説明

位置情報検出システム及び位置情報検出方法

【課題】広い競技フィールド上におけるスポーツシーンにおいて、ボールや選手等、複数の移動物の識別と位置関係を検出する際における、検出処理動作の効率化を図る。
【解決手段】
第1及び第2の対象物から当該第1及び第2の対象物に固有の対象物識別子信号を発信し、第1の対象物と第2の対象物との間の距離に関する情報、及び相手側の対象物識別子信号を相対位置情報として第1又は第2の対象物から発信し、領域内に多数配置された座標位置受信部により第1又は第2の対象物識別子信号を受信するとともに、相対位置受信部により相対位置情報を受信し、第1及び第2の対象物識別子信号と、相対位置情報とを取得し、当該第1又は第2の対象物識別子信号を受信した座標位置受信部を特定し、第1又は第2の対象物の位置を判定するとともに、相対位置情報に基づいて他方の第2又は第1の対象物の位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サッカーや野球等の広い競技フィールド上におけるスポーツシーンにおいて、ボールや選手等の移動物の識別と位置関係を検出する位置情報検出システム及び位置情報検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サッカーや野球等の広い競技フィールド上におけるスポーツシーンにおいて、ボールや選手等の移動物の識別と位置関係を検出し、ゲーム進行の記録や判定するシステムが提案されている。
【0003】
このようなシステムとしては、例えば特許文献1に開示された技術があり、この技術では、選手やボール等の対象物にIDデータを発信するタグを取り付けるとともに、グランド(競技フィールド)内にIDデータを受信し認識するリーダーライターを多数配列して埋設しておき、これらのリーダーライターによりIDデータを検出し、IDデータを収集することによって、各選手やボールの位置を判定する。
【0004】
具体的には、図8に示すように、グランドに予め位置(座標)が既知のリーダーライターR11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44を配置し、これらのリーダーライターから順次、受信信号を収集し、いずれかのリーダーライターが特定のIDデータを検出したときに、そのIDデータが付与された対象物がそのIDデータを検出したリーダーライターの座標位置に存在していたとして、位置識情報判定装置において対象物の位置を判定している。
【0005】
そして、この従来の位置情報検出システムでは、位置検出を行う対象物が複数ある場合には、それぞれの対象物について上記の検出処理を行っている。例えば、同図に示すように、サッカー競技における競技者51とボール6の位置検出を行う場合、リーダーライターを順次駆動させて受信信号を収集し、対象物である競技者51及びボール6のそれぞれについてID(ID=B51,ID=A)を読み取り、位置情報判定装置1において、競技者51はリーダーライターR23が配置された座標上に存在し、ボール6はリーダーライターR33が配置された座標上存在すると判定する。このようにして、R23とR33の位置、及び位置関係から競技者51及びボール6が近接していることを検知することができる。
【特許文献1】特開平7−56990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来の位置情報検出システムでは、2つの対象物の位置関係を認識するためには、2つの対象物とも位置情報の検出をする必要があった。すなわち、スポーツの種類によっては、フィールド全体の検索を行わずに、競技進行の中心となるボールや、ゲーム審判の判定上重要となるベースといった対象物の周辺の位置関係を重点的に検出する必要がある場合があった。
【0007】
しかしながら、従来のシステムでは、2つの対象物の位置関係を把握するために、フィールド全体の走査を実行しているため、巨大なインフラ設備が必要となり、その運用コストが増大するという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題を解決すべくなされたものであり、広い競技フィールド上におけるスポーツシーンにおいて、ボールや選手等の移動物の識別と位置関係を検出する際に、検出処理の効率化を図ることのできる位置情報検出システム及び位置情報検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、所定領域内に存在する第1の対象物及び第2の対象物の位置を検出するために、第1の対象物に備えられ当該第1の対象物に固有の第1の対象物識別子信号を発信する第1の発信部と、第2の対象物に備えられ当該第2の対象物に固有の第2の対象物識別子信号を発信する第2の発信部と、第1又は第2の対象物に備えられ第1の対象物と第2の対象物との間の距離に関する情報、及び相手側の対象物識別子信号を相対位置情報として発信する相対位置発信部と、領域内に多数配置され第1又は第2の対象物識別子信号を受信する座標位置受信部と、相対位置情報を受信する相対位置受信部と、第1及び第2の対象物識別子信号と相対位置情報とを取得して当該第1又は第2の対象物識別子信号を受信した座標位置受信部を特定し、第1又は第2の対象物の位置を判定するとともに、相対位置情報に基づいて他方の第2又は第1の対象物の位置を判定する位置情報判定部とを備える。
【0010】
このような本発明では、第1の対象物から当該第1の対象物に固有の第1の対象物識別子信号を発信するとともに、第2の対象物から当該第2の対象物に固有の第2の対象物識別子信号を発信し、第1の対象物と第2の対象物との間の距離に関する情報、及び相手側の対象物識別子信号を相対位置情報として第1又は第2の対象物から発信し、領域内に多数配置された座標位置受信部により第1又は第2の対象物識別子信号を受信するとともに、相対位置受信部により相対位置情報を受信し、第1及び第2の対象物識別子信号と、相対位置情報とを取得し、当該第1又は第2の対象物識別子信号を受信した座標位置受信部を特定し、第1又は第2の対象物の位置を判定するとともに、相対位置情報に基づいて他方の第2又は第1の対象物の位置を判定する。
【0011】
ここで本発明における「第1の対象物と第2の対象物との間の距離に関する情報」は、センチやメートルなどの具体的な距離情報に限定されず、例えば電波の受信強度や、受信エリア内に他の対象物が存在するか否かの情報とすることができる。
【0012】
このような本発明によれば、第1及び第2の対象物のうちいずれか一方の対象物の座標位置を座標位置受信部により特定し、この特定した一方の対象物の座標位置を基準とし、相対位置情報を用いて他方の対象物の位置を判定することができることから、第1及び第2の対象物のそれぞれに対する位置検出を行う必要がなく、システム全体の動作速度を向上させることができる。
【0013】
上記発明において、相対位置受信部は座標位置受信部に備えられていることが好ましい。この場合には、領域内における座標位置を取得する処理と併せて相対位置情報を取得することが可能であり、情報取得処理の高速化を図ることができる。
【0014】
上記発明において、相対位置受信部は座標位置受信部とは別個独立に設けられていることが好ましい。この場合には、多数配置された座標位置受信部とは別途の信号経路により相対位置情報を取得することができ、多数の座標位置受信部の動作処理の影響を受けることなく、相対位置情報を取得することができる。また、相対位置情報を別途独立の信号経路により取得し、この相対位置情報に基づいて座標位置受信部の動作処理を制御することが可能となり、座標位置受信部の動作頻度を調整することによって、システム全体の動作速度をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、サッカーや野球等の広い競技フィールド上におけるスポーツシーンにおいて、ボールや選手等の複数の移動物の識別と位置関係を検出する際に、多数の受信部を用いることなく競技者とボールのそれぞれについての位置検出を行うことができ、位置検出処理を省力化することが可能となり、検出処理動作の効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[第1実施形態]
(位置情報検出システムの構成)
本発明の第1実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明をサッカー競技に適用した場合を例として説明する。図1(a)は、本実施形態に係るサッカー競技フィールドを示す斜視図であり、同図(b)は、サッカー競技フィールド上に存在する競技者及びボールを示す説明図である。また、図2(a)は、サッカー競技フィールドに設けられた位置情報検出システムの構成を示すブロック図であり、同図(b)は、本システムによる検出結果を示す説明図である。
【0017】
図1(a)に示すように、本実施形態では、所定領域であるサッカー競技フィールド4内に存在する競技者51〜53及びボール6を位置検出の対象物とし、これら対象物の位置を検出する。同図(b)に示すように、競技者51〜53が着用しているシューズには、第1の発信部であるRFIDタグ51a〜53aが取り付けられ、ボール6には第2の発信部としてRFIDタグ6aが備えられている。なお、本実施形態では、ボール6のRFIDタグ6aに”ID=A”が付与され、競技者51のRFIDタグ51aに”ID=B51”が付与されているものとする。
【0018】
これらのRFIDタグ51a〜53a,6aは、各対象物に固有のIDを電波による対象物ID信号として発信する無線ICタグであり、小型のICチップと金属製のアンテナとから構成されている。なお、このRFIDタグとしては、電池等の電源を内蔵してRFタグから能動的に情報信号を発信する方式と、受信部側のアンテナから電磁波を出力し、この電磁波の出力に応じて誘導された電流により情報信号を発信する電磁波誘導方式とがある。
【0019】
特に、競技者側のRFIDタグ51a〜53aには、ボール側のRFIDタグ6aとの間の距離に関する情報、及び相手側の対象物識別子信号を相対位置情報として発信する相対位置発信部としての機能を備えている。すなわち、RFIDタグ51a〜53aは、ボール側のRFIDタグ6aからの信号強度を、競技者とボールとの相対距離dとして取得するとともに、ボール6の対象物ID(ID=A)を取得し、これらを自機の対象物ID(ID=B51〜53)とともに直近のリーダーライターRに発信する。
【0020】
サッカー競技フィールド4の地中部には、多数の座標位置受信部であるリーダーライターR(R11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44)が埋設されている。このリーダーライターRは、それぞれ対象物のRFIDタグから対象物ID信号を、電波を通じて受信する金属製のアンテナと、アンテナが受信した信号に基づいて対象物IDを識別するリーダーライター部とから構成され、これらのリーダーライターRは、図2(a)に示すように、それぞれ配線L11〜14,L21〜24,L31〜34,L41〜44で位置情報判定装置1に接続されている。
【0021】
また、各リーダーライターRは、相対位置情報(相対距離d,ボール6の対象物ID(ID=A))を受信する相対位置受信部の機能も兼ね備えており、RFIDタグ51a〜53aから相対位置情報を取得するとともに、識別した対象物ID信号(ID=B51〜53)及び相対位置情報を位置情報判定装置1に出力する。また、リーダーライターRは、自機を特定するためのリーダーライターID(RID)を位置情報判定装置1に出力する。
【0022】
位置情報判定装置1は、リーダーライターR(R11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44)の動作を制御するとともに、リーダーライターRにより読み出された対象物ID(ID=B51〜53)、及び当該対象物IDを受信したリーダーライターのID(IDR)を取得して対象物の位置を判定する装置である。併せて、位置情報判定装置1は、相対位置情報(相対距離d及び対象物ID(ID=A))に基づいて他方の対象物(ここではボール6)の位置を判定する。
【0023】
さらに、位置情報判定装置1は、各対象物の変位履歴を記憶する変位履歴記憶部としてメモリ1aを備えており、メモリ1aに記憶された変位履歴を取得して対象物の変位を予測し、予測された対象物の移動位置周辺のリーダーライターが優先的に動作するように制御する。
【0024】
なお、この位置情報判定装置1による対象物変位の予測は、スポーツの種類に応じて、種々の方法が選択される。例えば、サッカー競技のように競技者がボールを中心として移動するようなスポーツシーンでは、先ず、ボールの加速度や移動方向からボールの変位を優先的に予測し、予測されたボールに対する相対位置に基づいて周囲の競技者の位置を予測する。また、野球競技のように、ボールの変位にパターンがあるようなスポーツシーンでは、そのパターンに基づいてボールや競技者の移動を予測する。
【0025】
(位置情報検出方法)
以上の構成を有する位置情報検出システムを動作させることによって、本発明の位置情報検出方法を実施することができる。図3は、本実施形態に係る位置情報検出システムの動作を示すフローチャート図である。なお、ここでは、図2(a)に示すように、競技者51がリーダーライターR33付近に位置し、ボール6が競技者51の付近に位置する場合を例に説明する。
【0026】
先ず、各対象物51〜53,6からそれぞれの対象物ID信号を発信させる(S201)。競技者側のRFIDタグ51aは、付近にボールが存在するか否かについて、ループ処理により周期的に検出を行い(S202)、ボール6が接近した際に、ボール6側のRFIDタグ6aから、当該RFIDタグ6aの対象物ID(ID=A)を受信し、その対象物ID(ID=A)とともに、受信電波の信号強度を相対距離dとして記憶する(S203)。
【0027】
これと併せてサッカー競技フィールド4では、リーダーライターRを順次駆動させ(S101)、フィールド上の競技者の検出を行う(S102及びS103)。そして、競技者51がリーダーライターR33の付近に接近すると、競技者51のRFIDタグ51aがリーダーライターR33により検出される(S102における”Y”)。この検出により、リーダーライターR33は、競技者51のRFIDタグ51aの対象物ID(ID=B51)とともに、RFIDタグ51aに記憶されたボール6の対象物ID(ID=A)及び相対距離dを相対距離情報として受信する(S104)。
【0028】
次いで、競技者を検出したリーダーライターR33は、受信した2つの対象物ID(ID=B51,ID=A)及び相対距離dとともに、自機を特定するリーダーライターID(RID=33)を位置情報判定装置1に出力する(S105)。
【0029】
位置情報判定装置1では、図2(b)に示すように、取得された対象物ID(ID=B51)及びリーダーライターID(RID=33)により、リーダーライターR33の付近に競技者51が存在すると判定し、さらに、相対距離dにより、競技者51の付近にボール6が存在すると判定する(S106)。
【0030】
この位置情報判定装置1による判定結果は、各対象物の変位履歴としてメモリ1aに蓄積される(S107)。そして、次回の位置判定において位置情報判定装置1は、メモリ1aに記憶された変位履歴を読み出して対象物の変位を予測し(S108)、予測された対象物の移動位置周辺のリーダーライターを優先的に駆動させるようにシステムを制御する(S109)。例えば、変位履歴には前回、R33でID=B51を検出していた記録があることから、次回の位置判定では、ID=B51の予測移動距離がアンテナ間を下回る場合には、R33の周囲を優先的に検索する。
【0031】
(位置情報検出システム及び位置情報検出方法による効果)
このような本実施形態によれば、競技者の座標位置を特定し、この特定した競技者の座標位置を基準とし、相対位置情報を用いてボールの位置を判定することができることから、競技者及びボールのそれぞれに対する位置検出を行う必要がなく、システム全体の動作速度を向上させることができる。
【0032】
また、本実施形態においては、各リーダーライターRが、相対位置受信部の機能と座標位置受信部の機能とを兼ね備えていることから、サッカー競技フィールド4内における座標位置を取得する処理と併せて、競技者及びボール間の相対位置情報を取得することが可能であり、情報取得処理の高速化を図ることができる。
【0033】
さらに、本実施形態では、対象物の移動を予測してリーダーライターRの選択を行うため、位置判定を実行する場所を動的に変化させ、検索エリアを縮小して不要な判定動作を削減することが可能となり、システムの走査速度を向上させることができる。
【0034】
[第2実施形態]
(位置情報検出システムの構成)
次いで、本発明の第2実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、相対位置受信部が、座標位置受信部とは別個独立に設けられていることを特徴とする。なお、本実施形態においても、本発明をサッカー競技に適用した場合を例として、所定領域であるサッカー競技フィールド4内に存在する競技者51〜53及びボール6を位置検出の対象物とする。
【0035】
本実施形態においても、図1(b)に示したように、競技者51〜53が着用しているシューズには、第1の発信部であるRFIDタグ51a〜53aが取り付けられ、ボール6には第2の発信部としてRFIDタグ6aが備えられている。なお、本実施形態においても、ボール6のRFIDタグ6aに”ID=A”が付与され、競技者51のRFIDタグ51aに”ID=B51”が付与されているものとする。
【0036】
そして、本実施形態では、ボール側のRFIDタグ6aは、近接する競技者側のRFIDタグ51a〜53aとの間の距離に関する情報と、及び相手側の対象物IDとを相対位置情報として発信する相対位置発信部としての機能を備えている。すなわち、図4(a)に示すように、RFIDタグ6aは、ボール側のRFIDタグ51a〜53aからの信号強度を競技者とボールとの相対距離dとして取得するとともに、51a〜53aの対象物ID(例えばID=B51)を取得し、これらを自機の対象物ID(ID=A)とともに相対位置受信部2に発信する。これにより位置情報判定装置1は、同図(b)に示すように、ボール6(ID=A)の周囲(相対距離d)の位置に競技者51(ID=B51)が存在することを検出することができる。
【0037】
相対位置受信部2は、サッカー競技フィールド4上に設置され、近距離通信によりフィールド上に位置するボール6を検出するリーダーライターである。この相対位置受信部2は、リーダーライターR(R11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44)とは独立して動作してボール6から送信される信号を受信し、ボール6のID(ID=A)を識別するとともに、ボール6のID及び相対距離情報(競技者のID,相対距離d)を位置情報判定装置1に出力する。
【0038】
一方、サッカー競技フィールド4の地中部には、多数の座標位置受信部であるリーダーライターR(R11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44)が埋設されている。このリーダーライターRは、それぞれ配線L11〜14,L21〜24,L31〜34,L41〜44で位置情報判定装置1に接続されている。そして、各リーダーライターRは、図5(a)に示すように、識別した対象物ID信号(ID=B51)とともに、自機を特定するためのリーダーライターID(RID)を位置情報判定装置1に出力する。
【0039】
位置情報判定装置1は、リーダーライターR(R11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44)の動作を制御するとともに、リーダーライターRにより読み出された対象物ID(ID=B51)、及び当該対象物IDを受信したリーダーライターIDRを取得して対象物の位置を判定する。併せて、位置情報判定装置1は、相対位置情報(相対距離d及び対象物ID(ID=B51))とボール6のID(ID=A)を相対位置受信部2から取得し、図5(b)に示すように、これらの情報に基づいて他方の対象物(ここではボール6)の位置を判定する。
【0040】
さらに、位置情報判定装置1は、各対象物の変位履歴を記憶する変位履歴記憶部としてメモリ1aを備えており、メモリ1aに記憶された変位履歴を取得して対象物の変位を予測し、予測された対象物の移動位置周辺のリーダーライターを優先的に検出するするように制御する。なお、この位置情報判定装置1による対象物変位の予測は、スポーツの種類に応じて、種々の方法が選択される。例えば、サッカー競技のように競技者がボールを中心として移動するようなスポーツシーンでは、先ず、ボールの加速度や移動方向からボールの変位を優先的に予測し、予測されたボールに対する相対位置に基づいて周囲の競技者の位置を予測する。また、野球競技のように、ボールの変位にパターンがあるようなスポーツシーンでは、そのパターンに基づいてボールや競技者の移動を予測する。
【0041】
(位置情報検出方法)
以上の構成を有する位置情報検出システムを動作させることによって、本発明の位置情報検出方法を実施することができる。図6は、本実施形態に係る位置情報検出システムの動作を示すフローチャート図である。ここでは、図5(a)に示すように、競技者51がリーダーライターR23付近に位置し、ボール6が競技者51の付近に位置する場合を例に説明する。
【0042】
なお、本実施形態では、ボール6の位置の検出と、競技者51〜53の位置の検出を並列に処理するとともに、ボールの位置が大きく変位してゲーム展開が発生した際に、イベント処理を発生させ、このイベント処理としてリーダーライターRの読み出し順序を変更し、ボールの変位に応じたリーダーライターRの制御を行う。
【0043】
先ず、各対象物51〜53,6からそれぞれの対象物ID信号を発信させる(S301)。ボール側のRFIDタグ6aは、付近に競技者が存在するか否かについて、ループ処理により周期的に検出を行い(S302)、競技者が接近した際に、競技者(ここでは競技者51とする。)側のRFIDタグ51aから競技者のID(ID=B51)を受信するとともに、この競技者ID及び相対距離dを相対距離情報として相対位置受信部2を通じて位置情報判定装置1に送信する(S303)。
【0044】
位置情報判定装置1では、競技者51の対象物ID(ID=B51)について変位履歴を検索し、競技者51の座標位置を判定するとともに、競技者51の位置を基準として、相対距離dに基づいてボールの位置を判定する(S304)。そして、これらの判定結果を変位履歴に蓄積する(S305)。
【0045】
さらに、位置情報判定装置1は、変位履歴を検索することによりボール6の位置が大きく変位しているか否かについて判断し(S306)、大きく変位していなければ(ステップS301に戻り、ステップS301〜S305の処理を繰り返す。
【0046】
これと併せてサッカー競技フィールド4では、リーダーライターRを順次駆動させ(S401)、フィールド上の競技者の検出を行う(S402及びS403)。このリーダーライターRの駆動については、平常時にあっては、リーダーライターRの配置順、或いは後述するステップS408で行われた変位位置予測にしたがって順次行うが、上記ステップS306においてボール6の位置が大きく変位していると判断した場合には、ステップS307において選択されたリーダーライターを優先して動作させる。このステップS307では、例えばボール6の現在位置に近接するリーダーライターを選択する。
【0047】
そして、競技者51がリーダーライターR23の付近に接近していた場合、競技者51のRFIDタグ51aがリーダーライターR23により検出される(S402における”Y”)。この検出により、リーダーライターR23は、競技者51のRFIDタグ51aの対象物ID(ID=B51)を読み出し(S404)、競技者51の対象物ID(ID=B,ID=A)及び自機を特定するリーダーライターID(RID=23)を位置情報判定装置1に出力する(S405)。
【0048】
位置情報判定装置1では、図5(b)に示すように、取得された対象物ID(ID=B51)及びリーダーライターID(RID=23)により、リーダーライターR23の付近に競技者51が存在すると判定し、さらに、変位履歴から相対距離dを読み出し、競技者51の付近にボール6が存在すると判定する(S406)。
【0049】
この位置情報判定装置1による判定結果は、各対象物の変位履歴としてメモリ1aに蓄積される(S407)。そして、次回の位置判定において位置情報判定装置1は、メモリ1aに記憶された変位履歴を読み出して対象物の変位を予測し(S408)、予測された対象物の移動位置周辺のリーダーライターを優先的に駆動させるようにシステムを制御する(S409)。例えば、変位履歴には前回、R23でID=B51を検出していた記録があることから、次回の位置判定では、ID=B51の予測移動距離がアンテナ間を下回る場合には、R23の周囲を優先的に検索する。
【0050】
(位置情報検出システム及び位置情報検出方法による効果)
このような本実施形態によれば、競技者の座標位置を特定し、この特定した競技者の座標位置を基準とし、相対位置情報を用いてボールの位置を判定することができることから、競技者及びボールのそれぞれに対する位置検出を行う必要がなく、システム全体の動作速度を向上させることができる。また、本実施形態では、対象物の移動を予測してリーダーライターの選択を行うため、位置判定を実行する場所を動的に変化させ、検索エリアを縮小して不要な判定動作を削減することが可能となり、システムの走査速度を向上させることができる。
【0051】
特に、本実施形態では、相対位置受信部2により、多数配置されたリーダーライターRとは別途の信号経路により相対位置情報を取得することができ、多数のリーダーライターRの動作処理の影響を受けることなく、相対位置情報を取得することができる。また、本実施形態では、ボールからの相対位置情報に基づいてイベント処理を発生させ、リーダーライターRの動作順序を変更するため、リーダーライターRの動作頻度を調整して、システム全体の動作速度をより向上させることができる。
【0052】
(変更例)
なお、上述した第2実施形態では、ボール6にボール側のRFIDタグ6aに、近接する競技者側のRFIDタグ51a〜53aとの間の距離に関する情報を発信する相対位置発信部としての機能を設けたが、例えば、図7(a)に示すように、競技者側のRFIDタグ51a〜53aに相対位置発信部の機能を設けてもよい。
【0053】
この場合には、競技者側のRFIDタグ51a〜53aにおいて、ボール側のRFIDタグ6aからの信号強度を、競技者とボールとの相対距離dとして取得するとともに、RFIDタグ6aの対象物ID(ID=A)を取得し、これらを自機の対象物ID(例えばID=B51)とともに相対位置受信部2に発信する。これにより位置情報判定装置1は、同図(b)に示すように、リーダーライターR33の付近に位置する競技者51(ID=B51)の周囲(相対距離d)にボール6(ID=A)が存在することを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)は、第1実施形態に係るサッカー競技フィールドを示す斜視図であり、(b)は、サッカー競技フィールド上に存在する競技者及びボールを示す説明図である。
【図2】(a)は、第1実施形態に係る位置情報検出システムの構成を示すブロック図であり、(b)は、本システムによる検出結果を示す説明図である。
【図3】第1実施形態に係る位置情報検出システムの動作を示すフローチャート図である。
【図4】(a)は、第2実施形態に係る位置情報検出システムの構成を示すブロック図であり、(b)は、本システムによる検出結果を示す説明図である。
【図5】(a)は、第2実施形態に係る位置情報検出システムの構成を示すブロック図であり、(b)は、本システムによる検出結果を示す説明図である。
【図6】第2実施形態に係る位置情報検出システムの動作を示すフローチャート図である。
【図7】(a)は、第2実施形態の変更例に係る位置情報検出システムの構成を示すブロック図であり、(b)は、本システムによる検出結果を示す説明図である。
【図8】(a)は、従来の位置情報検出システムの構成を示すブロック図であり、(b)は、従来のシステムによる検出結果を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
L11〜14,L21〜24,L31〜34,L41〜44…配線、R11〜14,R21〜24,R31〜34,R41〜44…リーダーライター、d…相対距離、1…位置情報判定装置、1a…メモリ、2…相対位置受信部、4…サッカー競技フィールド、6…ボール、6a…RFIDタグ、51a〜53a…RFIDタグ、51〜53…競技者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定領域内に存在する第1の対象物及び第2の対象物の位置を検出する位置情報検出システムであって、
前記第1の対象物に備えられ当該第1の対象物に固有の第1の対象物識別子信号を発信する第1の発信部と、
前記第2の対象物に備えられ当該第2の対象物に固有の第2の対象物識別子信号を発信する第2の発信部と、
前記第1又は第2の対象物に備えられ、該第1の対象物と該第2の対象物との間の距離に関する情報、及び相手側の対象物識別子信号を相対位置情報として発信する相対位置発信部と、
前記領域内に多数配置され、前記第1又は第2の対象物識別子信号を受信する座標位置受信部と、
前記相対位置情報を受信する相対位置受信部と、
前記第1及び第2の対象物識別子信号と前記相対位置情報とを取得し、当該第1又は第2の対象物識別子信号を受信した座標位置受信部を特定し、前記第1又は第2の対象物の位置を判定するとともに、前記相対位置情報に基づいて、他方の前記第2又は第1の対象物の位置を判定する位置情報判定部と、
を備えることを特徴とする位置情報検出システム。
【請求項2】
前記相対位置受信部は、座標位置受信部に備えられていることを特徴とする請求項1に記載の位置情報検出システム。
【請求項3】
前記相対位置受信部は、座標位置受信部とは別個独立に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の位置情報検出システム。
【請求項4】
所定領域内に存在する第1の対象物及び第2の対象物の位置を検出する位置情報検出方法であって、
前記第1の対象物から、当該第1の対象物に固有の第1の対象物識別子信号を発信するとともに、前記第2の対象物から、当該第2の対象物に固有の第2の対象物識別子信号を発信するステップと、
前記第1の対象物と該第2の対象物との間の距離に関する情報、及び相手側の対象物識別子信号を相対位置情報として第1又は第2の対象物から発信するステップと、
前記領域内に多数配置された座標位置受信部により、前記第1又は第2の対象物識別子信号を受信するとともに、相対位置受信部により前記相対位置情報を受信するステップと、
前記第1及び第2の対象物識別子信号と、前記相対位置情報とを取得するとともに、当該第1又は第2の対象物識別子信号を受信した座標位置受信部を特定し、前記第1又は第2の対象物の位置を判定するとともに、前記相対位置情報に基づいて他方の前記第2又は第1の対象物の位置を判定するステップと、
を有することを特徴とする位置情報検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−34717(P2006−34717A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−220639(P2004−220639)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(501431073)ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ株式会社 (810)
【Fターム(参考)】