位置センサ、磁石部材及び磁石部材の製造方法
【課題】検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出すること。
【解決手段】本発明の位置センサ(1)は、主磁場(F)を発生する主磁場発生部(31)と、主磁場発生部(31)の両端の磁極部に隣接して主磁場(F)を補正する磁場補正部(32)とを有する磁石部材(3)と、磁石部材(3)の表面から離間し、主磁場(F)における磁束密度の平行方向成分と垂直方向成分とに応じた信号を出力する磁気センサ素子とを備え、磁石部材(3)は、曲率半径が着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークにより着磁され、磁気センサ素子の出力に基づいて、磁気センサ素子に対する磁石部材(3)の移動位置を検出する構成とした。
【解決手段】本発明の位置センサ(1)は、主磁場(F)を発生する主磁場発生部(31)と、主磁場発生部(31)の両端の磁極部に隣接して主磁場(F)を補正する磁場補正部(32)とを有する磁石部材(3)と、磁石部材(3)の表面から離間し、主磁場(F)における磁束密度の平行方向成分と垂直方向成分とに応じた信号を出力する磁気センサ素子とを備え、磁石部材(3)は、曲率半径が着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークにより着磁され、磁気センサ素子の出力に基づいて、磁気センサ素子に対する磁石部材(3)の移動位置を検出する構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の位置を磁気的に検出する位置センサ、これに用いられる磁石部材及び磁石部材の製造方法に関し、特に、車載用の位置センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象物の位置を磁気的に検出する位置センサとして、2極磁石を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この位置センサでは、検出対象物に2極磁石を取り付け、この磁石表面から離間して磁気センサ素子を配置し、検出対象物の直線移動によって変化する磁束密度の磁石表面に対する直交方向成分に応じて検出対象物の位置が検出される。磁気センサ素子に対向する磁石表面は、移動方向に沿う側面視においてラウンド状に膨出して形成されている。これにより、磁気センサ素子に作用する磁束密度を、検出対象物の移動位置に対してリニアに変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−60338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の位置センサは、磁束密度の直交方向成分により検出対象物の位置が検出されるため、磁石と磁気センサ素子とのギャップ変動に対して、磁束密度の直交方向成分が大きく変動する。このため、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティが、磁石と磁気センサ素子とのギャップ変動に応じて大きく変動するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出することができる位置センサ、磁石部材及び磁石部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置センサは、直線状に交互に異極となるように等間隔で着磁された複数の磁極部によって主磁場を形成する主磁場発生部と、前記主磁場発生部の両端の磁極部に隣接し、前記主磁場を補正するように着磁された磁場補正部とを有する磁石部材と、前記磁石部材の表面から離間して配置され、前記主磁場の磁束密度における前記磁石部材の磁極部の並びの方向に平行な平行方向成分と前記磁石部材の表面に垂直な垂直方向成分とに応じた信号を出力する磁気センサ素子とを備え、前記平行方向成分に応じた信号の周期と前記垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、前記磁石部材が着磁されており、前記磁気センサ素子の出力に基づいて、前記磁極部の並びの方向における前記磁石部材と前記磁気センサ素子との相対位置を検出することを特徴とする。
【0007】
本発明の磁石部材は、磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材において、主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、前記主磁場発生部による主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを備え、前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、着磁されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の磁石部材の製造方法は、磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材の製造方法において、主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、前記主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを、前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークによって、前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁したことを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、磁場補正部により主磁場が補正され、主磁場による磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分が所望の周期及び振幅の正弦波状又は余弦波状に近付けられる。よって、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分に応じた信号に基づいて、磁石部材と磁気センサ素子との相対位置が精度よく検出される。この場合、磁石部材と磁気センサ素子とのギャップが変動しても、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分の振幅比率が変わらないため、センサ出力のリニアリティの変動を抑制できる。
【0010】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁場補正部は、前記主磁場発生部の前記両端の磁極部に対して異極となるように着磁された一対の磁極部により、前記主磁場を補正できる。この構成によれば、簡易な構成により主磁場を補正できる。
【0011】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁場補正部は、前記磁極部の並びの方向において、前記主磁場発生部の着磁ピッチよりも狭く形成できる。この構成によれば、磁石部材の磁極の並びの方向の寸法を小さくして小型化できる。
【0012】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁石部材は、前記磁気センサ素子に対して前記磁極部の並びの方向に移動可能である。この構成によれば、磁石部材が設けられた検出対象物の位置を精度よく検出できる。
【0013】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁気センサ素子の出力に対する信号処理が可能な算出ユニットを有しており、前記磁石部材は、前記算出ユニットの信号処理によって前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁される。この構成によれば、算出ユニットの信号処理によって補正可能な範囲で、平行方向成分に応じた信号と垂直方向成分に応じた信号を得ることができる。
【0014】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記垂直方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値は、前記平行方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値を基準とした所定の範囲に収まっている。この構成によれば、補正のための信号処理によって垂直方向成分に応じた信号の振幅を平行方向成分に応じた信号の振幅に容易に合わせることができる。
【0015】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁石部材は、前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークにより着磁される。この構成によれば、磁石部材から正弦波形状の磁場分布を得ることができる。
【0016】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁石部材の前記主磁場発生部は、前記磁気センサ素子に対して相対的に移動可能な範囲に対応するように配されている。この構成によれば、主磁場から磁石部材と磁気センサ素子との相対位置を容易に算出できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る位置センサの全体構成図である。
【図2】本実施の形態に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。
【図3】比較例に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。
【図4】本実施の形態に係る着磁ヨークによる着磁構成の説明図である。
【図5】着磁ヨークの曲率半径と位置センサの検出精度との関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る出力電圧と磁石部材の移動位置との関係を示す図である。
【図7】磁石部材の変形例を示す図である。
【図8】磁束密度の垂直方向成分により検出対象物の移動位置の検出方法の説明図である。
【図9】本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理の一例を示す図である。
【図10】本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理後のリニアリティ誤差の算出結果の一例を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る余弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
位置センサ等においては、磁気センサから垂直に離間して配置された検出対象物に磁石部材を取り付け、検出対象物が磁気センサに対して平行移動するときの移動位置を高精度に検出することが望まれている。この場合、図8Aに示すように、磁束密度の垂直方向成分により磁石部材73の移動位置を検出する方法では、磁気センサ74と磁石部材73間のギャップ変動に応じて磁束密度が大きく変化して、リニアリティが大きく変動して十分な検出精度が得られなかった。
【0020】
例えば、磁石部材73の極ピッチ(隣接するN極-S極間距離)を28[mm]、磁石部材73と磁気センサ74との相対的なストロークを±14[mm]としたとき、磁石部材73と磁気センサ74間のギャップを1.0[mm]単位で変化させて、磁束密度と磁石部材73の位置との関係を調べたところ、図8Bに示すような結果が得られた。ここでは、磁気センサ74と磁石部材73間のギャップが4.0[mm]から±1[mm]変動すると、リニアリティの変動量が±11%となり検出精度が大きく低下している。このため、本件発明者により磁束密度の平行方向成分と垂直方向成分とからアークタンジェントを求めることで、検出対象物の移動位置を検出する方法が考案された。
【0021】
この方法では、ギャップ変動によって磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分が同時に変化し、振幅比率が変わらないためリニアリティの変動が抑制される。しかしながら、リニアリティの変動を抑えるためには、磁束密度の平行方向成分が適切な正弦波状、垂直方向成分が適切な余弦波状に変化するように磁石部材を着磁する必要があった。そこで、本発明者らは、磁石部材の着磁極数について調べた結果、主磁場を形成する3つの磁極部の両外側に主磁場を収束させる磁極部を設けることで、ギャップ変動があっても、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分を適切に変化できることを発見した。
【0022】
また、本発明者らは、着磁ヨークについて調べた結果、曲率半径が着磁ピッチの1/2以上1/1以下となる凸面状の着磁面により磁石部材を着磁することで、磁石部材から正弦波形状の磁場分布が得られることを発見した。すなわち、本発明の骨子は、この着磁面を有する着磁ヨークを用いて着磁すると共に、補正用の磁極部を有する磁石部材を用いることで、センサ出力のリニアリティの変動を抑制し、検出対象物の移動位置を高精度に検出することである。
【0023】
以下、実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、説明の便宜上、同一の名称には同一の符号を付して説明する。図1を参照して、位置センサの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る位置センサの全体構成図である。なお、図1では、磁石部材を側方から見ており、磁石部材の長手方向をX方向、厚み方向をY方向としている。
【0024】
図1に示すように、位置センサ1は、検出対象物2に取り付けられた磁石部材3と、磁石部材3の表面から垂直方向(Y方向)に離間して配置された磁気センサ4とを有し、磁気センサ4に対する検出対象物2の平行移動を検出するように構成されている。磁気センサ4には、算出ユニット5が接続され、この算出ユニット5において検出対象物2の平行方向(X方向)における移動位置が算出される。
【0025】
磁石部材3は、上面視長方形状に形成された5極着磁の平板磁石であり、磁気センサ4に対向する検出対象物2の表面に固定されている。また、磁石部材3は、磁気センサ4に対向する表面にN極とS極とを長手方向に等ピッチで交互に着磁して構成されている。磁石部材3の着磁ピッチは、検出対象物2の半ストローク(本実施の形態では14[mm])に合わせられている。磁石部材3の隣り合う異極間では、N極からS極に至る円弧状の磁場が発生している。
【0026】
磁石部材3において、中央の3つの磁極部は主磁場Fを発生する主磁場発生部31として機能し、両端の一対の磁極部は主磁場Fを補正する磁場補正部32として機能する。位置センサ1では、主磁場発生部31の両端の同極ピッチ間で検出対象物2を移動させ、主磁場Fの磁束密度に応じて検出対象物2の移動位置を検出する。磁場補正部32は、主磁場発生部31の両端の磁極部から外側に広がる磁場を収束させ、主磁場Fを適切な範囲で分布させている。
【0027】
磁気センサ4は、磁石部材3の表面に対向するように不図示の筐体に配置されており、ホール素子や磁気抵抗効果素子などの磁気センサ素子で構成される。磁気抵抗効果素子は、基本的な構成として、反強磁性層、ピン層、中間層およびフリー層を図示しないウエハー上に積層して形成されている。ピン層は反強磁性層により磁化方向が一方向に固定され、フリー層は外部磁場に反応して磁化方向が変化される。そして、磁石部材3の形成する磁場によりフリー層の磁化方向が変化され、ピン層の磁化方向とのなす角度で抵抗変化率が可変されることにより、これを反映した出力信号が出力される。
【0028】
算出ユニット5は、磁気センサ4から出力された正弦波信号および余弦波信号を増幅する増幅器51、52と、増幅器51、52に増幅された出力信号に基づいて磁石部材3の移動位置を算出する位置算出部53とを有している。位置算出部53は、増幅器51、52を介して入力された正弦波信号及び余弦波信号のアークタンジェントを求めて磁場角度を算出し、この算出した磁場角度から磁石部材3の移動位置を算出する。
【0029】
なお、算出ユニット5は、位置センサ1の各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成されている。
【0030】
図2及び図3を参照して、磁石部材の移動距離に対する磁束密度の変化について説明する。図2は、本実施の形態に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。図3は、比較例に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。なお、比較例は、磁石部材が3極磁石である点において、本実施の形態と相違する。図2A及び図3Aは、主に磁石部材の側面模式図を示し、図2B及び図3Bは、磁束密度の変化を示している。また、図2B及び図3Bでは、縦軸が磁束密度、横軸が検出位置、実線W1が磁束密度の垂直方向成分、破線W2が磁束密度の平行方向成分をそれぞれ示している。
【0031】
図2Aに示すように、本実施の形態に係る磁石部材3においては、N極から隣接するS極に向って磁場が発生しており、N極からS極に向う間に磁場が180度回転する。このとき、中央の主磁場発生部31から発生する主磁場Fは、両端の磁場補正部32によって補正される。具体的には、主磁場発生部31の両端の磁極部(S極)において、外方への磁場の膨らみが隣接する磁場補正部32の磁極部(N極)によって抑えられる。これにより、主磁場Fの分布範囲が、着磁ピッチの2ピッチ分、すなわち検出対象物2の移動範囲に合わされる。
【0032】
したがって、主磁場Fは、主磁場発生部31の中心位置から一方向側に向う1磁極間L1で時計回りに180度回転し、主磁場発生部31の中心位置から他方向側に向う1磁極間L1で反時計回りに180度回転する。磁気センサ4は、主磁場Fの回転による磁束密度の水平方向成分及び垂直方向成分の変化により、検出対象物2の移動位置に応じた信号を出力する。磁束密度の垂直方向成分は、余弦波の出力信号として出力され、磁束密度の水平方向成分は、正弦波の出力信号として出力される。
【0033】
図2Bに示すように、実線W1の余弦波状に変化する磁束密度の垂直方向成分は、検出対象物2の移動範囲に一致した周期で振動している。検出対象物2の移動範囲においては、正方向の振幅と負方向の振幅とに振幅差が生じているが、検出結果に大きな影響を与えない程度に抑えられている。また、破線W2の正弦波で示される磁束密度の平行方向成分も同様に、検出対象物2の移動範囲に一致した周期で振動している。磁束密度の水平方向成分では、正方向の振幅と負方向の振幅とに振幅差が生じていない。
【0034】
例えば、磁石部材3の着磁ピッチ(検出対象物2の移動範囲)を±14[mm]とし、磁石部材3と磁気センサ素子とのギャップを6[mm]としたところ、実線W1において、磁束密度の垂直方向成分の正方向の振幅と負方向の振幅の振幅差が50[gauss]程度に抑えられ、実線W1及び破線W2のそれぞれにおいて磁束密度の水平方向成分の周期が28[mm](±14[mm])となった。このように、本実施の形態に係る磁石部材3を用いた場合には、主磁場Fによる磁束密度の変化に基づいて、適切な周期及び振幅の正弦波信号及び余弦波信号が得られる。
【0035】
一方、図3Aに示すように、比較例に係る磁石部材3においては、3つの磁極部によって主磁場Fが発生する。このとき、磁石部材3には、両端の磁極部(S極)の磁場を抑制する磁極部が設けられていないため、両端の磁極部における磁場が外方に膨らむ。これにより、主磁場Fの分布範囲が、検出対象物2の移動範囲から外側に位置ズレする。よって、主磁場Fは、磁石部材3の中心位置から一方向側に向って、1磁極間L1よりも広い間隔L2で時計回りに180度回転し、磁石部材3の中心位置から他方向側に向って、1磁極間L1よりも広い間隔L2で反時計回りに180度回転する。
【0036】
図3Bに示すように、実線W1の余弦波状に変化する磁束密度の垂直方向成分は、検出対象物2の移動範囲に一致した周期で振動している。検出対象物2の移動範囲においては、正方向及び負方向の振幅差が、上記した本実施の形態に係る振幅差よりも大きくなっている。また、破線W2の正弦波状に変化する磁束密度の平行方向成分は、検出対象物2の移動範囲よりも大きな周期で振幅している。
【0037】
例えば、磁石部材3の着磁ピッチを14[mm]、検出対象物2の移動範囲を±14[mm]とし、磁石部材3と磁気センサ素子とのギャップを6[mm]としたところ、実線W1において、磁束密度の垂直方向成分の正方向の振幅と負方向の振幅の振幅差が150[gauss]程度となり、破線W2において、磁束密度の水平方向成分の周期が30[mm](±15[mm])となった。比較例に係る磁石部材3を用いた場合には、本実施の形態に係る磁石部材3を用いた場合と比較して、実線W1における磁束密度の垂直方向成分の振幅差が約3倍となり、破線W2における磁束密度の水平方向成分の周期が外側に1[mm]大きくなっている。よって、比較例に係る磁石部材3を用いた場合には、主磁場Fによる磁束密度の変化に基づいて、適切な周期及び振幅の正弦波信号及び余弦波信号を得ることができない。
【0038】
このように、本実施の形態の磁石部材3では、3つの磁極部からなる主磁場発生部31の両外側に、一対の磁極部からなる磁場補正部32を設けることで、主磁場Fの外方への膨らみを抑えている。このため、磁束密度の垂直方向成分の振幅差を小さくすると共に、磁束密度の水平方向成分の周期を検出対象物2の移動範囲に一致させることができ、適切な正弦波信号及び余弦波信号を得ることが可能となっている。
【0039】
次に、図4及び図5を参照して、着磁ヨークによる磁石部材の着磁方法について説明する。図4は、本実施の形態に係る着磁ヨークによる着磁構成の説明図である。図5は、本実施の形態に係る着磁ヨークの曲率半径と位置センサの検出精度との関係を示す図である。図4Aは、本実施の形態に係る着磁ヨークを示し、図4Bから図4Dは、磁石部材が発生する磁場分布を示す。図5Aは、曲率半径とリニアリティの変動量及び振幅比との関係を示し、図5Bは、曲率半径と磁束密度との関係を示す。
【0040】
図4Aに示すように、本実施の形態に係る着磁ヨーク6は、磁石部材3に対応して上面視長方形状に形成されており、長手方向に等間隔に配置された凸状の複数の着磁部61と、各着磁部61に巻回された巻き線62とを有している。着磁部61の突出端側は、断面視円弧状の着磁面63となっている。そして、巻き線62が通電されると、着磁部61がS極とN極とに交互に磁化される。着磁面63の断面が円弧状であるため、磁石部材3の内部に比較的大回りの磁束線が通過する。
【0041】
ここで、本件発明者が、磁石部材3の着磁ピッチLに対して、着磁面63の曲率半径rの大きさを変化させたところ、図4Bに示すように、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2以上1/1以下の範囲で磁石部材3の磁場分布が略正弦波状になることを発見した。そして、磁場分布は、曲率半径rが着磁ピッチLの1/1よりも大きくなると、図4Cに示すように台形波状に近づき、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2よりも小さくなると、図4Dに示すように三角波形状に近づくことが判明した。
【0042】
また、着磁ピッチL=14[mm]として、このときの曲率半径と位置センサとの関係を調べたところ、図5に示すような結果が得られた。図5Aに示すように、曲率半径rが着磁ピッチLの1/1(14[mm])よりも大きくなると、リニアリティの変動量が大きくなる。また、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2(7[mm])よりも小さくなると、振幅比が下がり位置算出部53による算出精度が低下する。さらに、図5Bに示すように、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2(7[mm])よりも小さくなると、磁束密度の垂直方向成分及び水平方向成分が急激に下がり、検出感度が低下する。
【0043】
このように、本実施の形態では、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2以上1/1以下の着磁面63を有する着磁ヨーク6によって磁石部材3を着磁することで、磁石部材3に適切な磁場分布を発生させている。
【0044】
以上のようにして着磁された磁石部材3を用いることにより、磁束密度の各方向成分が図2Bに示すように正弦波状及び余弦波状に変化し、磁気センサ4から正弦波信号及び余弦波信号が算出ユニット5に出力される。算出ユニット5では、これら出力信号からアークタンジェントが求められ、磁石部材3の移動位置に対応した出力電圧が算出される。ここで、出力電圧と磁石部材3の移動位置との関係を調べたところ、図6に示す結果が得られた。
【0045】
図6は、本実施の形態に係る出力電圧と磁石部材の移動位置との関係を示す図である。なお、図6においては、左縦軸が出力電圧、右縦軸がリニアリティの変動量、横軸が磁石部材の移動位置を示している。また、図6において、実線W3が理想的な出力特性(基準直線)、破線W4が磁石部材と磁気センサ素子間のギャップを4.5[mm]とした場合の出力特性、破線W5が磁石部材と磁気センサ素子間のギャップを5.5[mm]とした場合の出力特性、破線W6が磁石部材と磁気センサ素子間のギャップを6.5[mm]とした場合の出力特性を示している。
【0046】
図6に示すように、本実施の形態に係る位置センサ1では、磁石部材3と磁気センサ4の磁気センサ素子間のギャップを変動させた場合であっても、実線W3の理想的なリニア特性に略重なるようなリニア特性が得られる。このときのリニアリティの変動量は、破線W4−W6に示すようにギャップが5.5[mm]から±1[mm]変動した場合であっても±0.5%以下に抑えられている。したがって、図8Bに示す磁束密度の垂直方向成分により検出対象物2の移動位置を検出する方法と比較して、大幅にリニアリティの変動量が抑えられている。
【0047】
このように、本実施の形態では磁石部材3に対して理想的な着磁条件を発見し、この磁石部材3を用いることでギャップ変動に対するリニアリティの変動を抑制している。この場合、磁石部材3は、主磁場Fを発生する複数の磁極部の外側に補正用の磁極部が着磁されればよい。例えば、4つ以上の磁極部により主磁場Fを発生してもよいし、2つ以上の磁極部で主磁場Fを補正してもよい。また、図7Aに示すように、磁石部材3において、主磁場発生部31と磁場補正部32とが別体で形成されてもよい。さらに、図7Bに示すように、磁石部材3の長手方向において、磁場補正部32の幅が、主磁場発生部31の着磁ピッチよりも狭く形成されてもよく、例えば、着磁ピッチの1/2以下でもよい。
【0048】
ところで、上記した磁石部材3を用いることでリニアリティの変動量を小さく抑えることができるが、位置センサ1に求められる仕様によっては磁石部材3だけでリニアリティを所望の変動量に抑えることは難しい場合がある。算出ユニット5においてリニアリティの変動量が許容範囲内に収まっていないと判定した場合には、算出ユニット5において磁気センサ4からの出力が補正されることで、リニアリティの変動量が調整される。この場合、算出ユニット5では、リニアリティの変動量が許容範囲内に収まるように、磁束密度の垂直方向成分を示す余弦波信号と磁束密度の平行方向成分を示す正弦波信号との振幅差が小さくなるように補正される。よって、磁石部材3は、算出ユニット5の補正のための信号処理によって調整可能な範囲内であれば、磁束密度の垂直方向成分と水平方向成分とで振幅差が生じてもよい。
【0049】
以下、図9から図11を参照して、算出ユニットによる補正のための信号処理について説明する。図9は、本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理の一例を示す図である。図9では、左縦軸が磁束密度、横軸が磁石部材の移動位置を示している。なお、図9では、正弦波信号に対して余弦波信号の振幅を補正する一例を示すが、余弦波信号に対して正弦波信号の振幅を補正してもよいし、余弦波信号及び正弦波信号の両方を補正してもよい。
【0050】
図9Aに示す磁束密度分布では、余弦波信号及び正弦波信号の振幅(磁束密度)が正負で対称となっている。この場合、正側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差が、負側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差に一致している。また、算出ユニット5は、信号波形の振幅を全体的に伸縮させることでゲイン調整(補正)するよう構成されている。このため、算出ユニット5で余弦波信号の振幅をゲイン調整(補正)することで、正負両側において余弦波信号と正弦波信号との振幅が揃えられる。これにより、リニアリティの変動がより小さく抑えられる。
【0051】
一方、図9Bに示す磁束密度分布では、余弦波信号及び正弦波信号の振幅(磁束密度)が正負で非対称となっている。この場合、正側では余弦波信号よりも正弦波信号の振幅が大きく、負側では余弦波信号と正弦波信号の振幅が一致している。すなわち、正側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差が、負側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差に一致していない。上記したように、算出ユニット5は信号波形の振幅を全体的に伸縮させるため、算出ユニット5で余弦波信号の振幅をゲイン調整しても、正負両側において余弦波信号と正弦波信号の振幅が揃わない。
【0052】
図9Bの例では、正側で余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅に近付くと、負側で余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅から離れるように補正される。しかしながら、このような補正でも、余弦波信号と正弦波信号の振幅差を小さくなることで、リニアリティの変動をある程度抑えることが可能である。
【0053】
次に、余弦波信号と正弦波信号の振幅差とリニアリティ誤差との関係について説明する。図10は、本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理後のリニアリティ誤差の算出結果の一例を示す図である。図10の左図及び中央図では、左縦軸が磁束密度、横軸が磁石部材の移動位置を示している。また、図10の右図では、左縦軸が磁場角度、右縦軸がリニアリティの変動量、横軸が磁石部材の移動位置を示している。なお、図10では、正弦波信号に対して余弦波信号の振幅を補正する一例を示すが、余弦波信号に対して正弦波信号の振幅を補正してもよいし、余弦波信号及び正弦波信号の両方を補正してもよい。
【0054】
また図10では、説明の便宜上、負側において余弦波信号と正弦波信号の振幅を一致させた状態で余弦波信号の振幅を補正する一例を示すが、これに限定されない。図10の磁束密度分布に関わらず、リニアリティ誤差は、余弦波信号と正弦波信号の振幅差に応じて算出される。
【0055】
図10Aは、正弦波信号に対する余弦波信号の正側の振幅比率が70%の波形を示している。余弦波信号の振幅は、正側において正弦波信号の振幅よりも30%小さく、負側において正弦波信号の振幅に一致している。算出ユニット5においては、余弦波信号の振幅が±15%大きくなるようにゲイン調整される。このとき、正側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅に15%近付けられ、負側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅から15%離される。そして、ゲイン調整後の余弦波信号と正弦波信号のアークタンジェントが求められることで、磁石部材3の移動位置に対応した出力特性が算出される。このときのリニアリティ誤差は、理想直線に対して±1.25%程度になっている。
【0056】
図10Bは、正弦波信号に対する余弦波信号の正側の振幅比率が85%の波形を示している。余弦波信号の振幅は、正側において正弦波信号の振幅よりも15%小さく、負側において正弦波信号の振幅に一致している。算出ユニット5においては、余弦波信号の振幅が±7.5%大きくなるようにゲイン調整される。このとき、正側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅に7.5%近付けられ、負側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅から7.5%離される。そして、ゲイン調整後の余弦波信号と正弦波信号のアークタンジェントが求められることで、磁石部材3の移動位置に対応した出力特性が算出される。このときのリニアリティ誤差は、理想直線に対して±0.65%程度になっている。
【0057】
この正弦波信号に対する余弦波信号の振幅比率とリニアリティ誤差を調べた結果、図11に示すような関係が得られた。図11は、本実施の形態に係る余弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差の変化の一例を示す図である。図11では、左縦軸がリニアリティ誤差、横軸が余弦波信号の振幅比率を示している。
【0058】
図11に示すように、余弦波信号の振幅比率とリニアリティ誤差とが比例関係を有している。上記したように、余弦波信号の振幅比率70%の場合にはリニアリティ誤差が±1.25%であり、余弦波信号の振幅比率85%の場合にはリニアリティ誤差が±0.65%になっている。このような比例関係から、位置センサ1に求められる仕様に応じて適切な余弦波信号の振幅比率が求められる。例えば、位置センサ1に求められる仕様がリニアリティ誤差±0.5%の場合には、余弦波信号の振幅比率が89%以上に設定される必要がある。すなわち、余弦波信号と正弦波信号との振幅差が±5.5%(11%)以内に補正可能なように磁石部材3が着磁されていれば、算出ユニット5の信号処理によって位置センサ1の仕様が満たされる。
【0059】
このように、磁石部材3は、算出ユニット5の補正のための信号処理によって位置センサ1の仕様を満たす範囲内に、磁束密度の垂直方向成分と平行方向成分との振幅差が収まるように着磁されていればよい。なお、図11では、余弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差を例示したが、正弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差も同様な比例関係を有している。なお、算出ユニット5による補正のための信号処理は、位置算出部53で行われてもよいし、増幅器51、52で行われてもよい。また、算出ユニット5に信号処理部を設けて、信号処理部で補正のための信号処理が行われてもよい。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係る位置センサ1によれば、着磁ピッチの1/2以上1/1以下の曲率半径rを有する着磁面63により着磁され、両端の磁極部により主磁場Fが抑制されることで、主磁場Fによる磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分が所望の周期及び振幅の正弦波状又余弦波状に変化する。よって、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分に応じた信号に基づいて、磁石部材3の位置が精度よく検出される。
【0061】
なお、上記した実施の形態においては、磁気センサ素子をホール素子やGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)などの磁気抵抗効果素子とする構成としたが、この構成に限定されるものではない。磁石部材の発生する磁場において、磁束密度の水平方向成分及び垂直方向成分に応じた信号を出力可能なものであれが、どのようなものでもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態においては、算出ユニット5によって磁束密度の垂直方向成分と平行方向成分とをアークタンジェント演算して、検出対象物2の移動位置を検出する構成としたが、これに限定されない。算出ユニット5は、磁束密度の垂直方向成分と平行方向成分とから検出対象物2の移動位置を算出可能であれば、どのような演算をしてもよい。
【0063】
また、上記した実施の形態においては、位置センサ1が磁気センサ素子に対して平行移動する磁石部材3の移動位置を検出する構成としたが、これに限定されない。位置センサ1は、磁気センサ素子と磁石部材との相対位置を検出するものであり、例えば、磁石部材3に対して平行移動する磁気センサ素子の移動位置を検出してもよいし、磁石部材3と磁気センサ素子とが平行移動する場合の相対的な移動位置を検出してもよい。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出することができるという効果を有し、特に、検出対象物の位置を磁気的に検出する車載用の位置センサに有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 位置センサ
2 検出対象物
3 磁石部材
31 主磁場発生部
32 磁場補正部
4 磁気センサ
5 算出ユニット
51、52 増幅器
53 位置算出部
6 着磁ヨーク
61 着磁部
62 巻き線
63 着磁面
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出対象物の位置を磁気的に検出する位置センサ、これに用いられる磁石部材及び磁石部材の製造方法に関し、特に、車載用の位置センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象物の位置を磁気的に検出する位置センサとして、2極磁石を利用したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この位置センサでは、検出対象物に2極磁石を取り付け、この磁石表面から離間して磁気センサ素子を配置し、検出対象物の直線移動によって変化する磁束密度の磁石表面に対する直交方向成分に応じて検出対象物の位置が検出される。磁気センサ素子に対向する磁石表面は、移動方向に沿う側面視においてラウンド状に膨出して形成されている。これにより、磁気センサ素子に作用する磁束密度を、検出対象物の移動位置に対してリニアに変化させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−60338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来の位置センサは、磁束密度の直交方向成分により検出対象物の位置が検出されるため、磁石と磁気センサ素子とのギャップ変動に対して、磁束密度の直交方向成分が大きく変動する。このため、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティが、磁石と磁気センサ素子とのギャップ変動に応じて大きく変動するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出することができる位置センサ、磁石部材及び磁石部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の位置センサは、直線状に交互に異極となるように等間隔で着磁された複数の磁極部によって主磁場を形成する主磁場発生部と、前記主磁場発生部の両端の磁極部に隣接し、前記主磁場を補正するように着磁された磁場補正部とを有する磁石部材と、前記磁石部材の表面から離間して配置され、前記主磁場の磁束密度における前記磁石部材の磁極部の並びの方向に平行な平行方向成分と前記磁石部材の表面に垂直な垂直方向成分とに応じた信号を出力する磁気センサ素子とを備え、前記平行方向成分に応じた信号の周期と前記垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、前記磁石部材が着磁されており、前記磁気センサ素子の出力に基づいて、前記磁極部の並びの方向における前記磁石部材と前記磁気センサ素子との相対位置を検出することを特徴とする。
【0007】
本発明の磁石部材は、磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材において、主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、前記主磁場発生部による主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを備え、前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、着磁されていることを特徴とする。
【0008】
本発明の磁石部材の製造方法は、磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材の製造方法において、主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、前記主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを、前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークによって、前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁したことを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、磁場補正部により主磁場が補正され、主磁場による磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分が所望の周期及び振幅の正弦波状又は余弦波状に近付けられる。よって、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分に応じた信号に基づいて、磁石部材と磁気センサ素子との相対位置が精度よく検出される。この場合、磁石部材と磁気センサ素子とのギャップが変動しても、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分の振幅比率が変わらないため、センサ出力のリニアリティの変動を抑制できる。
【0010】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁場補正部は、前記主磁場発生部の前記両端の磁極部に対して異極となるように着磁された一対の磁極部により、前記主磁場を補正できる。この構成によれば、簡易な構成により主磁場を補正できる。
【0011】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁場補正部は、前記磁極部の並びの方向において、前記主磁場発生部の着磁ピッチよりも狭く形成できる。この構成によれば、磁石部材の磁極の並びの方向の寸法を小さくして小型化できる。
【0012】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁石部材は、前記磁気センサ素子に対して前記磁極部の並びの方向に移動可能である。この構成によれば、磁石部材が設けられた検出対象物の位置を精度よく検出できる。
【0013】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁気センサ素子の出力に対する信号処理が可能な算出ユニットを有しており、前記磁石部材は、前記算出ユニットの信号処理によって前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁される。この構成によれば、算出ユニットの信号処理によって補正可能な範囲で、平行方向成分に応じた信号と垂直方向成分に応じた信号を得ることができる。
【0014】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記垂直方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値は、前記平行方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値を基準とした所定の範囲に収まっている。この構成によれば、補正のための信号処理によって垂直方向成分に応じた信号の振幅を平行方向成分に応じた信号の振幅に容易に合わせることができる。
【0015】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁石部材は、前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークにより着磁される。この構成によれば、磁石部材から正弦波形状の磁場分布を得ることができる。
【0016】
また、本発明の上記位置センサにおいて、前記磁石部材の前記主磁場発生部は、前記磁気センサ素子に対して相対的に移動可能な範囲に対応するように配されている。この構成によれば、主磁場から磁石部材と磁気センサ素子との相対位置を容易に算出できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係る位置センサの全体構成図である。
【図2】本実施の形態に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。
【図3】比較例に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。
【図4】本実施の形態に係る着磁ヨークによる着磁構成の説明図である。
【図5】着磁ヨークの曲率半径と位置センサの検出精度との関係を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る出力電圧と磁石部材の移動位置との関係を示す図である。
【図7】磁石部材の変形例を示す図である。
【図8】磁束密度の垂直方向成分により検出対象物の移動位置の検出方法の説明図である。
【図9】本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理の一例を示す図である。
【図10】本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理後のリニアリティ誤差の算出結果の一例を示す図である。
【図11】本実施の形態に係る余弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
位置センサ等においては、磁気センサから垂直に離間して配置された検出対象物に磁石部材を取り付け、検出対象物が磁気センサに対して平行移動するときの移動位置を高精度に検出することが望まれている。この場合、図8Aに示すように、磁束密度の垂直方向成分により磁石部材73の移動位置を検出する方法では、磁気センサ74と磁石部材73間のギャップ変動に応じて磁束密度が大きく変化して、リニアリティが大きく変動して十分な検出精度が得られなかった。
【0020】
例えば、磁石部材73の極ピッチ(隣接するN極-S極間距離)を28[mm]、磁石部材73と磁気センサ74との相対的なストロークを±14[mm]としたとき、磁石部材73と磁気センサ74間のギャップを1.0[mm]単位で変化させて、磁束密度と磁石部材73の位置との関係を調べたところ、図8Bに示すような結果が得られた。ここでは、磁気センサ74と磁石部材73間のギャップが4.0[mm]から±1[mm]変動すると、リニアリティの変動量が±11%となり検出精度が大きく低下している。このため、本件発明者により磁束密度の平行方向成分と垂直方向成分とからアークタンジェントを求めることで、検出対象物の移動位置を検出する方法が考案された。
【0021】
この方法では、ギャップ変動によって磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分が同時に変化し、振幅比率が変わらないためリニアリティの変動が抑制される。しかしながら、リニアリティの変動を抑えるためには、磁束密度の平行方向成分が適切な正弦波状、垂直方向成分が適切な余弦波状に変化するように磁石部材を着磁する必要があった。そこで、本発明者らは、磁石部材の着磁極数について調べた結果、主磁場を形成する3つの磁極部の両外側に主磁場を収束させる磁極部を設けることで、ギャップ変動があっても、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分を適切に変化できることを発見した。
【0022】
また、本発明者らは、着磁ヨークについて調べた結果、曲率半径が着磁ピッチの1/2以上1/1以下となる凸面状の着磁面により磁石部材を着磁することで、磁石部材から正弦波形状の磁場分布が得られることを発見した。すなわち、本発明の骨子は、この着磁面を有する着磁ヨークを用いて着磁すると共に、補正用の磁極部を有する磁石部材を用いることで、センサ出力のリニアリティの変動を抑制し、検出対象物の移動位置を高精度に検出することである。
【0023】
以下、実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。以下の説明では、説明の便宜上、同一の名称には同一の符号を付して説明する。図1を参照して、位置センサの全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る位置センサの全体構成図である。なお、図1では、磁石部材を側方から見ており、磁石部材の長手方向をX方向、厚み方向をY方向としている。
【0024】
図1に示すように、位置センサ1は、検出対象物2に取り付けられた磁石部材3と、磁石部材3の表面から垂直方向(Y方向)に離間して配置された磁気センサ4とを有し、磁気センサ4に対する検出対象物2の平行移動を検出するように構成されている。磁気センサ4には、算出ユニット5が接続され、この算出ユニット5において検出対象物2の平行方向(X方向)における移動位置が算出される。
【0025】
磁石部材3は、上面視長方形状に形成された5極着磁の平板磁石であり、磁気センサ4に対向する検出対象物2の表面に固定されている。また、磁石部材3は、磁気センサ4に対向する表面にN極とS極とを長手方向に等ピッチで交互に着磁して構成されている。磁石部材3の着磁ピッチは、検出対象物2の半ストローク(本実施の形態では14[mm])に合わせられている。磁石部材3の隣り合う異極間では、N極からS極に至る円弧状の磁場が発生している。
【0026】
磁石部材3において、中央の3つの磁極部は主磁場Fを発生する主磁場発生部31として機能し、両端の一対の磁極部は主磁場Fを補正する磁場補正部32として機能する。位置センサ1では、主磁場発生部31の両端の同極ピッチ間で検出対象物2を移動させ、主磁場Fの磁束密度に応じて検出対象物2の移動位置を検出する。磁場補正部32は、主磁場発生部31の両端の磁極部から外側に広がる磁場を収束させ、主磁場Fを適切な範囲で分布させている。
【0027】
磁気センサ4は、磁石部材3の表面に対向するように不図示の筐体に配置されており、ホール素子や磁気抵抗効果素子などの磁気センサ素子で構成される。磁気抵抗効果素子は、基本的な構成として、反強磁性層、ピン層、中間層およびフリー層を図示しないウエハー上に積層して形成されている。ピン層は反強磁性層により磁化方向が一方向に固定され、フリー層は外部磁場に反応して磁化方向が変化される。そして、磁石部材3の形成する磁場によりフリー層の磁化方向が変化され、ピン層の磁化方向とのなす角度で抵抗変化率が可変されることにより、これを反映した出力信号が出力される。
【0028】
算出ユニット5は、磁気センサ4から出力された正弦波信号および余弦波信号を増幅する増幅器51、52と、増幅器51、52に増幅された出力信号に基づいて磁石部材3の移動位置を算出する位置算出部53とを有している。位置算出部53は、増幅器51、52を介して入力された正弦波信号及び余弦波信号のアークタンジェントを求めて磁場角度を算出し、この算出した磁場角度から磁石部材3の移動位置を算出する。
【0029】
なお、算出ユニット5は、位置センサ1の各種処理を実行するプロセッサや、メモリ等により構成されている。
【0030】
図2及び図3を参照して、磁石部材の移動距離に対する磁束密度の変化について説明する。図2は、本実施の形態に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。図3は、比較例に係る移動距離に対する磁束密度の変化を示す説明図である。なお、比較例は、磁石部材が3極磁石である点において、本実施の形態と相違する。図2A及び図3Aは、主に磁石部材の側面模式図を示し、図2B及び図3Bは、磁束密度の変化を示している。また、図2B及び図3Bでは、縦軸が磁束密度、横軸が検出位置、実線W1が磁束密度の垂直方向成分、破線W2が磁束密度の平行方向成分をそれぞれ示している。
【0031】
図2Aに示すように、本実施の形態に係る磁石部材3においては、N極から隣接するS極に向って磁場が発生しており、N極からS極に向う間に磁場が180度回転する。このとき、中央の主磁場発生部31から発生する主磁場Fは、両端の磁場補正部32によって補正される。具体的には、主磁場発生部31の両端の磁極部(S極)において、外方への磁場の膨らみが隣接する磁場補正部32の磁極部(N極)によって抑えられる。これにより、主磁場Fの分布範囲が、着磁ピッチの2ピッチ分、すなわち検出対象物2の移動範囲に合わされる。
【0032】
したがって、主磁場Fは、主磁場発生部31の中心位置から一方向側に向う1磁極間L1で時計回りに180度回転し、主磁場発生部31の中心位置から他方向側に向う1磁極間L1で反時計回りに180度回転する。磁気センサ4は、主磁場Fの回転による磁束密度の水平方向成分及び垂直方向成分の変化により、検出対象物2の移動位置に応じた信号を出力する。磁束密度の垂直方向成分は、余弦波の出力信号として出力され、磁束密度の水平方向成分は、正弦波の出力信号として出力される。
【0033】
図2Bに示すように、実線W1の余弦波状に変化する磁束密度の垂直方向成分は、検出対象物2の移動範囲に一致した周期で振動している。検出対象物2の移動範囲においては、正方向の振幅と負方向の振幅とに振幅差が生じているが、検出結果に大きな影響を与えない程度に抑えられている。また、破線W2の正弦波で示される磁束密度の平行方向成分も同様に、検出対象物2の移動範囲に一致した周期で振動している。磁束密度の水平方向成分では、正方向の振幅と負方向の振幅とに振幅差が生じていない。
【0034】
例えば、磁石部材3の着磁ピッチ(検出対象物2の移動範囲)を±14[mm]とし、磁石部材3と磁気センサ素子とのギャップを6[mm]としたところ、実線W1において、磁束密度の垂直方向成分の正方向の振幅と負方向の振幅の振幅差が50[gauss]程度に抑えられ、実線W1及び破線W2のそれぞれにおいて磁束密度の水平方向成分の周期が28[mm](±14[mm])となった。このように、本実施の形態に係る磁石部材3を用いた場合には、主磁場Fによる磁束密度の変化に基づいて、適切な周期及び振幅の正弦波信号及び余弦波信号が得られる。
【0035】
一方、図3Aに示すように、比較例に係る磁石部材3においては、3つの磁極部によって主磁場Fが発生する。このとき、磁石部材3には、両端の磁極部(S極)の磁場を抑制する磁極部が設けられていないため、両端の磁極部における磁場が外方に膨らむ。これにより、主磁場Fの分布範囲が、検出対象物2の移動範囲から外側に位置ズレする。よって、主磁場Fは、磁石部材3の中心位置から一方向側に向って、1磁極間L1よりも広い間隔L2で時計回りに180度回転し、磁石部材3の中心位置から他方向側に向って、1磁極間L1よりも広い間隔L2で反時計回りに180度回転する。
【0036】
図3Bに示すように、実線W1の余弦波状に変化する磁束密度の垂直方向成分は、検出対象物2の移動範囲に一致した周期で振動している。検出対象物2の移動範囲においては、正方向及び負方向の振幅差が、上記した本実施の形態に係る振幅差よりも大きくなっている。また、破線W2の正弦波状に変化する磁束密度の平行方向成分は、検出対象物2の移動範囲よりも大きな周期で振幅している。
【0037】
例えば、磁石部材3の着磁ピッチを14[mm]、検出対象物2の移動範囲を±14[mm]とし、磁石部材3と磁気センサ素子とのギャップを6[mm]としたところ、実線W1において、磁束密度の垂直方向成分の正方向の振幅と負方向の振幅の振幅差が150[gauss]程度となり、破線W2において、磁束密度の水平方向成分の周期が30[mm](±15[mm])となった。比較例に係る磁石部材3を用いた場合には、本実施の形態に係る磁石部材3を用いた場合と比較して、実線W1における磁束密度の垂直方向成分の振幅差が約3倍となり、破線W2における磁束密度の水平方向成分の周期が外側に1[mm]大きくなっている。よって、比較例に係る磁石部材3を用いた場合には、主磁場Fによる磁束密度の変化に基づいて、適切な周期及び振幅の正弦波信号及び余弦波信号を得ることができない。
【0038】
このように、本実施の形態の磁石部材3では、3つの磁極部からなる主磁場発生部31の両外側に、一対の磁極部からなる磁場補正部32を設けることで、主磁場Fの外方への膨らみを抑えている。このため、磁束密度の垂直方向成分の振幅差を小さくすると共に、磁束密度の水平方向成分の周期を検出対象物2の移動範囲に一致させることができ、適切な正弦波信号及び余弦波信号を得ることが可能となっている。
【0039】
次に、図4及び図5を参照して、着磁ヨークによる磁石部材の着磁方法について説明する。図4は、本実施の形態に係る着磁ヨークによる着磁構成の説明図である。図5は、本実施の形態に係る着磁ヨークの曲率半径と位置センサの検出精度との関係を示す図である。図4Aは、本実施の形態に係る着磁ヨークを示し、図4Bから図4Dは、磁石部材が発生する磁場分布を示す。図5Aは、曲率半径とリニアリティの変動量及び振幅比との関係を示し、図5Bは、曲率半径と磁束密度との関係を示す。
【0040】
図4Aに示すように、本実施の形態に係る着磁ヨーク6は、磁石部材3に対応して上面視長方形状に形成されており、長手方向に等間隔に配置された凸状の複数の着磁部61と、各着磁部61に巻回された巻き線62とを有している。着磁部61の突出端側は、断面視円弧状の着磁面63となっている。そして、巻き線62が通電されると、着磁部61がS極とN極とに交互に磁化される。着磁面63の断面が円弧状であるため、磁石部材3の内部に比較的大回りの磁束線が通過する。
【0041】
ここで、本件発明者が、磁石部材3の着磁ピッチLに対して、着磁面63の曲率半径rの大きさを変化させたところ、図4Bに示すように、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2以上1/1以下の範囲で磁石部材3の磁場分布が略正弦波状になることを発見した。そして、磁場分布は、曲率半径rが着磁ピッチLの1/1よりも大きくなると、図4Cに示すように台形波状に近づき、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2よりも小さくなると、図4Dに示すように三角波形状に近づくことが判明した。
【0042】
また、着磁ピッチL=14[mm]として、このときの曲率半径と位置センサとの関係を調べたところ、図5に示すような結果が得られた。図5Aに示すように、曲率半径rが着磁ピッチLの1/1(14[mm])よりも大きくなると、リニアリティの変動量が大きくなる。また、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2(7[mm])よりも小さくなると、振幅比が下がり位置算出部53による算出精度が低下する。さらに、図5Bに示すように、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2(7[mm])よりも小さくなると、磁束密度の垂直方向成分及び水平方向成分が急激に下がり、検出感度が低下する。
【0043】
このように、本実施の形態では、曲率半径rが着磁ピッチLの1/2以上1/1以下の着磁面63を有する着磁ヨーク6によって磁石部材3を着磁することで、磁石部材3に適切な磁場分布を発生させている。
【0044】
以上のようにして着磁された磁石部材3を用いることにより、磁束密度の各方向成分が図2Bに示すように正弦波状及び余弦波状に変化し、磁気センサ4から正弦波信号及び余弦波信号が算出ユニット5に出力される。算出ユニット5では、これら出力信号からアークタンジェントが求められ、磁石部材3の移動位置に対応した出力電圧が算出される。ここで、出力電圧と磁石部材3の移動位置との関係を調べたところ、図6に示す結果が得られた。
【0045】
図6は、本実施の形態に係る出力電圧と磁石部材の移動位置との関係を示す図である。なお、図6においては、左縦軸が出力電圧、右縦軸がリニアリティの変動量、横軸が磁石部材の移動位置を示している。また、図6において、実線W3が理想的な出力特性(基準直線)、破線W4が磁石部材と磁気センサ素子間のギャップを4.5[mm]とした場合の出力特性、破線W5が磁石部材と磁気センサ素子間のギャップを5.5[mm]とした場合の出力特性、破線W6が磁石部材と磁気センサ素子間のギャップを6.5[mm]とした場合の出力特性を示している。
【0046】
図6に示すように、本実施の形態に係る位置センサ1では、磁石部材3と磁気センサ4の磁気センサ素子間のギャップを変動させた場合であっても、実線W3の理想的なリニア特性に略重なるようなリニア特性が得られる。このときのリニアリティの変動量は、破線W4−W6に示すようにギャップが5.5[mm]から±1[mm]変動した場合であっても±0.5%以下に抑えられている。したがって、図8Bに示す磁束密度の垂直方向成分により検出対象物2の移動位置を検出する方法と比較して、大幅にリニアリティの変動量が抑えられている。
【0047】
このように、本実施の形態では磁石部材3に対して理想的な着磁条件を発見し、この磁石部材3を用いることでギャップ変動に対するリニアリティの変動を抑制している。この場合、磁石部材3は、主磁場Fを発生する複数の磁極部の外側に補正用の磁極部が着磁されればよい。例えば、4つ以上の磁極部により主磁場Fを発生してもよいし、2つ以上の磁極部で主磁場Fを補正してもよい。また、図7Aに示すように、磁石部材3において、主磁場発生部31と磁場補正部32とが別体で形成されてもよい。さらに、図7Bに示すように、磁石部材3の長手方向において、磁場補正部32の幅が、主磁場発生部31の着磁ピッチよりも狭く形成されてもよく、例えば、着磁ピッチの1/2以下でもよい。
【0048】
ところで、上記した磁石部材3を用いることでリニアリティの変動量を小さく抑えることができるが、位置センサ1に求められる仕様によっては磁石部材3だけでリニアリティを所望の変動量に抑えることは難しい場合がある。算出ユニット5においてリニアリティの変動量が許容範囲内に収まっていないと判定した場合には、算出ユニット5において磁気センサ4からの出力が補正されることで、リニアリティの変動量が調整される。この場合、算出ユニット5では、リニアリティの変動量が許容範囲内に収まるように、磁束密度の垂直方向成分を示す余弦波信号と磁束密度の平行方向成分を示す正弦波信号との振幅差が小さくなるように補正される。よって、磁石部材3は、算出ユニット5の補正のための信号処理によって調整可能な範囲内であれば、磁束密度の垂直方向成分と水平方向成分とで振幅差が生じてもよい。
【0049】
以下、図9から図11を参照して、算出ユニットによる補正のための信号処理について説明する。図9は、本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理の一例を示す図である。図9では、左縦軸が磁束密度、横軸が磁石部材の移動位置を示している。なお、図9では、正弦波信号に対して余弦波信号の振幅を補正する一例を示すが、余弦波信号に対して正弦波信号の振幅を補正してもよいし、余弦波信号及び正弦波信号の両方を補正してもよい。
【0050】
図9Aに示す磁束密度分布では、余弦波信号及び正弦波信号の振幅(磁束密度)が正負で対称となっている。この場合、正側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差が、負側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差に一致している。また、算出ユニット5は、信号波形の振幅を全体的に伸縮させることでゲイン調整(補正)するよう構成されている。このため、算出ユニット5で余弦波信号の振幅をゲイン調整(補正)することで、正負両側において余弦波信号と正弦波信号との振幅が揃えられる。これにより、リニアリティの変動がより小さく抑えられる。
【0051】
一方、図9Bに示す磁束密度分布では、余弦波信号及び正弦波信号の振幅(磁束密度)が正負で非対称となっている。この場合、正側では余弦波信号よりも正弦波信号の振幅が大きく、負側では余弦波信号と正弦波信号の振幅が一致している。すなわち、正側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差が、負側における余弦波信号と正弦波信号の振幅差に一致していない。上記したように、算出ユニット5は信号波形の振幅を全体的に伸縮させるため、算出ユニット5で余弦波信号の振幅をゲイン調整しても、正負両側において余弦波信号と正弦波信号の振幅が揃わない。
【0052】
図9Bの例では、正側で余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅に近付くと、負側で余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅から離れるように補正される。しかしながら、このような補正でも、余弦波信号と正弦波信号の振幅差を小さくなることで、リニアリティの変動をある程度抑えることが可能である。
【0053】
次に、余弦波信号と正弦波信号の振幅差とリニアリティ誤差との関係について説明する。図10は、本実施の形態に係る算出ユニットによる信号処理後のリニアリティ誤差の算出結果の一例を示す図である。図10の左図及び中央図では、左縦軸が磁束密度、横軸が磁石部材の移動位置を示している。また、図10の右図では、左縦軸が磁場角度、右縦軸がリニアリティの変動量、横軸が磁石部材の移動位置を示している。なお、図10では、正弦波信号に対して余弦波信号の振幅を補正する一例を示すが、余弦波信号に対して正弦波信号の振幅を補正してもよいし、余弦波信号及び正弦波信号の両方を補正してもよい。
【0054】
また図10では、説明の便宜上、負側において余弦波信号と正弦波信号の振幅を一致させた状態で余弦波信号の振幅を補正する一例を示すが、これに限定されない。図10の磁束密度分布に関わらず、リニアリティ誤差は、余弦波信号と正弦波信号の振幅差に応じて算出される。
【0055】
図10Aは、正弦波信号に対する余弦波信号の正側の振幅比率が70%の波形を示している。余弦波信号の振幅は、正側において正弦波信号の振幅よりも30%小さく、負側において正弦波信号の振幅に一致している。算出ユニット5においては、余弦波信号の振幅が±15%大きくなるようにゲイン調整される。このとき、正側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅に15%近付けられ、負側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅から15%離される。そして、ゲイン調整後の余弦波信号と正弦波信号のアークタンジェントが求められることで、磁石部材3の移動位置に対応した出力特性が算出される。このときのリニアリティ誤差は、理想直線に対して±1.25%程度になっている。
【0056】
図10Bは、正弦波信号に対する余弦波信号の正側の振幅比率が85%の波形を示している。余弦波信号の振幅は、正側において正弦波信号の振幅よりも15%小さく、負側において正弦波信号の振幅に一致している。算出ユニット5においては、余弦波信号の振幅が±7.5%大きくなるようにゲイン調整される。このとき、正側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅に7.5%近付けられ、負側では余弦波信号の振幅が正弦波信号の振幅から7.5%離される。そして、ゲイン調整後の余弦波信号と正弦波信号のアークタンジェントが求められることで、磁石部材3の移動位置に対応した出力特性が算出される。このときのリニアリティ誤差は、理想直線に対して±0.65%程度になっている。
【0057】
この正弦波信号に対する余弦波信号の振幅比率とリニアリティ誤差を調べた結果、図11に示すような関係が得られた。図11は、本実施の形態に係る余弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差の変化の一例を示す図である。図11では、左縦軸がリニアリティ誤差、横軸が余弦波信号の振幅比率を示している。
【0058】
図11に示すように、余弦波信号の振幅比率とリニアリティ誤差とが比例関係を有している。上記したように、余弦波信号の振幅比率70%の場合にはリニアリティ誤差が±1.25%であり、余弦波信号の振幅比率85%の場合にはリニアリティ誤差が±0.65%になっている。このような比例関係から、位置センサ1に求められる仕様に応じて適切な余弦波信号の振幅比率が求められる。例えば、位置センサ1に求められる仕様がリニアリティ誤差±0.5%の場合には、余弦波信号の振幅比率が89%以上に設定される必要がある。すなわち、余弦波信号と正弦波信号との振幅差が±5.5%(11%)以内に補正可能なように磁石部材3が着磁されていれば、算出ユニット5の信号処理によって位置センサ1の仕様が満たされる。
【0059】
このように、磁石部材3は、算出ユニット5の補正のための信号処理によって位置センサ1の仕様を満たす範囲内に、磁束密度の垂直方向成分と平行方向成分との振幅差が収まるように着磁されていればよい。なお、図11では、余弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差を例示したが、正弦波信号の振幅比率に対するリニアリティ誤差も同様な比例関係を有している。なお、算出ユニット5による補正のための信号処理は、位置算出部53で行われてもよいし、増幅器51、52で行われてもよい。また、算出ユニット5に信号処理部を設けて、信号処理部で補正のための信号処理が行われてもよい。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係る位置センサ1によれば、着磁ピッチの1/2以上1/1以下の曲率半径rを有する着磁面63により着磁され、両端の磁極部により主磁場Fが抑制されることで、主磁場Fによる磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分が所望の周期及び振幅の正弦波状又余弦波状に変化する。よって、磁束密度の平行方向成分及び垂直方向成分に応じた信号に基づいて、磁石部材3の位置が精度よく検出される。
【0061】
なお、上記した実施の形態においては、磁気センサ素子をホール素子やGMR素子(巨大磁気抵抗効果素子)などの磁気抵抗効果素子とする構成としたが、この構成に限定されるものではない。磁石部材の発生する磁場において、磁束密度の水平方向成分及び垂直方向成分に応じた信号を出力可能なものであれが、どのようなものでもよい。
【0062】
また、上記した実施の形態においては、算出ユニット5によって磁束密度の垂直方向成分と平行方向成分とをアークタンジェント演算して、検出対象物2の移動位置を検出する構成としたが、これに限定されない。算出ユニット5は、磁束密度の垂直方向成分と平行方向成分とから検出対象物2の移動位置を算出可能であれば、どのような演算をしてもよい。
【0063】
また、上記した実施の形態においては、位置センサ1が磁気センサ素子に対して平行移動する磁石部材3の移動位置を検出する構成としたが、これに限定されない。位置センサ1は、磁気センサ素子と磁石部材との相対位置を検出するものであり、例えば、磁石部材3に対して平行移動する磁気センサ素子の移動位置を検出してもよいし、磁石部材3と磁気センサ素子とが平行移動する場合の相対的な移動位置を検出してもよい。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、検出対象物の移動位置に対するセンサ出力のリニアリティの変動を抑制して、検出対象物の移動位置をより高精度に検出することができるという効果を有し、特に、検出対象物の位置を磁気的に検出する車載用の位置センサに有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 位置センサ
2 検出対象物
3 磁石部材
31 主磁場発生部
32 磁場補正部
4 磁気センサ
5 算出ユニット
51、52 増幅器
53 位置算出部
6 着磁ヨーク
61 着磁部
62 巻き線
63 着磁面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状に交互に異極となるように等間隔で着磁された複数の磁極部によって主磁場を形成する主磁場発生部と、前記主磁場発生部の両端の磁極部に隣接し、前記主磁場を補正するように着磁された磁場補正部とを有する磁石部材と、
前記磁石部材の表面から離間して配置され、前記主磁場の磁束密度における前記磁石部材の磁極部の並びの方向に平行な平行方向成分と前記磁石部材の表面に垂直な垂直方向成分とに応じた信号を出力する磁気センサ素子とを備え、
前記平行方向成分に応じた信号の周期と前記垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、前記磁石部材が着磁されており、
前記磁気センサ素子の出力に基づいて、前記磁極部の並びの方向における前記磁石部材と前記磁気センサ素子との相対位置を検出することを特徴とする位置センサ。
【請求項2】
前記磁場補正部は、前記主磁場発生部の前記両端の磁極部に対して異極となるように着磁された一対の磁極部により、前記主磁場を補正することを特徴とする請求項1に記載の位置センサ。
【請求項3】
前記磁場補正部は、前記磁極部の並びの方向において、前記主磁場発生部の着磁ピッチよりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置センサ。
【請求項4】
前記磁石部材は、前記磁気センサ素子に対して前記磁極部の並びの方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置センサ。
【請求項5】
前記磁気センサ素子の出力に対する信号処理が可能な算出ユニットを有しており、
前記磁石部材は、前記算出ユニットの信号処理によって前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁されることを特徴とする請求項1に記載の位置センサ。
【請求項6】
前記垂直方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値は、前記平行方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値を基準とした所定の範囲に収まっていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置センサ。
【請求項7】
前記磁石部材は、前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークにより着磁されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の位置センサ。
【請求項8】
前記磁石部材の前記主磁場発生部は、前記磁気センサ素子に対して相対的に移動可能な範囲に対応するように配されていることを特徴とする請求項4に記載の位置センサ。
【請求項9】
磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材において、
主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、
前記主磁場発生部による主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを備え、
前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、着磁されていることを特徴とする磁石部材。
【請求項10】
磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材の製造方法において、
主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、前記主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを、
前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークによって、
前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁したことを特徴とする磁石部材の製造方法。
【請求項1】
直線状に交互に異極となるように等間隔で着磁された複数の磁極部によって主磁場を形成する主磁場発生部と、前記主磁場発生部の両端の磁極部に隣接し、前記主磁場を補正するように着磁された磁場補正部とを有する磁石部材と、
前記磁石部材の表面から離間して配置され、前記主磁場の磁束密度における前記磁石部材の磁極部の並びの方向に平行な平行方向成分と前記磁石部材の表面に垂直な垂直方向成分とに応じた信号を出力する磁気センサ素子とを備え、
前記平行方向成分に応じた信号の周期と前記垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、前記磁石部材が着磁されており、
前記磁気センサ素子の出力に基づいて、前記磁極部の並びの方向における前記磁石部材と前記磁気センサ素子との相対位置を検出することを特徴とする位置センサ。
【請求項2】
前記磁場補正部は、前記主磁場発生部の前記両端の磁極部に対して異極となるように着磁された一対の磁極部により、前記主磁場を補正することを特徴とする請求項1に記載の位置センサ。
【請求項3】
前記磁場補正部は、前記磁極部の並びの方向において、前記主磁場発生部の着磁ピッチよりも狭く形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の位置センサ。
【請求項4】
前記磁石部材は、前記磁気センサ素子に対して前記磁極部の並びの方向に移動可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の位置センサ。
【請求項5】
前記磁気センサ素子の出力に対する信号処理が可能な算出ユニットを有しており、
前記磁石部材は、前記算出ユニットの信号処理によって前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁されることを特徴とする請求項1に記載の位置センサ。
【請求項6】
前記垂直方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値は、前記平行方向成分に応じた信号の振幅の正負それぞれの最大値を基準とした所定の範囲に収まっていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の位置センサ。
【請求項7】
前記磁石部材は、前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークにより着磁されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の位置センサ。
【請求項8】
前記磁石部材の前記主磁場発生部は、前記磁気センサ素子に対して相対的に移動可能な範囲に対応するように配されていることを特徴とする請求項4に記載の位置センサ。
【請求項9】
磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材において、
主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、
前記主磁場発生部による主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを備え、
前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように、着磁されていることを特徴とする磁石部材。
【請求項10】
磁気センサ素子に対向して配され、位置センサを構成するための磁石部材の製造方法において、
主磁場を形成するための、直線状に交互に異極となるように配された複数の磁極部を有する主磁場発生部と、前記主磁場を補正するための、前記主磁場発生部の両端の磁極部に対してそれぞれ異極となる一対の磁極部を有する磁場補正部とを、
前記主磁場発生部における隣接する異極間距離を着磁ピッチとしたとき、曲率半径が前記着磁ピッチの1/2以上1/1以下の凸面状の着磁面を有する着磁ヨークによって、
前記磁気センサ素子から出力される平行方向成分に応じた信号の周期と垂直方向成分に応じた信号の周期とが略一致するとともに、前記平行方向成分に応じた信号の振幅と前記垂直方向成分に応じた信号の振幅とが略一致するように着磁したことを特徴とする磁石部材の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−208112(P2012−208112A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−8310(P2012−8310)
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(000128359)株式会社エムジー (6)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月18日(2012.1.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(000128359)株式会社エムジー (6)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]