説明

位置センサ、位置制御システム、及び内視鏡装置

【課題】変形し難く、取り扱いが容易な微小静電容量型位置センサ、該位置センサを使用したアクチュエータ制御システム、及び内視鏡を提供する。
【解決手段】本発明の静電容量型位置センサは、筒状の第1電極と、該第1電極と同軸に固定された筒状又は柱状の第2電極とを備えている。第2電極の少なくとも一部は第1電極と接触せずに第1電極の筒内に挿抜可能である。また、測定点の位置に応じた長さだけ第2電極が第1電極の筒内に差し込まれて、測定点の位置に応じた静電容量を有するコンデンサを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量に基づいて位置を検出する位置センサ、該位置センサを使用するアクチュエータ制御システム、及び該制御システムを有する内視鏡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共焦点光学系により生体組織の断層像を高倍率かつ高解像度で観察可能な、いわゆる共焦点内視鏡装置が知られている。共焦点内視鏡は、対物レンズによりレーザ光を観察部位の一点(外部集光点)に集光させ、走査手段により外部集光点を走査しながら観察部位からの戻り光を検出して走査像を形成する。照明光にレーザ光を使用するため、外部集光点におけるビームウェスト径が極めて細く、そのためμm単位の高い空間分解能の走査像を生成することができる。また、共焦点光学系は、外部集光点と共役な位置にピンホールを設けることにより、ピンホールを通る光のみが検出されるように構成されている。このため、外部集光点以外からの反射光や散乱光は検出されず、極めて空間分解能の高い観察像が得られる。なお、多くの共焦点内視鏡においては、共焦点光学系から検出器までの戻り光の伝送にシングルモード光ファイバ(SMF)が使用され、共焦点光学系の空間光がSMFに結合するコア端面がピンホールとして機能する。
【0003】
生体組織に照射されるレーザ光の一部は、生体組織による吸収や散乱を受けて減衰しながら一定の深さまで生体組織を透過する。すなわち、表面のみならず、表面から一定の深さにある生体組織も観察することができる。従って、外部集光点を生体組織の深さ方向にも走査することで、共焦点内視鏡により3次元断層像を取得することができる。共焦点内視鏡により3次元断層像を取得するためには、共焦点光学系を深さ方向にμm単位で精確に移動させる機構が必要となる。このような精確な位置決め制御を実現するために、一般に位置センサを使用したフィードバック制御が行われる。特許文献1では、フィードバックセンサとして静電容量型の位置センサを使用する構成が提案されている。
【0004】
図4は、特許文献1において提案されている二重コイルを使用した静電容量型位置センサ580aの一例を示す概略図である。図4(a)は可動部550を最も固定部に接近させた状態を示し、図4(b)は可動部550を固定部から最も離した状態を示す。位置センサ580aは、図4中右側の固定部590に対する左側の可動部550の相対的な位置を決定するものである。位置センサ580aは、同じサイズの2つコイル585a、585bを同軸に重ね合わせた二重コイル585を有している。二重コイル585は、伸縮軸が可動部550の移動方向と一致するように配置され、一端が可動部550に、他端が固定部590に固定されている。また、固定部590には二重コイル585と並んで長さLのストッパ584が設けられている。ストッパ584により可動部550と固定部590との間隔LがL以上に規制される。二重コイルを構成する各コイル585a、585bはエナメル線等の絶縁被覆された導体から形成されており、コンデンサとして機能する。可動部550が固定部590に近接した図4(a)の状態と可動部550が固定部590から離れた図4(b)の状態とを比較すると、近接した状態の方がコイル585aと585bとの間隔が狭くなるため、二重コイル585の静電容量は大きくなる。二重コイル585の静電容量は可動部550と固定部590との間隔に対して一意に決まるため、二重コイル585の静電容量から固定部590に対する可動部550の相対的な位置を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−321792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の静電容量型位置センサにおいて使用される二重コイルは、極細線から形成された極めて形状が不安定な部材であるため、加工性、取扱性、静電容量の安定性等に大きな問題があった。例えば、二重コイルの静電容量は、形状に依存するため、搬送時の衝撃や、組み立て時の取り扱いによって生じる形状変化に起因する大きな誤差(静電容量の検定値との差異)を含む可能性がある。また、使用中にコイルを伸展させる負荷が加わることにより、コイルに塑性変形が生じて収縮しなくなることがある。そのため、収縮性を維持するために、コイルに収縮性のあるコーティングを塗布する必要があり、コイルの加工費を押し上げていた。また、コイルの加工や光学機器への組み込みが難しいため、コイルの加工精度や取り付け精度が低く、位置センサの性能に大きな個体差が生じていた。更に、工数が多い、歩留が低い、精密な専用治具が必要になる等の理由により、位置センサの製造に要するコストは非常に高いものとなっていた。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、変形し難く、取り扱いが容易な微小静電容量型位置センサ、該位置センサを使用したアクチュエータ制御システム、及び内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明により、基準点に対する測定点の所定方向における相対位置を検出する静電容量型の位置センサが提供される。本発明の位置センサは、基準点及び測定点の一方に対して所定方向に軸を向けて固定された筒状の第1電極と、基準点及び測定点の他方に対して第1電極と同軸に固定された筒状又は柱状の第2電極とを備えている。第2電極の少なくとも一部は第1電極と接触せずに第1電極の筒内に挿抜可能であり、相対位置に応じた長さだけ第2電極が第1電極の筒内に挿し込まれて相対位置に応じた静電容量を有するコンデンサが形成される。
【0009】
上記構成の位置センサは、変形しやすい極細線から形成された二重コイルを電極に使用する従来の静電容量型位置センサと比べて、断面積が大きく剛性が高い筒状の第1電極及び筒状又は柱状の第2電極を素子部に使用しているため、素子部が格段に変形し難い。そのため、電極の取り扱い(例えば、位置センサへの電極の組み込み作業等)により電極が変形することがほとんどなく、位置センサの特性の個体差が少なく、不良率も低い。また、位置センサ使用時に電極を弾性変形させる必要がないため、電極の塑性変形も生じ難い。そのため、位置センサの使用中に電極の静電容量特性が変動することにより、位置センサの測定確度が低下するという問題も生じ難い。電極の加工性、取扱性、組込作業性の向上により、従来品よりも加工効率が大幅に改善するため、従来品より低コストで生産することが可能になる。
【0010】
上記構成において、第1電極の内周又は第2電極の外周には誘電体層が形成されていることが好ましい。第1電極と第2電極との間に誘電体層を設けることにより、第1電極と第2電極とが接触せず、動作が安定した位置センサが実現される。誘電体層は第2電極の移動をガイドするため、第1電極が取り付けられる要素に対して第2電極が取り付けられる要素の移動方向を規制することが可能になる。そのため、例えば本発明の位置センサをアクチュエータに取り付けることにより、アクチュエータの可動部の遊びを低減し、より精確な駆動が実現される。
【0011】
第1電極を円筒状とし、第2電極を円筒状又は円柱状としてもよい。このような形状にすると、第1電極及び第2電極に角部がなくなるため、第1電極内での第2電極のスムーズな摺動が確保される。また、円筒や円柱形状の部材は加工や取付作業が比較的に容易であり、加工費の低減にも有効である。
【0012】
位置センサはコンデンサの静電容量に応じた電圧信号を出力する静電容量電圧変換回路を更に備えていてもよい。また、第1電極及び第2電極と平行に配置され、測定点に対する測定点の移動範囲を規制するストッパを更に備えていてもよい。
【0013】
また、本発明により、上記構成の位置センサと、所定方向に駆動するアクチュエータと、 位置センサの出力に基づいてアクチュエータの駆動をフィードバック制御する制御部とを有する位置制御システムが提供される。
【0014】
また、本発明によりスコープの先端に可動プローブが備えられた内視鏡装置が提供される。この内視鏡装置は上記の位置制御システムを備えており、位置制御システムにより可動プローブの駆動が制御される。この可動プローブは、走査型医療用プローブ、OCTプローブ、又は共焦点プローブであってもよい。
【0015】
更に本発明により、上記の位置制御システムを備えた共焦点顕微鏡又は走査型顕微鏡が提供される。また、上記の位置制御システムを備えたマイクロマシンが提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、変形し難く、取り扱いが容易な微小静電容量型位置センサ、該位置センサを使用したアクチュエータ制御システム、及び内視鏡が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る位置制御システムが実装された共焦点内視鏡の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る位置制御システムが実装された共焦点内視鏡の挿入部先端の内部構造を示す概略拡大断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る位置センサの構造を簡略化して示す断面図である。
【図4】二重コイルを使用した従来の静電容量型位置センサの構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る位置センサ及び位置制御システムが実装された共焦点内視鏡システム1の外観及び内部構成の一部を示す概略図である。共焦点内視鏡システム1は、スコープ100と、スコープ100が接続された第1プロセッサ200及び第2プロセッサ300と、第1プロセッサ200及び第2プロセッサ300にそれぞれ接続されて各プロセッサから出力されるビデオ信号に基づいて画面表示する第1モニタ200M及び第2モニタ300Mを有している。
【0019】
スコープ100は、可撓性のあるケーブル状の挿入部120を被検者の体腔内に挿入して、挿入部120の先端110に設けられた観察光学系により体腔内を観察するためのユニットである。スコープ100には、結像光学系と共焦点光学系の2つの観察光学系が設けられている。結像光学系は、体腔内表面の生体組織を白色光源及びカラーCCDイメージセンサを用いて撮像する通常観察に使用される。共焦点光学系は、レーザ光を観察部位に走査して体腔内表層の生体組織の拡大断層画像を取得する共焦点観察に使用される。スコープ100は、先端側から長さ方向へ順に、先端部110、挿入部120、鉗子などの各種処置具を先端部110まで導入するための処置具挿入口130、術者がスコープ100を操作する際に把持する把持部140、術者がスコープ100を操作する為の各種ボタンやレバーが配置された内視鏡操作部150、第1プロセッサ200に接続される第1ユニバーサルケーブル160、及び第2プロセッサ300に接続される第2ユニバーサルケーブル170を有している。
【0020】
第1プロセッサ200は、共焦点観察に使用するレーザ光をスコープ100に供給すると共に、スコープ100の先端110に設けられる共焦点光学ユニット500(後述)を制御し、共焦点光学ユニット500により得られる観察光に基づいて共焦点観察像のビデオ信号を生成してモニタ200Mに出力するユニットである。第1プロセッサ200は、光源部210、画像処理部220、光カプラ230、制御部240、及び操作部250を有している。光源部210は共焦点観察に使用するレーザ光を出力する。光源部210の光出力端子と画像処理部220の光入力端子は、光カプラ230を介して共焦点光学ユニット500の光ファイバ520に接続されている。光源部210が発生するレーザ光は、光カプラ230を介して光ファイバ520に結合され、光ファイバ520をスコープ100の先端110まで伝搬して、先端110から観察部位に照射される。観察部位からの戻り光は、光ファイバ520をレーザ光と逆方向に伝搬して、光カプラ230を介して画像処理部220に入力される。画像処理部220は、共焦点光学ユニット500から入力される観察光に基づいて共焦点観察像のビデオ信号を生成してモニタ200Mに出力する。操作部250はユーザ操作を受け付けるための手段である。操作部250は、本実施形態ではフロントパネルに設けられたタッチパネルディスプレイや各種スイッチから構成されているが、別の実施形態においてはキーボードやマウスといった外部入力機器から構成されてもよい。制御部240は、第1プロセッサ200及び共焦点光学ユニット500を構成する各要素の動作を統括制御する。制御部240と共焦点光学ユニット500とは複数の信号線546を介して接続されている。
【0021】
第2プロセッサ300は、通常観察時に使用される周知の電子内視鏡用プロセッサである。第2プロセッサ300は、図示されない制御部、光源部、画像処理部、及び操作部を有している。第2プロセッサ300は、通常観察用の白色光をスコープ100のライトガイド(バンドルファイバ)に供給すると共に、スコープ100の先端110に設けられる撮像ユニット600を制御して撮像を行い、撮像ユニット600が生成するアナログ画像信号に各種画像処理を行って通常観察像のビデオ信号を生成し、モニタ300Mに出力するユニットである。
【0022】
図2は、スコープ100の挿入部先端110の内部構造の概略を示した拡大断面図である。ここで、図2の座標軸に示されるように、挿入部先端110の延長方向(図2における左方向)をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内の互いに直交する方向をそれぞれX方向、Y方向とする。挿入部先端110の最先端には、先端ブロック112、共焦点光学ユニット500、撮像ユニット600、及び図示されないライトガイド先端部が配置されている。先端ブロック112は外形が略円柱状の部材であり、挿入部先端110の延長方向(Z軸方向)に延びる4つの貫通孔が形成されている。貫通孔の一つ(不図示)は鉗子チャネルの一部となる。他の3つの貫通孔には、それぞれ共焦点光学ユニット500、撮像ユニット600、及びライトガイド先端部(不図示)が嵌め込まれている。
【0023】
共焦点光学ユニット500は、大きく固定部と可動部に分かれる。固定部は先端ブロック112に対して固定された部分である。固定部は外形が略円柱状の中空のアセンブリーであり、円盤状のカバーガラス531と、略円筒状の強化枠体510及び枠体550を有している。可動部は、固定部の内部に収容される略円柱状の外形を有するアセンブリーであり、固定部の円筒状の内壁に沿って円筒軸方向に摺動可能となっている。可動部は、光ファイバ520、対物光学系530(カバーガラス531を除く)、X軸ドライブコイル541、Y軸ドライブコイル542、磁性駆動板543、柔軟支持体544、及び金属パイプ590を有している。
【0024】
光ファイバ520は、第1プロセッサ200の光源部210が発生するレーザ光を対物光学系530まで伝送すると共に、対物光学系530が集光した観察対象からの戻り光を第1プロセッサ200の画像処理部220まで伝送するための石英系シングルモードファイバであり、光源部210が発生するレーザ光の波長に適合したものが使用される。光ファイバ520の先端側端面520eから出射したレーザ光は、対物光学系530により外部集光点CPに集光される。外部集光点CPは、光ファイバ520の先端側端面520e(詳細にはコアの端面)の共役点であり、カバーガラス531の外表面直近に配置されている。共焦点内視鏡観察時には、カバーガラス531を生体組織Sの表面に密着させるため、外部集光点CPは生体組織S内に位置する。生体組織Sに照射されたレーザ光の一部は、生体組織Sにより反射・散乱されて、対物光学系530へ戻り、先端側端面520eに集光され、光ファイバ520に結合される。このとき、外部集光点CP以外の場所でもレーザ光に曝された生体組織Sが反射・散乱光を発生するが、光ファイバの先端側端面520eには、共役点である外部集光点CPからの光のみが集光する。光ファイバ520はコア径が数μmと小さいため、先端側端面520eの共役点である外部集光点CP以外からの光はほとんど光ファイバ520に結合することができない。従って、共焦点光学ユニット500により、実質的に外部集光点CPにおいて反射・散乱されたレーザ光のみが収集される。
【0025】
先端側端面520eにおいて光ファイバ520に結合した戻り光は、光ファイバ520を伝搬して第1プロセッサ200に入力される。戻り光は光カプラ230によって分岐され、第1プロセッサ200の画像処理部220に入力される。そして、画像処理部220に内蔵された図示されない受光部が、入力された戻り光の強度を検出して、受光強度を示す信号を出力する。例えば、ある時刻tにおいて受光部が検出した戻り光の強度を、その時刻tにおける外部集光点CPの位置(X(t),Y(t),Z(t))に対応する画素値に割り当てることにより3次元断層像データが生成される。
【0026】
光ファイバ520の先端部には、珪素鋼等の磁性材から形成された細長い磁性駆動板543が、接着により取り付けられている。また、磁性駆動板543は、柔軟支持体により金属パイプ590に取り付けられている。磁性駆動板543は、X軸ドライブコイル541及びY軸ドライブコイル542が発生する磁界により、それぞれX軸及びY軸方向に屈曲するように構成されている。柔軟支持体544は、ゴム等の柔らかい材料から形成された部材であり、Y軸ドライブコイル542による磁性駆動板543のY軸方向の変形による光ファイバ先端520eのY軸方向への変位を阻害しないように磁性駆動板543及び光ファイバを柔軟に支持する。本実施形態においては、光ファイバ520の不要な振動を抑えるため、振動吸収作用を有するソルボセインにより柔軟支持体544が形成されている。X軸ドライブコイル541及びY軸ドライブコイル542には、信号線546を介して第1プロセッサ200の制御部240から駆動電流が供給され、それぞれ磁性駆動板543をX軸及びY軸方向に屈曲させる磁界を発生する。光ファイバ520は磁性駆動板543の先端(図2における左端)から0〜数mm突出した位置で切断され、先端側端面520eが形成されている。各X軸ドライブコイル541及びY軸ドライブコイル542は、駆動電流が供給されると、それぞれX方向及びY方向に光ファイバ520の先端側端面520eを移動させる。これにより、上記の各ドライブコイルの駆動に伴って、外部集光点CPがX−Y面内を2次元走査する。すなわち、本実施形態においては、X軸ドライブコイル541、Y軸ドライブコイル542、磁性駆動板543及び柔軟支持体544、及び各ドライブコイルに駆動電流を供給する制御部240からXY軸走査手段が構成されている。本実施形態のXY軸走査手段は、上記のように磁気コイルの発生する磁界により磁性板を屈曲させることで、磁性板に固定された光ファイバ520の先端を駆動して外部集光点CPを走査するものであり、詳細は特開2008−514970に説明されている。しかしながら、本発明の実施形態に適用可能なXY軸走査手段はこの構成に限定されず、例えば圧電素子により光ファイバを屈曲させる機構等、様々な種類の微小走査手段を適用することができる。
【0027】
また、枠体550及び金属パイプ590は、それぞれ基端(図2における右端)に円筒軸と垂直な壁550a及び壁590aを有している。壁550aと壁590aとは、それぞれ伸縮軸をZ軸方向に向けて並列配置された圧縮コイルバネ560及び形状記憶合金570により連結されている。形状記憶合金570は、常温下で外力が加えられると変形し、一定温度以上に加熱されると記憶している形状に復元する機能を有している。具体的には、形状記憶合金570は加熱によりZ軸方向に縮むように形成及び配置されている。また、圧縮コイルバネ560は、自然長から圧縮された状態で取り付けられている。つまり、圧縮コイルバネ560は、枠体550を常にZ軸方向(カバーガラス531に近づく方向)に付勢する。
【0028】
形状記憶合金570は、信号線546により制御部240と接続されている。制御部240から信号線546を介して形状記憶合金570に駆動電流が供給されると、形状記憶合金570はジュール熱を発生して、発生した熱によりZ軸方向に収縮して記憶している形状に戻ろうとする。加熱時の形状記憶合金570の収縮力は、圧縮コイルバネ560の反発力よりも大きくなるよう設計されている。そのため、形状記憶合金570が収縮すると、枠体550はカバーガラス531から離れる方向(Z軸負の方向)にスライドする。これにより、外部集光点CPの位置がZ軸方向に微小距離移動する。外部集光点CPの移動距離、すなわち共焦点光学ユニット500の可動部の移動距離は、形状記憶合金570に流す駆動電流により制御することができる。すなわち、本実施形態においては、形状記憶合金570、圧縮コイルバネ560、及び形状記憶合金570に駆動電流を供給する制御部240からZ軸走査手段が構成されている。このZ軸走査手段により、共焦点光学ユニット500の共焦点光学系が搭載された可動部を固定部に対してZ軸方向に走査することで、外部集光点CPをZ軸方向に走査することが可能となっている。
【0029】
上述のように、ドライブコイル及び磁性駆動板によりX−Y面内の走査を、形状記憶合金570及び圧縮コイルバネ560によりZ軸方向の走査を行いながら、光ファイバ520に結合される戻り光の強度を検出することにより、3次元走査画像が生成される。精確な3次元走査画像を得るためには、各軸方向の走査を高い位置精度で行う必要がある。Z軸方向の走査に採用される形状記憶合金570の変形を使用した駆動システムは、極めて簡単な構造であるため組み立てが容易かつ故障率が低いという優れた特徴を有しているが、単体では位置再現性が低いという欠点がある。そのため、共焦点光学ユニット500においては、固定部に対する可動部のZ軸方向の位置を測定する位置センサ580が設けられ、位置センサ580が検出した位置情報を用いたZ軸走査のフィードバック制御が行われる。このフィードバック制御により精確なZ軸走査が実現される。
【0030】
次に、本発明の実施形態に係る位置センサ580及び位置制御システムについて詳細に説明する。図3は、本発明の実施形態に係る静電容量型位置センサ580の概略構造を示す断面図である。図3(a)は可動部550が原点(最も固定部に接近する位置)にある状態を示し、図3(b)は可動部550が原点からZ軸方向に一定距離移動した状態を示す。位置センサ580は、金属パイプ(固定部)の壁590aに取り付けられた円筒状の外筒581及び棒状のストッパ584と、枠体(可動部)の壁550aに取り付けられた円筒状の内筒583を有している。外筒581及び内筒583は銅やアルミニウム等の導体から形成され、ストッパ584は銅やステンレス鋼等の構造材から形成される。ストッパ584は、壁590aの表面からZ軸方向に長さLだけ突出しており、可動部の壁550aと固定部の壁590aとの間隔がLより狭くならないように可動部の移動範囲を規制する。ストッパ584の長さLは、可動部が固定部に接近し過ぎて内筒583及び外筒581が壁550aと壁590aとに押し潰されないような長さに設定される。具体的には、ストッパ584の長さLは、内筒583及び外筒581が壁550a又は壁590aからZ軸方向に突出する長さよりも若干長く設定されている。また、本実施形態においては、外筒581の内周に誘電体から形成された円筒状の誘電体層582が略全長に亘って設けられている。誘電体層582には市販の広範な絶縁材料を使用することができるが、加工性や耐熱性の観点から、PPO(Poly Phenylene Oxide)、POM(Poly Oxy Methylene)、PEEK(Polyether Ether Ketone)、PEK(Polyether Ketone)等のプラスチックが適している。他の種類のプラスチックや、各種セラミックス、ガラス材料から誘電体層582を形成してもよい。誘電体層582の内径は内筒583の外径よりも僅かに大きく形成されており、誘電体層582の孔に内筒583が差し込まれたときに内筒583が誘電体層582内を隙間無くスムーズに摺動できるようになっている。外筒581、内筒583、及びストッパ584は、それぞれ壁590a又は550aに垂直に設けられた取付穴に根元部が差し込まれ、半田、接着剤、あるいは圧入により各壁に固定されている。これにより、外筒581、内筒583、及びストッパ584は、延長方向をZ軸方向に向け、互いに平行に配置されている。また、外筒581及び内筒583が固定される取付穴は、それぞれ壁550a及び壁590aの互いに対向する位置に精確に形成されている。そのため、外筒581及び内筒583は同軸に配置される。更に、外筒581が壁590aから突出する長さと、内筒583が壁550aから突出する長さの合計は、可動部の壁550aが固定部の壁590aから最も離れたときの両壁の間隔よりも長くなっている。このため、内筒583の先端部は外筒581の筒内に常に収容された状態となる。言い換えれば、外筒581と内筒583は常に一部が重なり合った状態となる。枠体550(可動部)がZ軸方向に移動すると、内筒583の先端部は外筒581の内周に設けられた誘電体層582の筒内を内壁に沿って移動する。すなわち、外筒581は内筒583の移動方向を規制するガイドとしても機能する。これにより、内筒583が固定された可動部は、外筒581の軸方向に正確に移動する。また、枠体550(可動部)が壁590a(固定部)に近接すると、内筒583は外筒581内に深く差し込まれ、外筒581と内筒583が重なり合った部分の面積が広くなる。また、壁550a(可動部)が壁590a(固定部)から離れると、内筒583が外筒581内から引き出され、外筒581と内筒583が重なり合った部分の面積が狭くなる。
【0031】
外筒581と内筒583が重なり合った部分において、導体である外筒581と内筒583は誘電体層582を介して互いに近接して対向することになる。すなわち、外筒581と内筒583が重なり合った部分は、一種のコンデンサを形成する。このコンデンサの静電容量は、外筒581と内筒583が重なり合った部分の面積に比例するが、この面積は内筒583が外筒581内に貫入した長さLに比例する。従って、コンデンサの静電容量は外筒581と内筒583とのZ軸方向の重なり長Lに比例した大きさとなる。具体的には、コンデンサの静電容量Cは次の式(1)で表される。
【数1】

ここで、aとbはそれぞれ誘電体層582の内径と外径であり、εは誘電体層582を構成する誘電体の誘電率である。
【0032】
位置センサの外筒581及び内筒583は信号線546を介して第1プロセッサ200の制御部240に設けられた周知の静電容量電圧変換回路(不図示)に接続されている。静電容量電圧変換回路は、静電容量又は静電容量の変化量に応じた大きさの電圧を出力する回路である。制御部240は、静電容量電圧変換回路の出力電圧に基づいて位置センサの静電容量Cを決定し、上記の式(1)から外筒581と内筒583の重なり長Lの測定値を算出し、この重なり長Lの測定値に基づいて固定部に対する可動部の相対位置の測定値が決定される。具体的には、図3(b)に示されるように、固定部上に設定された基準点Rに対する可動部上に設定された測定点MのZ軸方向の相対位置Dzが決定される。そして、制御部240は、固定部に対する可動部の相対位置Dzの測定値と目標値との差分が0になるよう形状記憶合金570に供給する駆動電流を調整するフィードバック制御を行う。すなわち、本実施形態においては、位置センサ580、Z軸走査手段、及びフィードバック制御を司る制御部240により、共焦点光学ユニット500の可動部のZ軸位置を制御する位置制御システムが構成されている。なお、本実施形態においては、位置センサ580の基準点Rは外筒581の中心軸(鎖線)が固定部の壁590aの可動部側表面と交差する位置に、測定点Mは内筒583の中心軸(鎖線)が可動部の壁550aの固定部側表面と交差する位置に、それぞれ設定されている。また、外筒581と内筒583との重なり長Lと、基準点Rと測定点Mとの距離Dzとの関係は予め別の測定方法により決定され、制御部240に設けられたメモリに記録されている。
【0033】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において以下に例示するような様々な変形が可能である。
【0034】
上記の実施形態においては、固定部に外筒581が設けられ、可動部に内筒583が設けられている。しかしながら、本発明はこの構成に限定されず、別の実施形態においては固定部に内筒583が設けられ、可動部に外筒581が設けられてもよい。ストッパ584を可動部に設けてもよい。しかしながら、可動部は軽量であることが望ましいため、上記実施形態の配置が最適である。
【0035】
上記の実施形態においては、外筒581の内周に固体の誘電体層582が形成されているが、固体の誘電体層582を設けずに外筒581と内筒583との間に形成される空気層を誘電体層としてもよい。また、誘電体層582は内筒583の外周に形成してもよい。
【0036】
上記の実施形態においては、円筒形に形成された外筒581及び内筒583が使用されているが、本発明の外筒及び内筒はこの形状に限定されない。別の実施形態においては、例えば楕円筒形や四角筒形に形成された外筒及び内筒が使用されてもよい。また、内筒583に替えて内部が充実した円柱や角柱部材を使用してもよい。内筒(又は柱状部材)外周の横断面が外筒内周の横断面に対応する形状で、外筒内周の横断面よりも小寸法となるように各部材が形成されていればよい。また、内筒(又は柱状部材)外周の横断面の寸法は外筒内周の横断面よりも小さくなっている。
【0037】
上記の実施形態においては位置センサ580の外筒581、誘電体層582及び内筒583は空気中に配置されているが、別の実施形態ではこれら要素の周囲を誘電体層と略同じ誘電率に調整された例えばシリコーンオイル等の絶縁油で満たしてもよい。位置センサを絶縁油で満たすことにより、誘電体層の厚さの不均一による誤差が低減される。
【0038】
上記の実施形態においては、位置センサ580は1対の外筒581と内筒583から構成されているが、複数対の外筒581と内筒583からなるコンデンサを並列又は直列に接続した構成にしてもよい。
【0039】
上記の実施形態においては、ストッパ584は可動部の移動方向(Z軸方向)に長手方向を向けた棒状部材が使用されているが、ストッパの形状はこれに限定されない。ストッパは、位置センサ580を保護するために、可動部の壁550aと固定部の壁590aが一定間隔L以下に接近しないように可動部の移動を規制することができれば、各部の機能を阻害しない限り任意の構成にすることができる。例えば、外筒581の側壁の一部を内側に突出させたものもストッパとして機能する。
【0040】
上記の実施形態においては、位置制御システムのフィードバック制御を第1プロセッサ200内に配置された制御部240が直接行っている。しかしながら、別の実施形態においては、位置制御システムのフィードバック制御を司る位置制御手段をスコープ100内(例えば把持部140内)に設け、制御部240の統括制御下で位置制御手段が位置制御システムのフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0041】
上記の実施形態は、本発明に係る位置センサ及び位置制御システムを共焦点内視鏡に適用した例であるが、本発明が適用される装置は共焦点内視鏡に限定されず、精密な位置制御が必要な様々な用途に適用される。例えば、国際公開第2007/084915号パンフレットにあるような走査型医療用プローブや、特開2007−054333号公報にあるようなOCT(Optical Coherence Tomography)プローブ等の各種プローブ型内視鏡におけるプローブの位置制御システムに適用することができる。また、共焦点顕微鏡、走査型トンネル顕微鏡(STM: Scanning Tunneling Microscope)や原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)に代表される走査型プローブ顕微鏡等のプローブの位置制御システムとして使用することができる。その他にも、マイクロマシン全般に適用される汎用のマイクロアクチュエータの駆動制御システムに適用することができる。
【0042】
上記の実施形態は、本発明に係る位置センサ及び位置制御システムをZ軸位置制御システムに適用した例であるが、別の実施形態では例えばX軸、Y軸、Z軸の全ての軸方向の位置制御に本発明に係る位置センサ及び位置制御システムが適用されてもよい。更に別の実施形態においては、各軸周りの角度制御を含めた6軸の位置制御に本発明に係る位置センサ及び位置制御システムが適用されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 共焦点内視鏡システム
100 スコープ
120 挿入部
110 先端
112 先端ブロック
130 処置具挿入口
140 把持部
150 内視鏡操作部
160 第1ユニバーサルケーブル
170 第2ユニバーサルケーブル
200 第1プロセッサ
210 光源部
220 画像処理部
230 光カプラ
240 制御部
250 操作部
200M 第1モニタ
300 第2プロセッサ
300M 第2モニタ
500 共焦点光学ユニット
510 強化枠体
520 光ファイバ
520e 先端側端面
530 対物光学系
531 カバーガラス
541 X軸ドライブコイル
542 Y軸ドライブコイル
543 磁性駆動板
544 柔軟支持体
546 信号線
550 枠体
550a 壁
580 静電容量型位置センサ
581 外筒
582 誘電体層
583 内筒
584 ストッパ
585 二重コイル
590 金属パイプ
590b 壁
600 撮像ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基準点に対する測定点の所定方向における相対位置を検出する静電容量型の位置センサであって、
前記基準点及び前記測定点の一方に対して前記所定方向に軸を向けて固定された筒状の第1電極と、
前記基準点及び前記測定点の他方に対して前記第1電極と同軸に固定された筒状又は柱状の第2電極と
を備え、
前記第2電極の少なくとも一部は前記第1電極と接触せずに該第1電極の筒内に挿抜可能であり、前記相対位置に応じた長さだけ前記第2電極が前記第1電極の筒内に挿し込まれて該相対位置に応じた静電容量を有するコンデンサが形成されることを特徴とする位置センサ。
【請求項2】
前記第1電極の内周又は前記第2電極の外周には誘電体層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の位置センサ。
【請求項3】
前記第1電極は円筒状であり、前記第2電極は円筒状又は円柱状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の位置センサ。
【請求項4】
前記コンデンサの静電容量に応じた電圧信号を出力する静電容量電圧変換回路を更に有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の位置センサ。
【請求項5】
前記第1電極及び前記第2電極と平行に配置され、前記測定点に対する前記測定点の移動範囲を規制するストッパを更に備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の位置センサ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の位置センサと、
前記所定方向に駆動するアクチュエータと、
前記位置センサの出力に基づいて前記アクチュエータの駆動をフィードバック制御する制御部と
を有する位置制御システム。
【請求項7】
スコープの先端に可動プローブが備えられた内視鏡装置において、
請求項6に記載の位置制御システムを備え、
前期位置制御システムにより前記可動プローブの駆動が制御される内視鏡装置。
【請求項8】
前記可動プローブは、走査型医療用プローブ、OCTプローブ、又は共焦点プローブであることを特徴とする請求項7に記載の内視鏡装置。
【請求項9】
請求項6に記載の位置制御システムを備えた共焦点顕微鏡又は走査型顕微鏡。
【請求項10】
請求項6に記載の位置制御システムを備えたマイクロマシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−139781(P2011−139781A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1779(P2010−1779)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】