説明

位相同期ループのジッタ検出方法及び装置

【課題】別途のジッタ計測装備を使用せずとも位相同期ループのジッタ水準を検出できる位相同期ループのジッタ検出方法及び装置を得る。
【解決手段】基準クロックとフィードバッククロックとの位相差信号を検出し、その位相差信号によって一定の周波数の発振信号を生成する位相同期ループと、入力遅延制御信号によって多数のキャパシタをスイッチングし、前記位相同期ループからの前記位相差信号を前記遅延制御信号によって遅延させる可変位相遅延部と、前記位相同期ループからの前記位相差信号と前記可変位相遅延部によって遅延された位相差信号とを比較し、前記位相差信号の遅延期間を検出する比較部と、前記比較部から検出された遅延期間以後にロック範囲内に位置することを検出するロック検出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、位相同期ループ回路に関するもので、特に、別途の計測装備を使用せずとも位相同期ループのジッタ水準を検出できる位相同期ループのジッタ検出方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
デジタルデータを用いて画像を表示する平板表示装置としては、液晶を用いた液晶表示装置(Liquid Crystal Display;LCD)、不活性ガスの放電を用いたプラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel;PDP)、有機発光ダイオードを用いた有機発光ダイオード(Organic Light Emitting Diode;OLED)表示装置などが代表的である。
【0003】
平板表示装置は、画素マトリックスを通して画像を表示する表示パネルと、表示パネルを駆動するパネルドライバと、パネルドライバを制御するタイミングコントローラとを含む。タイミングコントローラは、データの入出力または多様な信号処理のためにクロックを用い、外部クロックと同期化された内部クロックを生成するために位相同期ループ(Phase Locked Loop;以下、PLLという)回路を含んでいる。タイミングコントローラのみならず、PLL回路は、クロックを用いる多数の電子回路において必須部分である。
【0004】
PLL回路を内蔵した電子回路のテスト時には、PLLのクロックジッタ量を検出して該当回路の信頼度を判断したり、受信端回路のジッタ安定度を判断する。しかしながら、従来は、別途のジッタ計測装備を用いて電子回路に内蔵されたPLLのジッタ量を検出しなければならないので、テスト過程が非効率的であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、別途のジッタ計測装備を使用せずにもPLLのジッタ水準を検出することができるPLLのジッタ検出方法及び装置を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るPLLのジッタ検出装置は、基準クロックとフィードバッククロックとの位相差信号を検出し、その位相差信号によって一定の周波数の発振信号を生成する位相同期ループと、入力遅延制御信号によって多数のキャパシタをスイッチングし、前記位相同期ループからの前記位相差信号を前記遅延制御信号によって遅延させる可変位相遅延部と、前記位相同期ループからの前記位相差信号と前記可変位相遅延部によって遅延された位相差信号とを比較し、前記位相差信号の遅延期間を検出する比較部と、前記比較部から検出された遅延期間以後にロック範囲内に位置することを検出するロック検出部とを備えている。
【0007】
本発明に係る位相同期ループのジッタ検出方法は、基準クロックとフィードバッククロックとの位相差信号を検出し、その位相差信号によって一定の周波数の発振信号を生成する段階と、入力遅延制御信号によって多数のキャパシタをスイッチングし、前記位相差信号を前記遅延制御信号によって遅延させる段階と、前記位相差信号と前記遅延された位相差信号とを比較し、前記位相差信号の遅延期間を検出する段階と、前記検出された遅延期間以後にロック範囲内に位置することを検出するロック検出信号を生成する段階とを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るPLLのジッタ検出方法及び装置は、テスト時に追加的なジッタ計測装備を利用せずともPLLのロック範囲内にあるジッタ水準を検出することができる。また、位相遅延を通してジッタを含むことができるロック範囲を制限することによって、受信端のジッタ安定度をテストすることができ、テスト時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例に係る位相同期ループのジッタ検出装置を概略的に示したブロック図である。
【図2】図1に示したジッタ検出部の詳細構成を示した回路図である。
【図3】図2に示した可変位相遅延部の詳細構成を示した回路図である。
【図4A】本発明に係る位相同期ループのジッタ検出装置から出力されるロック検出信号によるジッタ量を示すテスト波形図である。
【図4B】本発明に係る位相同期ループのジッタ検出装置から出力されるロック検出信号によるジッタ量を示すテスト波形図である。
【図4C】本発明に係る位相同期ループのジッタ検出装置から出力されるロック検出信号によるジッタ量を示すテスト波形図である。
【図4D】本発明に係る位相同期ループのジッタ検出装置から出力されるロック検出信号によるジッタ量を示すテスト波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の実施例に係るPLLのジッタ検出装置を概略的に示したブロック図であり、図2は、図1に示したジッタ検出部30の内部構成を示した回路図である。
【0011】
図1に示したPLLのジッタ検出装置は、位相比較器12、電荷ポンプ部14、ループフィルタ16、電圧制御発振器18及び分周器20を含むPLL10と、PLL10の位相比較器12からの位相差信号(D_UP、D_DOWN)を遅延制御信号(DCS)によって人為的に遅延させた後、ロック範囲内に位置することを検出するジッタ検出部30とを備えている。
【0012】
位相比較器12は、外部から入力される基準クロック(CLK_REF)と分周器20からのフィードバッククロック(CLK_FED)の位相を比較し、位相差信号、すなわち、アップ検出信号(D_UP)またはダウン検出信号(D_DOWN)を生成する。位相比較器12は、フィードバッククロック(CLK_FED)の位相が基準クロック(CLK_REF)の位相より遅い場合、その位相差に該当するアップ検出信号(D_UP)を生成して出力し、フィードバッククロック(CLK_FED)の位相が基準クロック(CLK_REF)の位相より速い場合、その位相差に該当するダウン検出信号(D_DOWN)を生成して出力する。
【0013】
電荷ポンプ部14は、位相比較器12から出力されるアップ検出信号(D_UP)に応答してポジティブ電荷ポンピング動作を行い、ループフィルタ16に電荷を供給する一方、ダウン検出信号(D_DOWN)に応答してネガティブ電荷ポンピング動作を行い、ループフィルタ16に充電された電荷を放電させる。
【0014】
ループフィルタ16は、電荷ポンプ部14によって充電された電荷または放電された電荷に対応する発振制御電圧を生成し、これを電圧制御発振器18に出力する。電荷ポンプ部14によって電荷が充電されれば、発振制御電圧が上昇し、電荷ポンプ部14によって電荷が放電されれば、発振制御電圧が下降する。したがって、電荷ポンプ部14及びループフィルタ16は、位相比較器12からの位相差信号(D_UP、D_DOWN)に対応する発振制御電圧を生成して出力する。
【0015】
電圧制御発振器18は、ループフィルタ16から出力された発振制御電圧に対応して一定の周波数を有するPLLクロック(CLK_PLL)を生成して出力する。
【0016】
分周器20は、電圧制御発振器18からフィードバックされたPLLクロック(CLK_PLL)を予め設定された分周率で分周することによってフィードバッククロック(CLK_FED)を生成し、これを位相比較器12にフィードバックさせる。
【0017】
PLL10は、上述した動作を繰り返すことによって、基準クロック(CLK_REF)と同期化された、すなわち、位相ロックされたPLLクロック(CLK_PLL)を生成して出力する。
【0018】
ジッタ検出部30は、位相比較器12から出力された位相差信号(D_UP、D_DOWN)を遅延制御信号(DCS)によって人為的に遅延させた後、ロック範囲内に位置することを検出し、ロック検出信号(LOCK)を出力する。その結果、設計者は、ロック検出信号(LOCK)の出力によって、遅延制御信号(DCS)で設定された遅延量、すなわち、ジッタ量を参考にしてPLL10のロック範囲内にあるジッタ水準を判断することができる。換言すれば、ロック範囲は、位相差信号の遅延時間に従って決定される。
【0019】
このために、ジッタ検出部30は、図2に示すように、位相比較器12からの位相差信号(D_UP、D_DOWN)を遅延制御信号(DCS)によって遅延させる可変位相遅延部36と、位相比較器12からの位相差信号(D_UP、D_DOWN)と遅延信号とを比較し、遅延区間に対応するアンロック信号、すなわち、イネーブル信号(EN)を生成して出力する比較部38と、比較部38からのイネーブル信号に応答してロック検出信号(LOCK)を出力するロック検出部46とを備えている。
【0020】
位相比較器12からの位相差信号、すなわち、アップ検出信号(D_UP)及びダウン検出信号(D_DOWN)は、ノア(NOR)ゲート32及びインバータ34を経由して可変位相遅延部36に入力される。遅延制御信号(DCS)は、設計者によって予め設定された位相遅延量、すなわち、ジッタ量でレジスタに格納されている。可変位相遅延部36は、nビットの遅延制御信号(DCS)によって多数のキャパシタをスイッチングし、位相遅延量を制御する。
【0021】
このために、可変位相遅延部36は、図3に示すように、入出力ラインに直列に接続された多数のインバータバッファ62、64、66と、多数のインバータバッファ62、64、66の連結ラインと並列に接続された多数のキャパシタ(C1〜Cn)と、nビット遅延制御信号(DCS)のビット(B1〜Bn)によってそれぞれスイッチングされ、多数のキャパシタ(C1〜Cn)を多数のインバータバッファ62、64、66の連結ラインに選択的に接続させる多数のスィッチ(S1〜Sn)とを備えるキャパシタ遅延ステージで構成される。遅延制御信号(DCS)のビット(B1〜Bn)によって、多数のインバータバッファ62、64、66と並列に接続されるキャパシタ(C1〜Dn)の数に比例して入力信号が遅延されて出力される。したがって、可変位相遅延部36は、ノア(NOR)ゲート32及びインバータ34を経由して入力された位相差信号(D_UP、D_DOWN)を遅延制御信号(DCS)によって決定された遅延量だけ遅延させて出力する。また、可変位相遅延部36では、単位キャパシタ(C1〜Cn)の比を調整することによって位相遅延時間を必要に応じて可変させることができる。
【0022】
比較部38であるノアゲート38は、ノアゲート32を経由して入力されたアップ/ダウン検出信号(D_UP、D_DOWN)と可変位相遅延部36によって遅延された信号とを比較し、両信号が重畳されないアンロック期間、すなわち、遅延期間を検出してイネーブル信号(EN)を生成し、イネーブル信号(EN)をインバータ40を通してロック検出部46に出力する。
【0023】
D―フリップフロップであるロック検出部46は、比較部38からリセット端子(RST)に供給されたイネーブル信号(EN)に応答して駆動され、入力端子(D)の入力がいずれも「1」の状態であるとき、出力端子(Q)は「1」を出力し、反転出力端子(QB)は「0」を出力し、ノアゲート50は「1」のロック検出信号(LOCK)を出力する。出力端子(Q)の出力は、ロジッグ回路48を経由して入力端子(D)にフィードバックされる。クロック端子(CLK)と接続されたノアゲート44は、インバータ42を経由して入力される基準クロック(CLK_REF)とロック検出信号(LOCK)とを比較し、ロック検出信号(LOCK)がロック状態(「1」)である場合、「0」をクロック端子(CLK)に出力し、ロック検出部46が動作を停止し、ロック出力(LOCK)を維持させる。したがって、ロック検出部46は、位相差信号の人為的な遅延期間によるイネーブル信号(EN)に応答し、基準クロック(CLK_REF)からPLL10がロック動作をする間、イネーブル期間だけ(すなわち、遅延期間だけ)遅延された後、ロック範囲内にあることを知らせるロック検出信号(LOCK)を出力する。
【0024】
このように、ジッタ検出部30は、位相比較器12からの位相差信号(D_UP、D_DOWN)を遅延制御信号(DCS)によって人為的に遅延させ、その遅延時間だけ遅延された後、ロック範囲内にあるロック検出信号(LOCK)を生成して出力する。その結果、ロック検出信号(LOCK)の出力によって、遅延制御信号(DCS)で設定された遅延量、すなわち、ジッタ量を参考にして、設計者はPLL10のロック範囲内にあるジッタ水準を判断することができる。換言すれば、ロック範囲は、位相差信号の遅延時間に従って決定される。
【0025】
図4A〜図4Dは、本発明の実施例に係るPLLのジッタ検出装置において遅延制御信号(DCS)でジッタ量を150psに設定した場合、PLLクロック(PLL_CLK)及びロック検出信号(LOCK)をPLLクロック(PLL_CLK)の周波数にしたがって示すテスト波形図である。
【0026】
図4A及び図4Bを参照すれば、PLL10から20MHz及び104MHzの周波数を有するPLLクロック(CLK_PLL)が安定的に出力されており、ロック検出信号(LOCK)がハイ状態で安定的に出力されているので、PLL10のジッタ量が遅延制御信号(DCS)で設定した150ps以下の安定した状態であることが分かる。その一方、図4Cを参照すれば、PLL10から104MHzの周波数を有するPLLクロック(CLK_PLL)が不安定に出力されており、ロック検出信号(LOCK)がロー状態で不安定に出力されているので、PLL10のジッタ量が遅延制御信号(DCS)で設定した150psより非常に大きい不安定な状態であることが分かる。また、図4Dを参照すれば、PLL10から100MHzの周波数を有するPLLクロック(CLK_PLL)が安定的に出力されているが、ロック検出信号(LOCK)がハイ状態とロー状態を繰り返しているので、PLL10のジッタ量が遅延制御信号(DCS)で設定した150psより大きい状態であることが分かる。
【0027】
したがって、本発明は、キャパシタ遅延ステージを用いて遅延制御信号(DCS)を通してロック範囲を人為的に調整することによって、テスト時に追加的なジッタ検出装置を利用せずとも効率的にジッタ水準を判断することができる。また、本発明は、キャパシタ遅延ステージを用いて位相遅延を調整することによって、PLLの発振信号がロック範囲内にあることを検出することができる。また、本発明は、単位キャパシタの比を調整することによって、位相遅延時間を必要に応じて追加することができる。また、本発明は、キャパシタ遅延ステージを用いた簡単な構造でロック範囲によってジッタ水準を判断できるので、受信端のジッタ安定度をテストできる信号発生部の役割をすることによってテスト時間を短縮させることができる。
【0028】
以上説明した内容を通して、当業者であれば、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で多様な変更及び修正が可能であることを理解できるだろう。したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の詳細な説明に記載された内容に限定されるものでなく、特許請求の範囲によって定められなければならない。
【符号の説明】
【0029】
10 PLL
12 比較器
14 電荷ポンプ部
16 ループフィルタ
18 電圧制御発振器
20 分周器
30 ジッタ検出部
32、38、50 ノアゲート
34、40、42、62、64、66 インバータ
36 可変位相遅延部
46 ロック検出部
48 ロジック回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準クロックとフィードバッククロックとの位相差信号を検出し、その位相差信号によって一定の周波数の発振信号を生成する位相同期ループと、
入力遅延制御信号によって多数のキャパシタをスイッチングし、前記位相同期ループからの前記位相差信号を前記遅延制御信号によって遅延させる可変位相遅延部と、
前記位相同期ループからの前記位相差信号と前記可変位相遅延部によって遅延された位相差信号とを比較し、前記位相差信号の遅延期間を検出する比較部と、
前記比較部から検出された遅延期間以後にロック範囲内に位置することを検出するロック検出部と
を備える位相同期ループのジッタ検出装置。
【請求項2】
前記可変位相遅延部は、
入出力ラインに直列に接続された多数のインバータバッファと、
前記多数のインバータバッファの連結ラインに並列に接続された多数のキャパシタと、
前記遅延制御信号の各ビットに応答して前記多数のキャパシタをそれぞれスイッチングする多数のスィッチと
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の位相同期ループのジッタ検出装置。
【請求項3】
前記ロック範囲は、前記位相差信号の遅延時間に従って決定される
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の位相同期ループのジッタ検出装置。
【請求項4】
基準クロックとフィードバッククロックとの位相差信号を検出し、その位相差信号によって一定の周波数の発振信号を生成する段階と;
入力遅延制御信号によって多数のキャパシタをスイッチングし、前記位相差信号を前記遅延制御信号によって遅延させる段階と;
前記位相差信号と前記遅延された位相差信号とを比較し、前記位相差信号の遅延期間を検出する段階と;
前記検出された遅延期間以後にロック範囲内に位置することを検出するロック検出信号を生成するする段階と
を含む位相同期ループのジッタ検出方法。
【請求項5】
前記遅延制御信号の各ビットに応答して前記多数のキャパシタをそれぞれスイッチングし、前記位相差信号の遅延時間を決定する
ことを特徴とする、請求項4に記載の位相同期ループのジッタ検出方法。
【請求項6】
前記ロック範囲は、前記位相差信号の遅延時間に従って決定される
ことを特徴とする、請求項4または5に記載の位相同期ループのジッタ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公開番号】特開2011−139436(P2011−139436A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256931(P2010−256931)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】