説明

低い飲料可溶性鉄含有量の吸着剤を作製するための方法およびこれらを使用する方法、ならびにこれらによって作製された組成物

【課題】飲料から特定の成分を除去する際に使用するための、低い飲料可溶性鉄(BSI)含有量を有する吸着剤を提供すること。
【解決手段】吸着剤が、飲料(例えば、ビール)から特定の望ましくない成分を除去し、低い飲料可溶性鉄(BSI)含有量を有する。これらの望ましくない成分は、寒冷混濁を引き起こす混入物を含む。この吸着剤は、2つの成分、シリカ成分およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分(例えば、トリポリリン酸ナトリウム(STPP))を含む。この吸着剤を使用するためのプロセスは、最初に、飲料を吸着剤と接触させて、望ましくない成分の少なくとも一部を吸着させ、次いで、この飲料から吸着剤を分離する工程を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、飲料(例えば、ビール)中において低い飲料可溶性鉄含有量を有する吸着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
シリカゲルは、特定の飲料から特定の望ましくない成分を、代表的には吸着によって除去するために使用されている。例えば、シリカゲルは、一般的に、混濁の形成の原因となる低分子量タンパク質(例えば、40,000ドルトン未満)を吸着することによって、ビールを安定化するために醸造プロセスにおいて使用されている。市販のシリカゲルは、シリケート溶液および鉱酸から製造され、そして少量の金属(例えば、鉄)(これは、飲料中に部分的に可溶性であり、そしてそれらに混入する)を含む。飲料中に可溶性であるシリカゲルの鉄含有量の部分は、「飲料可溶性鉄」(しばしば、「BSI」と略される)として公知である。吸着剤のBSIが容易に同定され得るが、BSIは、とりわけ、異なる飲料、pH、および温度とともに変化する。このように溶解された金属は、飲料のコロイド状構成物を不安定化し得、より低い品質を導く。例えば、高度に溶解した鉄のレベルは、ビールの味および貯蔵寿命に悪影響を与える。
【0003】
ビールを安定化し、そしてより詳細には、寒冷混濁および金属混入を防ぐようにビールを処理するための努力がなされている。例えば、Bradleyに対する特許文献1は、色コントロールのためのクエン酸の助けを借りて、タンニン酸または没食子酸あるいはこれらの混合物の水溶液を用いて濾過助剤(例えば、ケイ藻岩)を洗浄することによって、BSIを減少することを開示する。
【特許文献1】米国特許第4,134,857号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料における高い鉄のレベルの存在は、飲料の味および長期安定性(「貯蔵寿命」)に対して有害であり得る。従って、低いBSIを有する対費用効果の高い吸着剤を得ることが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
その目的を考慮して、本発明は、寒冷混濁を減少させるために、飲料から特定の成分を除去する際に使用するための、低い飲料可溶性鉄(BSI)含有量を有する吸着剤を提供する。吸着剤は、吸着剤の製造の間、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を導入することによって作製される。特に、このプロセスは、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤(例えば、トリポリリン酸ナトリウム)を、シリカゲルの反応物またはシリカゲルの前駆体を含む水溶液、あるいはその両方と接触させる工程を包含する。反応物は、シリカヒドロゲルを作製するために、鉱酸とともに使用される、ケイ酸ナトリウム溶液またはケイ酸カリウム溶液であり得る。前駆体は、ケイ酸ナトリウム溶液またはケイ酸カリウム溶液を鉱酸と混合することによって形成されるシリカヒドロゲルであり得る。前駆体から吸着剤が形成される。従って、本発明の組成物は、シリカ成分およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分を含む吸着剤である。
【0006】
本発明はまた、飲料から特定の混入物を減少させるための吸着剤を使用するプロセスを提供する。本発明のプロセスおよび組成物は、例えば、ビールにおける寒冷混濁を形成する傾向がある混入物の除去を可能にする。このプロセスは、飲料と本発明の吸着剤を接触させて、その成分の少なくとも一部を吸着し、次いで、吸着剤を飲料から、例えば、濾過によって分離する工程を包含する。
【0007】
本発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)
低い飲料可溶性鉄含有量を有するシリカゲル吸着剤を作製するための方法であって、該方法が、以下の工程:
ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を、該シリカゲルの反応物および該シリカゲルの前駆体を含む洗浄溶液のうちの少なくとも1つと接触させる工程;および
該シリカゲル吸着剤を該前駆体から形成する工程、
を包含する、方法。
(項目2)
項目1に記載の方法であって、ここで:
前記反応物がケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを含み;そして
前記接触させる工程が、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を前記ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムと接触させ、そして該ポリホスフェート金属イオン封鎖剤および該ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムの溶液を形成して混合物を形成する工程からなる、
方法。
(項目3)
酸を前記混合物に添加して、ヒドロゾルを形成する工程をさらに包含する、項目2に記載の方法。
(項目4)
項目2に記載の方法であって、ここで、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤が、トリポリリン酸ナトリウムである、方法。
(項目5)
項目1に記載の方法であって、ここで:
前記接触させる工程が、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を、前記前駆体を含む洗浄溶液と接触させる工程からなり、そして
前記前駆体が、酸とケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムとを混合することによって形成されるヒドロゲルを含む、
方法。
(項目6)
項目5に記載の方法であって、ここで、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤が、トリポリリン酸ナトリウムである、方法。
(項目7)
項目1に記載の方法であって、ここで、前記接触させる工程が、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を、前記反応物および前記前駆体を含む洗浄溶液と接触させる工程を包含する、方法。
(項目8)
低い飲料可溶性鉄含有量を有するシリカゲル吸着剤を作製するための方法であって、該方法が、以下の工程:
ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムと混合して、混合物を形成する工程;
酸を該混合物に添加して、ポリホスフェート成分を有するシリカヒドロゾルを形成し、そして該ヒドロゾルをヒドロゲルに硬化させる工程;
該ヒドロゲルを酸性水を用いて洗浄する工程;および
該洗浄されたヒドロゲルを粉砕して、シリカゲル吸着剤を形成する工程、
を包含する、方法。
(項目9)
項目8に記載の方法であって、ここで、前記酸が、鉱酸である、方法。
(項目10)
項目8に記載の方法であって、ここで、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤が、トリポリリン酸ナトリウムである、方法。
(項目11)
項目10に記載の方法であって、ここで:
前記ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムが、一定の鉄含有量を有し;
前記トリポリリン酸ナトリウムが、0.5:1と50:1の間のトリポリリン酸ナトリウム:鉄のモル比を達成するための量で、該ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムに添加され;
前記酸が、該ナトリウムまたはカリウムを十分に中和するための酸の化学量論的に必要な量よりも、5モル%と30モル%との間の多い量で、前記混合物に添加され;そして
前記酸性水が、2.5と4.0との間のpHを有する、
方法。
(項目12)
項目10に記載の方法であって、ここで:
前記ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムが、一定の鉄含有量を有し;
前記トリポリリン酸ナトリウムが、5:1と10:1の間のトリポリリン酸ナトリウム:鉄のモル比を達成するための量で、該ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムに添加され;
前記酸が、該ナトリウムまたはカリウムを十分に中和するための酸の化学量論的に必要な量よりも、15モル%と25モル%との間の多い量で、前記混合物に添加され;そして
前記酸性水が、3.2と3.4との間のpHを有する、
方法。
(項目13)
低い飲料可溶性鉄含有量を有するシリカゲル吸着剤を作製するための方法であって、該方法が、以下の工程:
ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムを酸と混合させてヒドロゾルを形成し、そして該ヒドロゾルをヒドロゲルに硬化させる工程;
該ヒドロゲルを、水およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤の酸性化混合物を用いて洗浄する工程;および
該洗浄されたヒドロゲルを粉砕して、該シリカゲル吸着剤を形成する工程、
を包含する、方法。
(項目14)
項目13に記載の方法であって、ここで、前記酸が、鉱酸である、方法。
(項目15)
項目13に記載の方法であって、ここで、前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤が、トリポリリン酸ナトリウムである、方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、ここで:
前記ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムが、一定の鉄含有量を有し;
前記トリポリリン酸ナトリウムが、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.01重量%と1重量%との間のトリポリリン酸ナトリウムの濃度を達成するための量で、前記酸性化混合物に添加され;
前記酸が、該ナトリウムまたはカリウムを十分に中和するための酸の化学量論的に必要な量よりも、5モル%と30モル%との間の多い量で、該混合物に添加され;そして
該酸性水が、2.5と4.0との間のpHを有する、
方法。
(項目17)
項目15に記載の方法であって、ここで:
前記ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムが、一定の鉄含有量を有し;
前記トリポリリン酸ナトリウムが、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.05重量%と0.5重量%との間のトリポリリン酸ナトリウムの濃度を達成するための量で、前記酸性化混合物に添加され;
前記酸が、該ナトリウムまたはカリウムを十分に中和するための酸の化学量論的に必要な量よりも、15モル%と25モル%との間の多い量で、該混合物に添加され;そして
該酸性水が、3.3と3.5との間のpHを有する、
方法。
(項目18)
寒冷混濁を減少させるために飲料から成分を除去する際に使用するための組成物であって、該組成物が、シリカ成分およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分を含む吸着剤を含む、組成物。
(項目19)
項目18に記載の組成物であって、ここで:
前記シリカ成分が、シリカゲルであり;そして
前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分が、トリポリリン酸ナトリウムである、
組成物。
(項目20)
寒冷混濁を減少させるために飲料から成分を除去するための方法であって、該方法が、以下の工程:
飲料を、シリカ成分およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分を含む吸着剤と接触させて、該吸着剤上に該成分の少なくとも一部を吸着させ、それによって、成分の減少した飲料を残す、工程;および
該成分の減少した飲料から該吸着剤を分離する工程、
を包含する、方法。
(項目21)
項目20に記載の方法であって、ここで:
前記シリカ成分が、シリカゲルであり;そして
前記ポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分が、トリポリリン酸ナトリウムである、
方法。
(項目22)
項目21に記載の方法であって、ここで、前記吸着剤が、約100ppm〜約1,000ppmの濃度を達成するための量で、該飲料に添加される、方法。
(項目23)
項目21に記載の方法であって、ここで、前記吸着剤が、約400ppm〜約800ppmの濃度を達成するための量で、該飲料に添加される、方法。
(項目24)
項目21に記載の方法であって、ここで、前記分離する工程が、前記成分の減少した飲料から前記吸着剤を濾過する工程を包含する、方法。
(項目25)
項目1に記載の方法によって形成された、シリカゲル吸着剤。
(項目26)
項目8に記載の方法によって形成された、シリカゲル吸着剤。
(項目27)
項目13に記載の方法によって形成された、シリカゲル吸着剤。
【0008】
上記一般的記載および以下の詳細な記載は、本発明の例示であり、制限ではないことが理解される。
【0009】
本発明は、添付の図面とともに読んだ場合、以下の詳細な説明から最も良く理解される。
【0010】
(発明の詳細な説明)
本発明は、吸着剤から飲料への鉄の漏出を最小にしながら、飲料中における混入物を除去し、そして寒冷混濁を防ぐためのプロセスおよび組成物に関する。本明細書中で使用される場合、用語「飲料」は、飲料中に残った場合、冷却の際に、混濁を形成する傾向があるが、本発明によって吸着され得る特定のタンパク質を含む、全ての飲料を包含することを意図する。このような飲料としては、多くの植物ベースの飲料または麦芽ベースの飲料(例えば、ビール、エール、およびワイン、ならびにフルーツジュース)が挙げられる。本発明は、ビール(ラガー、ピルスナー、ミュンヘンビールおよびエール、ポーター、ならびにスタウトを含む)に特に適用可能である。
【0011】
本明細書中で使用される場合、「飲料から成分を除去する」などの場合、用語「除去する」とは、寒冷混濁を引き起こす選択された成分(例えば、タンパク質)の少なくともある割合を除去するが、これらの成分のいずれかの100%を必ずしも完全に除去しないことを意味する。しかし、いくつかの場合において、成分は、公知の量的分析手順によって検出され得ない程度まで除去され得る。
【0012】
以下に記載されるように、本発明は、本発明のシリカゲル吸着剤を作製する間に、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を利用する。ポリホスフェート金属イオン封鎖剤は、アニオンP3n+1を含む化合物であり、カチオン(この場合、最も注目すべきは、第二鉄カチオンまたは第一鉄カチオン)を封鎖(sequestering)し得る。ポリホスフェート金属イオン封鎖剤は、その形成において、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を含み得る。トリポリリン酸ナトリウム、Na10が、本発明の目的に適することが見出された。
【0013】
本発明の吸着剤を作製する方法は、図1および2と関連して考察される。一般的に、これらの方法は、最初に、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤を、シリカゲルの反応物またはシリカゲルを含む洗浄溶液(または両者の組み合わせ)と接触させる工程、次いで、前駆体からシリカゲル吸着剤を形成する工程を包含する。シリカゲルの反応物は、開始物質を含み得、この開始物質は、別の開始物質と化学反応を受けて、シリカゲルの前駆体を形成する。反応物は、ケイ酸ナトリウム溶液またはケイ酸カリウム溶液を含み、これは、特定の条件下で酸と組み合わせ、そしてジェットノズルに強制的に通した場合に、ヒドロゲルを形成する。前駆体は、最終のシリカゲルと実施的に同じ化学組成を有するが、いくらかの物理的変化(例えば、多孔度特性の変化、水分含有量の変化、またはその孔内の別の化学物質の物理的保持率の変化)を受け得る物質である。形成は、従来の手段によってなされ、以下に考察されるように、任意の熱水処理(以下の実施例においてはなされないが)、洗浄、ミリング、および乾燥によってなされる。
【0014】
図1に示される実施形態において、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤(例えば、トリポリリン酸ナトリウム(STPP))は、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムと混合されて、混合物を形成する。金属イオン封鎖剤供給源104は、水中に溶かされたSTPPの溶液を提供し得る。この溶液を、シリケート供給源102から提供されるケイ酸カリウムまたはケイ酸ナトリウムのいずれかと組み合わせて、ミキサー106において、STPPをドープしたシリケート混合物を形成する。STPPをドープしたシリケート混合物は、適切な混合を達成するのに十分な時間(例えば、2〜6時間)混合されるが、これは、他の因子に依存して変化し得る。添加されるポリホスフェート金属イオン封鎖剤の量は、シリケートの鉄含有量(これは、従来の定量的分析技術によって決定され得る)に依存する。トリポリリン酸ナトリウムは、約0.5:1と50:1の間、好ましくは、約5:1と10:1との間の、トリポリリン酸ナトリウム:鉄のモル比を達成する量で、ケイ酸ナトリウム溶液またはケイ酸カリウム溶液に添加され得る。
【0015】
次いで、STPPをドープしたシリケート混合物を、酸(例えば、無機酸)で中和することによって、シリカゲルが形成される。以下の実施例では、硫酸を使用する。シリケート溶液へのSTPPの添加以外に、STPP成分を含有するシリカゲル吸着剤の生成は、従来のシリカゲル吸着剤を作製するための任意の公知の様式でもたらされ得る。例えば、酸供給源100を使用して、酸を供給し、この酸が、STPPをドープしたシリケート混合物と合わされて、ヒドロゾルを形成する。詳細には、シリカヒドロゾルは、酸の水溶液およびケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウムの水溶液を迅速に混合することによって形成される。ヒドロゾルが、約5〜30重量%のSiO、好ましくは、10〜20重量%のSiOを含むように、反応物の濃度および流速または割合を調整することが、本発明において有利であることが見出された。また、このシリケート溶液中に存在するアルカリ金属の全てを完全に中和すること、および好ましくは、ナトリウムまたはカリウムを完全に中和するための酸の化学量論的に必要とされる量よりも5モルパーセント〜30モルパーセント(好ましくは、15〜25モルパーセント)過剰に酸を提供することが好ましいことも、見出された。従って、好ましくは、このシリカヒドロゾル中には未反応のNaOもKOも全く存在しないかまたは実質的に存在しない。
【0016】
図1に示されるように、ポリホスフェート成分を有するヒドロゾルは、ノズル108に通される。このノズルから、ヒドロゾルが、移動ベルト109上に乗せられ、そして全て公知の様式で、ヒドロゲルを形成するように固化させる。ヒドロゲルは、このヒドロゲルがさらなる処理のために安定となるように十分な期間、このベルト上で寝かされる。1つの実施形態において、ヒドロゾルは、約18%のSiOを含み、約1未満のpHを有し、そして約数分でゲル化する。このようなヒドロゾルは、ベルト109上でビーズを形成する。
【0017】
次いで、ヒドロゲルは、酸性化された水を含む洗浄器112中で洗浄され、ヒドロゲルから塩を除去する。当該分野で周知のように、排出物中の塩濃度が、受容可能なレベル以下、好ましくは、0または0付近になるまで、複数回の洗浄が行われ得る。洗浄は、バッチプロセス、並流または向流として、行い得る。例えば、硫酸を使用して水を酸性化することが望ましいことが、見出された。洗浄水のpHは、2.5〜4.0、好ましくは、3.2〜3.4であり得る。
【0018】
次いで、洗浄されたヒドロゲルは、ライン114を通ってミリングユニット116へ送られ、ここで、このヒドロゲルが、粉砕される。ミリングは、平均粒径が、約10〜約40ミクロンになるまで継続され得るが、特定のサイズは、最終用途の要件および飲料精製プロセスにおける他の条件に依存する。一般に、粒子は、粉末の形態であるが、濾過が困難になるほど小さく粉砕されるべきではない。次いで、吸着剤が、パッケージングユニット120においてパッケージングされる。図1に示される実施形態に従って形成された吸着剤は、減少されたBSIを有する。
【0019】
図2に示される実施形態において、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤は、シリケート溶液ではなく、酸性化された洗浄水と混合され、このプロセシングにおける他の全ては、ほぼ同じである。詳細には、シリケート供給源200からの反応物(例えば、ケイ酸ナトリウムまたはケイ酸カリウム)が、酸供給源202からの酸と混合される。この混合物は、ノズル203に通され、ヒドロゾルを形成し、このヒドロゾルが、全て公知の様式で、代表的には、ベルトまたは容器205上で、ヒドロゲル204に固化する。次いで、ヒドロゲルは、上記のように、寝かされ、そして洗浄器208に送られる。全ての相対濃度は、約15〜20%のSiOがヒドロゾル中に存在するように、反応物の流速が調整されることを除いて、図1に示される実施形態と同じである。
【0020】
酸性化された洗浄水を含む代わりに、洗浄器208は、水とユニット206からのポリホスフェート金属イオン封鎖剤との酸性化された混合物を含む。ポリホスフェート化合物は、STPPであり得る。トリポリリン酸ナトリウムは、BSIの量を受容可能なレベルに減少するのに十分な濃度を達成するような量で、この酸性化された混合物に添加され得る。ポリホスフェート金属イオン封鎖剤の特定の濃度は、とりあけ、洗浄水208(シリカゲル上および酸性化された水中の両方を含む)中の鉄量に依存する。本発明の1つの実施形態において、この濃度は、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.01重量%〜1重量%のトリポリリン酸ナトリウムであり、好ましくは、0.05重量%〜0.5重量%である。代替的な実施形態において、そして以下の実施例で使用されるように、添加されるSTPPの量は、最初のヒドロゲル中の鉄のモル量を決定することによって達成され得る。この場合、STPPのモル量(すなわち、洗浄工程中に使用されるSTPPの総量)を、鉄のモル量に対して、5:1〜20:1の範囲に調整する。従って、多くの洗浄水を使用するほど、STPP濃度が低くなる。
【0021】
酸性化された混合物は、STPPを水に最初に溶解し(任意の場合において、STPPレベルは、10〜800ppmであり、好ましくは、約100〜400ppmである(しかし、この濃度は、ヒドロゲル中のシリケートまたは鉄のいずれかに基づいて、上記のように変更され得る))、次いで、溶液のpHを、硫酸を使用して、2.5〜4.0、好ましくは、3.3〜3.5に調整することによって調製され得る。シリカゲルは、ヒドロゲル204を金属イオン封鎖剤混合物で洗浄することによって形成される。
【0022】
上記のように、次いで、洗浄されたヒドロゲルは、ミリングユニット210に入り、そして最終的に、パッケージングユニット214に入る。図2に示される実施形態は、吸着剤の総鉄含量および飲料可溶性鉄含量の両方の減少に関して、最良の結果を達成するようである。図1および2に示される実施形態の特徴を組み合わせた吸着剤もまた、作製され得る。言い換えると、STPPをドープしたシリケート溶液を使用して、ヒドロゲルを形成し得、このヒドロゲルを、STPPをドープした水で洗浄し得る。
【0023】
広範な多孔度特性を有するシリカゲルが、本発明に使用され得ると考えられる。より詳細には、孔の容積、孔の直径、表面積、または粒子サイズの特定の範囲は、本発明の目的に重要ではないと考えられる。にもかかわらず、約1.5〜2.5cc/gの孔容積;約75Å〜125Åの平均孔直径;約750〜850m/gの表面積;および約60〜70%のHOの水分含量を有するシリカゲルが、適切であることが見出されている。本発明はまた、キセロゲルに適応可能であり、キセロゲルは、STPPをドープした水で洗浄した後に、熱水処理(以下に記載される)を受けて、表面積を減少させる。このようなキセロゲルは、約1.0〜1.4cc/gの孔容積;約75Å〜125Åの平均孔直径;および約250〜450m/gの表面積を有し得る。
【0024】
このようなシリカゲルを達成することは、当該分野で周知である。例えば、アルカリpHにて高温にシリカゲルを曝すことによって、ゲル構造の再構成が誘導され;表面積が減少され、そして最終生成物の平均孔直径が増加される。このプロセスは、「熱水処理」として当該分野で公知である。酸固化性ゲルは、これを行うためにアルカリまたは中性のpHに調整される必要がある。乾燥状態もまた、多孔度に影響し;迅速な乾燥は、より高い孔容積を生じる傾向がある。ヒドロゾルのシリカ含量もまた、多孔度に影響する。これらの効果の全ては、当業者に周知であり、そして多くの刊行物および特許に記載される。
【0025】
この吸着剤は、飲料から成分を除去するためのプロセスにおいて使用され、比較的低いBSIを有しながら、寒冷混濁(chill haze)を減少する。この文脈で使用される場合、用語「低いBSI」とは、ポリホスフェート金属イオン封鎖剤への曝露がないことを除いて同一のプロセスによって作製される吸着剤のBSIと比較したものである。詳細には、以下の実施例において示されるように、本発明の吸着剤は、比較吸着剤のBSIの50%未満、そして好ましくは、比較吸着剤の25%未満、最も好ましくは、10%未満のBSIを有し得る。混入物を除去するためのプロセスは、従来の様式(好ましくは、吸着を容易にする様式)で、本発明の吸着剤を飲料と単純に接触させることによって達成される。この吸着工程は、任意の従来のバッチプロセスまたは連続プロセスであり得る。いずれの場合においても、攪拌または他の混合工程が、吸着剤の吸着効率を増強する。
【0026】
吸着は、飲料が液体である、任意の都合よい温度で行われ得る。代表的には、飲料の温度は、約29°F〜40°Fである。飲料と吸着剤は、処理される飲料中の所望の成分減少率を達成するのに十分な時間、上記のように接触される。特定の接触時間は、選択されるプロセス(すなわち、バッチまたは連続的)について;処理される飲料の型および条件に伴い;飲料中の成分濃度に伴い;そして使用される特定の吸着剤に伴い、幾分変化する。接触時間が予め設定されている場合、吸着剤の粒径は、種々の処理条件を満たすように、公知の様式で変更され得る。さらに、飲料と接触される吸着剤の相対量もまた、除去される成分の量に影響する。ビールに添加される吸着剤の量は、ppm(1,000,000gのビール当たりの吸着剤のグラム数)で測定される。吸着剤の使用範囲は、約100ppm〜約1,000ppm、そして好ましくは、約400ppm〜約800ppmであり得る。
【0027】
ビールの精製中、他の添加剤が、成分を吸着するため、および他の機能を果すために、時折使用される。本発明の吸着剤は、産業上の他の公知の添加剤の存在下で、本発明の機能を果す。例えば、気泡安定剤、酸化防止剤、パーライト、およびケイ藻土が、しばしば、濾過前のビールに添加される。例えば、ケイ藻土は、濾過補助剤として使用されるが、しばしば、望ましくないことに、ビールへ鉄を付与する。
【0028】
使用される本発明の特定の吸着剤にかかわらず、吸着剤(単数または複数)は、吸着後、任意の公知の様式で、この成分が減少された飲料から分離される。例えば、濾過デバイスを使用して、成分が減少された飲料から吸着剤を分離し得る。分離は、1以上の濾過段階によってもたらされ得る。
【0029】
本発明の吸着剤は、シリカ成分およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤成分を含む吸着剤である。ポリホスフェート金属イオン封鎖剤は、図1に示される実施形態において、シリカゲルに化学的に結合するが、図2で示される実施形態では、シリカゲルの孔に単に物理的に保持されるに過ぎないと考えられる。従って、前者の場合、シリカゲルおよびポリホスフェート金属イオン封鎖剤は、互いに幾分変化させ得;従って、最終生成物において、これらは、シリカゲル「成分」およびポリホスフェート金属イオン封鎖剤「成分」と呼ばれる。しかし、後者の実施形態において、これらの2つの構成成分は、いかなる化学的相互作用も起こさないと考えられる。
【実施例】
【0030】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の全体的な性質をより明確に実証するために含まれる。これらの実施例は、本発明の例示であり、本発明を限定するものではない。
【0031】
(実施例1)
本発明の産物を調製するためのこのプロセスの1つの例において、STPPを、水に溶解し、そして室温で5時間、ケイ酸ナトリウムと混合させた。このSTPPをドープしたシリケート混合物は、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.1重量%のSTPPを含んだ。硫酸を使用して、このSTPPをドープしたシリケート混合物を中和した。この酸溶液は、14.4%のHSOの濃度および約72°Fの温度を有した。このシリケート溶液は、3.25の名目上のSiO:NaO重量比、22%の固体レベル、および約72°Fの温度を有した。このシリケートおよび酸の濃度および割合を、ヒドロゾルが、10% SiOを含み、そしてシリケート溶液中に存在するナトリウムを中和するのに必要とされるよりも20%多く酸が存在するように、調整した。ヒドロゾルを、122°Fで容器中でゲル化した。ゲル化時間は、数時間であった。次いで、ゲルを、122°Fで寝かし、そして酸性化した水(硫酸で酸性にした)で洗浄した。硫酸ナトリウムを除去するために使用した、この酸性化した水は、pH3.3を有した。これは、表1に示されるサンプル1である。
【0032】
比較のために、コントロール1を、STPPを添加しなかったことを除いて、サンプル1と同じプロセスを使用して作製した。
【0033】
ゲル中の鉄レベルは、総鉄量(Fe)を表す。総鉄量および飲料可溶性鉄(BSI)の両方を、原子吸光(AA)によって測定した。サンプル1は、83ppmの総鉄含量および2.4ppmのBSI含量を有し、一方、コントロール1は、27ppmの総鉄含量および7ppmのBSI含量を有した。
【0034】
(実施例2)
本発明のプロセスの別の例において、シリカゲルを、STPPのレベルを増加したこと除いて、実施例1と同じプロセスで作製した。実施例2におけるSTPPは、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.15重量%であった。コントロール2もまた、STPPをコントロール中で使用しなかったことを除いて、サンプル1と同じプロセスを使用して、比較のために作製した。
【0035】
サンプル2は、54ppmの総鉄含量および3.6ppmのBSI含量を有し、一方、コントロール2は、38ppmの総鉄含量および14.6ppmのBSI含量を有した。
【0036】
(実施例3)
本発明の吸着剤を生成するために使用される第2の実施形態の1つの例において、ケイ酸ナトリウムを硫酸で中和することによって、シリカゲルを作製した。この酸溶液は、41.8%のHSOの濃度および約80°Fの温度を有した。このシリケート溶液は、3.2の名目上のSiO:NaO重量比、31.4%の固体レベル、および約80°Fの温度を有した。このシリケートおよび酸の濃度および割合を、ヒドロゾルが、18%のシリカを含み、そしてシリケート溶液中に存在するナトリウムを中和するのに必要とされるよりも20%多く酸が存在するように、調整した。STPPをドープした酸性水溶液を、最初にSTPPを水に溶解し(水に基づいて、50ppmのSTPPレベルで)、次いで、硫酸を添加して溶液のpHを3.4に調整することによって、調製した。ゲルおよび洗浄水の割合を、使用されるSTPPの総量が、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.1重量%に等しくなるように調整した。これは、表1に示されるサンプル3である。
【0037】
コントロール3を、pH3.4の酸性水で同じゲルを洗浄することによって作製した。コントロールにおいて、STPPを使用しなかった。サンプル3は、5ppmの総鉄含量および0.2ppmのBSI含量を有し、一方、コントロール3は、19ppmの総鉄含量および6.3ppmのBSI含量を有した。
【0038】
(実施例4)
吸着剤を生成するために使用されるプロセスの第2の実施形態の別の例において、実施例3の同じ未洗浄のシリカヒドロゲルを使用した。STPPをドープした酸性洗浄水溶液を、溶液のpHを3.5に調整し、次いで、この酸性水にSTPPを溶解することによって(水に基づいて、200ppmのSTPPレベルで)、調製した。ゲルおよび洗浄水の割合を、使用されるSTPPの総量が、ケイ酸ナトリウムに基づいて、0.5重量%に等しくなるように調整した。これらの条件下で生成されたシリカゲルを、表1にサンプル4として示す。
【0039】
コントロール4もまた、STPPを添加しなかったことを除いて、pH3.5の同じ酸性水を使用して、同じ条件下で作製した。
【0040】
サンプル4は、6.5ppmの総鉄含量であり、BSI含量は、原子吸光(AA)で検出可能でなかった。コントロール4は、20ppmの総鉄含量および5ppmのBSI含量を有した。
【0041】
これらの実施例の全ては、本発明の吸着剤を使用する場合、BSI含量における減少を示す。図2に示される実施形態を使用する実施例もまた、総鉄含量における減少を示した。
【0042】
本明細書中で使用される場合、吸着剤のBSIは、American Society of Brewing Chemist Methods,Filter Aids−4およびBeer−18B(本明細書中に参考として援用される)からのNo.Q.2.01.004、改訂版(1994年4月26日)の手順に従って決定した。一般に、この手順は、炭酸を抜いたビール中に吸着剤のサンプルを、特定の時間、懸濁する工程、次いで、濾過によって分離する工程を包含する。このビール濾液を回収し、そして標準的な添加方法によって、原子吸光分析によって分析する。次いで、未処理のビールの鉄含量を、この処理したビールの鉄含量から差し引き、その差異に係数を掛け、そしてこの積が、ビール可溶性鉄(ppm)として報告される。
【0043】
特定の実施形態および実施例に関連して本明細書中に例示および記載されたが、にも拘らず、本発明は、示される詳細に限定されることを意図されない。むしろ、種々の変更が、特許請求の範囲の等価の範囲内で、本発明の精神を逸脱することなく、詳細になされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本発明に従う吸着剤を作製するためのプロセスの第1の実施形態の概略図である。
【図2】図2は、本発明に従う吸着剤を作製するためのプロセスの第2の実施形態の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の吸着剤を作製するための方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−80332(P2008−80332A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241602(P2007−241602)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【分割の表示】特願2002−555914(P2002−555914)の分割
【原出願日】平成14年1月14日(2002.1.14)
【出願人】(500422115)ピーキュー ホールディング, インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】