説明

低圧配電系統の漏電検出装置

【課題】従来よりも簡単な方法を用いて短時間・省労力で低圧配電系統の漏電箇所を検出する。
【解決手段】漏電検出装置20(多機能電力量計)は、零相変流器35と、分圧器38と、制御部28と、通信端末29とを備える。分圧器38は、遠方接地極に対する中性線11nの電圧を検出する。制御部28は、中性線11nの電圧に基づいて配電線路および需要家設備内の漏電の有無を判定する。制御部28は、さらに、零相変流器35によって検出された交流零相電流に基づいて需要家設備内の漏電の有無を判定する。通信端末29は、配電自動化システム用の通信伝送路41を介して制御部28による判定結果を中央装置40に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、低圧配電系統の漏電検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の低圧配電系統の地絡保護に関しては、以下の点で保安の高度化・向上に向けた施策が必要であると考えられる。
【0003】
第1に、変圧器と需要家とを結ぶ低圧配電線路には地絡保護装置を設置することは義務付けられていない。このため、この部分の地絡事故に関する常時監視は行なわれておらず、地絡事故発生時には地絡過電圧が長時間継続することになる。
【0004】
第2に、漏電遮断器を設置していない需要家設備内で漏電が発生した場合、漏電発生箇所の特定が困難となる場合があることが挙げられる。特に、複数の変圧器バンクのB種接地線を共同地線で並列に連結する多重接地配電系統の場合には、共同地線で連結された全ての変圧器バンクを対象として漏電発生箇所を特定する必要があるので、探索範囲が広がり過ぎてしまい漏電発生箇所の特定が一層困難である。
【0005】
特開2007−271610号公報(特許文献1)は、多重接地配電系統において地絡発生のバンクを特定する方法を開示する。この文献の方法では、複数のバンクを備えた多重接地配電線路において、あるバンクで地絡が発生したとき、バンク間の共同地線に流れる地絡電流を変流器で検出し、低圧交流配電線路のいずれかの基準とする電圧を電圧検出器で測定する。この測定した電流と電圧の位相差に基づいて各バンク間の地絡電流方向を検知することで、総合的に地絡発生バンクの位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−271610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特開2007−271610号公報(特許文献1)に記載の方法では、特殊な装置を用いて地絡発生バンクの位置を特定する必要があるので、特定に要するコストの面で課題がある。
【0008】
この発明の目的は、低圧配電系統のうち現状では迅速な検出が困難な部分で生じた漏電を迅速に検出することが可能な漏電検出装置を提供することであり、また、低圧配電系統で漏電が生じた場合に、現状よりも簡単な方法を用いて短時間・省労力で漏電箇所を検出することが可能な漏電電検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は要約すれば、低圧配電系統の漏電検出装置であって、漏電検知部と通信部とを備える。漏電検知部は、低圧配電系統における漏電の発生を検知する。通信部は、漏電検知部による検知結果を、配電自動化システム用の通信伝送路を介して中央装置に送信する。
【0010】
この発明の実施の一形態において、好ましくは、低圧配電系統は、2次側の中性点が接地された変圧器と、変圧器の2次側に接続される、中性線を有する配電線路とを含む。配電線路には複数の需要家設備が接続される。漏電検出装置は、配電線路のいずれかの箇所に設けられる。この場合、漏電検知部は、遠方接地極に対する中性線の電圧を検出する電圧検出部と、電圧検出部で検出された中性線の電圧に基づいて、配電線路および複数の需要家設備内の漏電の有無を判定する判定部とを含む。
【0011】
好ましくは、漏電検出装置は、複数の需要家設備のうちの特定の需要家設備の受電点付近に設けられる。この場合、漏電検知部は、受電点を流れる交流零相電流を検出する零相変流器をさらに含む。判定部は、さらに、零相変流器によって検出された交流零相電流に基づいて、上記の特定の需要家設備内の漏電の有無を判定する。
【0012】
漏電検出装置が特定の需要家設備の受電点付近に設けられる場合において、好ましくは、判定部は、零相変流器によって検出された交流零相電流のうち、低圧配電系統の基本波の成分の大きさが所定の基準値を超えた場合に、上記の特定の需要家設備内の交流回路が漏電であると判定する。
【0013】
好ましくは、判定部は、電圧検出部で検出された電圧のうち、低圧配電系統の基本波の交流電圧成分の大きさが所定の基準値を超えた場合に、配線線路または複数の需要家設備のいずれかの交流回路が漏電であると判定する。
【0014】
この発明の実施の他の形態において、好ましくは、低圧配電系統は、2次側の中性点が接地された変圧器と、変圧器の2次側に接続された配電線路とを含む。漏電検出装置は、配電線路のいずれかの箇所に設けられる。この場合、漏電検知部は、漏電検出装置の設置箇所を流れる交流零相電流を検出する零相変流器と、零相変流器によって検出された交流零相電流に基づいて、漏電検出装置の設置箇所よりも負荷側での漏電の有無を判定する判定部とを含む。
【0015】
この発明の実施のさらに他の形態において、好ましくは、低圧配電系統は、2次側の中性点が接地された変圧器と、変圧器の2次側に接続された配電線路とを含む。配電線路には複数の需要家設備が接続される。漏電検出装置は、変圧器の中性点と大地とを接続する接地線に設けられる。この場合、漏電検知部は、接地線を流れる交流電流を検出する変流器と、変流器によって検出された交流電流に基づいて、配電線路および複数の需要家設備内の漏電の有無を判定する判定部とを含む。
【0016】
この発明の実施のさらに他の形態において、好ましくは、低圧配電系統は、2次側の中性点が接地された複数の変圧器と、複数の変圧器の各中性点を接続する共同地線とを含む。この場合、漏電検出装置は、複数の変圧器の各々に対応して複数設けられる。漏電検知部は、自装置の設置箇所における共同地線を流れる交流電流を検出する変流器と、自装置の設置箇所における共同地線の交流電圧を検出する電圧検出部と、検出された交流電流または交流電圧に基づいて、共同地線に接続された複数の変圧器のいずれかのバンク内での漏電の有無を判定する判定部とを含む。通信部は、判定部による判定結果とともに、検出された交流電流および交流電圧の各波形データ、または波形データに基づく交流電流と交流電圧との位相差のデータ、または位相差のデータに基づく交流電流の方向を中央装置に送信する。
【0017】
好ましくは、通信部は、判定部が漏電と判定した場合に、変圧器を識別する情報を中央装置に送信する。
【0018】
もしくは、漏電検出装置が特定の需要家設備の受電点付近に設けられる場合において、通信部は、判定部が漏電と判定した場合に、上記の特定の需要家を識別する情報を中央装置に送信する。
【0019】
もしくは、漏電検出装置が配電線路のいずれかの箇所に設けられ、設置箇所を流れる電流を検出する零相検出器を含む場合において、通信部は、判定部が漏電と判定した場合に、漏電検出装置の設置位置を表わす情報を中央装置に送信する。
【0020】
好ましくは、漏電検出装置は、多機能電力量計に内蔵される。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、配電自動化システムと漏電検出装置(多機能電力量計)とを活用することによって、広範囲の低圧配電系統を対象として現状よりも短時間・省労力で漏電箇所の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の実施の形態1による漏電検出装置20が設けられた低圧配電系統の構成図である。
【図2】多機能電力量計20の配置について説明するための図である。
【図3】図1の多機能電力量計20の構成を示すブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態2による漏電検出装置50が設けられた低圧配電系統の構成図である。
【図5】漏電検出装置50の配置について説明するための図である。
【図6】図4の漏電検出装置50の構成を示すブロック図である。
【図7】この発明の実施の形態3による漏電検出装置70が設けられた低圧配電系統の構成図である。
【図8】図7の漏電検出装置70の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態4による漏電検出装置80が設けられた低圧配電系統の構成図である。
【図10】図9の漏電検出装置80の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0024】
<実施の形態1>
[低圧配電系統の構成]
図1は、この発明の実施の形態1による漏電検出装置20が設けられた低圧配電系統の構成図である。図1の配電系統は、V結線の変圧器(柱上変圧器)2と、変圧器2の2次側に接続された配電線路10を含む。配電線路10には需要家設備60が接続される。需要家設備60の受電点付近に漏電検出装置20としての多機能電力量計が設けられる。
【0025】
配電線路10は、V結線の三相4線式(電灯動力共用方式)であり、u相電圧線(12u,11u)、v相電圧線(12v,11v)、w相電圧線(12w,11w)、および中性線(12n,11n)を含む。w相電圧線は動力専用変圧器Tmの出力端子5wに接続され、v相電圧線は電灯動力共用変圧器Tlの出力端子5vに接続される。u相電圧線は、変圧器Tm,Tlで共通の出力端子5uに接続される。n相電圧線は、電灯動力共用変圧器Tlの2次巻線の中点である中性点5nに接続される。中性点5nは接地される。中性点5nと大地GND1との間の接地抵抗をRnとする。
【0026】
より詳しくは、配電線路10は、変圧器の2次側に接続された交流母線12(12u,12v,12w,12n)と、交流母線12に接続された複数の交流回線を含む。図1では、交流母線12と特定の需要家設備60とを接続する交流回線11(11u,11v,11w,11n)が図示されている。
【0027】
需要家設備60内の交流回路68には、交流回線11と負荷機器62とを接続する単相の交流線路64(u相電圧線64u、v相電圧線64v、中性線64n)が設けられる。負荷機器62が単相200Vの供給を受ける場合は、図1に示すように、負荷機器62はu相電圧線64uおよびv相電圧線64vと接続される。負荷機器62が単相100Vの供給を受ける場合は、負荷機器62は、u相電圧線64uおよびv相電圧線64vのいずれか一方と中性線64nと接続される。
【0028】
[漏電検出装置(多機能電力量計)の概要]
漏電検出装置20は、通信機能付きの多機能電力量計(電子式電力量計)に漏電検出機能を内蔵したものである。近年、通信機能を有する多機能電力量計が普及するともに、配電自動化システムが高度化した。実施の形態1による漏電検出装置20は、このようなインフラを利用することによって漏電箇所の検出を従来よりも容易に行なうようにするものである。
【0029】
図1の配電系統において想定される漏電箇所は様々である。図1には、配電線路10のw相電圧線(11w)で漏電が生じた場合(地絡抵抗Rw)、v相電圧線(11v)で漏電が生じた場合(地絡抵抗Rv)、需要家設備60の交流回路68のu相電圧線で漏電が生じた場合(地絡抵抗Ru)が図示されている。図3で詳述するように、漏電検出装置20(以下、多機能電力量計20とも記載する)は、配電線路10、需要家設備60内の交流回路68のいずれで漏電が生じているかを特定することができる。
【0030】
図2は、多機能電力量計20の配置について説明するための図である。
図1と同様に、図2の低圧配電系統は、上位の電力系統1に接続された変圧器2と、変圧器2の2次側に接続された配電線路10を含む。変圧器2の2次側の中性点は接地されている(接地抵抗をRnとする)。配電線路10は、交流母線12と、交流母線12に接続された交流回線11A,11B,11Cとを有する。交流回線11A,11B,11Cの末端には需要家設備60A,60B,60Cが接続される。需要家設備60A〜60Cには負荷機器62A〜62Cがそれぞれ設けられる。負荷機器62A〜62Cは、交流線路64A〜64Cをそれぞれ介して配電線路10と接続される。
【0031】
多機能電力量計20A,20B,20Cは需要家設備60A,60B,60Cにそれぞれ対応し、対応の需要家設備の受電点(66A,66Bまたは66C)付近に設けられる。さらに、多機能電力量計20A,20B,20C(子局)は、配電自動化システム用の通信伝送路41を介して電力会社の営業所などに設けられた中央装置40(親局)と接続される。各多機能電力量計20は、漏電を検出した場合に、対応の需要家を識別する情報および変圧器バンクを識別する情報を中央装置40に送信する。これによって、中央装置40は、変圧器バンクごともしくは需要家ごとの漏電検出を遠隔・集中的に行うことができる。
【0032】
[漏電検出装置(多機能電力量計)の詳細]
図3は、図1の多機能電力量計20の構成を示すブロック図である。
【0033】
図3を参照して、多機能電力量計20は、電力の測定および電力量の積算を行なうために、計器用変圧器31,32と、計器用変流器33,34と、電力測定部21とを含む。計器用変圧器31はu相電圧線11uと中性線11nとの間の交流電圧Vuを検出する。計器用変圧器32はv相電圧線11vと中性線11nとの間の交流電圧Vvを検出する。計器用変流器33はu相電圧線11uを流れる交流電流Iuを検出する。計器用変流器34はv相電圧線11vを流れる交流電流Ivを検出する。電力測定部21には、これらの交流電圧Vu,Vvを測定する交流電圧計21,22および交流電流Iu,Ivを測定する交流電流計23,24が設けられる。電力測定部21は、こられの測定値に基づいてu相、v相の電力を算出する。
【0034】
多機能電力量計20は、さらに、事故判定を行なうために、零相変流器(ZCT:Zero-phase Current Transformer)35と、分圧器(VD:Voltage Divider)38と、事故測定部25とを含む。零相変流器35は、交流回線11を流れる交流零相電流Ioを測定する。分圧器38は、中性線11nと接地端子30との間に直列接続されたコンデンサ36,37を含み、中性線11nの電圧Vnの分圧電圧を測定する。接地端子30は漏電時において零電位とみなすことができる遠方接地極GND2に接続されている。事故測定部25には、交流零相電流Ioを測定する交流電流計26と、分圧器38の出力電圧を測定する電圧計27とが設けられる。電圧計27は、直流電圧および交流電圧の両方が測定可能なものである。
【0035】
多機能電力量計20は、さらに、制御部28と、通信端末29とを含む。制御部28は、マイクロコンピュータなどによって構成され、電力測定部21の出力データに基づいて電力量のデータを蓄積したり、事故測定部25の出力データに基づいて漏電の有無および漏電発生箇所の特定を行なったりする。制御部28は、さらに、通信端末29による中央装置40との間の通信を制御する。
【0036】
表1は、図3の制御部28による漏電の発生箇所の特定方法をまとめたものである。以下、表1に即して説明する。
【0037】
【表1】

【0038】
(1.需要家設備内の交流回路で漏電が生じた場合)
(1−1.基本波電流の検出)
図1において、交流回路68の漏電時には、交流基本波の事故電流が、交流回路68の地絡事故点と変圧器2の中性点との間を、大地を介して環流する。したがって、零相変流器(ZCT)によって検出された交流零相電流のうち、基本波の交流電流成分をフィルタで取出してその大きさが所定の設定基準値を超えたか否かを判定することによって、交流回路68の漏電を検出することができる。
【0039】
この場合、変圧器2に接続された複数の需要家設備のうち交流回路の漏電が生じた需要家設備を特定することができる。たとえば、図2において、需要家設備60Aの交流線路64Aで地絡事故が発生したとする。このとき、基本波の事故電流は、地絡事故点から、交流線路64A、配電線路10の交流回線11A、交流母線12、変圧器2の中性点、大地の順に流れて地絡事故点に戻る。したがって、基本波の事故電流は、需要家設備60Aの受電点に設けられた多機能電力量計20Aの零相変流器によってのみ検出され、需要家設備60B,60Cの各受電点に設けられた多機能電力量計20B,20Cの零相変流器によっては検出されない。
【0040】
(1−2.基本波電圧の検出)
図1において、交流回路68の漏電時には、交流基本波の事故電流が、交流回路68の地絡事故点と変圧器2の中性点との間を、大地を介して環流する。この交流の事故電流によって中性点5nと大地GND1との間の接地抵抗Rnに基本波の交流電圧が生じるので、中性線12n,11nの電圧に基本波の交流電圧が重畳する。したがって、分圧器(VD)によって検出された交流電圧のうち、基本波の電圧成分をフィルタなどで取出して、その大きさが所定の設定基準値を超えたか否かを判定することによって、漏電の発生を検出することができる。ただし、変圧器2に接続されたどの需要家設備内で漏電が生じても中性線12n,11nの電圧が上昇するので、基本波の交流電圧を検出する場合には、複数の需要家設備のうちで交流回路の漏電が生じた需要家設備を特定することはできない。さらに、後述する配電線路10で漏電が生じた場合と区別することもできない。
【0041】
(2.配電線路で漏電が生じた場合)
(2−1.基本波電圧の検出)
図1において、配電線路10の漏電時には、交流基本波の事故電流が、配電線路10の地絡事故点と変圧器2の中性点との間を、大地を介して環流する。この交流の事故電流によって中性点5nと大地GND1との間の接地抵抗Rnに基本波の交流電圧が生じるので、中性線12n,11nの電圧に基本波の交流電圧が重畳する。したがって、分圧器(VD)によって検出された交流電圧のうち、基本波の電圧成分をフィルタなどで取出して、その大きさが所定の設定基準値を超えたか否かを判定することによって、漏電の発生を検出することができる。ただし、基本波の交流電圧を利用する場合は、需要家設備60内の交流回路68で漏電が生じた場合と区別することはできない。
【0042】
[実施の形態1のまとめと変形例]
このように、実施の形態1に従う漏電検出装置(多機能電力量計)20は、遠方接地極GND2に対する中性線11nの交流電圧を分圧器38によって検出するとともに、需要家設備の受電点を流れる交流零相電流を零相変流器35によって検出する。これらの検出結果に基づいて、漏電が発生したか否かを判定するとともに漏電発生箇所の特定を従来よりも短時間・省労力で行うことができる。
【0043】
さらに、漏電検出装置(多機能電力量計)20は、配電自動化システム用の通信伝送路41を介して中央装置40に漏電の発生を報知する。このとき、漏電検出装置(多機能電力量計)20は、漏電が生じた変圧器2を識別する情報とともに、漏電が発生した需要家設備を特定可能なときには、その需要家を識別する情報を中央装置40に送信する。これによって、中央装置40は、変圧器バンクごともしくは需要家ごとの漏電検出を遠隔的・集中的に行なえる。
【0044】
実施の形態1では、低圧配電系統の配電線路10がV結線の三相4線式(電灯動力共用方式)のとき、u相、v相、n相からなる単相の配電線路に接続される需要家設備内および変圧器バンクでの漏電検出について説明した。同様の方法で、図1のu相、v相、w相の三相の配電線路に接続される需要家設備内の漏電検出ができる。この場合、多機能電力量計は三相用のものを適用し、電力量計に内蔵した零相変流器(ZCT)を用いて配電系統の基本波電流を検出することによって需要家設備内の交流回路の漏電を検出する。この場合の多機能電力量計には分圧器(VD)は設けられない。
【0045】
また、上記の実施の形態1では、低圧配電系統の配電線路10がV結線電灯動力共用方式の場合について説明したが、配電方式はこれに限るものでない。たとえば、低圧配電系統は単相三線式であってもよい。
【0046】
図2では、漏電検出装置(多機能電力量計)20A,20B,20Cは、複数の需要家設備60A,60B,60Cの各受電点にそれぞれ接続されていた。どの需要家設備内で漏電が発生しているかを完全に特定する必要がない場合には、漏電検出装置(多機能電力量計)をすべての需要家設備に対して設けなくてもよい。たとえば、図2で需要家設備60Aに対してのみ漏電検出装置(多機能電力量計)20Aを設けた場合には、需要家設備60A内で漏電が生じているか否かの判定と、変圧器2に接続されたバンク全体(すなわち、配電線路10と需要家設備60A〜60C)で漏電が生じているか否かの判定とができる。
【0047】
<実施の形態2>
図4は、この発明の実施の形態2による漏電検出装置50が設けられた低圧配電系統の構成図である。
【0048】
図5は、漏電検出装置50の配置について説明するための図である。図4、図5に示すように、実施の形態2による漏電検出装置50は、変圧器2の2次側の交流母線12に設けられる。漏電検出装置50の接地端子51は、遠方接地極GND2と接続される。漏電検出装置50は、さらに、配電自動化システム用の通信伝送路41を介して中央装置40と接続され、子局として親局である中央装置40と通信する。図4、図5のその他の点は図1、図2と同じであるので、同一または相当する部分は同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0049】
図6は、図4の漏電検出装置50の構成を示すブロック図である。漏電検出装置50は、図3の漏電検出装置20から電力量の測定を行なうため構成と零相電流の測定を行なうための構成を取除いたものである。すなわち、漏電検出装置50は、遠方接地極GND2に対する中性線12nの電圧を測定するための分圧器38と、事故測定部25Aと、制御部28と、通信端末29とを含む。事故測定部25Aには、分圧器38の出力電圧を測定する電圧計27が設けられる。制御部28は、事故測定部25Aの出力データに基づいて変圧器バンク内での漏電の有無を判定を行なう。制御部28は、さらに、通信端末29による中央装置40との間の通信を制御する。通信端末29は、漏電が検出された場合に、制御部28による漏電判定結果と変圧器2を識別する情報とを中央装置40に送信する。
【0050】
表2に、図6の制御部28による漏電の発生箇所の検出方法をまとめて示す。表2の内容は、表1でセンサが分圧器(VD)の場合と同じであるので詳しい説明を繰返さない。
【0051】
【表2】

【0052】
漏電検出装置50は、図4、図5に示した交流母線12に限らず、配電線路10の任意の箇所に設けてもよい。配電線路10のいずれの箇所に設けても、中性線11nまたは12nの電圧を検出することによって、変圧器バンク内での漏電の発生を検出することができる。
【0053】
図6の漏電検出装置50には、さらに、配電線路10を流れる交流零相電流を検出するための零相変流器を付加してもよい。もしくは、中性線11n,12nの電圧を検出するための分圧器38に代えて配電線路10を流れる零相電流を検出する零相変流器のみを設けてもよい。交流零相電流の基本波を検出することによって、漏電検出装置の設置位置よりも負荷側で漏電が生じているか否かを判定することができる。この場合、図6の通信端末29は、制御部28による漏電判定結果とともに、漏電検出装置50の設置位置を表わす情報を中央装置40に送信する。たとえば、漏電検出装置50が架空配電線を流れる零相電流を検出するために電柱に設置されている場合には、その電柱を識別する情報が中央装置40に送信される。
【0054】
<実施の形態3>
図7は、この発明の実施の形態3による漏電検出装置70が設けられた低圧配電系統の構成図である。図7に示すように、漏電検出装置70は、変圧器2の中性点5nと大地GND1とを接続する接地線5eに設けられる。図7のその他の点は、図1、図4と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0055】
図8は、図7の漏電検出装置70の構成を示すブロック図である。漏電検出装置70は、接地線5eを流れる交流電流を検出する計器用変流器(CT:Current Transformer)72と、事故測定部25Bと、制御部28と、通信端末29とを含む。事故測定部25Bには、接地線5eを流れる交流電流Ioを測定する電流計26が設けられる。制御部28は、事故測定部25Bの出力データに基づいて変圧器2のバンク内での漏電の有無の判定を行なう。地絡事故時には中性線11n,12nに交流電圧が発生するが、この交流電圧は中性点5nと大地GND1との間の接地線5eを流れる電流によって生じるので、接地線5eを流れる交流電流が所定の設定基準値を超えたか否かを判定することによって、変圧器2のバンク内での漏電を検出することができる。通信端末29は、漏電が検出された場合に、制御部28による漏電判定結果と変圧器2を識別する情報とを中央装置40に送信する。
【0056】
<実施の形態4>
図9は、この発明の実施の形態4による漏電検出装置80が設けられた低圧配電系統の構成図である。実施の形態4の低圧配電系統は、2次側の中性点5nが接地された(接地抵抗をRnとする)V結線三相4線式の変圧器2を複数含む。図9には1つの変圧器2が代表として図示されている。各変圧器2の中性点5nは共同地線82によって相互に接続される。漏電検出装置80は、複数の変圧器2のそれぞれ対応して複数設けられる。図9のその他の点は、図1、図4、図7と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰返さない。
【0057】
図10は、図9の漏電検出装置80の構成を示すブロック図である。漏電検出装置80は、自装置の設置箇所における共同地線82を流れる交流電流を検出する計器用変流器72と、遠方接地極GND2に接続された接地端子81と、接地端子81(遠方接地極GND2)の電圧を基準として自装置の設置箇所における共同地線82の交流電圧Vnを測定するための分圧器38と、事故測定部25Cと、制御部28と、通信端末29とを含む。事故測定部25Cには、共同地線82を流れる交流電流Ioを測定する電流計26と、分圧器38の出力電圧を測定する電圧計27とが設けられる。
【0058】
制御部28は、事故測定部25Cの出力データに基づいて、共同地線82に接続された複数の変圧器のいずれかのバンク内での漏電発生の有無を検知する。低圧配電系統での地絡事故時には、大地GND1を介して各変圧器2の接地線5eおよび共同地線82に事故電流が流れる。この事故電流と接地抵抗Rnとによって共同地線82に交流電圧が発生する。したがって、制御部28は、共同地線82を流れる交流電流が所定の設定基準値を超えたことによって漏電の発生を検知することもできるし、共同地線82の交流電圧が所定の設定基準値を超えたことによって漏電の発生を検知することもできる。
【0059】
通信端末29は、制御部28による漏電の検知結果とともに、計器用変流器72で測定された交流電流および交流電圧の波形データを配電自動化システム用の通信伝送路41を介して中央装置40に送信する。中央装置40は、各漏電検出装置80から送信された波形データから各漏電検出装置80の設置箇所における電流・電圧の位相差を検出し、検出した位相差に基づいて各漏電検出装置80の設置箇所における共同地線82を流れる電流の方向を判定する。中央装置40は、各漏電検出装置80を流れる交流電流の方向を総合することによって、複数の変圧器バンクのうちどの変圧器バンクで漏電が生じたかを検知することができる。
【0060】
上記と異なり、事故測定部25Cの測定データに基づく電流・電圧の位相差の検出を制御部28によって行ない、検出した位相差のデータを通信端末29によって中央装置40に送信するようにしてもよい。もしくは、電流・電圧の位相差に基づいた自装置の設置箇所における電流方向の判定までを制御部28によって行ない、電流方向の判定結果を通信端末29によって中央装置40に送信するようにしてもよい。
【0061】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
1 電力系統、2 変圧器、5n 中性点、10 配電線路、11 交流回線、11n,12n 中性線、12 交流母線、20 漏電検出装置(多機能電力量計)、28 制御部、29 通信端末、35 零相変流器、38 分圧器、40 中央装置、41 配電自動化システム用の通信伝送路、50 漏電検出装置、60 需要家設備、62 電力変換器、64 交流線路、65 直流線路、68 交流回路、70,80 漏電検出装置、82 共同地線、GND1 大地、GND2 遠方接地極、Rdg,Ru,Rv,Rw 地絡抵抗、Rn 接地抵抗、Tl 電灯動力共用変圧器、Tm 動力専用変圧器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低圧配電系統における漏電の発生を検知する漏電検知部と、
前記漏電検知部による検知結果を、配電自動化システム用の通信伝送路を介して中央装置に送信するための通信部とを備える、低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項2】
前記低圧配電系統は、
2次側の中性点が接地された変圧器と、
前記変圧器の2次側に接続される、中性線を有する配電線路とを含み、
前記配電線路には複数の需要家設備が接続され、
前記漏電検出装置は、前記配電線路のいずれかの箇所に設けられ、
前記漏電検知部は、
遠方接地極に対する前記中性線の電圧を検出する電圧検出部と、
前記電圧検出部で検出された前記中性線の電圧に基づいて、前記配電線路および前記複数の需要家設備内の漏電の有無を判定する判定部とを含む、請求項1に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項3】
前記漏電検出装置は、前記複数の需要家設備のうちの特定の需要家設備の受電点付近に設けられ、
前記漏電検知部は、前記受電点を流れる交流零相電流を検出する零相変流器をさらに含み、
前記判定部は、さらに、前記零相変流器によって検出された交流零相電流に基づいて、前記特定の需要家設備内の漏電の有無を判定する、請求項2に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項4】
前記判定部は、前記零相変流器によって検出された交流零相電流のうち、前記低圧配電系統の基本波の成分の大きさが所定の基準値を超えた場合に、前記特定の需要家設備内の交流回路が漏電であると判定する、請求項3に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記電圧検出部で検出された電圧のうち、前記低圧配電系統の基本波の交流電圧成分の大きさが所定の基準値を超えた場合に、前記配線線路または前記複数の需要家設備のいずれかの交流回路が漏電であると判定する、請求項2〜4のいずれか1項に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項6】
前記低圧配電系統は、
2次側の中性点が接地された変圧器と、
前記変圧器の2次側に接続された配電線路とを含み、
前記漏電検出装置は、前記配電線路のいずれかの箇所に設けられ、
前記漏電検知部は、
前記漏電検出装置の設置箇所を流れる交流零相電流を検出する零相変流器と、
前記零相変流器によって検出された交流零相電流に基づいて、前記設置箇所よりも負荷側での漏電の有無を判定する判定部とを含む、請求項1に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項7】
前記低圧配電系統は、
2次側の中性点が接地された変圧器と、
前記変圧器の2次側に接続された配電線路とを含み、
前記配電線路には複数の需要家設備が接続され、
前記漏電検出装置は、前記中性点と大地とを接続する接地線に設けられ、
前記漏電検知部は、
前記接地線を流れる交流電流を検出する変流器と、
前記変流器によって検出された交流電流に基づいて、前記配電線路および前記複数の需要家設備内の漏電の有無を判定する判定部とを含む、請求項1に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項8】
前記低圧配電系統は、
2次側の中性点が接地された複数の変圧器と、
前記複数の変圧器の各中性点を接続する共同地線とを含み、
前記漏電検出装置は、前記複数の変圧器の各々に対応して複数設けられ、
前記漏電検知部は、
自装置の設置箇所における前記共同地線を流れる交流電流を検出する変流器と、
自装置の設置箇所における前記共同地線の交流電圧を検出する電圧検出部と、
検出された前記交流電流または前記交流電圧に基づいて、前記共同地線に接続された前記複数の変圧器のいずれかのバンク内での漏電の有無を判定する判定部とを含み、
前記通信部は、前記判定部による判定結果とともに、検出された前記交流電流および前記交流電圧の各波形データ、または前記波形データに基づく前記交流電流と前記交流電圧との位相差のデータ、または前記位相差のデータに基づく前記交流電流の方向を前記中央装置に送信する、請求項1に記載の漏電検出装置。
【請求項9】
前記通信部は、前記判定部が漏電と判定した場合に、前記変圧器を識別する情報を前記中央装置に送信する、請求項2,3,6,7のいずれか1項に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項10】
前記通信部は、前記判定部が漏電と判定した場合に、前記特定の需要家を識別する情報を前記中央装置に送信する、請求項3に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項11】
前記通信部は、前記判定部が漏電と判定した場合に、前記漏電検出装置の設置位置を表わす情報を前記中央装置に送信する、請求項6に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。
【請求項12】
前記漏電検知部は、多機能電力量計に内蔵される、請求項2〜6のいずれか1項に記載の低圧配電系統の漏電検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−200024(P2011−200024A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64238(P2010−64238)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000214560)長谷川電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】