説明

低導電率のバルーンおよびその生産方法

本発明は、表面導電率が低く製品の寿命が長い非ラテックスバルーンおよびその生産方法に関する。好ましい実施形態では、露出金属被覆層(4)を有する複数層複合フィルム(1)が、バルーン製品の電気抵抗率を1.08オーム/sqを超えるように上昇させるエラストマーシーラント層(6)でコーティングされる。本発明は、非ラテックスバルーンを製造するのに要求される、必要な接着強度およびシール強度のバルーンおよびその生産方法に関する。本発明のバルーンは、従来のバルーンシステムよりもピンホールおよびストレスによるひび割れのような一般的な不具合に対して強いので、製品の寿命が長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの金属被覆層がエラストマーフィルム層で封入された、低導電率の非ラテックスバルーン、およびこうしたバルーンを生産する方法に関する。バルーン構造を、エラストマーシーラント層とフィルム層との間に金属被覆層を挟んだ構造にすることによって、低導電率が実現される。あるいは、本発明は、エラストマーシーラント層と金属被覆層と間の粘着性を改善するプライマを組み込んでいる。これらの実施形態のバルーンは、非ラテックスバルーンを製造するのに求められるように、導電率が低く、浮遊期間が長く、すり傷に対する抵抗が改善されており、必要な接着強度およびシール強度を有する。
【0002】
本発明では、導電率は、バルーンの表面が電荷の移動をどの程度良好に含むかを示す尺度である。電気抵抗率は導電率の逆数である。電気抵抗率は、バルーンの表面上の電流の流れに対する抵抗である。電気抵抗率の測定単位はオームである。抵抗率が低い材料は良好な導電体であり、抵抗率が高い材料は良好な絶縁体である。本発明では、抵抗率を導電率の指標として試験した。
【背景技術】
【0003】
多くの場合に金属被覆バルーンと称される非ラテックスバルーンが、長年にわたって普及している。例えば、米国特許第4,077,588号、第4,290,763号、および第4,917,646号を参照されたい。それらの教示は参照により本明細書に援用される。典型的には1つまたは複数のシートの非ラテックスバルーンには、キャラクター、デザイン、メッセージ、またはそれらの組み合わせなど、カラフルな装飾が印刷されている。より最近では、バルーン同士の組み合わせ、またはバルーンと付属品など他の構造との組み合わせを含む玩具が開発されている。例えば、米国特許第5,338,243号、第4,778,431号、および第5,108,339号を参照されたい。それらの教示も本明細書に援用される。
【0004】
複数の層から構築されるフィルムが、各フィルム層の特徴をフィルム構造全体に組み合わせるための実行可能な手法として当技術分野で知られている。例えば、ポリマーフィルムを金属被覆することで、水や、二酸化炭素、酸素などのガスに対して、またヘリウムなど、空気より軽いガスに対しても、フィルムのバリア特性が改善されることが当技術分野でよく知られている。ヘリウムの場合には、金属被覆ポリマーフィルムが、ヘリウムを充填したバルーンを生産するのに広く用いられている。例えば、金属被覆したポリアミド(例えば、ナイロン6)は、この用途で広く使われている。しかし、ナイロン層と金属被覆層との機械的特性の違いは、この用途では問題になる恐れがある。バルーンを膨らませるときに、金属被覆層はナイロンと同じ弾性特性を有しないので、ナイロン層が伸び、金属被覆層に微細なひび割れが生じる恐れがある。残念ながら、これは、フィルムのバリア特性、続いてバルーンの膨張期間を低減させる。こうした問題を軽減する手法の1つは、より高弾性の、より伸長抵抗性のあるポリマーフィルムを利用することである。ポリエチレンテレフタラート(PET)が一例である。しかし、より伸長抵抗性の高いフィルムをヘリウムバルーン構造に利用するときに、これにより、多くの場合に、多くの事例で、継ぎ目の破損およびフィルムのひび割れが生じる。これは、フィルムによって拡散していた力がバルーンの他の領域にさらにひどく集中することになるからである。
【0005】
シーラント層、フィルム層、および金属バリア層を含む、浮力のあるヘリウムバルーンを構築することも知られている。さらに、機能的で頑丈なバルーンを生産するのに必要な所望のレベルの粘着性をシール層とフィルム層との間に与えるために、プライマを使用することが当技術分野で知られている。金属層は、浮力のある金属被覆ヘリウムバルーンが送電線にからまり、やっかいな停電を引き起こすという、実証されてない主張の対象となっている。これらの事象の疑わしい原因は、こうしたタイプの金属被覆バルーンの外側金属層の高い導電率にあると考えられる。このような問題が実際に存在する限り、本発明は、完成したバルーンの導電率を少なくとも5桁(105)低下させるように絶縁エラストマーポリマーフィルム層の間に金属層を封入することによって、こうした課題を解消する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、ポリマーフィルムの一方の面に金属被覆層が貼付されたフィルムを組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品として要約することができる。完成したバルーン製品の表面電気抵抗率が1.011オーム/sqを超えるように、金属被覆層の露出面にエラストマーシーラント層を積層する。これは、非常に散逸的なフィルムを事実上非導電性と考えている。いくつかの例では、エラストマーシーラント層を貼付する前に、プライマを金属被覆層の露出面に塗布することが好ましい。
【0007】
本発明はまた、第1および第2の面を有するポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムと、コアポリエステル層の第1の面に貼付される非結晶性層とを組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品であって、コアポリエステル層の第2の面または非結晶性層に金属被覆層が貼付される、バルーン製品も包含している。プライマなしの、またはプライマでコーティングした、金属被覆層の露出面にエラストマーシーラント層が追加され、その結果、バルーン製品の表面電気抵抗率が1.011オーム/sqを超える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の非ラテックスバルーン製品である複数層フィルム複合材の一実施形態の概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
言及したように、複数層フィルムは、各フィルム層の特徴をフィルム構造全体に組み合わせるための実行可能な手法として当技術分野で知られている。例えば、金属被覆ポリマーフィルムにより、水や、二酸化炭素、酸素などのガスに対して、またヘリウムに対しても、フィルムのバリア特性が改善されることが当技術分野でよく知られている。ヘリウムの場合には、金属被覆ポリマーフィルムが、ヘリウムなど、空気より軽いガスを充填したバルーンを生産するのに広く用いられている。しかし、ポリマーフィルム層と金属被覆層との機械的特性の違いは、この用途では問題になる恐れがある。バルーンを膨らませるときに、金属被覆層は同じ弾性特性を有しないので、フィルム層が伸び、金属被覆層に微細なひび割れが生じる恐れがある。これは、フィルムのバリア特性、続いてバルーンの膨張期間を低減させる。当技術分野では、より高弾性の、より伸長抵抗性のあるポリマーフィルムが使用されているが、これにより、多くの場合に、多くの事例で、継ぎ目の破損およびフィルムのひび割れが生じる。これは、フィルムによって拡散していた力がバルーンの継ぎ目および他のストレス領域に局在化することになるからである。複数層のポリエステル構造を使用すると、膨張の際のヘリウムに対するバリアを改善しながら、ひび割れに対する抵抗を高くすることができるが、これらの構造は、金属被覆層がバルーン構造の露出した外側にあることから、なお高い導電率を有する。本発明は、金属被覆層の上に直接エラストマーポリマー層を追加して、金属層をコーティングまたは封入する。このエラストマー層によりバルーン構造の導電率が非常に低くなる。現行の金属被覆バルーンと比較すると、内側の金属被覆層を組み込むことによって最大5桁(105)の導電率の低下が実現される。本発明のバルーンにより、金属の保全性も、接着強度およびシール強度も非常に良くなる。
【0010】
バルーンの導電率は、ASTM D257またはANSI/ESD STM11.12−2007などの方法を利用して、バルーンの表面抵抗率および体積抵抗率を測定することによって判定することができる。
【0011】
本発明のバルーン製品は、少なくともベースポリマーフィルム層、金属被覆層、およびエラストマーシーラント層を備える。この出願で使用するように、用語「エラストマーポリオレフィン」は特有の定義を有する。過去に、エラストマーを定義するために様々な定義が用いられてきた。一般に、エラストマーは、張力下で伸び、一般に引っ張り強さが高く、素早く縮み、一般に伸びた後で解放されると元の寸法に回復するようなゴムの特性を有する物質と定義されている。エラストマーは、典型的には、加工上はプラスチックタイプの特徴を、機能上はゴムタイプの特徴を有する。こうしたポリオレフィンは、様々な基体を形成する場合、付勢力が加えられるときは少なくとも1つの方向に伸長可能であり、付勢力が除去された後にはある程度元の寸法に戻る。エラストマー系合成物は、メルトブローウェブを形成するときは、常にではないが、一般に、元の弛緩したときの長さの少なくとも約25%の伸び率まで伸び、伸ばす力をゆるめると、伸長のうちの少なくとも約40%が回復することができ、すなわち、伸長が25%の場合は、約15%以下だけ伸長した状態に収縮する。(例えば、長さ4インチの材料は、少なくとも長さ約5インチに伸長でき、かつ伸ばす力をゆるめると、5インチに伸長したときに長さ約4.6インチ以下に収縮する場合は、エラストマーであると考えられる。)
【0012】
エラストマーの特性は、温度および伸長率の関数である。表1の例示のために、室温および通常のバルーンの膨張速度を使用した。本発明で使用するエラストマーシーラント層は、伸長の回復が、好ましくは40から100%、より好ましくは60から100%、最も好ましくは75から100%である。
【0013】
【表1】

ここで、
「A」は、低密度ポリエチレン、および直鎖状低密度ポリエチレンの混合物である。
「B」は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、およびエチレンアルファオレフィンの混合物である。
「C」は、4%EVAコポリマー樹脂の耐衝撃性かつ高透明性のLDPEである。
【0014】
本発明で使用するために上記で定義した特有の「エラストマーポリオレフィン」とは対照的に、「非エラストマー」または「非エラストマーポリオレフィン」は、本発明では、メルトブローウェブを形成するときに、常にではないが、上記のエラストマーウェブの伸長の特徴を満たすことができないポリオレフィンであると定義する。バルーンの製造に使用される非エラストマーのポリマーフィルムの例が、米国特許第4,077,588号に開示されており、その文献には、金属フィルムをコーティングするためにこうした非エラストマーのポリマーフィルムのポリマーを使用できることが提案されている。以下の例で説明するように、金属被覆層をコーティングするのに‘588号特許で教示されるような非エラストマーポリオレフィンを使用すると、1気圧を超える気圧または約1気圧で空気または空気より軽いガスによってバルーンを膨張させることができなくなる。対照的に、本発明は、金属被覆層に貼付するエラストマーポリオレフィンシーラント、好ましくは直鎖状低密度ポリエチレンの使用を必要とし、その結果、1気圧を超える気圧で空気または空気より軽いガスによってバルーンを膨張させることができる。
【0015】
複数層バルーンフィルムの全厚は、好ましくは5から70ミクロン、より好ましくは5から50ミクロン、最も好ましくは5から35ミクロンである。この複数層構造では、ベース複合材フィルム層の厚さは、好ましくは全厚の30から95%、より好ましくは全厚の40から80%、最も好ましくは層の全厚の50から75%である。この構造のエラストマーシーラント層は、好ましくは全厚の5から75%、より好ましくは5から60%、最も好ましくは全厚の5から40%である。金属被覆層は、好ましくは全厚の0.0001から1%、より好ましくは0.001から0.1%、最も好ましくは全厚の0.005から0.05%である。続いて、この構造を熱溶着および型抜きして、バルーンを形成する。
【0016】
図1に、本発明の非ラテックスバルーン製品を製造するのに使用される複数層のフィルム1の一実施形態の断面を概略的に示す。ヘリウムバルーンフィルムに一般に利用される任意の熱可塑性材料から、本発明のベースポリマーフィルム層を生産することができる。本発明のベースポリマーフィルム層に有用な熱可塑性材料の非限定的な例には、ポリアミド、ポリエステル、およびポリオレフィンが含まれる。好ましくは、ベースポリマーフィルム層は、ポリエチレンテレフタラート(PET)層3および非結晶性ポリエステル層2を含む。非結晶性ポリエステル層2は、好ましくは、コア層3と共押し出し成形され、コアポリエステル層3と非結晶性層2との接着が強化される。
【0017】
このベースポリマーフィルムには金属被覆層4が、例えば、薄い金属フォイルの直接的な貼り合わせ、または気相成長法もしくはスパッタリングによって追加される。好ましい方法では、金属被覆層は、光学密度によって測定された厚さで露出ポリマー層に追加される。好ましい方法は真空蒸着であり、これは、約1.8から約3.2の光学密度の金属層を追加することができる。金属被覆バリア層4とポリマー層との間の粘着性もやはり重要な要素である。なぜなら、新規に生産したフィルムがどんなに良好なバリア特性を示していても、バルーン作製プロセス中の金属被覆層4の損傷および除去、ならびに最終消費者による予期しない扱いにより、フィルムのバリア特性が劣化するからである。特に本発明に関しては、ベース複合フィルムとシーラント層6との間に金属被覆層4を埋め込む必要があるので、構造中に層間剥離を生じないのに十分な強度で、金属被覆層4がベースポリマーフィルムに貼付された状態にする必要がある。ベースポリマーフィルムと金属被覆層4との間の乾式接着強度は、300g/in超、好ましくは600g/in超でよい。
【0018】
特に、ラミネートおよびバルーンのラミネーション強度およびシール強度を強化するために、金属被覆層4が、任意の水ベースのプライマを金属被覆層4に塗布するような湿式プロセスを受けるときは、ベースポリマーフィルムと金属被覆層4との間の湿式状態の接着強度が重要になる。湿式状態のベースポリマーフィルムとガスバリア層4との接着強度は、好ましくは30g/in超、より好ましくは100g/in超、最も好ましくは600g/in超である。
【0019】
こうした接着強度値を実現するためには、ガスバリア層をポリエステルフィルム上に追加する前に、ポリエステルフィルムに対するプラズマ/コロナ処理などの電気的処理を使用することになる。より高い接着強度値を実現するためには、Cuシーディング、Niシーディングなどの追加の蒸着固定層を、好ましくは、主金属バリア層を蒸着する前に追加する。こうした蒸着固定層の代わりに、またはそれに加えて、上記で言及した非結晶性層2および/またはベース複合フィルム上の追加のコーティング層が好ましいこともある。
【0020】
金属被覆層4、PET層3、および非結晶性ポリエステル層2は、本発明のバルーン製品を製造するのに使用される、多くの好ましい複数層の開始フィルムのうちの1つを代表する。
【0021】
以前に使用していたバルーンフィルムとは対照的に、好ましくは複数層バルーンフィルムを製造する当業者に知られた押し出しコーティングプロセスを用いて、金属被覆層4に直接エラストマーシーラント層6が加えられる。好ましい実施形態では、フィルムの金属被覆面が、任意選択のプライマ層5で最初にコーティングされる。プライマ層は、エラストマーシーラント層と露出金属被覆層との間の層間の粘着性を改善するために使用される。こうした材料の間の粘着性を改善するための多くのプライマが当技術分野で知られており、従来の溶融コーティング技法または溶液コーティング技法を使用して塗布することができる。この例では、本発明の好ましい実施形態は、何らかの等級のコポリエチレン、例えば、エチレンアクリル酸(EAA)、またはポリエチレンイミン、およびその誘導体、ならびにシランカップリング剤を利用する。シランカップリング剤は、一方はシランでありもう一方は樹脂との反応性を有する官能基である、2以上の官能基を含むいくつかの分子から選択される。シラン官能基は、それ自体ならびにポリマーおよびミネラルの酸化物表面に共有接着を形成することができ、他の官能基は、樹脂と反応するように選択される。アミノシランの場合は、アミノ基は、酸化シーラント層との化学接着を形成することができる。シーラントポリマーの様々な化学的性質によってシーラント樹脂と反応できる広範囲の他の官能基が利用可能である。シラン基との様々な官能基の化合物は、オルガノシランと称され、異なる材料間の粘着性を高める用途でカップリング剤およびプライマとしてよく知られている。アミノ官能基は、1つまたは複数がシラン官能基と化合すると、アミノシラン分子になるという利点を有し、アミノシラン分子は、好ましくは、アミノアルコキシシラン、アミノプロピルシラン(APS)、アミノトリエトキシシラン、またはそれらの組み合わせなどであり、簡単に希釈でき、急速にゲルが形成することのない非常に安定した希釈水溶性混合物を含む水から塗布することができる。本発明で有用な好ましいシランは、アルコキシシラン、官能アルコキシシラン、アミノアルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、およびビニルアルコキシシラン、またはそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。
【0022】
本発明のエラストマーシーラント層6は、頑丈なバルーン継ぎ目として働くように熱溶着および型抜きされるときに、それに対して適切な粘着性を有するように選択される。本発明の好ましいエラストマーシーラント層6は、シール強度が2000g/inを超えるポリオレフィンである。より具体的には、好ましい実施形態は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)をシール強度が3500g/inを超えるシーラント層として利用し、それにより、1気圧を超える気圧で空気または空気より軽いガスによってバルーンを膨張できる。エラストマーシーラント層の厚さは、好ましくは5から50ミクロン、より好ましくは5から30ミクロン、最も好ましくは5から25ミクロンである。本発明の金属被覆層にシーラント層を押し出しコーティングすると、当技術分野で知られているバルーンに見られる一般的な不具合(例えば、ピンホール、ひび割れ)に強い、バルーンの用途について優れた構造になることが分かっている。好ましい実施形態では、シーラント層と金属被覆層と間の接着強度は、200g/in超であり、より好ましくは350g/in超であり、最も好ましくは500g/in超である。シーラント層は、最終の複数層フィルムまたは完成したバルーン製品の導電率が、外側金属被覆層を有するバルーンと比べて低くなるような量で追加される。好ましくは、表面電気抵抗率は、1×108オーム/sq超、より好ましくは1×109オーム/sq超、最も好ましくは1×1010オーム/sq超である。この抵抗率は、抵抗率が1×103オーム未満の外側金属被覆面を有する現行のバルーンとは対照的である。
【0023】
本発明のエラストマーシーラント材料は、溶融加工可能になるように選択される。溶融加工は、典型的には、120℃から330℃の温度で行われるが、最適な動作温度は、選択したシーラント層の融点、溶融粘度、および耐熱性に応じて選択される。押し出し成形機など、異なるタイプの溶融加工装置を使用して、本発明の溶融加工可能な合成物を加工することができる。本発明で使用するのに適切な押し出し成形機は、例えば、Rauwendaal、C.、「Polymer Extrusion」、Hansen Publishers、23〜48頁、1986年に記載されている。
【0024】
金属被覆層をシーラント層でコーティングする際に、フィルム構造は、所望の形状およびサイズに熱型抜きおよび溶着する前に位置合わせされる。型抜き加工および溶着加工のための温度および圧力を注意深く選択することは、頑丈な継ぎ目を有するバルーンを形成するのに常に重要である。機械式ヒートシールおよび型抜きは、加える圧力の調整が簡単なので、液圧式型抜き加工よりも加える圧力を正確に制御でき、機械式ヒートシール加工および型抜き加工は本発明のフィルムに好ましい。継ぎ目構造が厚い(1/32インチから1/2インチ)ことにより、本発明の非ラテックスバルーンフィルム複合材に関する不具合に対してさらに強くなることも分かっている。液圧式型抜きを使用するか、機械式型抜きを使用するかに関わらず、適切なバルーン形状を用意するために複数層フィルムに型抜きを利用することがよく知られている。実際には、ポリマーフィルム構造が可撓性なので、バルーンの形状は、円形、正方形、三角形、湾曲形など、任意の所望の形状にすることができる。形状は、恐竜など、有名なノベルティキャラクタや、スポーツチームの記章などでよい。フィルム複合材の所望の形状を位置合わせした後で、それらは、その材料を後で膨張できるように開口部を残すように互いに接合または貼付される。切断した形状の粘着または接合は、当技術分野でよく知られた手段で実現することができる。必要であれば、開口部にバルブを挿入し、取り付けたバルブに層を当接して、完成した構造を形成することができる。バルブの使用は任意選択と考えられる。バルーンとして使用する場合は、空気より軽いガスを開口部に入れることによって、継ぎ目のあるフィルム複合材を膨張させ、材料が完全に膨張した後に、または存在する場合はバルブを通って膨張した後に、開口部をシールする。実際には、本発明の材料は、空気より軽いガス、好ましくはヘリウムを、少なくとも7日間、より好ましくは14日超、最も好ましくは1か月超、可能なら1年間保持することができる。その結果、生じる材料は、高品質のバルーンの優れた候補であると考えられる。
【0025】
試験方法
Sentinelのヒートシール機で金属表面にDow社のPRIMACOR3300フィルムをヒートシールすることによって、ポリマーフィルム基体に対する金属被覆層の乾式接着強度を測定した。フィルムの裏面には、試験中にフィルムが損傷しないように粘着テープ(3M 610)を貼付する。ヒートシール条件は、温度220°F、ドウェル時間20秒、ジョー圧力40psi、片面加熱ジョーである。剥離前に、各ウェブを引っ張り試験機の別個のジョーで把持することができるようにシールした材料を切断し、シールした材料のうちの断面1平方インチを剥離することができる。剥離は手で開始し、次いで、2つのウェブを、PRIMACORフィルムに向かって180度の構成でInstron引っ張り試験機で剥離させる。金属が基体から離れ、PRIMACORフィルムに貼付されたままである場合は、平均の剥離力を金属の接着強度として申告する。
【0026】
剥離させているときにシール領域の境界面に水を加えるために水に浸した綿棒を用いたことを除いて、金属被覆層の湿式接着強度を、乾式接着強度と同じ手順で測定した。
【0027】
エラストマーコーティングのシール強度を以下に準拠して測定した。15インチ×3/8インチのジョーを有するPack Riteヒートシール機を用いて、シール層がそれ自体にシールされる。ヒートシール条件は、温度405°F、ドウェル時間2秒、ジョー圧力90psi、片面加熱ジョーである。剥離する前に、各ウェブを引っ張り試験機の別個のジョーで把持することができるようにシールした材料を切断し、そのシールした材料を剥離することができる。2つのウェブを、Tピールとして知られている、支持していない90度構成でInstron引っ張り試験機で剥離させる。破損を示す、負荷の20%の低下まで、剥離速度6インチ/分、ジョーの分離4インチが使用される。破損前に記録された最大負荷をシール強度として申告する。
【0028】
金属被覆面に対するエラストマーコーティングの接着強度の試験には、押し出しプロセス中に押し出す物を追加する前に、フィルムウェブ上に落とした別個のシートを使用する必要がある。続いて、そのシートは、押し出しコーティングによるシートをフィルムから遮蔽し、したがって、押し出した物を押し出しフィルムから分離する手段を提供する。押し出した物とフィルムとの間の層間の接着強度を、試験サンプルの支持していない90度の剥離試験中に測定する。試験サンプルは、試験サンプルの支持されていない部分が押し出しフィルムであり、試験サンプルの剥離部分が未コーティングのフィルムおよび押し出しシートであるように構成される。剥離速度6インチ/分、ジョーの分離1と1/4インチを使用し、1/2インチの距離の中で記録された最大負荷を接着強度として申告する。
【0029】
ANSI/ESD STM11.11−2006試験方法に従って、同心のリング電極を有するACL Staticide Model 800 Megohmmeterを使用してフィルムの表面抵抗率を測定した。
【0030】
バルーンの浮遊時間は、バルーンをヘリウムガスで膨張させ、バルーンが完全に膨張したままである日数を測定することによって判定される。バルーンは、Conwin Precision Plusバルーン膨張調整機およびノズルなど、「フォイル」バルーン用に設計された圧力調整ノズルを用いてヘリウム源から充填される。圧力は、自動停止で水柱圧力16インチに調整しなければならない。バルーンは、バルーンの内側の圧力が16インチ水柱に達し、調整器が停止するまで、温度約70°Fの周囲条件でヘリウムを充填しなければならない。バルーンは、バルブの変形または損傷を避けるためにバルーンのバルブアクセス孔の下につながなければならず、したがって、バルブを通してヘリウムガスがゆっくりと漏出する。試験中は、バルーンを、提示した周囲条件に近い安定した環境に維持しなければならない。変動が大きければ試験を無効にできるよう、温度および気圧の変化は、浮遊時間の結果を解釈するために記録しなければならない。バルーンは、充填の外観の試験期間中にわたって観察される。使用する判断基準のうちの1つは、ヒートシール継ぎ目領域を走るしわが深く長くなって、バルーンの表側に延び、完全に膨張したバルーンを特徴付ける円形とは対照的に継ぎ目の断面がV字形になるようにバルーンの外観が変化するときである。このとき、バルーンは、まだ物理的に浮遊しているが、もはや美的に満足な外観を有してない。最初の膨張から上記で説明した美的な外観の損失までの日数を、バルーンの浮遊時間として申告する。
【実施例】
【0031】
いくつかの試験を行って、本発明の方法およびフィルムを用いて作製したバルーンを評価した。第1の試験は、対照標準バルーン製品を本発明のフィルムで作製したバルーン製品と比較する比較実験を含む。以下のバルーン構成を試験した。
1)対照標準−金属被覆層/PET層/非結晶性PET層/プライマ層/押し出しコーティングしたシーラント層を備えるフィルム。
2)Hurstの‘588号特許−非エラストマーシーラント層/金属被覆層/非エラストマーポリエステル層を備えるフィルム(第6欄、第34〜45行)。
3)本発明−PET層/非結晶性PET層/金属被覆層/押し出しコーティングしたエラストマーシーラント層を備えるフィルム。
4)本発明−PET層/非結晶性PET層/金属被覆層/プライマ層/押し出しコーティングしたエラストマーシーラント層を備えるフィルム。
5)本発明−非結晶性PET層/PET層/金属被覆層/押し出しコーティングしたエラストマーシーラント層を備えるフィルム。
6)本発明−非結晶性PET層/PET層/金属被覆層/プライマ層/押し出しコーティングしたエラストマーシーラント層を備えるフィルム。
【0032】
次いで、これらのフィルムを機械式に型抜きして、標準的なサイズおよび形状の複数のバルーン製品を形成した。各例の複数のバルーンを、同じ量のヘリウムで充填し、バルーンを固定支持体につなぐことによって同じ外気条件で浮力を比較試験した。表面導電率および体積導電率に関してバルーンをそれぞれ測定した。結果を以下の表に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
これは、本発明に従って作製したバルーンに関して導電率が8桁(108)下がったことを示している。
【0035】
それらのバルーンを、ヘリウムの損失を直接示す充填の外観に関しても毎日モニタリングした。対照標準バルーンの浮遊期間は平均12日であり、Hurstの‘588号特許に従って作製したバルーンは、大気圧を超えて膨張させることができなかったか、または2時間以内に落下した。本発明に従って作製したバルーンの浮遊期間は平均24日であり、したがって、バルーン寿命は2倍長いことが示された。
【0036】
本発明の概略的原理の上記の開示、および記載した様々な実施形態から、本発明が受ける様々な修正を、当業者なら簡単に理解するであろう。本発明の真の範囲および精神から逸脱することなく、このように本発明を変更および修正することができる。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその等価物によってのみ限定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.ポリマーフィルム層と、
b.前記ポリマーフィルムの一方の面に重ねられる、露出面を有する金属被覆層と、
c.前記金属被覆層の露出面に重ねられるエラストマーシーラント層と
を組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品であって、
表面電気抵抗率が1.08オーム/sqを超える、バルーン製品。
【請求項2】
前記ポリマーフィルムがポリエステルを含むことを特徴とする、請求項1に記載のバルーン製品。
【請求項3】
前記エラストマーシーラント層が溶融加工可能なポリオレフィンを含む、請求項1に記載のバルーン製品。
【請求項4】
前記ベースポリマーフィルムと前記金属被覆層との間の乾式接着強度が300g/inを超える、請求項1に記載のバルーン製品。
【請求項5】
前記ポリオレフィンが、それ自体に対するシール強度が2000g/inを超える溶融加工可能なポリオレフィンである、請求項3に記載のバルーン製品。
【請求項6】
前記ポリオレフィンが、前記金属被覆層に対する接着強度が200g/inを超える溶融加工可能なポリオレフィンである、請求項3に記載のバルーン製品。
【請求項7】
前記エラストマーシーラント層が、前記金属被覆層の露出面に直接押し出しコーティングされる、請求項1に記載のバルーン製品。
【請求項8】
前記エラストマーシーラント層と前記金属被覆層の露出面との間にプライマ層がある、請求項1に記載のバルーン製品。
【請求項9】
前記プライマ層が、前記エラストマーシーラント層を追加する前に前記金属被覆層の露出面に直接溶液コーティングされるシランまたはポリエチレンイミンをベースとするプライマである、請求項8に記載のバルーン製品。
【請求項10】
a.第1および第2の面を有するコアポリエステル層と、
b.前記コアポリエステル層の第1の面に貼付される非結晶性ポリエステル層と、
c.前記コアポリエステル層の第2の面に貼付される、露出面を有する金属被覆層と、
d.前記金属被覆層の露出面に重ねられるエラストマーシーラント層と
を組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品であって、
表面電気抵抗率が1.08オーム/sqを超える、バルーン製品。
【請求項11】
a.第1および第2の面を有するコアポリエステル層フィルムと、
b.前記コアポリエステル層フィルムの第1の面に貼付される非結晶性ポリエステル層と、
c.前記コアポリエステル層フィルムの第2の面に貼付される、露出面を有する金属被覆層と、
d.前記金属被覆層の露出面をコーティングするプライマ層と、
e.前記プライマでコーティングした前記金属被覆層の露出面に重ねられるエラストマーシーラント層と
を組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品であって、
表面電気抵抗率が1.08オーム/sqを超える、バルーン製品。
【請求項12】
前記コアポリエステル層がポリエチレンテレフタラート(PET)を含むことを特徴とする、請求項10または11に記載のバルーン製品。
【請求項13】
前記エラストマーシーラント層が溶融加工可能なポリオレフィンを含む、請求項10または11に記載のバルーン製品。
【請求項14】
前記ベースポリマーフィルムと前記金属被覆層との間の乾式接着強度が300g/inを超える、請求項10または11に記載のバルーン製品。
【請求項15】
前記ポリオレフィンが、それ自体に対するシール強度が2000g/inを超える溶融加工可能なポリオレフィンである、請求項13に記載のバルーン製品。
【請求項16】
前記ポリオレフィンが、前記金属被覆層に対する接着強度が200g/inを超える溶融加工可能なポリオレフィンである、請求項13に記載のバルーン製品。
【請求項17】
前記プライマ層が、前記エラストマーシーラント層を追加する前に前記金属被覆層の露出面に直接溶液コーティングされる、シランまたはポリエチレンイミンをベースとするプライマである、請求項11に記載のバルーン製品。
【請求項18】
a.第1および第2の面を有するコアポリエステル層と、
b.前記コアポリエステル層の第1の面に貼付される非結晶性ポリエステル層と、
c.前記非結晶性ポリエステル層に重ねられる、露出面を有する金属被覆層と、
d.前記金属被覆層の露出面に重ねられるエラストマーシーラント層と
を組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品であって、
表面電気抵抗率が1.08オーム/sqを超えるバルーン製品。
【請求項19】
a.第1および第2の面を有するコアポリエステル層と、
b.前記コアポリエステル層の第1の面に貼付される非結晶性ポリエステル層と、
c.前記非結晶性ポリエステル層上に重ねられる、露出面を有する金属被覆層と、
d.前記金属被覆層の露出面をコーティングするプライマ層と、
e.前記金属被覆層の露出面に重ねられるエラストマーシーラント層と
を組み合わせて備える非ラテックスバルーン製品であって、
表面電気抵抗率が1.08オーム/sqを超える、バルーン製品。
【請求項20】
前記コアポリエステル層がポリエチレンテレフタラート(PET)を含むことを特徴とする、請求項18または19に記載のバルーン製品。
【請求項21】
前記エラストマーシーラント層が溶融加工可能なポリオレフィンを含む、請求項18または19に記載のバルーン製品。
【請求項22】
前記ベースポリマーフィルムと前記金属被覆層との間の乾式接着強度が300g/inを超える、請求項18または19に記載のバルーン製品。
【請求項23】
前記ポリオレフィンが、それ自体に対するシール強度が2000g/inを超える溶融加工可能なポリオレフィンである、請求項21に記載のバルーン製品。
【請求項24】
前記ポリオレフィンが、前記金属被覆層に対する接着強度が200g/inを超える溶融加工可能なポリオレフィンである、請求項21に記載のバルーン製品。
【請求項25】
前記プライマ層が、前記エラストマーシーラント層を追加する前に前記金属被覆層の露出面に直接溶液コーティングされる、シランまたはポリエチレンイミンをベースとするプライマである、請求項19に記載のバルーン製品。
【請求項26】
a.第1および第2の面を有するポリマーフィルムを用意するステップと、
b.前記ポリマーフィルムの第2の面に重ねられる、露出面を有する金属被覆層を追加するステップと、
c.前記金属被覆層の露出面上にエラストマーシーラント層を押し出しコーティングして、ラミネートを形成するステップと、
d.機械駆動のプロセスを使用して前記ラミネートを熱型抜きおよび溶着して、バルーン製品を形成するステップと
を組み合わせて含むバルーン製品を製造する方法であって、
前記バルーン製品の表面電気抵抗率が1.08オーム/sqを超える、方法。
【請求項27】
前記エラストマーシーラント層の押し出しコーティングの前に前記金属被覆層の露出面にプライマのコーティングを貼付する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記エラストマーシーラント層を押し出しコーティングする前にプライマを塗布した前記金属被覆層を乾燥させる、請求項27に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2012−513317(P2012−513317A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542308(P2011−542308)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2009/067882
【国際公開番号】WO2010/075034
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(511151307)アナグラム インターナショナル,インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】