説明

位相差層付偏光板

【課題】立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を提供すること。
【解決手段】本発明の位相差層付偏光板は、偏光子と該偏光子の片側に配置された保護層とを有する偏光板と、該偏光板の偏光子側に配置された位相差層と、該偏光板の保護層側に配置された接着層とを有する。該位相差層は、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有し、該接着層は、電磁波または粒子線の照射によって接着力を発現する接着剤組成物であって、少なくとも1種のモノマーからなる接着主剤と、該接着主剤の重合反応を生じさせる少なくとも1種の重合開始剤とを含み、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、該接着力が極大値、極小値、該極大値より大きい値をとるように変化する接着剤組成物から形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差層付偏光板に関する。より詳細には、本発明は、パターン化された位相差層を有する位相差層付偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立体(3次元)画像表示に関する技術について、数多くの研究がなされ実用化されている。立体表示の基本原理は、観測者の左右の眼に異なる画像を提供することによるものである。立体画像表示に関する技術としては、代表的には、観測者に特殊な眼鏡等を装着させる眼鏡方式と、眼鏡等を装着しない裸眼方式とが挙げられる。眼鏡方式においては、左目用の映像と右目用の映像を交互に切換えて出力する時分割方式と、液晶セルの1ライン毎に偏光方向の異なる左右の映像を出力する空間分割方式とがある。空間分割方式においては、液晶セルの1ライン毎に偏光方向の異なる左右の映像を出力するために、液晶セルの1ライン毎に対応したパターン状の位相差を発現させる必要がある。パターン状の位相差を発現させる手段としては、遅相軸方向が異なる領域をパターン状に有する位相差板(パターンリターダー)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
上記のようなパターンリターダーは、通常、立体(3次元)画像表示用液晶表示装置において、視認側偏光板のさらに視認側に配置される。しかし、加熱や加湿等の条件下において、クロストークが発生するという問題が生じ得る(特に、パターンリターダーの機能を、視認側偏光板の視認側保護層に付与させた場合)。なお、クロストークとは、左右の画像のそれぞれが他方の画像に混入することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3372016号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、位相差層付偏光板が提供される。本発明の位相差層付偏光板は、偏光子と該偏光子の片側に配置された保護層とを有する偏光板と、該偏光板の偏光子側に配置された位相差層と、該偏光板の保護層側に配置された接着層とを有し;該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有し;該接着層が、電磁波または粒子線の照射によって接着力を発現する接着剤組成物であって、少なくとも1種のモノマーからなる接着主剤と、該接着主剤の重合反応を生じさせる少なくとも1種の重合開始剤とを含み、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、該接着力が極大値、極小値、該極大値より大きい値をとるように変化する接着剤組成物から形成される。
本発明の別の位相差層付偏光板は、偏光子と該偏光子の片側に配置された保護層とを有する偏光板と、該偏光板の偏光子側に配置された位相差層と、該偏光板の保護層側に配置された接着層とを有し;該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有し;該接着層が、電磁波または粒子線の照射によって接着力を発現する接着剤組成物であって、少なくとも1種のモノマーからなる接着主剤と、該接着主剤の重合反応を生じさせる少なくとも1種の重合開始剤とを含み、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、該接着力が極大値を経て極小値をとるように変化し、該接着力が該極小値をとった後、該所定の温度環境下より温度が高い温度環境下にさらに保持されることにより、該接着力が該極大値より大きい値をとるように変化する接着剤組成物から形成される。
好ましい実施形態においては、電磁波または粒子線の照射強度の増大および/または接着温度の上昇に伴って、上記接着剤組成物の接着力が上記極大値に達するまでに要する時間、上記極大値から上記極小値まで変化するのに要する時間、および上記極小値から上記極大値より大きい値まで変化するのに要する時間が短縮される。
好ましい実施形態においては、上記接着剤組成物が、上記所定の温度環境下において電磁波または粒子線が未照射のときには液状である。
好ましい実施形態においては、上記接着主剤に含まれる少なくとも1種のモノマーが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、脂肪族環式炭化水素基、複素環基、アミド基、またはカルボン酸エステル基を少なくとも1つ有する光重合性ビニルモノマーである。
好ましい実施形態においては、上記少なくとも1種の重合開始剤が、光重合開始剤である。
好ましい実施形態においては、上記接着剤組成物の接着力が、上記極大値よりも大きい値に変化した後、水への浸漬によって上記極大値より小さい値まで低下する。
好ましい実施形態においては、上記位相差層の面内位相差Re(590)が、90nm〜190nmである。
好ましい実施形態においては、上記位相差層の上記所定パターンが、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が交互に配置されたストライプ状である。
好ましい実施形態においては、上記異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する。
本発明の別の局面によれば、液晶パネルが提供される。この液晶パネルは、上記位相差層付偏光板を有する。
本発明の別の局面によれば、液晶表示装置が提供される。この液晶表示装置は、上記液晶パネルを有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、特定の接着剤組成物から形成される接着層とパターン化された位相差層とを組み合わせることにより、立体画像表示のクロストークを低減し得る位相差層付偏光板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板における位相差層のパターンの一例を示す概略平面図である。
【図3】本発明で用いられる接着剤組成物の接着力の変化を示す模式図である。
【図4】従来の接着剤の接着力の変化を示す模式図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の好ましい実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0010】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
面内位相差(Re)は、23℃、特に明記しなければ波長590nmにおける層(フィルム)の面内位相差値をいう。Reは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
厚み方向の位相差(Rth)は、23℃、特に明記しなければ波長590nmにおける層(フィルム)の厚み方向の位相差値をいう。Rthは、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)粘着剤
粘着剤は、一般に、以下の性質を有する物質と定義できる。
(i)高粘度で低弾性率の半固体状物質であり、圧力を加えることによって被着体と結合する。
(ii)結合後においても被着体から剥離することが可能である。
(iii)結合の過程で状態が変化しない。
(5)接着剤
接着剤は、一般に、以下の性質を有する物質と定義できる。
(i)当初は流動性のある低粘度の液体であり、被着体に塗布されたときに被着体に十分に濡れることによって接触面積を大きくし、光の照射や加熱によって硬化することにより被着体と結合する。
(ii)光の照射量や加熱量の増加によって粘着状態を経て硬化に至る。
(iii)結合後においては被着体や接着剤の凝集破壊を生じることなく両者を剥離することが不可能である。
(iv)結合の過程で状態が不可逆的に変化する(液体から固体に変化する)。
【0011】
A.位相差層付偏光板
図1は、本発明の好ましい実施形態による位相差層付偏光板の概略断面図である。位相差層付偏光板100は、偏光子11と偏光子11の片側に配置された保護層21とを有する偏光板10と、偏光板10の偏光子11側に配置された位相差層30と、偏光板10の保護層21側に配置された接着層40とを有する。図示例では、偏光板10は、偏光子11の片側にのみ保護層21が配置された構成であり、位相差層30が偏光子11の保護層として機能し得る。代表的には、位相差層付偏光板100は、その接着層40が貼り合わされて、液晶セル(代表的には、視認側)に積層される。
【0012】
B.偏光板
上記偏光板は、少なくとも偏光子を有する。偏光板はさらに偏光子の保護層を有していてもよい。具体的には、偏光板は、偏光子の両側にそれぞれ保護層が配置された構成であってもよいし、偏光子の片側にのみ保護層が配置された構成であってもよい。
【0013】
B−1.偏光子
上記偏光子としては、目的に応じて任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでも、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素などの二色性物質を吸着させて一軸延伸した偏光子が、偏光二色比が高く特に好ましい。
【0014】
ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を吸着させて一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいてもよいし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色の前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。
【0015】
ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行ってもよいし、染色しながら延伸してもよいし、また延伸してからヨウ素で染色してもよい。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液中や水浴中でも延伸することができる。
【0016】
偏光子の厚みは、一般的に1μm〜80μm程度であり、好ましくは5μm〜40μmである。
【0017】
偏光子のホウ素含有量は、好ましくは3重量%〜3.9重量%、さらに好ましくは3.4重量%〜3.9重量%である。このような偏光子は、加熱や加湿等の条件下における寸法変化(収縮)が小さく、クロストークの低減に寄与し得る。ホウ素含有量が3重量%未満である場合には、耐水性が不十分となるおそれがある。一方、ホウ素含有量が3.9重量%を超える場合には、耐久性が不十分となるおそれがある。例えば、偏光板化してヒートサイクル試験を行ったとき、偏光子の延伸方向に破断が発生しやすくなる。なお、偏光子のホウ素の含有量は、例えば、高周波誘導結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)発光分光分析法により、偏光子の重量に対するホウ素の重量分率(%)として算出することができる。ホウ素は、代表的には、偏光子中に、ホウ酸またはそれがポリビニルアルコールのユニットと架橋構造を形成した状態で存在すると考えられるが、ここでいうホウ素含有量は、ホウ素(B)としての値である。
【0018】
B−2.保護層
上記保護層は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0019】
保護層の厚みは、好ましくは20μm〜100μmである。
【0020】
C.位相差層
上記位相差層は、代表的には、λ/4板として機能し得る。λ/4板は、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(または、円偏光を直線偏光に)変換し得る。このような位相差層の面内位相差Re(590)は、好ましくは90nm〜190nmであり、より好ましくは100nm〜170nmであり、さらに好ましくは110nm〜150nmである。位相差層は、好ましくは、nx>ny>nzまたはnx>ny=nzの屈折率楕円体を有する。本明細書において、「ny=nz」は、nyとnzが厳密に等しい場合のみならず、nyとnzが実質的に等しい場合も包含する。
【0021】
位相差層は、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する。パターンの代表例としては、ストライプ状、チェッカー状、モザイク状が挙げられる。このような構成を有することにより、観測者の左右の眼に異なる画像を提供することができ、結果として、3次元(立体)画像を提供することができる。なお、本明細書において例えば「面内位相差Re(590)が140nmである」とは、好ましくは、当該複数の領域の面内位相差がそれぞれ140nmであることを意味する。代表的には、位相差層は、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する2つの領域を所定のパターンで有する。代表的には、当該2つの領域の遅相軸方向は、互いに実質的に直交している。このような構成であれば、当該2つの領域が偏光方向の異なる画像を提供することができ、結果として、良好な3次元画像を提供することができる。
【0022】
位相差層の上記所定パターンは、好ましくは、図2に示すように、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域31および32が交互に配置されたストライプ状である。ストライプの方向は、表示画面の水平方向(左右方向)であってもよく、垂直方向(上下方向)であってもよい。上記と同様に、当該ストライプ状の2つの領域の遅相軸方向は、互いに実質的に直交している。好ましくは、当該異なる方向に遅相軸を有する2つの領域は、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する。言い換えれば、ストライプ状パターンにおけるストライプの幅は、液晶セルの1ラインに対応する。本明細書において「液晶セルの1ライン」とは、マトリクス状に配列された画素の垂直方向または水平方向の一列をいう。ストライプ状パターンは、好ましくは、隣接する領域同士の間にブラックストライプを有する。ブラックストライプは、好ましくは、液晶セルのブラックマトリクスに対応する位置に形成され得る。ブラックストライプを設けることにより、クロストークがさらに低減され得る。
【0023】
位相差層における上記遅相軸方向が異なるそれぞれの領域の遅相軸方向は、好ましくは、上記偏光子の吸収軸方向と実質的に±45°の関係である。位相差層の面内位相差が上記の好適な範囲であって、さらに、それぞれの領域の遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とがこのような関係であれば、左目用画像および右目用画像の両方が良好な円偏光となるので、良好な立体画像表示を実現することができる。
【0024】
1つの実施形態においては、位相差層は、基材フィルム上に、光硬化型液晶ポリマーを異なる配向状態で固定することにより形成された、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を有する。このような位相差層は、例えば、以下のようにして形成される:まず、基材フィルム上に光配向膜を形成し、偏光露光法を用いて所定の方向に配向規制力を付与する。例えば、液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して交互に+45°、−45°の配向規制力が与えられた領域を有する光配向膜を形成する。次いで、当該光配向膜上に光硬化型液晶ポリマー層を形成し、当該光硬化型液晶ポリマー層に紫外線を照射して液晶ポリマーの配向状態を固定することにより、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域(例えば、液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して交互に+45°、−45°の遅相軸方向を有する2つの領域)を形成する。当該領域の面内位相差は、位相差層全体の面内位相差が上記好適範囲となるように、基材フィルムの面内位相差を考慮して調整され得る。
【0025】
基材フィルムの線膨張係数は、好ましくは5.0×10−4(1/℃)以下であり、より好ましくは1.0×10−4(1/℃)以下である。基材フィルムを構成する材料としては、例えば、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂が挙げられる。環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称であり、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα−オレフィンとの共重合体(代表的には、ランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体、ならびに、それらの水素化物が挙げられる。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。上記ポリカーボネート系樹脂としては、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切なポリカーボネート系樹脂が用いられる。例えば、芳香族2価フェノール成分とカーボネート成分とからなる芳香族ポリカーボネートが好ましく用いられる。
【0026】
別の実施形態においては、位相差層は、光異性化物質を含有する高分子材料から形成され得る。光異性化物質は、光照射等により構造異性体または立体異性体を生じるので、所定のパターンで光照射を行うことにより、遅相軸方向が異なる領域を所定のパターンで形成することができる。光異性化物質は、代表的には、光異性化性官能基を有する任意の適切なフォトクロミック化合物である。具体例としては、アゾベンゼン系化合物、ベンズアルドキシム系化合物、アゾメチン系化合物、スチルベン系化合物、スピロピラン系化合物、スピロオキサジン系化合物、フルギド系化合物、ジアリールエテン系化合物、ケイ皮酸系化合物、レチナール系化合物、およびヘミチオインジコ系化合物が挙げられる。好ましくは、アゾベンゼン系化合物、スピロピラン系化合物、およびケイ皮酸系化合物であり、特に好ましくはケイ皮酸系化合物である。また、光異性化物質は、モノマーであってもよく、ポリマーであってもよい。
【0027】
上記高分子材料としては、任意の適切な高分子材料が採用され得る。さらに、高分子材料は、好ましくは、重合性樹脂を含有し得る。重合性樹脂を含有することにより、光異性化物質の配向を固定することができる。より詳細には、重合性樹脂は、一旦、光照射または加熱によって光異性化物質の配向を固定するように重合した後は、さらなる光照射または加熱が行われても、光異性化物質の所望でない構造異性化を引き起こさない役割を果たし得る。すなわち、重合性樹脂は、位相差層において固定された遅相軸方向を常に安定に保持し得る。このような重合性樹脂としては、例えば、不飽和二重結合を有する化合物、親電子基を有する化合物、求核基を有する化合物、および、重合性液晶構造を有する化合物が挙げられる。
【0028】
光異性化物質を含有する高分子材料を用いた位相差層の形成方法について簡単に説明する。まず、上記光異性化物質、高分子材料、および必要に応じて重合成樹脂を含む組成物から、前処理シートが形成される。前処理シートの成形方法としては、任意の適切な方法(例えば、溶液流延法、溶融製膜法(溶融押出し法)、塗布法)が採用され得る。例えば、溶融製膜法を行う場合、上記組成物を所定温度で溶融し、ダイから冷却ロールにキャストすることにより、前処理シートが作製され得る。前処理シートは、未延伸の状態で使用されることもあるが、好ましくは所定の方向に一軸延伸され得る。一軸延伸を行うことにより、後述の光照射によって、複数の領域のそれぞれの遅相軸方向をさらに均一に揃えることができる。一軸延伸の方法および条件(例えば、延伸倍率および延伸温度)は、当業者により適切に選択され得る。
【0029】
次いで、前処理シートに照射強度分布を有する光を照射して、遅相軸方向がそれぞれ異なる複数の領域が形成される。照射強度分布を有する光を照射する方法としては、代表的には、所定のパターンを有するマスクを介して光を照射する方法が挙げられる。照射光は、好ましくは直線偏光である。このようにして、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有する位相差層を形成することができる。
【0030】
なお、光異性化物質を含有する高分子材料を用いる位相差層(位相差フィルム)の詳細については、特許第3372016号に記載されており、当該記載は本明細書に参考として援用される。
【0031】
位相差層は上記の形態に限られず、本発明の効果が得られる限りにおいて任意の適切な形態が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコールフィルムを面内で選択的に非晶化させて所定のパターン(例えば、1ライン毎に遅相軸方向の異なる領域が交互に配されたストライプパターン)を形成した、所定の位相差(例えば、1/2波長の位相差)に対応したパターンリターダーフィルム;所定の波長(例えば、1/2波長)の領域が所定のパターン(例えば、ストライプパターン)で形成された層上に、パターン化されていない所定の波長(例えば、1/4波長)の位相差層を設けたパターンリターダーフィルム;が位相差層として用いられ得る。
【0032】
D.接着層
上記接着層は、少なくとも1種のモノマーからなる接着主剤と、該接着主剤の重合反応を生じさせる少なくとも1種の重合開始剤とを含み、電磁波または粒子線の照射によって接着力を発現する接着剤組成物から形成される。本発明の位相差層付偏光板は、その接着層面によって任意の適切な光学部材に貼り合わされて一体化される。
【0033】
上記接着主剤の重合後のガラス転移温度は、好ましくは50℃以上である。ガラス転移温度が50℃以上である場合、例えば本発明の位相差層付偏光板が液晶パネルに用いられた際にバックライトの熱による偏光子の収縮等の変形を抑えることができる。その結果、立体画像表示のクロストークや表示ムラが抑制され得る。また、本発明の位相差層付偏光板が車載用の液晶パネルに用いられる場合には、車内が高温になっても接着性が維持され得るので、耐熱性が向上し得る。
【0034】
上記接着主剤の重合後の屈折率は、接着層を介して貼り合わされる被着体(すなわち、上記保護層と光学部材)の屈折率に近いことが好ましく、これらの屈折率の中間であることがさらに好ましい。このような接着主剤を含む接着剤組成物を用いることによって、接着層と被着体との界面における反射が減少するので、光の利用効率が向上し、良好な視認性が得られ得る。
【0035】
上記接着主剤を構成するモノマーとしては、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、カルボン酸エステル基、脂肪族環式炭化水素基、または複素環基を少なくとも1つ有する光重合性ビニルモノマーが好ましい。偏光板とガラス基板との接着性を考慮すると、(メタ)アクリロイル基含有モノマーまたはカルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アミド基、もしくは複素環基を有する光重合性ビニルモノマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基含有モノマーがさらに好ましく、単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーがさらにより好ましく、極性基を有する単官能(メタ)アクリロイル基含有モノマーが特に好ましい。なお、本明細書において「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基および/またはメタクリロイル基をいう。
【0036】
上記(メタ)アクリロイル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリルアミド系モノマー、(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。また、複素環基、ヒドロキシル基、アミノ基等の極性基を有する(メタ)アクリロイル基含有モノマーが挙げられる。
【0037】
上記(メタ)アクリルアミド系モノマーとしては、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。(メタ)アクリルアミド系モノマーは、極性基を有していること、これにより、例えばガラス基板の表面との水素結合性が向上すること、およびガラス転移温度が室温以上のものが多いこと、水により接着力を低下させ得るのでリサイクルの点で扱いやすいこと、各種有機溶剤を使用することなく接着力を低下させ得るので環境への負荷が小さいこと等の理由により好ましい。
【0038】
上記(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ヒドロキシル基、複素環基、脂肪族環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系モノマー等が挙げられる。
【0039】
上記ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーは、極性基を有していること、これにより、例えばガラス基板の表面との水素結合性が向上することにより好ましい。
【0040】
上記複素環基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。複素環基を有する(メタ)アクリレート系モノマーは、極性基を有していること、これにより、例えばガラス基板の表面との水素結合性が向上することにより好ましい。
【0041】
上記脂肪族環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系モノマーとしては、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。脂肪族環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレート系モノマーは極性基を有していないので、極性基を有していない、または極性の弱い基材(例えば、シクロオレフィン系基材)との貼り合わせに好適である。
【0042】
その他の極性基含有モノマーとしては、アクリロイルモルホリン、アクリル酸、アクリルアミド、アクリロニトリル等が挙げられる。その他の極性基含有モノマーは、極性基を有していること、これにより、例えばガラス基板の表面との水素結合性が向上することにより好ましい。
【0043】
上記接着主剤としては、上記モノマーを1種のみ使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。また、接着主剤は、上記モノマーを主成分とし、上記以外の他のモノマーを副成分として含んでもよい。この場合、上記モノマーが接着主剤に占める比率は50モル%より大きいことが好ましい。
【0044】
上記接着主剤は、上記接着剤組成物を硬化させる所定の温度環境下において、液体であるか、または液体材料に溶解されていてもよい。なお、本明細書においては、液体状態は粘度の高い液体状態も含む。
【0045】
上記重合開始剤としては、目的に応じて任意の適切な重合開始剤が選択され得る。好ましくは光重合開始剤が用いられ得る。光重合開始剤を使用することにより、光によって重合反応を生じさせることができるので、接着剤組成物の接着力および状態の制御が容易になるとともに、被着体の劣化や破壊を回避し得る。
【0046】
上記光重合開始剤としては、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、カチオン系光重合開始剤等が挙げられる。紫外線を用いる光重合開始剤としては、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アントラキノン系光重合開始剤、キサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤等が挙げられる。
【0047】
上記光重合開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルエニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1等のアセトフェノン系化合物、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニゾインメチルエーテル等のベンゾインエーテル系化合物、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン等のα−ケトール系化合物、ベンジルジメチルケタール等のケタール系化合物、2−ナフタレンスルホニルクロリド等の芳香族スルホニルクロリド系化合物、1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等の光活性オキシム系化合物、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、3,3’−4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0048】
上記光重合開始剤としては、その光吸収波長が本発明の位相差層付偏光板の各構成材料および該偏光板が貼り合わされる光学部材のいずれか一方を透過する波長であるものが好ましい。また、光重合開始剤は、光によって反応した後において、可視光領域に吸収が無いか、または可視光領域の吸光度が低いものが好ましい。例えば、本発明の位相差層付偏光板が液晶表示装置に用いられる場合、視認時の色相に影響しないように、バックライトの輝線のピークである440nm付近、530nm付近、610nm付近の波長の光の吸収が無いか、または吸光度が低いことが好ましい。
【0049】
上記接着剤組成物中の重合開始剤の含有量は、反応の進行速度等を考慮して適切な量に設定され得る。具体例としては、接着主剤としてヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を用い、重合開始剤としてアシルホスフォンオキサイド系光重合開始剤を用いた場合、接着剤組成物は、HEAA100部に対して重合開始剤を0.3〜3部含有することが好ましい。
【0050】
上記接着剤組成物は、目的に応じて任意の適切な添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、各種のSiカップリング剤、架橋剤、重合禁止剤、光増感剤、導電性材料、複屈折を有する微粒子、界面活性剤、および硬化剤等が挙げられる。
【0051】
上記硬化剤の具体例としては、フェノール樹脂、各種イミダゾール系化合物およびその誘導体、ヒドラジド化合物、ジシアンジアミド、イソシアネート系化合物、およびこれらをマイクロカプセル化したもの等が挙げられる。例えば、硬化剤としてフェノール樹脂が添加された場合は、さらに硬化促進剤としてトリフェニルフォスフィン等のリン系化合物等を併用することもできる。
【0052】
上記照射される電磁波または粒子線は、好ましくは紫外線または紫外線近傍の波長の電磁波である。可視光線を用いると、周辺光の影響で重合反応が進む場合があり、反応の制御が難しくなること、重合開始剤の残渣による可視光の吸収が残り、接着剤組成物が着色する可能性があること等の問題がある。赤外線を用いると、熱によって重合反応が進行し、反応の制御が難しくなる等の問題がある。
【0053】
第一の実施形態においては、上記接着剤組成物は、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、その接着力が極大値、極小値、該極大値より大きい値をとるように変化する。
【0054】
なお、本明細書において、所定の温度環境とは、接着剤組成物に与えられる熱量と接着剤組成物の重合反応によって生じる熱量との和から、接着剤組成物からの散逸熱量を差し引いた熱量が、所定の熱量以上となる状態を、少なくとも所定の時間だけ維持できるような温度環境をいう。したがって、所定の温度環境下といった場合には、接着剤組成物を所定の温度で一定時間加熱できる環境に置くことを意味し、加熱温度および加熱環境が考慮されている。例えば、接着剤組成物を介して2つの被着体を貼り合わせた積層体が、熱の散逸がある開放系において加熱される場合に、接着力が極大値および極小値をとるように変化するためには、熱の散逸がない閉鎖系で加熱される場合と比べて高い温度で一定時間加熱する必要がある。所定の温度環境下においた場合の接着剤組成物の温度は、該接着剤組成物のガラス転移点近くかまたはそれ以上の温度となることが必要である。
【0055】
また、本明細書において、電磁波または粒子線の照射強度および照射量というときは、被着体と接着剤組成物との積層体に対する電磁波または粒子線の照射強度および照射量(すなわち、照射源と積層体との間で測定される電磁波または粒子線の照射強度または照射量。以下、「実測照射強度および照射量」という)を意味する。したがって、電磁波または粒子線が被着体を通って接着剤組成物に到達する場合、実測照射強度および照射量は、接着剤組成物自体に対する実際の電磁波または粒子線の照射強度および照射量(以下、「理論照射強度および照射量」という)と異なる。例えば、日東電工製の偏光板(VEGQ5724DU)の400nmの波長の光の透過率は約30%であるため、この偏光板を通して接着剤組成物に吸収される光の強度および量(理論照射強度および照射量)は、光源の照射強度および照射量(実測照射強度および照射量)の約30%となる。
【0056】
上記第一の実施形態によれば、上記接着剤組成物が所定の時間にわたって所定の温度に維持されるように温度環境を制御するとともに、従来の接着剤において接着力を発現させるのに用いられてきた照射強度と比較してより低い強度の電磁波または粒子線を照射することによって、該接着剤組成物を介して被着体同士を貼り合わせるための接着力と該接着剤組成物の状態とを制御することが可能である。以下に詳述する。
【0057】
上記接着剤組成物の層(すなわち、接着層)を介して被着体1と被着体1’と(すなわち、上記保護層と光学部材と)を貼り合わせる接着力Fは、以下のf1、f1’、f2、f3、およびf3’のうち最小の力と定義される。
界面接着力f1、f1’:被着体1または被着体1’と接着剤組成物の層とを結合させる力
接着剤組成物凝集力f2:接着剤組成物の層内部において接着剤組成物の分子間に働く力
被着体凝集力f3、f3’:被着体1および被着体1’の内部で分子間に働く力
【0058】
被着体1および被着体1’、接着剤組成物の層、並びに被着体1、1’と接着剤組成物の層との界面のうち、接着状態がどの部分で破壊されるかということは、f1、f1’、f2、f3、f3’の大小関係で決まる。被着体1と被着体1’との接着状態は、これらの力が最小の部分で破壊される。破壊は、力の強さによって、被着体1、1’の凝集破壊、被着体1、1’−接着剤組成物の層の界面破壊、接着剤組成物の層の凝集破壊、これらの混合破壊等に分けられる。一般に、接着力自体を測定することは困難であるため、剥離力が接着力として評価される。剥離力は、剥離時に接着剤組成物の層が塑性変形するのに要した力と、界面接着力f1、f1’のうちの小さい方の力を含む値となる。
【0059】
(液体状態)
上記接着剤組成物の層は、従来の接着剤と同様に、電磁波または粒子線が未照射で少なくとも第1の所定の温度環境下のときには流動性のある液体状態である。この状態のときには、接着力Fは極めて低く、接着剤組成物の層を介して貼り合わされた2つの被着体1、1’は、貼り合わせ位置が容易にずれる可能性がある。このときには、凝集力f2は、f1、f1’、f3、f3’と比べて極めて小さい。
【0060】
(粘着剤様状態)
第1の所定の温度環境下で上記接着剤組成物の層に適切な強度の電磁波または粒子線を照射すると、接着力Fは、電磁波または粒子線の照射量に応じて大きくなる(すなわち、凝集力f2が大きくなる)。さらに照射量を多くすると、接着力Fは、極大値に達した後、小さくなるように変化する。照射量に応じて接着力Fが極大値を含む所定の範囲内の値をとるときの接着剤組成物の層の状態は、従来の粘着剤と類似した状態、すなわち、完全硬化しておらず、高粘度で低弾性率の粘弾性体の状態である。このような状態にあるときには、接着剤組成物の層は、圧力によって接着力を発現し、該層を介して貼り合わされた2つの被着体1、1’のずれが生じにくいので、貼り合わせの際の位置ずれの発生を抑制することができる。このときには、凝集力f2は、貼り合わせ時のせん断方向の力でずれないだけの大きさを有する。
【0061】
接着力Fが極大値を含む所定の範囲内の値をとるときに2つの被着体1、1’の間に剥離力を及ぼした場合には、接着剤組成物の層は伸びるように変形し、剥離力が界面接着力f1またはf1’と該層を変形させるのに必要な力(粘弾性体の状態となった接着剤組成物の層の塑性変形に要した力)との和を上回ったときに、被着体1または1’の一方と該層とが剥離する。該剥離が被着体1と該層との界面で生じるか、被着体1’と該層との界面で生じるかは、f1とf1’の大きさによって決まる。また、このときには、f2はf1、f1’より大きいため、該層の凝集破壊を防止できる。被着体1または1’の一方と該層とを剥離した場合には、該層は従来の粘着剤と類似の状態であるので、両者を再接着することも可能である。
【0062】
本明細書においては、上記のように圧力によって接着力Fが発現する粘弾性体となったときの接着剤組成物の状態を粘着剤様状態という。この状態のときには、接着力Fは、極大値を最大とする所定の範囲の値をとる。接着剤組成物が粘着剤様状態を示すときの接着力Fの極大値の値および極大値を含む所定の範囲は、接着主剤の種類、重合開始剤の種類および添加量、電磁波または粒子線の照射強度および波長、温度環境等の条件によって異なる。
【0063】
(軽剥離状態)
接着力Fが極大値を経た後、第1の所定の温度環境下において上記接着剤組成物の層に適切な強度の電磁波または粒子線をさらに照射すると、接着力Fは、電磁波または粒子線の照射量の増加に伴って極小値に達した後、再び大きくなるように変化する。照射量に応じて接着力Fが極小値を含む所定の範囲内の値をとるときの該層は、粘着剤様状態のときより硬化した状態であるが、完全硬化には至っていない。該層がこのような状態にあるときには、2つの被着体1、1’と該層とを小さい力で容易に剥離することが可能である。したがって、被着体に損傷を与えることなく、貼り合わされた2つの被着体1、1’を剥離することができる。このときには、凝集力f2は粘着剤様状態のときよりさらに大きくなり、界面接着力f1またはf1’のいずれかは、f2と比べて極めて小さくなると考えられる。該層は硬化して接着力Fが極めて小さい状態であり、被着体への接着剤組成物の濡れ広がりがほとんどないので、被着体1または1’と該層とを剥離した後は、少なくとも製品として貼り合わせた状態を維持し得る接着力で両者を再接着することは不可能である。
【0064】
本明細書においては、上記のように被着体1、1’の少なくとも一方と上記接着剤組成物の層とを、被着体に損傷を与えることなく両者の界面で剥離することができる程度の硬化状態を示すときの接着剤組成物の状態を軽剥離状態という。この状態のときには、接着力Fは、極小値を最小値とする所定の範囲の値をとる。ここで、「被着体に損傷を与えることなく両者の界面で剥離することができる」とは、接着剤組成物の層および被着体の凝集破壊を生じることなく接着剤組成物の層と被着体とが両者の界面で剥離される場合だけでなく、剥離後に被着体に接着剤組成物の一部が残留した状態で接着剤組成物の層と被着体とが両者の界面で剥離される場合も含む。接着剤組成物が軽剥離状態を示すときの接着力Fの極小値の値および極小値を含む所定の範囲は、接着主剤の種類、重合開始剤の種類および添加量、電磁波または粒子線の照射強度および波長、温度環境等の条件によって異なる。
【0065】
(強接着状態)
接着力Fが極小値を経て大きくなった後、第1の所定の温度環境下において上記接着剤組成物の層に適切な強度の電磁波または粒子線をさらに照射し続けると、電磁波または粒子線の照射量の増加に伴って接着力Fは大きくなり、最終的には少なくとも極大値よりも大きい値に達する。このときには、該層は、接着主剤の重合反応がほぼ終了して上記軽剥離状態のときの硬化状態と同じかまたはそれより進んだ硬化状態となっており、2つの被着体1、1’は該層を介して強固に接着された状態となる。このときには、凝集力f2は、軽剥離状態のときのf2と同じかまたはそれより大きく、界面接着力f1およびf1’は粘着剤様状態のときのf2より大きい。少なくともこの時点では、2つの被着体1、1’は剥離することができず、無理に剥離しようとした場合には、f2、f3、およびf3’の大小関係に応じて、被着体1もしくは1’の内部または該層の内部のいずれかにおいて凝集破壊が生じる。
【0066】
本明細書においては、上記のように軽剥離状態のときの硬化状態と同じかまたはそれより進んだ硬化状態を示すときの接着剤組成物の状態を強接着状態という。この状態のときには、接着力Fは極大値よりも大きい値をとる。接着剤組成物が強接着状態を示すときの接着力Fの最小値(すなわち、極大値より大きい範囲における最小の値)は、接着主剤の種類、重合開始剤の種類および添加量、電磁波または粒子線の照射強度および波長、温度環境等の条件によって異なる。
【0067】
上記のとおり、上記接着剤組成物は、所定の温度環境下において、従来の接着剤を用いる際の強度と比べて低い強度の電磁波または粒子線を照射することによって、接着力Fの値が、電磁波または粒子線の照射量の増加に応じて、図3に示されるように変化する。すなわち、接着力Fは、電磁波または粒子線の照射量の増加に応じて、極大値を経て極小値をとり、その後、少なくとも極大値より大きい値となるように変化し得る。本明細書においては、上記接着剤組成物の接着力Fを図3に示されるように変化させることが可能な電磁波または粒子線の照射強度の最大値を、「限界照射強度」という。限界照射強度より大きい強度の電磁波または粒子線が照射された場合には、接着力Fは図4に示されるように極大値および極小値をとることなく変化する。限界照射強度は、接着主剤の種類、重合開始剤の種類および添加量、温度環境、照射光の波長等の条件によって異なる。限界照射強度は、例えば、後述の製造例2のようにして決定することができる。
【0068】
これに対して、従来の接着剤は、接着力Fの値が、図4に示されるように電磁波または粒子線の照射量の増加によって極大値および極小値をとることなく大きくなるように変化する。すなわち、従来の接着剤は、電磁波または粒子線の照射量の増加によって粘着剤様状態を経て直接強接着状態となり、上記接着剤組成物のように接着力が極大値に達した後、低下して、被着体同士を容易に剥離することができる状態を経過しない。
【0069】
上記第一の実施形態においては、電磁波または粒子線の照射強度および/または接着剤組成物が置かれる温度環境を変化させることによって、接着力Fおよび接着剤組成物の状態の変化速度を速めることができる。具体的には、電磁波または粒子線の照射強度を限界照射強度よりも低い範囲で大きくすると、接着力Fが極大値に達するまでに要する時間(または、接着剤組成物が粘着剤様状態となるまでの時間)、極大値から極小値に変化するのに要する時間(または、接着剤組成物が軽剥離状態となるまでの時間)、および極小値から最大値(または、極大値より大きい値)に変化するのに要する時間(または、接着剤組成物が強接着状態となるまでの時間)が短縮され得る。例えば、電磁波または粒子線の照射強度を2倍にすることによって、約半分の時間で接着力Fを極大値(このときの接着剤組成物は粘着剤様状態である)、次いで、極小値(このときの接着剤組成物は軽剥離状態である)を経て最大値(または、極大値より大きい値:このときの接着剤組成物は強接着状態である)まで変化させることができる。同様に、接着剤組成物が置かれる温度環境を変化させて電磁波または粒子線が照射されて重合反応が進行している間の接着剤組成物の温度を高くすることによって、これらの時間が短縮され得る。
【0070】
第二の実施形態においては、上記接着剤組成物は、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、その接着力が極大値を経て極小値をとるように変化し、該接着力が該極小値をとった後、該所定の温度環境下より温度が高い温度環境下にさらに保持されることにより、該接着力が該極大値より大きい値をとるように変化する。
【0071】
上記第二の実施形態においては、温度環境を途中で変えることによって、電磁波または粒子線を照射することなくその後の接着剤組成物の接着力Fおよび状態を変化させることができる。例えば、第1の所定の温度環境下における電磁波または粒子線の照射によって接着力Fが極大値を経て極小値をとった後、接着剤組成物を第1の所定の温度環境より温度が高い第2の所定の温度環境下において所定の時間以上にわたって保持することによって、接着力Fを極小値から極大値より大きな値に変化させることができる。なお、第1の所定の温度環境下における電磁波または粒子線の照射によって接着力Fが極大値をとった後、接着剤組成物を第1の所定の温度環境より温度が高い第2の所定の温度環境下において所定の時間以上にわたって保持すると、接着力Fは極大値から極大値より大きな値に直接変化し得る。いずれの場合においても、接着剤組成物の温度は、そのガラス転移点近くかまたはそれ以上の温度となることが必要である。
【0072】
第2の所定の温度環境を第1の所定の温度環境よりも高い温度にする理由は以下のように考えられる。すなわち、接着力Fが極小値の状態(軽剥離状態)のときには、接着剤組成物の硬化反応はほぼ終了しており、この状態の接着剤組成物にさらに電磁波または粒子線を照射しても硬化反応はあまり進まない。しかしながら、接着剤組成物の温度をガラス転移温度またはその付近まで上げることによって、被着体と接着剤組成物との界面の応力が緩和され、その結果、接着力Fが上昇する。ここで、電磁波または粒子線を照射しない状態で、すなわち、電磁波または粒子線を吸収することによる発熱や輻射熱の影響がない状態で、接着剤組成物の温度を上げるためには、第2の所定の温度環境を、電磁波または粒子線を照射していた第1の所定の温度環境よりも高い温度にする必要がある。
【0073】
上記第一および第二の実施形態において、上記接着剤組成物は、電磁波または粒子線の照射が停止された場合に、該停止した時点の状態および接着力を維持し得る。また、照射の再開および/または置かれる温度環境によってその状態および接着力がさらに変化し得る。したがって、該接着剤組成物から形成される接着層は、上記液体状態、粘着剤様状態、軽剥離状態、または強接着状態のいずれかであり得る。
【0074】
上記接着層は、高い弾性率を有し得る。強接着状態の接着層の20℃における引っ張り弾性率は、例えば、2×10Pa〜8×1010Pa、好ましくは4×10Pa〜4×1010Paであり得る。このような弾性率を有することにより、偏光子の収縮等による寸法変化が抑制され得、その結果、立体画像表示のクロストークが好適に低減され得る。また、後述の実施例のヒートショック試験で示すように、加熱および冷却による偏光子の膨張および収縮が抑制され得るので、偏光子にクラックが発生し難くなり、偏光子の耐久性が向上し得る。さらに、このような弾性率を有することにより、反発力が強くなる。よって、本発明の位相差層付偏光板を接着層面で液晶セルに貼り合わせた場合、偏光板の表面に力が加わっても偏光板自体の変形が抑制され得、その結果、偏光板表面の凹みや破壊が防止され得る。
【0075】
上記接着層は、高いガラス転移温度(Tg)を有することが好ましい。該ガラス転移温度は、好ましくは50℃以上である。このようなガラス転移温度を有することにより、偏光子の収縮等による変形が抑制され得、その結果、立体画像表示のクロストークが好適に低減され得る。
【0076】
上記接着層の厚みは、目的に応じて適切に設定され得る。厚みは、好ましくは2μm〜40μmであり、さらに好ましくは2μm〜30μmであり、特に好ましくは5μm〜25μmである。このような範囲内に厚みを設定することにより、適切な接着性を有する接着層を得ることができる。また、偏光子の収縮を抑えてクロストークを低減することができる。
【0077】
E.その他
本発明の位相差層付偏光板においては、上記位相差層の視認側に、目的に応じて任意の適切な表面処理層を形成してもよい。表面処理層の代表例としては、アンチグレア層、反射防止層およびハードコート層が挙げられる。また、本発明の位相差層付偏光板は、目的に応じて接着層の保護層が設けられない側に剥離ライナーをさらに有していてもよい。
【0078】
アンチグレア層は、画像表示装置の表面で外光が反射することによる透過光の視認性低下の防止等を目的として設けられる。アンチグレア層は、形成されるフィルム表面に微細凹凸構造を付与することにより形成することができる。アンチグレア層を形成する材料としては、代表的には、透明樹脂が挙げられる。具体例としては、イソシアヌル酸トリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのようなアクリル系樹脂、イソホロンジイソシアネートポリウレタンのようなウレタン系樹脂を含有する紫外線硬化型樹脂が挙げられる。微細凹凸構造の付与は、任意の適切な方式で行われる。代表例としては、粗面化(例えば、サンドブラスト、エンボス加工)、微粒子の配合が挙げられる。微粒子を用いる場合、当該微粒子としては、目的に応じて任意の適切な微粒子が採用され得る。好ましくは、透明微粒子である。具体的には、微粒子は、無機系微粒子(例えば、導電性であり得るシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化スズ、酸化インジウム、酸化カドミウムまたは酸化アンチモン微粒子)であってもよく、有機系微粒子(例えば、架橋または未架橋のポリマー微粒子)であってもよい。微粒子の平均粒径は、好ましくは0.5μm〜20μmである。微粒子の配合量は、透明樹脂100重量部に対して、好ましくは2重量部〜70重量部であり、より好ましくは5重量部〜50重量部である。
【0079】
ハードコート層は、画像表示装置の表面に配置される偏光板等の表面の傷付き防止等を目的として設けられる。ハードコート層は、適切な硬度および滑り性を有する硬化膜で構成される。ハードコート層を形成する材料としては、上記アンチグレア層を形成するアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂に加えて、シリコーン系樹脂が挙げられる。
【0080】
反射防止層は、画像表示装置の表面での外光の反射防止を目的として設けられる。反射防止層としては、当業界で通常用いられている反射防止層が採用され得る。
【0081】
剥離ライナーは、利用に供されるまでの間、代表的には粘着剤様状態の接着層表面を保護することを目的として設けられる。剥離ライナーとしては、粘着剤様状態の接着層と良好に剥離し得る限りにおいて任意の適切な剥離ライナーが採用され得る。具体例としては、シリコーン系剥離剤で処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
【0082】
F.位相差層付偏光板の製造方法
上記位相差層付偏光板は上記各構成部材を積層することによって製造され得る。積層方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。1つの実施形態においては、まず、上記偏光子の一方の側に保護層を積層し、他方の側に位相差層を積層することにより、積層体を作製する。このとき、積層の順序は問わない。また、各層は、任意の適切な接着剤層または粘着剤層を介して積層される。次いで、得られた積層体の保護層が配置された側に接着層を積層する。本発明の位相差層付偏光板の使用形態を考慮すると、積層された接着層は液体状態または粘着剤様状態であることが好ましく、粘着剤様状態であることがさらに好ましい。
【0083】
上記積層体の保護層が配置された側に粘着剤様状態の接着層を積層する方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。この場合、該積層体に接着層を積層する工程および接着層を粘着剤様状態にする工程は、方法および順序を問わない。例えば、該積層体の保護層表面に液体状態の上記接着剤組成物を塗布し、適切な条件で、例えば、所定の温度環境下において、限界照射強度よりも低い強度の電磁波または粒子線を照射して粘着剤様状態にする方法が挙げられる。
【0084】
別の方法としては、剥離ライナー上に液体状態の上記接着剤組成物を塗布し、適切な条件で電磁波または粒子線を照射して粘着剤様状態にし、次いで、粘着剤様状態の接着剤組成物を上記積層体の保護層表面に転写する方法、および、剥離ライナー上に液体状態の上記接着剤組成物を塗布し、該剥離ライナーを粘接着組成物の層を介して上記積層体の保護層表面に積層し、次いで、適切な条件で電磁波または粒子線を照射して接着剤組成物を粘着剤様状態にする方法が挙げられる。
【0085】
また、剥離ライナー上に液体状態の上記接着剤組成物を塗布し、適切な条件で電磁波または粒子線を照射して粘着剤様状態にし;次いで、粘着剤様状態の接着剤組成物の剥離ライナーが設けられていない側に別の剥離ライナーを貼り合わせ;その後、いずれか一方の剥離ライナーを剥離して、粘着剤様状態の接着剤組成物を上記積層体の保護層表面に転写してもよい。あるいは、剥離ライナー上に液体状態の上記接着剤組成物を塗布して、該接着剤組成物の上に別の剥離ライナーを積層し;次いで、適切な条件で電磁波または粒子線を照射して接着剤組成物を粘着剤様状態にし;その後、いずれか一方の剥離ライナーを剥離して、粘着剤様状態の接着剤組成物を上記積層体の保護層表面に転写してもよい。
【0086】
上記製造方法においては、例えば、上記接着剤組成物を粘着剤様状態にした後、遮光等により電磁波または粒子線がそれ以上該接着剤組成物に照射されないようにし、所定の温度環境よりも温度の低い環境を維持することによって、接着層を粘着剤様状態のまま一定期間維持し得る。
【0087】
G.位相差層付偏光板の使用方法
本発明の位相差層付偏光板は、接着層によって任意の適切な光学部材に貼り合わされて使用される。貼り合わせ方法としては、以下のような方法が可能である。すなわち、(工程1)電磁波または粒子線の照射によって粘着剤様状態とされた接着層によって位相差層付偏光板を光学部材に貼り合わせて仮接着すること、(工程2)貼り合わせの修正が必要かどうかを検査すること、(工程3)貼り合わせの修正が不要の場合には接着層を強接着状態にして位相差層付偏光板と光学部材とを完全接着すること、(工程4)貼り合わせの修正が必要な場合には接着層を軽剥離状態にして位相差層付偏光板と光学部材とを剥離することを含む方法である。このような方法によれば、(工程4)の剥離時に光学部材に損傷を与えないので、該光学部材を再利用することができる。本発明の位相差層付偏光板が貼り合わされる光学部材としては、例えば、液晶セルが挙げられる。
【0088】
(工程1)の仮接着においては、接着層が粘着剤様状態であり、圧力によって接着力を発現するので、上記位相差層付偏光板と上記光学部材とを圧力によって貼り合わせることができる。
【0089】
(工程2)においては、上記貼り合わせの位置ずれ、異物や気泡のかみ込み等の発生の有無を確認する。
【0090】
(工程3)において、接着層を強接着状態にする方法としては、好ましくは以下の方法が挙げられる。例えば、粘着剤様状態である接着層に対して、所定の温度環境下で、軽剥離状態にするために必要な量よりも多くの量の電磁波または粒子線を限界照射強度よりも低い強度でさらに照射する方法; 粘着剤様状態である接着層に対して、所定の温度環境下で、限界照射強度よりも低い強度の電磁波または粒子線をさらに照射して軽剥離状態にし、次いで、該所定の温度環境よりも高い温度の温度環境下において所定の時間以上保持する方法; および、上記位相差層付偏光板と上記光学部材との積層体を(工程1)の電磁波または粒子線の照射時の温度環境よりも高い温度の温度環境下において所定の時間以上保持する方法である。
【0091】
(工程4)において、接着層を軽剥離状態にする方法としては、好ましくは以下の方法が挙げられる。例えば、粘着剤様状態である接着層に対して、所定の温度環境下で、粘着剤様状態にするために必要な量よりも多くの量の電磁波または粒子線を限界照射強度よりも低い強度でさらに照射する方法である。
【0092】
本発明の位相差層付偏光板は、接着層を強接着状態にして目的の光学部材と完全接着された後において、該位相差層付偏光板と該光学部材との積層体を水に浸漬することによって、該光学部材から容易に剥離され得る。これは、接着層を形成する接着剤組成物が水への浸漬によって膨潤し、界面接着力f1、f1’、接着剤組成物凝集力f2のいずれかが小さくなり、接着剤組成物の接着力Fが小さくなるためであると考えられる。このときの接着力Fは、少なくとも上記極大値よりも小さい。したがって、本発明の位相差層付偏光板によれば、例えば、液晶テレビのリサイクル時に液晶セルから容易に剥離することができるので、環境負荷およびリサイクルコストを軽減することが可能となる。浸漬する水の温度は限定されない。水温が高い場合には、より短時間で接着力が低下して剥離可能となる。
【0093】
H.液晶パネル
本発明の液晶パネルは、上記位相差層付偏光板を有する。好ましくは、本発明の液晶パネルは、液晶セルと、液晶セルの視認側に配置された上記位相差層付偏光板とを有する。
【0094】
図5は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。液晶パネル200は、液晶セル50と、液晶セル50の視認側に配置された上記位相差層付偏光板100と、液晶セル50のバックライト側に配置された偏光板10’とを備える。位相差層付偏光板100は、その位相差層30が偏光板10よりも視認側となるように配置されている。また、偏光板10’は、偏光子11’と、液晶セル50と偏光子11’との間に配置される保護層21’および/または偏光子11’のバックライト側に配置される保護層22’とを備え得る。保護層21’、22’としては、上記保護層と同様のフィルムを採用し得る。図示しないが、液晶パネル200は、液晶セル50と位相差層付偏光板100との間および/または液晶セル50と偏光板10’との間に配置される、任意の適切な他の位相差層を備え得る。
【0095】
上記液晶セル50は、一対の基板51、51’と、基板51、51’間に挟持された表示媒体としての液晶層52とを有する。一方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターおよびブラックマトリクス(いずれも図示せず)が設けられている。他方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的にはTFT)(図示せず)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線(図示せず)およびソース信号を与える信号線(図示せず)と、画素電極(図示せず)とが設けられている。なお、カラーフィルターは、アクティブマトリクス基板側に設けてもよい。上記基板51、51’の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御されている。上記基板51、51’の液晶層52と接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜(図示せず)が設けられている。
【0096】
上記液晶パネルの各構成部材の積層方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。位相差層付偏光板と液晶セルとを積層する場合、位相差層付偏光板の接着層を液晶セルの視認側の基板表面に貼り合わせて積層する。貼り合わせ方法としては、(工程1)電磁波または粒子線の照射によって粘着剤様状態とされた接着層によって位相差層付偏光板を液晶セルの視認側の基板に貼り合わせて仮接着すること、(工程2)貼り合わせの修正が必要かどうかを検査すること、(工程3)貼り合わせの修正が不要の場合には接着層を強接着状態にして位相差層付偏光板と液晶セルとを完全接着すること、(工程4)貼り合わせの修正が必要な場合には接着層を軽剥離状態にして位相差層付偏光板と液晶セルとを剥離することを含む方法が好ましく例示され得る。このような方法によれば、貼り合わせ時の位置ずれを防止し得る。さらに、貼り合わせの修正が必要な場合であっても、液晶セルに損傷を与えることなく容易に剥離し得るので、液晶セルの再利用の点で有利である。
【0097】
上記G項で記載したとおり、強接着状態の接着層は、水への浸漬によりその接着力が大幅に低下する。したがって、上記液晶パネルにおいて、位相差層付偏光板と液晶セルとが完全接着されている状態であっても、該液晶パネルを水に浸漬することにより、両者を容易に剥離することができる。これにより、液晶パネルが廃棄される際に、使用されているレアメタルの回収や位相差板の除去等が容易になるので、リサイクルの点で有利である。
【0098】
また、強接着状態の接着層は、従来の粘着剤層に比べて高い弾性率を有するので、偏光子および偏光板の変形が防止され得る。したがって、上記液晶パネルを用いた液晶表示装置においては立体画像表示のクロストークが好適に低減され得、また、偏光板表面に力が加えられた場合に、凹みの発生や破壊が防止され得る。
【実施例】
【0099】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。また、実施例において、特に明記しない限り、「部」および「%」は重量基準である。各測定方法は以下の通りである。
【0100】
(1)光の照射強度の測定
光の照射強度(実測照射強度)は、測定器(アイグラフィック製、EYE UV METER UVPF−A1)を用いて照射源と被照射物との間で測定した。
(2)接着力の測定
引張試験機(島津製作所製、オートグラフ、AG−IS)を用いて、引張速度300mm/分の条件で、室温(25℃)における180度ピール値(剥離)を測定し、これを接着力とした。
(3)弾性率の測定
TAインスツルメンツ製固体粘弾性装置RSAIIIを用い、サンプルを短冊状にして引っ張り応力をかけて弾性率を測定した。測定条件は以下のとおりである。
変形モード:引っ張り
周波数:1Hz
初期ひずみ:0.1%
温度:−60℃〜300℃
【0101】
[製造例1]
N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドモノマー(興人製)100部に光重合開始剤(チバジャパン製、Irgacure819)1部を添加して溶解することにより、接着剤組成物を調製した。溶解速度を速めるために50℃で加熱しながら超音波をかけて溶解した。得られた接着剤組成物のTgは、98℃であった。ここで、下記で用いる偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)の保護フィルムには、紫外線吸収剤が添加されたTACが用いられているため、380nm以下の波長の光は偏光板をほとんど透過しない。したがって、上記光重合開始剤として、400nm付近の可視光にも吸収のあるIrgacure819を選択した。
【0102】
上記接着剤組成物1mLをスポイトで板ガラス上に垂らし、その上から偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)を重ね合わせ、ハンドローラーで偏光板を押さえて偏光板と板ガラスとを貼り合わせた。接着剤組成物の厚みは、10μmとなるようにした。板ガラスのサイズは150mm×50mm、偏光板のサイズは140mm×40mmとした。
【0103】
70℃に加熱したホットプレート(AS ONE製、HHP−411)上に偏光板を貼り合わせた板ガラスをガラス面を下にして置き、紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって偏光板側から光を照射した。偏光板やガラスの温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、紫外線の照射源と偏光板との間に熱線カットフィルターを装着した。
【0104】
光の照射強度は、波長405nmにおける実測照射強度が7mW/cmになるように調整した。上記偏光板を通って接着剤組成物に到達する光の照射強度(理論照射強度)は、実測照射強度の約30%である。したがって、接着剤組成物への照射強度(理論照射強度)は、理論上、7mW/cm×30%=約2mW/cmになると考えられる。実測照射強度と理論照射強度との関係については、以下の実施例・製造例等においても同様である。
【0105】
(1)粘着剤様状態
液体状態の接着剤組成物に偏光板側から光を2秒間照射することによって、接着剤組成物が粘着剤様状態になった。粘着剤様状態は、照射開始から5秒、粘着剤様状態の開始から3秒経過するまで継続した。粘着剤様状態の開始から終了までの光の実測照射量は15〜35mJ/cmであった。接着力の極大値は12N/25mmであった。また、接着力が極大値の時のモノマーの反応率は約57%であった。
【0106】
(2)軽剥離状態
粘着剤様状態になった接着剤組成物に偏光板側から光を3秒以上照射することによって、接着剤組成物が軽剥離状態となった。軽剥離状態は、照射開始から(すなわち、液体状態から)21秒、軽剥離状態の開始から16秒経過するまで継続した。軽剥離状態の開始から終了までの光の実測照射量は35〜150mJ/cmであった。接着力の極小値は0.5N/25mmであった。また、接着力が極小値の時のモノマーの反応率は約87%であった。
【0107】
(3)強接着状態
軽剥離状態になった接着剤組成物に偏光板側から光を16秒以上照射することによって、接着剤組成物が強接着状態となった。照射開始から21秒以上照射することによって強接着状態となった。強接着状態が開始したときの光の実測照射量は150mJ/cmであった。強接着状態のときの接着力の最大値は、偏光板に含まれる保護層の凝集力および保護層と偏光子との間の界面接着力よりも大きい値であった。また、照射量が300mJ/cmのときのモノマーの反応率は、約89%であった。
【0108】
粘着剤様状態、軽剥離状態、および強接着状態における上記接着剤組成物の弾性率を以下の表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示すとおり、上記接着剤組成物は高い弾性率を有する。
【0111】
上記接着剤組成物について、光の照射強度以外の条件を上記と同条件として、照射強度を変えたときの照射時間に応じた接着剤組成物の状態の変化を観察した。照射強度は、波長405nmにおける強度を1.5〜35mW/cmの範囲で変化させた。結果を表2に示す。表2においては、×印は接着剤組成物が液体状態、△印は粘着剤様状態、○印は軽剥離状態、◎印は強接着状態であったことを示す。
【0112】
【表2】

【0113】
表2から、照射強度が大きくなるにしたがって、接着剤組成物の状態が粘着剤様状態になるまでの時間、軽剥離状態となるまでの時間、および強接着状態となるまでの時間が短縮されていることがわかる。
【0114】
[製造例2]
N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミドモノマー(興人製)100部に光重合開始剤(チバジャパン製、Irgacure819)0.5部を添加して溶解することにより、接着剤組成物を調製した。溶解速度を速めるために50℃で加熱しながら超音波をかけて溶解した。得られた接着剤組成物のTgは、98℃であった。
【0115】
上記接着剤組成物1mLを板ガラスにスポイトで垂らし、ハンドローラーを用いて幅25mmに切断した偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)と板ガラスとを貼り合わせた。接着剤組成物の厚みが10μmとなるようにした。偏光板を貼り合わせた板ガラスを40℃のオーブン中に置き、紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって偏光板側から以下の照射強度で光を照射した。このとき、偏光板やガラスの温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、照射源と偏光板との間に熱線カットフィルターを装着した。
【0116】
光の実測照射強度は、波長405nmにおける強度が7mW/cm、14mW/cm、21mW/cm、25.4mW/cm、32.5mW/cm、41mW/cm、60mW/cm、または80mW/cmとなるように調整した。各照射強度において照射時間を変化させたときの対ガラス接着力の試験結果を表3に示す。
【0117】
【表3】

【0118】
表3から、実測照射強度が41mW/cm以下の場合には、照射時間の増加に伴って接着力が極大値、極小値、該極大値よりも大きい値をとるように変化したことがわかる。実測照射強度が60mW/cm以上の場合には、照射時間の増加に伴って、接着力は極大値および極小値をとることなく増大した。したがって、この接着剤組成物に関する限界照射強度を41mW/cmとすることができる。
【0119】
[製造例3]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)100部に光重合開始剤(チバジャパン製、Irgacure819)0.5部を添加して溶解することにより、接着剤組成物を調製した。溶解速度を速めるために50℃で加熱しながら超音波をかけて溶解した。
【0120】
上記接着剤組成物1mLを板ガラスにスポイトで垂らし、その上から偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)を重ね合わせ、ハンドローラーを用いて偏光板を押さえて偏光板と板ガラスとを貼り合わせた。60℃に加熱したホットプレート(AS ONE製、HHP−411)上に偏光板を貼り合わせた板ガラスをガラス面を下にして置き、紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって偏光板側から光を照射した。偏光板やガラスの温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、照射源と偏光板との間に熱線カットフィルターを装着した。光の実測照射強度は、波長405nmにおける強度が14mW/cmになるように調整した。
【0121】
液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1.5秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から50秒間経過するまで継続した。この後、ホットプレートの温度を120℃に上げて、さらに光を60秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0122】
[製造例4]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をヒドロキシエチルアクリルアミドモノマー(興人製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは98℃であった。
【0123】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を2秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から50秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0124】
また、同条件下で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を2秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を30秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。この後、ホットプレートの温度を100℃に上げて、光を照射せずに300秒間加熱のみを行うと、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0125】
また、14mW/cmであった照射強度を80mW/cmに変更したこと以外は上記と同条件として光を積層体に照射したところ、液体状態の接着剤組成物は、照射開始から1.5秒で強接着状態となった。さらに照射時間を長くしても、接着剤組成物は強接着状態のままであった。
【0126】
[製造例5]
ヒドロキシプロピルアクリルアミドモノマー(Fluka製)100部(水50%を含む)に光重合開始剤(チバジャパン製、Irgacure819)0.5部を添加して溶解することにより、接着剤組成物を調製した。溶解速度を速めるために、50℃で加熱しながら超音波をかけて溶解した。得られた接着剤組成物のTgは、74℃であった。
【0127】
上記接着剤組成物1mLを板ガラスにスポイトで垂らし、水分を蒸発させるために100℃に加熱したホットプレート(AS ONE製、HHP−411)上に板ガラスを置いた。水分の蒸発後、板ガラスの接着剤組成物の上に偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)を重ね合わせ、ハンドローラーを用いて偏光板と板ガラスとを貼り合わせた。100℃に加熱したホットプレート(AS ONE製、HHP−411)上に偏光板を貼り合わせた板ガラスをガラス面を下にして置き、紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって偏光板側から光を照射した。偏光板やガラスの温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、照射源と偏光板との間に熱線カットフィルターを装着した。光の実測照射強度は、波長405nmにおける強度が14mW/cmになるように調整した。
【0128】
液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。さらに光を20秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0129】
[製造例6]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をジメチルアクリルアミドモノマー(興人製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは119℃であった。
【0130】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から50秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0131】
[製造例7]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をジエチルアクリルアミドモノマー(興人製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは81℃であった。
【0132】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から20秒間経過するまで継続した。さらに光を30秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0133】
[製造例8]
アクリル酸モノマー(東亜合成製)100部に光重合開始剤(チバジャパン製、Irgacure819)0.5部を添加して溶解することにより、接着剤組成物を調製した。溶解速度を速めるために、50℃で加熱しながら超音波をかけて溶解した。得られた接着剤組成物のTgは、106℃であった。
【0134】
板ガラスにシランカップリング剤(信越化学製)をスピンコーターにより塗布し、100℃で1分間加熱した。この板ガラスに上記接着剤組成物1mLをスポイトで垂らし、その上から偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)を重ね合わせ、ハンドローラーを用いて偏光板を押さえて偏光板と板ガラスとを貼り合わせた。80℃に加熱したホットプレート(AS ONE製、HHP−411)上に偏光板を貼り合わせた板ガラスをガラス面を下にして置き、紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって偏光板側から光を照射した。偏光板やガラスの温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、照射源と偏光板との間に熱線カットフィルターを装着した。光の実測照射強度は、波長405nmにおける強度が14mW/cmになるように調整した。
【0135】
液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から50秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0136】
[製造例9]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)を2−ヒドロキシエチルアクリレートモノマー(日本触媒製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは−15℃であった。
【0137】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を5秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を30秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から30秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0138】
[製造例10]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をアクリロニトリルモノマー(WAKO製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは97℃であった。
【0139】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。粘着剤様状態は、粘着剤様状態の開始から9秒間経過するまで継続した。さらに光を15秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から105秒間経過するまで継続した。さらに光を120秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0140】
[製造例11]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をアクリロイルモルホリンモノマー(興人製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは145℃であった。
【0141】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を1秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を3秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から57秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0142】
[製造例12]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をN−メチルメタクリルアミドモノマー(東京化成製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。
【0143】
ホットプレートによる加熱温度を60℃から120℃に変更したこと以外は製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を30秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を90秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。さらに光を120秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0144】
[製造例13]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をグリシジルメタクリレートモノマー(キシダ製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは46℃であった。
【0145】
製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を30秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。粘着剤様状態は、粘着剤様状態の開始から90秒間経過するまで継続した。その後、ホットプレートの温度を80℃にして光をさらに30秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から90秒間経過するまで継続した。さらに光を240秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0146】
[製造例14]
ヒドロキシメチルアクリルアミドモノマー(東京化成製)をテトラヒドロフルフリルメタクリレートモノマー(東京化成製)に変更したこと以外は製造例3と同様にして接着剤組成物を調製した。得られた接着剤組成物のTgは、60℃であった。
【0147】
ホットプレートによる加熱温度を60℃から120℃に変更したこと以外は製造例3と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を30秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。粘着剤様状態は、粘着剤様状態の開始から30秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から60秒間経過するまで継続した。さらに光を240秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0148】
[製造例15]
ヒドロキシエチルアクリルアミドモノマー(興人製)をヒドロキシエチルアクリルアミドモノマー(興人製)50部とメタクリル酸メチルモノマー(WAKO製)50部との混合物に変更したこと以外は製造例4と同様にして接着剤組成物を調製した。
【0149】
製造例4と同じ条件で、液体状態の接着剤組成物を介して偏光板と板ガラスとを貼り合わせた積層体に対して光を3秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。粘着剤様状態は、粘着剤様状態の開始から27秒間経過するまで継続した。さらに光を10秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。さらに光を20秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0150】
[製造例16]
ジシクロペンテニルアクリレート(日立化成製)100部に光重合開始剤(チバジャパン製、Irgacure819)0.5部を添加して溶解することにより、接着剤組成物を調製した。溶解速度を速めるために、50℃で加熱しながら超音波をかけて溶解した。
【0151】
上記接着剤組成物1mLをシクロオレフィン系フィルム 「ゼオノア」(日本ゼオン製)にスポイトで垂らし、その上からシクロオレフィン系フィルム 「ゼオノア」(日本ゼオン製)をハンドローラーを用いて貼り合わせて積層フィルムを作製した。120℃に加熱したホットプレート(AS ONE製、HHP−411)上に積層フィルムを置き、紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって光を照射した。フィルムの温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、照射源と積層フィルムとの間に熱線カットフィルターを装着した。光の実測照射強度は、波長405nmにおける強度が14mW/cmになるように調整した。
【0152】
積層フィルムに対して光を15秒間照射すると、接着剤組成物は粘着剤様状態となった。さらに光を30秒間照射すると、接着剤組成物は軽剥離状態となった。さらに光を120秒以上照射すると、接着剤組成物は強接着状態となった。
【0153】
[実施例1]
(位相差層)
遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する位相差フィルムを以下のようにして作製した。シクロオレフィン系フィルム(日本ゼオン製、商品名「ゼオノア」)の上に光配向膜を形成し、偏光露光法を用いて液晶セルの1ライン毎にストライプの方向に対して+45°、−45°の配向規制力を与え、当該光配向膜上に所定の複屈折率と膜厚とを有する光硬化型液晶ポリマー層を形成した。次いで、紫外線を照射して光硬化型液晶ポリマーを硬化させ、その配向状態を固定することにより、遅相軸方向が異なる2つの領域をストライプパターンで有する、λ/4板に対応する位相差フィルム(パターンリターダーフィルム)を作製した。
(偏光板)
保護層(TACフィルム)/偏光子/保護層(TACフィルム)の構成を有する偏光板(日東電工製、VEGQ5724DU)の片側の保護層を除去して得られた偏光板を用いた。
(接着剤組成物)
製造例2で調製した接着剤組成物を用いた。
(液晶セル)
液晶テレビ(シャープ製、LC−32DE5)の液晶パネルから視認側の偏光板を剥離して得られた液晶セルを用いた。
【0154】
上記偏光板の偏光子側にポリビニルアルコール系接着剤を介して、上記で得られたパターンリターダーフィルムを貼り合わせた。次いで、該偏光板の保護層側に上記接着剤組成物を塗布して接着層を形成した。これにより、接着層(液体状態)/保護層/偏光子/位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。
【0155】
上記液晶セルの視認側表面と上記位相差層付偏光板の接着層表面とを貼り合わせた。得られた積層体を40℃のオーブン中に置き、偏光板側から紫外線照射機(アイグラフィックス製、UBX0801−01 出力8kW(高圧水銀ランプ))によって光を照射した。偏光板およびガラス基板の温度が必要以上に加熱されるのを防ぐため、照射源と偏光板との間に熱線カットフィルターを装着した。光の実測照射強度は、波長405nmにおける強度が14mW/cmになるように調整した。
【0156】
上記液晶セルと位相差層付偏光板との積層体に対して光を1.5秒間照射すると、接着層を形成する接着剤組成物は粘着剤様状態になった。さらに光を10秒間照射すると、接着層を形成する接着剤組成物は軽剥離状態になった。軽剥離状態は、軽剥離状態の開始から50秒間経過するまで継続した。さらに光を60秒間以上照射すると、接着層を形成する接着剤組成物は強接着状態になった。
【0157】
上記のようにして得られた液晶パネルによれば、立体画像表示のクロストークが抑制されることが確認された。
【0158】
また、上記液晶パネルの作製時において、液体状態の接着層によって貼り合わされた上記偏光板と上記液晶セルとの積層体に対して光を1.5秒間照射して接着層を形成する接着剤組成物を軽剥離状態にし、さらに光を30秒間照射して軽剥離状態にした。この状態で偏光板を液晶セルから剥離したところ、容易に剥離することができた。また、剥離時の力で液晶セルが割れたり、視認性が低下する等の問題は発生しなかった。
【0159】
[実施例2]
位相差層、偏光板、接着剤組成物、および液晶セルはそれぞれ、実施例1と同じものを用いた。
【0160】
上記偏光板の偏光子側にポリビニルアルコール系接着剤を介して、上記位相差層(パターンリターダーフィルム)を貼り合わせた。次いで、該偏光板の保護層側にバーコーターを用いて上記接着剤組成物を塗布し、厚み10μmの接着層を形成した。次いで、30℃のオーブン中で、接着層側から405nmの波長の光を照射強度30mW/cmで1秒照射すると、接着層を形成する接着剤組成物は粘着剤様状態になった。これにより、接着層(粘着剤様状態)/保護層/偏光子/位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。
【0161】
上記液晶セルの視認側表面と上記位相差層付偏光板の接着層表面とを貼り合わせた。得られた積層体を40℃のオーブン中に置き、偏光板側から405nmの波長の光を照射強度14mW/cmでさらに20秒照射(照射開始から21秒)することにより、接着層を形成する接着剤組成物は軽剥離状態になった。さらに、80℃のオーブン中で偏光板側から405nmの波長の光を照射強度14mW/cmでさらに40秒照射(照射開始から61秒)することにより、接着層を形成する接着剤組成物は強接着状態になった。
【0162】
上記で得られた液晶パネルによれば、立体画像表示のクロストークが抑制されることが確認された。また、該液晶パネルをヒートショック試験に供したところ、位相差層付偏光板にクラックが発生しなかった。該ヒートショック試験は、液晶パネルを−40℃と85℃の温度環境下にそれぞれ30分保持することを100サイクル繰り返すことにより行った。さらに、該液晶パネルでは、接着層が硬いので、粘着剤を用いて貼り合わせた場合にみられるような液晶パネルの表面硬度の低下は認められなかった。
【0163】
また、上記液晶パネルの作製時において、接着層を形成する接着剤組成物を軽剥離状態にした状態で液晶セルから位相差層付偏光板を剥離したところ、容易に剥離することができた。また、剥離時の力で液晶セルが割れたり、液晶パネルの視認性が低下する等の問題は発生しなかった。
【0164】
また、上記液晶セルと粘着剤様状態の接着層を有する上記位相差層付偏光板とを貼り合わせた後、80℃のオーブン中で偏光板側から405nmの波長の光を照射強度14mW/cmで60秒照射することにより、接着層を形成する接着剤組成物は強接着状態になった。
【0165】
[比較例1]
位相差層、偏光板、および液晶セルはそれぞれ、実施例1と同じものを用いた。
【0166】
偏光板の偏光子側にポリビニルアルコール系接着剤を介して、位相差層(パターンリターダーフィルム)を貼り合わせた。該偏光板の保護層側にアクリル系粘着剤を塗布し、厚み20μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層/保護層/偏光子/位相差層の構成を有する位相差層付偏光板を得た。該位相差層付偏光板の粘着剤層表面と液晶セルの視認側表面とを貼り合わせて液晶パネルを得た。
【0167】
上記で得られた液晶パネルによれば立体画像表示のクロストークは抑制されなかった。また、得られた液晶パネルにおいて、位相差層付偏光板を液晶セルから剥離することができたが、接着層が軽剥離状態である実施例1または2の液晶パネルの場合に比べて剥離する際に大きな力を要した。さらに、剥離時に偏光板が破断しやすかった。特に、大画面の液晶パネルから位相差層付偏光板を剥離する際は、ゆっくりと剥離しなければ液晶パネルが割れたり、偏光板が破断したり、剥離時に液晶パネルにかかる力により、パネルの視認性が低下する等の問題が発生した。
【0168】
上記液晶パネルを実施例2と同様のヒートショック試験に供したところ、偏光板にクラックが多数発生した。
【0169】
上記液晶パネルにおいては、偏光板の表面硬度が実施例1または2の液晶パネルに比べて低下した。これは、粘着剤が柔らかいために押し込みの力によって偏光板に凹みが生じたためと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明の位相差層付偏光板は、液晶表示装置好適に用いられ得る。特に、3次元液晶表示装置の視認側偏光板として好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0171】
10 偏光板
11 偏光子
21 保護層
30 位相差層
40 接着層
50 液晶セル
100 位相差層付偏光板
200 液晶パネル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子と該偏光子の片側に配置された保護層とを有する偏光板と、
該偏光板の偏光子側に配置された位相差層と、
該偏光板の保護層側に配置された接着層とを有し;
該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有し;
該接着層が、電磁波または粒子線の照射によって接着力を発現する接着剤組成物であって、
少なくとも1種のモノマーからなる接着主剤と、該接着主剤の重合反応を生じさせる少なくとも1種の重合開始剤とを含み、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、該接着力が極大値、極小値、該極大値より大きい値をとるように変化する接着剤組成物から形成される;
位相差層付偏光板。
【請求項2】
偏光子と該偏光子の片側に配置された保護層とを有する偏光板と、
該偏光板の偏光子側に配置された位相差層と、
該偏光板の保護層側に配置された接着層とを有し;
該位相差層が、それぞれが異なる方向に遅相軸を有する複数の領域を所定のパターンで有し;
該接着層が、電磁波または粒子線の照射によって接着力を発現する接着剤組成物であって、
少なくとも1種のモノマーからなる接着主剤と、該接着主剤の重合反応を生じさせる少なくとも1種の重合開始剤とを含み、所定の温度環境下において該接着剤組成物に対して照射される電磁波または粒子線の照射量の増加に伴い、該接着力が極大値を経て極小値をとるように変化し、該接着力が該極小値をとった後、該所定の温度環境下より温度が高い温度環境下にさらに保持されることにより、該接着力が該極大値より大きい値をとるように変化する接着剤組成物から形成される;
位相差層付偏光板。
【請求項3】
電磁波または粒子線の照射強度の増大および/または接着温度の上昇に伴って、前記接着剤組成物の接着力が前記極大値に達するまでに要する時間、前記極大値から前記極小値まで変化するのに要する時間、および前記極小値から前記極大値より大きい値まで変化するのに要する時間が短縮される、請求項1または2に記載の位相差層付偏光板。
【請求項4】
前記接着剤組成物が、前記所定の温度環境下において電磁波または粒子線が未照射のときには液状である、請求項1から3のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項5】
前記接着主剤に含まれる少なくとも1種のモノマーが、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、脂肪族環式炭化水素基、複素環基、アミド基、またはカルボン酸エステル基を少なくとも1つ有する光重合性ビニルモノマーである、請求項1から4のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項6】
前記少なくとも1種の重合開始剤が、光重合開始剤である、請求項1から5のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項7】
前記接着剤組成物の接着力が、前記極大値よりも大きい値に変化した後、水への浸漬によって前記極大値より小さい値まで低下する、請求項1から6のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項8】
前記位相差層の面内位相差Re(590)が、90nm〜190nmである、請求項1から7のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項9】
前記位相差層の前記所定パターンが、異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が交互に配置されたストライプ状である、請求項1から8のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項10】
前記異なる方向に遅相軸を有する2つの領域が、それぞれ、液晶セルの1ラインに対応する、請求項1から9のいずれかに記載の位相差層付偏光板。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の位相差層付偏光板を有する、液晶パネル。
【請求項12】
請求項11に記載の液晶パネルを有する、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−247620(P2012−247620A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119179(P2011−119179)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】