説明

低摩擦ロール

【課題】ロール1および回転軸受2a、2bを備えたロールアセンブリを提供すること。
【解決手段】本発明では、繊維複合材料による強化物を含むロール1が提供される。この強化物はロール1の内部に配置される。この強化物は、回転軸受2a、2b間に配置され、曲げ応力に対してロール1が強化されるように設計される。ロールアセンブリは、その慣性モーメントが小さくなり、剛性が高くなるように最適化され、そのため、不具合が生じた際にロールアセンブリをより素早く停止することができ、動作状態でロールのたわみが小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷プレス機、特に輪転印刷機で使用するロールアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
輪転印刷機では、多数の偏向用ロールを使用する。これらの偏向用ロールは、能動的に駆動されず、また能動的に停止することができない。不具合が生じた際には(例えば、紙が破れた場合)、輪転印刷機を停止しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
輪転印刷機は、比較的速い紙送り速度(例えば、1,000m/分、すなわち18m/秒)で動作することが多く、停止手順に比較的長い時間を要し、かなりの量の紙が無駄になる(100mを超える紙が無駄になることもある)。
印刷機で、特に輪転印刷機で使用されているロールアセンブリの設計は、現況技術で様々なものが知られている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つのロールおよび2つの回転軸受を含むロールアセンブリ。本発明で提供されるロールは、ロール内に配置される繊維複合強化物を含む。この強化物は、好ましくは、回転軸受間に位置し、曲げ応力に対してロールが強化されるように設計される。
【0005】
繊維複合材料による強化物の設計は異なるものとし得る。例えば、強化物は、ロール内部にぴったり合うように押しつけられた、繊維複合材料でできたパイプとし得る。あるいは、またはそれに加えて、強化物は、ロール軸に平行に延び、ロール内で放射状に構成された繊維複合材料のストリップとし得る。ストリップを用いる場合、アセンブリには、繊維複合ストリップを内側から支える支持パイプを設けることもできる。
【0006】
繊維複合材料による強化物により、ロールアセンブリの剛性が増し、それと同時に、強化物を伴うロールの慣性モーメントが比較的小さくなる。これは、不具合が生じた際に、本発明に従って設計されたロールおよび/または1つまたは複数のロールを備える輪転印刷機を、現況技術によるロールアセンブリで可能な停止速度よりも速く停止することができることを意味する。ここで、破断力はペーパーウェブを介して伝達される。
【0007】
本発明により、強化物はさらに、ペーパーウェブの力によって生じるロールのたわみを最小限に抑えて、ロールによる偏向によってペーパーウェブが部分的に伸びないようにする。これは、たわみが大きい場所でペーパーウェブが移動しなければならない距離が、たわみが小さい場所での距離よりも短いからである。
【0008】
ロールアセンブリの回転軸受は、ロールの全長にわたって延びる(静止)シャフト上に配置することができる。回転軸受は、好ましくは、ロールの一方の端部にある。静止シャフトにより、回転軸受が有利に支持され、ロールアセンブリを固定するシャフトの端点は、曲げ応力を吸収しなくてすむ。
【0009】
あるいは、回転軸受は、互いに離間したシャフト部分に配置してもよい。こうすると、アセンブリの組立がより難しくなることがあり、シャフト部分も曲げ応力を吸収する必要があるという欠点があるが、動作中にロールとともに回転する強化ストリップが、連続した静止シャフトが邪魔にならないので、中心の先まで延びることができるという利点がある。
【0010】
本発明に従って、ロールアセンブリ全体を最適化して、たわみを最小限に抑えた。こうするために、ロールの長さ、回転軸受の位置、ロールの壁厚、および繊維複合材料による強化物のすべてを考慮した。回転軸受の半径方向動作ラインからロールの端部までの距離と、ロールの全長との好ましい比は、0.015〜0.05の範囲、特に0.03〜0.04の範囲、特に厳密に0.035か、またはそれに近い値とした。ロールの外径とロールの全長との比は、好ましくは、0.03〜0.1の範囲、特に0.04〜0.7の範囲、特に約0.05〜0.06の範囲、好ましくは厳密に0.54か、またはそれに近い値である。回転軸受間のロールの壁厚と、ロールの外径との比は、0.01〜0.08の範囲、特に0.02〜0.06の範囲、特に約0.015〜0.04の範囲、好ましくは厳密に0.03か、またはそれに近い値である。回転軸受間の領域における繊維複合パイプの壁厚と、ロールの壁厚との比は、0.2〜1.0の範囲、特に0.5〜0.9の範囲、特に約0.6〜0.8の範囲、好ましくは厳密に0.71か、またはそれに近い値である。
【0011】
シャフトの両端には、好ましくは、ロールカバーを配置し、ロールカバーとロールの間に空隙を設ける。この空隙は、周方向全体にわたって存在し、その寸法は、0.3〜2mmの範囲、特に0.5〜1.8mmの範囲、特に0.9〜1.4mmの範囲、好ましくは厳密に1.25mmか、またはそれに近い値である。ロールカバーが静止しており、ロールが回転運動するので、ごみがロールの内部に入ることがない。
【0012】
繊維複合強化物に使用される材料は、マルチフィラメント炭素繊維またはポリアクリルニトリル系の繊維とし得る。これらの材料は、好ましくは、熱分解によって炭化させるか、あるいは、黒鉛化して超高弾性率(UHM)繊維にする。これらの繊維は、基材に、特に熱硬化性基材または樹脂基材(典型的にはエポキシ樹脂)に埋め込むことができる。
【0013】
これらの繊維は、好ましくは、強化物全体において、(ロールシャフトに関して)長手方向を向いている。ストリップを使用する場合、これらの繊維は、長手方向に対して30〜60度傾けることもできるし、場合によっては横方向に向けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態によるロールの縦断面図である。
【図2】図1に示す実施形態によるロールの横断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態によるロールの縦断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態によるロールの縦断面図である。
【図5】図4に示す実施形態によるロールの横断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態によるロールの縦断面図である。
【図7】図6に示す実施形態によるロールの横断面図である。
【図8】本発明の第5実施形態によるロールの縦断面図である。
【図9】図8に示す実施形態によるロールの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2に、本発明の第1実施形態によるロールの縦断面図および横断面図を示す。図に示すロールアセンブリには、ロール1および2つの回転軸受2a、2bが示されている。本発明によるロール1には、ロール1の内部に配置された繊維複合材料による強化物が示されている。この強化物は、好ましくは、回転軸受2a、2b間に配置し、曲げ応力に対してロール1が強化されるように構成する。
【0016】
図1に示す実施形態では、この強化物は、ロール1の内部にぴったり収まる繊維複合物からなるパイプ3で構成される。すでに述べたように、この強化物によりロールアセンブリの剛性が高められ、それと同時に、強化物を伴うロールの慣性モーメントが比較的小さくなる。したがって、ロールおよび/または1以上の本発明のロールアセンブリを含む輪転印刷機は、不具合が生じた際に、現況技術で可能な停止速度よりも速く停止することができ、その際、破断力はペーパーウェブを介して伝達される。この強化物はさらに、ペーパーウェブの力によって生じるロールのたわみを最小限に抑えて、たわみによってペーパーウェブが部分的に延びないようにする。変形が大きい場所でペーパーウェブが移動しなければならない距離が、変形が小さい場所での距離よりも短いからである。
【0017】
図1では、ロールアセンブリの回転軸受2a、2bは、ロールの全長にわたって延びる静止シャフト8に装着されている。回転軸受2a、2bは、ロールの両端、すなわち、ロールの右側および左側に配置されている。静止軸があると、これらの回転軸受を有利に支持することができ、ロールアセンブリを固定するシャフトの端点は、曲げ応力を吸収しなくてすむ。
【0018】
本発明では、たわみを最小限に抑えるようにロールアセンブリ全体が最適化された。これを行う際、ロールの長さ、回転軸受の位置、ロールの壁厚、および繊維複合物による強化物を考慮に入れた。こうするにあたって、回転軸受の半径方向動作ラインからロール端までの距離と、ロールの全長との比を約0.035と決めると有利である。最も有利には、ロールの外径と、ロールの全長との比は約0.54である。回転軸受間の領域におけるロールの壁厚と、ロールの外径との比は約0.03である。回転軸受間の領域の繊維複合物からなるパイプの壁厚と、ロールの壁厚との比は約0.71である。
【0019】
好ましくは、シャフトの両端に設けられるのは、ロールカバー10a、10bであり、ロールカバー10a、10bとの間に空隙11を有する。この空隙は、周方向全体にわたって存在し、その寸法は約1.25mmである。ロールカバーが静止しており、ロールが回転することにより、ロールアセンブリの内部にごみが入らないという効果が得られる。
【0020】
図3に、本発明の第2実施形態によるロールアセンブリの縦断面図を示す。この実施形態は、シャフトが連続していない点を除いて第1実施形態と同じである。その代わりに、回転軸受2a、2bは、互いに離間したシャフト部分9a、9bに対して構成される。
【0021】
図4および図5に、本発明の第3実施形態によるロールアセンブリの縦断面図および横断面図を示す。この実施形態は第2実施形態と同じだが、補強物として、繊維複合物からなるストリップ4が示されている。ストリップ4は、ロール軸に平行に延び、ロール1の内部で放射状に構成される。
【0022】
図5に示すように、これらのストリップは、ロールの中心を越えて延在する。すでに述べたように、こうすると、組立に、より労力を要することがある点で、かつ、シャフトが連続していないためにシャフト部分も曲げ応力を吸収しなければならない点で不利であるが、動作時にロールとともに回転するストリップ4により強化効果が高くなる点で有利である。
【0023】
図6および図7に、本発明の第4実施形態によるロールアセンブリの縦断面図および横断面図を示す。この実施形態でも、ストリップ6が設けられているが、ここでは、ストリップ6はロールの中心を越えて延在していない。このストリップ6による強化物の場合、追加の支持パイプ5が設けられており、それによって、繊維複合物からなるストリップ6が内側から支持されている。この支持パイプも繊維複合物からなるものとし得る。第1実施形態と同様に、パイプ3をさらに設けてもよい。
【0024】
図8および図9に、本発明の第5実施形態によるロールアセンブリの縦断面図および横断面図を示す。この実施形態には、繊維複合物からなるパイプは示されておらず、繊維複合物からなるストリップ7だけが強化物として示されている。
【0025】
繊維複合強化物の材料は、マルチフィラメント炭素繊維またはポリアクリルニトリル系の繊維とし得る。これらの材料は、好ましくは、熱分解によって炭化させるか、あるいは、黒鉛化により精製して超高弾性率(UHM)繊維にする。これらの繊維は、基材に、特に熱硬化性基材または樹脂基材(典型的にはエポキシ樹脂)に埋め込むことができる。
【0026】
これらの繊維は、好ましくは、強化物全体において、(ロール軸に関して)長手方向を向いている。ストリップを使用する場合、これらの繊維は、上記に代えて、または上記に加えて、長手方向に対して30〜60度傾けることもできるし、横方向に構成してもよい。
【0027】
上記のいずれの実施形態でも、基材またはエポキシが未硬化の状態で強化物を挿入することができる。こうすると、強化物とロールの間の結合が強くなる。あるいは、強化物を事前に成型し、その後、ロール内に挿入し、接着することができる。
【0028】
組立後、ロールはバランスがとれているが、必要に応じて、バランスウェイトを追加し、適切な位置でロールに接着する。
【0029】
上記の実施形態では、玉軸受として回転軸受を示したが、摩擦軸受または空気軸受を使用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 ロール
2a、2b 回転軸受
3 パイプ
4 ストリップ
5 支持パイプ
6 ストリップ
7 ストリップ
8 静止シャフト
9a、9b シャフト部分
10a、10b ロールカバー
11 空隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのロール(1)および2つの回転軸受(2a、2b)を備えるロールアセンブリであって、
前記ロール(1)は、前記ロール(1)の内部に形成された繊維複合物による強化物を含む
ことを特徴とするロールアセンブリ。
【請求項2】
前記繊維複合強化物は、前記回転軸受(2a、2b)間に配置され、曲げ応力に対して前記ロール(1)が強化されるように構成されることを特徴とする請求項1に記載のロールアセンブリ。
【請求項3】
前記強化物は、繊維複合材料でできたパイプ(3)を含み、
前記パイプ(3)は、前記ロール(1)の内側に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロールアセンブリ。
【請求項4】
前記強化物は、繊維複合材料からなるストリップ(4, 6, 7)を含み、
前記ストリップ(4, 6, 7)は、ロール軸に平行に延び、前記ロール(1)の内部で半径方向に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項5】
前記強化物は、前記繊維複合材ストリップを内側から支える支持パイプ(5)を含むことを特徴とする請求項4に記載のロールアセンブリ。
【請求項6】
前記回転軸受(2a、2b)は、前記ロールの全長にわたって延びるシャフト(8)に装着されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項7】
前記回転軸受(2a、2b)は、互いに離間したシャフト部分(9a、9b)に装着されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項8】
前記回転軸受(2a、2b)は、前記ロールのそれぞれの端部に配置されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項9】
前記回転軸受の半径方向動作ラインの距離と、前記ロールの全長との比は、0.015〜0.05の範囲、特に0.03〜0.04の範囲、特に約又は厳密に0.035であることを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項10】
前記ロールの外径と、前記ロールの全長との比は、0.03〜0.1の範囲、特に0.04〜0.7の範囲、特に約又は厳密に0.05〜0.06であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項11】
前記回転軸受間の領域における前記ロールの壁厚と、前記ロールの外径との比は、0.01〜0.08の範囲、特に0.02〜0.06の範囲、特に約0.015〜0.04の範囲にあることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項12】
前記回転軸受間の領域における前記繊維複合パイプの壁厚と、前記ロールの壁厚との比は、0.2〜1.0の範囲、特に0.5〜0.9の範囲、特に約0.6〜0.8の範囲であることを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項13】
前記シャフトの端部にロールカバー(10a、10b)が配置され、前記ロールカバー(10a、10b)と前記ロールの間に空隙(11)を有することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載のロールアセンブリ。
【請求項14】
前記空隙は周方向全体にわたって存在し、そのサイズは、0.3〜2mm、特に0.5〜1.8mm、特に0.9〜1.4mmであることを特徴とする請求項13に記載のロールアセンブリ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の1以上のロールアセンブリによって特徴づけられる印刷機、特に輪転印刷機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−21746(P2011−21746A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146202(P2010−146202)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(509035266)テクスマーク・ゲーエムベーハー・フェアトリープスゲゼルシャフト (5)
【Fターム(参考)】