説明

低温蒸留分離装置及び分離方法

【課題】本発明は、低温で蒸留することで風味や香に優れ、複数の異なる蒸留液や濃縮物に分離できる低温蒸留分離装置及びその分離方法の提供を目的とする。
【解決手段】減圧低温加熱槽と、当該減圧低温加熱槽から発生した一次溜出蒸気を旋回分離する旋回分離槽と、旋回分離槽の上部から溜出した二次溜出蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器と、当該冷却凝縮器にて凝縮された蒸留液を貯留する蒸留液槽とを備えたことを特徴とする。これにより、旋回分離槽の上部から溜出した軽い二次溜出蒸気を冷却凝縮器にて冷却凝縮して得た蒸留液と、旋回分離槽の下部に流下したコンク液と、減圧低温加熱槽の底部に残った濃縮物とに分離回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種、液体や固液混合物を減圧低温下で蒸留し、濃縮物と蒸留液とに分離する低温蒸留分離装置及びその分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から発酵、熟成させた醪を蒸留釜に入れ、溜出蒸気を凝縮器で凝縮して蒸留酒を製造することは行われている(特許文献1)。
また、果汁や各種植物体等の抽出エキスを濃縮分離することも行われている。
しかし、特許文献1に記載の蒸留方法は、熟成させた醪を加熱スチームで加熱するものであり、約85℃以上の高温になり、含有成分によっては、熱により分解したり、変質するものも存在し、優れた風味や栄養成分が減少したり、欠落する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−236210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低温で蒸留することで風味や香に優れ、複数の異なる蒸留液や濃縮物に分離できる低温蒸留分離装置及びその分離方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る低温蒸留分離装置は、減圧低温加熱槽と、当該減圧低温加熱槽から発生した一次溜出蒸気を旋回分離する旋回分離槽と、旋回分離槽の上部から溜出した二次溜出蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器と、当該冷却凝縮器にて凝縮された蒸留液を貯留する蒸留液槽とを備えたことを特徴とする。
ここで旋回分離槽は、下部に貯留槽を有していて、側壁に沿って流下してくるコンク液を減圧低温加熱槽にリターン出きるように切り替え可能になっているのがよい。
本発明において、減圧低温加熱槽とは処理液が60℃以下で沸騰するように減圧できるものをいい、0.5×10−6〜0.95×10−6Paの真空度に調整でき、30℃〜60℃の温度に温調できるものが良い。
好ましくは、0.8×10−6〜0.95×10−6Paの真空度に調整でき、40℃〜50℃の温度に温調できるものがよい。
また、旋回分離槽とは、断面円形の槽の中に接線横方向から溜出蒸気を噴出させることで旋回流を生じさせ、相対的に軽い蒸気は上部から取り出し、相対的に重い蒸気等は槽壁側に移動し、流下させるものをいう。
【0006】
本発明に係る低温蒸留分離方法は、原液を減圧低温加熱槽に投入し減圧下で60℃以下の低温加熱をする工程と、当該減圧低温加熱槽から発生した一次溜出蒸気を旋回分離槽に投入し相対的に軽い蒸気と重い蒸気に旋回分離する工程とを有し、旋回分離槽の上部から溜出した軽い二次溜出蒸気を冷却凝縮器にて冷却凝縮して得た蒸留液と、旋回分離槽の下部に流下したコンク液と、減圧低温加熱槽の底部に残った濃縮物とに分離回収することを特徴とする。

【発明の効果】
【0007】
本発明においては、分離処理の対象となる原液を減圧低温加熱槽に投入し、所定の真空度に減圧し、30℃〜60℃の低温で蒸留できるので、例えば、香り成分やビタミン類等の高温では分解してしまうような成分もそのまま、溜出液あるいは濃縮物として分離できるので熱分解性の成分が含まれる液体等対しても蒸留分離が可能である。
また、減圧低温加熱槽から発生した一次溜出蒸気を旋回分離する旋回分離槽を有しているので、この旋回分離槽の上部から回収する蒸留液と、その下部から回収する蒸留液では含まれる成分が異なり、それぞれ風味等が異なる蒸留液に分離できる。
本発明にかかる分離装置、分離方法を蒸留酒の製造に適用すると、旋回分離槽の上部から得られる蒸留酒と、下部から得られる蒸留酒の、それぞれ風味等が異なる蒸留酒を得ることができる。
この減圧低温加熱槽を用いて減圧せず、加熱温調だけして、酒米と麹を用いて発酵させ、醪を造った後で、そのまま蒸留分離することもできる。
また、果汁等の各種エキスに適用すると、旋回分離槽の上部から凝縮回収した蒸留液は、純水に近く化粧水等に用いることができ、下部から凝縮回収した蒸留液を減圧低温加熱槽にリターンし、くり返し濃縮するとこの減圧低温加熱槽の底部に濃縮された濃縮物は水飴状になり、これを回収し冷却固形化するとドロップ状の健康食品を得ることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る低温蒸留分離装置のフローを示した模式図である。
【図2】(a)は旋回分離槽の平面構造を示し、(b)は冷却凝縮器の平面構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1に示すように、本発明に係る低温蒸留分離装置は、蒸留分離する原液を投入するための濃縮槽1を有し、この濃縮槽1は、ヒーター6と温度計7を備え、30℃〜60℃、好ましくは40℃〜50℃に加熱温調される。
濃縮槽1の上部は旋回分離槽2の上部と配管1aにて配管接続されている。
また、濃縮槽1の底部はバルブ11aの切り替えにより濃縮物を取り出す濃縮物取出口11を有する。
旋回分離槽2は、図2(a)に平面断面図を示すように、断面円形の円筒形状になっていて、濃縮槽1と接続した配管1aの噴出口1bは概ね接線方向を向いている。
これにより、濃縮槽1からの一次溜出蒸気に旋回流が生じ、相対的に軽い蒸気は上部に集まり、相対的に重い蒸気は旋回分離槽2の内壁側に集まり下に流下する。
旋回分離槽2の上部は配管2aにて次の冷却凝縮器3の中に設けた蛇管3aと配管接続されている。
なお、旋回分離槽2の天井部の配管2a接続口周囲を囲んだ蒸気分離用の隔壁部材2bを設けてある。
一方、旋回分離槽2の下部は、周壁に沿って液化流下したコンク液C1の貯留部2cになっている。
貯留部2cに溜まったコンク液C1は、バルブ12a,12cの切り替えにより、濃縮液取出口12から回収、又は濃縮槽1に配管12bでリターンできるようになっている。
冷却凝縮器3は、内部に蛇管3aを配設し、蛇管の周囲が空洞になっていて配管6a、6bにて冷却水を循環する。
蛇管3aは冷却凝縮器3の内部を通過し、蒸留液槽4に配管接続されている。
蒸留液槽4は旋回分離槽2の上部から蒸留分離した凝縮蒸留液C2を貯留するためのタンクとしての役割と、系全体を所定の真空度に減圧する役割を有している。
従って、蒸留液槽4はバルブ14,15の切り替えにより真空ポンプ5及び、大気供給口17と配管14a,15aにて接続されている。
具体的には、バルブ13a、15、12a、12c、11aを閉じ、バルブ14を開くと蒸留液槽4の内部が蛇管3a、旋回分離槽2及び濃縮槽1の内部と連通し、蒸留液槽4の内部を真空ポンプ5を作動させ減圧することで、系全体を減圧でき、溜出蒸気の誘導効果もある。
真空ポンプ5の作動を止め、バルブ15を開くと大気が内部に流入し、減圧状態から大気圧に戻る。
蒸留液槽4はバルブ13aの切り替えにより蒸留液を回収する蒸留液取出口13を有し、圧力計8を取り付けてある。
符号9は装置全体を自動制御する操作盤である。
【符号の説明】
【0010】
1 濃縮槽
2 旋回分離槽
3 冷却凝縮器
3a 蛇管
4 蒸留液槽
5 真空ポンプ
6 ヒーター
6a,6b 冷却水
7 温度計
8 圧力計
9 操作盤
11 濃縮物取出口
12 濃縮液取出口
13 蒸留液取出口
C 濃縮物
コンク液
蒸留液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧低温加熱槽と、当該減圧低温加熱槽から発生した一次溜出蒸気を旋回分離する旋回分離槽と、旋回分離槽の上部から溜出した二次溜出蒸気を冷却凝縮する冷却凝縮器と、当該冷却凝縮器にて凝縮された蒸留液を貯留する蒸留液槽とを備えたことを特徴とする低温蒸留分離装置。
【請求項2】
旋回分離槽は、下部に貯留槽を有していることを特徴とする請求項1記載の低温蒸留分離装置。
【請求項3】
旋回分離槽は、側壁に沿って流下してくるコンク液を減圧低温加熱槽にリターン出きるようになっていることを特徴とする請求項1又は2記載の低温蒸留分離装置。
【請求項4】
原液を減圧低温加熱槽に投入し減圧下で60℃以下の低温加熱をする工程と、当該減圧低温加熱槽から発生した一次溜出蒸気を旋回分離槽に投入し相対的に軽い蒸気と重い蒸気に旋回分離する工程とを有し、
旋回分離槽の上部から溜出した軽い二次溜出蒸気を冷却凝縮器にて冷却凝縮して得た蒸留液と、旋回分離槽の下部に流下したコンク液と、減圧低温加熱槽の底部に残った濃縮物とに分離回収することを特徴とする低温蒸留分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227891(P2010−227891A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80713(P2009−80713)
【出願日】平成21年3月28日(2009.3.28)
【出願人】(593125193)
【Fターム(参考)】