位置速度制御装置
【課題】工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器では、機械に取り付ける状況により、振幅誤差、位相誤差が異なるため、位置検出器を機械に取り付けた状態で補正する必要がある。
【解決手段】回転位置に応じて出力される二相の正弦波信号A,Bの補正後の信号A’、B’は、A’=A−γa、B’=β(B−γb+A’・α)と表される。本実施形態では、速度制御時に速度指令値を積分した位置指令Plと位置検出値Pdとの差に基づいて、オフセット補正係数γbと位相補正係数α、振幅補正係数β、オフセット補正係数γaをそれぞれ算出し、これら補正係数に基づいて2相の正弦波信号A、Bを補正する。
【解決手段】回転位置に応じて出力される二相の正弦波信号A,Bの補正後の信号A’、B’は、A’=A−γa、B’=β(B−γb+A’・α)と表される。本実施形態では、速度制御時に速度指令値を積分した位置指令Plと位置検出値Pdとの差に基づいて、オフセット補正係数γbと位相補正係数α、振幅補正係数β、オフセット補正係数γaをそれぞれ算出し、これら補正係数に基づいて2相の正弦波信号A、Bを補正する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸等の位置速度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器が多く使用されている。前記歯車は、一般的に鉄などの磁性体で構成されており、前記磁気式センサーは、磁気抵抗素子およびバイアスマグネットから成る。図8にこのような主軸用の位置検出器を用いた位置速度制御装置のブロック図を示す。
【0003】
図8の歯車11と1周期に1箇所の凹部または凸部を有する円板12が回転することによって、前記歯車11の歯に基づいて発生する磁束変化が電気信号xおよびyとして、また、前記円板12の凹部または凸部に基づいて発生する磁束変化が電気信号zとしてセンサー10より出力される。これらの電気信号xおよびyは一般的に2相交流信号であり、次の式1および式2のように表される。
x=V・sinθ+Va ・・・ 式1
y=V/A・(cosθ−K・sinθ)+Vb ・・・ 式2
【0004】
また、電気信号zは、1回転に1回変化する基準信号である。ここで、Vは2相信号の振幅、Vaは信号xに含まれる直流成分であり、Vbは信号yに含まれる直流成分である。上記2相信号xおよびyは、それぞれA/Dコンバータ15aおよび15bによって瞬時値(x,y)に変換され、誤差補正器16で誤差補正されたあと除算器17に入力される。従来の一般的な位置速度制御装置においては上記式1、式2に示した直流成分VaおよびVbと振幅誤差1/A、位相誤差(−K・sinθ)の値を無視しており、このとき除算器17の出力は次の式3のように表される。
x/y=sinθ/cosθ=tanθ ・・・ 式3
【0005】
除算器17の出力は変換器18によってtan関数の逆変換され、位置検出値θdは次の式4のように表される。
θd=tan−1(x/y)=tan−1(tanθ) ・・・ 式4
【0006】
以上のように検出された位置検出値θdは、歯車の歯の1個分を1周期とする微小な位置である。また一方、2相信号x、yと基準信号zはコンパレータ等により構成されるパルス回路13によってパルス信号化されてカウンタ回路14に入力される。このカウンタ回路14では、パルス信号xdおよびydをカウントすることによって、前記位置検出値θdの1周期を越える範囲の回転位置上位桁Pudを検出する。そして、前記パルス信号zdによりカウンタをクリアし、歯車11の1回転周期で変化する回転位置上位桁Pudを出力する。この前記回転位置上位桁Pudと前記位置検出値θdは加算器19において加算され、歯車11の全周にわたる回転位置検出値Pdが得られる。
【0007】
この回転位置検出値Pdと、位置指令Pcとの差分が減算器1で求められ、比例演算器2にて速度指令Vcが演算される。微分器20が前記回転位置検出値Pdより速度検出値Vdを演算する。前記速度指令Vcと前記速度検出値Vdの差分を減算器3で求め、その出力を比例演算器4と積分演算器5で演算し、加算器6で加算しトルク指令Tcを出力する。
【0008】
ここで、図9に誤差補正器16のブロック図を示す。瞬時値比較部37は、A/Dコンバータ15aおよび15bの出力である前記2相信号の瞬時値(x、y)を比較し、A:x=0,B:y=0およびC:|x|=|y|の三つの条件A〜Cのいずれかを満たすタイミングで瞬時値保持部38に2相信号の瞬時値(x、y)を保持するトリガ信号を出力する。瞬時値保持部38は前記トリガ信号に基づいて2相信号の瞬時値(x、y)を取込んで保持する。この動作によって保持される2相信号の瞬時値(x、y)は、図11の波形中にy1,y2,x1,x2,x3,x4で示される値である。
【0009】
このようにして保持記憶されたy1,y2,x1,x2,x3,x4の値から、誤差演算部39が下記式5から式8により各誤差を補正する係数A、K、Va、Vbを求め、誤差補正部40が式1、式2に基づいて検出値を補正する。
A=x1x2+y1y2/(2x1x2) ・・・ 式5
K=y1y2(x4−x3)(x4+x3−x1−x2)/{2x1x2
(x32+x42)}+(x4+x3)(y1+y2+x4−x3)/
{2(x32+x42)} ・・・ 式6
Va=(x1+x2)/2−K(y1+y2)/2A ・・・ 式7
Vb=(y1+y2)/2−AK(x1+x2)/2 ・・・ 式8
【0010】
また、図10に誤差補正器16の別のブロック図を示す。前記式2をここでは、振幅誤差を1/B、位相誤差をθ’として次の式9に変換して扱う。
x=V・sinθ+Va ・・・ 式1
y=V/B・cos(θ+θ’)+Vb ・・・ 式9
【0011】
図8のA/Dコンバータ15aおよび15bの出力である前記2相信号の瞬時値(x、y)の最大値および最小値を最大値検出部41a、41bおよび最小値検出部42a、42bで検出する。最大値検出部41a、41bはピークホールド回路等から成り、最小値検出部42a、42bはボトムホールド回路等から成る。
【0012】
オフセット補正値検出部43aは、前記最大値検出部41aの出力値xmaxと前記最小値検出部42aの出力値xminを使用して、式10により前記係数Vaを算出する。
Va=(|xmax|−|xmin|)/2−Vcom ・・・ 式10
ここで、|x|は絶対値、Vcomは基準値を示しておりVa=Vb=0である場合の前記2相信号x、yの振幅中心電圧を示す。
【0013】
オフセット補正値検出部43bは、前記最大値検出部41bの出力値ymaxと前記最小値検出部42bの出力値yminを使用して、式11により前記係数Vbを算出する。
Vb=(|ymax|−|ymin|)/2−Vcom ・・・ 式11
ここで、|y|は絶対値を示す。
【0014】
振幅補正値検出部44は、前記最大値検出部41a、41bの出力値xmaxおよびymaxと、前記最小値検出部42a、42bの出力値xminおよびyminを使用して、式12により前記係数Bを算出する。
B=(xmax−xmin)/(ymax−ymin) ・・・ 式12
【0015】
次に、位相補正値検出部45について説明する。前記2相信号x、yを使用して、式13によりC信号を演算する。
C(θ)=x・y ・・・ 式13
【0016】
C信号の波形を図12に示す。前記C信号は前記2相信号x、yに対して周期が1/2の信号となり、2相信号x、yに位相誤差θ’がある場合、オフセットが発生する。
2相信号x、yに位相誤差が無い場合、歯車の歯の1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度でのC信号の振幅の和は、次の式14で表されるように0となる。
C(45)+C(135)+C(225)+C(315)=0 ・・・ 式14
【0017】
しかし、2相信号x,yに位相誤差θ’がある場合、θ=45度、135度、225度、315度でのC信号の振幅の和は0とはならず、次の式15で表される関係が成り立つ。
C(45)+C(135)+C(225)+C(315)
=−2×V^2/B・sin(θ’) ・・・ 式15
【0018】
式15を変形し、θ=45度、135度、225度、315度でのC信号の振幅の和、前記係数Va、Vb、Bを使用して、式16により位相誤差θ’を算出する。
θ’=sin−1[{C(45)+C(135)+C(225)
+C(315)}・B/(−2×V^2)] ・・・ 式16
【0019】
以上のように、各誤差を補正する係数Va、Vb、B、θ’を算出し、オフセット補正部46、位相補正部47、振幅補正部48が式1、式9により補正する。
【0020】
また、ソフトウェアで自動的に位置検出誤差に起因した検出位置の内挿誤差を補正する技術として、一定速度で移動しているときに1周期分を均等に分割して1周期分を直線で結んだ理想位置と位置検出値との内挿誤差を求め、位置検出値の補正を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0021】
また、領域毎に予め決められた補正係数を使用して、位置検出値の補正を行う方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第3772121号明細書
【特許文献2】特開2002−257590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来技術は、工作機械等に実装する前に、検出器単体で補正を実施する場合には、有効である。しかし、工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器では、機械に取り付ける状況により、前記、位相誤差、振幅誤差が異なるため、機台に取り付けた状態で、補正する必要がある。
【0024】
図13は、歯車11が偏心している場合の2相信号のリサージュである。歯車11とセンサー10が最も近い時、2相信号は外側の円を通り、それらが最も遠い時、内側の円を通る。主軸回転数が高速で、従来技術で振幅変動検出部がない場合には、保持される瞬時値は、図13に示される(x1,y1)〜(x4,y4)のようになる時がある。この値を用いて式7および式8の演算、つまり、点(x1,y1)と点(x3,y3)を結ぶ線分、および点(x2,y2)と点(x4,y4)を結ぶ線分のそれぞれの垂直二等分線の交点座標を求める演算を行うと、得られた座標点(Va,Vb)は、円の中心点からずれ、間違った値となる。
【0025】
また、図10に示す、従来の実施例においては、係数Bを算出するのに、2相信号の最大値と最小値をホールドしている。インバータで制御するような位置速度制御装置においては、インバータのスイッチングノイズ等が2相信号に重畳する場合があり、ノイズ成分を含んだ信号の最大値と最小値をホールドすることで、誤差が発生する。また、ノイズ成分を含んだ信号から、歯車の歯の1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度の2相信号をサンプリングし、位相誤差を計算しても、ノイズ成分の影響で過大な誤差が発生する。その結果、機械に検出器を取り付けた状態で、従来例の補正を行っても高精度な位置検出ができないという課題があった。
【0026】
また、特許文献1の技術ではソフトウェアで自動的に検出位置の内挿誤差の補正ができるため、位置検出誤差を補正するアナログ回路の追加やギアとセンサーとの位置関係の調整が不要になり、各点での内挿誤差を小さくすることができ、例えば、目標位置までの軌跡精度が問題とならないような位置決めモード時には、位置決め精度を比較的高くすることができるが、位置検出分解能の低い装置では、分割するポイント数が減少するため、位置決め精度が低くなるという課題があった。
【0027】
また、均等に分割した2点間の内挿誤差は両端の内挿誤差を直線補間して求めるため、各2点間の中心付近では内挿誤差を補正しきれず、例えば、目標位置までの軌跡精度も問題となる軌跡モード時には、各点で不連続な軌跡となって軌跡精度が低くなるという課題があった。
【0028】
特許文献2の技術では、振幅誤差の補正係数とオフセットの補正係数のみを使用するため、位相誤差を補正することができないという課題があった。また、位置の領域が変わる時点で補正する係数が変わるため、位置検出値が不連続になる可能性がある。さらに、基準エンコーダ等を使用して、領域毎の補正係数を予め計測して導出する必要があるという課題があった。
【0029】
本発明の目的は、工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器において、位置検出器を機械に取り付けた状態で検出器の位置誤差の補正ができ、歯車が偏芯し取り付けられている状態でも、または、モータ駆動用インバータのノイズが多い環境下でも、本発明の検出器の位置誤差の補正を行うことで、高精度な位置検出を可能にすることにある。
【0030】
また、位置検出分解能や制御モードに関係なく、連続的に位置検出誤差を補正することによって、検出位置の内挿誤差を小さくでき、位置決め精度および軌跡精度を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係わる位置検出器の出力信号をフィードバックして位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置は、回転体の回転角に応じて互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bを出力する位置検出器を備え、第1の正弦波信号Aは、A=Ka・sinθ+γa、第2の正弦波信号Bを、B=Kb・cos(θ+θ’)+γbと表し、補正後の第1の正弦波信号A’をA’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’をB’=β・(B−γb+A’・α)と表したとき、位置検出値θdをθd=tan−1(A’/B’)としてフィードバックに使用する位置速度制御装置において、速度制御時に速度指令値を積分した位置指令と位置検出値との差に基づいて、正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを補正する手段を備える。
【0032】
あるいは、位置制御時に位置指令を微分した速度指令値と速度検出値との差に基づいて、正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを補正する手段を備える。
【0033】
さらには、前記位置速度制御装置であって、前記誤差補正器は、歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=90度、270度付近であるときに正弦波信号Bのオフセット補正係数γbと位相補正係数αを補正し、歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度付近であるときに振幅補正係数βを補正し、歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=0度、180度付近であるとき正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを補正する。
【0034】
あるいは、一定速度で移動しているときに、どちらか一方の相を基準として求めた理想位置と位置検出値との差である内挿誤差に基づいて、1周期の前半(1/2周期分)の位置検出値を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(F)テーブル保持部と、1周期の後半(1/2周期分)の実際の検出位置を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(L)テーブル保持部を持ち、その出力に基づいて1/4周期または3/4周期のタイミングで位相補正係数αを補正し、1/8周期または5/8周期、3/8周期または7/8周期のタイミングで振幅補正係数βを補正する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器において、位置検出器を機械に取り付けた状態で検出器の位置誤差の補正ができ、歯車が偏芯し取り付けられている状態でも、または、モータ駆動用インバータのノイズが多い環境下でも、本発明の検出器の位置誤差の補正を行うことで、高精度な位置検出が可能となる。
【0036】
また、位置検出分解能や制御モードに関係なく、連続的に位置検出誤差を補正することによって、検出位置の内挿誤差を小さくでき、位置決め精度および軌跡精度を高くすることが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本発明では、位置検出器を機械に取り付けた状態で、検出器の位置誤差の補正ができ、歯車が偏芯し取り付けられている状態でも、または、モータ駆動用インバータのノイズが多い環境下でも、本発明の検出器の位置誤差の補正を行うことで、高精度な位置検出が可能となり、また、位置検出分解能や制御モードに関係なく、連続的に位置検出誤差を補正することによって、検出位置の内挿誤差を小さくでき、位置決め精度および軌跡精度を高くすることができる位置速度制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施例の位置誤差補正係数算出部を説明するブロック図である。
【図5】2相信号の速度指令積分値と位置検出値の関係を示した図である。
【図6】2相信号の理想位置と位置検出値の関係を示した図である。
【図7】位置誤差補正係数算出部を説明するブロック図である。
【図8】従来例を示すブロック図である。
【図9】従来例の誤差補正部を示すブロック図である。
【図10】従来例の誤差補正部を示すブロック図である。
【図11】従来例の位置誤差検出部を説明する図である。
【図12】従来例の位相誤差検出部の説明する図である。
【図13】従来例の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に本発明の位置速度制御装置を回転軸に適用した実施例を示す。図8に示した従来例と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図8と同様に、図1でも、回転軸に適用したが、直線軸に適用しても同様な機能が実現できる。
【0040】
図1の位置速度制御装置は、回転体の回転角に応じて互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bを出力する。第1の正弦波信号Aおよび第2の正弦波信号Bは次の式17および式18で表される。
A=Ka・sinθ+γa ・・・ 式17
B=Kb・cos(θ+θ’)+γb ・・・ 式18
【0041】
積分器25は、速度指令Vcを積分し、速度指令積分値Plを出力する。位置誤差補正係数算出部26は、前記速度指令積分値Plと前記位置検出値Pdを入力とし、正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを出力する。
【0042】
オフセット補正部22で、A/Dコンバータ15aが出力した正弦波信号Aから、正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを減算し、出力する補正後の正弦波信号A’は次の式19のように表される。
A’=A−γa ・・・ 式19
【0043】
A/Dコンバータ15bが出力した正弦波信号Bから、正弦波信号Bのオフセット補正係数γbを減算し、(B−γb)を出力する。位相補正部23は、前記オフセット補正部22の出力信号A’、(B−γb)と、初期値が0である位相補正係数αを入力とし、信号(B−γb+A’・α)を出力する。振幅補正部24は、前記信号(B−γb+A’・α)と、初期値が1である振幅補正係数βを入力とし、出力する補正後の正弦波信号B’は次の式20のように表される。
B’=β・(B−γb+A’・α) ・・・ 式20
【0044】
除算器17が前記補正後の正弦波信号B’を前記補正後の正弦波信号A’で除算し、変換器18が出力する位置検出値θdは次の式21のように表される。
θd=tan−1(A’/B’) ・・・ 式21
【0045】
また、上記説明では、Aを基準として、Bの位相誤差・振幅誤差を補正したが、逆に、Bを基準として、Aの位相誤差・振幅誤差を補正しても良い。
【0046】
図1において、本発明は、工作機械の主軸等において、速度指令と主軸等の実速度が一致していることを前提としている。そのため、速度指令と主軸等の実速度が一致しないような状態では正確な誤差補正ができない。そのため、誤差補正モード等を用意し、誤差補正信号が入力されたとき(mode:ON)に速度制御ループゲインを高く設定し、速度指令と主軸等の実速度が一致するようにする。
【0047】
次に、位置誤差補正係数算出部26について説明する。例えば、前記歯車11の歯数が360とすると、前記正弦波信号Aの1周期分は歯車回転角度で1度となる。前記速度指令積分値Plを横軸とし、歯車回転角度1度分を横軸フルスケールとする。位置検出値Pdの歯車回転角度1度分を縦軸フルスケールとしてプロットすると図5のようになる。
【0048】
正弦波信号Aのオフセット、正弦波信号Bのオフセット、位相誤差、振幅誤差が存在しない場合(パターン1)は、Pl=Pdとなる。正弦波信号Aのオフセットのみがある場合(パターン2)は、正弦波信号Aのオフセットが正のときは実線のようになり、正弦波信号Aのオフセットが負のときは点線のようになる。また、正弦波信号Bのオフセットのみがある場合(パターン3)は、正弦波信号Bのオフセットが正のときは実線のようになり、正弦波信号Bのオフセットが負のときは点線のようになる。また、位相誤差のみがある場合(パターン4)は、位相誤差が正のときは実線のようになり、位相誤差が負のときは点線のようになる。振幅誤差のみがある場合(パターン5)は、振幅誤差が1より大きいときは実線のようになり、振幅誤差が1より小さいときは点線のようになる。
【0049】
Pl=0度、180度近辺では、正弦波信号Aのオフセットの感度が、Pl=90度、270度近辺では正弦波信号Bのオフセットと位相誤差の感度が大きいことが、Pl=45度、135度、225度、315度近辺では振幅誤差の感度が大きいことが分かる。また、歯車の偏芯等があり、正弦波信号の振幅が歯車1回転で1周期の振幅差が発生していても前記速度指令積分値Plと前記位置検出値Pdの関係は全く同じであり、歯車の偏芯の影響を受けない。
【0050】
図7に前記正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを演算する一例を示す。誤差演算器53は、前記速度指令積分値PlがPl=0度、180度となる角度のときの前記速度指令積分値Plの値と前記位置検出値Pdの値を使用して、式22によりΔγaを算出する。
Δγa=−Pl(0)+Pd(0)+Pl(180)−Pd(180) ・・・ 式22
【0051】
前記誤差演算器53の出力Δγaを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを出力する。位置演算器57は、加算器56から出力された正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを使用して、正弦波信号A、Bを前記式19、式20、式21により、位置指令値θdを演算する。速度指令積分値PlがPl=0度、180度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を誤差演算器53へ出力する。Δγa=0となったとき、正弦波信号Aのオフセット補正係数γaの演算が収束する。
【0052】
正弦波信号Bのオフセット補正係数γbも正弦波信号Aのオフセット補正係数γaと同様に演算できる。誤差演算器53は、速度指令積分値PlがPl=90度、270度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を使用し、式23によりΔγbを算出する。
Δγb=−Pl(90)+Pd(90)+Pl(270)−Pd(270) ・・・ 式23
【0053】
前記誤差演算器53の出力Δγbを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、正弦波信号Bのオフセット補正係数γbを出力する。
【0054】
位相補正係数αも正弦波信号Aのオフセット補正係数γaと同様に演算できる。誤差演算器53は、速度指令積分値PlがPl=90度、270度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を使用し、式24によりΔαを算出する。
Δα=−Pl(90)+Pd(90)+Pl(270)−Pd(270) ・・・ 式24
【0055】
前記誤差演算器53の出力Δαを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、位相補正係数αを出力する。
【0056】
振幅補正係数βも正弦波信号Aのオフセット補正係数γaと同様に演算できる。誤差演算器53は、速度指令積分値PlがPl=45度、135度、225度、315度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を使用し、式25によりΔβを算出する。
Δβ=−Pl(45)+Pd(45)+Pl(135)
−Pd(135)−Pl(225)+Pd(225)
+Pl(315)−Pd(315) ・・・ 式25
【0057】
前記誤差演算器53の出力Δβを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、振幅補正係数βを出力する。
【0058】
次に、図2に本発明の位置速度制御装置を回転軸に適用した別の実施例を示す。従来例図8および実施例図1と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。微分器35は、位置指令Pcを微分し、位置指令微分値Vc’を出力する。
【0059】
位置誤差補正係数算出部36は、位置指令微分値Vc’と速度指令Vcを入力とし、正弦波信号Aのオフセット誤差補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット誤差補正係数γb、位相補正係数γa、振差補正係数γbを出力する。
【0060】
実施例図2では、図5の横軸を速度指令Vc、縦軸を位置指令微分値Vc’とすると同様な図となる。前記実施例図1で説明した前記速度指令積分値Plを速度指令Vcに、前記位置検出値Pdを位置指令微分値Vc’に置き換え演算する。
【0061】
次に、図3に本発明の位置速度制御装置を回転軸に適用した別の実施例を示す。従来例図8、実施例図1および図2と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。位置誤差補正係数算出部30は、一定速度で移動しているときの正弦波信号Aと位置検出値θdを入力とし、位相補正係数α、振幅補正係数βを出力する。
【0062】
図4に誤差補正器27のブロック図を示す。θd(F)テーブル保持部50aは、一定速度で移動しているときに、正弦波信号Aを基準として、1周期の前半(1/2周期分)の位置検出値θdを所定時間毎にテーブルとして保持する。θd(L)テーブル保持部50bは、一定速度で移動しているときに、正弦波信号Aを基準として、1周期の後半(1/2周期分)の位置検出値θdを所定時間毎にテーブルとして保持する。位相補正値検出部52は、θd(F)テーブル保持部50aまたはθd(L)テーブル保持部50bが出力した、特定のタイミングの位置検出値θdを使用して、位相補正係数αを出力する。位相補正部28は、位相補正値検出部52が出力した位相補正係数αに基づいて位相誤差を補正する。振幅補正値検出部51は、θd(F)テーブル保持部50aまたはθd(L)テーブル保持部50bが出力した特定のタイミングの位置検出値θdを使用して、振幅補正係数βを出力する。振幅補正部29は、振幅補正値検出部51が出力した振幅補正係数βに基づいて振幅誤差を補正する。
【0063】
次に、位相誤差または振幅誤差の検出方法を示した図6を参照しながら、位相補正値検出部52および振幅補正値検出部51を説明する。互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bに位相誤差または振幅誤差が含まれている場合には、2相信号1周期に対して2倍の周期の内挿誤差が発生する。
【0064】
位相補正値検出部52では、位相差が90度より大きく、かつ、振幅比が1の場合(パターン1)、一定速度で移動しているときに、1/4周期または3/4周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が正の最大値となることに着目し、1/4周期または3/4周期のタイミングの位置検出値θdを小さくして内挿誤差が小さくなるように初期値が0である位相補正係数αを増加させる。位相差が90度より小さく、かつ、振幅比が1の場合(パターン2)、一定速度で移動しているときに、1/4周期または3/4周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が負の最大値となることに着目し、1/4周期または3/4周期のタイミングの位置検出値θdを大きくして内挿誤差が小さくなるように、初期値が0である位相補正係数を減少させる。
【0065】
振幅補正値検出部51では、位相差が90度で、かつ、振幅比が1より大きい場合(パターン3)、一定速度で移動しているときに、1/8周期または5/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が負の最大値、3/8周期または7/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が正の最大値となることに着目し、1/8周期または5/8周期のタイミングの位置検出値θdを大きく、3/8周期または7/8周期のタイミングの位置検出値θdを小さくして内挿誤差が小さくなるように、初期値が1である位相補正係数を減少させる。位相差が90度で、かつ、振幅比が1より小さい場合(パターン4)、一定速度で移動しているときに、1/8周期または5/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が正の最大値、3/8周期または7/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が負の最大値となることに着目し、1/8周期または5/8周期のタイミングの位置検出値θdを小さく、3/8周期または7/8周期のタイミングの位置検出値θdを大きくして内挿誤差が小さくなるように、初期値が1である位相補正係数を増加させる。
【符号の説明】
【0066】
1,3 減算器、2,4,54 比例演算器、5,55 積分演算器、6,19,56 加算器、7 インバータ、8 モータ、10 センサー、11 歯車、12 円板、13 パルス回路、14 カウンタ回路、15a,15b A/Dコンバータ、16,21,27,31 誤差補正器、17 除算器、18 変換器、20,35 微分器、22,32,46 オフセット補正部、23,28,33,47 位相補正部、24,29,34,48 振幅補正部、25 積分器、26,30,36 位置誤差補正係数算出部、37 瞬時値比較部、38 瞬時値保持部、39 誤差演算部、40,49 誤差補正部、41a,41b 最大値検出部、42a,42b 最小値検出部、43a,43b オフセット補正値検出部、44,51 振幅補正値検出部、45,52 位相補正値検出部、50a θd(F)テーブル保持部、50b θd(L)テーブル保持部、53 誤差演算器、57 位置演算器。
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械の主軸等の位置速度制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器が多く使用されている。前記歯車は、一般的に鉄などの磁性体で構成されており、前記磁気式センサーは、磁気抵抗素子およびバイアスマグネットから成る。図8にこのような主軸用の位置検出器を用いた位置速度制御装置のブロック図を示す。
【0003】
図8の歯車11と1周期に1箇所の凹部または凸部を有する円板12が回転することによって、前記歯車11の歯に基づいて発生する磁束変化が電気信号xおよびyとして、また、前記円板12の凹部または凸部に基づいて発生する磁束変化が電気信号zとしてセンサー10より出力される。これらの電気信号xおよびyは一般的に2相交流信号であり、次の式1および式2のように表される。
x=V・sinθ+Va ・・・ 式1
y=V/A・(cosθ−K・sinθ)+Vb ・・・ 式2
【0004】
また、電気信号zは、1回転に1回変化する基準信号である。ここで、Vは2相信号の振幅、Vaは信号xに含まれる直流成分であり、Vbは信号yに含まれる直流成分である。上記2相信号xおよびyは、それぞれA/Dコンバータ15aおよび15bによって瞬時値(x,y)に変換され、誤差補正器16で誤差補正されたあと除算器17に入力される。従来の一般的な位置速度制御装置においては上記式1、式2に示した直流成分VaおよびVbと振幅誤差1/A、位相誤差(−K・sinθ)の値を無視しており、このとき除算器17の出力は次の式3のように表される。
x/y=sinθ/cosθ=tanθ ・・・ 式3
【0005】
除算器17の出力は変換器18によってtan関数の逆変換され、位置検出値θdは次の式4のように表される。
θd=tan−1(x/y)=tan−1(tanθ) ・・・ 式4
【0006】
以上のように検出された位置検出値θdは、歯車の歯の1個分を1周期とする微小な位置である。また一方、2相信号x、yと基準信号zはコンパレータ等により構成されるパルス回路13によってパルス信号化されてカウンタ回路14に入力される。このカウンタ回路14では、パルス信号xdおよびydをカウントすることによって、前記位置検出値θdの1周期を越える範囲の回転位置上位桁Pudを検出する。そして、前記パルス信号zdによりカウンタをクリアし、歯車11の1回転周期で変化する回転位置上位桁Pudを出力する。この前記回転位置上位桁Pudと前記位置検出値θdは加算器19において加算され、歯車11の全周にわたる回転位置検出値Pdが得られる。
【0007】
この回転位置検出値Pdと、位置指令Pcとの差分が減算器1で求められ、比例演算器2にて速度指令Vcが演算される。微分器20が前記回転位置検出値Pdより速度検出値Vdを演算する。前記速度指令Vcと前記速度検出値Vdの差分を減算器3で求め、その出力を比例演算器4と積分演算器5で演算し、加算器6で加算しトルク指令Tcを出力する。
【0008】
ここで、図9に誤差補正器16のブロック図を示す。瞬時値比較部37は、A/Dコンバータ15aおよび15bの出力である前記2相信号の瞬時値(x、y)を比較し、A:x=0,B:y=0およびC:|x|=|y|の三つの条件A〜Cのいずれかを満たすタイミングで瞬時値保持部38に2相信号の瞬時値(x、y)を保持するトリガ信号を出力する。瞬時値保持部38は前記トリガ信号に基づいて2相信号の瞬時値(x、y)を取込んで保持する。この動作によって保持される2相信号の瞬時値(x、y)は、図11の波形中にy1,y2,x1,x2,x3,x4で示される値である。
【0009】
このようにして保持記憶されたy1,y2,x1,x2,x3,x4の値から、誤差演算部39が下記式5から式8により各誤差を補正する係数A、K、Va、Vbを求め、誤差補正部40が式1、式2に基づいて検出値を補正する。
A=x1x2+y1y2/(2x1x2) ・・・ 式5
K=y1y2(x4−x3)(x4+x3−x1−x2)/{2x1x2
(x32+x42)}+(x4+x3)(y1+y2+x4−x3)/
{2(x32+x42)} ・・・ 式6
Va=(x1+x2)/2−K(y1+y2)/2A ・・・ 式7
Vb=(y1+y2)/2−AK(x1+x2)/2 ・・・ 式8
【0010】
また、図10に誤差補正器16の別のブロック図を示す。前記式2をここでは、振幅誤差を1/B、位相誤差をθ’として次の式9に変換して扱う。
x=V・sinθ+Va ・・・ 式1
y=V/B・cos(θ+θ’)+Vb ・・・ 式9
【0011】
図8のA/Dコンバータ15aおよび15bの出力である前記2相信号の瞬時値(x、y)の最大値および最小値を最大値検出部41a、41bおよび最小値検出部42a、42bで検出する。最大値検出部41a、41bはピークホールド回路等から成り、最小値検出部42a、42bはボトムホールド回路等から成る。
【0012】
オフセット補正値検出部43aは、前記最大値検出部41aの出力値xmaxと前記最小値検出部42aの出力値xminを使用して、式10により前記係数Vaを算出する。
Va=(|xmax|−|xmin|)/2−Vcom ・・・ 式10
ここで、|x|は絶対値、Vcomは基準値を示しておりVa=Vb=0である場合の前記2相信号x、yの振幅中心電圧を示す。
【0013】
オフセット補正値検出部43bは、前記最大値検出部41bの出力値ymaxと前記最小値検出部42bの出力値yminを使用して、式11により前記係数Vbを算出する。
Vb=(|ymax|−|ymin|)/2−Vcom ・・・ 式11
ここで、|y|は絶対値を示す。
【0014】
振幅補正値検出部44は、前記最大値検出部41a、41bの出力値xmaxおよびymaxと、前記最小値検出部42a、42bの出力値xminおよびyminを使用して、式12により前記係数Bを算出する。
B=(xmax−xmin)/(ymax−ymin) ・・・ 式12
【0015】
次に、位相補正値検出部45について説明する。前記2相信号x、yを使用して、式13によりC信号を演算する。
C(θ)=x・y ・・・ 式13
【0016】
C信号の波形を図12に示す。前記C信号は前記2相信号x、yに対して周期が1/2の信号となり、2相信号x、yに位相誤差θ’がある場合、オフセットが発生する。
2相信号x、yに位相誤差が無い場合、歯車の歯の1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度でのC信号の振幅の和は、次の式14で表されるように0となる。
C(45)+C(135)+C(225)+C(315)=0 ・・・ 式14
【0017】
しかし、2相信号x,yに位相誤差θ’がある場合、θ=45度、135度、225度、315度でのC信号の振幅の和は0とはならず、次の式15で表される関係が成り立つ。
C(45)+C(135)+C(225)+C(315)
=−2×V^2/B・sin(θ’) ・・・ 式15
【0018】
式15を変形し、θ=45度、135度、225度、315度でのC信号の振幅の和、前記係数Va、Vb、Bを使用して、式16により位相誤差θ’を算出する。
θ’=sin−1[{C(45)+C(135)+C(225)
+C(315)}・B/(−2×V^2)] ・・・ 式16
【0019】
以上のように、各誤差を補正する係数Va、Vb、B、θ’を算出し、オフセット補正部46、位相補正部47、振幅補正部48が式1、式9により補正する。
【0020】
また、ソフトウェアで自動的に位置検出誤差に起因した検出位置の内挿誤差を補正する技術として、一定速度で移動しているときに1周期分を均等に分割して1周期分を直線で結んだ理想位置と位置検出値との内挿誤差を求め、位置検出値の補正を行う方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0021】
また、領域毎に予め決められた補正係数を使用して、位置検出値の補正を行う方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特許第3772121号明細書
【特許文献2】特開2002−257590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従来技術は、工作機械等に実装する前に、検出器単体で補正を実施する場合には、有効である。しかし、工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器では、機械に取り付ける状況により、前記、位相誤差、振幅誤差が異なるため、機台に取り付けた状態で、補正する必要がある。
【0024】
図13は、歯車11が偏心している場合の2相信号のリサージュである。歯車11とセンサー10が最も近い時、2相信号は外側の円を通り、それらが最も遠い時、内側の円を通る。主軸回転数が高速で、従来技術で振幅変動検出部がない場合には、保持される瞬時値は、図13に示される(x1,y1)〜(x4,y4)のようになる時がある。この値を用いて式7および式8の演算、つまり、点(x1,y1)と点(x3,y3)を結ぶ線分、および点(x2,y2)と点(x4,y4)を結ぶ線分のそれぞれの垂直二等分線の交点座標を求める演算を行うと、得られた座標点(Va,Vb)は、円の中心点からずれ、間違った値となる。
【0025】
また、図10に示す、従来の実施例においては、係数Bを算出するのに、2相信号の最大値と最小値をホールドしている。インバータで制御するような位置速度制御装置においては、インバータのスイッチングノイズ等が2相信号に重畳する場合があり、ノイズ成分を含んだ信号の最大値と最小値をホールドすることで、誤差が発生する。また、ノイズ成分を含んだ信号から、歯車の歯の1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度の2相信号をサンプリングし、位相誤差を計算しても、ノイズ成分の影響で過大な誤差が発生する。その結果、機械に検出器を取り付けた状態で、従来例の補正を行っても高精度な位置検出ができないという課題があった。
【0026】
また、特許文献1の技術ではソフトウェアで自動的に検出位置の内挿誤差の補正ができるため、位置検出誤差を補正するアナログ回路の追加やギアとセンサーとの位置関係の調整が不要になり、各点での内挿誤差を小さくすることができ、例えば、目標位置までの軌跡精度が問題とならないような位置決めモード時には、位置決め精度を比較的高くすることができるが、位置検出分解能の低い装置では、分割するポイント数が減少するため、位置決め精度が低くなるという課題があった。
【0027】
また、均等に分割した2点間の内挿誤差は両端の内挿誤差を直線補間して求めるため、各2点間の中心付近では内挿誤差を補正しきれず、例えば、目標位置までの軌跡精度も問題となる軌跡モード時には、各点で不連続な軌跡となって軌跡精度が低くなるという課題があった。
【0028】
特許文献2の技術では、振幅誤差の補正係数とオフセットの補正係数のみを使用するため、位相誤差を補正することができないという課題があった。また、位置の領域が変わる時点で補正する係数が変わるため、位置検出値が不連続になる可能性がある。さらに、基準エンコーダ等を使用して、領域毎の補正係数を予め計測して導出する必要があるという課題があった。
【0029】
本発明の目的は、工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器において、位置検出器を機械に取り付けた状態で検出器の位置誤差の補正ができ、歯車が偏芯し取り付けられている状態でも、または、モータ駆動用インバータのノイズが多い環境下でも、本発明の検出器の位置誤差の補正を行うことで、高精度な位置検出を可能にすることにある。
【0030】
また、位置検出分解能や制御モードに関係なく、連続的に位置検出誤差を補正することによって、検出位置の内挿誤差を小さくでき、位置決め精度および軌跡精度を高くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明に係わる位置検出器の出力信号をフィードバックして位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置は、回転体の回転角に応じて互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bを出力する位置検出器を備え、第1の正弦波信号Aは、A=Ka・sinθ+γa、第2の正弦波信号Bを、B=Kb・cos(θ+θ’)+γbと表し、補正後の第1の正弦波信号A’をA’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’をB’=β・(B−γb+A’・α)と表したとき、位置検出値θdをθd=tan−1(A’/B’)としてフィードバックに使用する位置速度制御装置において、速度制御時に速度指令値を積分した位置指令と位置検出値との差に基づいて、正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを補正する手段を備える。
【0032】
あるいは、位置制御時に位置指令を微分した速度指令値と速度検出値との差に基づいて、正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを補正する手段を備える。
【0033】
さらには、前記位置速度制御装置であって、前記誤差補正器は、歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=90度、270度付近であるときに正弦波信号Bのオフセット補正係数γbと位相補正係数αを補正し、歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度付近であるときに振幅補正係数βを補正し、歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=0度、180度付近であるとき正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを補正する。
【0034】
あるいは、一定速度で移動しているときに、どちらか一方の相を基準として求めた理想位置と位置検出値との差である内挿誤差に基づいて、1周期の前半(1/2周期分)の位置検出値を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(F)テーブル保持部と、1周期の後半(1/2周期分)の実際の検出位置を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(L)テーブル保持部を持ち、その出力に基づいて1/4周期または3/4周期のタイミングで位相補正係数αを補正し、1/8周期または5/8周期、3/8周期または7/8周期のタイミングで振幅補正係数βを補正する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0035】
本発明により、工作機械の主軸用の位置検出器として歯車と磁気式センサーを組み合わせた検出器において、位置検出器を機械に取り付けた状態で検出器の位置誤差の補正ができ、歯車が偏芯し取り付けられている状態でも、または、モータ駆動用インバータのノイズが多い環境下でも、本発明の検出器の位置誤差の補正を行うことで、高精度な位置検出が可能となる。
【0036】
また、位置検出分解能や制御モードに関係なく、連続的に位置検出誤差を補正することによって、検出位置の内挿誤差を小さくでき、位置決め精度および軌跡精度を高くすることが可能となる。
【0037】
以上説明したように、本発明では、位置検出器を機械に取り付けた状態で、検出器の位置誤差の補正ができ、歯車が偏芯し取り付けられている状態でも、または、モータ駆動用インバータのノイズが多い環境下でも、本発明の検出器の位置誤差の補正を行うことで、高精度な位置検出が可能となり、また、位置検出分解能や制御モードに関係なく、連続的に位置検出誤差を補正することによって、検出位置の内挿誤差を小さくでき、位置決め精度および軌跡精度を高くすることができる位置速度制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例を示すブロック図である。
【図2】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図3】本発明の他の実施例を示すブロック図である。
【図4】本発明の他の実施例の位置誤差補正係数算出部を説明するブロック図である。
【図5】2相信号の速度指令積分値と位置検出値の関係を示した図である。
【図6】2相信号の理想位置と位置検出値の関係を示した図である。
【図7】位置誤差補正係数算出部を説明するブロック図である。
【図8】従来例を示すブロック図である。
【図9】従来例の誤差補正部を示すブロック図である。
【図10】従来例の誤差補正部を示すブロック図である。
【図11】従来例の位置誤差検出部を説明する図である。
【図12】従来例の位相誤差検出部の説明する図である。
【図13】従来例の課題を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1に本発明の位置速度制御装置を回転軸に適用した実施例を示す。図8に示した従来例と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。また、図8と同様に、図1でも、回転軸に適用したが、直線軸に適用しても同様な機能が実現できる。
【0040】
図1の位置速度制御装置は、回転体の回転角に応じて互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bを出力する。第1の正弦波信号Aおよび第2の正弦波信号Bは次の式17および式18で表される。
A=Ka・sinθ+γa ・・・ 式17
B=Kb・cos(θ+θ’)+γb ・・・ 式18
【0041】
積分器25は、速度指令Vcを積分し、速度指令積分値Plを出力する。位置誤差補正係数算出部26は、前記速度指令積分値Plと前記位置検出値Pdを入力とし、正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを出力する。
【0042】
オフセット補正部22で、A/Dコンバータ15aが出力した正弦波信号Aから、正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを減算し、出力する補正後の正弦波信号A’は次の式19のように表される。
A’=A−γa ・・・ 式19
【0043】
A/Dコンバータ15bが出力した正弦波信号Bから、正弦波信号Bのオフセット補正係数γbを減算し、(B−γb)を出力する。位相補正部23は、前記オフセット補正部22の出力信号A’、(B−γb)と、初期値が0である位相補正係数αを入力とし、信号(B−γb+A’・α)を出力する。振幅補正部24は、前記信号(B−γb+A’・α)と、初期値が1である振幅補正係数βを入力とし、出力する補正後の正弦波信号B’は次の式20のように表される。
B’=β・(B−γb+A’・α) ・・・ 式20
【0044】
除算器17が前記補正後の正弦波信号B’を前記補正後の正弦波信号A’で除算し、変換器18が出力する位置検出値θdは次の式21のように表される。
θd=tan−1(A’/B’) ・・・ 式21
【0045】
また、上記説明では、Aを基準として、Bの位相誤差・振幅誤差を補正したが、逆に、Bを基準として、Aの位相誤差・振幅誤差を補正しても良い。
【0046】
図1において、本発明は、工作機械の主軸等において、速度指令と主軸等の実速度が一致していることを前提としている。そのため、速度指令と主軸等の実速度が一致しないような状態では正確な誤差補正ができない。そのため、誤差補正モード等を用意し、誤差補正信号が入力されたとき(mode:ON)に速度制御ループゲインを高く設定し、速度指令と主軸等の実速度が一致するようにする。
【0047】
次に、位置誤差補正係数算出部26について説明する。例えば、前記歯車11の歯数が360とすると、前記正弦波信号Aの1周期分は歯車回転角度で1度となる。前記速度指令積分値Plを横軸とし、歯車回転角度1度分を横軸フルスケールとする。位置検出値Pdの歯車回転角度1度分を縦軸フルスケールとしてプロットすると図5のようになる。
【0048】
正弦波信号Aのオフセット、正弦波信号Bのオフセット、位相誤差、振幅誤差が存在しない場合(パターン1)は、Pl=Pdとなる。正弦波信号Aのオフセットのみがある場合(パターン2)は、正弦波信号Aのオフセットが正のときは実線のようになり、正弦波信号Aのオフセットが負のときは点線のようになる。また、正弦波信号Bのオフセットのみがある場合(パターン3)は、正弦波信号Bのオフセットが正のときは実線のようになり、正弦波信号Bのオフセットが負のときは点線のようになる。また、位相誤差のみがある場合(パターン4)は、位相誤差が正のときは実線のようになり、位相誤差が負のときは点線のようになる。振幅誤差のみがある場合(パターン5)は、振幅誤差が1より大きいときは実線のようになり、振幅誤差が1より小さいときは点線のようになる。
【0049】
Pl=0度、180度近辺では、正弦波信号Aのオフセットの感度が、Pl=90度、270度近辺では正弦波信号Bのオフセットと位相誤差の感度が大きいことが、Pl=45度、135度、225度、315度近辺では振幅誤差の感度が大きいことが分かる。また、歯車の偏芯等があり、正弦波信号の振幅が歯車1回転で1周期の振幅差が発生していても前記速度指令積分値Plと前記位置検出値Pdの関係は全く同じであり、歯車の偏芯の影響を受けない。
【0050】
図7に前記正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを演算する一例を示す。誤差演算器53は、前記速度指令積分値PlがPl=0度、180度となる角度のときの前記速度指令積分値Plの値と前記位置検出値Pdの値を使用して、式22によりΔγaを算出する。
Δγa=−Pl(0)+Pd(0)+Pl(180)−Pd(180) ・・・ 式22
【0051】
前記誤差演算器53の出力Δγaを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを出力する。位置演算器57は、加算器56から出力された正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを使用して、正弦波信号A、Bを前記式19、式20、式21により、位置指令値θdを演算する。速度指令積分値PlがPl=0度、180度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を誤差演算器53へ出力する。Δγa=0となったとき、正弦波信号Aのオフセット補正係数γaの演算が収束する。
【0052】
正弦波信号Bのオフセット補正係数γbも正弦波信号Aのオフセット補正係数γaと同様に演算できる。誤差演算器53は、速度指令積分値PlがPl=90度、270度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を使用し、式23によりΔγbを算出する。
Δγb=−Pl(90)+Pd(90)+Pl(270)−Pd(270) ・・・ 式23
【0053】
前記誤差演算器53の出力Δγbを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、正弦波信号Bのオフセット補正係数γbを出力する。
【0054】
位相補正係数αも正弦波信号Aのオフセット補正係数γaと同様に演算できる。誤差演算器53は、速度指令積分値PlがPl=90度、270度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を使用し、式24によりΔαを算出する。
Δα=−Pl(90)+Pd(90)+Pl(270)−Pd(270) ・・・ 式24
【0055】
前記誤差演算器53の出力Δαを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、位相補正係数αを出力する。
【0056】
振幅補正係数βも正弦波信号Aのオフセット補正係数γaと同様に演算できる。誤差演算器53は、速度指令積分値PlがPl=45度、135度、225度、315度となる角度のときの速度指令積分値Plの値と位置検出値Pdの値を使用し、式25によりΔβを算出する。
Δβ=−Pl(45)+Pd(45)+Pl(135)
−Pd(135)−Pl(225)+Pd(225)
+Pl(315)−Pd(315) ・・・ 式25
【0057】
前記誤差演算器53の出力Δβを比例演算器54、積分演算器55で演算し、それぞれの出力を加算器56で加算し、振幅補正係数βを出力する。
【0058】
次に、図2に本発明の位置速度制御装置を回転軸に適用した別の実施例を示す。従来例図8および実施例図1と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。微分器35は、位置指令Pcを微分し、位置指令微分値Vc’を出力する。
【0059】
位置誤差補正係数算出部36は、位置指令微分値Vc’と速度指令Vcを入力とし、正弦波信号Aのオフセット誤差補正係数γa、正弦波信号Bのオフセット誤差補正係数γb、位相補正係数γa、振差補正係数γbを出力する。
【0060】
実施例図2では、図5の横軸を速度指令Vc、縦軸を位置指令微分値Vc’とすると同様な図となる。前記実施例図1で説明した前記速度指令積分値Plを速度指令Vcに、前記位置検出値Pdを位置指令微分値Vc’に置き換え演算する。
【0061】
次に、図3に本発明の位置速度制御装置を回転軸に適用した別の実施例を示す。従来例図8、実施例図1および図2と同様の構成には同一の符号を付し、その説明を省略する。位置誤差補正係数算出部30は、一定速度で移動しているときの正弦波信号Aと位置検出値θdを入力とし、位相補正係数α、振幅補正係数βを出力する。
【0062】
図4に誤差補正器27のブロック図を示す。θd(F)テーブル保持部50aは、一定速度で移動しているときに、正弦波信号Aを基準として、1周期の前半(1/2周期分)の位置検出値θdを所定時間毎にテーブルとして保持する。θd(L)テーブル保持部50bは、一定速度で移動しているときに、正弦波信号Aを基準として、1周期の後半(1/2周期分)の位置検出値θdを所定時間毎にテーブルとして保持する。位相補正値検出部52は、θd(F)テーブル保持部50aまたはθd(L)テーブル保持部50bが出力した、特定のタイミングの位置検出値θdを使用して、位相補正係数αを出力する。位相補正部28は、位相補正値検出部52が出力した位相補正係数αに基づいて位相誤差を補正する。振幅補正値検出部51は、θd(F)テーブル保持部50aまたはθd(L)テーブル保持部50bが出力した特定のタイミングの位置検出値θdを使用して、振幅補正係数βを出力する。振幅補正部29は、振幅補正値検出部51が出力した振幅補正係数βに基づいて振幅誤差を補正する。
【0063】
次に、位相誤差または振幅誤差の検出方法を示した図6を参照しながら、位相補正値検出部52および振幅補正値検出部51を説明する。互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bに位相誤差または振幅誤差が含まれている場合には、2相信号1周期に対して2倍の周期の内挿誤差が発生する。
【0064】
位相補正値検出部52では、位相差が90度より大きく、かつ、振幅比が1の場合(パターン1)、一定速度で移動しているときに、1/4周期または3/4周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が正の最大値となることに着目し、1/4周期または3/4周期のタイミングの位置検出値θdを小さくして内挿誤差が小さくなるように初期値が0である位相補正係数αを増加させる。位相差が90度より小さく、かつ、振幅比が1の場合(パターン2)、一定速度で移動しているときに、1/4周期または3/4周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が負の最大値となることに着目し、1/4周期または3/4周期のタイミングの位置検出値θdを大きくして内挿誤差が小さくなるように、初期値が0である位相補正係数を減少させる。
【0065】
振幅補正値検出部51では、位相差が90度で、かつ、振幅比が1より大きい場合(パターン3)、一定速度で移動しているときに、1/8周期または5/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が負の最大値、3/8周期または7/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が正の最大値となることに着目し、1/8周期または5/8周期のタイミングの位置検出値θdを大きく、3/8周期または7/8周期のタイミングの位置検出値θdを小さくして内挿誤差が小さくなるように、初期値が1である位相補正係数を減少させる。位相差が90度で、かつ、振幅比が1より小さい場合(パターン4)、一定速度で移動しているときに、1/8周期または5/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が正の最大値、3/8周期または7/8周期のタイミングで理想位置に対して内挿誤差が負の最大値となることに着目し、1/8周期または5/8周期のタイミングの位置検出値θdを小さく、3/8周期または7/8周期のタイミングの位置検出値θdを大きくして内挿誤差が小さくなるように、初期値が1である位相補正係数を増加させる。
【符号の説明】
【0066】
1,3 減算器、2,4,54 比例演算器、5,55 積分演算器、6,19,56 加算器、7 インバータ、8 モータ、10 センサー、11 歯車、12 円板、13 パルス回路、14 カウンタ回路、15a,15b A/Dコンバータ、16,21,27,31 誤差補正器、17 除算器、18 変換器、20,35 微分器、22,32,46 オフセット補正部、23,28,33,47 位相補正部、24,29,34,48 振幅補正部、25 積分器、26,30,36 位置誤差補正係数算出部、37 瞬時値比較部、38 瞬時値保持部、39 誤差演算部、40,49 誤差補正部、41a,41b 最大値検出部、42a,42b 最小値検出部、43a,43b オフセット補正値検出部、44,51 振幅補正値検出部、45,52 位相補正値検出部、50a θd(F)テーブル保持部、50b θd(L)テーブル保持部、53 誤差演算器、57 位置演算器。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置検出器の出力信号をフィードバックして位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置であって、
回転体の回転角に応じて第1の正弦波信号A=A=Ka・sinθ+γaおよび第2の正弦波信号B=Kb・cos(θ+θ’)+γbを出力する位置検出器と、
補正後の第1の正弦波信号A’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’=β・(B−γb+A・α)に基づいて、位置検出値θd=tan−1(A’/B’)を算出し、フィードバックさせる手段と、
速度制御時に速度指令値を積分した位置指令と位置検出値との差に基づいて、第1の正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、第2の正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを求め、第1の正弦波信号Aおよび第2の正弦波信号Bを補正する手段と、
を備えた位置速度制御装置。
【請求項2】
位置検出器の出力信号をフィードバックして位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置であって、
回転体の回転角に応じて第1の正弦波信号A=A=Ka・sinθ+γaおよび第2の正弦波信号B=Kb・cos(θ+θ’)+γbを出力する位置検出器と、
補正後の第1の正弦波信号A’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’=β・(B−γb+A・α)に基づいて、位置検出値θd=tan−1(A’/B’)を算出し、フィードバックさせる手段と、
位置制御時に位置指令を微分した速度指令値と速度検出値との差に基づいて、第1の正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、第2の正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを求め、第1の正弦波信号Aおよび第2の正弦波信号Bを補正する手段と、
を備えた位置速度制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置速度制御装置であって、
歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=90度、270度付近であるときに正弦波信号Bのオフセット補正係数γbと位相補正係数αを補正し、
歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度付近であるときに振幅補正係数βを補正し、
歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=0度、180度付近であるときに正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを補正することを特徴とする位置速度制御装置。
【請求項4】
位置検出器の出力信号をフィードバックする位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置であって、
前記位置速度制御装置は、回転体の回転角に応じて互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bを出力する位置検出器を備え、
第1の正弦波信号は、A=Ka・sinθ+γa、第2の正弦波信号を、B=Kb・cos(θ+θ’)+γbと表し、補正後の第1の正弦波信号をA’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号をB’=β・(B−γb+A・α)と表したとき、
位置検出値θdを、θd=tan−1(A’/B’)としてフィードバックに使用する位置速度制御装置において、
回転体の回転角に応じて第1の正弦波信号A=A=Ka・sinθ+γaおよび第2の正弦波信号B=Kb・cos(θ+θ’)+γbを出力する位置検出器と、
補正後の第1の正弦波信号A’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’=β・(B−γb+A・α)に基づいて、位置検出値θd=tan−1(A’/B’)を算出し、フィードバックさせる手段と、
一定速度で移動しているときに、どちらか一方の相を基準として求めた理想位置と位置検出値との差である内挿誤差に基づいて、1周期の前半(1/2周期分)の位置検出値を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(F)テーブル保持部、および、1周期の後半(1/2周期分)の位置検出値を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(L)テーブル保持部と、
θd(F)テーブル保持部およびθd(L)テーブル保持部に記録されている1/4周期または3/4周期のタイミングの位置検出値に基づいて、位相補正係数αを算出し、第2の正弦波信号を補正する位相補正手段と、
θd(F)テーブル保持部およびθd(L)テーブル保持部に記録されている1/8周期または5/8周期、3/8周期または7/8周期のタイミングの位置検出値に基づいて、振幅補正係数βを算出し、第2の正弦波信号を補正する振幅補正手段と、
を備えることを特徴とする位置速度制御装置。
【請求項1】
位置検出器の出力信号をフィードバックして位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置であって、
回転体の回転角に応じて第1の正弦波信号A=A=Ka・sinθ+γaおよび第2の正弦波信号B=Kb・cos(θ+θ’)+γbを出力する位置検出器と、
補正後の第1の正弦波信号A’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’=β・(B−γb+A・α)に基づいて、位置検出値θd=tan−1(A’/B’)を算出し、フィードバックさせる手段と、
速度制御時に速度指令値を積分した位置指令と位置検出値との差に基づいて、第1の正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、第2の正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを求め、第1の正弦波信号Aおよび第2の正弦波信号Bを補正する手段と、
を備えた位置速度制御装置。
【請求項2】
位置検出器の出力信号をフィードバックして位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置であって、
回転体の回転角に応じて第1の正弦波信号A=A=Ka・sinθ+γaおよび第2の正弦波信号B=Kb・cos(θ+θ’)+γbを出力する位置検出器と、
補正後の第1の正弦波信号A’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’=β・(B−γb+A・α)に基づいて、位置検出値θd=tan−1(A’/B’)を算出し、フィードバックさせる手段と、
位置制御時に位置指令を微分した速度指令値と速度検出値との差に基づいて、第1の正弦波信号Aのオフセット補正係数γa、第2の正弦波信号Bのオフセット補正係数γb、位相補正係数α、振幅補正係数βを求め、第1の正弦波信号Aおよび第2の正弦波信号Bを補正する手段と、
を備えた位置速度制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置速度制御装置であって、
歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=90度、270度付近であるときに正弦波信号Bのオフセット補正係数γbと位相補正係数αを補正し、
歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=45度、135度、225度、315度付近であるときに振幅補正係数βを補正し、
歯車の歯1個分を1周期とする角度θ=0度、180度付近であるときに正弦波信号Aのオフセット補正係数γaを補正することを特徴とする位置速度制御装置。
【請求項4】
位置検出器の出力信号をフィードバックする位置制御・速度制御を行う位置速度制御装置であって、
前記位置速度制御装置は、回転体の回転角に応じて互いに位相の異なる2相の正弦波信号A、Bを出力する位置検出器を備え、
第1の正弦波信号は、A=Ka・sinθ+γa、第2の正弦波信号を、B=Kb・cos(θ+θ’)+γbと表し、補正後の第1の正弦波信号をA’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号をB’=β・(B−γb+A・α)と表したとき、
位置検出値θdを、θd=tan−1(A’/B’)としてフィードバックに使用する位置速度制御装置において、
回転体の回転角に応じて第1の正弦波信号A=A=Ka・sinθ+γaおよび第2の正弦波信号B=Kb・cos(θ+θ’)+γbを出力する位置検出器と、
補正後の第1の正弦波信号A’=A−γa、補正後の第2の正弦波信号B’=β・(B−γb+A・α)に基づいて、位置検出値θd=tan−1(A’/B’)を算出し、フィードバックさせる手段と、
一定速度で移動しているときに、どちらか一方の相を基準として求めた理想位置と位置検出値との差である内挿誤差に基づいて、1周期の前半(1/2周期分)の位置検出値を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(F)テーブル保持部、および、1周期の後半(1/2周期分)の位置検出値を所定時間毎にテーブルとして保持するθd(L)テーブル保持部と、
θd(F)テーブル保持部およびθd(L)テーブル保持部に記録されている1/4周期または3/4周期のタイミングの位置検出値に基づいて、位相補正係数αを算出し、第2の正弦波信号を補正する位相補正手段と、
θd(F)テーブル保持部およびθd(L)テーブル保持部に記録されている1/8周期または5/8周期、3/8周期または7/8周期のタイミングの位置検出値に基づいて、振幅補正係数βを算出し、第2の正弦波信号を補正する振幅補正手段と、
を備えることを特徴とする位置速度制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−132805(P2012−132805A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285704(P2010−285704)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000149066)オークマ株式会社 (476)
【Fターム(参考)】
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