説明

低屈折率組成物

少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;多オレフィン性架橋剤;アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;フリーラジカル重合開始剤;ならびに少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子の反応生成物を含む低屈折率組成物が提供される。本発明は、低屈折率組成物を形成するための液体混合物、反射防止コーティングを有する基材を含む物品、および反射防止コーティングを基材上に形成する方法をさらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ディスプレイ基材用の反射防止コーティングとして実用性を有する低屈折率組成物の分野に関する。この組成物は、フルオロエラストマー、架橋剤、オキシシラン、開始剤および固体ナノシリカの反応生成物である。
【背景技術】
【0002】
光学材料は、それらの屈折率によって特徴付けられる。光が1つの物質から異なる指数の他の物質に移動する際にはいつでも、いくらかの光が反射される。望ましくない反射は、実質的に、光学物品の表面上に反射防止コーティングを特定の厚さで設けることにより低減させることが可能である。屈折率nを有する光学物品について、最大の有効性をもたらすために、反射防止コーティングは、入射光の波長の約4分の1の光学的厚さ(物理的厚さにそれ自体の屈折率を乗じたもの)を有するべきであると共に、nの平方根の屈折率を有するべきである。ほとんどの光学物品は1.4〜1.6の範囲の屈折率を有する。
【0003】
低屈折率反射防止コーティングは、フッ素化ポリマーから調製することが可能であることが公知である。フッ素化ポリマーの屈折率は、ポリマー中のフッ素の量に関連する。ポリマー中のフッ素含有量を増加させるとポリマーの屈折率が低下する。反射防止コーティングにおけるフッ素化ポリマーの使用にかなりの産業的注目が向けられている。
【0004】
有機溶剤中に溶解性である、低結晶性を有するフルオロポリマーは、典型的には、低耐擦過性、ならびにフルオロポリマーコーティングとプラスチックおよびガラスなどの下位の光学ディスプレイ基材との間の低い界面接着性などの望ましくない機械特性を有するコーティングを形成する。種々の改良が、これらの耐擦過性および基材に対する接着性を改良するために調査されてきている。
【0005】
低い可視光反射率、光学ディスプレイ基材に対する良好な接着性および良好な耐擦過性を有する反射防止コーティングに対する継続的な要求が光学ディスプレイ分野における産業において存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,281,092号明細書
【特許文献2】米国特許第3,682,872号明細書
【特許文献3】米国特許第4,035,565号明細書
【特許文献4】米国特許第5,824,755号明細書
【特許文献5】米国特許第5,789,509号明細書
【特許文献6】米国特許第3,051,677号明細書
【特許文献7】米国特許第2,968,649号明細書
【特許文献8】米国特許第4,694,045号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】A.Moore、「Fluoroelastomers Handbook:The Definitive User’s Guide and Databook」、William Andrew Publishing、ISBN0−8155−1517−0(2006年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、低い可視光反射率、光学ディスプレイ基材フィルムに対する優れた接着性および優れた耐擦過性を有する低屈折率組成物を提供することによりこれらの要件を満たす。
【0009】
簡潔に記載すると、本発明の一態様によれば、(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;(iv)フリーラジカル重合開始剤;ならびに(v)少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子の反応生成物を含む低屈折率組成物が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;ならびに(iv)フリーラジカル重合開始剤がその中に溶解された溶剤を含む低屈折率組成物を形成するための液体混合物が提供され;ここで、溶剤には、少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子がその中に懸濁されている。
【0011】
本発明の他の態様によれば、反射防止コーティングを有する基材を含む物品が提供され、ここで、このコーティングは、(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;(iv)フリーラジカル重合開始剤;ならびに(v)約20%以上であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子の反応生成物を含む。
【0012】
本発明の他の態様によれば:(i)(1)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(2)多オレフィン性架橋剤;(3)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;(4)フリーラジカル重合開始剤;がその中に溶解された溶剤を含む液体混合物を調製する工程(ここで、溶剤には、少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子がその中に懸濁されている);(ii)液体混合物のコーティングを基材上に塗布して液体混合物コーティングを基材上に形成する工程;(iii)液体混合物コーティングから溶剤を除去して未硬化のコーティングを基材上に形成する工程;ならびに(iv)未硬化のコーティングを硬化し、これにより反射防止コーティングを基材上に形成する工程を含む反射防止コーティングを基材上に形成する方法が提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、約1.3%未満のRVISを有すると共に、方法1による擦過の後に、方法4により測定される10以下の擦傷割合を有する反射防止コーティングが提供される。
【0014】
本発明は、添付の図面を参照して、以下の発明を実施するための形態からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本明細書に開示されている反射防止コーティングを有するフィルムの断面の透過型電子顕微鏡写真である。
【図2】本明細書に開示されている反射防止コーティングを有するフィルムの断面の透過型電子顕微鏡写真である。
【0016】
本発明がその好ましい実施形態に関連して記載されることとなる一方で、本発明をその実施形態に限定することは意図されていないことは理解されるであろう。それどころか、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の思想および範囲内に包含されるところ、すべての代替、改良および等価物が網羅されることが意図されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本実施例1の層化された反射防止コーティング100の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)であり、ここで、コーティングは、(i)硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)フリーラジカル重合開始剤;ならびに(iv)(iv−a)複数の固体ナノシリカ粒子および(iv−b)アクリロイルオキシ官能基を有するオキシシランを含むコンポジットの反応生成物である。層化された反射防止コーティング100は、帯電防止処理された、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロース(TAC)フィルム101(基材)上にある。層化された反射防止コーティング組成物100を形成するために、ビトン(Viton)(登録商標)GF200S(硬化部位を含有するフルオロエラストマー)、サルトマー(Sartomer)SR533(トリアリルイソシアヌレート(架橋剤))、サルトマー(Sartomer)SR454(エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート(架橋剤))、チバ(Ciba)(登録商標)イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(光開始剤))、ラーンゲノキュア(Rahn Genocure)(登録商標)MBF(ギ酸メチルベンゾイル(光開始剤))、チバ(Ciba)(登録商標)ダロキュア(Darocur)(登録商標)ITX(2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントンの混合物(光開始剤))、ニッサン(Nissan)MEK−ST固体ナノシリカ粒子(約16ナノメートルの粒径中央値d50)とアクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(オキシシラン)とのコンポジット、ならびに酢酸プロピル(溶剤)を含む液体未硬化組成物が、基材101上にマイクログラビアコートされる。溶剤は蒸発により除去されると共に、組成物は、85℃で約5分間の紫外線への露出により硬化される。得られるTACコートフィルムは室温でウルトラミクロトームにかけることで80〜100nm厚の切片が形成される。この切片は、ウルトラミクロトームのダイアモンドナイフに隣接する脱イオン水のボート上に浮かせられ、穴のあいた−炭素コートTEMグリッド上に水から引き上げた(200メッシュCuグリッド)。薄切片は、リンク(Link)軽元素エネルギー分散分光法(EDS)分析器を備えるフィリップス(Philips)CM−20ウルトラツインTEM(Ultratwin TEM)で撮像される。TEMが200kVの加速電圧で操作され、対象の断面領域の明視野像が高解像度(HR)モードで得られ、SO−163シートフィルムに記録される。サンプルにおける関心のある領域の元素分析(EDX(エネルギー分散X線微量分析))がTEMを選択領域(SA)モードで操作すると共に、直径が50nm未満の電子プローブを用いることにより実施される。このような小径のプローブは、反射防止コーティング100の個別の層の元素組成の有効な判別を可能とする。得られる反射防止コーティング100は約100nm厚であると共に、基材101に実質的に隣接して配置された第1の層102、および第1の層上に配置された第2の層103を含む。第1の層102はフルオロエラストマーと、架橋剤と、ナノシリカおよびオキシシロキサンのコンポジットとの反応生成物を含有すると共に、第2の層103はフルオロエラストマーおよび架橋剤の反応生成物を含有し、ここで、ナノシリカは実質的に第2の層103に存在しないことがTEMおよびEDXから明らかである。領域105がフルオロエラストマー、架橋剤およびオキシシランの反応生成物を含有すると考えられているため、ナノシリカ粒子およびオキシシランのコンポジット104が第1の層102全体に認められる。
【0018】
図2は、本例15の層化された反射防止コーティング200の断面の透過型電子顕微鏡写真(TEM)であり、ここで、コーティングは、(i)硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)フリーラジカル重合開始剤;ならびに、(iv)(iv−a)複数の固体ナノシリカ粒子、(iv−b)複数の中空ナノシリカ粒子および(iv−c)アクリロイルオキシ官能基を有するオキシシランを含むナノシリカコンポジットの反応生成物である。層化された反射防止コーティング200は、アクリルハードコートの厚さの一部に相当するアクリレート硬質コートトリアセチルセルロース(TAC)フィルム201上にある。層化された反射防止コーティング組成物200を形成するために、ビトン(Viton)(登録商標)GF200S(硬化部位を含有するフルオロエラストマー)、サルトマー(Sartomer)SR533(トリアリルイソシアヌレート(架橋剤))、チバ(Ciba)(登録商標)イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(光開始剤))、ラーンゲノキュア(Rahn Genocure)(登録商標)MBF(ギ酸メチルベンゾイル(光開始剤))、チバ(Ciba)(登録商標)ダロキュア(Darocur)(登録商標)ITX(2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントンの混合物(光開始剤))、ニッサン(Nissan)MEK−ST固体ナノシリカ粒子(粒径中央値、d50約16nm)と、SKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)粒子(粒径中央値d50約41nm)と、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(オキシシラン)とのナノシリカコンポジット、ならびに酢酸プロピル(溶剤)を含む液体未硬化組成物が、アクリル化硬質コート基材201上にマイクログラビアコートされる。溶剤は蒸発により除去されると共に、組成物は、85℃で5分間の紫外線への露出により硬化される。得られるTACコートフィルムは、本明細書において図1について既述したとおり、EDXを用いるTEMによって分析される。EDXは、反射防止コーティング200の個別の層の元素組成の有効的な判別を可能とする。得られる反射防止コーティング200は約100nm厚であると共に、アクリレート硬質コート基材201に実質的に隣接して配置された第1の層202、および第1の層上に配置された第2の層203を含む。第1の層202は、フルオロエラストマーと、架橋剤と、固体ナノシリカ、中空ナノシリカおよびオキシシロキサンのナノシリカコンポジットとの反応生成物を含有すると共に、第2の層203はフルオロエラストマーおよび架橋剤の反応生成物を含有し、ここで、固体ナノシリカおよび中空ナノシリカは実質的に第2の層203に存在しないことがTEMおよびEDX分析から明らかである。固体ナノシリカ粒子204および中空ナノシリカ粒子205が第1の層202全体に認められる。
【0019】
本低屈折率組成物は、(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;(iv)フリーラジカル重合開始剤;ならびに(v)少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子を含む未硬化組成物の反応生成物を含む。
【0020】
本明細書において、未硬化組成物という用語は、硬化されて、または反応されて本低屈折率組成物を形成する少なくとも1種の成分を含む混合物を指す。未硬化組成物の成分としては、少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー(本明細書においては代替的に「フルオロエラストマー」として称される)、多オレフィン性架橋剤(本明細書においては代替的に「架橋剤」として称される)、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン(本明細書においては代替的に「オキシシラン」として称される)、およびオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物、フリーラジカル重合開始剤(本明細書においては代替的に「開始剤」として称される)、ならびに少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する固体ナノシリカ粒子(本明細書においては代替的に「固体ナノシリカ」として称される)が挙げられる。未硬化組成物は、取り扱いおよびコーティングを容易とするために極性非プロトン性溶剤などの他の成分をさらに含むことが可能である。
【0021】
本低屈折率組成物は、約1.20〜約1.49、好ましくは約1.30〜約1.44の屈折率を有する。
【0022】
未硬化組成物の1種の成分は、少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマーである。実用性のある硬化部位の例としては、臭素、ヨウ素およびエテニルが挙げられる。フルオロエラストマーは少なくとも約65重量%フッ素、好ましくは少なくとも約70重量%フッ素を含有し、コポリマー主鎖中に炭素−炭素結合を有することを特徴とする実質的に非晶質のコポリマーである。フルオロエラストマーは2つ以上のタイプのモノマーに由来する繰返し単位を含み、三次元的ネットワークを形成する架橋を許容する硬化部位を有する。第1のモノマータイプは、結晶化する傾向を有する直鎖状のフルオロエラストマー鎖セグメントをもたらす。嵩高い基を有する第2のモノマータイプは、このような結晶化傾向を断絶させる間隔でフルオロエラストマー鎖に混入され、実質的に非晶質のエラストマーをもたらす。直鎖セグメント用に実用的なモノマーは、嵩高い置換基を有さないものであり、:フッ化ビニリデン(VDF)、CH=CF;テトラフルオロエチレン(TFE)、CF=CF;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、CF=CFCl;およびエチレン(E)、CH=CHが挙げられる。結晶性を阻害するために有用な嵩高い基を有するモノマーとしては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CF=CFCF;1−ヒドロペンタフルオロプロピレン、CHF=CFCF;2−ヒドロペンタフルオロプロピレン、CF=CHCF;パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(例えば、パーフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、CF=CFOCF);およびプロピレン(P)、CH=CHCHが挙げられる。フルオロエラストマーは、一般に、A.ムーア(A.Moore)によって、「フルオロエラストマーハンドブック:決定的ユーザーズガイドおよびデーターブック」(非特許文献1)に記載されている。
【0023】
一実施形態においては、フルオロエラストマーは、臭素、ヨウ素(ハロゲン)およびエテニルからなる群から選択される少なくとも1種の硬化部位を有する。この硬化部位は、フルオロエラストマー主鎖上に位置されているか、またはこれに結合している基上に位置されていることが可能であり、この場合には、フルオロエラストマーを形成する重合における硬化部位モノマーの包含で誘導される。ハロゲン化硬化部位はまたフルオロエラストマー鎖末端に位置されていることも可能であり、この事例においては、フルオロエラストマーを形成する重合におけるハロゲン化連鎖移動剤の使用により生起される。硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、硬化性(例えば熱硬化または光化学硬化)としても称される反応性条件に供され、これが、未硬化組成物中のフルオロエラストマーと他の成分との間での共有結合(すなわち架橋)の形成をもたらす。フルオロエラストマー主鎖上に位置するまたはこれに結合している基上に位置する硬化部位の形成をもたらす硬化部位モノマーは、一般に、臭素化アルケンおよび臭素化不飽和エーテル(臭素硬化部位をもたらす)、ヨウ化アルケンおよびヨウ化不飽和エーテル(ヨウ素硬化部位をもたらす)、ならびに他の炭素−炭素不飽和または炭素−酸素不飽和と共役していない少なくとも1種のエテニル官能基を含有するジエン(エテニル硬化部位をもたらす)を含む。フルオロエラストマーを形成する重合の最中での連鎖移動剤の使用の結果、さらに、またはあるいは、ヨウ素原子、臭素原子またはこれらの混合物がフルオロエラストマー鎖末端に存在していることが可能である。実用的なフルオロエラストマーは、一般に、フルオロエラストマーを含むモノマーの重量に基づいて約0.25重量%〜約1重量%の硬化部位、好ましくは約0.35重量%の硬化部位を含有する。
【0024】
臭素硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーを形成する重合の最中に臭素化硬化部位モノマーをフルオロエラストマーに共重合することにより得ることが可能である。臭素化硬化部位モノマーは、二重結合または分子中の他の箇所に結合した臭素を有する炭素−炭素不飽和を有し、H、FおよびOを含む他の元素を含有することが可能である。臭素化硬化部位モノマーの例としては、ブロモトリフルオロエチレン、臭化ビニル、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、パーフルオロアリルブロミド、4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、4−ブロモ−1,1,3,3,4,4,−ヘキサフルオロブテン、4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン、4−ブロモパーフルオロ−1−ブテン、および3,3−ジフルオロアリルブロミドが挙げられる。さらなる例としては、2−ブロモ−パーフルオロエチルパーフルオロビニルエーテルなどの臭素化不飽和エーテル、ならびにCFBrCFOCF=CFなどのクラスBrCF(パーフルオロアルキレン)OCF=CFのフッ素化化合物、ならびに、CHOCF=CFBrおよびCFCHOCF=CFBrなどのクラスROCF=CFBrおよびROCBr=CFのフルオロビニルエーテル(式中Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基である)が挙げられる。
【0025】
ヨウ素硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーを形成する重合の最中にヨウ化硬化部位モノマーをフルオロエラストマーに共重合することにより得ることが可能である。ヨウ化硬化部位モノマーは、二重結合または分子中の他の箇所に結合したヨウ素を有する炭素−炭素不飽和を有し、H、Br、FおよびOを含む他の元素を含有することが可能である。ヨウ化硬化部位モノマーの例としては、ヨードエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン、2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン、2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(パーフルオロビニルオキシ)プロパン、2−ヨードエチルビニルエーテル、および3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテンが挙げられる。さらなる例としては、式CHR=CHZCHCHRIのオレフィン(式中、各Rは独立してHまたはCHであり、Zは、任意により1つ以上のエーテル酸素原子を含有する、直鎖もしくは分岐のC〜C18(パー)フルオロアルキレンラジカル、または(パー)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである)が挙げられる。実用的なヨウ化硬化部位モノマーのさらなる例は、式I(CHCFCFOCF=CFおよびICHCFO[CF(CF)CFO]CF=CF(式中、n=1〜3)の不飽和エーテルである。
【0026】
エテニル硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーを形成する重合の最中にエテニル含有硬化部位モノマーをフルオロエラストマーに共重合することにより得られる。エテニル硬化部位モノマーは、他の炭素−炭素または炭素−酸素不飽和と共役していないエテニル官能基を有する炭素−炭素不飽和を有する。それ故、エテニル硬化部位は、少なくとも2つの点の炭素−炭素不飽和を有する非共役ジエンに由来することが可能であり、任意によりH、Br、FおよびOを含む他の元素を含有する。炭素−炭素不飽和の一方の点はフルオロエラストマー主鎖に組み込まれ(すなわち重合され)、他方の点はフルオロエラストマー主鎖に対する側基であり、反応性硬化(すなわち、架橋性)に利用可能である。エテニル硬化部位モノマーの例としては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエン等などの非共役ジエンおよびトリエンが挙げられる。
【0027】
硬化部位モノマーのうち、ブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテンおよび4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン−1が好ましい。
【0028】
一実施形態においては、フルオロエラストマーの重合の最中の臭素および/またはヨウ素(ハロゲン化)連鎖移動剤の使用の結果として、ハロゲン硬化部位がフルオロエラストマー鎖末端に存在していることが可能である。このような連鎖移動剤としては、ハロゲンをポリマー鎖の一端または両端に結合させるハロゲン化化合物が挙げられる。実用的な連鎖移動剤の例としては、ヨウ化メチレン、1,4−ジヨードパーフルオロ−n−ブタン、1,6−ジヨード−3,3,4,4−テトラフルオロヘキサン、1,3−ジヨードパーフルオロプロパン、1,6−ジヨードパーフルオロ−n−ヘキサン、1,3−ジヨード−2−クロロパーフルオロプロパン、1,2−ジ(ヨードジフルオロメチル)パーフルオロシクロブタン、モノヨードパーフルオロエタン、モノヨードパーフルオロブタン、2−ヨード−1−ヒドロパーフルオロエタン、1−ブロモ−2−ヨードパーフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードパーフルオロプロパン、および1−ヨード−2−ブロモ−1,1−ジフルオロエタンが挙げられる。ヨウ素および臭素の両方を含有する連鎖移動剤が好ましい。
【0029】
硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、フリーラジカル開始剤を利用する、不活性溶剤中の溶液中の、水性エマルジョンまたは水性懸濁液でのバルクでの適切なモノマー混合物の重合により調製することが可能である。この重合は、連続、バッチ、またはセミバッチプロセスで実施され得る。一般的な実用的な重合プロセスは、前述の非特許文献1において考察されている。一般的なフルオロエラストマー調製法は、特許文献1〜7に開示されている。
【0030】
硬化部位を含有するフルオロエラストマーの例としては、硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよび、任意により、テトラフルオロエチレンのコポリマー;硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンのコポリマー;硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)および、任意により、テトラフルオロエチレンのコポリマー;硬化部位モノマー、テトラフルオロエチレン、プロピレンおよび、任意により、フッ化ビニリデンのコポリマー;ならびに硬化部位モノマー、テトラフルオロエチレンおよびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、好ましくはパーフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマーが挙げられる。フッ化ビニリデンに由来する重合単位を含有するフルオロエラストマーが好ましい。一実施形態においては、フルオロエラストマーは、硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、およびテトラフルオロエチレンの共重合された単位を含む。
【0031】
ムーア(Moore)により特許文献8に開示されているものなどのエチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)および臭素含有硬化部位モノマーを含むフルオロエラストマーが、本発明の組成物において実用的である。米国デラウェア州(DE,USA)のデュポンパフォーマンスエラストマーズ(DuPont Performance Elastomers)から入手可能であるビトン(Viton)(登録商標)GF−シリーズフルオロエラストマー、例えばビトン(Viton)(登録商標)GF−200Sもまた本発明において実用的である。
【0032】
未硬化組成物の他の成分は、少なくとも1種の多オレフィン性架橋剤である。「多オレフィン性」とは、互いに共役していない少なくとも2つの「炭素−炭素二重結合を含有することを意味する。
【0033】
多オレフィン性架橋剤は、硬化部位を含有するフルオロエラストマー100重量部当たり約1〜約25重量部(phr)、好ましくは約1〜約10phrの量で未硬化組成物中に存在する。実用的な多オレフィン性架橋剤としては、アクリル系(例えば、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)およびアリル系官能基を含有するものが挙げられる。
【0034】
アクリル系多オレフィン性架橋剤としては、式R(OC(=O)CR’=CH(式中:Rは直鎖もしくは分岐アルキレン、直鎖または分岐オキシアルキレン、芳香族、芳香族エーテル、または複素環であり;R’はHまたはCHであり;およびnは2〜8の整数である)により表されるものが挙げられる。アクリル系多オレフィン性架橋剤を調製することが可能である代表的なポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンおよびジペンタエリスリトールが挙げられる。代表的なアクリル系多オレフィン性架橋剤としては、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノール−Aジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。本明細書において、「(メタ)アクリレート」という記載は、アクリレートおよびメタクリレートの両方を包含することを意味する。
【0035】
アリル系多オレフィン性架橋剤としては、式R(CHCR’=CH(式中、Rは、直鎖もしくは分岐アルキレン、直鎖もしくは分岐オキシアルキレン、芳香族、芳香族エーテル、芳香族エステルまたは複素環であり;R’はHまたはCHであり;およびnは2〜6の整数である)により表されるものが挙げられる。代表的なアリル系多オレフィン性架橋剤としては、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアリルシアヌレート、およびトリアリルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートが挙げられる。
【0036】
未硬化組成物の硬化にUV硬化が用いられる実施形態においては、アクリル系多オレフィン性架橋剤とアリル系多オレフィン性架橋剤との混合物が実用的である。例えば、約2:1〜約1:2の重量比混合物が望ましく、約1:1のアクリル系多オレフィン性架橋剤対アリル系多オレフィン性架橋剤が好ましい。この実施形態において、アクリル系架橋剤は、好ましくはアルコキシル化ポリオールポリアクリレート、特にエトキシル化(3mol)トリメチロールプロパントリアクリレートであり、およびアリル系架橋剤は好ましくは1,3,5−トリアリルイソシアヌレートである。
【0037】
未硬化組成物の一実施形態において:フルオロエラストマーは、臭素およびヨウ素、好ましくはヨウ素からなる群から選択される少なくとも1種の硬化部位を有し;多オレフィン性架橋剤は、アリル系多オレフィン性架橋剤、好ましくは1,3,5−トリアリルイソシアヌレートであり;未硬化組成物はアクリル系多オレフィン性架橋剤を含有せず;ナノシリカは複数の固体ナノシリカおよび中空ナノシリカ粒子を含み;オキシシランは、アクリルオキシアルキルトリアルキルシランならびにアクリルオキシアルキルトリアルキルシランの加水分解物および縮合物の少なくとも1種を含み;未硬化組成物は光開始剤および極性非プロトン性有機溶剤を含有し;ならびにUV硬化が用いられる。
【0038】
一実施形態においては、オキシシランおよびナノシリカは、未硬化組成物の他の成分と実質的に同時に組み合わされる。他の実施形態において、未硬化組成物の他の成分と組み合わされる前に、オキシシランおよびナノシリカを組み合わせてコンポジットが形成される。
【0039】
未硬化組成物の他の成分は、少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子である。
【0040】
実用的な固体ナノシリカ粒子は、球状および長楕円形状を含むいずれかの形状であることが可能であると共に、比較的サイズが均一であり、かつ、実質的に非凝集状態に維持される。一実施形態においては、固体ナノシリカ粒子は、約1nm〜約90nmの粒径中央値d50を有する。一実施形態においては、固体ナノシリカ粒子は、約5nm〜約60nmのd50を有する。一実施形態において、固体ナノシリカ粒子は、約15nm〜約30nmのd50を有する。一実施形態において、固体ナノシリカ粒子は、約5nm〜約30nmのd50を有する。多孔性ナノシリカ粒子の不存在下に固体ナノシリカ粒子が用いられる一実施形態において、固体ナノシリカ粒子は、約30nm以下のd50を有することが好ましい。固体ナノシリカ粒子が多孔性ナノシリカ粒子と一緒に用いられる一実施形態において、固体ナノシリカ粒子は、約1nm〜約50nmのd50を有することが好ましい。粒径中央値(d50)は、この値より小さい直径を有する粒子が粒子群の体積または質量の半分を構成すると共に、この値より大きい直径を有する粒子が粒子群の体積または質量の半分を構成する直径である。
【0041】
固体ナノシリカ粒子の凝集は、望ましくない沈殿、ゲル化、およびゾル粘度の著しい増加をもたらし、これは、未硬化組成物の均一なコーティングを達成困難とし得る。固体ナノシリカ粒子は凝集して、凝集粒子の各々が複数のより小さいサイズの固体ナノ粒子を含む凝集粒子をコロイド中に形成し得る。コロイドにおける平均凝集固体ナノシリカ粒径は、コーティング前は約90nm未満であることが望ましいが、90nm超であることも可能である。
【0042】
本発明による低屈折率組成物を形成するための実用的な固体ナノシリカ粒子は、ケイ素酸化物のゾル(例えば、固体ケイ素ナノ粒子の液体媒体中のコロイド状分散体)、特に非晶質、半結晶性、および/または結晶性シリカのゾルから形成される。このようなゾルは、多様な技術により、ヒドロゾル(水が液体媒体となっている)、オルガノゾル(有機液体が液体媒体となっている)、および混合ゾル(液体媒体が水および有機液体の両方を含む)を含む多様な形態で調製されることが可能である。例えば、米国特許第2,801,185号明細書;米国特許第4,522,958号明細書;および米国特許第5,648,407号明細書に記載の技術および形態を参照のこと。固体ナノシリカゾルがプロトン性溶剤(例えば、水、アルコール)中で形成される場合、ゾルが本低屈折率組成物の形成に用いられる前に、このようなプロトン性溶剤の少なくとも90体積パーセントを非プロトン性溶剤で置換することが好ましい。より好ましくは、ゾルが本低屈折率組成物の形成に用いられる前に、このようなプロトン性溶剤の少なくとも97体積パーセントを非プロトン性溶剤で置換することが好ましい。このような溶剤置換のための方法は、例えば減圧下での蒸留のように公知である。固体ナノシリカ粒子は、例えば、米国テキサス州ヒューストン(Houston,TX,USA)のニッサンケミカルズアメリカコーポレーション(Nissan Chemicals America Corporation)から入手可能であるニッサン(Nissan)MEK−ST、約0.5重量パーセント水を含有するメチルエチルケトン中の固体シリカコロイド、約16nmの粒径中央値d50、30〜31重量%シリカのような、コロイド状分散体または極性非プロトン性溶剤中に分散されたゾルとして購入することが可能である。
【0043】
一実施形態においては、多孔性ナノシリカ粒子は、本低屈折率組成物の屈折率をさらに低減させるために固体ナノシリカ粒子と一緒に用いられる。約1.15〜約1.40、好ましくは約1.20〜約1.35屈折率を有し、約5nm〜約90nm、好ましくは約5nm〜約70nmの粒径中央値d50を有する多孔性ナノシリカ粒子が実用的である。この文脈において用いられるところ、屈折率は、全体としての粒子の屈折率を指す。多孔性ナノシリカ粒子はいかなる形状の孔を有することも可能であるが、ただし、このような孔は、未硬化組成物中に存在する高屈折率成分がこれらの孔の中に進入することを許容するような寸法のものではない。一例は、孔が、ケイ素酸化物のシェル(例えば中空ナノシリカ粒子)中に形成されたより低い密度および低屈折率の空隙部(例えば空気を含む空隙部)を含む場合である。シェルの厚さがナノ粒子の強度に影響する。中空シリカ粒子が低い屈折率および高い間隙率とされた場合、シェルの厚さが低減し、ナノ粒子の強度(耐破壊性)の低下がもたらされる。約1.15未満の屈折率を有する中空ナノシリカ粒子は、このような粒子は許容できない強度を有するであろうため望ましくない。粒子内部の空隙部の半径をxとすると共に粒子のアウターシェルの半径をyとしたとき、式P=(4πx/3)/(4πy/3)×100により表される間隙率(P)は、一般に約10〜約60%であり、好ましくは約20〜約60%である。
【0044】
このような中空ナノシリカ粒子を形成するための方法は公知であり、例えば、特開2001−233611号公報および特開2002−79616号公報に記載されているとおりである。
【0045】
本未硬化組成物における固体ナノシリカの量は、約1体積%〜約40体積%、好ましくは約1体積%〜約30体積%の範囲であることが可能である。本未硬化組成物中の多孔性ナノシリカの量は、約1体積%〜約60体積%の範囲であることが可能である。固体および多孔性ナノシリカの総体積割合は、好ましくは少なくとも約10体積%である。ナノシリカ粒子の体積割合は、本明細書において、乾燥ナノシリカ粒子の体積を硬化部位を有する乾燥フルオロエラストマー、多オレフィン性架橋剤、およびナノシリカ粒子の体積の総和で除した商の100倍として定義される。未硬化組成物が硬化の後に低屈折率組成物中に残留する成分をさらに含む実施形態において、分母における総和はこのような乾燥成分の体積をさらに含む。例えば、未硬化組成物が硬化部位を有するフルオロエラストマー、多オレフィン性架橋剤およびナノシリカ粒子と共に開始剤を含有する実施形態において、ナノシリカ粒子の体積割合は、乾燥ナノシリカ粒子の体積を、硬化部位を有する乾燥フルオロエラストマー、多オレフィン性架橋剤、ナノシリカ粒子、および開始剤の体積の総和によって除した商の100倍である。
【0046】
固体ナノシリカ粒子および多孔性ナノシリカ粒子を、本低屈折率組成物の形成において一緒に用いることが可能である。これは、固体ナノシリカ粒子または多孔性ナノシリカ粒子が単独で用いられた場合のものを超える向上した耐擦過性を有する低屈折率組成物をもたらす。固体ナノシリカ粒子および多孔性ナノシリカ粒子は、前述の体積%の範囲内のいずれかの割合で一緒に用いることが可能である。一般に、約0.1:1〜約4:1の体積%固体ナノシリカ粒子対体積%多孔性ナノシリカ粒子比が実用的である。前述の粒径中央値の固体ナノシリカ粒子および多孔性ナノシリカ粒子を本低屈折率組成物の形成において一緒に用いることが可能である。固体ナノシリカ粒子は、少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する。好ましくは、固体ナノシリカ粒子は、約少なくとも50%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有し;または固体ナノシリカ粒子は、少なくとも約60%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有し;または固体ナノシリカ粒子は、少なくとも約75%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有し;または固体ナノシリカ粒子は、少なくとも約90%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する。反応性シラノールとは、求核試薬として反応に利用可能である、官能基化の前のナノシリカ粒子の表面上のシラノールを意味する。非反応性置換基での官能基化とは、このような官能基化シラノールは、官能基化シラノールと未硬化組成物のいかなる成分との反応も許容しない置換基に結合していることを意味する。非反応性置換基とは、未硬化組成物の成分のいずれに対しても反応性ではない置換基を意味する。実用的な非反応性置換基としては、トリアルキルシリル、例えば、トリメチルシリルが挙げられる。
【0047】
固体ナノシリカ反応性シラノールが非反応性置換基で置換される程度の特徴づけは、公知の方法により実施することが可能である。例えば、DRIFTS(拡散反射フーリエ変換赤外分光法)による監視を備える、ピリジンをプローブとして用いるナノシリカの気相滴定の使用は、固体ナノシリカ粒子反応性シラノールが非反応性置換基で置換される程度の特徴付けを可能とする。
【0048】
本発明による低屈折率組成物の形成における実用的なオキシシランは、i)アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基、ii)オキシシラン官能基、およびiii)アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基とオキシシラン官能基とを結合する二価有機ラジカルを含む化合物である。オキシシランとしては、式X−Y−SiRにより表されるものが挙げられる。Xは、アクリロイルオキシ(CH=CHC(=O)O−)またはメタクリロイルオキシ(CH=C(CH)C(=O)O−)官能基を表す。Yは、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基およびオキシシラン官能基に共有結合している二価有機ラジカルを表す。Yラジカルの例としては、2〜10個の炭素原子を有する置換および非置換アルキレン基、および6〜20個の炭素原子を有する置換または非置換のアリーレン基が挙げられる。アルキレンおよびアリーレン基は、任意により、その中にエーテル、エステル、およびアミド結合をさらに有する。置換基としては、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキルおよびアリールが挙げられる。SiRは、その1つからすべてが(例えば求核性)置換により置換されることが可能である3つの置換基(R1-3)を含有するオキシシラン官能基を表す。例えば、R1-3置換基の少なくとも1つはアルコキシ、アリールオキシまたはハロゲンなどの基であり、置換する基は、オキシシラン加水分解もしくは縮合物上に存在するヒドロキシルなどの基、または基材フィルム表面上に存在する同等の反応性官能基を含む。代表的なSiRオキシシラン置換としては、RがC〜C20アルコキシ、C〜C20アリールオキシ、またはハロゲンであると共に、RおよびRが、C〜C20アルコキシ、C〜C20アリールオキシ、C〜C20アルキル、C〜C20アリール、C〜C30アラルキル、C〜C30アルカリール、ハロゲン、および水素から独立して選択される場合が挙げられる。Rは、好ましくはC〜Cアルコキシ、C〜C10アリールオキシまたはハロゲンである。オキシシランの例としては、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS、HC=CHCO(CHSi(OCH)、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。これらのオキシシランのうちAPTMSが好ましい。
【0049】
オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物は、本低屈折率組成物の形成のために実用的な未硬化組成物中にオキシシランと一緒に存在する。オキシシラン加水分解物とは、オキシシランR1-3置換基の少なくとも1つがヒドロキシルによって置換された化合物を意味する。例えば、X−Y−SiROHである。オキシシラン縮合物とは、オキシシランおよび/またはオキシシラン加水分解物の1つ以上の縮合反応により形成された生成物を意味する。例えば:X−Y−Si(R)(R)OSi(R)(OH)−Y−X;X−Y−Si(R)(OH)OSi(R)(OH)−Y−X;X−Y−Si(OH)OSi(R)(OH)−Y−X;X−Y−Si(R)(OH)OSi(R)(OSi(R)(OH)−Y−X)−Y−X;およびX−Y−Si(R)(R)OSi(R)(OSi(R)(OH)−Y−X)−Y−Xなどの縮合物である。
【0050】
オキシシランと本低屈折率組成物を形成するために実用的な固体ナノシリカ粒子との相対量は、平均で約0.3〜約20、好ましくは約1.5〜約14、より好ましくは約2.5〜約14分子オキシシラン/コロイド状ナノシリカの固体ナノシリカ粒子表面積の1平方ナノメートルである。オキシシランと本低屈折率組成物を形成するために実用的な多孔性ナノシリカ粒子との相対量は、平均で、約0.4〜約30、好ましくは約2.0〜約15、より好ましくは約3.0〜約12分子オキシシラン/コロイド状ナノシリカの多孔性ナノシリカ粒子表面積の1平方ナノメートルである。
【0051】
実際には、選択したオキシシランの分子数/平方ナノメートルでのナノシリカ粒子表面積を達成するために必要な、オキシシランのグラムでの重量(L)は、以下の式により判定することが可能である。
L=(I×A×K×5×10−3)÷(R×D)
式中、
I=選択したオキシシランの分子数/平方ナノメートルでのナノシリカ粒子表面積、
A=ナノシリカ粒子のグラムでの乾燥重量、
K=オキシシランのg/molでの分子量、
R=ナノシリカ粒子のnmでの中央半径、および
D=乾燥ナノシリカ粒子のg/cmでの密度。
【0052】
ナノシリカ粒子のnmでの中央半径は、本オキシシランおよび固体ナノシリカコンポジットまたは低屈折率組成物の形成前のナノシリカ粒子の電子顕微鏡写真から測定される。中央半径を測定するために、ナノシリカの広視野の透過型電子顕微鏡写真ネガがスキャンされて、デジタル画像が生成される。コロス(Khoros)2000ソフトウェアを実行するサン(SUN)ワークステーションを用いてデジタル画像が分析され、これから、粒径分布が得られる。典型的には、数百のナノシリカ粒子が分析され、球として見積もられたナノシリカ粒子の数中央粒子半径が算出される。
【0053】
一実施形態においては、本発明の未硬化組成物を形成するために実用的なコンポジットは、固体ナノシリカおよびオキシシランを組み合わせることにより形成される。例えば、固体ナノシリカゾルとオキシシランとを、任意により極性非プロトン性溶剤の存在下に加熱しながら組み合わせることでコンポジットが形成される。得られたコンポジットは、未硬化組成物を含む他の成分と組み合わされ得る。
【0054】
本発明の一実施形態は、光学ディスプレイ用の反射防止コーティングにおいて用いるための低屈折率組成物であり、この組成物は、i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびに前記オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;(iv)フリーラジカル重合開始剤;および(v)少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子の反応生成物を含む。
【0055】
一実施形態においては、本発明の低屈折率組成物の形成における実用的な未硬化組成物は、オキシシランの加水分解を触媒することができる化合物(すなわち加水分解触媒)を実質的に含まずに形成されると共に、基材上へのコーティングの前ならびに硬化の最中維持されることが可能である。加水分解触媒は、オキシシラン置換基R1-3のいずれかの加水分解を触媒することが可能であるナノシリカ以外のいずれかの化合物を指す。例えば、加水分解触媒としては、塩酸、硫酸、および硝酸などの無機酸;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、およびトルエンスルホン酸などの有機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよびアンモニアなどの無機塩基;トリアルキルアミンおよびピリジンなどの有機塩基;ならびにトリイソプロポキシアルミニウムおよびテトラブトキシジルコニウムなどの金属キレートおよび金属アルコキシドが挙げられるが挙げられる。このような加水分解触媒は、アルコキシ、アリールオキシまたはハロゲンなどのオキシシラン置換基の水による置換を触媒することが可能であり、結果として、元の場所でヒドロキシル(シラノール)基が形成される。本明細書において、「実質的不在」および「実質的に含まない」とは、オキシシランおよびナノシリカを含む未硬化組成物またはコンポジットが、約0.02重量%以下の加水分解触媒を含有することを意味する。
【0056】
一実施形態において、オキシシランおよびナノシリカを含む未硬化組成物またはコンポジットは、約8重量%以下のプロトン性化合物を含有する。プロトン性化合物が水である場合、オキシシランおよびナノシリカを含む未硬化組成物またはコンポジットは、0重量%超の水であるが、約1.5重量%以下、さらには約0.5重量%以下の水を含有することが好ましい。
【0057】
一実施形態においては、未硬化組成物の基材上へのコーティングならびに未硬化組成物の硬化による本低屈折率反応生成物の形成の最中およびその後において、加水分解触媒または水などのプロトン性化合物を排除するよう特別な注意は払われない。
【0058】
一実施形態において、0%超の水を含有する固体ナノシリカゾルはオキシシランと組み合わされて、コンポジットまたは未硬化組成物を形成する。コンポジットまたは未硬化組成物は、室温または高温で熟成されることが可能である。例えば、固体ナノシリカは、オキシシランと接触されてコンポジットが形成され、これが、室温または高温で、約1時間〜約7日間の期間の間熟成されることが可能である。このような熟成は、オキシシランの少なくとも一部の加水分解を生じさせると共に、オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物を形成させる。コンポジットまたは未硬化組成物が、例えば約90℃の温度または混合物用の溶剤の約還流温度といった高温で熟成される実施形態において、熟成時間は、例えば約1〜約12時間と前述より短くてもよい。
【0059】
固体および多孔性ナノシリカが一緒に用いられる一実施形態において、オキシシランとのコンポジットの各々は、個別に形成されると共に、個別に熟成されることが可能である。固体および多孔性ナノシリカが一緒に用いられる一実施形態において、固体および多孔性ナノシリカならびにオキシシランの両方を含むコンポジットが形成されると共に、熟成されることが可能である。このような実施形態の各々において、コンポジットは、未硬化組成物の他の成分と一緒に組み合わされる前に室温でまたは高温で熟成されることが可能である。
【0060】
一実施形態において、オキシシランおよびナノシリカは未硬化組成物の他の成分と実質的に同時に組み合わされ、得られた未硬化組成物は、コーティングおよび硬化の前に室温または高温で熟成させられる。
【0061】
オキシシランならびにオキシシランの加水分解物および縮合物上のアクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシ官能基は、周囲条件下では未硬化組成物の他の成分とは反応しない。しかしながら、エネルギー(例えば熱、光)または化学処理(例えば、過酸化物フリーラジカル重合開始剤)に未硬化組成物が露出されると、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシ官能基は、未硬化組成物の他の成分、例えば、フルオロエラストマー硬化部位、多オレフィン性架橋剤、ならびにその上に未硬化組成物がコートされた基材フィルムの表面上に存在する官能基と反応することとなる。一実施形態においては、オキシシランおよびナノシリカコンポジットは、硬化前に未硬化組成物反応性成分の望ましくない反応(架橋)を生じさせることなく、他の未硬化組成物反応性成分に組み込まれることが可能である。
【0062】
未硬化組成物が硬化されて、本低屈折率組成物が形成される。未硬化組成物は、フリーラジカル開始メカニズムを介して硬化されることが好ましい。フリーラジカルは、任意により、未硬化組成物中に包含される有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩、レドックス開始剤、およびこれらの組み合わせの熱分解によるもの、または紫外(UV)放射線、ガンマ線、もしくは電子ビーム放射線などの放射線によるものなどの数々の公知の方法により生成され得る。未硬化組成物は、紫外線の照射を介して硬化されることが好ましい。
【0063】
紫外線開始反応が未硬化組成物を硬化させるために用いられる実施形態において、この未硬化組成物は、光開始剤を、一般に1〜10phrで含み、好ましくは5〜10phrの光開始剤を含む。光開始剤は、単独で、または2種以上の組み合わせで用いられることが可能である。実用的なフリーラジカル光開始剤としては、UV硬化アクリレートポリマーに対して一般に有用であるものが挙げられる。実用的な光開始剤の例としては、ベンゾフェノンおよびその誘導体;ベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾイン;ベンジルジメチルケタール(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651(米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY,USA)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズコーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から入手可能であるイルガキュア(Irgacure)(登録商標)製品)として市販されている)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルなどのベンゾインエーテル;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(ダロキュア(Darocur)(登録商標)1173(米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY,USA)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズコーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から入手可能であるダロキュア(Darocur)(登録商標)製品)として市販されている)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)184として市販されている)などのアセトフェノンおよびその誘導体;2−メチル−1−[4−メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907として市販されている);ギ酸メチルベンゾイル(ダロキュア(Darocur)(登録商標)MBFとして市販されている)などのギ酸アルキルベンゾイル;2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)369として市販されている);ベンゾフェノンおよびその誘導体ならびにアントラキノンおよびその誘導体などの芳香族ケトン;ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩などのオニウム塩;例えば、チバ・スペシャルティ・ケミカルズコーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)からまた「CGI 784 DC」として市販されているものなどのチタン錯体;ハロメチルニトロベンゼン;ならびにチバ・スペシャルティ・ケミカルズコーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から、商品名イルガキュア(Irgacure)(登録商標)1700、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)1800、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)1850、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)819、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)2005、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)2010、イルガキュア(Irgacure)(登録商標)2020およびダロキュア(Darocur)(登録商標)4265で入手可能であるものなどのモノ−およびビス−アシルホスフィンが挙げられる。さらに、チバ・スペシャルティ・ケミカルズコーポレーション(Ciba Specialty Chemicals Corporation)から、ダロキュア(Darocur)(登録商標)ITXとして市販されている2−および4−イソプロピルチオキサントンの増感剤が、前述の光開始剤と併せて用いられ得る。
【0064】
光開始剤は、典型的には、約254nm〜約450nmの波長を有する入射光により活性化される。一実施形態において、この未硬化組成物は、波長260nm、320nm、370nmおよび430nmの周辺で強い発光を有する高圧水銀ランプからの光によって硬化される。この実施形態においては、より短い波長(すなわち245〜350nm)で比較的強い吸収を示す少なくとも1種の光開始剤と、より長い波長(すなわち350〜450nm)で比較的強い吸収を示す少なくとも1種の光開始剤との組み合わせが本未硬化組成物を硬化させるために実用的である。開始剤のこのような混合物は、UV光源から放射されるエネルギーの最も効率的な利用をもたらす。より短い波長で比較的強い吸収を示す光開始剤の例としては、ベンジルジメチルケタール(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651)およびギ酸メチルベンゾイル(ダロキュア(Darocur)(登録商標)MBF)が挙げられる。より長い波長で比較的強い吸収を示す光開始剤の例としては、2−および4−イソプロピルチオキサントン(ダロキュア(Darocur)(登録商標)ITX)が挙げられる。光開始剤のこのような混合物の一例は、10重量部のイルガキュア(Irgacure)(登録商標)651とダロキュア(Darocur)(登録商標)MBFとの2:1重量比混合物対1重量部のダロキュア(Darocur)(登録商標)ITXである。
【0065】
熱開始剤はまた、UV硬化される際に光開始剤と一緒に用いられ得る。有用な熱開始剤としては、例えば、アゾ、過酸化、過硫酸およびレドックス開始剤が挙げられる。
【0066】
本未硬化組成物のUV硬化は、一定のUV光開始剤の性能に負に作用する可能性がある酸素の実質的不在下で実施されることが可能である。酸素を排除するために、UV硬化は、窒素などの不活性ガスの雰囲気下で実施されることが可能である。
【0067】
本未硬化組成物のUV硬化は、周囲温度で実施されることが可能である。約60℃〜約85℃の高温が実用的であり、約75℃の温度が好ましい。高温でのUV硬化の実施はより完全な硬化をもたらす。
【0068】
有機過酸化物の熱分解を用いて未硬化組成物を硬化させるためのフリーラジカルが生成される場合、この未硬化組成物は、一般に、1〜10phr、好ましくは5〜10phrの有機過酸化物を含む。有用なフリーラジカル熱開始剤としては、例えば、アゾ、過酸化、過硫酸、およびレドックス開始剤ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。有機過酸化物が好ましく、有機過酸化物の例としては、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン;2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン;2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシペルオキシド;ジ−t−ブチルペルオキシド;tーブチルクミルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;α,α'−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセン−3;ベンゾイルペルオキシド;t−ブチルペルオキシベンゼン;2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−ヘキサン;t−ブチルペルオキシマレイン酸;およびt−ブチルペルオキシイソプロピルカルボネートが挙げられる。ベンゾイルペルオキシドが好ましい有機過酸化物である。有機過酸化物は、単独でまたは2種以上の組み合わせで用いられ得る。
【0069】
本発明の低屈折率組成物の形成において実用的な未硬化組成物は、任意により、コーティングならびに、取り扱いおよび輸送を容易とする溶剤などの非反応性成分を含有する。それ故、本発明は、反射防止コーティングに用いられる低屈折率組成物を形成するための液体混合物をさらに含み、この液体混合物は、(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびに前記オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;ならびに(iv)フリーラジカル重合開始剤がその中に溶解された溶剤を含み;ここで、前記溶剤はその中に、少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子がその中に懸濁されている。
【0070】
未硬化組成物の粘度を低減してコーティングを容易とするために、未硬化組成物には溶剤が含まれていることが可能である。溶剤を含有する未硬化組成物の適切な粘度レベルは、反射防止コーティングの所望の厚さ、塗布技術、および未硬化組成物が塗布されるべき基材などの種々の要因に応じ、この技術分野における当業者により必要以上の実験なしで決定されることが可能である。一般に、未硬化組成物中の溶剤の量は、約10重量%〜約60重量%、好ましくは約20重量%〜約40重量%である。
【0071】
溶剤は、未硬化組成物の硬化特性に悪影響をおよぼさず、または光学ディスプレイ基材を腐食させないよう選択される。さらに、溶剤は、未硬化組成物への溶剤の添加がナノシリカの凝析をもたらさないよう選択される。しかも、溶剤は、適切な乾燥速度を有するよう選択されるべきである。すなわち、溶剤は、過度に遅く乾燥すべきではなく、これは未硬化組成物からの反射防止コーティングの形成プロセスを不当に遅延させる可能性がある。溶剤はまた、過度に急速に乾燥すべきではなく、これは、得られる反射防止コーティングにピンホールまたはクレーターなどの欠陥を生じさせる可能性がある。実用的な溶剤としては極性非プロトン性有機溶剤が挙げられ、代表例としては、脂肪族および脂環式:メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸プロピルなどのエステル;ジ−n−ブチルエーテルなどのエーテル;ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい溶剤としては、酢酸プロピルおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。低級アルキルヒドロカルビルアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)が溶剤中に存在していることが可能であるが、溶剤の約8重量%以下を構成すべきである。
【0072】
本発明は、
(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;多オレフィン性架橋剤;アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;フリーラジカル重合開始剤がその中に溶解された溶剤であって;少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子がその中に懸濁された溶剤を含む液体混合物を調製する工程、
(ii)液体混合物のコーティングを光学ディスプレイ基材上に塗布して液体混合物コーティングを基材上に形成する工程、
(iii)溶剤を液体混合物コーティングから除去して、未硬化のコーティングを基材上に形成する工程、ならびに
(iv)未硬化のコーティングを硬化し、これにより、反射防止コーティングを光学ディスプレイ基材上に形成する工程
を含む光学ディスプレイ基材上に反射防止コーティングを形成する方法をさらに含む。
【0073】
一実施形態において、反射防止コーティングを形成するための方法は、複数の固体ナノシリカ粒子を、基材に実質的に隣接する反射防止コーティング内に位置させる。
【0074】
一実施形態においては、液体混合物を調製する工程は、本明細書において既述のとおり、オキシシランの加水分解を触媒することができる化合物の実質的不在下で実施される。
【0075】
本発明の方法は、液体混合物を光学ディスプレイ基材上にコーティングして液体混合物コーティングを形成するステップを含む。一実施形態においては、コーティングステップは、1回のコーティングステップで実施されることが可能である。未硬化組成物を、1回のコーティングステップで基材上に塗布する有用なコーティング技術は、例えば米国特許出願公開第2005/18733号明細書に記載のマイクログラビアコーティングなどの薄く、均一な液体の層を基材上に形成することが可能であるものである。
【0076】
本発明の方法は、溶剤を液体混合物コーティングから除去して未硬化のコーティングを基材上に形成するステップを含む。溶剤は、例えば、熱、減圧およびコートされた液体混合物近くでの不活性ガス流といった公知の方法により除去することが可能である。
【0077】
本発明の方法は、未硬化のコーティングを硬化するステップを含む。本明細書において既述のとおり、未硬化のコーティングは、好ましくはフリーラジカル開始メカニズムにより硬化される。フリーラジカルは、任意により未硬化組成物中に含まれる有機過酸化物の熱分解によるもの、または紫外(UV)放射線、ガンマ線、または電子ビーム放射線などの放射線によるものなどの公知の方法により生成され得る。未硬化組成物は、比較的安いコストおよび工業規模で適用された場合のこの硬化技術の速度により、UV硬化されることが好ましい。
【0078】
硬化された反射防止コーティングは、約120nm未満〜約80nm超、および好ましくは約110nm未満〜約90nm超、最も好ましくは約100nmの厚さを有する。
【0079】
本発明は、反射防止コーティングを有する基材を含む物品をさらに含み、ここで、このコーティングは、(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー;(ii)多オレフィン性架橋剤;(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択される少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびにこのオキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;(iv)フリーラジカル重合開始剤;ならびに(v)少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能基化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子の反応生成物を含む。
【0080】
一実施形態において、複数の固体ナノシリカ粒子は、基材に実質的に隣接する反射防止コーティング、すなわち、層化された反射防止コーティング内に位置される。
【0081】
本発明による反射防止コーティングを有する基材は、ディスプレイ表面、光学レンズ、窓、光学偏光子、光学フィルタ、光沢プリントおよび写真、清透ポリマーフィルム等としての用途が見出される。基材は、透明またはアンチグレアのいずれでもよく、アセチル化セルロース(例えば、トリアセチルセルロース(TAC))、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ガラス、ビニル、ナイロン等を含む。好ましい基材はTAC、PETおよびPMMAである。基材は、任意により、基材と反射防止コーティングとの間に塗布された、特にこれらに限定されないが、アクリレートハードコートなどのハードコートを有する。
【0082】
本明細書において用いられるところ、「鏡面反射」および「鏡面反射率」という用語は、鏡面角度を中心とした約2度の頂角を有する射出コーンへの光線の反射率を指す。「拡散反射」または「拡散反射率」という用語は、上に定義の鏡面コーン外の光線の反射を指す。透明基材上の本低屈折率組成物についての鏡面反射率は約2.0%以下、好ましくは約1.7%以下である。
【0083】
本発明の低屈折率組成物は、擦過に対する優れた耐性を有すると共にディスプレイ基材上で反射防止コーティングとして用いられる場合、低いRVISを有する。本発明は、約1.3%未満のRVISおよび方法1による擦過の後に、方法4により測定される10以下、好ましくは7以下の擦傷割合を有する反射防止コーティングを包含する。
【実施例】
【0084】
キー&用いた材料
APTMS:アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、オキシシラン(アルドリッチ(Aldrich)、92%)
ダロキュア(Darocur)(登録商標)ITX:2−イソプロピルチオキサントンおよび4−イソプロピルチオキサントンの混合物、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY,USA)から入手可能である光開始剤
ゲノキュア(Genocure)(登録商標)MBF:ギ酸メチルベンゾイル、米国イリノイ州(IL,USA)のラーンUSA社(Rahn USA Co.)から入手可能である光開始剤。
イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY,USA)から入手可能である光開始剤。
イルガキュア(Irgacure)(登録商標)907:2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)、米国ニューヨーク州タリータウン(Tarrytown,NY,USA)から入手可能である光開始剤
ニッサン(Nissan)MEK−ST:約0.5重量パーセント水を含有するメチルエチルケトン中のシリカコロイド、約10〜16nmの粒径中央値d50、30〜31重量%シリカ、米国テキサス州ヒューストン(Houston,TX,USA)のニッサンケミカルズアメリカコーポレーション(Nissan Chemicals America Corporation)から入手可能である。固体状態29Siおよび13C NMR(核磁気共嗚)分光法によるニッサン(Nissan)MEK−STの試験は、MEK−STナノシリカ粒子の表面(反応性シラノール)は、トリメチルシリル置換基で官
能基化されていることを明らかにする。
【0085】
ニッサン(Nissan)MEK−ST固体ナノシリカ反応性シラノールがトリメチルシリル置換基で置換される程度の特徴づけ:
固体ナノシリカ反応性シラノールが非反応性置換基で置換される程度の特徴づけは、DRIFTS(拡散反射フーリエ変換赤外分光法)により実施されることが可能である。ニッサン(Nissan)MEK−ST固体ナノシリカ反応性シラノールが非反応性トリメチルシリル置換基で置換される程度の特徴づけは、DRIFTSにより以下のとおり実施される。
【0086】
ナノシリカコロイド中の溶剤が蒸発により室温で除去されて、ケイ素酸化物ナノコロイド粉末が形成される。DRIFTS計測は、ハリック(Harrick)「カマキリ(praying Mantis)」DRIFTSアクセサリーをバイオレッド(Biorad)FTS6000FTIR分光計において用いて行った。サンプルは、DRIFTS分析のためにKCl中に10%の濃度に希釈される。ナノシリカの表面の性質が変化することを防ぐために、希釈物の調製中における粉砕は回避される。データ処理は、サーモサイエンティフィック(Thermo Scientific)製の好適なGRAMS/32スペクトロスコピーソフトウェアを用いて実施される。ベースラインオフセット補正の後、データは、クベルカ−ムンク(Kubelka−Munk)変換を用いて変換されて、サンプル濃度に対する応答が線形化される。スペクトルは、すべての比較において1874cm−1付近のシリカ倍音帯の高さに対して正規化されて、サンプル濃度のわずかな違いについて補正される。ニッサン(Nissan)MEK−STのサンプルは、ニッサン(Nissan)IPA−ST(ニッサン(Nissan)IPA−STは、イソプロピルアルコール中の非官能基化ニッサン(Nissan)MEK−STである)のサンプルと比較される。DRIFTSスペクトルがサンプルについて得られる。このサンプルが、次いで、APTMSの開放コンテナを含む密閉容器中に導入され、この容器中において標準状態下に1時間維持した。サンプルを抑制することなく、サンプルのDRIFTSスペクトルが次いで得られる。約3737cm−1で観察されるバンドが反応性シラノール基に対応する。ニッサン(Nissan)IPA−STについては、このサンプルのAPTMSへの露出の結果、このバンドの強度は著しく低減されている。理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、これは、APTMSと相互作用する非官能基化反応性シラノールによると考える。ニッサン(Nissan)MEK−STについては、このサンプルのAPTMSへの露出の結果、このバンドの強度の変化は実質的にない。理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、これは、APTMSが相互作用するためのニッサン(Nissan)MEK−STの表面上の反応性シラノールの相対的な不在によると考える。ニッサン(Nissan)IPA−STサンプル由来の、3737cm−1での反応性シラノールバンドの積分した強度に基づいて、ニッサン(Nissan)MEK−STサンプル上の反応性シラノール被覆度は、ニッサン(Nissan)IPA−STサンプルで観察された被覆度の5%未満であることが推定される。従って、ニッサン(Nissan)MEK−STの表面上のおよそ95%以上の反応性シラノールが、非反応性置換基(トリメチルシリル)で置換されている。
【0087】
ニッサン(Nissan)MEK−STL:メチルエチルケトン中のシリカコロイド、ニッサン(Nissan)文献によれば約40〜50nmの粒径中央値d50、30〜31重量%シリカ、米国テキサス州ヒューストン(Houston,TX,USA)のニッサンケミカルズアメリカ社(Nissan Chemicals America Co.)から入手可能。
サルトマー(Sartomer)SR454:エトキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、米国ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA,USA)サルトマー(Sartomer Co.)から入手可能な非フッ素化多オレフィン性架橋剤。
サルトマー(Sartomer)SR533:トリアリルイソシアヌレート、米国ペンシルバニア州エクストン(Exton,PA,USA)サルトマー(Sartomer Co.)から入手可能な非フッ素化多オレフィン性架橋剤。
SKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica):メチルイソブチルケトン中の「ELCOM」グレード中空ナノシリコン酸化物コロイド、約41nmの粒径中央値d50、約20.3重量%シリカ、日本国(Japan)の触媒化成工業株式会社(Shokubai Kasei Kogyo Kabushiki Kaisha)から入手可能
ビトン(Viton)(登録商標)GF200S:フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンおよび硬化部位モノマーのコポリマー、米国デラウェア州(DE,USA)のデュポンパフォーマンスエラストマーズ(DuPont Performance Elastomers)から入手可能であるフルオロエラストマー。
【0088】
方法
方法1:表面擦過
本発明の反射防止コーティングでコートされた3.7cm×7.5cm片の基材フィルムが、フィルムの周縁が接着テープでプレートに固定されることによりそのコート面が上向きになるよう平坦なガラスプレートの表面上に設置される。リベロン(Liberon)グレードの0000番スチールウールが1×1cmよりわずかに大きいパッチに切り取られる。1×1cmに切り取った軟質(柔軟)な発泡パッドがスチールウールパッド上に置かれ、滑り嵌めデルリン(Delrin)(登録商標)スリーブに保持された200−グラムの黄銅ウエイトが発泡パッドの上に置かれる。このスリーブは、ステップモータ駆動式移動ステージモデルMB2509P5J−S3CO18762により移動される。ベルメックス(VELMEX)VXMステップモータコントローラがステップモータを駆動する。スチールウールおよびウエイトアセンブリはフィルム表面上に置かれ、3cmの距離にわたって5cm/秒の速度で、10回(20パス)フィルム表面上を前後にこすられる。
【0089】
方法2:鏡像反射率(RVIS)の計測
本発明の反射防止コーティングでコートされた3.7cm×7.5cm片の基材フィルムが、計測のために、一片の黒色のPVC絶縁テープ(日東電工株式会社(Nitto Denko)、PVCプラスチックテープ21番)をフィルムのコートされていない側面に、裏面反射が妨げられるように閉じ込められた気泡がないよう接着することにより調製される。このフィルムは、次いで、分光計の光路に対して垂直に保持される。法線入射の約2度以内である反射光が捕捉され、赤外拡張範囲分光計(フィルメトリックス(Filmetrics)、モデルF50)に指向される。この分光計は、裏面が粗面化されると共に黒色化されているBK7ガラスの低反射率標準で、400nm〜1700nmの間で較正される。鏡面反射は、法線入射で、約2度の受光角で計測される。反射スペクトルは、400nm〜1700nmの範囲で約1nmの間隔をもって記録される。機器が約6%反射で最大範囲または飽和であるよう長い検出器積分時間を用いることにより低ノイズスペクトルが得られる。さらなるノイズの低減は3つ以上の個別のスペクトルの計測値を平均化することにより達成される。記録されたスペクトルから報告された反射率は、x、yおよびYの色計算の結果もたらされ、ここで、Yは、鏡面反射率(RVIS)として報告される。色座標計算は、10度標準観測者についてタイプC光源で実施される。
【0090】
方法3:ヘーズ
ヘーズが、ASTM D1003法、「ヘーズおよび透明プラスチックの光透過率についての標準試験法」に準拠して、ミッドランド州コロンビア(Columbia,MD)のBYK−ガードナーUSA(BYK−Gardner USA)から入手可能である「BYKガードナーヘーズ−ガードプラス(BYK Gardner Haze−Guard Plus)」を用いて計測される。
【0091】
方法4:表面擦過の定量化
本方法は、方法1により擦過されたフィルムの撮像および画像のソフトウェア操作による擦過されたフィルム上の擦傷面積割合の定量化を包含する。
【0092】
存在するすべての可能性を網羅する単一の画像分析法はない。当業者は、実施される画像分析はきわめて特定的であることを理解するであろう。一般的な指針が、不特定のパラメータは必要以上の実験をせずに認識する当業者の能力の範囲内であることの理解と共にここに提供されている。
【0093】
この分析は、サンプルの「軸上」および「軸外」照射の両方があり、画像は、法線入射から約7度の反射光で撮られると仮定する。また、引掻き傷は画像において垂直に配向されていると仮定する。適切な画像コントラストは、不必要な実験なしで実務者または当業者により確立されることが可能である。画像コントラストは、照明輝度、カメラホワイトおよびブラック基準設定、基材の屈折率、低屈折率組成物の屈折率および厚さにより制御される。また、画像のコントラストを高めるために、一片の黒色絶縁テープが基材の裏に接着される。これは、裏面反射を妨げる効果を有する。
【0094】
方法1により形成されたフィルム上の引掻き傷領域を分析するために用いられる画像は、コンピュータ中のフレームグラッバーカードに接続したビデオカメラで得られる。この画像は、グレースケール640×480ピクセル画像である。カメラ上の光学素子が、撮像領域の幅が7.3mm(これは、擦過される1cm幅領域の大部分である)となるよう擦過領域を拡大する。
【0095】
フォトショップ(PhotoShop)用のラインディアグラフィックスイメージプロセッシングツールキット(Reindeer Graphic’s Image Processing Toolkit)がプラグインされたアドビフォトショップ(Adobe PhotoShop)V7が画像を以下に記載のとおり処理するために用いられる。
【0096】
先ず、画像がグレースケール画像に変換される(もし既にそうでなければ)。引掻き傷方向での25ピクセルのモーションブラーが実施されて、引掻き傷が強調されると共に、ノイズおよびフィルムへの外因的な損傷が軽減される。このブラーは、画像をクリーンアップするために3つのことをする。第1に、擦過方向以外の方向のフィルムへの損傷が背景と平均化されることによりきれいにされる。第2に、個別の白点が、背景と平均化されることにより除去される。第3に、引掻き傷にある小さなギャップのいずれもが、引掻き傷線間で平均化されることにより埋められる。
【0097】
画像におけるピクセルの明暗度の自動コントラスト調整用の調製において、左上のコーナー付近の4つのピクセルが選択される。これらのピクセルが、200(255のうち)の明暗度で塗りつぶされる。このステップは、明るい引掻き傷が画像中にない場合にも、擦過されていない材料暗い背景以外の画像におけるいくつかのマークを確実に存在させる。これは、自動コントラスト調整を制限する効果を有する。用いられる自動コントラスト調整は、ヒストグラムが8ビットグレースケール画像において利用可能な0〜255レベルを埋めるよう画像のコントラストを変更させる「ヒストグラムリミット:最大−最小」と呼ばれる。
【0098】
次いで、水平方向における微分を撮る特注フィルタが画像に適用され、次いで元の画像が微分画像に組み入れられる。これは、垂直な引掻き傷の縁部を強調させる効果を有する。
【0099】
バイレベル閾値が128グレーレベルで適用される。128以上のレベルでのピクセルが白色(255)に設定されると共に、128の輝度未満のピクセルが黒色(0)に設定される。この画像は、次いで、反転されて黒色ピクセルを白色にすると共に、白色ピクセルが黒色にされる。これは、黒色領域の全体的な計測の適用である最終ステップにおいて用いられる全体的な計測特質に適応させるためである。結果は、画像における黒色ピクセルの割合に関して示されている。これは、方法1により引掻かれた総面積の割合(すなわち、引掻き傷%)である。処理は1画像当たり全体で数秒かかる。この方法によれば、従来の方法において必要とされる人間のオペレータに関係なく、擦過されたサンプルの多くを迅速に、かつ、反復的に評価することが可能である。
【0100】
方法5:コーティング方法
米国特許第4,791,881号明細書に記載のとおり、日本国東京(Tokyo,Japan)の康井精機社(Yasui−Seiki Co.Ltd.)製のマイクログラビアコーティング装置を用いて、基材フィルムが未硬化組成物でコートされる。この装置は、ドクターブレードおよび20mmのロール径を有する康井精機社(Yasui−Seiki Co.)製グラビアロール230番(230ライン/インチ)、1.5〜3.5μm濡れ厚さ範囲)を含む。コーティングは、6.0rpmのグラビアロール回転速度および0.5m/分の移動ライン速度を用いて実施される。
【0101】
表1
表1は、以下のパラメータ、ならびに実施例1〜10および比較例A〜Dについての結果を報告する。表1の表題欄は以下のとおり定義される:「熱またはUV硬化」(コーティングについての硬化方法);「体積%ナノシリカ」(乾燥ナノシリカ粒子の体積を、硬化部位を有する乾燥フルオロエラストマー、多オレフィン性架橋剤、ナノシリカ粒子、および開始剤の体積の総和によって除した商の100倍)、「重量%ナノシリカ」(乾燥ナノシリカ粒子の重量を、硬化部位を有する乾燥フルオロエラストマー、多オレフィン性架橋剤、ナノシリカ粒子および開始剤の重量の総和で除した商の100倍)、「オキシシラン」(用いたオキシシランのアイデンティティ)、「オキシシラン(分子/nm)」(平均でのオキシシランの分子数/コンポジットの形成に用いられコロイド状ナノシリカのナノシリカ粒子表面積の1平方ナノメートル)、「RVIS」(方法2により測定された鏡面反射率)、「ヘーズ」(方法3により測定されたヘーズ)、および「引掻き%」(方法4により計測された表面擦過の定量化(面積割合))。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例1
コンポジットは、1.32gのAPTMSを室温で16.67gのニッサン(Nissan)MEK−ST(乾燥密度2.32g/cc)と組み合わせることにより形成される。コンポジットは、さらなる使用の前に約24時間室温で維持される。この期間の後、コンポジットは、APTMSならびにAPTMSの加水分解物および縮合物を含有する。
【0104】
ニッサン(Nissan)MEK−ST中のナノシリカ粒子のd50粒径を以下の手法により測定した。ナノ粒子の広視野の透過型電子顕微鏡写真ネガがスキャンされて、デジタル画像が生成される。コロス(Khoros)2000ソフトウェアを用いるサン(SUN)ワークステーションが、粒径分布の画像分析のために用いられる。およそ150粒子が分析され、16ナノメートルのd50が計測される。
【0105】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200S(乾燥密度1.8g/cc)の酢酸プロピル中の10重量%溶液45g、0.45gベンゾイルペルオキシド(乾燥密度1.33g/cc)および60.14g酢酸プロピル中の0.45gサルトマー(Sartomer)SR533(乾燥密度1.16g/cc)を組み合わせることにより形成される。
【0106】
室温で、8.94gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加されて、未硬化組成物が形成される。次いで、未硬化組成物が、0.47μテフロン(Teflon)(登録商標)PTFEメンブランフィルタを通してろ過され、調製してから2〜5時間以内にコーティングに用いられる。
【0107】
40.6cm×10.2cm一片の帯電防止処理された、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムが、方法5(コーティング方法)によって未硬化組成物でコートされる。コートしたフィルムは10.2cm×12.7cm片に切り取られ、窒素雰囲気下に120℃で20分間の加熱により硬化される。硬化したコーティングは約100nmの厚さを有する。
【0108】
コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。擦過されたフィルム部分のRVISが方法2により計測される(鏡像反射率の計測)。擦過されたフィルム部分のヘーズが方法3により計測される(ヘーズ)。擦過されたフィルム部分の引掻き%が方法4により計測される(表面擦過の定量化)。結果が表1に報告されている。
【0109】
実施例2
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が40.33g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。5.22gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0110】
実施例3
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。コンポジットが2.65gのAPTMSで形成される。フルオロエラストマーを含む混合物が、35.35gビトン(Viton)(登録商標)GF200S(酢酸プロピル中に10重量%)、0.39gサルトマー(Sartomer)SR533、0.50gサルトマー(Sartomer)SR454(乾燥密度1.1g/cc)、0.05gダロキュア(Darocur)ITX、0.35gイルガキュア(Irgacure)651、および40.74g酢酸プロピル中の0.18gゲノキュア(Genocure)MBF(ダロキュア(Darocur)ITX、イルガキュア(Irgacure)651、ならびにゲノキュア(Genocure)MBFの乾燥密度は1.15g/ccである)を組み合わせることにより形成される。9.24gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。コートしたフィルムが、窒素雰囲気下に85℃での加熱により硬化され、VWRモデルB100P UV光源で5分間照射される。ランプがコートしたフィルムの中心から2インチに配置され、この距離でのランプエネルギー束は、365nmで2,100〜8,400mJ/cmである。結果が表1に報告されている。
【0111】
実施例4
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例3の手順に従う。コンポジットが1.32gのAPTMSで形成される。ビトン(Viton)(登録商標)GF200S、サルトマー(Sartomer)SR533、サルトマー(Sartomer)SR454、ダロキュア(Darocur)ITX、イルガキュア(Irgacure)651、およびゲノキュア(Genocure)MBFを含む混合物が41.03g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。5.71gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。結果が表1に報告されている。
【0112】
実施例5
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例3の手順に従う。コンポジットが1.32gのAPTMSで形成される。ビトン(Viton)(登録商標)GF200S、サルトマー(Sartomer)SR533、サルトマー(Sartomer)SR454、ダロキュア(Darocur)ITX、イルガキュア(Irgacure)651、およびゲノキュア(Genocure)MBFを含む混合物が45.40g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。9.79gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。結果が表1に報告されている。
【0113】
実施例6
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が50.33g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。5.22gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0114】
実施例7
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。コンポジットが0.11gのAPTMSで形成される。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が60.74g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。8.34gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0115】
実施例8
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。コンポジットが0.55gのAPTMSで形成される。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が60.52g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。8.56gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0116】
実施例9
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が60.14g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。8.95gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0117】
実施例10
この実施例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。コンポジットが2.65gのAPTMSで形成される。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が59.48g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。9.60gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0118】
比較例A
この例については、以下の変更を伴いながら実施例10の手順に従う。コンポジットが、APTMSの代わりに0.84gアリルトリメトキシシラン(ATMS)で形成される。結果が表1に報告されている。
【0119】
比較例B
この例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。コンポジットが、APTMSの代わりに2.95gヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシルトリメトキシシラン(HTMS)で形成される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0120】
比較例C
この例については、以下の変更を伴いながら実施例1の手順に従う。コンポジットが、0.06gのAPTMSで形成される。ビトン(Viton)(登録商標)GF−200S、ベンゾイルペルオキシドおよびサルトマー(Sartomer)SR533が60.77g酢酸プロピルに溶解されて、フルオロエラストマーを含む混合物が形成される。8.31gのコンポジットがフルオロエラストマーを含む混合物に添加される。コートされたフィルムは、アクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムである。結果が表1に報告されている。
【0121】
比較例D
この例については、以下の変更を伴いながら実施例3の手順に従う。フルオロエラストマーを含む混合物が25.69g酢酸プロピル中に形成される。ナノシリカおよびオキシシランのコンポジットはフルオロエラストマーを含む混合物に添加されていない。結果が表1に報告されている。
【0122】
表2
表2は、実施例11〜19および比較例E〜Hの結果を報告する。表2の表題欄および単位は、表1における表題と同様に定義される。
【0123】
実施例11
固体ナノシリカ混合物が、2.65のAPTMSを、室温で、16.67gのニッサン(Nissan)MEK−STと組み合わせることにより形成される。中空ナノシリカ混合物が、0.96gのAPTMSを、室温で、11.33gのSKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)と組み合わせることにより形成される。これらの混合物は、さらなる使用の前に、室温で約24時間、個別に維持される。この期間の後、固体ナノシリカ混合物は、APTMSならびにAPTMSの加水分解物および縮合物を含有する。
【0124】
ニッサン(Nissan)MEK−ST中の固体ナノシリカ粒子の粒径中央値d50、およびSKKホローシリカ(Hollow Silica)中の中空ナノシリカ粒子の粒径中央値d50は、以下の手法により測定される。固体ナノ粒子の広視野の透過型電子顕微鏡写真ネガがスキャンされて、デジタル画像が生成される。コロス(Khoros)2000ソフトウェアを用いるサン(SUN)ワークステーションが、粒径分布の画像分析のために用いられる。およそ150固体ナノシリカ粒子が分析され、約16nmのd50が計測される。およそ150中空ナノシリカ粒子が分析され、約41nmのd50が分析される。
【0125】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sの酢酸プロピル中の10重量%溶液35.14g、0.39gサルトマー(Sartomer)SR533、0.05gダロキュア(Darocur)ITX、0.35gイルガキュア(Irgacure)651、および0.18gゲノキュア(Genocure)MBFを40.55g酢酸プロピル中に組み合わせることにより形成される。
【0126】
フルオロエラストマーを含む混合物に、4.48gの固体ナノシリカ混合物および2.61gの中空ナノシリカ混合物が添加される。
【0127】
【表2】

【0128】
得られた未硬化組成物は、次いで、0.47μテフロン(Teflon)(登録商標)PTFEメンブランフィルタを通してろ過され、調製してから2〜5時間以内にコーティングに用いられる。
【0129】
40.6cm×10.2cm一片のアクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムが、方法5(コーティング方法)によって未硬化組成物でコートされる。
【0130】
コートしたフィルムは10.2cm×12.7cm片に切り取られ、窒素雰囲気下に85℃での加熱により硬化され、VWRモデルB100P UV光源で5分間照射される。ランプがコートしたフィルムの中心から2インチに配置され、この距離でのランプエネルギー束は、365nmで2,000〜8,400Jの範囲である。
【0131】
コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。擦過されたフィルム部分のRVISが方法2により計測される(鏡像反射率の計測)。擦過されたフィルム部分のヘーズが方法3により計測される(ヘーズ)。擦過されたフィルム部分の引掻き%が方法4により計測される(表面擦過の定量化)。結果が表2に報告されている。
【0132】
実施例12
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。フルオロエラストマーを含む混合物が34.7g酢酸プロピル中に形成される。フルオロエラストマーを含む混合物に、2.80gの固体ナノシリカ混合物および2.44gの中空ナノシリカ混合物が添加される。結果が表2に報告されている。
【0133】
実施例13
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。フルオロエラストマーを含む混合物が43.1g酢酸プロピル中に形成される。フルオロエラストマーを含む混合物に、5.60gの固体ナノシリカ混合物および8.14gの中空ナノシリカ混合物が添加される。結果が表2に報告されている。
【0134】
実施例14
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。フルオロエラストマーを含む混合物は、0.5gサルトマー(Sartomer)SR454をさらに含有する。フルオロエラストマーを含む混合物が40.5g酢酸プロピル中に形成される。フルオロエラストマーを含む混合物に、4.99gの固体ナノシリカ混合物および2.90gの中空ナノシリカ混合物が添加される。結果が表2に報告されている。
【0135】
実施例15
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。固体ナノシリカ混合物が、1.32のAPTMSを、室温で、16.67gのニッサン(Nissan)MEK−STと組み合わせることにより形成される。中空ナノシリカ混合物が、0.48gのAPTMSを、室温で、11.33gのSKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)と組み合わせることにより形成される。フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sの酢酸プロピル中の10重量%溶液45g、0.45gベンゾイルペルオキシド、および60.18g酢酸プロピル中の0.45gサルトマー(Sartomer)SR533を組み合わせることにより形成される。フルオロエラストマーを含む混合物に、5.96gの固体ナノシリカ混合物および2.68gの中空ナノシリカ混合物が添加される。コートしたフィルムは、窒素雰囲気中に20分間の120℃での加熱により硬化される。結果が表2に報告されている。
【0136】
実施例16
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。
【0137】
固体ナノシリカ混合物が、2.65のAPTMSを、室温で、16.67gのニッサン(Nissan)MEK−STと組み合わせることにより形成される。中空ナノシリカ混合物が、2.65g APTMSを、室温で、12.14グラムのSKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)と組み合わせることにより形成される。この混合物は、さらなる使用の前に約24時間維持される。
【0138】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200SフルオロエラストマーのMIBK(メチルイソブチルケトン)中の10重量%溶液35.30g、0.39gのサルトマー(Sartomer)SR533および0.350gのイルガキュア(Irgacure)651、および51.47gのMIBKを組み合わせることにより形成される。
【0139】
フルオロエラストマーを含む混合物に、5.80gの固体ナノシリカ混合物および10.79gの中空ナノシリカ混合物が添加される。
【0140】
10〜1,000ppm酸素の計測範囲にわたる制御された窒素不活性化能を備えるDRSコンベヤ/UV処理器(15cm幅)に連結されたフュージョン(Fusion)UVシステム/ゲイザーズバーグ(Gaithersburg)MD製のLH−I6P1UV光源(200w/cm)から構成されるUV露光ユニットを用いて、コートしたフィルムが硬化される。
【0141】
ランプ出力およびコンベヤ速度は、約0.7〜1.0m/分の輸送速度で、500〜600ミリジュール/cm(UV−A照射)の計測エネルギー密度を用いてフィルムが硬化されるよう設定される。EIT UVパワーパック(Power Puck)(登録商標)放射計を用いて、UV−Aバンド幅中のUV総エネルギーが計測される。
【0142】
LH−I6P1において用いられる「H」バルブは、上述のUV−Aに追加して、表3に示されるとおりUV−B、UV−CおよびUV−Vバンドにスペクトル出力を有する。
【0143】
【表3】

【0144】
このユニット中の酸素レベルは、窒素パージを用いて350ppm以下であるよう制御される。硬化されたフィルムが、硬化コンベヤベルト上に配置する前に70℃に予熱された金属基材上に置かれる。
【0145】
コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0146】
実施例17
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。
【0147】
固体ナノシリカ混合物が、5.29のAPTMSを、室温で、33.33gのニッサン(Nissan)MEK−STと組み合わせることにより形成される。中空ナノシリカ混合物が、3.83g APTMSを、室温で、48.54グラムのSKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)と組み合わせることにより形成される。これらの混合物は、さらなる使用の前に、室温で約24時間、個別に維持される。
【0148】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200SフルオロエラストマーのMIBK(メチルイソブチルケトン)中の35.88gの9.85重量%溶液、0.39gのサルトマー(Sartomer)SR533および0.350gのイルガキュア(Irgacure)651、0.05gダルキュア(Darcur)ITX、0.18gゲノキュア(Genocure)MBFおよび50.29gのMIBKを組み合わせることにより形成される。
【0149】
フルオロエラストマーを含む混合物に、4.96gの固体ナノシリカ混合物および11.34gの中空ナノシリカ混合物が添加される。
【0150】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0151】
比較例E
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。
【0152】
61.63gのニッサン(Nissan)MEK−ST固体ナノシリカを73.89gのヘキサメチルジシラザン(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)製のHMDS)と組み合わせた。この混合物がロータリーエバポレータに入れられ、溶剤のおよそ50体積%超が除去されるまで減圧が適用される。これは、シロップ剤様の粘稠度を有する混合物をもたらす。この物質が窒素流を有する真空乾燥オーブン中に入れられて、約6時間かけて約90℃に加熱される(90℃で4.5時間)。得られたHMDS−処理済ニッサン(Nissan)MEK−STの赤外分光法による分析は、約3737cm−1で、反応性シラノール基に対応するバンドが観察されないことを明らかにする。乾燥粉末である、得られたHMDS−処理済ニッサン(Nissan)MEK−STは、MEK中に再分散されて、30重量%のHMDS−処理済ニッサン(Nissan)MEK−STナノシリカを含有するコロイドが形成される。
【0153】
固体ナノシリカ混合物が、5.29gのAPTMSを、室温で、7.77gの上で調製したHMDS−処理済ニッサン(Nissan)MEK−STナノシリカのコロイドと組み合わせることにより形成される。中空ナノシリカ混合物が、3.83g APTMSを、室温で、48.54グラムのSKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)と組み合わせることにより形成される。これらの混合物は、さらなる使用の前に、室温で約24時間、個別に維持される。
【0154】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200SフルオロエラストマーのMIBK(メチルイソブチルケトン)中の9.85重量%溶液35.88g、0.39gのサルトマー(Sartomer)SR533および0.350gのイルガキュア(Irgacure)651、0.05gダルキュア(Darcur)ITX、0.18gゲノキュア(Genocure)MBFおよび50.29gのMIBKを組み合わせることにより形成される。
【0155】
フルオロエラストマーを含む混合物に、4.96gの固体ナノシリカ混合物および11.34gの中空ナノシリカ混合物が添加される。
【0156】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0157】
比較例F
APTMSゾルが、不活性雰囲気乾燥ボックス中に、10gのAPTMSを12グラムのメチルエチルケトンおよび0.3gのジイソプロピルアルミニウムメチルアセトアセテートと組み合わせることにより形成される。3gの水がこの混合物に添加される。この混合物が、その後、60℃で4時間還流されて、APTMSゾルが形成される。
【0158】
この例については、この時点から、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。
【0159】
固体ナノシリカ混合物が、6.70gのAPTMSゾルを、室温で、5.0gのニッサン(Nissan)MEK−STと組み合わせることにより形成される。中空ナノシリカ混合物が、2.42gのAPTMSゾルを、室温で、2.50グラムのSKK中空ナノシリカ(SKK Hollow Nanosilica)と組み合わせることにより形成される。これらの混合物は、さらなる使用の前に、室温で約24時間、個別に維持される。
【0160】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sフルオロエラストマーの酢酸プロピル中の10.06重量%溶液35.14g、0.39gのサルトマー(Sartomer)SR533、0.050gのダロキュア(Darocur)ITX、および0.350gのイルガキュア(Irgacure)651、および0.18gゲノキュア(Genocure)MBF、26.48gの酢酸プロピルを組み合わせることにより形成される。
【0161】
フルオロエラストマーを含む混合物に、5.42gの固体ナノシリカ混合物および2.92gの中空ナノシリカ混合物が添加される。この配合物に添加される等モル数の量のAPTMS(APTMSゾル中の)は、実施例11のものと同等である。
【0162】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0163】
実施例18
この実施例については、以下の変更を伴って実施例11の手順に従う。
【0164】
固体ナノシリカおよび中空ナノシリカは、APTMSと予め組み合わされない。
【0165】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sの酢酸プロピル中の10重量%溶液35.14g、0.39gサルトマー(Sartomer)SR533、0.05gダロキュア(Darocur)ITX、0.35gイルガキュア(Irgacure)651、および40.55g酢酸プロピル中の0.18gゲノキュア(Genocure)MBFを組み合わせることにより形成される。
【0166】
フルオロエラストマーを含む混合物に、3.87gのニッサン(Nissan)MEK−STコロイドおよび2.36gのSKK中空ナノシリコン酸化物が添加される。この混合物に、次いで、0.82gのAPTMSが添加される。この混合物は、さらなる使用前に約24時間室温で維持される。
【0167】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0168】
実施例19
固体ナノシリカ混合物が、1.0のAPTMSを、室温で、6.0gのニッサン(Nissan)MEK−STと組み合わせることにより形成される。混合物は、さらなる使用の前に約24時間25℃で維持される。
【0169】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sの酢酸プロピル中の9.85重量%溶液15.23g、0.15g SR−533、および13.5g酢酸プロピル中の0.09gイルガキュア(Irgacure)(登録商標)907を組み合わせることにより形成される。
【0170】
フルオロエラストマーを含む混合物に、1.76gの固体ナノシリカ混合物が添加される。
【0171】
得られた未硬化組成物は、次いで、0.45μガラスマイクロファイバーメンブランフィルタを通してろ過され、調製から24時間以内にコーティングのために用いられる。
【0172】
40.6cm×10.2cm一片のアクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムが、方法5(コーティング方法)によって未硬化組成物でコートされる。
【0173】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0174】
比較例G
ビニル変性/HMDSナノシリカ粒子が、以下のとおり、公開されている米国特許出願第2006/0147177A1号明細書[0127]の手法を用いて調製される。
【0175】
0.57gビニルトリメトキシシランを含有する10g1−メトキシ−2−プロパノールの溶液が調製され、15gの穏やかに攪拌されているナルコ(Nalco)2327(水中の40.9重量%コロイダルシリカ、アンモニウム安定化)に周囲温度で徐々に添加される。追加の5.42g(5ml)の1−メトキシ−2−プロパノールを用いて、シラン溶液コンテナがシリカ混合物にすすがれる。反応混合物はおよそ20時間かけて90℃に加熱される。
【0176】
反応混合物は周囲温度に冷却され、次いで、表面を横切るよう窒素流を流過させることにより乾燥するまで穏やかに蒸発される。得られた白色の顆粒状固形分が50mLテトラヒドロフランおよび2.05gヘキサメチルジシラザン(HMDS)と組み合わされ、次いで、超音波浴に10時間入れられて再分散されると共に反応される。得られるわずかに曇った分散体は、減圧下にロータリーエバポレータで乾燥するまで蒸発される。得られた固形分が100℃の空気オーブンに約20時間入れられる。これは、6.52gのビニル変性/HMDSナノシリカ粒子をもたらす。
【0177】
ビニル変性/HMDSナノシリカ粒子の分散体が、3.00gのビニル変性/HMDSナノシリカ粒子を12.00gのメチルエチルケトン(MEK)と組み合わせ、次いで、超音波浴中に12時間入れて分散させることにより調製される。分散体は、0.45ミクロンガラスマイクロファイバーフィルタを通してろ過されて堆積物が除去され、20.4重量%ビニル変性/HMDSナノシリカ粒子をMEK中に含有する分散体が得られる。
【0178】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sの酢酸プロピル中の10.76重量%溶液23.23g、0.25gサルトマー(Sartomer)SR533、および25.8g酢酸プロピル中の0.15gイルガキュア(Irgacure)(登録商標)907を組み合わせることにより形成される。
【0179】
フルオロエラストマーを含む混合物に、20.4重量%ビニル変性/HMDSナノシリカ粒子をMEK中に含有する3.83gの分散体が添加される。
【0180】
得られた未硬化組成物は、次いで、0.45μガラスマイクロファイバーメンブランフィルタを通してろ過され、調製から24時間以内にコーティングのために用いられる。
【0181】
40.6cm×10.2cm一片のアクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムが、方法5(コーティング方法)によって未硬化組成物でコートされる。
【0182】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0183】
比較例H
A−174/HMDSナノシリカ粒子が、以下のとおり、公開されている米国特許出願第2006/0147177A1号明細書[0128]の手法を用いて調製される。
【0184】
0.47g3−(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(A174)を含有する10g1−メトキシ−2−プロパノールの溶液が調製され、15gの穏やかに攪拌されているナルコ(Nalco)2327(水中の40.9重量%コロイダルシリカ、アンモニウム安定化)に周囲温度で徐々に添加される。追加の5.42g(5ml)の1−メトキシ−2−プロパノールを用いてシラン溶液コンテナがナノシリカ混合物にすすがれる。反応混合物はおよそ20時間かけて90℃に加熱される。
【0185】
反応混合物は周囲温度に冷却され、次いで、表面を横切るよう窒素流を流過させることにより乾燥するまで穏やかに蒸発される。得られた白色の顆粒状固形分が50mLテトラヒドロフランおよび2.05gヘキサメチルジシラザン(HMDS)と組み合わされ、次いで、超音波浴に10時間入れられて再分散されると共に反応される。得られるわずかに曇った分散体は、減圧下にロータリーエバポレータで乾燥するまで蒸発される。得られた固形分が100℃の空気オーブンに約20時間入れられる。これは、5.0gのA−174/HMDSナノシリカ粒子をもたらす。
【0186】
A−174/HMDSナノシリカ粒子の分散体が、3.00gのA−174/HMDSナノシリカ粒子を12.00gのメチルエチルケトン(MEK)と組み合わせ、次いで、超音波浴中に12時間入れて分散させることにより調製される。分散体は、0.45μガラスマイクロファイバーフィルタを通してろ過されて堆積物が除去され、20.4重量%A−174/HMDSナノシリカ粒子をMEK中に含有する分散体が得られる。
【0187】
フルオロエラストマーを含む混合物が、ビトン(Viton)(登録商標)GF200Sの酢酸プロピル中の10.76重量%溶液23.23g、0.25gサルトマー(Sartomer)SR533、および25.8g酢酸プロピル中の0.15gイルガキュア(Irgacure)(登録商標)907を組み合わせることにより形成される。
【0188】
フルオロエラストマーを含む混合物に、20.4重量%A−174/HMDSナノシリカ粒子をMEK中に含有する3.83gの分散体が添加される。
【0189】
得られた未硬化組成物は、次いで、0.45μガラスマイクロファイバーメンブランフィルタを通してろ過され、調製から24時間以内にコーティングのために用いられる。
【0190】
40.6cm×10.2cm一片のアクリレート硬質コートトリアセチルセルロースフィルムが、方法5(コーティング方法)によって未硬化組成物でコートされる。
【0191】
コートしたフィルムは、実施例16と同等の手法により硬化される。コートされおよび硬化されたフィルム片が方法1により擦過される(表面擦過)。結果が表2に報告されている。
【0192】
従って、本発明によれば、本明細書に既述の目的および利点を完全に満たす、低屈折率組成物、低屈折率組成物を形成するための液体混合物、反射防止コーティングを有する基材を含む物品および反射防止コーティングを基材上に形成する方法が提供されることが明らかである。本発明はその特定の実施形態と併せて記載されているが、多くの代替、変更および変形が当業者には自明であろうことが明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の趣旨および広い範囲内に属するすべてのこのような代替、変更および変形が包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの硬化部位を有するフルオロエラストマー、
(ii)多オレフィン性架橋剤、
(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびに該オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物、
(iv)フリーラジカル重合開始剤、ならびに
(v)少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子
の反応生成物を含む低屈折率組成物。
【請求項2】
複数の固体ナノシリカ粒子が約30nmまたはそれ以下のd50を有する、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項3】
複数の固体ナノシリカ粒子が、少なくとも約50%であるが100%未満の非反応性置換基で官能化された反応性シラノールを有する、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項4】
複数の固体ナノシリカ粒子が、少なくとも約90%であるが100%未満の非反応性置換基で官能化された反応性シラノールを有する、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項5】
非反応性置換基がトリアルキルシリルを含む、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項6】
フルオロエラストマーが、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、および硬化部位モノマーの共重合単位を含む、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの硬化部位が、臭素、ヨウ素およびエテニルからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの硬化部位がヨウ素である、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項9】
多オレフィン性架橋剤が、式:
R(OC(=O)CR’=CH(式中、Rは直鎖もしくは分岐アルキレン、直鎖もしくは分岐オキシアルキレン、芳香族、芳香族エーテル、または複素環であり;R’はHまたはCHであり;そしてnは2〜8の整数である);および
R(CHCR’=CH(式中、Rは、直鎖もしくは分岐アルキレン、または直鎖もしくは分岐オキシアルキレン、芳香族、芳香族エーテル、芳香族エステルまたは複素環であり;R’はHまたはCHであり;ならびにnは2〜6の整数である)
を有する架橋剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項10】
多オレフィン性架橋剤が、アクリル系多オレフィン性架橋剤およびアリル系多オレフィン性架橋剤の混合物を含む、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項11】
フリーラジカル重合開始剤が、約245nm〜約350nmの波長範囲にわたって比較的強い吸収を有する少なくとも1種の光開始剤、および約350nm〜約450nmの波長範囲にわたって比較的強い吸収を有する少なくとも1種の光開始剤を含む、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項12】
多孔性ナノシリカ粒子をさらに含む、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項13】
固体ナノシリカ粒子の体積%対多孔性ナノシリカ粒子の体積%の比が約0.01:1〜約4:1である、請求項12に記載の低屈折率組成物。
【請求項14】
オキシシランおよび固体ナノシリカ粒子の量が、該固体ナノシリカ粒子表面積1平方ナノメートル当たり約0.3〜約20分子オキシシランである、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項15】
オキシシランおよび固体ナノシリカ粒子の量が、該固体ナノシリカ粒子表面積1平方ナノメートル当たり約2.5〜約12分子のオキシシランである、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項16】
オキシシランならびに固体および多孔性ナノシリカ粒子の量が、該固体および該多孔性ナノシリカ粒子表面積1平方ナノメートル当たり約0.4〜約30分子のオキシシランである、請求項12に記載の低屈折率組成物。
【請求項17】
オキシシランならびに固体および多孔性ナノシリカ粒子の量が、該固体および該多孔性ナノシリカ粒子表面積1平方ナノメートル当たり約3.0〜約12分子のオキシシランである、請求項12に記載の低屈折率組成物。
【請求項18】
オキシシランが、式X−Y−SiR(式中、
Xは、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択された官能基であり、
Yは、場合によりエーテル、エステルおよびアミド結合をその中に包含する2〜10個の炭素原子を有するアルキレンラジカル、ならびに場合によりエーテル、エステルおよびアミド結合をその中に有する6〜20個の炭素原子を有するアリーレンラジカルからなる群から選択され、ならびに
1-3がアルコキシ、アリールオキシおよびハロゲンからなる群から独立して選択される)により表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
反応生成物が、オキシシランの加水分解を触媒することができる化合物の実質的不在下で形成される、請求項1に記載の低屈折率組成物。
【請求項20】
透明基材を含むと共に、その上に請求項1に記載の低屈折率組成物から形成されたコーティングを有する光学フィルム。
【請求項21】
方法1による擦過の後に、方法4により測定される10またはそれ以下の擦傷%を有する、請求項20に記載の光学フィルム。
【請求項22】
透明基材および基材上に設けられた反射防止コーティングを含み、この反射防止コーティングは、請求項1に記載の低屈折率組成物から形成された低屈折率コーティングを含む反射防止フィルム。
【請求項23】
方法1による擦過の後に、方法4により測定される10またはそれ以下の擦傷%を有する、請求項22の反射防止フィルム。
【請求項24】
(i)少なくとも1種の硬化部位を有するフルオロエラストマー、
(ii)多オレフィン性架橋剤、
(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびに該オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物、ならびに
(iv)フリーラジカル重合開始剤、
がその中に溶解された溶剤を含み、
前記溶剤には、その中に、少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子が懸濁されている低屈折率組成物を形成するための液体混合物。
【請求項25】
コーティングが、
(i)少なくとも1つの硬化部位を有するフルオロエラストマー、
(ii)多オレフィン性架橋剤、
(iii)アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびに該オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物、
(iv)フリーラジカル重合開始剤、ならびに
(v)少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子
の反応生成物を含む反射防止コーティングを有する基材を含む物品。
【請求項26】
複数の固体ナノシリカ粒子が、基材に実質的に隣接する反射防止コーティング中に存在する、請求項25に記載の物品。
【請求項27】
1.7%またはそれ以下の鏡面反射率を有する、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
反射防止コーティングの擦傷%が、方法1による擦過の後に、方法4により測定されて10またはそれ以下である、請求項25に記載の物品。
【請求項29】
反射防止コーティングの擦傷%が、方法1による擦過の後に、方法4により測定されて5以下である、請求項25に記載の物品。
【請求項30】
反射防止コーティングを有する基材を含む物品であって、
コーティングが、
(i)フルオロエラストマー、
(ii)多オレフィン性架橋剤、
(iii)オキシシラン、オキシシラン加水分解物およびオキシシラン縮合物からなる群から選択された少なくとも1種、
(iv)フリーラジカル重合開始剤、ならびに
(v)複数の固体ナノシリカ粒子、
の反応生成物を有し、ここで上記複数の固体ナノシリカ粒子が上記基材に実質的に隣接する反射防止コーティング中に存在する上記物品。
【請求項31】
(i)少なくとも1つの硬化部位を有するフルオロエラストマー;多オレフィン性架橋剤;アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシからなる群から選択された少なくとも1つの官能基を有するオキシシラン、ならびに該オキシシランの少なくとも1種の加水分解物および縮合物;ならびにフリーラジカル重合開始剤がその中に溶解された溶剤であって;少なくとも約20%であるが100%未満の非反応性置換基で官能化された反応性シラノールを有する複数の固体ナノシリカ粒子がその中に懸濁されている溶剤を含む液体混合物を調製する工程、
(ii)上記液体混合物のコーティングを基材上に塗布して、液体混合物コーティングを基材上に形成する工程、
(iii)上記溶剤を上記液体混合物コーティングから除去して、未硬化のコーティングを上記基材上に形成する工程、ならびに
(iv)上記未硬化のコーティングを硬化させ、これにより、反射防止コーティングを上記基材上に形成する工程
を含む反射防止コーティングを基材上に形成する方法。
【請求項32】
複数の固体ナノシリカ粒子が、基材に実質的に隣接する反射防止コーティング中に存在する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
コーティングを塗布する工程がマイクログラビアコーティングによりワンパスで実施される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
約1.3%未満のRVISおよび方法1による擦過の後に、方法4により測定される10またはそれ以下の擦傷%を有する反射防止コーティング。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−545652(P2009−545652A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−522887(P2009−522887)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2007/017362
【国際公開番号】WO2008/019078
【国際公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】