説明

位相調整された送信器を用いる位置特定

無線ネットワーク内の位置情報を決定するためのシステムおよび方法が提供される。一実施形態では、タイミングオフセット情報が多数の送信器と1台以上の受信器との間でやり取りされる。この情報により、ネットワーク全域のタイミングの差を補正するための正確な位置または場所の測定が可能となる。別の実施形態では、受信器側で起こり得るタイミングの差を補正する目的で、送信器からの伝送を早遅させるため送信器の位相調整が実施される。さらに別の実施形態では、タイミングオフセット通信の組み合わせおよび/または送信器の位相調整が、位置測定を容易にするため無線ネットワーク内で用いられることが可能である。SDRAM

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[35U.S.C.119における優先権の請求]
本願は、2005年9月27日に出願され、本願の出願人に譲渡され、本明細書おいて参照によって明確に引用された「タイミングオフセットを有する送信器を用いた位置特定」と題される仮特許出願第60/721,505号の優先権を主張するものである。
【0002】
I.分野
本技術は、一般に通信システムと方法に関し、特に、無線ネットワーク内のタイミングオフセットまたは送信器の位相調整技術を用いることでネットワークにしたがって位置を決定するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
II.背景
無線システムの中心を担ってきた技術の一つは、符号分割多元接続(CDMA: Code Division Multiple Access)デジタル無線技術である。CDMAに加え、エアーインターフェース規格(air interface specification)が、産業主導による無線プロバイダグループにより開発されてきたFLO(Forward Link Only:フォーワードリンクオンリー)技術を規定している。一般に、FLOは、利用可能な無線技術の最も有利な特徴を利用し、かつコーディングとシステム設計における最新の進歩を使用し、最高品位のパフォーマンスを一貫して達成してきた。目的の一つは、FLOが、世界的に採用される標準になることである。
【0004】
FLO技術は、ある事例では、移動体マルチメディア環境のために考案され、携帯電話機の使用に理想的に適した動作特性を発揮している。この技術は、最新のコーディングやインターリービング方式を使用して、リアルタイムのコンテンツストリーミングやその他のデータサービス双方おいて常に最高品質の受信を成し遂げている。FLO技術は、電力消費の点で妥協することなく、堅固な移動体パフォーマンスと高い性能を提供することが可能である。この技術は、配置の必要がある送信器の数を著しく減少させることで、マルチメディアコンテンツ配信のネットワーク費用も削減する。さらに、FLO技術ベースのマルチメディア同報送信は、無線サービス業者の携帯電話ネットワークのデータおよび音声サービスを補完し、3Gネットワーク上で使用されている同一の携帯電話機に対してコンテンツを配信する。
【0005】
FLO無線システムは、移動体ユーザに対するノンリアルタイムサービスとは別に、リアルタイムの音声および画像信号を送信するために考案されてきた。各FLO伝送は、特定の地理的地域において広範囲な送信可能範囲を確保するため、高さがあり高出力の送信器を用いて行われる。さらに、FLO信号が、特定の市場内のかなりの数の人口に確実に届くようにするため、大抵の市場においては、3〜4台の送信器を配置することが一般的である。FLO送信器の送信可能範囲により、例えば、三角位置測量技術に基づく位置測定が可能である。従来の位置特定技術は、衛星ベースのGPS信号を距離測定のために使用する。しかし、衛星ベースの信号の問題点は、例えば衛星に向かう見通し線(line of sight)が利用できない室内環境では、信号が十分に利用できないことである。逆にFLOネットワークは、多くの場合、室内も送信域になるように設計されるため、装置が室内に設置されても、各波形が位置決め情報を提供することが可能である。
【発明の開示】
【0006】
[概要]
以下では、様々な実施形態の簡単な概要を説明し、その実施形態のいくつかの態様についての基本理解を提供する。本概要は、広範囲に及ぶ概説ではなく、主要/重要な要素を特定するため、または、本明細書で開示される実施形態の範囲を詳細に述べるために意図されたものではない。本概要の唯一の目的は、後述される詳細な説明の前置きとして簡単にいくつかの概念を提示することである。
【0007】
従来の全地球測位システム(GPS: Global Positioning System)技術に代わる(または関連する)無線ネットワーク全域での位置または場所を決定するためのシステムと方法が提供される。一実施形態では、ブロードキャストネットワーク内の位置は、送信器間のタイミングの差を補正する多数の送信器を用いて測定される。多くの位置特定アルゴリズムが、距離測定に用いられる信号を送出する送信器が、例えばGPSといった共通中央クロックを用いて時間的に調整されていることを前提としている。しかし、ネットワーク全域での信号の受信および質を促進するため、中央クロックに対していくつかの送信器からの伝送を早遅することは、特定のブロードキャストシステムにおいてはいくらか好都合である。このような場合、位置特定アルゴリズムは、送信器のタイミングオフセット情報を利用し、結果的に従来の位置特定コンポーネンツ以上に正確な距離測定を行う。したがって、いくつかの実施形態では、オーバーヘッドパラメータ情報(例えばタイミングオフセット情報)が送信されることが可能であると同時に、受信器がこの付加情報を利用することで結果的に正確な距離測定が行える。
【0008】
別の実施形態では、各送信器において、信号の伝送タイミングが早遅させられることが可能で、受信器がタイミングオフセットを補正する必要性が軽減される。送信器で送信される信号のタイミングを調整することにより、送信器側で中央クロックからのタイミングの不一致が補正された状態になるので、各受信器では、タイミングオフセットの計算の負担が軽くなると同時に、正確な位置情報の測定が行われることが可能になる。理解され得るとおり、システムの中には、正確な位置測定を容易にするため、受信器に伝えられるタイミングオフセットの組み合わせおよび/または送信器でのタイミング調整(timing adjustment)を含むことが可能なものもある。
【0009】
前述の目的および関連目的を達成するため、特定の具体例が、以下の詳細説明および添付図面と関連して本明細書において詳述される。
【0010】
[詳細な記述]
無線ネットワークにおける位置特定情報を決定するためのシステムおよび方法が提供される。一実施形態では、タイミングオフセット情報が、多数の送信器と、一台以上の受信器間でやり取りされる。この情報により、正確な位置または場所の測定が可能となり、ネットワーク全体のタイミングの差を補正することになる。別の実施形態では、送信器の位相調整が行われ、送信器からの伝送を早遅し、送信器と共通クロック間の潜在的なタイミングの差を補正する。このように、受信器側で更にタイミング調整を実施することなく位置測定が実施されることが可能である。さらに別の態様では、タイミングオフセット通信の組み合わせおよび/または送信器の位相調整が、無線ネットワークにおいて位置特定計算、またはその測定を容易にするため利用されることが可能である。
【0011】
タイミングオフセットは、送信器のクロックと共通クロック源との間のタイミングの不一致と考えることができ、この不一致のために、共通クロック同期信号と比較して送信器から同期記号がずれたタイミングで送信されていることが理解されよう。たとえば、フォーワードリンクオンリー(FLO)信号の場合、送信器のスーパーフレームの境界は、一般にGPSからの1PPS信号に同期されるはずである。しかし、タイミングの不一致、または時には意図的にネットワークを最適化する目的のため、スーパーフレームの境界が、GPSからの1PPS信号に対して実際に早遅させられたりすることもある。このことは、送信器のタイミングオフセットと呼ばれる。
【0012】
送信器での位相調整に関しては、受信器で検出される伝播遅延を調整するため、送信器のタイミングオフセットに関係なく、送信器の波形が必ず修正される。この場合、たとえ送信器のクロック(ひいては伝送)が恐らく正確に共通クロック源に同期されたとしても、送信器の波形が修正された結果受信器での伝播遅延測定がスキューされる可能性がある。例えば、OFDMシグナリングを利用するFLOの場合、スーパーフレームの境界がGPSからの1PPS信号に同期されるはずである。しかし、送信器がOFDM記号バッファの循環桁送り(cyclic shift)を利用して送信位相を調整することがありえる。OFDM記号のサイクリックプレフィクス(cyclic prefix)は、周期的にシフトされたOFDM記号に基づき形成されることが可能である。こうした信号修正により、受信器で検出される遅延が、選択された送信位相と共に(またはOFDMの循環桁送り量と同等に)変化する。このことは、送信器の位相調整と呼ばれる。
【0013】
本願において使用されるように、「コンポーネント」、「ネットワーク」、「システム」やその他の用語は、コンピュータ関連機器、ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせ、ソフトウェア、実行中のソフトウェアのいずれかを示すよう意図されている。例えば、コンポーネントは、限定される訳ではないが、プロセッサで実行中のプロセスや、プロセッサ、オブジェクト、実行ファイル、実行スレッド、プログラムおよび/またはコンピュータであってもよい。例としては、通信装置上で実行されているアプリケーションとその通信装置双方がコンポーネントになり得る。一つ以上のコンポーネントが、プロセスおよび/または実行スレッド内に存在してもよく、一つのコンポーネントが、一台のコンピュータ上に配置されたり、もしくは、2台またはそれ以上のコンピュータに配置されてもよい。また、こうしたコンポーネントは、様々なデータ構造が格納されたコンピュータで読み取り可能な種々のメディアから実行することが可能である。こうしたコンポーネントは、一つあるいはそれ以上のデータパケット(例えば、ローカルシステム、分散システム、および/もしくはインターネット等の有線または無線ネットワーク内で他のコンポーネントと情報のやり取りをしている一つのコンポーネントからのデータ)を有する信号に従うようなローカルプロセスおよび/あるいはリモートプロセスで通信してもよい。
【0014】
図1は、無線ネットワークシステム位置決めシステム100を示す。システム100は、無線ネットワーク全域で一台以上の受信器120と通信する1台以上の送信器110を有する。受信器120は、携帯電話機、コンピュータ、個人用補助装置、ハンドヘルド型またはラップトップ型装置等の実質的にいかなる種類の通信機器も含むことが可能である。システム100は、受信器120の位置または場所の測定を容易にするため、一つ以上の位置特定コンポーネンツ130を用いる。一般に、送信器110と受信器120間のタイミング同期情報は、受信器での正確な位置測定を容易にするため、本明細書で説明される様々な実施形態において調整される必要があることもある。ある事例では、タイミングオフセットコンポーネンツ140は、位置測定コンポーネントまたはアルゴリズムにおいて補正されることになる無線ネットワーク内のタイミングの差もしくは調整値を示すため、送信器110と受信器120の間でやり取りされることが可能である。別の事例では、システム100内で発生する可能性のあるタイミングの不一致や差を補う効果を有する信号を早遅するため、送信器110で位相調整コンポーネント150を利用する。別の実施形態では、様々なタイミングオフセットコンポーネンツ140の組み合わせおよび/または位相調整コンポーネンツ150が、無線ネットワーク位置決めシステム100内の位置測定を容易にするため同時に利用されることが可能である。図示のとおり、一つ以上のパイロット記号154が、遅延測定のために与えられることが可能である。
【0015】
一般に、従来の位置特定技術は、距離測定のために衛星ベースのGPS信号を利用する。しかし、衛星ベースの信号に関する問題の一つは、衛星への見通し線が利用できない室内環境では信号が利用できないことである。一方、フォーワードリンクオンリー(FLO)伝送の高出力性質は、GPS信号が利用できない室内環境でFLO波形を利用できるようにする。したがって、多数の送信器から送信されるFLO信号が利用可能な場合、FLO信号を用いて行われる測定結果に基づく位置特定に代わる方法がある。後述の詳細では、FLO受信器が少なくとも3台の異なるFLO送信器(その他の構成も可能である)からの信号にアクセスすることが可能であり、その送信器が同一情報内容を送信している可能性があるかもしれないし、ないかもしれないことが推測されよう。
【0016】
FLOネットワークは、一般に、送信器が共通クロック源に同期化される単一周波数ネットワーク(SFN: Single Frequency Network)オペレーションモード用に配置される。例えばクロック源が、例えばGPSからの1PPS信号から生成されることもあり得る。FLOの波形は、直交周波数分割多重(OFDM: Orthogonal Frequency Division Multiplexing)シグナリングに基づいており、チャネルの遅延拡散(delay spread)が、例えば約135us以下であるという仮定の下に設定されることが可能である。多数の送信器110が受信器120から検出可能な場合、受信器により検出される遅延拡散は、各送信器からの受信器の相対位置に依存する。時には受信器120が送信器110の一台に近づき別の一台から離れ、その結果遅延拡散が大きくなる可能性がある。結果として起こる遅延拡散が設定仕様の135us(または別の基準値)を超える場合、システムパフォーマンスに重大な不利益を及ぼす可能性がある。しかし、中央クロックからの同期パルスに対してスーパーフレームの境界を早遅することで、ネットワーク内の様々な地点で受信器120によって検出される遅延拡散を制御することが可能である。したがって、最適化されたFLOネットワークの配置では、送信器110間に一定のタイミングオフセットが存在すると仮定することもまた現実的である可能性がある。
【0017】
FLOネットワークのSFN配置では、受信器120で検出される遅延拡散、ひいてはシステムパフォーマンスを最適化するため、中央クロックに対する一定のタイミングオフセット(ひいてはその両者)を操作するよう送信器110が調整される可能性がある。送信器側の相対タイミングオフセットは、補正されなければ位置特定のための距離測定に悪影響を与える可能性がある。しかし、移動体ベースの位置特定、およびネットワークベースの位置特定においては、距離計算の結果を修正することで送信器のタイミングオフセットを補正することが可能である。これは、FLOネットワークから移動体ベースの位置特定システム内の受信器120に送信器のタイミングオフセット情報を提供させること、送信タイミングや位相信号を調整すること、またはタイミングオフセットを信号調整値と組み合わせることを含めることが可能である。
【0018】
図2は、位置測定にタイミングオフセットを用いるシステム例200を示す。この例では、送信器A、B、およびC210は、特定時点での受信器220の受信範囲内のFLO信号を送信する3台のFLO送信器になり得る。更に、d、d、およびdを共通クロック源240に対する各送信器のタイミングオフセット230と呼ぶ。ここで、ポジティブオフセットは、中央クロック240に対する伝送を早めることを言い、一方、ネガティブオフセットは、中央クロックに対する伝送を遅らせることを言うことになる。受信器のクロックが位相および周波数において共通クロックと同期されていることが推測されよう。
【0019】
一般に利用可能なFLOエアーインターフェース規格が、各送信器210が、各々に固有の記号(位置決めパイロットチャネルとして知られている)を送出できるようにする。こうした記号は、受信器220が各送信器210からの伝播遅延を推測できるように設定されることが可能である。位置決めパイロットチャネルは、本質的に各送信器に固有のパイロットトーンのセットであり、高い処理利得を有するよう設定されているので、遅延拡散が大きくエネルギーも弱いチャネルでも受信器220によって検出されることが可能である。送信器210から受信器220まで著しい拡散がない見通し線の伝播の場合、位置決めパイロットを介して得られるチャネル推定値には単一パスが含まれる。送信器210から受信器220までの距離は、チャネル推定値のチャネルパスの距離に基づき測定される。
【0020】
システム例200では、τを送信器Aからの位置決めパイロットチャネルに基づくチャネル推定値内での単一パス(または多重通路の場合最初に到達するパス)の位置とする。同様に、τとτを送信器Bおよび送信器Cそれぞれからのチャネル推定値内で最初に到達するパスの遅延とする。3台の送信器210ならびに受信器220のクロックが、位相のみならず周波数においても同期されていた場合、送信器から受信器までの距離は、光速度(C)×チャネル推定値によって測定された伝播遅延で計算される。しかし、送信器210でタイミングオフセットが発生していると、受信器220で測定された遅延が送信器と受信器間のタイミングオフセット230により修正されるはずである。したがって、送信器Aからの受信器の距離は、次式で求められる。
【0021】
=(d+τ)×C
ここで、cは光速度である。
【0022】
同様に、
=(d+τ)×CおよびS=(d+τ)×C。
【0023】
周知の3位置(この場合、FLO送信器)からの受信器220の相対距離が測定されると、受信器の位置が、周知の三角測量法により得られる。三角測量法は、原則的に、ラジアンS、S、Sそれぞれを有する3台の送信器A、B、およびCの周囲に描かれる円が交差する1点を測定している。したがって、送信器210での相対タイミングオフセットの場合、受信器220にとっては、タイミングオフセット値230を検知することが、位置および場所を正確に決定するために便利であることは明らかである。
【0024】
図3は、タイミング情報300をやり取りする方法の例を示す。理解されるとおり、受信器にタイミングオフセット情報300を送信することが可能な技術が多数ある。受信器が、GPSクロックやその他の共通クロックといった共通中央クロックに対する各送信器のタイミングオフセットを検知するだけで十分であることが理解されよう。
【0025】
310で可能となるある伝送メカニズムでは、送信器がオーバーヘッド記号を用いてタイミングオフセットに関する情報を送信する。例えば、FLOシステムでは、特定のローカルエリア内の全送信器からのタイミング情報が、そのローカルエリアのOISフィールド(Overhead Information Symbols:オーバーヘッド・インフォメーション・シンボル)に含められることが可能である。そのOISフィールドは、特定のローカルエリアに固有であるが、ある特定のワイドエリア内における別のローカルエリア全域でも変化する。このような方法の利点は、送信器のタイミング情報がローカライズされることである。位置決めパイロットチャネルを受信できない送信器に関するタイミングオフセット情報を受信することが、受信器の利点にならない可能性があることが理解されよう。一方で、ローカルOISフィールドは、位置決めパイロットチャネルよりも受信可能範囲の境界で干渉を受けやすくなる可能性がある。結果として、受信器は、ローカルOISチャネルからタイミング情報を得ることはできないが、位置決めパイロットチャネルを首尾よく復号できる可能性がある。この方法の一変形方法は、ワイドエリアOISにタイミング情報を含めることで、更に広範囲な地理的エリア(ひいては有用な周波数帯域)における送信器のタイミング情報送信を犠牲にして受信可能範囲の境界をなくすことであろう。
【0026】
320で可能となる別のタイミング情報送信技術は、送信器のタイミング情報を位置決めパイロットチャネル(PPC)に組み込むことである。この場合、受信器は、始めに送信器から送られてくるPPCを用いて特定の送信器からのチャネルを推定してからPPCに組み込まれたタイミング情報を復号することが可能である。この場合では、PPCの検出の可能性が記号内に組み込まれた付加情報の存在で影響されることがないよう、PPCの処理利得が十分に増加させられなければならない可能性がある。
【0027】
330で3つ目に可能となるタイミング情報送信技術は、送信器のアルマナック(almanac)をノンリアルタイムMLC(MediaFLO Logic Channel:メディアFLO論理チャネル)として定期的に送信し、受信器がこの特定のMLC情報を復号するのを支援することである。340で示される別の興味深い技術は、図4に関して以下で考察されるとおり、タイミングオフセットを考慮することでPPC記号の送信波形を修正して送信器のタイミングオフセット情報を低減する。
【0028】
図4は、無線位置決めシステムにおけるタイミング情報を調整するためのシステム例400を示す。この例では、2台の送信器AおよびBが410で示されている。送信器410からの信号は、システム内で起こりえるタイミングの差を補正するため、420で早遅されることが可能である。したがって、受信器430は、上述したように集中クロックからのオフセットを測定せずに位置を決定することができる可能性がある。420で送信器のタイミングを早遅するという概念は、受信器430により検出される際、チャネル遅延拡散が効果的に調節されるようにFLOシステムに導入された。ある事例では、OFDMシステムにおいては、送信された信号のチャネルの遅延拡散が、OFDM信号により用いられたサイクリックプレフィクスに満たない場合、そのチャネルの線形畳み込み(linear convolution)が、巡回畳み込み(cyclic convolution)として扱われてもよい。
【0029】
この例では、タイミングオフセットdおよびdを有する送信器AおよびB410を考える。τ'を送信器Aと受信器430間の距離に基づく見通し線伝播コンポーネント(line of sight propagation component)により検出される実際の遅延とする。同様に、τ'を送信器Bから受信器430への見通し線コンポーネントにより検出される実際の遅延とする。(各送信器から見通し線が一つずつ出ていると仮定して)遅延拡散τ'−τ'がサイクリックプレフィクスを超えた場合、追加遅延(additional delay)dおよびdが送信器に付加されることが理解される。送信器に遅延dおよびdが追加された状態で受信器で受信される信号は、以下の式で求められる。
【0030】
式1
y(n)=h(n)*x(n−d)+h(n)*x(n−d)+w(n)
ここで、h(n)およびx(n)は、送信器Aに対するチャネルと信号を表し、*は線形畳み込み操作を表し、w(n)は、受信器に付加されたノイズである。ワイドエリアネットワークにおけるトラヒックチャネルの場合、x(n)とx(n)は一般に同一である(例えばx(n))。
【0031】
線形畳み込みの特性を利用すると、上記の式は、次式のように書くことが可能である。
【0032】
式2
y(n)=h(n−d)*x(n)+h(n−d)*x(n)+w(n)
したがって、検出されたチャネル遅延拡散は、(τ'−d)−(τ'−d)で求められ、送信器のタイミングオフセットを付加することで制御することが可能である。効率的な遅延拡散がサイクリックプレフィクスを下回った場合、式1の受信信号は、線形畳み込みの代わりに巡回畳み込みとして書き表すことが可能である。したがって
式3
【数5】

【0033】
または、同様に
式4
【数6】

【0034】
ここで、
【数7】

【0035】
は、サーキュラー畳み込み(circular convolution)を表す。サイクリックプレフィクスが十分に長い場合は、式3を得るために式1にある信号x(n)のdによる遅延操作を、式3ではdによるx(n)の周期的循環によって達成することができる。
【0036】
上記事例に基づけば、通常のトラヒックチャネルに対するパイロット位置決めチャネルのために以下が提案される。通常のトラヒックチャネルの間は、用いられるサイクリックプレフィクスは一般的に短く(FLOの場合は512チップ)、それゆえ、式3で考察された循環桁送り技術は、チャネルの効率的な遅延拡散を調整するために用いられることが可能である。したがって、各送信器からの伝送は、サイクリックプレフィクスの要件を満たすため物理的に遅延させられることになる(この例ではdおよびdによる送信器AおよびB)。一方で、位置決めパイロットチャネルに関しては、長いサイクリックプレフィクス(FLOにおいてはほぼ2500チップ、ここでチップとは、データパケットにエンコードされるビットと呼ばれる)は、遠くにある弱い送信器からの遅延の推定が可能となるよう用いられてもよい。さらに、トラヒックチャネル用に送信器によって付加された遅延dおよびdは、位置決めパイロットチャネルにおいて行われる遅延観測に影響を与え、したがって、先で考察したように、受信器でこのオーバーヘッド情報が必要になる。
【0037】
長いサイクリックプレフィクスをパイロット位置決めチャネルに利用できると仮定すると、送信器は、位置決め信号の循環桁送りによって実際の物理的遅延dおよびdの効果をなくすことが可能である。Xa,p(n)が、タイミング遅延dを有する送信器Aからの意図された位置決め信号(intended positioning signal)である場合、送信器は、Xa,p(n+d)によって与えられる周期的にシフトされたバージョンを送出することが可能である。同様に、送信器Bからの信号も周期的にシフトする。長いサイクリックプレフィクスがあることにより、式3は依然として有効であり、したがって、
式5
【数8】

【0038】
したがって、受信器に送信器の遅延情報を送出する必要性をなくす。この技術は、ネットワーク計画の一環として導入される遅延ならびに、例えばフィルタやケーブル等の別のコンポーネンツにより発生する可能性があるタイミング遅延が原因の送信器のタイミングオフセットを補正するために使用されることが可能である。
【0039】
別の実施形態に関しては、上記考察は、距離測定結果が移動体受信器で計算処理されていると仮定している可能性がある。しかし、その計算処理は、タイミング情報がオフラインで利用可能となるネットワークで実施されることが可能である。この場合、受信器が擬似範囲(pseudo range)S’a、S’b、およびS’cを測定することが可能で、ここで、例えば、S’a=τ×cで、送信器のタイミングオフセットは考慮しない。受信器は、この擬似範囲S’aをネットワークに中継することになり、完全なアルマナックがネットワークで利用可能なので、タイミングオフセットによる更なる補正がネットワークで容易に実行されることが可能である。
【0040】
上記考察は、受信器のクロックが、共通クロックと厳密に同期し、かつ、共通クロックと送信器のクロックとの間に不一致が、送信器のタイミングオフセットまたは位相調整のために存在すると仮定していた。しかし、これは特別な事例であると考えられ、受信器のクロックを共通クロックに同期させる必要がないことが理解されよう。受信器のクロックが共通クロックに同期されない場合、各送信器からの遅延測定結果は、共通バイアス項も含むことが可能であり、このバイアス項とは、共通クロックと受信器クロック間の不一致量である。受信器の空間座標に加え、共通バイアスが、ここでは計算される必要のある新たな未知の要素である。クロックバイアスと同様空間座標内の未知の要素は、追加送信器からの測定結果を用いてすべて解決されることが可能である。具体的には、空間座標ならびに受信器の共通クロックバイアス双方について解くには、例えば4台の異なる送信器(共通クロック源に対してタイミングオフセット情報が利用可能な状態で、かつ、受信器が地表に配置されていると仮定する)からの測定結果を得れば十分である。受信器側に共通クロックバイアスがなければ(すなわち、受信器のクロックが共通クロックと同期されていれば)、例えば3台の異なる送信器からの遅延測定結果を得れば十分である。
【0041】
図5は、無線位置決めシステムのネットワーク層の例500を示す。
【0042】
フォーワードリンクオンリー(FLO)エアーインターフェースプロトコルの参照モデルが図5で示されている。一般に、FLOエアーインターフェース規格は、レイヤ1(物理層)およびレイヤ2(データリンク層)を有するOSI6に該当するプロトコルとサービスを提供する。データリンク層は更に、2つのサブレイヤ、すなわちメディアアクセス(MAC: Media Access)サブレイヤとストリームサブレイヤとに分割される。上層には、制御情報のコンテンツと書式に加え、マルチメディアコンテントの圧縮、マルチメディアへのアクセス制御を含むことが可能である。
【0043】
FLOエアーインターフェース規格は、一般に、様々なアプリケーションやサービスを支援するデザインの柔軟性を可能にするため、上層を規定しない。こうした層は、コンテクストを提供するために用意される。ストリーム層には、1論理チャネルにつながる3階層上まで多層化することと、上層パケットを各論理チャネルのストリームへ結合することを含み、かつパケット化および残留エラー処理機能を提供する。メディアアクセス制御(MAC)層の特徴としては、物理層へのアクセスの制御を含み、論理チャネルと物理チャネル間のマッピングの実施、物理チャネルへの伝送のための論理チャネルを多重化、移動体装置での論理チャネルを逆多重化、および/または、クオリティオブサービス(QOS: Quality of Service)要件の実施を含む。物理層の特徴は、送信リンクのチャネル構造の提供ならびに、周波数、変調および符号化要件の定義付けを含む。
【0044】
一般に、FLO技術は、直交波周波数分割多重(OFDM)を用いるが、このOFDMは、デジタル音声放送(DAB: Digital Audio Broadcasting)7、地上波デジタルビデオ放送(DVB-T: Terrestrial Digital Video Broadcasting)8および、サービス統合地上波デジタル放送(ISDB-T: Terrestrial Integrated Services Digital Broadcasting)9にも用いられている。一般に、OFDM技術は、長セルSFNにおいてモビリティ要件を効率的に満たしながら高いスペクトル効率を達成することが可能である。また、OFDMは、直交性を促進しインターキャリア干渉を軽減するため、適切な長さのサイクリックプレフィクス、つまり、記号の最初に付加されるガードインターバル(このガードインターバルは、データ記号の最後の部分のコピーである)を有する多数の送信器からの大幅な遅延を扱うことが可能である。このインターバルの長さが最大チャネル遅延より長ければ、前の記号の反射が除去され直交性が維持される。
【0045】
次に図6では、FLO物理層600が示されている。FLO物理層は、4Kモードを採用(4096副搬送波の送信サイズを提供)しており、適正長SFNセルにおいて有用で十分な長さのガードインターバルを保持しながら8Kモードに優るモバイル性能を提供する。高速のチャネル取得が、最適化されたパイロットとインタリーバ構造デザインを通して達成されることが可能である。FLOエアーインターフェースに組み込まれたインターリービングスキームが、時間ダイバーシティを促進する。パイロット構造とインタリーバデザインが、長い取得時間でユーザを悩ますことなくチャネル利用を最適化する。一般に、FLO送信済み信号は、600で示したスーパーフレームで構成されている。各スーパーフレームは4データフレームから構成され、TDMパイロット(time division multiplexed:時分割多重)、オーバーヘッドインフォメーション記号(OIS)、およびワイドエリアデータとローカルエリアデータを有するフレームを含む。TDMパイロットは、OISの高速取得を可能にするため提供される。OISは、スーパーフレーム内の各メディアサービス用のデータの位置を記述する。
【0046】
一般に、各スーパーフレームは、割り当てられた周波数帯域のMHzに対して200個のOFDM記号から成り(6MHzに対して1200記号)、各記号は、アクティブ副搬送波のインターレースを7つ含む。各インターレースは、周波数内に画一的に分布され、その結果、利用可能な帯域内で十分な周波数ダイバーシティを得る。こうしたインターレースは、使用される実際のインターレースの期間や数の点で変化する論理チャネルに割り当てられる。これにより、いかなるデータ送信装置によっても得られる時間ダイバーシティの柔軟性が与えられる。チャネルのデータレートが低くなれなるほど割り当てられるインターレースの数を少なくすることができ時間ダイバーシティが改善される一方、チャネルのデータレートが高くなればなるほどより多くのインターレースを利用することになり無線通信のオン期間を最小限にし、かつ電力消費も低減する。
【0047】
低データレートチャネルおよび高データレートチャネル双方の取得時間は、一般に同じである。したがって、周波数および時間ダイバーシティは、取得時間を考慮しなくても維持されることが可能である。大抵の場合、FLO論理チャネルは、可変レートコーデック(コンプレッサとデコンプレッサが一つになっている)を用いて可能となる統計多重利得を得るため、リアルタイム(ライブストリーミング)コンテントを可変レートで伝送するのに用いられる。各論理チャネルは、各アプリケーションの様々な信頼性やサービスの質の要件をサポートするため、異なるコーディングレートと変調手順を有することが可能である。FLO多重化スキームは、消費電力量を最小限に抑えることを目的とし、装置の受信器が一つの論理チャネルのコンテンツトを復調することを可能にする。移動体装置は、多数の論理チャネルを同時に復調することが可能で、ビデオや関連音声が別々のチャネルで送信されることが可能になる。
【0048】
誤り訂正(error correction)やコーディング技術も利用されることが可能である。一般に、FLOには、ターボ内部符号13とリードソロモン(RS: Reed Solomon)14外部符号が組み込まれている。通常、ターボ符号パケットは、巡回冗長検査(CRC: Cyclic Redundancy Check)を含んでいる。RS符号は、正常に受信されたデータに関しては計算が行われる必要がなく、そのため、良好な信号状態下では、更に消費電力を抑える結果となる。別の態様では、FLOエアーインターフェースが5、6、7、8MHzの周波数帯域をサポートするように設計されている。更に望ましいサービスの提供方法は、単一周波数チャネルを用いることで達成され得る。
【0049】
図7は、無線システムの位置特定プロセス700を示す。説明を簡素化する目的で、手順が一連の、または多数の動作として示され説明されているが、いくつかの動作が異なる順番および/または本明細書に示され説明されている別の動作と同時に起こる可能性があるため、ここで説明されるプロセスは、動作の順序により限定されるものではないことが理解されよう。例えば、当業者なら、これに代えて、手順が、状態図などで一連の相互に関連する状態やイベントとして表されることが可能であることを理解されよう。さらに、示された動作全てを、本明細書で開示される本手順にしたがって実施する必要があるわけではない場合もある。
【0050】
710に進むと、様々なタイミング補正値が決定される。これには、送信器、受信器、および/または集中クロック源の間のタイミングの差を決定するため計算を行うことを含めることが可能である。この差は、クロックとの差を補正するため受信器で利用される可能性のあるタイミングオフセット値を決定するために用いられてもよく、また、この計算結果は、タイミングの差を補正するため送信器の伝送をどのくらい早遅するかを判断するために用いられてもよい。テスト装置が、起こりうるシステムの変化を監視するために利用されてもよく、そのため、オフセット値の測定や送信器の信号調整を促進するため、フィードバックがそうした装置から受信される。720では、位置または場所の計算結果を、対象となり得る受信器がどのように調整すべきかを示すため、1つ以上のタイムオフセット値が、データパケットの一部として送信される。別法としては、集中クロックを参照して無線ネットワーク内でのタイミングの差を補正するため730で信号が早遅されることが可能である。理解され得るとおり、720および730双方の動作は、同時に適用されることも可能である。たとえば、環境状態や電力状態が変化すれば、720で一定のタイムオフセット値を送信し、730で信号の早遅調整を利用するのも都合が良い。こうした変化は監視されることが可能で、システムの伝送やタイミングを自動的に調整するため、閉ループメカニズムが利用される事も可能である。別の態様では、送信タイミングの早遅が、検出される可能性のある変化を補正するため720で同時に計算、送信された定数やタイムオフセット値として適用されても良い。
【0051】
740では、補正もしくは調整された信号および/またはタイムオフセット値が受信される。上記で言及したように、タイムオフセット値が受信されたり、クロックに対して補正された信号が受信されたり、または、タイムオフセット値の組み合わせと調整された信号が受信されることもある。750では、タイムオフセット値および/または位相調整された信号が、1台または多数台の受信器で位置を決定するために利用される。そうした情報が、クロックと基準源との間で発生する可能性のある差を補う位置特定情報を自動的に計算するために利用されることが可能である。例えば、タイムオフセット値や位相タイムオフセットが、受信器の位置を決定するために室内で受信されることも可能である。
【0052】
図8は、本明細書で説明した一つ以上の態様にしたがって無線通信環境で使用されるユーザデバイス800を示す。ユーザデバイス800は、例えば、受信アンテナ(図示せず)から信号を受信し、受信器に関する通常の動作(例えば、フィルタかけ、増幅、ダウンコンバートなど)を受信した信号に対して行い、サンプルを得るために調整済みの信号をデジタル化する受信器802を含む。受信器802は、最大尤度(ML: Maximum likelihood)−MMSE受信器やその他の非線形受信器であることもある。復調器804は、受信したパイロット記号を復調し、チャネル推定のためプロセッサ806に提供することが可能である。FLOチャネルコンポーネント810は、先に詳述したように、FLO信号を処理するため備えられる。これには、デジタルストリーム処理および/または他のプロセス間での位置特定計算を含むことが可能である。プロセッサ806は、受信器802により受信された情報の分析および/または送信器816による伝送のための情報生成専用のプロセッサ、ユーザデバイス800の一つ以上のコンポーネンツを制御するプロセッサ、および/もしくは、受信器802により受信された情報の分析、送信器816により伝送される情報の生成、ユーザデバイス800の一つ以上のコンポーネンツの制御、その全てを行うプロセッサであってもよい。
【0053】
ユーザデバイス800は、さらに、プロセッサ806に操作可能に接続され、ユーザデバイス800の計算済みランクや、ランク計算プロトコル、ルックアップ関連情報を含むルックアップテーブル(単数または複数)、本明細書で詳述するように無線通信ネットワーク内の非線形受信器におけるランク計算のためのリストスフィアデコーディング(list-sphere decoding)をサポートするためのその他の適切な情報に関連する情報を記憶するメモリ808を含むことが可能である。メモリ808は、さらに、ランク計算に関連したプロトコル、マトリックス生成などを記憶することが可能であり、したがってユーザデバイス800は、本明細書で詳述するように非線形受信器においてランク決定を実現するために記憶されたプロトコルおよび/またはアルゴリズムを利用することが可能である。
【0054】
本明細書で詳述されるデータ記憶(例えば、メモリ)コンポーネンツは、揮発性メモリまたは不揮発性メモリのいずれかであってもよく、あるいは、揮発性メモリおよび不揮発性メモリの両方を含んでいてもよいことが理解されよう。制限の意味ではなく例として、不揮発性メモリは、読み取り専用メモリ(ROM: read only memory)、プログラム可能ROM(PROM: programmable ROM)、電気的にプログラム可能なROM(EPROM: electrically programmable ROM)、電気的に消去可能なROM(EEPROM: electrically erasable ROM)または、フラッシュメモリーを含んでもよい。揮発性メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM: random access memory)を含んでもよく、このRAMは、外部キャッシュメモリの役割をする。制限の意味ではなく例として、RAMは、同期RAM(SRAM: synchronous RAM)、ダイナミックRAM(DRAM: dynamic RAM)、同期ダイナミックRAM(SDRAM: synchronous DRAM)、ダブルデータレートSDRAM(DDR SDRAM: double data rate SDRAM)、エンハンスドSDRAM(ESDRAM: enhanced SDRAM)、同期リンクDRAM(SLDRAM: Synchlink DRAM)、およびダイレクトラムバスRAM(DRRAM: direct Rambus RAM)など様々な形で利用可能である。本システムおよび方法のメモリ808は、制限されることがなければ、こうしたメモリやその他のいかなる適切な種類のメモリをも含むよう意図されている。ユーザデバイス800は、更に、FLOデータを処理するためバックグラウンドモニタ814、記号変調器814、および復調された信号を送信する送信器816を含む。
【0055】
図9は、多数の受信アンテナ906を介して1台以上のユーザデバイス904から信号(単数または複数)を受信する受信器910を有する基地局902、および送信アンテナ908を介して1台以上のユーザデバイス904へ送信する送信器924を含むシステム例900を示す。受信器910は、受信アンテナ906から情報を受信することが可能で、かつ、受信された情報を復調する復調器912に動作可能に接続されている。復調された記号は、図8に関して上記で詳述されたプロセッサと同様のプロセッサ914により分析され、ユーザランク関連情報、ユーザランクに関連するルックアップテーブル、ならびに/または、本明細書で説明される様々な動作および機能の実行に関係するあらゆる適切な情報を格納するメモリ916に接続されている。プロセッサ914はさらに、1台以上のユーザデバイス904各々に関連するFLO情報の処理を促進するFLOチャネル918コンポーネントに接続されている。
【0056】
変調器922は、送信アンテナ908を介して送信器924によってユーザデバイス904に伝送される信号を多重化することが可能である。FLOチャネルコンポーネント918は、ユーザデバイス904との通信のため、特定の伝送ストリーム用にアップデートされたデータストリームに関連する信号に情報を付加することが可能であり、その情報は、新たな最適通信路が特定、認識されたという指示を与えるため、ユーザデバイス904に送信されることが可能である。このように、基地局902は、FLO情報を提供し、ML-MIMO受信器などの非線形受信器と連動して復号プロトコルを利用するユーザデバイス904とお互いに通信することが可能である。
【0057】
図10は、無線通信システム例1000を示す。無線通信システム1000では、簡潔化するため1基地局と1ターミナルが描かれている。しかしこのシステムは、2つ以上の基地局および/または2つ以上のターミナルを含むことが可能で、ここで基地局および/またはターミナルは、後述される基地局やターミナルの例と実質的に同一であっても、異なってもよいことが理解されよう。
【0058】
ここで図10を参照すると、ダウンリンク上のアクセスポイント1005で、送信(TX)データプロセッサ1010がトラヒックデータの受信、フォーマット、コード化、インターリーブ、変調(または記号マッピング)を行い、変調記号(「データ記号」)を提供する。記号変調器1015は、データ記号とパイロット記号を受信、処理し、記号のストリームを提供する。記号変調器1020は、データ記号とパイロット記号を多重化し、送信器ユニット(TMTR: transmitter)1020に提供する。各送信記号は、データ記号、パイロット記号、または信号値0であってもよい。パイロット記号は、各記号期間に連続で送信されることもある。パイロット記号は、周波数分割多重(FDM: frequently division multiplexed)、直交周波数分割多重(OFDM)、時分割多重(TDM)、周波数分割多重(FDM)、または、符号分割多重(CDM: code division multiplexed)であってもよい。
【0059】
TMTR1020は、記号のストリームを受信し、一つ以上のアナログ信号に変換し、更に無線チャネルを介した伝送に適したダウンリンク信号を生成するために、そのアナログ信号を調整(例えば、増幅、フィルタがけ、周波数の上昇変換)する。その後、そのダウンリンク信号が、アンテナ1025を介してターミナルに送信される。ターミナル1030では、アンテナ1035が、そのダウンリンク信号を受信し、受信信号を受信器ユニット(RCVR: receiver)1040に提供する。受信器ユニット1040は、その受信信号を調整(例えばフィルタがけ、増幅、周波数の低下変換)し、サンプルを得るためその調整済み信号をデジタル化する。記号復調器1045は、受信されたパイロット記号を復調し、チャネル推定のためプロセッサ1050に提供する。記号復調器1045はさらに、プロセッサ1050からダウンリンク用の周波数応答推定値を受信し、データ記号推定値(送信されたデータの推定値)を得るため、受信したデータ記号に対してデータ復調を行い、RXデータプロセッサ1055にデータ記号推定値を提供する。このRXデータプロセッサ1055は、送信されたトラヒックデータをリカバーするため、データ記号推定値を復調(すなわち記号デマップ)、デインターリーブ、および復号する。記号復調器1045とRXデータプロセッサ1055による処理は、アクセスポイント1005における記号復調器1015とTXデータプロセッサ1010各々による処理を補完する。
【0060】
アップリンク上では、TXデータプロセッサ1060が、トラヒックデータを処理し、データ記号を提供する。記号変調器1065が、パイロット記号を有するデータ記号を受信、多重化し、変調を行い記号のストリームを提供する。送信器ユニット1070はその後、アップリンク信号を生成するため記号のストリームを受信、処理し、生成されたアップリング信号は、アンテナ1035によってアクセスポイント1005に送信される。
【0061】
アクセスポイント1005では、ターミナル1030からのアップリンク信号がアンテナ1025によって受信され、サンプルを得るため受信器ユニット1075により処理される。記号復調器1080は、その後サンプルを処理し、受信されたパイロット記号とデータ記号推定値をアップリンクに提供する。RXデータプロセッサ1085は、データ記号推定値を処理し、ターミナル1030により送信されるトラヒックデータをリカバーする。プロセッサ1090は、アップリンク上に送信している各アクティブターミナルのためにチャネル推定を行う。多数のターミナルは、各々割り当てられたパイロットサブバンドセットに基づきアップリンク上に同時にパイロットを送信してもよく、そこでパイロットサブバンドセットがインターレースされてもよい。
【0062】
プロセッサ1090と1050は、アクセスポイント1005とターミナル1030それぞれで動作(例えば、制御、調整、管理など)を指示する。プロセッサ1090と1050はそれぞれ、プログラムコードとデータを格納するメモリユニット(図示せず)に接続されることが可能である。プロセッサ1090と1050はまた、アップリンク、ダウンリンクそれぞれのための周波数とインパルス応答推定値を導き出す計算を行うことも可能である。
【0063】
多元接続システム(例えば、EDMA、OFDMA、CDMA、TDMAなど)に関しては、多数のターミナルがアップリンク上に同時に送信することが可能である。こうしたシステムに関しては、パイロットサブバンドが、異なるターミナル間で共有されることもある。各ターミナル用のパイロットサブバンドが動作帯域(おそらく帯域境界を除く)全体に及んでいる場合には、チャネル推定技術が用いられることもある。このようなパイロットサブバンド構造は、各ターミナルの周波数ダイバーシティを得るには望ましいであろう。本明細書で詳述される技術は、様々な手段によって実行されることが可能である。例えば、こうした技術は、ハードウェア、ソフトウェア、またはその組み合わせにおいて実行されることが可能である。ハードウェアでの実行に関しては、チャネル推定に用いられる処理ユニットが、一つ以上の特定用途向け集積回路(ASICs: application specific integrated circuits)、デジタル信号プロセッサ(DSPs: digital signal processors)、デジタル信号処理装置(DSPDs: digital signal processing devices)、プログラマブルロジックデバイス(PLDs: programmable logic devices)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs: field programmable gate arrays)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、その他本明細書に記載の機能を実行するために設計された電子機器ユニット、またはこれらの組み合わせ内で実行されることが可能である。ソフトウェアに関しては、本明細書に記載の機能を実行するモジュール(例えば、手順、機能など)を介して実行が可能である。ソフトウェアコードはメモリユニット内に格納され、プロセッサ1090および1050によって実行されることが可能である。
【0064】
ソフトウェアでの実行に関しては、本明細書に記載の技術は、本明細書に記載の機能を実行するモジュール(例えば、手順、機能など)を用いて実行されてもよい。ソフトウェアコードは、メモリユニット内に格納され、プロセッサによって実行されてもよい。メモリユニットは、プロセッサ内またはプロセッサ外部で実行されてもよく、その場合には、メモリユニットは、当技術分野で周知の様々な手段を介してプロセッサに通信可能に接続されることが可能である。
【0065】
上記で詳述された内容は、代表的実施形態を含む。もちろん全ての考え得るコンポーネンツの組み合わせまたは方法を、実施例を説明する目的で説明することは不可能であるが、当業者であれば、更に多くの組み合わせおよび置き換えが可能であることが理解できる。したがって、こうした実施形態は、添付の請求項の精神および範囲内の変更形態、改変形態、および変形態様全てが包含されるよう意図されている。さらに、詳細な説明または請求項のどちらかで「含む」という用語が使用される限りにおいて、請求項内で暫定的な用語として使用される場合の「含む」と解釈されるので、この用語は、「含む」と同様の処遇で包括されるよう意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の無線ネットワーク位置決めシステムを示すブロック略図。
【図2】本発明の位置測定のためタイミングオフセット情報を利用するシステムの例を示す図。
【図3】本発明のタイミングオフセット情報を送出するための技術例を示す図。
【図4】本発明の無線位置決めシステム内のタイミング情報を補正するシステムの例を示す図。
【図5】本発明の無線位置決めシステムのネットワーク層の例を示す図。
【図6】本発明の無線位置決めシステムのデータ構造と信号の例を示す図。
【図7】本発明の無線位置決めシステムのタイミングプロセスの例を示す図。
【図8】本発明の無線システムのユーザデバイスの例を示す図。
【図9】本発明の無線システムの基地局の例を示す図。
【図10】本発明の無線システムの送受信器の例を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線ネットワーク内の位置情報を調整する方法であって、
共通のクロックと少なくとも1つの他のクロックとの間の時間差情報を決定することと、
前記時間差情報を考慮して少なくとも1つの送信器のクロックの位相を調整することと、
送信器のクロックの調整された位相に部分的に基づき、少なくとも1つの受信器に関する位置を決定すること、
を含む方法。
【請求項2】
無線ネットワーク内のタイミングの差を評価するために進んだまたは遅れた少なくとも2つの送信器から信号を生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
受信器によって感知されるような効果的なチャネル遅延拡散を規定するために、フォーワードリンクオンリーネットワークにおいて進んでいるまたは遅れている送信器タイミングをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
チャネルの遅延拡散が直交周波数分割多重(OFDM)信号により利用されるサイクリックプレフィクスより小さい場合、巡回畳み込みとして処理される送信された信号を用いてチャネルの線形畳み込みを行うことをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
およびdとして表される少なくとも2つのタイミングオフセットを生成することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1送信器Aと前記受信器間の距離に基づき見通し線伝播コンポーネントにより検出される実際の遅延である第1パラメータτ’aを決定することと、第2送信器Bから前記受信器への見通し線コンポーネントにより検出される実際の遅延である第2パラメータτ’bを決定することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
遅延拡散τ’b−τ’aがサイクリックプレフィクスを上回った場合に、前記第1および第2送信器での追加遅延dおよびdを処理することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
以下の式を処理することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
y(n)=h(n)*x(n−d)+h(n)*x(n−d)+w(n)
ここで、h(n)およびx(n)は、前記第1送信器Aに関するチャネルおよび信号であり、*は線形畳み込み操作を表し、w(n)は前記受信器で付加されるノイズである。
【請求項9】
以下の式を処理することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
y(n)=h(n−d)*x(n)+h(n−d)*x(n)+w(n)
ここで、検出されるチャネル遅延拡散は、(τ’−d)−(τ’−d)によって求められ、前記送信器でタイミングオフセットを導入することで制御される。
【請求項10】
以下の式のように効果的な遅延拡散がサイクリックプレフィクスを下回った場合に巡回畳み込みを決定することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【数1】

または、
【数2】

ここで、
【数3】

はサーキュラー畳み込みを表す。
【請求項11】
サイクリックプレフィクス要件を満たすため送信器からの伝送を遅延させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
遠隔にある弱い送信器からの遅延推測を可能にするため長いサイクリックプレフィクスを用いることをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
位置決め信号の循環桁送りにより物理的遅延の効果を取り消すことをさらに含む、請求項12に記載の方法。ここで、xa,p(n)は、タイミング遅延dを有する前記送信器Aからの意図された位置決め信号であり、送信器は、xa,p(n+d)によって求められる周期的にシフトされたバージョンを送信する。
【請求項14】
受信器への送信器遅延情報の送信を軽減するため以下の式を処理することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【数4】

【請求項15】
オフラインネットワーク源から送信器のタイミング調整を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記送信器タイミングに関する擬似範囲を測定することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記擬似範囲をネットワークアルマナックに伝達することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
無線ネットワーク内の位置情報を調整するシステムであって、
無線ネットワーク内の少なくとも2つの送信器と少なくとも1つの受信器間のタイミングの差を決定する手段と、
前記タイミングの差を考慮して 、信号位相または信号周波数に従い前記送信器を調整する手段と、
を含む、システム。
【請求項19】
調整された信号位相または信号周波数を考慮して前記受信器において位置を決定する手段をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
機械が実行可能な指示を格納している機械可読媒体であって、
送信器クロックのサブセットと共通クロック間のタイミングの差を決定することと、
前記決定されたタイミングの差を考慮し、少なくとも1つの送信器の位相または周波数を調整すること、
を含む、機械可読媒体。
【請求項21】
前記送信器の前記調整された位相または周波数に基づき少なくとも1つの受信器の位置を決定することをさらに含む、請求項20に記載の機械可読媒体。
【請求項22】
前記位置を決定するため前記送信器クロックのサブセットと共に三角測量技術を利用することをさらに含む、請求項20に記載の機械可読媒体。
【請求項23】
少なくとも1つのフォーワードリンクオンリーのパラメータを決定することをさらに含む、請求項20に記載の機械可読媒体。
【請求項24】
物理層、ストリーム層、メディアアクセス層、上層のうち少なくとも1つを有する層コンポーネントをさらに含む、請求項20に記載の機械可読媒体。
【請求項25】
前記物理層がフレームフィールド、パイロットフィールド、オーバーヘッド情報フィールド、ワイドエリアフィールド、ローカルエリアフィールドのうち少なくとも1つを有する層コンポーネントをさらに含む、請求項24に記載の機械可読媒体。
【請求項26】
誤り訂正フィールドをさらに含む、請求項25に記載の機械可読媒体。
【請求項27】
無線ネットワーク全域の受信器と送信器間の調整された時間基準を決定するコンポーネントを含むメモリと、
少なくとも1つの無線機器の位置を決定するために信号位相または周波数を調整するプロセッサと、
を含む無線通信機器。
【請求項28】
前記無線機器の位置を決定するためのコンポーネントをさらに含む、請求項27に記載の機器。
【請求項29】
フォーワードリンクオンリーのデータストリームを復号するためのコンポーネントを1つ以上さらに含む、請求項27に記載の機器。
【請求項30】
無線ネットワーク内の基地局のリソースを操作するための機器であって、
送信器のサブセットと少なくとも1つの受信器のタイミングの差を決定する手段と、
前記送信器のサブセットの信号を介して前記タイミングの差を調整する手段と、
前記信号から前記受信器の位置を決定する手段と、
を含む、機器。
【請求項31】
無線ネットワーク内のタイミングの差を評価するために進まされまたは遅らされた少なくとも2つの送信器のサブセットから前記信号を生成する手段をさらに含む、請求項30に記載の機器。
【請求項32】
送信された信号を用いてチャネルの線形畳み込みを計算する手段をさらに含む、請求項31に記載の機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−510447(P2009−510447A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533620(P2008−533620)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/037946
【国際公開番号】WO2007/038699
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(595020643)クゥアルコム・インコーポレイテッド (7,166)
【氏名又は名称原語表記】QUALCOMM INCORPORATED
【Fターム(参考)】