説明

低温における改善された耐衝撃性を有する熱硬化性エポキシ樹脂組成物

本発明は、1分子当たり平均して1より多いエポキシド基を含む、少なくとも1種のエポキシド付加物A、式(I)の少なくとも1種のポリマーB、非拡散性担体材料中の尿素誘導体をベースとする少なくとも1種のチキソトロープ剤C、および高温で活性化される、エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤D、を含む組成物に関する。前記組成物は、特に接着剤として使用され、特に低温における非常に高い衝撃はく離作用値が付与される。本発明はさらに、エポキシ樹脂組成物、特に2成分エポキシ樹脂組成物中の耐衝撃性を有意に向上させる、式(I)のエポキシド基を末端とする衝撃強度改良剤に関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、-40℃までの低温における高い耐衝撃性、および優れた機械的性質を同時に有し、特に1成分型接着剤、および低温におけるエポキシ樹脂のための衝撃改良剤として使用することができる熱硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車および付加部品、ならびに機械およびデバイスの両者の製造において、高品質接着剤が、ねじ切り、リベット締め、パンチング、または溶接などの従来の接合方法の代わりに、あるいはそれらと組み合わせて、増大する頻度で使用されている。このことは、例えば複合材料およびハイブリッド材料の製造に対して、製造における利点および新規の可能性、または構成要素の設計におけるより大きな自由裁量の範囲を生み出す。自動車製造における用途に対しては、接着剤は使用される基材すべて、特に電解により亜鉛めっきされ、溶融亜鉛めっきされ、続いてリン酸で処理された鋼板、油で処理された鋼板および種々の、任意に表面処理されたアルミニウム合金、に優れた接着力を有しなければならない。これらの優れた接着性は、特にエージング(気候サイクル、塩水噴霧浴等)後も品質の重大な劣化なしに保持されなければならない。接着剤が自動車の組立て中、ボディーシェル用接着剤として使用される場合は、これらの接着剤のクリーニング浴およびディップコーティング(いわゆる耐洗浄性)への耐性が、製造者の工程の信頼性が保障されることを可能にするためには非常に重要である。
【0003】
ボディーシェル組立用接着剤は、理想的には180℃で30分の通例の焼付け条件で硬化されなければならない。しかし、これらはさらに約220℃まで耐性がなければならない。こうした硬化された接着剤、または接着接合に対するさらなる要求事項は、約90℃までの高温、および約-40℃までの低温の両方における運転上の安全を保証することである。これらの接着剤は構造用接着剤であり、したがってこれらの接着剤は構造用部品を接着接合しているので、接着剤の高い強度および耐衝撃性が非常に重要である。
【0004】
従来のエポキシ接着剤は、高い機械的強度、特に、高い引張強度を特徴とすることは確かである。しかし、接着接合が衝撃による応力を受けた場合、旧来のエポキシ接着剤は、一般にもろ過ぎて、したがって特に自動車工業では、大きな引張応力および引裂応力が共に生じる衝突条件下で上記要求事項を満たすことができるにはほど遠い。これに関連して、特に高温における、それより特に低温における(<-10℃)強度がしばしば不十分である。
【0005】
文献には、エポキシ接着剤の脆性を減少させ、それにより耐衝撃性を向上させることを可能にする実質上2つの方法が提案されている。第1に、この目的は、コア/シェルポリマーのラテックスまたはその他の柔軟化ポリマーおよびコポリマーなどの、少なくとも一部が架橋した高分子量化合物を混合することにより達成され得る。第2に、柔軟なセグメントを導入することにより、例えばエポキシド成分の対応する変性により靭性をいくらか増加させることによっても達成され得る。
【0006】
米国特許第5290857号明細書の教示に対応する第1に述べた方法によれば、エポキシドマトリックス中に微細な粉末状コア/シェルポリマーを混合することにより、エポキシ樹脂をより耐衝撃性にすることができる。このことにより剛性の脆いエポキシドマトリックス中に、衝撃強度を向上させる高弾性ドメインが生じる。こうしたコア/シェルポリマーは、米国特許第5290857号明細書に記載されており、アクリレートまたはメタクリレートポリマーをベースとしている。
【0007】
第2に述べた方法によれば、米国特許第4952645号明細書に、脂肪族、脂環式または芳香族カルボン酸、特に二量体または三量体の脂肪酸と、カルボン酸を末端とする脂肪族ジオールまたは脂環式ジオールとの反応によって柔軟化されたエポキシ樹脂組成物が記載されている。こうした組成物は、特に低温における向上した柔軟性を特徴とするものである。
【0008】
欧州特許第0343676号明細書には、ポリウレタン-エポキシド付加物を含む反応性ホットメルトエポキシ接着剤が記載されている。プレポリマーの末端イソシアネート基を、ヒドロキシル基を含み且つ2個を超えるOH官能基を有する少なくとも1種のエポキシ樹脂と反応させると、室温で固体のホットメルト接着剤が得られる。
【0009】
エポキシ樹脂は、合成ゴムおよびその誘導体などのエラストマーで柔軟化され得ることも知られている。強靭性および弾性を付与することに関連する主な効果は、エポキシ樹脂と対応する誘導体化された合成ゴムの一部のみの混和性に基づき、その結果、製造工程で形成するコア/シェルポリマーに匹敵する効果を有する異種(ヘテロ)分散相となる。しかし、この超構造を確立することは、量的組成および硬化工程中の手順の両方に大いに左右される。この結果、継続的に一定の品質を達成することが非常に困難である。
【特許文献1】米国特許第5290857号明細書
【特許文献2】米国特許第4952645号明細書
【特許文献3】欧州特許第0343676号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、低温における使用に特に適した、エポキシ樹脂組成物用の新規の衝撃改良剤を提供することである。これらの衝撃改良剤は、室温で安定な、1成分型の熱硬化性組成物、特に接着剤およびホットメルト接着剤として適していることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことには、このことは、エポキシド基を末端とし、一般式(I):
【0012】
【化1】

【0013】
[式中、X1は、O、SまたはNHであり;
Y1は、末端アミノ、チオールまたはヒドロキシル基を除去した後の反応性ポリマーのn価の基であり;
Y2は、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネートの2価の基であるか、
あるいは、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネートの三量体またはビウレットの3価の基であり;
Y3は、ヒドロキシドおよびエポキシド基除去後の、第1級または第2級ヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)エポキシドの基であり;
qは1、2または3であり;mは1または2であり;nは2、3または4である。]
の高分子化合物を使用することにより達成し得ることを見出した。
【0014】
式(I)のこのポリマーは、優れた衝撃改良剤であることを見出した。本発明の特定の態様は、1分子当たり平均して1より多いエポキシド基を有する、少なくとも1種のエポキシド付加物A、および式(I)の少なくとも1種のポリマーB、および非拡散性担体材料中の尿素誘導体をベースとする、少なくとも1種のチキソトロープ剤C、および高温で活性化される、エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤Dを含む組成物に関する。この組成物は、特に接着剤として機能し、特に低温におけるきわめて高い動的引裂抵抗性を有する。
【0015】
好ましい実施形態にしたがい、少なくとも1種の充填剤E、および/または少なくとも1種の反応性希釈剤Fをさらに含む組成物をさらに説明する。
【0016】
本発明はさらに、エポキシド基を末端とする式(I)の衝撃改良剤に関する。これらの新規の衝撃改良剤は、エポキシ樹脂組成物、特に1成分型熱硬化性エポキシ樹脂組成物および2成分型エポキシ樹脂組成物における耐衝撃性の有意な向上をもたらすことを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、1分子当たり平均して1より多いエポキシド基を有する、少なくとも1種のエポキシド付加物A、式(I)の少なくとも1種のポリマーB、非拡散性担体材料中の尿素誘導体をベースとする、少なくとも1種のチキソトロープ剤C、および高温で活性化される、エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤Dを含む組成物に関する。
【0018】
上記エポキシド付加物Aは、エポキシド付加物A1またはエポキシド付加物A2である。
【0019】
エポキシド付加物A1は、少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のジグリシジルエーテルの反応から得られる。エポキシド付加物A2は、少なくとも1種のビス(アミノフェニル)スルホン異性体または少なくとも1種の芳香族アルコールと、少なくとも1種のジグリシジルエーテルの反応から得られる。
【0020】
エポキシド付加物A1の調製に使用されるジカルボン酸は、好ましくは二量体脂肪酸である。C8〜C40ジカルボン酸である二量体C4〜C20脂肪酸は、特に適していることが判明している。
【0021】
ジグリシジルエーテルは、好ましくは液体樹脂、特にビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテルおよびビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテル(記号「A/F」とは、本明細書では、その調製において出発材料として使用される、アセトンとホルムアルデヒドの混合物を言う)である。これらの樹脂を調製する方法によれば、液体樹脂はより高い分子量の成分も含んでいることは明らかである。こうした液体樹脂は、例えばAraldite GY 250、Araldite PY 304、Araldit GY 282(Vantico社)またはD.E.R 331(Dow社)として入手できる。
【0022】
エポキシド付加物A1は、柔軟化特性を有する。
【0023】
エポキシド付加物A2は、少なくとも1種のビス(アミノフェニル)スルホン異性体または少なくとも1種の芳香族アルコールと、少なくとも1種のジグリシジルエーテルの反応により得られる。芳香族アルコールは、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(=ビスフェノールF)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロカテコール、ナフトキノン、ナフトレゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシビフェニル、3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタリド、5,5-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、ならびに上記化合物の異性体すべてからなる群から選択されることが好ましい。ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンは、特に好ましい芳香族アルコールとして適している。
【0024】
好ましいビス(アミノフェニル)スルホンの異性体は、ビス(4,-アミノフェニル)スルホンおよびビス(3-アミノフェニル)スルホンである。
【0025】
好ましいジグリシジルエーテルは、エポキシド付加物A1に対してすでに説明したジグリシジルエーテルである。
【0026】
エポキシド付加物A2は、剛性構造を有する傾向にある。
【0027】
エポキシド付加物A1およびエポキシド付加物A2が、請求項1に記載の組成物中に同時に存在することが特に好ましい。
【0028】
エポキシド付加物Aは、700〜6000g/モル、好ましくは900〜4000g/モル、特に1000〜3300g/モルの分子量を有することが好ましい。ここでおよび以降では、「分子量」とは、平均分子量Mnを意味するものと理解される。
【0029】
エポキシド付加物Aの調製は、当業者に公知の方法で実施される。付加物の形成に使用されるジグリシジルエーテル(1種または複数)の追加の量を、付加物形成の最後に加え、エポキシド付加物A予備混合物(プレミックス)として使用することが有利である。このエポキシド付加物Aにおいて、未反応ジグリシジルエーテル(1種または複数)の合計割合は、エポキシド付加物A予備混合物(プレミックス)の合計重量に対して12〜50重量%、好ましくは17〜45重量%である。
【0030】
ここでおよび以降では、「合計割合」とは、それぞれの場合において、このカテゴリーに属する成分すべての合計を意味するものと理解される。例えば、付加物形成中に2種の異なるジグリシジルエーテルが同時に存在する場合は、ジグリシジルエーテルの合計割合は、これらの2種のジグリシジルエーテルの合計を意味するものと理解される。
【0031】
さらに、エポキシド付加物A予備混合物の重量比は、全組成物の重量に対して有利には20〜70重量%、好ましくは35〜65重量%である。
【0032】
ポリマーBは、下記式(I)により表され得る。
【0033】
【化2】

【0034】
式中、X1は、O、SまたはNHである。Y1は、末端のアミノ、チオールまたはヒドロキシル基の除去後の反応性ポリマーのn価の基である。Y2は、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネートの2価の基、あるいは、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネートの三量体またはビウレットの3価の基である。Y3は、ヒドロキシドおよびエポキシド基除去後の、第1級または第2級ヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族またはアル脂肪族エポキシド基である。
【0035】
値q=1、2または3が指数qに適用され、値m=1または2がmに適用され、一方値n=2、3または4がnに適用される。
【0036】
式(I)のポリマーBは、例えば、下記反応RS1に従って、式(II)のイソシアネートを末端とするプレポリマーと式(III)のモノヒドロキシエポキシド化合物とを反応させることにより得られる。
【0037】
【化3】

【0038】
使用される式(II)のイソシアネートを末端とするプレポリマーは、反応RS2により、式(V)のポリイソシアネートとX1H基を有する式(IV)の化合物の反応生成物である。
【0039】
【化4】

【0040】
式(IV)のポリマーは基X1Hを有する。これらは、それぞれ互いに独立に、OH、SHまたはNH2であり得る。ヒドロキシル基が好ましい。
【0041】
式(IV)の好ましい化合物は、ポリオール類、例えば以下の市販されているポリオール類またはこれらの任意の所望の混合物である。
‐ ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエーテルポリオールともよばれ、これらは、例えば、水または2個または3個のOH基を有する化合物などの、2個または3個の活性水素原子を有する開始剤分子を用いて任意選択で重合された、エチレンオキシド、1,2-プロピレンオキシド、1,2-または2,3-ブチレンオキシド、テトラヒドロフランまたはこれらの混合物の重合生成物である。例えばいわゆる二重金属シアン化錯体触媒(略してDMC触媒)を用いて調製された、低不飽和度(ASTM D-2849-69に準拠して測定し、ポリオール1g当たりの不飽和のミリ当量で示された(ミリ当量/g))を有するポリオキシアルキレンポリオール類、および、例えばNaOH、KOHまたはアルカリ金属アルコラートなどのアニオン性触媒を用いて調製された、高不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールを共に使用し得る。0.02ミリ当量/g未満の不飽和度を有し、1000〜30000g/モルの範囲の分子量を有するポリオキシプロピレンジオールおよびポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシブチレンジオールおよびポリオキシブチレントリオール、400〜8000g/モルの分子量を有するポリオキシプロピレンジオールおよびポリオキシプロピレントリオール、ならびにいわゆる「EOでエンドキャップされた」(エチレンオキシドで末端キャップされた)ポリオキシプロピレンジオールまたはポリオキシプロピレントリオールが特に適している。後者のものは、例えばポリプロポキシル化の終了後に、純粋なポリオキシプロピレンポリオールをエチレンオキシドでアルコキシル化することにより得られ、それによって第1級ヒドロキシル基を有する、特別のポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオールである。
‐ ポリヒドロキシル末端ポリブタジエンポリオール。
‐ 例えば1,2-エタンジオール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセロール、1,1,1-トリメチロールプロパン、または上記アルコールの混合物などの2価または3価アルコールと、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸およびヘキサヒドロフタル酸、または上記の酸の混合物などの有機ジカルボン酸またはその無水物またはエステル、から調製されたポリエステルポリオール、ならびに例えばε-カプロラクトンなどのラクトンから得られたポリエステルポリオール、
‐ 例えば上記のアルコール(ポリエステルポリオールの合成に使用された)と、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネートまたはホスゲンとの反応により得られるポリカーボネートポリオール。
【0042】
式(IV)のポリマーは、600〜6000g/OH当量、好ましくは700〜2200g/OH当量のOH当量重量を有する、2官能性または、より多官能性のポリオールであることが有利である。ポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコールブロックポリマー、ポリブチレングリコール、ヒドロキシルを末端とするポリブタジエン、ヒドロキシル末端のポリブタジエン-コ-アクリロニトリル、ヒドロキシル末端の合成ゴムおよびこれらの示されたポリオールの混合物からなる群から選択されることがさらに有利である。
【0043】
さらに、2官能性またはより多官能性の、アミン末端のポリエチレンエーテル、ポリプロピレンエーテル、ポリブチレンエーテル、ポリブタジエン、ポリブタジエン/アクリロニトリル、およびにさらにアミン末端の合成ゴム、あるいは前記成分の混合物も式(IV)のポリマーとして使用し得る。
【0044】
アミノ、チオール、または好ましくはヒドロキシル基を末端とする、C2〜C6アルキレン基を有する、あるいは混合C2〜C6アルキレン基を有するα,ω-ポリアルキレングリコールは、式(IV)のポリマーとして特に好ましい。ヒドロキシル基を末端とするポリオキシブチレンは特に好ましい。
【0045】
式(V)のポリイソシアネートは、ジイソシアネートまたはトリイソシアネートである。適したジイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネート、特に市販されている製品、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)、トリデンジイソシアネート(TODI)、イソホロンジイソシアネート(IBDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2,5-または2,6-ビス(イソシアナトメチル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ジシクロヘキシルメチルジイソシアネート(H12MDI)、p-フェニレンジイソシアネート(PPDI)、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等、ならびにその二量体などである。HDI、IPDI、MDIまたはTDIが好ましい。適したトリイソシアネートは、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネートの三量体またはビウレット、特に上述したジイソシアネートのイソシアヌレートおよびビウレットである。
【0046】
Y1に対するさらなる可能性には、X1H基の除去後の、分子の鎖伸長された基が含まれ、これらは、公式にはすでに上述したジオールおよびトリオールならびに/またはジアミンもしくはトリアミンと、すでに述べたジイソシアネートまたはトリイソシアネートとの間の、式RS2と類似の反応によって得られる。式RS2のt、または化学量論比を変化させることにより、これについて2つの可能性がある。
【0047】
第1に、NCO基に対して過剰なX1H基により、異なる長さの鎖を有するOH官能性ポリマーを得ることができる。こうした鎖伸長された式(IV)のポリオールまたはポリアミンは、鎖中にウレタン基または尿素基を含んでおり、他のジイソシアネートまたはトリイソシアネートとさらに反応することができ、その結果、式(II)のポリマーが形成される。
【0048】
第2に、NCO基に対して過剰なX1H基により、異なる長さの鎖を有する式(II)のNCO官能性ポリマーを得ることができる。
【0049】
式(II)のこれらの鎖伸長されたポリマーの鎖長および架橋度は、比[X1H]/[NCO]に大きく左右される。この比が1により接近するほど鎖はより長くなる。長過ぎる鎖または高すぎる架橋度により、もはや使用不可能なポリマーとなることは、当業者には明らかである。
【0050】
ジオールまたはジアミン、およびジイソシアネートは、鎖伸長には特に好ましい。式(II)のモノヒドロキシ-エポキシド化合物は、1個、2個または3個のエポキシド基を有する。このモノヒドロキシ-エポキシド化合物(II)のヒドロキシル基は、第1級または第2級ヒドロキシル基であり得る。
【0051】
式(III)のモノヒドロキシル含有エポキシドの相当量を、かくして得られた末端イソシアネートの反応のために使用することができる。しかし、比[OH]/[NCO]=1に相当するr=m・nによって式RS1中で与えられる化学量論比から外れることも可能である。比[OH]/[NCO]は0.6〜3.0、好ましくは0.9〜1.5、特に0.98〜1.1である。
【0052】
反応方法に応じて、対応するモノヒドロキシ-エポキシド化合物はまた、多官能性アルコールとエピクロロヒドリンの反応において、様々な濃度で副生成物として形成される。前記モノヒドロキシ-エポキシド化合物は、通常の分離操作により単離することができる。しかし原則として、ポリオールのグリシジル化反応で得られ、かつ完全におよび部分的に反応してグリシジルエーテルとなったポリオールを含む生成物の混合物を使用することで充分である。こうしたヒドロキシル含有エポキシドの例は、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル(トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中の混合物として含まれる)、グリセリルジグリシジルエーテル(グリセリルトリグリシジルエーテル中の混合物として含まれる)、ペンタエリスリチル(pentaerythrityl)トリグリシジルエーテル(ペンタエリスリチルテトラグリシジルエーテル中の混合物として含まれる)である。通例、調製されたトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中に比較的高い割合で生成するトリメチロールプロパンジグリシジルエーテルを使用することが好ましい。
【0053】
しかし、その他の類似のヒドロキシル含有エポキシド、特にグリシドール、3-グリシジルオキシベンジルアルコールまたはヒドロキシメチルシクロヘキセンオキシドも使用することができる。式(VI)のβ-ヒドロキシエーテル:
【0054】
【化5】

【0055】
(これは、ビスフェノールA(R=CH3)とエピクロロヒドリンから調製された、市販の液体エポキシ樹脂に約15%の量で含まれる)、ならびにビスフェノールF(R=H)、またはビスフェノールAとビスフェノールFの混合物と、エピクロロヒドリンとの反応で形成される対応するβ-ヒドロキシエーテルは、さらに好ましい。
【0056】
さらに、(ポリ)エポキシドと、カルボン酸、フェノール類、チオールまたはsec-アミンなどの、化学量論量未満の1官能性求核剤との反応により調製された、β-ヒドロキシエーテル基を有する非常に異なるエポキシドも使用することができる。
【0057】
式(III)のモノヒドロキシ-エポキシド化合物の遊離の第1級または第2級OH官能基は、この目的のために不相応に過剰量のエポキシド成分を使用しなければならないことなしに、プレポリマーの末端イソシアネート基との効率的な反応を可能にする。
【0058】
ポリマーBは、弾性を有することが有利であり、さらにエポキシ樹脂に可溶性または分散性であることが有利である。
【0059】
ポリマーBは、必要に応じておよび生じた粘度に応じて、さらなるエポキシ樹脂で希釈されうる。ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールA/Fのジグリシジルエーテルのみならず、以下に記載され、エポキシド基を含む反応性希釈剤F、特にヘキサンジオールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルはこの目的に対して好ましい。ポリマーBの合計割合は、全組成物の重量に対して有利には、5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%である。
【0060】
本組成物はさらに、非拡散性担体材料中の尿素誘導体をベースとする、少なくとも1種のチキソトロープ剤Cを含んでいる。こうした尿素誘導体および担体材料の調製は、欧州特許出願公開EP1152019A1に詳細に記載されている。この担体材料は、3官能ポリエーテルポリオールとIPDIとの反応、および、それに続いて末端イソシアネート基をカプロラクタムによりブロックすることにより特に得られた、ブロックポリウレタンプレポリマーC1であることが有利である。
【0061】
尿素誘導体は、芳香族単量体ジイソシアネートと脂肪族アミン化合物との反応生成物である。複数の異なる単量体ジイソシアネートを1種または複数の脂肪族アミン化合物と、あるいはある単量体ジイソシアネートを複数の脂肪族アミン化合物と反応させることも全く可能である。4,4'-ジフェニルメチレンジイソシアネート(MDI)とブチルアミンとの反応生成物は、特に有利であることが判明している。
【0062】
チキソトロープ剤Cの合計割合は、全組成物の重量に対して有利には5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%である。上記尿素誘導体の割合は、チキソトロープ剤Cの重量に対して有利には5〜50重量%、好ましくは15〜30重量%である。
【0063】
本発明による組成物はさらに、エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤Dを含んでおり、硬化剤は高温により活性化される。これは、ジシアンジアミド、グアナミン類、グアニジン類、アミノグアニジン類およびその誘導体からなる群から選択される硬化剤が好ましい。3-クロロ-4-メチルフェニル尿素(クロロトルロン)またはフェニルメチル尿素、特にp-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(モニュロン)、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素(フェニュロン)、または3,4-ジクロロフェニル-N,N-ジメチル尿素(ジウロン)などの、触媒的に活性な置換された尿素がさらに可能である。イミダゾールとアミン錯体からなるこのクラスの化合物がさらに使用されうる。ジシアンジアミドが特に好ましい。
【0064】
硬化剤Dの合計割合は、全組成物の重量に対して有利には1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%である。
【0065】
好ましい実施形態では、組成物はさらに少なくとも1種の充填剤Eを含んでいる。これは、雲母、タルク、カオリン、珪灰石、長石、緑泥石、ベントナイト、モンモリロナイト、炭酸カルシウム(沈降法または粉砕法)、ドロマイト、石英、シリカ(熱分解法または沈降法)、クリストバライト、酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、中空のセラミック球、中空のガラス球、中空の有機球、ガラス球または着色顔料が好ましい。当業者には知られている、有機物で被覆されたおよび被覆されていない市販されている形態の両方が、充填剤Eによって意味される。
【0066】
合計充填剤Eの合計割合は、全組成物の重量に対して有利には5〜30重量%、好ましくは10〜20重量%である。
【0067】
他の好ましい実施形態では、組成物は、エポキシド基を有する少なくとも1種の反応性希釈剤Fを含んでいる。これらの反応性希釈剤Fは特に次のものである。
− 1官能性の飽和または不飽和、分枝または直鎖、環式または非環式C4〜C30アルコールのグリシジルエーテル、例えばブタノールグリシジルエーテル、ヘキサノールグリシジルエーテル、2-エチルヘキサノールエーテル、アリルグリシジルエーテル、テトラヒドロフルフリルグリシジルエーテルおよびフルフリルグリシジルエーテル、トリメトキシシリルグリシジルエーテル等。
− 2官能性の飽和または不飽和、分枝または直鎖、環式または非環式C2〜C30アルコールのグリシジルエーテル、例えばエチレングリコールグリシジルエーテル、ブタンジオールグリシジルエーテル、ヘキサンジオールグリシジルエーテル、オクタンジオールグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル等。
− 3官能性または多官能性の飽和または不飽和、分枝または直鎖、環式または非環式アルコールのグリシジルエーテル、例えば、エポキシ化ヒマシ油、エポキシド化トリメチロールプロパン、エポキシド化ペンタエリトリトールなど、あるいは、ソルビトール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル等。
− フェノールおよびアニリン化合物のグリシジルエーテル、例えば、フェニルグリシジルエーテル、クレゾールグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェノールグリシジルエーテル、(カシューナッツ殻油からの)3-n-ペンタデセニルグリシジルエーテル、N,N-ジグリシジルアニリン等。
− エポキシド化第3級アミン、例えば、N,N-ジグリシジルシクロヘキシルアミン等。
− エポキシド化モノカルボン酸またはジカルボン酸、例えば、グリシジルネオデカノエート、グリシジルメタクリレート、グリシジルベンゾエート、ジグリシジルフタレート、ジグリシジルテトラヒドロフタレートおよびジグリシジルヘキサヒドロフタレート、二量体脂肪酸のジグリシジルエステル等。
− エポキシド化した2官能性または3官能性の、低分子量から高分子量ポリエーテルポリオール、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等。
【0068】
ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0069】
エポキシド基を有する反応性希釈剤Fの合計割合は、全組成物の重量に対して有利には1〜7重量%、好ましくは2〜6重量%である。
【0070】
本発明による組成物は、1成分型接着剤として少なくとも首尾良く適していることを見出した。特に、比較的高温および特に低温、とりわけ0℃〜-40℃、の両方で高い耐衝撃性を特徴とする熱硬化性1成分型接着剤が、それによって達成され得る。こうした接着剤は、熱安定性材料の接着接合に要求される。熱安定性材料とは、100〜220℃、好ましくは120〜200℃の硬化温度で、少なくとも硬化時間中は寸法が安定な材料を意味するものと理解される。これらは、特に金属、およびABS、ポリアミド、ポリフェニレンエーテルなどのプラスチック、SMC、不飽和ポリエステルガラス繊維強化プラスチック、複合エポキシドまたはアクリレート材料などの複合材料である。少なくとも1つの材料が金属である使用が好ましい。特に自動車工業におけるボディーシェル組立てで、同じまたは異なる金属を接着接合させることは、特に好ましい用途であると考えられる。好ましい金属は、特に鋼、とりわけ、電解により亜鉛めっきされた鋼、溶融亜鉛メッキされた鋼、油で処理された鋼、ボナジンク(bonazinc)で被覆された鋼、および引き続いてリン酸で処理された鋼、ならびにアルミニウムであり、特に自動車の組立てにおいて典型的に現れる形態のものである。
【0071】
特に、高い衝突強度と高および低使用温度の所望の組合せを、本発明による組成物に基づく接着剤により達成することができる。
【0072】
こうした接着剤を、先ず、接着接合される材料に10℃〜80℃、特に10℃〜60℃の温度で接触させ、次いで典型的には100〜220℃、好ましくは120〜200℃の温度で硬化させる。
【0073】
もちろん、熱硬化性接着剤に加えて、シーリングコンパウンドまたはコーティングも、本発明による組成物により実現できる。さらに、本発明による組成物は、自動車の組立てのみならず他の分野の用途にも適している。船舶、トラック、バスまたは鉄道車両などの輸送手段の組立て、あるいは、例えば洗濯機などの消費財の組立てに関連した用途は特に明らかである。
【0074】
本発明による組成物を使って接着接合された材料は、典型的には100℃〜-40℃、好ましくは80℃〜-40℃、特に50℃〜-40℃の温度で使用される。
【0075】
この組成物は、0℃で10Jを超え、好ましくは-40℃で1.0Jを超える、DIN 11343に準拠して測定した破壊エネルギーを典型的には有する。0℃で11.5Jを超え、-40℃で1.5Jを超える破壊エネルギーが特に好ましい。
【0076】
本発明による組成物に基づくホットメルト接着剤も、特別の方法で実現することができる。この場合は、エポキシド付加物Aの場合に形成されるヒドロキシル基を、ポリイソシアネートまたはポリイソシアネートプレポリマーとさらに反応させる。それにより粘度が増加し、加熱して適用することが必要である。
【0077】
本発明の他の態様は、エポキシド基を末端とする式(I)の新規の衝撃改良剤に関するものであり、その詳細な構成および調製方法をすでに先に説明した。
【0078】
エポキシド基を末端とする式(I)のこれらの衝撃改良剤を、エポキシ樹脂を含む組成物に加えることができることを見出した。これらは、すでに説明した熱硬化性1成分型組成物に加えて、2成分型または多成分型エポキシ樹脂組成物の場合にも、特にその第2成分がアミン硬化剤またはポリアミン硬化剤であるものに対して非常に適している。エポキシド基を末端とする式(I)の衝撃改良剤が、硬化成分に加えられて1種または複数の付加物が形成されるか、あるいはエポキシ樹脂を含む成分に加えられることが好ましい。さらに、好ましさは減るが可能性としては、エポキシド基末端の衝撃改良剤を適用中に直接添加すること、あるいは適用中に第3成分またはさらなる成分として添加することがある。
【0079】
こうした2成分型または多成分型エポキシ樹脂組成物の硬化温度は、10℃〜60℃、特に15℃〜50℃が好ましい。エポキシド基を末端とする式(I)の衝撃改良剤は、2成分型エポキシ樹脂接着剤への添加剤として特に適している。この場合は、耐衝撃性の向上は低温に限定されない。
【0080】
これらの組成物、特に接着剤は、2成分または多成分混合装置を使って、接触させる材料に適用する直前に混合される。こうした2成分型または多成分型接着剤は、自動車の組立ておよび輸送手段(船舶、トラック、バスまたは鉄道車両)の組立ての両者、あるいは、例えば洗濯機などの消費財の組立てのみならず、例えば補剛構造用接着剤(とりわけ複合材料等)として建築分野でも使用することができる。
【0081】
〔実施例〕
本発明の範囲を制限しないことを意図した、本発明をさらに説明するいくつかの実施例を以下に記載する。実施例で使用した原材料を表1に列挙する。
【0082】
エポキシド付加物A予備混合物(プレミックス)のエポキシド付加物Aの一般的な調製
エポキシド付加物A予備混合物:A-VM1、の実施例
123.9gの二量体脂肪酸、1.1gのトリフェニルホスフィンおよび71.3gのビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンを、5.45当量/kgのエポキシド含量を有する、658gの液体DGEBAエポキシ樹脂と、2.82当量/kgの定常的なエポキシド濃度に達するまで、真空中で撹拌しながら110℃で5時間反応させた。反応の最後に187.0gの液体DGEBAエポキシ樹脂を反応混合物Aにさらに加えた。
【0083】
【表1】

【0084】
〔モノヒドロキシル含有エポキシドの調製例〕
米国特許第5668227号明細書の実施例1の方法に従って、トリメチロールプロパンおよびエピクロロヒドリンと、テトラメチルアンモニウムクロリドおよび水酸化ナトリウム溶液から、トリメチロールプロパングリシジルエーテルを調製した。7.5当量/kgのエポキシド数および1.8当量/kgのヒドロキシル基含量を有する黄色の生成物を得る。HPLC−MSスペクトルからトリメチロールプロパンジグリシジルエーテルがトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル中に相当な割合で存在するものと結論付けることが可能である。
【0085】
式(I)のポリマーBの調製の様々な実施例を以下に説明する。
【0086】
〔ポリマーBの実施例1:B-O1〕
200gのpolyTHF 2000(OH数57.5mg/g KOH)を真空中100℃で30分間乾燥した。次いで47.5gのIPDIおよび0.04gのジブチルスズジラウレートを加えた。反応を、真空中90℃で実施し、2.5時間後に3.6%の定常的なNCO含量になった(理論NCO含量:3.7%)。次に、式(III)のモノヒドロキシル含有エポキシドとして、123.7gの上記のトリメチロールプロパングリシジルエーテルを加えた。3時間後にNCO含量が0.1%未満に減少するまで、真空中90℃で撹拌を続けた。反応の最後に、82.5gのDGEBAを加えた(末端NCOを有するブロック化していないプレポリマーの質量の1/3)。3.15当量/kgのエポキシド含量(「最終EP含量」)を有する透明な生成物が得られた。
【0087】
〔ポリマーBの実施例2から5:B-02からB-05〕
B-02からB-05として表した、表2にまとめたエポキシド基を末端とする例示的なポリマー群Bを、以下の表に従って、異なるポリオールまたはポリオール混合物を基にして、例えばB-01について説明したものと同様の方法で合成した。末端NCO基を封止するために必要なトリメチロールプロパングリシジルエーテルの量は、第1の合成段階後に達するNCO含量に正確に合せた。希釈のために加えられるDGEBAの量は、すべてのプレポリマーの場合に、第1の合成段階で調製された末端NCOを有するプレポリマーの質量の1/3として計算した。
【0088】
〔鎖伸長されたポリマーBの実施例6:B-06〕
実施例6 B-06は、Y1をベースとするポリマーが、鎖伸長されたジオールであるポリマーBの例である。
【0089】
200gのpolyTHF 1000(OH数114mg/g KOH)を、真空中100℃で30分間乾燥した。次いで73.5gのIPDIおよび0.04gのジブチルスズジラウレートを加えた。これは、1.6/1の[NCO]/[OH]モル比に相当し、すでに説明したように形成されるポリマーの鎖伸長をもたらす。反応を真空中90℃で実施し、2.5時間後に4.9%の定常的なNCO含量になった(理論NCO含量: 5.1%)。式(III)のモノヒドロキシル含有エポキシドとして、186.1gの上記のトリメチロールプロパングリシジルエーテルを加えた。3.5時間後にNCO含量が0.1%未満に減少するまで、真空中90℃で撹拌を続けた。反応の最後に、91.2gのDGEBAを加えた(末端NCOを有するブロックされていないプレポリマーの質量の1/3)。それにより、3.50当量/kgのエポキシド含量(「最終EP含量」)を有する透明な生成物が得られた。
【0090】
【表2】

【0091】
〔チキソトロープ剤C〕
非拡散性担体材料中の尿素誘導体をベースとするチキソトロープ剤Cの実施例として、特許出願EP1152019A1によるものを、上記の原材料を用いてブロック化ポリウレタンプレポリマー中で調製した。
【0092】
担体材料:ブロック化ポリウレタンプレポリマーC1:
600.0gのポリエーテルポリオール(3000g/モル;OH数57mg/g KOH)と140.0gのIPDIとを、イソシアネート含量が定常状態に留まるまで、真空中で撹拌しながら90℃で反応させて、イソシアネート末端プレポリマーを得た。次いで、遊離のイソシアネート基をカプロラクタム(2%過剰)によりブロックした。
【0093】
ブロック化ポリウレタンプレポリマー中の尿素誘導体(HSD1):
181.3gの上記のブロック化プレポリマー中の68.7gのMDIフレークを、窒素下で緩やかに加熱しながら溶融した。次いで、219.9gの上記のブロック化プレポリマー中に溶解した40.1gのN-ブチルアミンを、窒素下で急速撹拌しながら2時間で滴下した。アミン溶液添加が終了後、白色のペーストをさらに30分間撹拌した。それにより、冷却後、<0.1%の遊離イソシアネート含量を有する白色の柔らかなペーストが得られた(尿素誘導体の割合は約20%)。
【0094】
〔組成物の実施例〕
表3に従って、実施例として種々の接着剤組成物を調製した。
【0095】
本発明によらない例Ref-01として、高度構造性エポキシド接着剤Betamate-1493(Dow-Automotive、Freienbach、スイス、から市販されている)、および本発明による実施例組成物の比較参照としてRef-02からRef-04を使用した。
【0096】
電解により亜鉛めっきされた鋼(eloZn)に適用後、接着剤は180℃のオーブン内で30分間の過程で、50℃で硬化させた。全ての試験は、接着剤を室温に冷却した上で実施した。
【0097】
〔試験方法〕
(引張せん断強度(TSS)(DIN EN 1465))
100×25×0.8mmの寸法を有する、電解により亜鉛めっきされた鋼(eloZn)で試験片を作製した。0.3mmの層厚で、接着面積は25×10mmであった。180℃で30分間硬化を行った。引張速度は10mm/分であった。
【0098】
(動的引裂抵抗性(ISO 11343))
90×25×0.8mmの寸法を有する、電解により亜鉛めっきされた鋼(eloZn)で試験片を作製した。0.3mmの層厚で、接着面積は25×30mmであった。180℃で30分間硬化を行った。引張速度は2m/秒であった。曲線の下の面積(DIN 11343に従って、25%〜90%)が、ジュール単位の破壊エネルギーとして示される。
【0099】
【表3】

【0100】
結果
表3の接着剤配合物の結果は、本発明による組成物により、室温および-40℃までの低温の両方で高い強度および高い耐衝撃性の組合せを達成することができることを示す。
【0101】
比較例Ref-01は、0℃を超える温度では優れた耐衝撃性を示すが、低温、すなわち0℃未満では、本発明による接着剤に比較して実質的に低い値を有する。
【0102】
比較例Ref-02は、エポキシド基を末端とした式(I)の衝撃改良剤が存在しないことにより、本発明による実施例と実質的に異なる。この結果は、この組成物は50℃では本発明による組成物に匹敵する耐衝撃性を有するが、低温、すなわち0℃以下では、本発明の組成物よりかなり劣ることを示す。
【0103】
比較例Ref-03は、添加された市販の、エポキシド基を末端とするポリブタジエン/アクリロニトリルコポリマーを含んでいる。しかし結果は、50℃未満の耐衝撃性が、本発明による組成物のものより実質的に劣ることを示す。
【0104】
比較例Ref-04は、チキソトロープ剤のブロック化ポリウレタンプレポリマーを2倍も多く含んでいる点で、Ref-02と実質的に異なる。しかし結果は、その柔軟化特性にもかかわらず、これは耐衝撃性に決して必要ではないことを示す。
【0105】
本発明による組成物Z-01からZ-06すべては、優れた破壊エネルギーを有する。これらの値は、0℃〜-40℃の温度で特に有利である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子当たり平均して1より多いエポキシド基を有する、少なくとも1種のエポキシド付加物A;
下記式(I)の少なくとも1種のポリマーB:
【化1】

[式中、
X1は、O、SまたはNHであり、
Y1は、末端アミノ、チオールまたはヒドロキシル基を除去した後の反応性ポリマーのn価の基であり、
Y2は、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)ジイソシアネートの2価の基であるか、
あるいは、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアル脂肪族ジイソシアネートの三量体またはビウレットの3価の基であり、
Y3は、ヒドロキシドおよびエポキシド基除去後の、第1級または第2級ヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック(araliphatic)エポキシドの基であり、
qは1、2または3であり、
mは1または2であり、かつ
nは2、3または4である];
非拡散性担体材料中の尿素誘導体をベースとする、少なくとも1種のチキソトロープ剤C;ならびに、
高温で活性化される、エポキシ樹脂用の少なくとも1種の硬化剤D、
を含む組成物。
【請求項2】
前記エポキシド付加物Aが、少なくとも1種のジカルボン酸と少なくとも1種のジグリシジルとの反応;または、
少なくとも1種のビス(アミノフェニル)スルホン異性体または少なくとも1種の芳香族アルコールと、少なくとも1種のジグリシジルエーテルとの反応、
から得られることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ジカルボン酸が、二量体脂肪酸、特に少なくとも1種の二量体C4〜C20脂肪酸であり、前記ジグリシジルエーテルが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルまたはビスフェノールA/Fジグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記芳香族アルコールが、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ヒドロキノン、レゾルシノール、ピロカテコール、ナフトヒドロキノン、ナフトレゾルシノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラキノン、ジヒドロキシビフェニル、3,3-ビス(p-ヒドロキシフェニル)フタリド、5,5-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダンおよび上記化合物の異性体すべてからなる群から選択され、かつ、前記ジグリシジルエーテルが、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテルまたはビスフェノールA/Fジグリシジルエーテルであることを特徴とする、請求項2または3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーBは弾性であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマーBがエポキシ樹脂に可溶性または分散性であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
式(I)において、nが2または3であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
式(I)のY1がベースとするポリマーが、アミノ、チオール、または好ましくはヒドロキシル基を末端とする、C2〜C6アルキレン基を有するかあるいは混合C2〜C6アルキレン基を有するα,ω-ポリアルキレングリコールであることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに一項に記載の組成物。
【請求項9】
式(I)のY1がベースとするポリマーが、600〜6000g/OH当量、特に700〜2000g/OH当量のOH当量重量であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
mが1であり、式(I)のY2がベースとするジイソシアネートが、好ましくはHDI、IPDI、MDIまたはTDIであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
式(I)のポリマーBすべての重量の割合が、合計組成物の重量に対して5〜40重量%、好ましくは7〜30重量%であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記チキソトロープ剤Cの担体材料が、ブロック化ポリウレタンプレポリマーであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記チキソトロープ剤C中の尿素誘導体が、芳香族単量体ジイソシアネート、特に4,4'-ジフェニルメチレンジイソシアネートと、脂肪族アミン化合物、特にブチルアミンとの反応生成物であることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記チキソトロープ剤Cの重量の割合が、全組成物の重量に対して5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記尿素誘導体の割合が、チキソトロープ剤Cの重量に対して5〜50重量%、好ましくは15〜30重量%であることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記硬化剤Dが、ジシアンジアミド、グアナミン類、グアニジン類およびアミノグアニジン類からなる群から選択される潜在性硬化剤であることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
硬化剤Dの合計割合が、合計組成物の重量に対して1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
少なくとも1種の充填剤Eがさらに存在することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記充填剤Eの合計割合が、全組成物の重量に対して5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%であることを特徴とする、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
エポキシド基を有する少なくとも1種の反応性希釈剤Fがさらに存在することを特徴とする、請求項1〜19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
硬化後に、組成物が、0℃で10Jを超え、好ましくは-40℃で1.0Jを超えるDIN 11343に準拠して測定した低温破壊エネルギーを有することを特徴とする、請求項1〜20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
式(I)のエポキシド基を末端とする衝撃改良剤。
【化2】

[式中、
X1は、O、SまたはNHであり;
Y1は、末端アミノ、チオールまたはヒドロキシル基を除去した後の反応性ポリマーのn価の基であり;
Y2は、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティックジイソシアネートの2価の基であるか、
あるいは、イソシアネート基を除去した後の、脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティック族ジイソシアネートの三量体またはビウレットの3価の基であり;
Y3は、ヒドロキシドおよびエポキシド基除去後の、第1級または第2級ヒドロキシル基を含む脂肪族、脂環式、芳香族またはアラリファティックエポキシドの基であり;
qは1、2または3であり;
mは1または2であり;かつ
nは2、3または4、好ましくは2または3である]。
【請求項23】
式(I)のY1がベースとするポリマーが、アミノ、チオール、または好ましくはヒドロキシル基を末端とする、C2〜C6アルキレン基を有する、あるいは混合C2〜C6アルキレン基を有するα,ω-ポリアルキレングリコールであることを特徴とする、エポキシド基を末端とする請求項22に記載の衝撃改良剤。
【請求項24】
式(I)のY1がベースとするポリマーが、600〜6000g/モル、特に700〜2200g/OH当量のOH当量重量を有するジオールまたはトリオールであることを特徴とする、エポキシド基を末端とする請求項22または23に記載の衝撃改良剤。
【請求項25】
エポキシド基を末端とし、請求項22〜24のいずれか一項に記載の衝撃改良剤の、1成分型熱硬化性エポキシ樹脂接着剤への使用。
【請求項26】
エポキシド基を末端とし、請求項22〜24のいずれか一項に記載の衝撃改良剤の、2成分型エポキシ樹脂接着剤への使用。
【請求項27】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の組成物の、1成分型接着剤としての使用。
【請求項28】
前記接着剤が、熱安定性材料、特に金属の接着接合に使用されることを特徴とする、請求項27に記載の使用。
【請求項29】
前記接着剤が、自動車の組立てにおいてボディーシェル組立用接着剤として使用されることを特徴とする、請求項27または28に記載の使用。
【請求項30】
熱安定性材料、特に金属を接着接合させる方法であって、これらの材料を、請求項1から21のいずれかに記載の組成物と接触させること、および100〜220℃、好ましくは120〜200℃の温度で硬化させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記熱安定性材料を請求項1から21のいずれかに記載の組成物と接触させること、および接着接合された材料が、100℃〜-40℃、好ましくは80℃〜-40℃、特に50℃〜-40℃の温度で使用されることを特徴とする、請求項30に記載の使用。

【公表番号】特表2006−509879(P2006−509879A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−560451(P2004−560451)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2003/014382
【国際公開番号】WO2004/055092
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】