域の回復を得ることが可能となる。
【0036】
さらに、BLSR方式のようにスイッチングプロトコル(switching protocol)を有するプロテクション型式の場合は、他の伝送装置で切替が発生したことや、他の伝送装置が切替動作を禁止している状態にあることを知り得る手段が提供されている。GR-1230-COREによれば、SONEToverheadのK1/K2バイトやDCCを使用して、これらのプロテクション情報が伝送路を通し通知される。これを利用し、他の伝送装置で切替が発生したこと(つまり伝送路のプロテクション発生)を検出した場合、自伝送装置において、LCAS制御手段によるLCASメンバーの障害検出を一時的に自動停止させるように制御を行うことができる。この場合、自動停止の開始は、切替が発生したことを検出した時点が好ましく、自動停止の完了は、切替後にパス障害がなくなったことを検出した時点が好ましい。当該制御において、自動停止制御が起動する前にLCASの障害復旧動作が始動してしまった場合でも、待ち時間WTRを経ずにLCAStemp-RMVを強制解除して、即時に帯域の回復を得ることが可能となる。
【0037】
これら実施形態の場合、プロテクションによる障害復旧の想定されていたパスが切替されなくなった(切替の対象から外された)情報を認識して利用することができる。すなわち、プロテクション情報により、伝送路のプロテクション発動が現在禁止されていることが検出された場合、該当するパスを、一時的にプロテクション無しのパスとして、HOタイマ無しでLCASによる障害復旧を有効にした運用を自動的に行うことが可能となる。なお、伝送路のプロテクションはBLSR手段に限定されるものではなく、他の冗長方式でも他装置のプロテクション動作に関わる状態が収集可能であれば適用可能である。
【0038】
次に、LCASを含むネットワーク全体を構築(セットアップ)する際の処理について説明する。
【0039】
SONETなどのパスを管理単位とする運用でLCASを使用する場合、回線全体の構築にあたってはパスを一本ずつ構築していくことになるため、LCASのメンバーは、徐々に回線が開通されていくことが考えられる。さらに、回線の冗長性を確保するために、LCAS内の一部のパスを、他のパスとは地理的に別経路を通して接続することもあり、基幹回線の運用会社まで異なることさえある。このような場合、最終的には伝送路のプロテクションによって障害復旧することが想定される複数のパスの間で、回線が開通するまでに時間的に大きな差が現れることになる。
【0040】
そこで、本実施形態に従うと、運用開始から回線の導入時の期間は、すべてのメンバーに対して障害検出を有効にすることで、開通していないパスをメンバー除外した運用を行うことも可能である。このようにすることで、一部の回線が開通していない状態でも、伝送路のプロテクションを期待したLCAS制御が悪影響を与えないようにすることができる。実際に回線が開通すれば、LCASで障害復旧と判断され、パスの障害状態は解除されることになるので、このときに、メンバー障害検出条件を適宜設定することで、本来の目的も自動的に達成される。メンバー障害検出条件を所定の状態に自動的に遷移させるタイミングは、障害復旧後即時でも良いが、装置ごとに決められた自動サービス開始期間(GR-1093: Automatic In-Service Provisioning)後とすることもできる。
【0041】
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0042】
(付記1)
VCATで伝送を行うネットワークのノードに備えられ、伝送路中の複数のパスをメンバーとしてLCASを実行する伝送装置であって、
受信側のメンバー障害検出条件を、メンバーとしているパスごとに設定可能なLCAS制御手段
を含んで構成される伝送装置。
【0043】
(付記2)
付記1記載の伝送装置であって、
前記メンバー障害検出条件に係る障害として、AIS−P、UNEQ−P、PLM−P、TIM−P、パスの過剰ビットエラー、パスの信号劣化、LOM、MNDを含み、
前記LCAS制御手段は、前記各障害ごとに、検出を行うか否かを設定するスイッチを有する、
伝送装置。
【0044】
(付記3)
付記2記載の伝送装置であって、
前記LCAS制御手段は、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を確定させるまでの待ち時間(HOタイマ)をゼロに設定可能である、
伝送装置。
【0045】
(付記4)
付記2又は付記3記載の伝送装置であって、
前記LCAS制御手段は、前記メンバー障害検出条件に係るパスの過剰ビットエラー又はパスの信号劣化を検出した後に、AIS−P又はUNEQ−Pが検出されると、障害状態を解除するまでの待ち時間を経ずに障害状態を解除する、
伝送装置。
【0046】
(付記5)
付記1〜4のいずれかに記載の伝送装置であって、
自装置において伝送路のプロテクションが実行された場合、
前記LCAS制御手段は、該プロテクションに関連するメンバーについて、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を一時的に停止する、
伝送装置。
【0047】
(付記6)
付記1〜4のいずれかに記載の伝送装置であって、
自装置において伝送路のプロテクションが実行された場合、
前記LCAS制御手段は、障害状態を解除するまでの待ち時間(WTR)を経ずに障害状態を解除する、
伝送装置。
【0048】
(付記7)
付記5又は付記6記載の伝送装置であって、
前記伝送路のプロテクションがUPSR方式である伝送装置。
【0049】
(付記8)
付記1〜4のいずれかに記載の伝送装置であって、
伝送路を通じ受信されるプロテクション情報により伝送路のプロテクション発生が検出された場合、
前記LCAS制御手段は、該プロテクションに関連するメンバーについて、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を一時的に停止する、
伝送装置。
【0050】
(付記9)
付記1〜4のいずれかに記載の伝送装置であって、
伝送路を通じ受信されるプロテクション情報により伝送路のプロテクション発生が検出された場合、
前記LCAS制御手段は、障害状態を解除するまでの待ち時間(WTR)を経ずに障害状態を解除する、
伝送装置。
【0051】
(付記10)
付記1〜4のいずれかに記載の伝送装置であって、
伝送路を通じ受信されるプロテクション情報により伝送路のプロテクション禁止が検出された場合、
前記LCAS制御手段は、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を確定させるまでの待ち時間(HOタイマ)をゼロに設定する、
伝送装置。
【0052】
(付記11)
付記8〜10のいずれかに記載の伝送装置であって、
前記伝送路のプロテクションがBLSR方式である伝送装置。
【0053】
(付記12)
付記1〜9のいずれかに記載の伝送装置であって、
前記LCAS制御手段は、回線導入時に全メンバーに対して前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を有効にし、この後に障害復旧となったパスについて、前記メンバー障害検出条件を適宜設定する、
伝送装置。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】実施形態に係るネットワークの概略図。
【図2】LCAS制御手段の詳細を示したブロック図。
【図3】伝送路にプロテクションが有り且つHOタイマが無い場合の通常動作におけるサービス帯域を示したタイムチャート。
【図4】伝送路にプロテクションが有り且つHOタイマが適用されている場合の通常動作におけるサービス帯域を示したタイムチャート。
【図5】伝送路にプロテクションが無く且つHOタイマが適用されている場合の通常動作におけるサービス帯域を示したタイムチャート。
【図6】BLSR上で障害復旧される回線と障害復旧されない回線とをLCASで使用する場合の設定を説明するネットワークの図。
【図7】図6のネットワークにおいて伝送路に障害が発生したときのサービス帯域を示したタイムチャート。
【図8】図6のネットワークにおいてビットエラーを検出した後にこれを解除する場合のサービス帯域を示したタイムチャート。
【図9】伝送装置が伝送路のプロテクションに関与する例を説明するネットワークの図。
【符号の説明】
【0055】
NE2 伝送装置(受信側)
11〜14 LCAS制御手段
15 VCAT/LCAS処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーチャルコンカチネーションで伝送を行うネットワークのノードに備えられ、伝送路中の複数のパスをメンバーとしてLCAS(Link Capacity Adjustment Scheme)を実行する伝送装置であって、
受信側のメンバー障害検出条件を、メンバーとしているパスごとに設定可能なLCAS制御手段
を含んで構成される伝送装置。
【請求項2】
請求項1記載の伝送装置であって、
前記メンバー障害検出条件に係る障害として、AIS−P、UNEQ−P、PLM−P、TIM−P、パスの過剰ビットエラー、パスの信号劣化、LOM、MNDを含み、
前記LCAS制御手段は、前記各障害ごとに、検出を行うか否かを設定するスイッチを有する、
伝送装置。
【請求項3】
請求項2記載の伝送装置であって、
前記LCAS制御手段は、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を確定させるまでの待ち時間をゼロに設定可能である、
伝送装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の伝送装置であって、
前記LCAS制御手段は、前記メンバー障害検出条件に係るパスの過剰ビットエラー又はパスの信号劣化を検出した後に、AIS−P又はUNEQ−Pが検出されると、障害状態を解除するまでの待ち時間を経ずに障害状態を解除する、
伝送装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の伝送装置であって、
自装置において伝送路のプロテクションが実行された場合、
前記LCAS制御手段は、該プロテクションに関連するメンバーについて、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を一時的に停止する、
伝送装置。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載の伝送装置であって、
自装置において伝送路のプロテクションが実行された場合、
前記LCAS制御手段は、障害状態を解除するまでの待ち時間を経ずに障害状態を解除する、
伝送装置。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項記載の伝送装置であって、
伝送路を通じ受信されるプロテクション情報により伝送路のプロテクション発生が検出された場合、
前記LCAS制御手段は、該プロテクションに関連するメンバーについて、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を一時的に停止する、
伝送装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項記載の伝送装置であって、
伝送路を通じ受信されるプロテクション情報により伝送路のプロテクション発生が検出された場合、
前記LCAS制御手段は、障害状態を解除するまでの待ち時間を経ずに障害状態を解除する、
伝送装置。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項記載の伝送装置であって、
伝送路を通じ受信されるプロテクション情報により伝送路のプロテクション禁止が検出された場合、
前記LCAS制御手段は、前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を確定させるまでの待ち時間をゼロに設定する、
伝送装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の伝送装置であって、
前記LCAS制御手段は、回線導入時に全メンバーに対して前記メンバー障害検出条件に係る障害の検出を有効にし、この後に障害復旧となったパスについて、前記メンバー障害検出条件を適宜設定する、
伝送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−130267(P2010−130267A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301917(P2008−301917)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】