説明

低温液化ガス受取体積演算装置、低温液化ガス受取体積演算システム及び低温液化ガス受取体積演算プログラム

【課題】受取側タンク部に受け取られた低温液化ガスの体積である受取体積を、簡単かつ正確に求めることが可能な低温液化ガス受取体積演算装置を提供する。
【解決手段】受取側タンク部13に受け取られた低温液化ガスの体積算出は、供給側タンク部11に注入された加圧用ガスの注入体積V1及びボイルの法則を用いて、供給側タンク部11から受取側タンク部13に供給された低温液化ガスの供給体積V3を演算する。そして、式1:V4=(V2−V3)/(n−1)を用いて、供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスの供給中にBOGが発生することにより失われた低温液化ガスの消失体積V4を演算する。V2は、受取側タンク部13に低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに受取側タンク部13内から放出された気体の体積(放出体積)である。そして、式2:V5=V3−V4を用いて、受取体積V5を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給側タンク部から受取側タンク部に配管を用いて、低温液化ガスを供給する場合に、受取側タンク部で実際に受け取られた低温液化ガス量(液相量)を演算する装置及びそのシステム、並びに低温液化ガス受取体積演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液化水素のような低温液化ガスの供給形態の1つとして、低温液化ガスが貯蔵されたタンク(供給側タンク部)を、受け取り側のタンク(受取側タンク部)が設置されている箇所までトレーラーで運搬し、供給側タンク部と受取側タンク部とを配管で接続し、供給側タンク部から受取側タンク部に低温液化ガスを供給する形態がある。
【0003】
この形態では、供給側タンク部から供給した低温液化ガス量に比べて、受取側タンク部で受け取られた低温液化ガス量が少ない現象が生じる。低温液化ガスは、供給側タンク部から液体の状態で送り出されるが、配管において、入熱により一部が気化し(BOG(Boil off gas))、受取側タンク部では気液混合流体の状態で受け取られるからである。実際に使用されるのは、気液混合流体の液体部分である。従って、受取側タンク部で受け取られた低温液化ガスの体積、すなわち受取側タンク部で受け取られた気液混合流体のうち、液相の体積を、如何に計測するか課題となる。
【0004】
従来の低温液化ガスの流量を計測する技術として、移送中の低温液化ガスを過冷却処理する過冷却処理装置と、流量計、及び流量制御ユニットとを、配管類とともに開閉可能に構成された真空断熱構造のコールドチャンバー内に収納し、過冷却処理装置を浸漬容器とその浸漬容器の内部に収容される熱交換部とで構成し、コールドチャンバー内で低温液化ガス移送路から分岐した分岐路を、過冷却処理装置の浸漬容器内に連通するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−291872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記低温液化ガスの流量計測システムでは、そのシステムの設備が比較的複雑となる問題がある。よって、低温液化ガスの流量(体積)を計測するのではなく、低温液化ガスの供給前と供給後のトレーラーの重量を測定し、その差を低温液化ガスの重量とし、受取量を特定するのが、一般的であった。
【0007】
しかし、低温液化ガスに比べて、トレーラーはかなり重い。このため、重量の測定誤差の影響を小さくするために、供給側タンク部の低温液化ガスを一部でなく、全量を受取側タンク部に供給することにより、低温液化ガスの受取量の測定精度の低下を防いでいた。
【0008】
本発明は、受取側タンク部に受け取られた低温液化ガスの体積である受取体積を、簡単かつ正確に求めることが可能な低温液化ガス受取体積演算装置、低温液化ガス受取体積演算システム及び低温液化ガス受取体積演算プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る低温液化ガス受取体積演算装置は、加圧用ガスを供給側タンク部に注入して前記供給側タンク部内の圧力を高めた後、受取側タンク部内の気体を放出させながら、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に配管を用いて低温液化ガスの供給をする場合に、前記受取側タンク部に受け取られた前記低温液化ガスの体積である受取体積を演算する装置であって、前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である注入開始前圧力P0、前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を終了した後で、かつ前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である供給開始前圧力P1、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を終了した後の前記供給側タンク部内の圧力である供給終了後圧力P2、前記供給側タンク部に注入された前記加圧用ガスの体積である注入体積V1、及び、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに前記受取側タンク部内から放出された前記気体の体積である放出体積V2の入力を受け付ける受付部と、前記注入開始前圧力P0、前記供給開始前圧力P1、前記供給終了後圧力P2、前記注入体積V1及びボイルの法則を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に供給された前記低温液化ガスの体積である供給体積V3を演算し、そして、下記式1を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給中に、当該低温液化ガスが気化することにより失われた(つまり、BOGが発生することにより失われた)前記低温液化ガスの体積である消失体積V4を演算し、そして、下記式2を用いて、前記受取体積V5を演算する演算部と、表示部と、前記演算部で演算された前記受取体積V5を、前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0010】
V4=(V2−V3)/(n−1)・・・式1
V5=V3−V4・・・式2
nは、前記低温液化ガスが気化すると体積がn倍になることを表す値である。
【0011】
本発明に係る低温液化ガス受取体積演算装置では、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及びボイルの法則を用いて、供給体積V3を演算し、そして、式1を用いて、消失体積V4を演算し、そして、式2を用いて、受取体積V5を演算する。このように、本発明に係る低温液化ガス受取体積演算装置によれば、上記圧力及び体積を用いて演算により、受取体積V5を求めることができる。よって、受取体積V5を、簡単かつ正確に求めることが可能となる。また、受取体積V5を測定するために、受取側タンク部で受け取られた気液混合状態の低温液化ガスを、完全に液相にしたり、又は完全に気相にしたりする処理が不要なので、この点からも受取体積V5を簡単に求めることができる。さらに、供給側タンク部の低温液化ガスの一部を受取側タンク部に供給した場合でも、完全に供給した場合と同様の精度で受取体積V5を求めることができる。
【0012】
上記構成において、前記表示制御部は、前記注入開始前圧力P0の入力を受け付ける画面を前記表示部に表示させ、前記受付部が、前記注入開始前圧力P0の入力を受け付けた後、前記表示制御部は、前記供給開始前圧力P1及び前記注入体積V1の入力を受け付ける画面を前記表示部に表示させ、前記受付部が、前記供給開始前圧力P1及び前記注入体積V1の入力を受け付けた後、前記表示制御部は、前記供給終了後圧力P2及び前記放出体積V2の入力を受け付ける画面を前記表示部に表示させ、前記受付部が、前記供給終了後圧力P2及び前記放出体積V2の入力を受け付けた後、前記演算部は、前記受取体積V5を演算することができる。
【0013】
この構成によれば、低温液化ガスを供給側タンク部から受取側タンク部に供給する作業において、注入開始前圧力P0を得られる段階、供給開始前圧力P1及び注入体積V1を得られる段階、供給終了後圧力P2及び放出体積V2を得られる段階が、それぞれ異なることに鑑みて、それぞれの段階に応じて入力を受け付ける画面を表示させている。従って、低温液化ガス受取体積演算装置の操作者は、低温液化ガスを供給側タンク部から受取側タンク部に供給する作業と並行して、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及び放出体積V2を入力することができる。よって、操作者が、それらの値を記録する必要がなくすことができる。
【0014】
特に、供給側タンク部内の圧力は、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1及び供給終了後圧力P2の三種類があり、低温液化ガスを供給側タンク部から受取側タンク部に供給する作業にしたがって、供給側タンク部内の圧力が変化する。このため、注入開始前圧力P0及び供給開始前圧力P1については、操作者が記録するのを忘れると、それらの値が分らなくなるので、上記構成は有効である。
【0015】
本発明に係る低温液化ガス受取体積演算システムは、上述した低温液化ガス受取体積演算装置を備えるシステムであって、前記注入開始前圧力P0、前記供給開始前圧力P1及び前記供給終了後圧力P2を得るために用いられ、前記供給側タンク部内の圧力を測定する圧力計と、前記注入体積V1を得るために用いられ、前記供給側タンク部に注入された前記加圧用ガスの流量を測定する第1の流量計と、前記放出体積V2を得るために用いられ、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに前記受取側タンク部内から放出された前記気体の流量を測定する第2の流量計と、を備える。
【0016】
本発明に係る低温液化ガス受取体積演算システムは、本発明に係る低温液化ガス受取体積演算装置を備えているので、上述した本発明に係る低温液化ガス受取体積演算装置と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0017】
本発明に係る低温液化ガス受取体積演算プログラムは、加圧用ガスを供給側タンク部に注入して前記供給側タンク部内の圧力を高めた後、受取側タンク部内の気体を放出させながら、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に配管を用いて低温液化ガスの供給をする場合に、前記受取側タンク部に受け取られた前記低温液化ガスの体積である受取体積を演算するプログラムであって、コンピュータに、前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である注入開始前圧力P0、前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を終了した後で、かつ前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である供給開始前圧力P1、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を終了した後の前記供給側タンク部内の圧力である供給終了後圧力P2、前記供給側タンク部に注入された前記加圧用ガスの体積である注入体積V1、及び、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに前記受取側タンク部内から放出された前記気体の体積である放出体積V2の入力を受け付けさせる受付ステップと、前記注入開始前圧力P0、前記供給開始前圧力P1、前記供給終了後圧力P2、前記注入体積V1及びボイルの法則を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に供給された前記低温液化ガスの体積である供給体積V3を演算させ、そして、下記式1を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給中に、当該低温液化ガスが気化することにより失われた前記低温液化ガスの体積である消失体積V4を演算させ、そして、下記式2を用いて、前記受取体積V5を演算させる演算ステップと、前記演算ステップで演算された前記受取体積V5を、表示部に表示させる表示ステップと、を実行させるプログラムである。
【0018】
V4=(V2−V3)/(n−1)・・・式1
V5=V3−V4・・・式2
nは、前記低温液化ガスが気化すると体積がn倍になることを表す値である。
【0019】
本発明に係る低温液化ガス受取体積演算プログラムによれば、本発明に係る低温液化ガス受取体積演算装置と同様の理由により、受取側タンク部に受け取られた低温液化ガスの体積である受取体積を、簡単かつ正確に求めることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、受取側タンク部に受け取られた低温液化ガスの体積である受取体積を、簡単かつ正確に求めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態において、供給側タンク部と受取側タンク部とを配管により接続した状態の一例を示す図である。
【図2】本実施形態に係る低温液化ガス受取体積演算装置の機能ブロック図である。
【図3】本実施形態において、低温液化ガスの受取体積を演算する工程を説明するフローチャートである。
【図4】本実施形態において、供給側タンク部に加圧用ガスを注入している状態(A)、及び、供給側タンク部から受取側タンク部に低温液化ガスを供給している状態(B)を示す図である。
【図5】本実施形態において、注入開始前圧力P0の入力画面の一例を示す図である。
【図6】本実施形態において、供給開始前圧力P1及び注入体積V1の入力画面の一例を示す図である。
【図7】本実施形態において、供給終了後圧力P2及び放出体積V2の入力画面の一例を示す図である。
【図8】本実施形態において、供給体積V3、消失体積V4及び受取体積V5の関係を説明する図である。
【図9】本実施形態において、受取体積V5等の値を含む画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る低温液化ガス受取体積演算装置(以下、受取体積演算装置と簡単に記載する場合もある)、低温液化ガス受取体積演算システム及び低温液化ガス受取体積演算プログラムについて、図面を用いて説明する。図1は、供給側タンク部11と受取側タンク部13とを配管により接続した状態の一例を示す図である。供給側タンク部11及び受取側タンク部13には、例えば、液化水素や液化ヘリウムのような低温液化ガスLが貯蔵されている。供給側タンク部11では低温液化ガスLの残量が多い状態が示され、受取側タンク部13では低温液化ガスLの残量が少ない状態が示されている。供給側タンク部11及び受取側タンク部13において、低温液化ガスLの液面より上の空間は、気体G(言い換えれば、低温液化ガスLの気相)で占められている。
【0023】
供給側タンク部11の上面には、供給側タンク部11内の圧力を測定するための圧力計15が取り付けられている。供給側タンク部11の上面において、供給側タンク部11と加圧用ガスボンベ17とが配管19により接続されている。配管19には、供給側タンク部11のバルブ21及び加圧用ガスボンベ17のバルブ23が取り付けられている。また、バルブ21とバルブ23との間において、配管19には、配管19を流れる加圧用ガスの流量を測定する流量計25が配置されている。加圧用ガスボンベ17には、このボンベ内の圧力を測定する圧力計43が取り付けられている。
【0024】
供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLを供給する前に、加圧用ガスボンベ17内の加圧用ガスを供給側タンク部11に注入し、供給側タンク部11内の圧力を高める。これにより、供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLをスムーズに供給することができる。低温液化ガスLが液化水素の場合、加圧用ガスとして水素ガスが用いられる。
【0025】
供給側タンク部11の下部の側面において、低温液化ガスLを受取側タンク部13に供給するための配管27が、供給側タンク部11に接続されている。配管27にはバルブ29が取り付けられている。
【0026】
受取側タンク部13の上面において、受取側タンク部13が放出管31と接続されている。放出管31には、バルブ33及び流量計35が取り付けられている。バルブ33を開けることにより、受取側タンク部13内の気体Gを、放出管31から外部に放出することができる(ベント)。流量計35により、外部に放出される気体Gの放出量が計測される。
【0027】
受取側タンク部13の下部の側面において、低温液化ガスLを受取側タンク部13に受け取るための配管37が、受取側タンク部13に接続されている。配管37にはバルブ39が取り付けられている。配管37は配管27と連結部材41により接続される。
【0028】
図2は、本実施形態に係る低温液化ガス受取体積演算装置1の機能ブロック図である。受取体積演算装置1は、制御部2及び操作部3を備える。操作部3は、操作キー部7及び表示部8を備える。操作キー部7は、後で説明する受付部4で受け付けられる各種の値を入力するためのキーである。表示部8には、後で説明する各種の画面が表示される。
【0029】
制御部2は、受付部4、演算部5及び表示制御部6を備える。これらの機能は、制御部2を構成するCPU、RAM及びROM等により実現される。
【0030】
受付部4は、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及び放出体積V2の入力を受け付ける。注入開始前圧力P0とは、供給側タンク部11に加圧用ガスの注入を開始する前の供給側タンク部11内の圧力をいう。供給開始前圧力P1とは、供給側タンク部11に加圧用ガスの注入を終了した後で、かつ受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給を開始する前の供給側タンク部11内の圧力をいう。供給終了後圧力P2とは、受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給を終了した後の供給側タンク部11内の圧力をいう。注入体積V1とは、供給側タンク部11に注入された加圧用ガスの体積をいう。放出体積V2とは、受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給を開始してから、供給を終了するまでに受取側タンク部13内から放出された気体Gの体積をいう。
【0031】
演算部5は、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及びボイルの法則を用いて、供給側タンク部11から受取側タンク部13に供給された低温液化ガスLの体積である供給体積V3を演算し、そして、下記式1を用いて、供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給中にBOGが発生することにより失われた低温液化ガスLの体積である消失体積V4を演算し、そして、下記式2を用いて、受取側タンク部13に受け取られた低温液化ガスLの体積である受取体積V5を演算する。
【0032】
V4=(V2−V3)/(n−1)・・・式1
V5=V3−V4・・・式2
なお、nは、低温液化ガスLが気化すると体積がn倍になることを表す値である。nは、気化係数とも称され、アボガドロの法則に従って、物質に固有の値となる。例えば、液化ヘリウムの場合、nは699であり、液化水素の場合、nは788となる。
【0033】
演算部5には、上記演算を実行するための数式データが予め記憶されている。また、演算部5には、受付部4で受け付けられた注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及び放出体積V2が一時的に記憶される。
【0034】
表示制御部6は、演算部5で演算された受取体積V5等を、表示部8に表示させる制御をする。表示制御部6には、例えば、図5〜図7、図9の画面を示す画面データが予め記憶されており、受取体積演算装置1の操作者が、操作キー部7を操作して入力した内容に応じて、対応する画面を表示部8に表示させる。
【0035】
次に、本実施形態において、低温液化ガスLの受取体積V5を演算する工程について説明する。図3はこの工程を説明するフローチャートである。
【0036】
受取体積演算装置1の操作者は、操作キー部7を操作して、低温液化ガスLの受取体積V5を演算するための画面を呼び出す命令を入力する。これにより、表示制御部6が、図5に示す画面51を表示部8に表示させる(ステップS1)。操作者は、画面51に示されたガイダンスに従って、図1に示すように、供給側タンク部11の配管27と受取側タンク部13の配管37とを連結部材41により接続すると共に、受取側タンク部13内の気体Gをベントするためにバルブ33を開ける(ステップS2)。
【0037】
そして、操作者は、図1に示す圧力計15で示される圧力、すなわち、供給側タンク部11に加圧用ガスの注入を開始する前の供給側タンク部11内の圧力である注入開始前圧力P0を、操作キー部7を操作して入力する(ステップS3)。また、このステップにおいて、図1に示す圧力計43で示される圧力、すなわち、加圧用ガスの注入を開始する前の加圧用ガスボンベ17内の圧力p0を、操作キー部7を操作して入力する。
【0038】
受付部4はその入力を受け付けて、注入開始前圧力P0,p0の値を演算部5に一時記憶させる。また、表示制御部6は、図6に示す画面53を表示部8に表示させる(ステップS4)。操作者は、画面53に示されたガイダンスに従って、バルブ21,23を開けて、加圧用ガスボンベ17の加圧用ガスを供給側タンク部11に注入する(ステップS5)。図4の(A)は、この状態を示している。図4の(A)において、供給側タンク部11と受取側タンク部13との位置関係、並びに、配管27,37の長さ及びそのレイアウトが、図1に示すそれらと異なる。これは、供給体積V3等を示す作図上の理由からであり、供給側タンク部11と受取側タンク部13との位置関係、並びに、配管27,37の長さ及びそのレイアウトが、実際に、図1に示す状態から図4の(A)に示す状態に変わるのではない。図4の(B)についても同様である。
【0039】
操作者は、供給側タンク部11への加圧用ガスの注入終了後、図4の(A)に示す圧力計15で示される指示値(圧力)、すなわち、供給側タンク部11に加圧用ガスの注入を終了した後で、かつ受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給を開始する前の供給側タンク部11内の圧力である供給開始前圧力P1を、操作キー部7を操作して入力する(ステップS6)。また、このステップにおいて、図4の(A)に示す圧力計43で示される圧力、すなわち、加圧用ガスの注入を終了した後の加圧用ガスボンベ17内の圧力p1を、操作キー部7を操作して入力する。受付部4はそれらの入力を受け付けて、供給開始前圧力P1の値及び加圧用ガスボンベ17内の圧力p1の値を演算部5に一時記憶させる。
【0040】
また、操作者は、図4の(A)に示す流量計25の指示値(体積)、すなわち、供給側タンク部11に注入された加圧用ガスの体積である注入体積V1を、操作キー部7を操作して入力する(ステップS6)。受付部4はその入力を受け付けて、注入体積V1の値を演算部5に一時記憶させる。
【0041】
そして、表示制御部6は、図7に示す画面55を表示部8に表示させる(ステップS7)。操作者は、画面55に示されたガイダンスに従って、バルブ29,39を開けて、供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLを供給する(ステップS8)。図4の(B)は、この状態を示している。供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLが供給されており、また、受取側タンク部13から放出管31を介して、気体Gが外部に放出される。
【0042】
供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給が終了すると、操作者は、バルブ29,39を閉める。そして、操作者は、図4の(B)に示す圧力計15の指示値(圧力)、すなわち、受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給を終了した後の供給側タンク部11内の圧力である供給終了後圧力P2を、操作キー部7を操作して図7に示す画面に入力する(ステップS9)。受付部4はその入力を受け付けて、供給終了後圧力P2の値を演算部5に一時記憶させる。
【0043】
また、操作者は、図4の(B)に示す流量計35の指示値(体積)、すなわち、受取側タンク部13に低温液化ガスLの供給を開始してから、供給を終了するまでに受取側タンク部13内から放出された気体Gの体積である放出体積V2を、操作キー部7を操作して図7に示す画面に入力する(ステップS9)。受付部4はその入力を受け付けて、放出体積V2の値を演算部5に一時記憶させる。
【0044】
演算部5は、以下に説明する式1〜式4を用いて、受取側タンク部13に受け取られた低温液化ガスL(液相)の体積である受取体積V5を演算する。その前提として、受取体積V5を求めることができる理論を、図8を用いて説明する。供給体積V3は、図4に示すように、供給側タンク部11において、低温液化ガスLを受取側タンク部13に供給開始前の低温液化ガスLの体積V11−低温液化ガスLを受取側タンク部13に供給終了後の低温液化ガスLの体積V12である。受取体積V5は、受取側タンク部13において、低温液化ガスLの受け取り終了後の低温液化ガスLの体積V22−低温液化ガスLの受け取り開始前の低温液化ガスLの体積V21である。
【0045】
供給側タンク部11から受取側タンク部13に低温液化ガスLを供給中に、BOGが発生することにより、低温液化ガスLの一部が気化する。BOG発生により失われた低温液化ガスL(液相)の体積を消失体積V4とする。消失体積V4の分だけ、低温液化ガスL(液相)の受取体積V5は、低温液化ガスL(液相)の供給体積V3よりも小さくなる。
【0046】
BOGにより発生した低温液化ガスL(気相)の体積であるBOG体積VBOGは、n×消失体積V4となる。nは、上述したように、低温液化ガスLが気化すると体積がn倍になることを表す値である。従って、受取側タンク部13から放出された気体の放出量V2は、受取体積V5+BOG体積VBOG−消失体積V4なる。以上の理論を利用して、演算部5は、次に説明するように、受取体積V5を演算する。
【0047】
演算部5は、下記式3を用いて、図1及び図4の(A)に示す受取側タンク部13に低温液化ガスの供給を開始する前の供給側タンク部11内の気相(すなわち気体G)の体積V0を演算する(ステップS10)。式3はボイルの法則により導かれる。
【0048】
V0×P0+v(p0−p1)=V0×P1・・・式3
ここで、vは加圧用ガスボンベ17の体積(例えば、47リットル)、p0は加圧用ガスの注入を開始する前の加圧用ガスボンベ17内の圧力、p1は加圧用ガスの注入を終了した後の加圧用ガスボンベ17内の圧力を示す。
【0049】
次に、演算部5は下記式4を用いて、供給側タンク部11から受取側タンク部13に供給された低温液化ガスLの体積である供給体積V3(すなわち、液相の供給体積V3)を演算する(ステップS11)。式4はボイルの法則により導かれる。
【0050】
V0×P1=(V0+V3)×P2・・・式4
そして、演算部5は下記式1を用いて、消失体積V4を演算する(ステップS12)。
【0051】
V4=(V2−V3)/(n−1)・・・式1
式1は上述した図8に示す関係から導き出される(V2=V3+n×V4−V4)。nは上述したように、低温液化ガスLが気化した場合に体積が何倍になるかを示す値である。最後に、演算部5は下記式2を用いて、受取体積V5を演算する(ステップS13)。
【0052】
V5=V3−V4・・・式2
表示制御部6は、図9に示す受取体積V5、消失体積V4等の値を含む画面57を、表示部8に表示させる(ステップS14)。なお、図9では、受取体積V5等の数値が省略されているが、実際には、数値も表示される。
【0053】
本実施形態の主な効果を説明する。本実施形態では、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及びボイルの法則を用いて、供給体積V3を演算し(ステップS10,S11)、そして、式1を用いて、消失体積V4を演算し(ステップS12)、そして、式2を用いて、受取体積V5を演算する(ステップS13)。このように、本実施形態によれば、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及び放出体積V2を用いて、演算により、受取体積V5を求めることができる。よって、受取体積V5を、簡単かつ正確に求めることが可能となる。また、受取体積V5を測定するために、受取側タンク部13で受け取られた気液混合状態の低温液化ガスLを、完全に液相にしたり、又は完全に気相にしたりする処理が不要なので、この点からも受取体積V5を簡単に求めることができる。さらに、供給側タンク部11の低温液化ガスLの一部を受取側タンク部13に供給した場合でも、完全に供給した場合と同様の精度で受取体積V5を求めることができる。
【0054】
また、本実施形態によれば、低温液化ガスLを供給側タンク部11から受取側タンク部13に供給する作業において、注入開始前圧力P0を得られる段階(ステップS3)、供給開始前圧力P1及び注入体積V1を得られる段階(ステップS6)、供給終了後圧力P2及び放出体積V2を得られる段階(ステップS9)が、それぞれ異なることに鑑みて、それぞれの段階に応じて入力を受け付ける画面51,53,55(図5〜図7)を表示させている。従って、低温液化ガス受取体積演算装置1の操作者は、低温液化ガスLを供給側タンク部11から受取側タンク部13に供給する作業と並行して、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及び放出体積V2を入力することができる。よって、操作者が、それらの値を記録する必要がなくすことができる。
【0055】
特に、供給側タンク部11内の圧力は、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1及び供給終了後圧力P2の三種類があり、低温液化ガスLを供給側タンク部11から受取側タンク部13に供給する作業にしたがって、供給側タンク部11内の圧力が変化する。このため、注入開始前圧力P0及び供給開始前圧力P1については、操作者が記録するのを忘れると、それらの値が分らなくなるので、上記構成は有効である。
【0056】
本実施形態では、注入開始前圧力P0、供給開始前圧力P1、供給終了後圧力P2、注入体積V1及び放出体積V2を、操作者が操作キー部7を用いて入力する場合で説明した。しかしながら、圧力計15、流量計25及び流量計35で示される指示値を、有線又は無線により、低温液化ガス受取体積演算装置1に送り、受付部4で受け付ける態様も可能である。この態様によれば、操作者は、注入開始前圧力P0等の値を入力する手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 低温液化ガス受取体積演算装置
4 受付部
5 演算部
6 表示制御部
8 表示部
15 圧力計
25 流量計(第1の流量計の一例)
35 流量計(第2の流量計の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧用ガスを供給側タンク部に注入して前記供給側タンク部内の圧力を高めた後、受取側タンク部内の気体を放出させながら、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に配管を用いて低温液化ガスの供給をする場合に、前記受取側タンク部に受け取られた前記低温液化ガスの体積である受取体積を演算する装置であって、
前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である注入開始前圧力P0、前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を終了した後で、かつ前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である供給開始前圧力P1、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を終了した後の前記供給側タンク部内の圧力である供給終了後圧力P2、前記供給側タンク部に注入された前記加圧用ガスの体積である注入体積V1、及び、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに前記受取側タンク部内から放出された前記気体の体積である放出体積V2の入力を受け付ける受付部と、
前記注入開始前圧力P0、前記供給開始前圧力P1、前記供給終了後圧力P2、前記注入体積V1及びボイルの法則を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に供給された前記低温液化ガスの体積である供給体積V3を演算し、そして、下記式1を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給中に、当該低温液化ガスが気化することにより失われた前記低温液化ガスの体積である消失体積V4を演算し、そして、下記式2を用いて、前記受取体積V5を演算する演算部と、
表示部と、
前記演算部で演算された前記受取体積V5を、前記表示部に表示させる表示制御部と、を備える低温液化ガス受取体積演算装置。
V4=(V2−V3)/(n−1)・・・式1
V5=V3−V4・・・式2
nは、前記低温液化ガスが気化すると体積がn倍になることを表す値である。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記注入開始前圧力P0の入力を受け付ける画面を前記表示部に表示させ、
前記受付部が、前記注入開始前圧力P0の入力を受け付けた後、前記表示制御部は、前記供給開始前圧力P1及び前記注入体積V1の入力を受け付ける画面を前記表示部に表示させ、
前記受付部が、前記供給開始前圧力P1及び前記注入体積V1の入力を受け付けた後、前記表示制御部は、前記供給終了後圧力P2及び前記放出体積V2の入力を受け付ける画面を前記表示部に表示させ、
前記受付部が、前記供給終了後圧力P2及び前記放出体積V2の入力を受け付けた後、前記演算部は、前記受取体積V5を演算する請求項1に記載の低温液化ガス受取体積演算装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の低温液化ガス受取体積演算装置を備えるシステムであって、
前記注入開始前圧力P0、前記供給開始前圧力P1及び前記供給終了後圧力P2を得るために用いられ、前記供給側タンク部内の圧力を測定する圧力計と、
前記注入体積V1を得るために用いられ、前記供給側タンク部に注入された前記加圧用ガスの流量を測定する第1の流量計と、
前記放出体積V2を得るために用いられ、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに前記受取側タンク部内から放出された前記気体の流量を測定する第2の流量計と、を備える低温液化ガス受取体積演算システム。
【請求項4】
加圧用ガスを供給側タンク部に注入して前記供給側タンク部内の圧力を高めた後、受取側タンク部内の気体を放出させながら、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に配管を用いて低温液化ガスの供給をする場合に、前記受取側タンク部に受け取られた前記低温液化ガスの体積である受取体積を演算するプログラムであって、
コンピュータに、
前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である注入開始前圧力P0、前記供給側タンク部に前記加圧用ガスの注入を終了した後で、かつ前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始する前の前記供給側タンク部内の圧力である供給開始前圧力P1、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を終了した後の前記供給側タンク部内の圧力である供給終了後圧力P2、前記供給側タンク部に注入された前記加圧用ガスの体積である注入体積V1、及び、前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給を開始してから、供給を終了するまでに前記受取側タンク部内から放出された前記気体の体積である放出体積V2の入力を受け付けさせる受付ステップと、
前記注入開始前圧力P0、前記供給開始前圧力P1、前記供給終了後圧力P2、前記注入体積V1及びボイルの法則を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に供給された前記低温液化ガスの体積である供給体積V3を演算させ、そして、下記式1を用いて、前記供給側タンク部から前記受取側タンク部に前記低温液化ガスの供給中に、当該低温液化ガスが気化することにより失われた前記低温液化ガスの体積である消失体積V4を演算させ、そして、下記式2を用いて、前記受取体積V5を演算させる演算ステップと、
前記演算ステップで演算された前記受取体積V5を、表示部に表示させる表示ステップと、を実行させるための低温液化ガス受取体積演算プログラム。
V4=(V2−V3)/(n−1)・・・式1
V5=V3−V4・・・式2
nは、前記低温液化ガスが気化すると体積がn倍になることを表す値である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−40629(P2013−40629A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176100(P2011−176100)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】