説明

位置姿勢計測方法及び装置

【課題】 傾斜角センサが装着された撮像装置または物体の位置と姿勢を、反復演算を行うことなく直接的に求める。
【解決手段】 物体または撮像装置に装着された傾斜角センサの傾斜角計測値を入力する傾斜角計測値入力工程と、前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力工程と、前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出工程と、前記傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記傾斜角センサが装着された物体または撮像装置の位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜角センサの計測値に基づき、撮像装置または物体の位置と姿勢を直接的に算出するものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合現実感(Mixed Reality;MR)技術の研究が盛んである。MR技術は、現実空間とコンピュータによって作られる仮想空間を継ぎ目なく融合する技術である。MR技術の中でも、現実空間に仮想空間を重ね合わせて表示するAugmented Reality(AR、拡張現実感、増強現実感とも呼ばれる)技術が特に注目を集めている。
【0003】
ARの画像表示装置は、ビデオカメラなどの撮像装置によって撮影された現実空間の画像に、該撮像装置の位置及び姿勢に応じて生成された仮想空間(コンピュータグラフィクスにより描画された仮想物体や文字情報)の画像を重畳描画した合成画像を表示するビデオシースルー方式か、あるいは観察者の頭部に装着された光学シースルー型ディスプレイに、観察者の視点の位置及び姿勢に応じて生成された仮想空間の画像を表示する光学シースルー方式によって実現される。
【0004】
AR技術は、患者の体表面に体内の様子を重畳表示する手術支援や、空き地に仮想のビルを重畳表示する建築シミュレーション、組立作業時に作業手順を重畳表示する組み立て支援など様々な分野への応用が期待される。
【0005】
AR技術において最も重要な課題の一つは、現実空間と仮想空間の間の位置合わせをいかに正確に行うかということであり、従来より多くの取り組みが行われてきた。ARにおける位置合わせの問題は、ビデオシースルー方式の場合はシーン中における(すなわちシーン中で規定された基準座標系における)撮像装置の位置及び姿勢を求める問題に帰結する。同様に、光学シースルー方式の場合は、シーン中における観察者の視点あるいはディスプレイの位置及び姿勢を求める問題となる。
【0006】
前者の問題を解決する方法として、シーン中に複数の指標を配置あるいは設定し、撮像装置が撮影した画像上での指標の投影像の位置を検出することで、シーン中における該撮像装置の位置及び姿勢を求めることが一般的に行われている。また、後者の問題を解決する方法として、計測対象物(すなわち観察者の頭部あるいはディスプレイ)に撮像装置を装着し、前者と同様な方法によって該撮像装置の位置及び姿勢を求め、それに基づいて計測対象物の位置及び姿勢を求めることが一般的に行われている。
【0007】
画像上の指標の投影像とその指標の三次元位置との対応をもとに撮像装置の位置及び姿勢を求める方法は、写真測量の分野において古くから提案されている(例えば、非特許文献1を参照)。また、前述の画像上の指標の投影像をもとに求めた撮像装置の位置及び姿勢を初期値とし、画像上での指標の投影像の実際の観察位置と、投影像の計算位置、すなわち指標の三次元位置と撮像装置の位置及び姿勢から計算される投影像の位置との誤差が最小になるように反復演算によって撮像装置の位置及び姿勢を最適化することが行われている(例えば、非特許文献2を参照)。
【0008】
一方、撮像装置によって撮影された画像だけを用いるのではなく、ジャイロセンサ(厳密には、3軸方向の角速度を計測するための複数のジャイロセンサと、3軸方向の加速度を計測するための複数の加速度センサの組合せによって構成される3軸姿勢センサであるが、本明細では便宜上これをジャイロセンサと呼ぶことにする)を撮像装置に装着し、画像情報とジャイロセンサの情報を併用して撮像装置の位置及び姿勢を求めることも行われている。
【0009】
特許文献1では、ジャイロセンサの出力する姿勢の計測値をそのまま撮像装置の姿勢として用い、該撮像装置の姿勢と画像上の指標の投影像及びその指標の三次元位置との対応をもとに撮像装置の位置を線形連立方程式を解くことによって求めている。また、非特許文献3では、ジャイロセンサの出力する姿勢の計測値のうち傾斜角成分をそのまま撮像装置の姿勢の傾斜角成分とし、前述した画像上での指標の投影像の観察位置と計算位置との誤差が最小化されるように、撮像装置の位置と姿勢の方位角成分を反復演算によって最適化することが行われている。
【非特許文献1】解析写真測量 改訂版,社団法人日本写真測量学会,1989.
【非特許文献2】加藤,M.Billinghurst,浅野,橘:“マーカー追跡に基づく拡張現実感システムとそのキャリブレーション”,日本バーチャルリアリティ学会論文誌,vol.4,no.4,pp.607−616,1999.
【非特許文献3】K.Satoh,S.Uchiyama,and H.Yamamoto:“A head tracking method using bird’s−eye view camera and gyroscope,”Proc.3rd IEEE/ACM Int’l Symp.on Mixed and Augmented Reality(ISMAR2004),pp.89−98,2004.
【特許文献1】特開2002−259992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した、撮像装置によって撮影された画像上での指標の投影像のみを利用した手法では、得られる撮像装置の位置及び姿勢が、指標の画像上での検出誤差や、画像の解像度が有限であることが原因となって、間違った位置及び姿勢が得られたり、ジッタを生じることがあった。
【0011】
また、ジャイロセンサにはドリフト誤差があるため、時間経過に伴って徐々に方位方向の計測値に誤差が生じてしまう。そのため、ジャイロセンサが出力する姿勢計測値をそのまま撮像装置の姿勢とした場合には、間違った撮像装置の位置が得られることがあった。
【0012】
さらに、反復演算によって撮像装置の位置及び姿勢、または撮像装置の位置及び姿勢の方位角成分を求める場合には初期値が必要である。前フレームの結果を初期値として用いる場合に、前フレームで撮像装置の位置及び姿勢が求められなければ(例えば、前フレームで指標が撮影されなかった場合)初期値を得ることができなかった。また、撮影画像だけから算出した撮像装置の位置及び姿勢を初期値として用いる場合には、前述のように初期値そのものが誤ったものになる可能性があるため、その後の反復演算でも最適化できないことがあった。
【0013】
本発明は以上の問題に鑑みてなされたものであり、本願請求項1記載の発明は、傾斜角センサが装着された撮像装置または物体の位置と姿勢を、反復演算を行うことなく直接的に求めることを目的とする。
【0014】
また、本願請求項2記載の発明は、傾斜角センサが装着された撮像装置と傾斜角が装着された物体との相対的な位置と姿勢を反復演算を行うことなく直接的に求めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的を達成するために、本発明における位置姿勢計測装置は次の構成を備える。
【0016】
本願請求項1記載の位置姿勢計測方法は、物体または撮像装置に装着された傾斜角センサの傾斜角計測値を入力する傾斜角計測値入力工程と、前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力工程と、前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出工程と、前記傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記傾斜角センサが装着された物体または撮像装置の位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出工程とを備えることを特徴とする。
【0017】
本願請求項2記載の位置姿勢計測方法は、物体に装着された第1傾斜角センサの第1傾斜角計測値を入力する第1傾斜角計測値入力工程と、撮像装置に装着された第2傾斜角センサの第2傾斜角計測値を入力する第2傾斜角計測値入力工程と、前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力工程と、前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出工程と、前記第1傾斜角計測値、前記第2傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記物体と前記撮像装置との相対的な位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1記載の発明によれば、傾斜角センサが装着された撮像装置または物体の位置と姿勢を、反復演算を行うことなく直接的に求めることができる。
【0019】
また、本願請求項2記載の発明は、傾斜角センサが装着された撮像装置と傾斜角が装着された物体との相対的な位置と姿勢を反復演算を行うことなく直接的に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0021】
[第1の実施形態]
本実施形態では、本発明の位置姿勢計測装置及びその方法を、ジャイロセンサを装着した撮像装置の位置及び姿勢の計測に適用した場合について説明する。なお、本実施形態におけるジャイロセンサとは、前述したように3軸方向の角速度を計測するための複数のジャイロセンサと、3軸方向の加速度を計測するための複数の加速度センサの組合せによって構成される3軸姿勢センサであり、傾斜角成分はある程度信頼できる計測値を出力するが、方位角成分はドリフト誤差を含んでいる。そのため、本実施形態はジャイロセンサにのみ適用されるものではなく、姿勢の傾斜角成分を計測可能な任意の傾斜角センサについて適用できるものである。
【0022】
図1は、本実施形態における位置姿勢計測装置の構成を示している。同図に示したように、本実施形態における位置姿勢計測装置100は、指標検出部110、姿勢入力部120、位置姿勢算出部130によって構成されており、撮像装置140に接続されている。また、ジャイロセンサ150は撮像装置140上に固定され、姿勢入力部120に接続されている。
【0023】
図2は、本実施形態における座標系の関係を示している。基準座標系には、位置が既知の指標が配置または設定されているものとする。本実施形態に係る位置姿勢計測装置は、基準座標系に対する撮像装置の位置及び姿勢を計測する。本実施形態では、基準座標系のy軸を鉛直上方向にとる。
【0024】
ジャイロセンサ150は、撮像装置の基準座標系に対する姿勢を出力する。基準座標系に対する撮像装置の姿勢を表す3×3回転変換行列をRwc、基準座標系に対する撮像装置の位置を表す3次元ベクトルをtwcと表す。Rwcは、基準座標系のz軸まわりの回転変換
【0025】
【数1】

【0026】
軸まわりの回転変換
【0027】
【数2】

【0028】
軸まわりの回転変換
【0029】
【数3】

【0030】
を順に組み合わせることで表現可能であり、(式1)のように表すことができる
【0031】
【数4】

【0032】
ここで、
【0033】
【数5】

【0034】
はRwcの傾斜角成分、
【0035】
【数6】

【0036】
はRwcの方位角成分であるため、
【0037】
【数7】

【0038】
とおくと、
(式1)は(式2)のように記述できる(ここでiはinclination(傾斜角)、aはazimuth(方位角)を表す)。
【0039】
【数8】

【0040】
よって、基準座標系から撮像装置の座標系(以下、撮像装置座標系)への座標変換は、
【0041】
【数9】

【0042】
及び撮像装置座標系における基準座標系の原点の位置tcwを用いて(式3)のように表せる。
【0043】
【数10】

【0044】
但し、x、xはそれぞれ基準座標系と撮像装置座標系における点の座標を表している。
【0045】
ここで、
【0046】
【数11】

【0047】
を(式4)のように表す。
【0048】
【数12】

【0049】
また、方位角をθとすると、
【0050】
【数13】

【0051】
は(式5)のように表される。
【0052】
【数14】

【0053】
基準座標系における位置がx=[xである指標が画像上に投影される位置(u,u)は、焦点距離をf、α=cosθ、β=sinθ、x=[x、tcw=[tとして(式6)のように表される。
【0054】
【数15】

【0055】
次に、撮像装置が撮影した画像上で検出される指標と、ジャイロセンサが出力する姿勢の傾斜角成分を用いて撮像装置の位置及び姿勢を算出する方法について説明する。図3は、本実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【0056】
まずステップS1010において、指標検出部110は撮像装置140から画像を入力し、姿勢入力部120は撮影時のジャイロセンサの計測値を入力する。姿勢入力部120はジャイロセンサの計測値Rwcを傾斜角成分
【0057】
【数16】

【0058】
と方位角成分
【0059】
【数17】

【0060】
に分解し、(式4)からr11,r12,r13,r21,r22,r23,r31,r32,r33を得て、位置姿勢算出部130へと出力する。次に、ステップS1020において、指標検出部110は撮影画像中から指標を検出して、位置姿勢算出部130へと出力する。ここでは、画像中で検出される指標の数をnとし、検出指標i(i=1,2,…,n)の画像上での検出位置を
【0061】
【数18】

【0062】
とする。
【0063】
次に、ステップS1030において、位置姿勢算出部130は、すべての検出した指標が同一水平面上(本実施形態における水平面はy=定数で表される)にあるかどうかを判定する。同一水平面上にあるかどうかの判定は例えば次のように行う。検出指標i(i=1,2,…,n)の基準座標系における位置を
【0064】
【数19】

【0065】
として、(式7)より検出指標のy座標の分散σを求める。
【0066】
【数20】

【0067】
但し、
【0068】
【数21】

【0069】
は指標のy座標の平均値であり、(式8)から求められる。
【0070】
【数22】

【0071】
この分散σが一定値以下であればすべての検出された指標が同一水平面上にあると判定する。ステップS1030において、検出指標が同一水平面上にあると判定された場合には、ステップS1050に進み、同一水平面上にないと判定された場合にはステップS1040に進む。
【0072】
ステップS1040においては、位置姿勢算出部130は検出指標の数が3個以上であるか否かの判定を行う。ステップS1040において検出指標の数が3個以上であればステップS1060に進み、3個未満であれば終了する。また、ステップS1050においては、検出指標の数が2個以上であるか否かの判定を行う。ステップS1050において検出指標の数が2個以上であればステップS1070に進み、2個未満であれば終了する。
【0073】
ステップS1060では、位置姿勢算出部130は手法(1A)を用いて撮像装置の位置姿勢を算出し、これを出力する。ここで手法(1A)について説明する。
【0074】
(式6)の分母を払い、
【0075】
【数23】

【0076】
とおくことによって、(式9)に示すα、β、t、t、tについての線形方程式が得られる。
【0077】
【数24】

【0078】
入力した夫々の(n点の)指標について、
【0079】
【数25】

【0080】
とおいて、各指標について(式9)の線形方程式を立てると、(式10)に示す連立方程式が得られる。
【0081】
【数26】

【0082】
(式10)を解くことによって、α、β、t、t、tを得る。この連立方程式において、未知数の数は5個であるため、最低3個の検出指標が必要となる。(式10)を(式11)に示すように簡略化して表す。
A・x=b (式11)
ここでx=[αβtである。また、Aは行数(2×n)、列数5の行列となり、bは(2×n)次元ベクトルとなる。最小二乗法によってxを(式12)のように求める。
x=(A・A)−1・A・b (式12)
なお、(式12)では、Aの一般化逆行列を(A・A)−1としているが,他の一般化逆行列を用いても本発明の本質が失われることがないのは言うまでもない。さらに、(式12)より得られたα、βより、(式13)によって方位角θを算出する。
【0083】
【数27】

【0084】
得られたθと、センサ計測値の傾斜角成分
【0085】
【数28】

【0086】
をもとに、基準座標系に対する撮像装置の姿勢Rwcを(式14)によって算出する。
【0087】
【数29】

【0088】
また、基準座標系における撮像装置の位置twcを、(式15)によって算出する。
wc=−Rwc・tcw (式15)
以上述べた方法で、ステップS1060において撮像装置の位置姿勢を算出し、これを出力する。
【0089】
ステップS1070では、位置姿勢算出部130は手法(1B)を用いて撮像装置の位置姿勢を算出し、これを出力する。ここで手法(1B)について説明する。
【0090】
指標の基準座標系におけるy座標をyavgとする。(式6)においてy=0として、
【0091】
【数30】

【0092】
とおいて分母を払い、さらに
【0093】
【数31】

【0094】
とおくと(式16)が得られる。
【0095】
【数32】

【0096】
入力した夫々の(n点の)指標について同様に
【0097】
【数33】

【0098】
とおいて、各指標について(式16)の線形方程式を立てると、(式17)に示す連立方程式が得られる。
【0099】
【数34】

【0100】
(式17)を(式12)に示した方法と同じように解くことによって、α’、β’、t’、t’を得る。この連立方程式において、未知数の数は4個であるため、最低2個の検出指標が必要となる。
【0101】
(式17)を解くことによって得られたα’、β’より、方位角θを(式18)を用いて算出する。
【0102】
【数35】

【0103】
得られたθと、センサ計測値の傾斜角成分
【0104】
【数36】

【0105】
をもとに、基準座標系に対する撮像装置の姿勢Rwcを(式14)によって算出する。また、tcw=[tを(式19)から求める。
【0106】
【数37】

【0107】
また、基準座標系における撮像装置の位置twcは、(式20)によって算出する。
【0108】
【数38】

【0109】
以上述べた方法で、ステップS1070において撮像装置の位置姿勢を算出し、これを出力する。
【0110】
以上述べたように、本実施形態では、撮像装置にジャイロセンサを装着した場合に、撮像装置の位置姿勢をセンサ計測値の傾斜角成分と画像情報から反復演算を必要としない方法で直接的に算出することができる。
【0111】
撮像装置にジャイロセンサを装着し、撮像装置によって撮影された画像とジャイロセンサの姿勢計測値のうち傾斜角成分だけを用いて、反復演算を行うことなく(言い換えれば、初期値を用いることなく)直接的に撮像装置の位置及び姿勢を求めることができる。したがって、反復演算を使用した場合に生じていた初期値に起因する位置姿勢算出精度の低下を防ぐことができる。つまり、撮影画像に指標が撮影されている場合は、高精度な位置姿勢を算出することができる。実施形態では、1台のカメラの画像情報を利用する場合の位置姿勢計測方法について述べた。ある種のARアプリケーションでは、ステレオ表示が有効であるため、ステレオカメラをHMD(Head Mounted Display)に搭載している場合がある。このようなHMDに姿勢センサが装着されている場合、ステレオペアのカメラに対して1つの傾斜角センサが装着されていると考えると、1台の場合と同様にそれぞれのカメラの傾斜角が一意に定まる。そのため、本実施形態で説明した位置姿勢計測方法において、ステレオカメラのそれぞれのカメラから得られる指標を利用するようにしてもよい。また、カメラ間の相対位置姿勢がわかっていれば、カメラは2台に限られることはなく、任意の台数のカメラを利用することもできる。
【0112】
[第2の実施形態]
第1の実施形態では、撮像装置にジャイロセンサを装着して、撮像装置の位置姿勢を求めた。第2の実施形態では、位置姿勢計測装置及びその方法を、基準座標系に固定された撮像装置によって撮影される移動物体の位置及び姿勢の計測に適用した場合について説明する。
【0113】
図4は、第2の実施形態における位置姿勢計測装置の構成を示している。同図に示したように、第2の実施形態における位置姿勢計測装置200は、指標検出部210、姿勢入力部220、位置姿勢算出部230によって構成されている。基準座標系に固定された撮像装置240は指標検出部210に接続されている。また移動物体260上に装着されたジャイロセンサ250は姿勢入力部220に接続されている。第2の実施形態では、撮像装置240によって撮影された画像中で検出される移動物体上の指標と、移動物体上に装着されたジャイロセンサの計測値の傾斜角成分を使って、基準座標系に対する移動物体の位置姿勢を計測する。
【0114】
図5は、第2の実施形態における座標系の関係を示す図である。移動物体上には、移動物体座標系での位置が既知の指標が配置又は設置されているものとする。撮像装置は基準座標系に固定されており、撮像装置の基準座標系における位置を表す3次元ベクトルtwc、姿勢を表す3×3回転行列Rwcは既知とする。第2の実施形態では、基準座標系に対する移動物体の姿勢Rwo及び位置twoを求める。
【0115】
基準座標系に対する移動物体の姿勢を表す3×3回転行列Rwoは、(式21)に示すように傾斜角成分
【0116】
【数39】

【0117】
と方位角成分
【0118】
【数40】

【0119】
に分解される。
【0120】
【数41】

【0121】
移動物体座標系xから撮像装置座標系xへの座標変換は、
【0122】
【数42】

【0123】
及び撮像装置座標系における移動物体の位置tcoを用いて(式22)のように表せる。
【0124】
【数43】

【0125】
ここで、
【0126】
【数44】

【0127】
を(式23)のように表す。
【0128】
【数45】

【0129】
また、方位角をθとすると、
【0130】
【数46】

【0131】
は(式24)のように表される。
【0132】
【数47】

【0133】
【数48】

【0134】
とおいた場合に、移動物体座標がx=[xの指標が画像上に投影される位置(u,u)は、焦点距離をf、α=cosθ、β=sinθ、x=[x、tco=[toxoyozとして(式25)のように表される。
【0135】
【数49】

【0136】
次に、撮像装置が撮影した画像上で検出される指標と、ジャイロセンサが出力する姿勢の傾斜角成分を用いて移動物体の位置及び姿勢を算出する方法について説明する。図6は、第2の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【0137】
まずステップS2010において、指標検出部210は撮像装置240から画像を入力する。姿勢入力部220は、撮影時の移動物体上のジャイロセンサの計測値Rwoを入力し、傾斜角成分
【0138】
【数50】

【0139】
と方位角成分
【0140】
【数51】

【0141】
に分解し、(式23)から既知の値であるR11,R12,R13,R21,R22,R23,R31,R32,R33を得て、位置姿勢算出部230へと出力する。次に、ステップS2020において、指標検出部210は撮影画像中から移動物体上の指標を検出して、位置姿勢算出部230へ出力する。ここでは、画像中で検出される指標の数をnとし、検出指標i(i=1,2,…,n)の画像上での検出位置を
【0142】
【数52】

【0143】
とする。次に、ステップS2030において、位置姿勢算出部230は、すべての検出した指標が同一水平面上にあるかどうかを判定する。同一水平面上にあるかどうかの判定は例えば次のように行う。検出指標i(i=1,2,…,n)の移動物体座標系での位置を
【0144】
【数53】

【0145】
として、(式26)より検出指標のy座標の分散σを求める。
【0146】
【数54】

【0147】
但し、
【0148】
【数55】

【0149】
は指標のy座標の平均値であり、(式27)から求められる。
【0150】
【数56】

【0151】
この分散σが一定値以下であればすべての検出された指標が同一水平面上にあると判定する。ステップS2030において、検出指標が同一水平面上にあると判定された場合には、ステップS2050に進み、同一水平面上にないと判定された場合にはステップS2040に進む。ステップS2040においては、位置姿勢算出部230は検出指標の数が3個以上であるか否かの判定を行う。ステップS2040において検出指標の数が3個以上であればステップS2060に進み、3個未満であれば終了する。また、ステップS2050においては、検出指標の数が2個以上であるか否かの判定を行う。ステップS2050において検出指標の数が2個以上であればステップS2070に進み、2個未満であれば終了する。
【0152】
ステップS2060では、位置姿勢算出部230は手法(2A)を用いて移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。ここで手法(2A)について説明する。(式25)の分母を払い、
【0153】
【数57】

【0154】
とおいて得られるα、β、tox、toy、tozについての線形方程式を検出された各指標について立てることにより、(式28)に示す連立方程式が得られる。
【0155】
【数58】

【0156】
(式28)を解くことにより、α、β、tox、toy、tozを得る。この連立方程式において、未知数の数は5個であるため、最低3個の検出指標が必要となる。α、βより、(式13)を用いて方位角θを算出する。得られたθと、センサ計測値の傾斜角成分
【0157】
【数59】

【0158】
をもとに、基準座標系に対する移動物体の姿勢Rwoを(式29)によって算出する。
【0159】
【数60】

【0160】
また移動物体の基準座標系における位置twoを(式30)によって算出する。
wo=Rwc・tco+twc (式30)
以上述べた方法で、ステップS2060において移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。
【0161】
ステップS2070では、位置姿勢算出部230は手法(2B)を用いて移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。ここで手法(2B)について説明する。
【0162】
指標の基準座標系におけるy座標をyavgとする。(式25)において
【0163】
【数61】

【0164】
として、
【0165】
【数62】

【0166】
とおいて分母を払い、
【0167】
【数63】

【0168】
とおいて得られるα’、β’、t’ox、t’oyについての線形方程式を検出された各指標について立てることにより、(式31)に示す連立方程式が得られる。
【0169】
【数64】

【0170】
この連立方程式において、未知数の数は4個であるため、最低2個の検出指標が必要となる。(式31)を解くことによって得られたα’、β’から、方位角θを(式18)によって算出する。得られたθと、センサ計測値の傾斜角成分
【0171】
【数65】

【0172】
をもとに、基準座標系に対する移動物体の姿勢Rwoを(式29)によって算出する。また、tco=[toxoyozを(式32)によって算出する。
【0173】
【数66】

【0174】
さらに移動物体の基準座標系における位置twoを(式33)によって算出する。
【0175】
【数67】

【0176】
以上述べた方法で、ステップS2070において移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。
【0177】
以上述べたように、本実施形態によれば、移動物体にジャイロセンサを装着した場合に、移動物体の位置姿勢をセンサ計測値の傾斜角成分と基準座標系に固定された撮像装置の画像情報から反復演算を必要としない方法で直接的に算出することができる。
【0178】
本実施形態によれば、移動物体にジャイロセンサを装着し、シーンに固定した撮像装置によって撮影された移動物体の画像とジャイロセンサの姿勢計測値のうち傾斜角成分だけを用いて、反復演算を行うことなく(言い換えれば、初期値を用いることなく)直接的に移動物体の位置及び姿勢を求めることができる。したがって、反復演算を使用した場合に生じていた初期値に起因する位置姿勢算出精度の低下を防ぐことができる。つまり、撮影画像に指標が撮影されている場合は、高精度な位置姿勢を算出することができる。
【0179】
本実施形態では、1台のカメラの画像情報を利用する場合の位置姿勢計測方法について述べた。本実施形態でのカメラは基準座標系での位置姿勢が既知な客観視点カメラである。客観視点カメラの基準座標系における位置をtwc(=[xwcwcwc)、姿勢を表す3×3回転行列をRwcとすると、移動物体座標系xから撮像装置座標系xへの座標変換は、移動物体の基準座標系における位置two(=[xwowowo)を用いて、(式34)で表せる。
【0180】
【数68】

【0181】
【数69】

【0182】
、(式23)、(式24)、(式34)より点
【0183】
【数70】

【0184】
が画像上に投影される位置(u,u)は(式35)のように表される。
【0185】
【数71】

【0186】
式(35)は、twoとα、βを未知パラメータとして、画像上で検出される各指標について成り立つ観測方程式である。この観測方程式を複数のカメラが撮影する画像上の指標について立てることにより、本実施形態で述べたのと同様な方法で、twoとα、βを求めることができる。すなわち、本実施形態は1台のカメラに限定されるものではなく、基準座標系における位置姿勢が既知な複数のカメラの画像情報を利用することができる。
【0187】
[第3の実施形態]
第2の実施形態では、撮像装置を基準座標系に固定し、移動物体にジャイロセンサを装着したが、第3の実施形態では、位置姿勢計測装置及びその方法を、撮像装置、移動物体の両方にジャイロセンサを装着した場合の撮像装置に対する移動物体の位置及び姿勢の計測に用いた場合について説明する。
【0188】
図7は、第3の実施形態における位置姿勢計測装置の構成を示している。同図に示したように、第3の実施形態における位置姿勢計測装置300は、指標検出部310、姿勢入力部320、位置姿勢算出部330によって構成されている。撮像装置340は指標検出部310に接続されている。また、移動物体360にはジャイロセンサ355が、撮像装置340にはジャイロセンサ350が装着されており、ジャイロセンサ350、355は姿勢入力部320に接続されている。第3の実施形態では、撮像装置340によって撮影された画像中で検出される移動物体の指標と、移動物体及び撮像装置に装着された夫々のジャイロセンサの計測値の傾斜角成分を使って、撮像装置に対する移動物体の位置姿勢を求める。図8は第3の実施形態における座標系の関係を表す図である。第3の実施形態では、撮像装置座標系に対する移動物体の姿勢Rco及び位置tcoを求める。基準座標系における移動物体の姿勢を表す3×3回転行列をRwo、撮像装置の姿勢を表す3×3回転行列をRwcとする。Rwoは(式36)に示すように、傾斜角成分
【0189】
【数72】

【0190】
と方位角成分
【0191】
【数73】

【0192】
に分解される。
【0193】
【数74】

【0194】
またRwcは(式37)に示すように、傾斜角成分
【0195】
【数75】

【0196】
と方位角成分
【0197】
【数76】

【0198】
に分解される。
【0199】
【数77】

【0200】
移動物体座標系xから撮像装置座標系xへの変換は、
【0201】
【数78】

【0202】
及び撮像装置座標系における移動物体の位置tcoを用いて(式38)のように表せる。
【0203】
【数79】

【0204】
【数80】

【0205】
は方位角を表しているので、
【0206】
【数81】

【0207】
としてまとめる。
【0208】
ここで、
【0209】
【数82】

【0210】
、Rをそれぞれ(式39)、(式40)のように表す。θは方位角である。
【0211】
【数83】

【0212】
【数84】

【0213】
【数85】

【0214】
とおいた場合に、移動物体座標がx=[xの指標が画像上に投影される位置(u,u)は、焦点距離をf、α=cosθ、β=sinθ、x=[x、tco=[toxoyozとして(式41)のように表される。
【0215】
【数86】

【0216】
次に、撮像装置が撮影した画像上で検出される指標と、ジャイロセンサが出力する姿勢の傾斜角成分を用いて、撮像装置に対する移動物体の位置姿勢を算出する方法について説明する。図9は、第3の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【0217】
まずステップS3010において、指標検出部310は、撮像装置から画像を入力する。また、姿勢入力部320は、撮影と同時に移動物体に装着されたジャイロセンサの計測値Rwo及び撮像装置に装着されたジャイロセンサの計測値Rwcを入力し、それぞれ公知の手法を使って傾斜角成分
【0218】
【数87】

【0219】
と方位角成分
【0220】
【数88】

【0221】
に分解する。また、(式39)から既知であるr11,r12,r13,r21,r22,r23,r31,r32,r33を得て、位置姿勢算出部330に出力する。次に、ステップS3020において、指標検出部310は、撮影画像中から移動物体上の指標を検出して位置姿勢算出部330に出力する。ここでは、画像中で検出される指標の数をnとし、検出指標i(i=1,2,…,n)の画像上での検出位置を
【0222】
【数89】

【0223】
とする。次に、ステップS3030において、位置姿勢算出部330は、すべての検出した指標が同一水平面上にあるかどうかを判定する。同一水平面上にあるかどうかの判定は例えば次のように行う。検出指標i(i=1,2,…,n)の移動物体座標系での位置を
【0224】
【数90】

【0225】
として、(式42)より検出指標のy座標の分散σを求める。
【0226】
【数91】

【0227】
但し、
【0228】
【数92】

【0229】
は指標のy座標の平均値であり、(式43)から求められる。
【0230】
【数93】

【0231】
この分散σが一定値以下であればすべての検出された指標が同一水平面上にあると判定する。ステップS3030において、検出指標が同一水平面上にあると判定された場合には、ステップS3050に進み、同一水平面上にないと判定された場合にはステップS3040に進む。
【0232】
ステップS3040においては、位置姿勢算出部330は、検出指標の数が3個以上であるか否かの判定を行う。ステップS3040において検出指標の数が3個以上であればステップS3060に進み、3個未満であれば終了する。また、ステップS3050においては、検出指標の数が2個以上であるか否かの判定を行う。ステップS3050において検出指標の数が2個以上であればステップS3070に進み、2個未満であれば終了する。
【0233】
ステップS3060では、位置姿勢算出部330は、手法(3A)を用いて撮像装置に対する移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。ここで手法(3A)について説明する。(式41)の分母を払い、
【0234】
【数94】

【0235】
とおいて得られるα、β、tox、toy、tozについての線形方程式を検出された各指標について立てることにより、(式44)に示す連立方程式が得られる。
【0236】
【数95】

【0237】
(式44)を解くことにより、α、β、tox、toy、tozを得る。この連立方程式において、未知数の数は5個であるため、最低3個の検出指標が必要となる。α、βより、(式13)を用いて方位角θを算出する。移動物体の撮像装置に対する姿勢Rcoは(式45)によって算出する。
【0238】
【数96】

【0239】
以上述べた方法で、ステップS3060において撮像装置に対する移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。
【0240】
ステップS3070では、位置姿勢算出部330は、手法(3B)を用いて撮像装置に対する移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。ここで手法(3B)について説明する。
【0241】
指標の基準座標系におけるy座標をyavgとする。(式41)において
【0242】
【数97】

【0243】
として、
【0244】
【数98】

【0245】
とおいて分母を払い、
【0246】
【数99】

【0247】
とおいて得られるα’、β’、t’ox、t’oyについての線形方程式を検出された各指標について立てることにより、(式46)に示す連立方程式が得られる。
【0248】
【数100】

【0249】
この連立方程式において、未知数の数は4個であるため、最低2個の検出指標が必要となる。(式46)を解くことによって得られたα’、β’より、方位角θは(式18)によって算出する。移動物体の撮像装置に対する姿勢Rcoは(式45)によって算出する。また、tco=[toxoyozは(式32)から算出する。
【0250】
以上述べた方法で、ステップS3070において撮像装置に対する移動物体の位置姿勢を算出し、これを出力する。
【0251】
以上述べたように、本実施形態では、移動物体と撮像装置にジャイロセンサを装着した場合に、撮像装置に対する移動物体の位置姿勢(すなわち、撮像装置と移動物体の相対的な位置と姿勢)をセンサ計測値の傾斜角成分と撮像装置の画像情報から反復演算を必要としないで直接的に算出することができる。
【0252】
本実施形態によれば、撮像装置と移動物体の両方にジャイロセンサを装着し、撮像装置によって撮影された移動物体の画像とジャイロセンサの姿勢計測値のうち傾斜角成分だけを用いて、反復演算を行うことなく(言い換えれば、初期値を用いることなく)直接的に撮像物体と移動物体の相対的な位置及び姿勢を求めることができる。したがって、反復演算を使用した場合に生じていた初期値に起因する位置姿勢算出精度の低下を防ぐことができる。つまり、撮影画像に指標が撮影されている場合は、高精度な位置姿勢を算出することができる。
【0253】
[変形例1]
以上述べた実施形態では、ジャイロセンサを姿勢センサとして用いていたが、これに限るものではなく、姿勢の傾斜角成分を計測可能なセンサであればどのような傾斜角センサを用いてもよい。また、傾斜角は鉛直軸に対する傾斜角に限定されるものではなく、任意の軸に対する傾斜角であって、傾斜角センサは該軸に対する傾斜角を計測するものであればどのような傾斜角センサを用いてもよい。
【0254】
[変形例2]
以上述べた実施形態では、画像上での指標の画像座標とその三次元位置及び姿勢センサから得られる姿勢の傾斜角成分をもとに、反復演算をしないで撮像装置の位置姿勢(第1の実施形態)、移動物体の位置姿勢(第2の実施形態)、撮像装置と物体との相対位置姿勢(第3の実施形態)を求めた。このようにして得られる位置姿勢を初期値として、別の手段によって位置姿勢を最適化してもよい。例えば、非特許文献2の手法を用いて、指標の画像座標とその三次元位置に基づき、6自由度の位置姿勢すべてを最適化してもよいし、非特許文献3の手法を用いて、指標の画像座標とその三次元位置および姿勢センサの計測値に基づき位置と姿勢の方位角成分を最適化してもよい。その際に反復演算を行うことがあっても、構わない。上記実施形態1〜3の方法により、例えば反復演算を用いる最適化の初期値にすることにより、初期値が不適切である(例えば前フレームで位置姿勢を求めることができない時)ことによる位置姿勢算出精度の低下を抑制することができる。
【0255】
[変形例3]
以上述べた実施形態では、行列演算によって撮像装置と物体との相対位置姿勢を求めていたが、上記実施形態の本質は連立方程式を反復演算なしに直接的に解くことにあり、必ずしも行列演算によって求める必要がないのは言うまでもない。
【0256】
[変形例4]
また、以上述べた実施形態では、(式10)に表されるように、すべての検出指標の信頼度を同じ信頼度とみなして連立方程式を解いているが、検出指標ごとに信頼度を変えて、重みを付与して連立方程式を解いてもよい。
【0257】
[変形例5]
さらに、以上述べた実施形態では、指標が同一水平面上にあるかどうかを判定して計算手法を切り替えていたが、指標が同一水平面上にあるかどうかが予め分かっている場合には、その判定ステップを省略して直接(式10)または(式17)(もしくは(式28)または(式31)、(式44)または(式46))を解いてもよい。
【0258】
(他の実施形態)
前述した実施の形態の機能を実現する様に各種のデバイスを動作させる様に該各種デバイスと接続された装置あるいはシステム内のコンピュータに、前記実施の形態の機能を実現するためのソフトウエアのプログラムコードを供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUあるいはMPU)を格納されたプログラムに従って前記各種デバイスを動作させることによって実施したものも本発明の範疇に含まれる。
【0259】
この場合、前記ソフトウエアのプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード自体、及びそのプログラムコードをコンピュータに供給するための手段、例えばかかるプログラムコードを格納した記憶媒体は本発明を構成する。
【0260】
かかるプログラムコードを格納する記憶媒体としては例えばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることが出来る。
【0261】
またコンピュータが供給されたプログラムコードを実行することにより、前述の実施形態の機能が実現されるだけではなく、そのプログラムコードがコンピュータにおいて稼働しているOS(オペレーティングシステム)、あるいは他のアプリケーションソフト等と共同して前述の実施形態の機能が実現される場合にもかかるプログラムコードは本発明の実施形態に含まれることは言うまでもない。
【0262】
更に供給されたプログラムコードが、コンピュータの機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに格納された後そのプログラムコードの指示に基づいてその機能拡張ボードや機能格納ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も本発明に含まれることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0263】
【図1】第一の実施形態の構成を示す図である。
【図2】第一の実施形態における座標系の関係を示す図である。
【図3】第一の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】第二の実施形態の構成を示す図である。
【図5】第二の実施形態における座標系の関係を示す図である。
【図6】第二の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第三の実施形態の構成を示す図である。
【図8】第三の実施形態における座標系の関係を示す図である。
【図9】第三の実施形態の処理手順を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体または撮像装置に装着された傾斜角センサの傾斜角計測値を入力する傾斜角計測値入力工程と、
前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力工程と、
前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出工程と、
前記傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記傾斜角センサが装着された物体または撮像装置の位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出工程とを備えることを特徴とする位置姿勢計測方法。
【請求項2】
物体に装着された第1傾斜角センサの第1傾斜角計測値を入力する第1傾斜角計測値入力工程と、
撮像装置に装着された第2傾斜角センサの第2傾斜角計測値を入力する第2傾斜角計測値入力工程と、
前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力工程と、
前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出工程と、
前記第1傾斜角計測値、前記第2傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記物体と前記撮像装置との相対的な位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出工程とを備えることを特徴とする位置姿勢計測方法。
【請求項3】
前記位置姿勢算出工程は、複数の位置姿勢算出手法を有し、前記複数の位置姿勢算出方法から前記検出された指標に応じた位置姿勢算出方法を選択することを特徴とする請求項1または2記載の位置姿勢計測方法。
【請求項4】
3個以上の検出された指標に基づき、前記位置と姿勢を算出することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の位置姿勢計測方法。
【請求項5】
前記指標検出工程によって検出された指標が所定の軸に垂直な平面上にあることを制約条件として用いて、前記位置と姿勢を算出することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の位置姿勢計測方法。
【請求項6】
前記検出された各指標に対して線形方程式を立てることにより得られる連立方程式を解くことにより、前記位置と姿勢を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の位置姿勢計測方法。
【請求項7】
前記算出された位置と姿勢を初期値として、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、前記位置と姿勢を最適化することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の位置姿勢計測方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の位置姿勢計測方法をコンピュータにて実現するためのプログラム。
【請求項9】
物体または撮像装置に装着された傾斜角センサの傾斜角計測値を入力する傾斜角計測値入力手段と、
前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力手段と、
前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出手段と、
前記傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記傾斜角センサが装着された物体または撮像装置の位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出手段とを備えることを特徴とする位置姿勢計測装置。
【請求項10】
物体に装着された第1傾斜角センサの第1傾斜角計測値を入力する第1傾斜角計測値入力手段と、
撮像装置に装着された第2傾斜角センサの第2傾斜角計測値を入力する第2傾斜角計測値入力手段と、
前記撮像装置から撮影画像を入力する画像入力手段と、
前記撮影画像から前記物体上の指標を検出する指標検出手段と、
前記第1傾斜角計測値、前記第2傾斜角計測値、前記検出された指標の画像座標および前記検出された指標の既知の位置情報に基づき、反復演算をせずに、前記物体と前記撮像装置との相対的な位置と姿勢を直接的に算出する位置姿勢算出手段とを備えることを特徴とする位置姿勢計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−292417(P2006−292417A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109834(P2005−109834)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】