説明

低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法

【課題】 褐変することなく安定に製造される低分子ヒアルロン酸および/またはその塩、およびその製造方法、ならびにこれを含有する化粧料および食品組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させることにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調が損なわれることなく低分子化されたヒアルロン酸および/またはその塩、およびその製造方法、ならびにこれを含有する化粧料および食品組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は生体、特に皮下組織に存在するムコ多糖類であり、その高い保湿機能によりヒアルロン酸またはその塩として、化粧料の原料に広く利用されてきた。また、ヒアルロン酸またはその塩を経口摂取することにより、生体本来の持つヒアルロン酸含量の低下を補い、肌の保湿、弾力性、および柔軟性を改善する効果が認められている。このため、ヒアルロン酸およびその塩は様々な食品に添加されることにより利用されている。
【0003】
しかしながら、ヒアルロン酸は極めて高分子の多糖類であり、高い粘度を有する。このため、ヒアルロン酸の添加量が所定量を超える場合、粘度が高くなって調製が困難であったり、また、得られる化粧料や食品の粘度に影響を与えてしまい、使用感が低下したり、食感を阻害したりすることがあった。
【0004】
そこで、ヒアルロン酸の機能を維持しつつ粘度を低下させるために、その分子量を一定に低下させる方法が開発された(特開昭63−57602号公報:特許文献1)。この出願には、アルカリや酸で処理することにより、ヒアルロン酸を分解して分子量を低下させる方法が開示されている。しかしながら、この方法では、低分子化を促進するにはアルカリや酸処理の条件を過酷にする必要があり、分子量の小さなヒアルロン酸を得ることは困難である。また、この方法によれば、強酸性または強塩基性条件下ではヒアルロン酸が褐変することが記載されている。褐変したヒアルロン酸は、化粧料や食品原料として不適であるため、脱色のための精製工程を必要としたり、あるいは精製工程によって化粧料や食品原料として使用できる程度に脱色するのが困難であったりする場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−57602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、褐変することなく安定に製造される低分子ヒアルロン酸および/またはその塩、およびその製造方法、ならびにこれを含有する化粧料および食品組成物を提供することである。
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく、ヒアルロン酸および/またはその塩の低分子化方法について鋭意研究を重ねた結果、酸性含水媒体にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させることにより、意外にも製品を褐変させることなく、例えば1万以下といった分子量まで低分子化させることができ、安定に低分子ヒアルロン酸が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、酸含有含水有機溶剤中にヒアルロン酸またはその塩を分散させることにより得られる。
【0009】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、前記分散は加熱下で行なうことができる。ここで、「分散は加熱下で行なう」には、「ヒアルロン酸またはその塩を酸含有含水有機溶剤中に加熱下で添加することにより分散させること」だけではなく、「酸含有含水有機溶剤中にヒアルロン酸またはその塩を加熱下で分散させた
状態を所定時間保持すること」を含むものとする。
【0010】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させた後、前記含水媒体を除去して得られた残留物を加熱乾燥することにより得られる。
【0011】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、前記含水媒体のpHは2以下であることができる。
【0012】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、前記含水媒体に使用される媒体は、エタノール、メタノール、およびアセトンから選ばれる少なくとも1種であることができる。
【0013】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、1重量%水溶液の動粘度が10mm/s以下であることができる。
【0014】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、1重量%水溶液の動粘度が3mm/s以下であることができる。
【0015】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、1重量%水溶液の動粘度が2mm/s以下であることができる。
【0016】
ここで、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、色の明度を表すL値が90以上であり、かつ色の色相を表すb値が5以下であることができる。
【0017】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法は、酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させる工程を含む。
【0018】
本発明の化粧料は、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する。
【0019】
本発明の食品組成物は、上記本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩によれば、例えば1万以下といった低分子量まで低分子化しても褐変することなく安定に製造することができる。これにより、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、例えば化粧料、食品、および医薬品の原料として有用である。
【0021】
例えば、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を化粧料の原料として用いた場合、多量に配合しても色調を損なうことなく、使用感に優れた化粧料が得られる。また、例えば、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を食品原料として使用した場合、食品本来の色調、風味、食感を損なうことなく調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を説明する。なお、本発明において、「%」は「質量%」を意味する。
【0023】
1.低分子ヒアルロン酸および/またはその塩
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、酸性含水媒体中にヒアルロン酸
および/またはその塩を分散させることにより得られる。
【0024】
なお、本発明において、「ヒアルロン酸」とは、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの2糖を反復構成単位とする多糖類である。また、「ヒアルロン酸の塩」としては、特に限定されないが、薬学上許容しうる塩であることが好ましく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0025】
1.1.原料
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の原料であるヒアルロン酸およびその塩(以下、「原料ヒアルロン酸およびその塩」ともいう)は一般に、鶏冠、臍の緒、眼球、皮膚、軟骨等の生物組織、あるいはストレプトコッカス属の微生物等のヒアルロン酸生産微生物を培養して得られる培養液等を原料として、これらの原料から抽出(さらに必要に応じて精製)して得られるものである。
【0026】
本発明に使用する原料ヒアルロン酸およびその塩としては、当該粗抽出物および精製物のいずれを用いてもよいが、精製物、具体的にはヒアルロン酸および/またはその塩の純度が90%以上のものが好ましい。純度が90%以上の原料ヒアルロン酸およびその塩は、化粧料または食品の原料として用いた場合、保存中に色調や風味の変化の原因となり難いため、安定な化粧料または食品が得られる。
【0027】
1.2.低分子ヒアルロン酸および/またはその塩
本発明において、「低分子ヒアルロン酸および/または塩」とは、原料ヒアルロン酸およびその塩よりも分子量が低減されたものをいう。例えば、鶏冠より抽出されるヒアルロン酸および/またはその塩の分子量は通常200万から800万である。鶏冠より抽出されるヒアルロン酸および/またはその塩を原料として用いる場合、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量は、これより低減されたものである。
【0028】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を例えば化粧料、食品組成物、および医薬品などに使用する場合、製品の色に影響を及ぼさないという点から、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は色の明度が高く、かつ、黄味が弱いほうが好ましい。
【0029】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、色の明度を表すL値(以下、単に「L値」ともいう)が90以上であり、かつ色の色相を表すb値(以下、単に「b値」ともいう)が5以下であることができ、L値が92以上であり、かつb値が4以下であることがより好ましく、L値が93以上であり、かつb値が3.5以下であることがさらに好ましい。
【0030】
L値は、物質が有する色の明度(lightness)を規定する値であり、0〜100の間の
数値で表される。L値が100である場合最も明るい状態(完全な白色)を示し、一方、L値が0である場合最も暗い状態(完全な黒色)を示す。
【0031】
b値は、物質が有する色の色相(hue)を規定する値であり、b値が大きいほど黄味が
強いことを示し、一方、b値が小さいほど青味が強いことを示す。
【0032】
L値およびb値は、JIS Z 8730によって規定される色差表示方法によって、Lab系色度座標で表示されることができる。また、L値およびb値は、市販の色差計により測定することができる。なお、本発明においては、固体の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩について、L値およびb値を測定するものとする。
【0033】
本発明において、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩のL値およびb値は、後述する本発明の製造方法によって得られた本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩が未精製の状態におけるL値およびb値をいう。すなわち、本発明において、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩のL値およびb値は、脱色のための精製工程を経ていない状態における、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩のL値およびb値をいう。後述する実施例においては、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の着色度は、使用した酸性含水媒体を除去するために媒体を使用して行なわれる洗浄工程以外の精製工程を経ていない状態における、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩のL値およびb値をいう。
【0034】
本発明の低分子ヒアルロン酸から低分子ヒアルロン酸のL値およびb値は、例えば、色差計(商品名「COLOR AND COLOR DIFFERENCE METER MODEL 1001 DP」,日本電色工業株式会社製)に10Φレンズを装着し、ガラスセルに測定試料1g以上を敷き詰めて測定することができる。
【0035】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩によれば、色差計により測定されたL値が90以上であり、かつb値が5以下であることにより、さらなる精製工程を必要とせずに、化粧料、食品、および医薬品の原料として使用することができる。
【0036】
なお、本発明の低分子ヒアルロン酸から低分子ヒアルロン酸の塩へと変換する方法、ならびに本発明の低分子ヒアルロン酸の塩から低分子ヒアルロン酸へと変換する方法は、特に限定されるわけではなく、公知の方法を用いて行なうことができる。
【0037】
本発明の低分子ヒアルロン酸から低分子ヒアルロン酸の塩へと変換する方法としては、例えば、アルカリ水溶液(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アンモニウム等の水溶液)を用いて処理する方法が挙げられる。また、本発明の低分子ヒアルロン酸の塩から低分子ヒアルロン酸へと変換する方法としては、例えば、酸水溶液(例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の水溶液)を用いて処理する方法や、酸性陽イオン交換樹脂を用いる方法が挙げられる。
【0038】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を化粧料や食品に配合する際、目的の物性的効果を奏するには、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量は好ましくは100万以下、より好ましくは10万以下、さらに好ましくは2万以下、最も好ましくは1万以下となるのが好ましい。
【0039】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量の測定方法は特に限定されないが、例えば、動粘度から極限粘度を求め、この極限粘度を分子量に換算する方法、液体クロマトグラフィーによる簡易測定法等が挙げられる。
【0040】
本発明においては、動粘度から極限粘度を求め、この極限粘度から分子量に換算する方法により、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量を求める。この方法においては、後に説明するウベローデ粘度計を用いて動粘度を測定し、この動粘度の値から極限粘度を求め、この極限粘度を分子量に換算する。
【0041】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩は、1質量%水溶液の動粘度が10mm/s以下であることが好ましく、3mm/s以下であることがより好ましく、2mm/s以下であることがさらに好ましい。本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩において、1質量%水溶液の動粘度が10mm/sを超えると、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の添加量が所定量を超える場合、粘度が高くなりす
ぎて調製が困難でなったり、あるいは、得られる化粧料や食品の粘度に影響を与えてしまい、使用感が低下したり、食感を阻害したりする場合がある。
【0042】
1.3.動粘度の測定方法
以下、本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の分子量を求める際の指標となる動粘度の測定方法について説明する。
【0043】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の水溶液の動粘度は、ウベローデ粘度計(柴田科学器械工業株式会社製)を用いて測定することができる。この際、流下秒数が200〜1000秒になるような係数のウベローデ粘度計を選択する。また、測定は30℃の恒温水槽中で行ない、温度変化のないようにする。
【0044】
ウベローデ粘度計により測定された前記水溶液の流下秒数と、ウベローデ粘度計の係数との積により、動粘度(単位:mm/s)を求めることができる。
【0045】
1.4.分子量の算出
本発明においては、試料の極限粘度から分子量を算出することができる。一般に、試料の極限粘度を求めるには、まず、複数の試料溶液を調製し、ウベローデ粘度計における試料溶液の流下秒数および溶媒の流下秒数から、下記式(1)および式(2)に基づいて比粘度および還元粘度を算出する。
式1

【0046】
式2

【0047】
次いで、各試料溶液について、得られた還元粘度を縦軸に、乾燥物換算の試料濃度を横軸にプロットして検量線を作成し、前記試料濃度を0に外挿することにより、試料の極限粘度を得る。試料がヒアルロン酸および/またはその塩である場合、下記式(3)に基づいて、試料の極限粘度から分子量Mを求めることができる。
式3
極限粘度(cm/g)=k’Mα ・・・・・(3)
(上記式(3)において、k’=0.036,α=0.78である。)
【0048】
2.低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法
2.1.分散させる工程
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法は、酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させる工程を含む。分散させる工程においては、例えば、粉末状の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を酸性含水媒体に添加して攪拌させることにより行なうことができる。ここで、粉末状のヒアルロン酸および/またはその塩はほとんど溶解することなく、含水媒体中に分散される。したがって、この場合、攪拌を停止することにより当該粉末は沈殿する。
【0049】
ここで、攪拌速度や攪拌時間を調整することにより、低分子化の度合いを調整することができる。また、ヒアルロン酸および/またはその塩を含水媒体中に分散させる時間は、含水媒体のpHや温度に応じて適宜決定することができる。
【0050】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法によれば、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を含水媒体中に分散させる工程を含むことにより、褐変がほとんどない低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を安定して得ることができる。これにより、脱色のための新たな精製工程を必要としないため、生産工程の省力化を図ることができる。
【0051】
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、上述の分散させる工程を加熱下で行なうことができる。より具体的には、粉末状の原料ヒアルロン酸および/またはその塩を、酸性含水媒体中に攪拌しながら添加して得られた分散媒を加熱することができる。あるいは、酸性含水媒体を予め加熱し、これに原料ヒアルロン酸および/またはその塩を添加し、温度を保持してもよい。
【0052】
ここで、酸性含水媒体の加熱温度は30〜70℃であるのが好ましい。酸性含水媒体をこの温度範囲内に加熱することにより、1時間以内の加熱により、目的の分子量まで安定に低分子化することが可能である。上述の分散させる工程をあえて加熱下で行なわずに、常温(30℃未満)で行なうことにより、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を低分子化することも可能である。しかしながら、この場合、加熱下で行なう場合に比べて非常に長い時間を要する。一方、上述の分散させる工程における加熱温度を70℃より高くすることも可能である。しかしながら、この場合、長時間加熱すると低分子化が進行しすぎて、目的の分子量に安定して調整することが困難となる場合がある。
【0053】
2.2.加熱乾燥する工程
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法において、上述した、酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させる工程の後に、前記含水媒体を除去して得られた残留物を加熱乾燥する工程を含むことができる。
【0054】
ここで、加熱乾燥する工程においては、例えば、上述の分散させる工程によって、低分子化されたヒアルロン酸および/またはその塩から含水媒体を除去して得られた残留物を加熱乾燥する。含水媒体の除去は、例えば、ストレーナーでの濾過や遠心処理等の物理的手段や、ロータリーエバポレータ等を使用した蒸留留去が挙げられる。また、加熱乾燥する工程においては、例えば熱蔵庫や熱風乾燥機等を用いて、得られた残留物から、残留する含水媒体および水分を除去することが好ましい。
【0055】
加熱乾燥する工程における温度および時間は特に定めるものではないが、温度は60〜95℃が好ましく、70〜90℃がより好ましく、70〜80℃がさらに好ましい。加熱乾燥する工程における温度が60℃未満である場合、乾燥効率が低下する場合があり、一方、加熱乾燥する工程における温度が95℃を超えると、褐変が生じる場合がある。また、加熱乾燥する工程における時間は6〜48時間以上が好ましく、12〜36時間がさらに好ましい。加熱乾燥する工程における時間が6時間未満であると、乾燥効率が低下する場合があり、一方、加熱乾燥する工程における温度が48時間を超えると、褐変が生じる場合がある。
【0056】
加熱乾燥する工程により、上述の分散させる工程によって低分子化されたヒアルロン酸および/またはその塩をさらに低分子化することができるため、低分子化工程の効率向上に寄与することができる。また、加熱乾燥する工程により、分子量が10万の低分子ヒアルロン酸塩および分子量が2万以下の低分子ヒアルロン酸を容易に得ることができる。
【0057】
2.3.含水媒体
本発明の製造方法において、含水媒体は、水を含む、ヒアルロン酸および/またはその
塩の分散媒のことをいう。含水媒体に使用できる媒体は、ヒアルロン酸および/またはその塩の溶解性が低いことが好ましい。含水媒体に使用できる媒体は特に限定されないが、例えば液体であって、水に溶解する性質を有し、かつ、化粧料または食品の製造工程において使用できるものが好ましい。含水媒体に使用できる媒体としては、例えば、アルコール系媒体(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノールなど)、ケトン系媒体(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を挙げることができ、これらを単独でまたは組み合わせて使用することができる。このうち、沸点の低さおよび価格の点で、エタノール、メタノール、およびアセトンから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0058】
含水媒体における含水量は特に規定されないが、含水量が多いと、ヒアルロン酸および/またはその塩が分散状態を維持できず、含水媒体に溶解するため、収率低下を招くおそれがある。したがって、含水媒体の全量に対する水の割合は40容量%以下が好ましく、30容量%以下がさらに好ましい。
【0059】
また、本発明の製造方法において、含水媒体を酸性にするために使用するものとしては、例えば、酸や酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。
【0060】
酸としては、特に限定されないが、化粧料または食品の製造において使用できるものが好ましい。酸としては、例えば、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、クエン酸、アスコルビン酸、酢酸、氷酢酸等の有機酸を例として挙げることができる。酸の添加量は特に定めるものではないが、酸の添加量が少ないと、ヒアルロン酸および/またはその塩の低分子化が進まず、製造効率が低下する。一方、酸の添加量が多過ぎると、ヒアルロン酸および/またはその塩の低分子化が促進されるため、目的の分子量に安定して調整することが困難となる。例えば、酸として塩酸を使用する場合、0.2%以上4%以下であることが好ましく、酸として硫酸を使用する場合、0.1%以上3%以下であることが好ましい。
【0061】
酸性陽イオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば、強酸性陽イオン交換樹脂(ダイヤイオンSK1B,ダウエックス50W)、弱酸性陽イオン交換樹脂(デュオライトC−464)等が挙げられ、強酸性陽イオン交換樹脂が好ましい。例えば、酸性陽イオン交換樹脂を容器内に固定化させておき、その容器の中に含水媒体および原料ヒアルロン酸および/またはその塩を入れて分散させ、この分散媒を攪拌して、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を酸性陽イオン交換樹脂と接触させることにより、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を低分子化することができる。この場合、酸性陽イオン交換樹脂が分散媒中に流出しないように酸性陽イオン交換樹脂を固定化することができる。酸性陽イオン交換樹脂を固定化することにより、酸性陽イオン交換樹脂と、得られた低分子ヒアルロン酸および/またはその塩とを反応後に容易に分離することができる。
【0062】
本発明の製造方法において、含水媒体のpHは2以下であることが好ましく、1以下であることがより好ましい。含水媒体のpHが2を超えると、原料ヒアルロン酸および/またはその塩を低分子化するのに長時間を要するため、効率が低下する。
【0063】
3.化粧料
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する化粧料の態様は特に限定されないが、例えば、皮膚に使用する洗浄料、化粧水、バニシングクリーム、コールドクリーム、乳液、パック、ファンデーション、頬紅、口紅、ネイルトリートメント等爪用化粧品、マスカラ等目用化粧品、毛髪に使用するシャンプー、リンス、ヘアトリートメント、シェービングローション、および歯磨き剤等例を挙げることができる。
【0064】
4.食品組成物
本発明の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する食品組成物の態様は特に限定されないが、例えば、主食である米飯加工食品、製パン類等、副食であるレトルト缶詰、冷凍食品、惣菜、乾燥食品等、マヨネーズ等調味料、飲料、菓子、デザート類、液状,ゲル状またはソフトカプセル状等のサプリメント類等の一般食品全般のほか、生理機能を表現することを許可された特定保健用食品全般を挙げることができる。
【0065】
5.実施例
次に、本発明を実施例、比較例および試験例に基づき、さらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、動粘度の測定、極限粘度の算出、およびL値およびb値の測定は、上述した方法により行なわれた。
【0066】
5.1.実施例1
本実施例では、原料として、鶏冠より抽出、精製したヒアルロン酸ナトリウム(以下、「HANa」ともいう)微粉末を準備した。この原料HANaの平均分子量は約210万、純度97%であった。
【0067】
まず、攪拌機およびジャケットを装備した300L容タンクに、2%塩酸含有73%含水エタノール(酸性含水媒体)110Lを満たし、攪拌しながら液温が50℃となるよう加熱した。ここで、73%含水エタノールは、エタノールを73(W/W)%含有し、水を27(W/W)%含有するものであり、2%塩酸含有73%含水エタノールは、塩酸を2(W/W)%含有し、73%含水エタノールを98(W/W)%含有するものである。50℃に達温後、攪拌しながら,準備した原料HANa微粉末6kgをタンクに投入した。塩酸含有含水エタノールの温度を50℃に維持するよう加熱を行ないながら、原料HANa微粉末が分散状態となるように攪拌した。
【0068】
次に、15分間攪拌してから静置した後、上澄みの塩酸含有含水エタノールをデカンテーションにより除去することにより、沈殿物を得た。得られた沈殿物に、予め50℃に加熱した2%塩酸含有73%含水エタノール110Lを加え、同様に50℃に加熱しながら攪拌を15分間行ない、この操作を合計3回繰り返した。
【0069】
次いで、塩酸含有含水エタノールを除去した後に得られた沈殿物に73%含水エタノール110Lを加え、塩酸除去の目的で攪拌を15分間行なった。塩酸の残留がなくなるまでこの操作を繰り返した。
【0070】
さらに、含水エタノールをデカンテーションにより除去して残留物を得た。この残留物について遠心分離処理を行なうことにより含水エタノールをさらに除去した後、真空乾燥機を用いて室温で6時間脱溶媒を行なった。
【0071】
以上の工程により、白色微粉末の低分子ヒアルロン酸5.5kg(収率約92%)を得た。この低分子ヒアルロン酸は、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が2.6mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が3.5万であり、L値が94.3であり、b値が1.9であった。
【0072】
5.2.実施例2
本実施例では、原料として、実施例1で用いたHANa微粉末を準備した。
【0073】
まず、攪拌機およびジャケットを装備した300L容タンクに、0.5%硫酸含有80%含水アセトン(酸性含水媒体)110Lを満たし、攪拌しながら液温が60℃となるよう加熱した。ここで、80%含水アセトンは、アセトンを80(W/W)%含有し、水を20(W/W)%含有するものであり、0.5%硫酸含有80%含水アセトンは、硫酸を0.5(W/W)%含有し、80%含水アセトンを99.5(W/W)%含有するものである。60℃に達温後、攪拌しながら、準備した原料HANa微粉末6kgをタンクに投入した。硫酸含有含水アセトンの温度を60℃に維持するように加熱を行ないながら、原料HANa微粉末が分散状態となるように攪拌した。
【0074】
次に、15分間攪拌してから静置した後、上澄みの硫酸含有含水アセトンをデカンテーションにより除去することにより、沈殿物を得た。得られた沈殿物に、予め60℃に加熱した0.5%硫酸含有80%含水アセトン110Lを加え、同様に60℃に加熱しながら攪拌を15分間行ない、この操作を合計3回繰り返した。
【0075】
次いで、硫酸含有含水アセトンを除去した後に得られた沈殿物に80%含水アセトン110Lを加え、硫酸除去の目的で15分間の攪拌を行なった。硫酸の残留がなくなるまでこの操作を繰り返した。
【0076】
さらに、含水アセトンをデカンテーションにより除去して残留物を得た。この残留物について遠心分離処理を行なうことにより含水アセトンをさらに除去した後、真空乾燥機を用いて室温で6時間脱溶媒を行なった。
【0077】
以上の工程により、白色微粉末の低分子ヒアルロン酸5.3kg(収率約88%)を得た。この低分子ヒアルロン酸は、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が1.5mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が9000であり、L値が94.0であり、b値が2.9であった。
【0078】
5.3.実施例3
実施例1で得られた分子量2.6万の低分子ヒアルロン酸微粉末を、80℃にて24時間乾熱加熱することにより、さらに分子量が低減された白色の低分子ヒアルロン酸微粉末を得た。
【0079】
この低分子ヒアルロン酸は、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が1.1mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が6000であり、L値が93.9であり、b値が3.2であった。
【0080】
5.4.実施例4
本実施例では、原料として、ヒアルロン酸産生ストレプトコッカス属の微生物を培養することにより得られたヒアルロン酸含有発酵物より抽出、精製した原料ヒアルロン酸(以下、「HA」ともいう)微粉末を準備した。この原料HAの平均分子量は約160万であり、純度は97%であった。
【0081】
まず、攪拌機を装備した300L容タンクに、1%塩酸含有78%含水エタノール(酸性含水媒体)110Lを満たし、攪拌しながら液温が40℃となるよう加熱した。ここで、78%含水エタノールは、エタノールを78(W/W)%含有し、水を22(W/W)%含有するものであり、1%塩酸含有78%含水エタノールは、塩酸を1(W/W)%含有し、78%含水エタノールを99(W/W)%含有するものである。40℃に達温後、攪拌しながら、準備した原料HA微粉末6kgを投入した。塩酸含有含水エタノールの温度が30℃を下回らないように温度を調節しながら、原料HA粉末が分散状態となるように攪拌した。
【0082】
次に、15分間攪拌してから静置した後、上澄みの塩酸含有含水エタノールをデカンテーションにより除去することにより、沈殿物を得た。得られた沈殿物に、予め40℃に加熱した0.1%塩酸含有78%含水エタノール110Lを加え、40℃に加熱しながら攪拌を15分間行ない、この操作を合計2回繰り返した。
【0083】
次いで、塩酸含有含水エタノールを除去した後に得られた沈殿物に78%含水エタノール110Lを加え、塩酸除去の目的で攪拌を15分間行なった。塩酸の残留がなくなるまでこの操作を繰り返した。
【0084】
さらに、含水エタノールをデカンテーションにより除去して残留物を得た。この残留物について遠心分離処理を行なうことにより含水エタノールをさらに除去した後、再び同タンクにて水100Lに溶解させて水溶液を調製した。この水溶液を攪拌しながら20%水酸化ナトリウム溶液を該水溶液に添加して、pH6.5とした。次いで、この水溶液をスプレードライヤーにて噴霧乾燥を行なった。
【0085】
これにより、白色微粉末の低分子ヒアルロン酸ナトリウム4.6kg(収率約77%)を得た。この低分子ヒアルロン酸ナトリウムは、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が21mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が14万であり、L値が95.0であり、b値が1.8であった。
【0086】
5.5.実施例5
実施例4で得られた分子量14万の低分子ヒアルロン酸ナトリウム微粉末を、80℃にて24時間乾熱加熱することにより、さらに分子量が低減された白色の低分子ヒアルロン酸ナトリウム微粉末を得た。
【0087】
この低分子ヒアルロン酸ナトリウムは、ウベローデ粘度計で測定された1%水溶液の動粘度が8.7mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が4.1万であり、L値が94.1であり、b値が2.2であった。
【0088】
5.6.比較例1
本比較例においては、鶏冠200kgを80℃の熱水に20分間浸漬した後、細断機で細かく砕き、これに500Lの水を加えて、ホモゲナイザーにてペースト状としたものを原料として使用した。
【0089】
この原料を攪拌機およびジャケットを備えた1000L容タンクに投入し、これに20%水酸化ナトリウム溶液を加えて最終水酸化ナトリウム濃度が0.15Nとなるよう調整した。溶液温度を60℃まで加熱して、60℃で2時間保持した。この溶液について酵素処理および活性炭処理を行なうことにより不溶性固形分を除去し、濾液を得た。この濾液に塩化セチルピリジニウム(CPC)溶液を添加し、ヒアルロン酸と複合体を形成させて、沈殿物を得た。
【0090】
次いで、エタノールを用いてこの沈殿物を精製した後、真空乾燥機を用いて室温で6時間脱溶媒を行なった。
【0091】
これにより、茶褐色微粉末の低分子ヒアルロン酸ナトリウム2.0kg(収率1.0%)を得た。この低分子ヒアルロン酸は、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が21mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が14万であり、L値が88.8であり、b値が7.3であった。
【0092】
5.7.比較例2
最終水酸化ナトリウム濃度を0.1Nとする以外は比較例1と同様の方法で処理して、
低分子ヒアルロン酸ナトリウムを得た。この低分子ヒアルロン酸ナトリウムを2%食塩水
に溶解した。このヒアルロン酸含有2%食塩水に4N塩酸を加えてpH2.5とした後、
95℃で120分間加熱した。次いで、この溶液を冷却した後エタノールを加えて、沈殿物を得た。続いて、エタノールを用いてこの沈殿物を精製した後、真空乾燥機を用いて室温で6時間脱溶媒を行なった。
【0093】
これにより、茶褐色微粉末の低分子ヒアルロン酸0.9kg(収率約0.5%)を得た。この低分子ヒアルロン酸は、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が2.8mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が3.8万であり、L値が87.2であり、b値が5.6であった。
【0094】
5.8.比較例3
アルカリ条件下での加熱時間を150分間とする以外は、比較例2と同様の方法で処理を行なうことにより、茶褐色微粉末の低分子ヒアルロン酸1.0kg(収率0.5%)を得た。この低分子ヒアルロン酸は、ウベローデ粘度計を用いて測定された1%水溶液の動粘度が1.6mm/sであり、極限粘度より換算した分子量が1万であり、L値が87.0であり、b値が6.5であった。
【0095】
5.9.試験例1
化粧料への配合試験例として、以下に記す処方にて、実施例1〜5および比較例1〜3でそれぞれ得られた低分子HAまたはHANaを配合した美白用美容液をそれぞれ調製した(内容量50mL/キャップ付き透明ガラス瓶入り)。
【0096】
《処方》 リン酸アスコルビルMg 3.00%
グリセリン 8.00%
1,3−ブチレングリコール 2.00%
水添レシチン 0.05%
低分子ヒアルロン酸(Na)* 0.50%
ヒドロキシエチルセルロース 0.06%
PEG−50水添ヒマシ油 0.50%
クエン酸Na 適 量
メチルパラベン 0.21%
フェノキシエタノール 0.08%
EDTA−4Na 0.10%
トコフェロール 0.05%
――――――――――――――――――――――
水 全量を100%とする
*1:実施例1〜5、比較例1〜3でそれぞれ得られた低分子HAまたはHANa。
【0097】
実施例1〜5で得られた低分子HAまたはHANaを配合した試験例では、使用感に優れた無色透明な美白用美容液を得られたのに対して、比較例1〜3で得られたHAまたはHANaを配合した試験例では、色調が褐色を帯び、美白用美容液としては不適であった。
【0098】
5.10.試験例2
化粧料への配合試験例として、以下に記す処方にて、実施例1〜5および比較例1〜3でそれぞれ得られた低分子HAまたはHANaを配合した乳液(エモリエントミルク)をそれぞれ調製した(内容量150mL/キャップ付き透明ガラス瓶入り)。
【0099】
《処方》 ステアリン酸 0.50%
セトステアリルアルコール 0.50%
ラノリン 0.80%
トリイソオクタン酸グリセリン 4.00%
オリーブ油 4.00%
低分子ヒアルロン酸(Na)* 1.00%
テトラオレイン酸ポリオキシエチレン
(60)ソルビット 0.50%
ポリオキシエチレン(20)
モノステアリン酸ソルビタン 1.00%
モノステアリン酸グリセリン 0.50%
1,3−ブチレングリコール 6.00%
キサンタンガム 0.14%
メチルパラベン 適 量
――――――――――――――――――――――
水 全量を100%とする
*1:実施例1〜5、比較例1〜3でそれぞれ得られた低分子HAまたはHANa。
【0100】
実施例1〜5で得られた低分子HAまたはHANaを配合した試験例では、使用感に優れた乳白色の乳液(エモリエントミルク)が得られたのに対して、比較例1〜3で得られたHAまたはHANaを配合した試験例では、得られた乳液は色調が褐色を帯びており、乳液としては不適であった。
【0101】
5.11.試験例3
食品への配合試験例として、以下に記す処方にて、実施例1〜5および比較例1〜3でそれぞれ得られた低分子HAまたはHANaを配合したスパウトパウチ入り白桃ゼリー飲料を調製した(内容量150g/透明スパウトパウチ入り)。
【0102】
《処方》 キサンタンガム 1.00%
カラギーナン 0.50%
低分子ヒアルロン酸(Na)* 0.20%
デキストリンアルコール 3.00%
スクラロース 0.02%
4倍濃縮白桃果汁 5.00%
クエン酸 0.60%
クエン酸Na 0.20%
L−アスコルビン酸 0.10%
ピーチ香料 0.20%
――――――――――――――――――――――
水 全量を100%とする
*1:実施例1〜5、比較例1〜3でそれぞれ得られた低分子HAまたはHANa。
【0103】
実施例1〜5で得られた低分子HAまたはHANaを配合した試験例では、風味および食感に優れた白色半透明のスパウトパウチ入り白桃ゼリー飲料を得られた。これに対して、比較例1〜3で得られたHAまたはHANaを配合した試験例では、得られた飲料は色調が褐色を帯びており、ゼリー飲料としては不適であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させることにより得られる、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項2】
請求項1において、
前記分散は加熱下で行なわれる、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項3】
酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させた後、前記含水媒体を除去して得られた残留物を加熱乾燥することにより得られる、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記含水媒体のpHは2以下である、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
前記含水媒体に使用される媒体は、エタノール、メタノール、およびアセトンから選ばれる少なくとも1種である、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
1重量%水溶液の動粘度が10mm/s以下である、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
1重量%水溶液の動粘度が3mm/s以下である、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
1重量%水溶液の動粘度が2mm/s以下である、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、
色の明度を表すL値が90以上であり、かつ色の色相を表すb値が5以下である、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩。
【請求項10】
酸性含水媒体中にヒアルロン酸および/またはその塩を分散させる工程を含む、低分子ヒアルロン酸および/またはその塩の製造方法。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する化粧料。
【請求項12】
請求項1ないし10のいずれかに記載の低分子ヒアルロン酸および/またはその塩を含有する食品組成物。

【公開番号】特開2009−256683(P2009−256683A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178669(P2009−178669)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【分割の表示】特願2005−81571(P2005−81571)の分割
【原出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】