説明

位置決め装置

【課題】パレットの製作精度などの影響を受けることなく、一定枚数積み重ねられた金属板の水平方向の位置決めを精度良く行うことができる位置決め装置の提供を目的とする。
【解決手段】位置決め装置1は、一定枚数の金属板6が積み重ねられ載置されたパレット61を搬送するローラコンベア2、このローラコンベア2の上流側及び下流側に配設され、パレット61を移動させる一対の移動手段3、ローラコンベア2を昇降させる昇降手段4、及び、金属板6の角度及び位置を計測するための計測手段5などを備え、計測手段5の計測した角度及び位置にもとづいて、移動手段3がパレット61を移動させ、金属板6を位置決めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め装置に関し、特に、パレット上に積み重ねられた金属板、プラスチックシート、或いは紙シートなどを水平方向に精度よく位置決めする位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接、或いは接着による金属缶などは金属板に印刷、また、金属蓋などのプレス成形品は打抜き加工及びプレス加工などを施すことにより製造されている。そして、素材としての金属板は、矩形状の一枚の金属板の状態で供給され、その用途に応じて前記印刷、或いは加工が施される。
特に、一枚の金属板の状態で供給される印刷装置などは、パレット上に積み重ねられた一定枚数の金属板を搬送し、金属板を一枚ずつ印刷装置に供給する金属板供給部を有している。この金属板供給は、通常、金属板の位置決め機構(あるいは、位置決め装置)を有している。
【0003】
(従来例)
次に、従来例にかかる金属板の印刷装置における金属板の位置決め機構について、図面を参照して説明する。
図6は、従来例にかかる金属板の印刷装置における金属板の位置決め機構の要部の概略斜視図を示している。
図6において、印刷装置701は、印刷装置本体71及び自動パレット交換装置72などを備えている。
この自動パレット交換装置72は、金属板供給部730や、空のパレット61を回収するパレット回収部(図示せず)などを有している。
【0004】
なお、印刷装置701に供給される金属板6は、たとえば、板厚は0.2乃至0.3mm程度であり、かつ、矩形状である。
また、パレット61に一定枚数(通常、数百枚程度)積み重ねられ載置された金属板6は、木製又は樹脂製の矩形状のパレット61上に、上下方向に精度良く位置決めされた状態で積み重ねられている。
【0005】
金属板供給部730は、ローラコンベア731、732、及び、ローラコンベア733などを有している。
ローラコンベア731、732は、金属板6が積み重ねられ載置された複数のパレット61を搬送するとともに、待機させる。また、ローラコンベア733は、金属板6が積み重ねられたパレット61を搬送し、上記金属板6の水平方向の位置決めを行い、さらに、位置決めされた金属板6が載置されたパレット61を上昇させる。
【0006】
上記ローラコンベア733の位置決め機構は、まず、金属板6が積み重ねられたパレット61をストッパ734に突き当て、さらにパレット61の端面の全面をストッパ734と当接させることにより、パレット61の搬送方向に対する角度を位置決めする。次に、図示してないが、ローラコンベア733の両側に対向して配設されたエアシリンダなどが、パレット61を搬送方向と直交する方向の所定の位置に拘束することにより、パレット61に対して、搬送方向と直交する方向に対する位置決めしている。すなわち、パレット61は、両側からエアシリンダなどによって挟み込まれることにより、搬送方向と直交する方向に対する位置決めが行われる。
【0007】
なお、水平方向の位置決めが行われたパレット61は、ローラコンベア733によって上昇し、積み重ねられた金属板6は、一枚ずつ印刷装置本体71に供給され、空となったパレット61は、パレット回収部によって回収される。
【0008】
また、このような金属板の印刷装置などにおける金属板の位置決め機構に関連する技術として、様々な技術が提案されてきた。
たとえば、特許文献1には、パイルテーブル上において、シートを積み重ねて載置した台を拘束することによって、台の水平方向の位置決めを行う位置決め装置と、パイルテーブルが下降した位置において、パイルテーブルを案内して位置決めするガイド装置とを備えるシートフィーダーのシート供給装置の技術が開示されている。
【0009】
また、特許文献2には、積重したシートの最上段側より順次1枚ずつ下流工程に搬出する搬出装置の技術が開示されている。この積重シートの搬出装置は、水平を維持して上下動できる昇降テーブル、この昇降テーブルの両側端に設けたガイドレールを介して支持され、前後に移動できると共に、上面にシートを積重し得る可動台、昇降テーブルに取付けられ、可動台をシート給紙方向の前後に移動させるエアシリンダ、昇降テーブル上方部の積重したシートの最上段位置の前部に設けられたストッパを備え、可動台上に積重されたシートの前端がストッパに当接するまで可動台を移動させ、ストッパに当接させた後シートを搬出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実開昭58−7745号公報
【特許文献2】実用新案2537510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した金属板供給部730の位置決め機構は、パレット61の位置決めを行うことにより、パレット61上に一定枚数積み重ねられた金属板6の水平方向の位置決めを行う構成としてある。このため、パレット61の側面(挟まれる面)の製作精度が悪い場合や、摩耗などによりパレット61が変形している場合に、上記パレット61上に積み重ねられた金属板6の水平方向の位置決め(すなわち、向き及び重心の位置を決めること)を、精度良く行うことができないといった問題があった。
【0012】
また、上記の位置決め機構は、積み重ねられた金属板6が、パレット61上の所定の位置に所定の向きで精度良く載置されていることを前提条件としている。したがって、この前提条件が成立しない場合、一定枚数積み重ねられた金属板6の水平方向の位置決めを、精度良く行うことができないといった問題があった。
なお、金属板6の水平方向の位置決め不良は、印刷装置本体71への搬送不良や印刷ずれの原因となる。
【0013】
また、特許文献1の位置決め装置は、パイルテーブル上において、シートを積み重ねて載置した台を、両側から拘束片が拘束することにより、台の水平方向の位置決めを行う構成としてあり、金属板供給部730の位置決め機構とほぼ同様に、積み重ねられた複数の金属板6の水平方向の位置決めを、精度良く行うことができないといった問題があった。
なお、特許文献2の技術は、本発明に関連する技術ではあるものの、上記の課題を解決することはできない。
【0014】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、パレットの製作精度などの影響を受けることなく、積み重ねられた複数の金属板6の水平方向の位置決めを精度良く行うことができる位置決め装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の位置決め装置は、被搬送物を一定枚数積み重ね載置したパレットを搬送する搬送手段と、この搬送手段の上流側及び下流側に配設され、前記パレットを移動させる一対の移動手段と、これら移動手段が前記パレットを支持するように、前記搬送手段及び移動手段の少なくとも一方を昇降させる昇降手段と、前記搬送手段上における被搬送物の搬送方向に対する角度及び前記搬送方向と直交する方向の位置を計測する計測手段と、前記搬送手段、移動手段、昇降手段及び計測手段を制御する制御手段とを備え、前記一対の移動手段が、パレットの上流側と下流側の部分をそれぞれ支持し、前記計測手段が計測した前記角度及び位置にもとづいて、前記パレットを移動させ、前記被搬送物を位置決めする構成としてある。
【発明の効果】
【0016】
本発明の位置決め装置によれば、パレットの製作精度が悪い場合や、摩耗などによりパレットが変形している場合であっても、さらに、一定枚数積み重ねられた金属板などの被搬送物が、パレットの水平方向の所定の位置に精度良く載置されていない場合であっても、被搬送物の水平方向の位置決めを、精度良く行うことができる。これにより、特に、金属板の搬送不良を防止して、金属缶などの印刷装置における印刷ずれ、或いは金属蓋などの打ち抜き加工、プレス加工における加工不良を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の正面側から見た要部の概略斜視図を示している。
【図2】図2は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の背面側から見た要部の概略斜視図を示している。
【図3】図3は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の移動手段を説明するための要部の概略斜視図を示している。
【図4】図4は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の動作を説明するための要部の概略平面図を示している。
【図5】図5は、本発明の位置決め装置を金属板の印刷装置に適用した場合の概略斜視図を示している。
【図6】図6は、従来例にかかる金属板の印刷装置における金属板の位置決め機構の概略斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[位置決め装置の実施形態]
図1は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の正面側から見た要部の概略斜視図を示している。
また、図2は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の背面側から見た要部の概略斜視図を示している。
図1、2において、本実施形態の位置決め装置1は、矩形状の基台11、搬送手段としてのローラコンベア2、移動手段3、昇降手段4、計測手段5、及び、制御手段(図示せず)などを備えた構成としてある。この位置決め装置1は、パレット61に載置された被搬送物(本実施形態では、積み重ねられた金属板6)を所定の角度及び位置に位置決めする。
【0019】
(ローラコンベア)
ローラコンベア2は、9本のローラ21、矩形枠状のフレーム22、及び、光センサ23などを有している。
各ローラ21は、フレーム22に軸支され、ギアなどを介してモータ(図示せず)と連結されており、モータによって回転する。このモータは、制御手段と接続されており、制御手段によって制御される。
また、光センサ23は、たとえば、エリアセンサであり、フレーム22の搬送方向の下流側の両端部に取り付けられている。この光センサ23は、制御手段と接続されており、搬送されてきたパレット61の検出信号を制御手段に出力する。
【0020】
上記ローラコンベア2は、積み重ねられた金属板6の載置されたパレット61を、一対の支持部材31に対する所定の位置に搬送する。
ここで、一対の支持部材31に対する所定の位置とは、金属板6の載置されたパレット61の重心が、上方から見て、一対の支持部材31の間(好ましくは、一対の支持部材31間のほぼ中央)の位置である。
また、ローラコンベア2は、通常、搬送方向の上流側及び下流側にローラコンベア(たとえば、図5に示すローラコンベア731、732)などが連結され、上流側から搬送されてきた金属板6の載置されたパレット61を下流側に搬送する。
【0021】
なお、本実施形態では、ローラコンベア2は、上流側から搬送されてきた金属板6の載置されたパレット61を下流側に搬送する構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図5に示すローラコンベア731、732の代わりに、図示してないが、様々な搬送手段(クレーンやリフターなどを含む。)を用いることができる。
また、搬送手段をローラコンベア2としてあるが、ローラコンベア2に限定されるものではなく、たとえば、図示してないが、複数のベルトコンベアでもよい。
さらに、パレット61を検出するセンサとして、光センサ23を用いているが、センサは、光センサ23に限定されるものではなく、たとえば、機械式のコンベアスイッチを用いてもよい。
【0022】
(移動手段)
図3は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の移動手段を説明するための要部の概略斜視図を示している。
図3において、一対の移動手段3は、それぞれ支持部材31、リニアスライド32、ボールねじ33、ギア34、及び、サーボモータ35などを有している。
支持部材31は、短手方向の断面形状がほぼ矩形状の棒状であり、リニアスライド32やボールねじ33を介して、搬送方向と直交する方向(図3に示す移動方向)に移動可能に基台11に設けられている。また、ボールねじ33は、ギア34を介してサーボモータ35と連結されている。各サーボモータ35は、制御手段と接続されており、制御手段によって制御される。この駆動手段としてのサーボモータ35は、支持部材31を搬送方向と直交する方向に移動させる。
【0023】
上記移動手段3は、支持部材31の長手方向が、搬送方向と直交する方向と平行となるように、ローラコンベア2の上流側及び下流側に配設されている。すなわち、上流側に配置された支持部材31は、上流側から3番目のローラ21と4番目のローラ21との間に配置され、下流側に配置された支持部材31は、上流側から6番目のローラ21と7番目のローラ21との間に配置されている。
【0024】
ここで、上述したように、ローラコンベア2は、積み重ねられた金属板6の載置されたパレット61を、一対の支持部材31に対する所定の位置に搬送するので、後述するようにローラコンベア2が降下すると、上流側に配置された支持部材31は、パレット61の上流側の部分を支持し、下流側に配置された支持部材31は、パレット61の下流側の部分を支持する。
【0025】
また、支持部材31は、ローラコンベア2のローラ21どうしの間から相対的に出没し、金属板6の載置されたパレット61を支持する。すなわち、本実施形態では、ローラコンベア2を基台11に対して降下させることにより、支持部材31がパレット61を支持し、この状態からローラコンベア2を基台11に対して上昇させることにより、ローラ21がパレット61を支持する。
なお、ローラコンベア2を昇降させる構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、移動手段3を昇降させたり、あるいは、ローラコンベア2と移動手段3を昇降させてもよい。
【0026】
上記一対の移動手段3は、支持部材31が一定枚数積み重ねた金属板6を載置したパレット61を支持し、移動させる。すなわち、各移動手段3は、後述する計測手段5によって計測される上記パレット61に載置された金属板6の搬送方向に対する角度(向き)及び搬送方向と直交する方向に対する位置(重心の位置)にもとづいて、上記パレット61の上流側の部分と下流側の部分を、搬送方向と直交する方向(移動方向)にそれぞれ移動させる。これにより、一対の移動手段3が、積み重ねられパレット61に載置された金属板6を、所定の角度(向き)及び位置(重心の位置)に精度よく位置決めすることができる。
【0027】
なお、各支持部材31の配設される位置は、上記に限定されるものではなく、たとえば、上流側に配置された支持部材31は、上流側から2番目のローラ21と3番目のローラ21との間に配置され、下流側に配置された支持部材31は、上流側から7番目のローラ21と8番目のローラ21との間に配置されてもよい。
また、支持部材31は、棒状としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、板状としてもよい。
【0028】
(昇降手段)
図1、2において、一対の昇降手段4は、直進カム41、エアシリンダ42、カムフォロワー43、及び、連結バー44などを有している。これら昇降手段4は、移動手段3がパレット61を支持するように、ローラコンベア2を昇降させる。
各直進カム41は、基台11の正面側及び背面側の端部上面に、搬送方向と平行に移動可能に取り付けられており、各エアシリンダ42によって移動させられる。また、カムフォロワー43は、フレーム22の正面側及び背面側の端面の搬送方向側及び搬送方向の反対側に取り付けられており、直進カム41の上面に載置されている。さらに、連結バー44は、細長い板状としてあり、一方の端部が、フレーム22の正面側及び背面側の端面の搬送方向側及び搬送方向の反対側に回動可能に取り付けられ、他方の端部が、基台11に回動可能に取り付けられている。
【0029】
上記昇降手段4は、エアシリンダ42が制御手段によって制御されることにより、ローラコンベア2を昇降させる。すなわち、昇降手段4は、直進カム41が搬送方向の反対側に位置するとき、ローラコンベア2を上昇させており、ローラ21がパレット61を支持する。また、直進カム41が搬送方向側に位置するとき、ローラコンベア2を降下させており、支持部材31がパレット61を支持する。
なお、昇降手段4は、上記構成に限定されるものではなく、たとえば、油圧ジャッキを用いてもよい。
【0030】
(計測手段)
計測手段5は、図1に示すように、一対の計測シリンダ51、及び、測定バー52などを有している。
各計測シリンダ51は、ロッドの軸心方向が、搬送方向と直交する方向に平行となるように、基台11の正面側の上方の上流側及び下流側に配設されている。また計測シリンダ51は、制御手段と接続されており、測定データを出力する。
また、測定バー52は、両端部が計測シリンダ51のロッドの先端に回動可能に連結されている。この測定バー52は、計測する際、ローラコンベア2上のパレット61に載置された金属板6の正面側の端面と当接し、各計測シリンダ51が、測定データを制御手段に出力する。そして、制御手段が、上記の測定データにもとづいて、パレット61上に積み重ねられた金属板6の搬送方向に対する角度及び搬送方向と直交する方向に対する位置を算出する。
【0031】
(制御手段)
制御手段(図示せず)は、プログラマブルロジックコントローラやコンピュータなどを有しており、ローラコンベア2、移動手段3、昇降手段4及び計測手段5などを、後述するように制御する。
また、本実施形態では、上述したように、計測シリンダ51からの測定データを入力し、金属板6の搬送方向に対する角度及び搬送方向と直交する方向に対する位置を算出する。なお、この構成に限定されるものではなく、たとえば、計測手段5が情報処理手段を有し、金属板6の搬送方向に対する角度及び搬送方向と直交する方向に対する位置を算出する構成としてもよい。
【0032】
次に、上記構成の位置決め装置1の動作について、図面を参照して説明する。
図4は、本発明の実施形態にかかる位置決め装置の動作を説明するための要部の概略平面図を示している。
図4(a)に示すように、位置決め装置1は、搬送方向の上流側及び下流側に、ローラコンベア731、732が連結されており、パレット61上に一定枚数積み重ねられ載置された金属板6が、ローラコンベア731によって搬送される。
このとき、位置決め装置1は、ローラコンベア2のローラ21が回転し、昇降手段4によって上昇しており、一対の支持部材31が、ローラコンベア2のセンターライン(適宜、CLと略称する。)を中心に上記ローラコンベア2の下方の位置で停止している。
【0033】
なお、上記パレット61に一定枚数積み重ね載置された金属板6は、従来例において上述したように、矩形状のパレット61上に、上下方向に精度良く位置決めされた状態で積み重ねられている。
また、図4において、金属板6の重心(適宜、Pと略称する。)、及び、金属板6に対する中心線をそれぞれ図示した。
【0034】
次に、位置決め装置1は、ローラコンベア2が一定枚数の金属板6を積み重ね載置したパレット61を搬送し、上方から見て、金属板6の重心Pが一対の支持部材31のほぼ中央に到達すると、光センサ23がパレット61(あるいは、金属板6)の先端を検出し、検出信号を制御手段に出力する。
続いて、図4(b)に示すように、位置決め装置1は、ローラコンベア2のローラ21の回転を停止する。
【0035】
このとき、パレット61に積み重ねられた金属板6は、搬送方向に対する角度がθ°だけ傾いており、また、搬送方向と直交する方向に対する位置(すなわち、PからCLまでの距離)がDだけずれているものとする。
また、積み重ねられた金属板6が所定の角度及び位置に位置決めされるとは、θ=0、かつ、D=0とすることである。
【0036】
次に、位置決め装置1は、昇降手段4がローラコンベア2を降下させ、一対の支持部材31がパレット61を支持する。
続いて、図4(c)に示すように、一対の計測シリンダ51のロッドが突き出て、測定バー52がパレット61に積み重ねられた金属板6の正面側の端面と当接する。そして、上流側の計測シリンダ51は、原点からHだけ突き出ている測定データを制御手段に出力し、下流側の計測シリンダ51は、原点からHだけ突き出ている測定データを制御手段に出力する。
【0037】
次に、制御手段は、tanθ=(H−H)/Lの関係式(Lは、一対の計測シリンダ51の軸心間の距離)にもとづいてθを算出し、θ=0となるように、各支持部材31の移動距離を算出する。そして、制御手段は、移動手段3を制御し、支持部材31が移動する。
ここで、好ましくは、θ=0となるように、各支持部材31が、搬送方向と直交する方向であって、互いに逆の方向に移動するとよい。このようにすると、積み重ねられた金属板6の向きを効率よく変えることができ、支持部材31とパレット61の擦れを抑制することができる。
なお、本実施形態では、各支持部材31を互いに逆向きの方向に移動させる構成としてあるが、これに限定されるものではなく、たとえば、上流側の支持部材31のみを移動させたり、あるいは、下流側の支持部材31のみを移動させてもよい。
【0038】
また、支持部材31は、パレット61を面で支持しているので、上記の算出した移動距離だけ移動しても、一回の移動では、θ=0とならない場合もある。そのため図示してないが、支持部材31を移動させた後、再び、計測手段5は、一対の計測シリンダ51のロッドが突き出て、測定バー52がパレット61に積み重ねられた金属板6と当接し、上流側の計測シリンダ51は、原点からH´だけ突き出ている測定データを制御手段に出力し、下流側の計測シリンダ51は、原点からH´だけ突き出ている測定データを制御手段に出力する。そして、制御手段は、上述したように、移動後のθ´を算出し、θ´=0となるように、支持部材31の二回目の移動距離を算出する。そして、制御手段は、θ´=0となるように、移動手段3を制御し、支持部材31が移動する。
【0039】
上記の動作を複数回(通常、約二〜三回)繰り返すことにより、図4(d)に示すように、位置決め装置1は、まず、積み重ねられた金属板6を所定の角度(すなわち、θ°=0°)に位置決めする。
なお、図4(d)においては、一対の計測シリンダ51のロッドが突き出て、測定バー52がパレット61に積み重ねられた金属板6と当接し、上流側の計測シリンダ51は、原点からHだけ突き出ている測定データを制御手段に出力し、下流側の計測シリンダ51は、原点からHだけ突き出ている測定データを制御手段に出力している。
また、上記の所定の角度への位置決めにより、パレット61に積み重ねられた金属板6は、搬送方向と直交する方向に対する位置(すなわち、PからCLまでの距離)がD´だけずれているものとする。
【0040】
次に、制御手段は、D´+W/2+H=H(ここで、Hは、原点における測定バー52からCLまでの距離である。また、Wは、金属板6の各辺の長さである。)の関係式にもとづいてD´を算出し、D´=0となるように、支持部材31の移動距離を算出する。そして、制御手段は、移動手段3を制御し、一対の支持部材31が同じ方向に同じ距離(すなわち、D´)だけ移動する。
これにより、積み重ねられた金属板6は、搬送方向と直交する方向に平行移動し、図4(e)に示すように、PがCL上に位置し、所定位置に位置決めされる。
【0041】
このように、本実施形態では、各支持部材31が、まず、搬送方向と直交する方向であって互いに逆の方向に移動することにより、積み重ねられた金属板6を所定の角度に位置決めし、次に、搬送方向と直交する方向であって同じ方向に同じ距離だけ移動することにより、積み重ねられた金属板6を所定位置に位置決めする構成としてある。
このようにすると、効率よく、積み重ねられた金属板6を、所定の角度及び所定位置に位置決めすることができる。
【0042】
次に、位置決め装置1は、昇降手段4がローラコンベア2を上昇させ、回転の停止したローラ21がパレット61を支持する。
続いて、図4(f)に示すように、位置決め装置1は、ローラコンベア2が位置決めされた一定枚数の金属板6を積み重ね載置したパレット61をローラコンベア732に搬送する。
【0043】
以上説明したように、本実施形態の位置決め装置1によれば、パレット61の製作精度が悪い場合や、摩耗などによりパレット61が変形している場合であっても、さらに、一定枚数積み重ねられた金属板6が、パレット61の水平方向の所定の位置に精度良く載置されていない場合であっても、金属板6の水平方向の位置決めを、精度良く行うことができる。
また、位置決め装置1は、ローラコンベア2、一対の移動手段3及び昇降手段4などを備えることにより、重量物である積み重ねられた金属板6などを回動及び平行移動させることができ、装置の製造原価のコストダウンを図ることができる。
【0044】
尚、図5は、本発明の位置決め装置を金属板の印刷装置に適用した場合の概略斜視図を示し、図6と同様の構成部分については同一の符号を付した。
図5において、金属板の印刷装置7(適宜、印刷装置7と略称する。)は、上述した従来例の印刷装置701と比べると、ローラコンベア731とローラコンベア732とに間に、位置決め装置1を設けた点などが相違する。
印刷装置7は、金属板供給部73が、上流側から下流側に向かって、ローラコンベア731、上記実施形態の位置決め装置1、ローラコンベア732及びローラコンベア733などを有している。
位置決め装置1は、パレット61及び金属板6を搬送する途中で、上述したように、積み重ねられた金属板6を所定の角度及び所定位置に位置決めすることができる。
【0045】
これにより、金属板供給部73は、パレット61の製作精度が悪い場合や、摩耗などによりパレット61が変形している場合であっても、さらに、積み重ねられた複数の金属板6が、パレット61の水平方向の所定の位置に精度良く載置されていない場合であっても、金属板6の水平方向の位置決めを、精度良く行うことができる。
そして、印刷装置7は、供給される金属板6の位置ずれに起因する搬送不良や印刷ずれなどの加工不良を抑制することができる。
【0046】
以上、本発明の位置決め装置について、好ましい実施形態などを示して説明したが、本発明に係る位置決め装置は、上述した実施形態などにのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、位置決め装置1は、各支持部材31が、まず、搬送方向と直交する方向であって互いに逆の方向に移動することにより、積み重ねられた金属板6を所定の角度に位置決めし、次に、搬送方向と直交する方向であって同じ方向に同じ距離だけ移動することにより、積み重ねられた金属板6を所定の位置に位置決めする構成としてあるが、これに限定されるものではない。たとえば、図示してないが、搬送方向と直交する方向であって同じ方向に異なる距離だけ移動することにより、積み重ねられた金属板6を所定の角度及び位置に位置決めする構成としてもよい。このようにしても、積み重ねられた金属板6を所定の角度及び位置に位置決めすることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 位置決め装置
2 ローラコンベア
3 移動手段
4 昇降手段
5 計測手段
6 金属板
7、701 印刷装置
11 基台
21 ローラ
22 フレーム
23 光センサ
31 支持部材
32 リニアスライド
33 ボールねじ
34 ギア
35 サーボモータ
41 直進カム
42 エアシリンダ
43 カムフォロワー
44 連結バー
51 計測シリンダ
52 測定バー
61 パレット
71 印刷装置本体
72 自動パレット交換装置
73、730 金属板供給部
74 パレット回収部
731、732、733 ローラコンベア
734 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を一定枚数積み重ね載置したパレットを搬送する搬送手段と、
この搬送手段の上流側及び下流側に配設され、前記パレットを移動させる一対の移動手段と、
これら移動手段が前記パレットを支持するように、前記搬送手段及び移動手段の少なくとも一方を昇降させる昇降手段と、
前記搬送手段上における被搬送物の搬送方向に対する角度及び前記搬送方向と直交する方向の位置を計測する計測手段と、
前記搬送手段、移動手段、昇降手段及び計測手段を制御する制御手段と
を備え、
前記一対の移動手段が、パレットの上流側と下流側の部分をそれぞれ支持し、前記計測手段が計測した前記角度及び位置にもとづいて、前記パレットを移動させ、前記被搬送物を位置決めすることを特徴とする位置決め装置。
【請求項2】
前記搬送手段が、ローラコンベアを有し、前記移動手段が、前記ローラコンベアのローラどうしの間から相対的に出没し、前記パレットを支持する棒状又は板状の支持部材と、この支持部材を前記搬送方向と直交する方向に移動させる駆動手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記支持部材が、前記搬送方向と直交する方向であって互いに逆の方向、または同じ方向に移動することにより、前記被搬送物を所定位置に位置決めすることを特徴とする請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記計測手段が、一対の計測シリンダを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記計測手段が、前記被搬送物と当接する測定バーを有し、該測定バーの両端部が、前記一対の計測シリンダのロッドに、回動可能に連結されたことを特徴とする請求項4に記載の位置決め装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−35991(P2012−35991A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179547(P2010−179547)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】