説明

低目付け不織布

【課題】本発明は、熱可塑性合成繊維からなる低目付け不織布であって、繊維交絡点で表面同士の接着がなされ、点状に弱く固定化され、寸法安定性、強度に優れた不織布を提供する。
【解決手段】(1)スパンボンド方式からなる熱可塑性合成繊維不織布であって、該繊維交絡点の表面同士が融着接合で接着しており、目付けが1〜25g/m2、繊維径が10〜50μm、目付け当たりに換算した引張強度が0.5N/50mm以上、ボイル収縮率が10%以下であることを特徴とする低目付け不織布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性合成長繊維からなる低目付け不織布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スパンボンド法の熱可塑性合成長繊維の不織布は、熱圧着により一体結合し、具体的には、表面が凹凸形状のエンボスロールを使用し、部分的に熱圧着して、繊維ウェブをエンボスの柄形状に即してフィルム状に、融着結合させて、強度を有するシート状物を得ている。従って、繊維の集合体を強固にフィルム状に融着結合したものである。しかし、従来のスパンボンド不織布において、繊維の構成本数を少なくして、目付けを小さくすると、不織布としての繊維間隙が大きくなり、且つ、繊維の集積度合いがが少なくなり、凹凸エンボスによる熱圧着の融着結合が減少するか、又は結合強度が低下するという問題が生じる。従って、スパンボンド不織布において、低目付けの不織布を安定して、均一に生産することが難しくなる。
【0003】
特許文献1には、芳香族ポリエステルからなる長繊維不織布において、繊維同士の交絡点が融着して、不織布として一体化され、タテ方向とヨコ方向で熱収縮率が異なる、所謂異方熱収縮不織布が開示されている。具体的には、低い方向の熱収縮率が20%以下で、高い方向の熱収縮率との差が15%以上である異方熱収縮不織布が提案されている。しかし、不織布の方向により熱収縮性が大きく異なるため、低収縮性が要求される分野や、等方収縮性が要求される分野には不適である。また、異方熱収縮であるため、繊維の形態が不安定であり、不織布を構成する繊維の構造が変化しやすく、耐熱性、寸法安定性の観点で、問題が生じやすい。
【0004】
【特許文献1】特許2769180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を克服し、熱可塑性合成長繊維からなる低目付け不織布であって、構成繊維の交絡点において、繊維表面同士が互いに融着接合され、点状での接合形態であり、接合の頻度を多くすることが可能であり、その結果、比較的弱い接着で、数多くの頻度で固定化されるという特徴的な固定化構造を有する。その為、本発明では、低収縮で、寸法安定性、形態安定性、強度に優れた低目付け不織布を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スパンボンド法の熱可塑性合成長繊維を用い、軽微な熱圧着で、仮熱圧着不織布を生産した後、予熱又は加熱して、その後、延伸加工し、熱セット処理をすることで、繊維交絡点において、繊維表面同士で、点状で弱く接着して、数多くの頻度で不織布を固定化したものである。その結果、繊維が特定範囲の複屈折性を有し、繊維の配向性が高まり、微細構造が固定化され、タテとヨコの熱収縮率の差が小さく、ボイル熱収縮自体も小さく、寸法安定性に優れる低目付け不織布を見出したものである。本発明において、特許請求に係る発明は、以下の通りである。
(1)スパンボンド方式からなる熱可塑性合成長繊維不織布であって、該繊維の交絡点において、繊維表面同士が互いに融着接合で接着しており、目付けが1〜25g/m2、繊維径が10〜50μm、単位目付け当たりに換算した引張強度が0.1N/50mm以上、タテ及びヨコ方向のボイル収縮率が10%以下であることを特徴とする低目付け不織布。
【0007】
(2)前記不織布のタテ方向とヨコ方向のボイル収縮率の差が5%以下であることを特徴
とする上記(1)に記載の低目付け不織布。
(3)前記熱可塑性合成長繊維がポリエステル系長繊維であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の低目付け不織布。
(4)前記不織布の目付けが1〜10g/m2であることを特徴とする上記(1)〜(3)に記載の低目付け不織布。
(5)前記不織布の構成繊維の複屈折率(Δn)が0.02〜0.11であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の低目付け不織布。
【0008】
(6)前記不織布の厚みが0.2mm以下、平均みかけ密度が0.25g/cm3以下であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の低目付け不織布。
(7)前記不織布の融着接合個数が10〜10000個/mmであることを特徴とする上記(1)〜(6)に記載の低目付け不織布。
(8)スパンボンド法で熱可塑性合成長繊維の熱圧着した仮圧着不織布を製造した後、温度70〜160℃に予熱又は加熱して、縦方向及び/又は横方向に1.2〜5倍延伸加工し、温度120〜230℃で熱セット処理することを特徴とする上記(1)〜(7)に記載の低目付け不織布の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の熱可塑性合成長繊維からなる低目付け不織布は、構成繊維が特定の複屈折率を有し、配向性にすぐれ、繊維自体が低収縮であり、かつ、繊維の接合において、繊維交絡点で表面同士が点状で弱く融着接合し、特定範囲の融着接合頻度を有し、繊維が固定化されて、寸法安定性、形態安定性、強度に優れている。従って、生花、キャンデー等のラッピング材、包装資材、換気扇などの各種フイルター材、樹脂シート、発泡シート、フイルムなどの支持体、補強材、車両用資材の支持体、補強材、粘着テープ基材などに広く展開できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明について詳述する。
第一の特徴としては、本発明の低目付け不織布は、不織布を構成する繊維の交絡点において、繊維表面同士が互いに点状で融着接合し、通常の熱圧着とは異なる、比較的弱い接合点を多数有し、繊維が固定化されて、不織布の一体化接合をなしていることである。従って、エンボス凹凸模様ロールを用いた通常の熱圧着による部分熱圧着とは、全く異なる接合方式であり、本発明の不織布は、エンボス加工による熱圧着がなされていない不織布であるといえる。
第ニの特徴としては、繊維自体の複屈折が特定の範囲であり、配向性に優れ、ボイル収縮の面で低収縮であり、タテおよびヨコ方向の熱収縮率の差も少なく、寸法安定性に優れ、且つ、引張強度に優れていることである。従って、ロール形状に巻き取り加工、スリット加工などの二次加工での幅入りが少ない不織布である。
【0011】
本発明に用いる熱可塑性合成長繊維とは、繊維径が10〜50μm、好ましくは12〜30μm、より好ましくは12〜25μmの繊維から成り、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、共重合ポリエステル、脂肪族エステルなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66、共重合ポリアミド繊維などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンン、共重合ポリプロピレンなどのオレフイン系繊維、ポリ乳酸などの生分解性繊維、鞘がポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリエステルなどの低融点成分と、芯がポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン6などの高融点成分殻なる芯鞘構造、サイドバイサイド構造などの複合繊維など1種又は2種以上の組み合わせの合成繊維があげられる。
熱可塑性合成長繊維がポリエステル系長繊維であることが、強度、耐熱性、一体成型などの加工性の観点から好ましい。
【0012】
本発明の低目付け不織布を熱延伸加工する前の、原料不織布を構成する繊維としては、紡糸速度1000〜3500m/minの低紡糸速度の低結晶性、低配向性のポリエステル系繊維が、特に好ましく用いられる。この様な、特性のポリエステル系繊維では、その後の、低目付け不織布への熱延伸加工するに、適正である。
上記原料不織布を構成する単繊維の伸度は、100〜600%が好ましく、より好ましくは150〜500%であり、このように高伸度であると、延伸加工特性が向上する。
上記原料不織布を構成する繊維は、低配向性繊維であることが好ましく、熱により、繊維表面の融着が起こりやすいという特徴を有する。その結果、上記原料不織布を加熱すると、加熱雰囲気中で、繊維の交絡点において、繊維の表面同士が互いに、点状で融着接合を生じ、点状で接着し、その接合頻度が大きくすることができる。さらに、通常の熱圧着に比べて、弱い接合であり、小さな応力で、均一な延伸加工ができるため、本発明の低目付け不織布を得ることができる。
【0013】
更に、熱可塑性樹脂に目的に応じて、他の樹脂、又は難燃剤、無機充填剤、柔軟材、可塑剤、顔料、帯電防止剤などの1種又は2種以上添加してもよい。
本発明の低目付け不織布を構成する繊維において、複屈折率(Δn)が0.02〜0.11でありより好ましくは、0.02〜0.07であり、特に好ましくは0.02〜0.05である。
本発明の低目付け不織布を構成する繊維において、上記原料不織布を構成する繊維は、低配向性繊維であるが、この繊維を一旦加熱延伸加工することで、繊維の配向性は高まり、Δnが上記の範囲となり、この範囲であると、繊維の微細構造が安定し、低収縮で、寸法安定性に優れる。
【0014】
本発明の低目付け不織布の目付けは、1〜25g/m2であり、好ましくは、1〜20g/m2、より好ましくは、1〜10g/m2である。目付けが1g/m2未満では、繊維交絡点の表面同士の点状接着個数が少なく強度の低いものとなる、一方、25g/m2を越えると、強度は高くなるが、不織布の厚みが大きくなり、熱処理による繊維表面同士の接着が弱くなり、毛羽強さが低下する。
該不織布の構成繊維の交絡点における、表面同士の融着接合の個数は、10〜10000個/mm2の範囲が好ましくより好ましくは20〜1000個/mm2、特に好ましくは20〜500個/mm2である。接着数が10個/mm未満では、強度が低下し、繊維の固定化が低下し、10000個/mmを超えると、繊維の集積度が高すぎ、嵩高性、柔軟性が低下する。この接合個数は、用いる繊維の繊維径、目付け、嵩密度等の条件により適宜設計される。
【0015】
本発明の低目付け不織布の引張強力は、(タテ+ヨコ)方向の値を、単位目付け当たり(1g/m)に換算した値が、0.1N/50mm(巾)以上であり、好ましくは0.3〜50N/50mmの範囲であり、より好ましくは0.5〜50N/50mmである。引張強度が0.1N/50mm未満では、巻き取り加工、スリット加工などの二次加工などで幅入りが大きく、破れなどが生じ易くなり、取り扱い性が悪くなる。
本発明の低目付け不織布のタテ及びヨコ方向のボイル収縮率は、10%以下、好ましくは0〜6%、より好ましくは、0〜3%である。ボイル収縮率がこの範囲であると、熱による収縮性が小さく、寸法安定性に優れる。
【0016】
また、タテ方向とヨコ方向のボイル収縮差が5%以下が好ましく、より好ましくは、3%以下である。ボイル収縮差がこの範囲であると、タテヨコの方向による収縮差が少なく、異方収縮ではなく、等方収縮であり、かつ、不織布全方向に対して、低収縮であるといえる。
ボイル収縮率が10%を超えること、ボイル収縮差が5%を超えることは、加熱雰囲気中においては、熱収縮によるの寸法変化を生じやすく、不織布の寸法が安定せず、波打ち現象、シワなどが発生し、加工安定性が低下する要因となり、不織布自体も耐安定性の低い不
織布であるといえる。
【0017】
本発明の低目付け不織布の厚みが0.20mm以下、好ましくは、0.01〜0.16mmであり、平均みかけ密度が0.25g/cm3以下、好ましくは、0.05〜0.2g/cm3である。
不織布の厚みが0.20mmを超えること、及び平均みかけ密度が0.25g/cm3を超えることで、不織布厚み方向の繊維表面同士の点状接着強度が弱くなり、強度低下し、巻き取り性などの取り扱い性が悪くなる。
本発明の低目付け不織布は、加熱状態でのタテ及びヨコ方向の、ボイル収縮率が10%以下と小さく、優れた耐熱性、熱に対する寸法安定性を有する。従って、該不織布の耐熱性を向上させる方法としては、構成繊維の配向性、及び結晶性を向上させることである。
【0018】
以下に、本発明の低目付け不織布の製造例を述べる。
本発明の熱可塑性合成長繊維不織布は、スパンボンド方式で得られる。具体的には、スパンボンド方式の溶融紡糸で紡糸口金から吐出し、延伸、開繊した繊維ウエブを、軽度の熱圧着条件で、仮熱圧着状態の不織布を得て、本発明に用いられる基布とする。
次いで、温度70~160℃に予熱又は加熱して、縦方向及び/又は横方向に1.2〜5倍延伸加工し、温度120〜230℃で熱セット処理することで、本発明の低目付け不織布が得られる。
【0019】
本発明に用いる原料不織布は、スパンボンド法により得られる、仮熱圧着状態の不織布であり、、低配向性、低結晶性の構成繊維からなり、複屈折率Δnが0.01〜0.07の範囲であり、結晶化度が15%未満であり、低配向性、低結晶性である事が特徴である。
次いで、本発明の低目付け不織布を得る為の、延伸加工、熱セット加工を行う。
具体的な製造方法としては、該仮圧着不織布を、予熱、又は加熱して、延伸加工―熱セット加工することで、低目付け不織布を構成する繊維の複屈折率が0.02〜0.11となり、好ましくは0.03〜0.10、より好ましくは0.04〜0.08である。
また、低目付け不織布を構成する繊維の結晶化度が15〜45%であり、好ましくは17〜45%であり、より好ましくは20〜40%である。
【0020】
本発明の低目付け不織布を構成する繊維は、この様に、繊維の微細構造において、配向性、結晶性が向上しており、その結果、耐熱性、寸法安定性が優れる効果を有する不織布となる。
従って、加熱延伸加工前後において、複屈折率の変化としては、0.01以上、好ましくは0.015〜0.09であり、結晶化度の変化としては、5%以上、好ましくは6〜30%である。 複屈折率の変化が0.01未満、結晶化度の変化が5%未満では、耐熱性が低く、加熱雰囲気中で熱収縮が生じやすいものとなる。
本発明の低目付け不織布の具体的製造方法は、スパンボンド方式の溶融紡糸で紡糸口金から吐出し、延伸、開繊した繊維ウエブを熱圧着で仮圧着不織布を得る。次いで、該仮圧着不織布を、予熱、又は加熱して延伸加工―熱セット加工を行い、本発明の低目付け不織布が得られる。
【0021】
本発明の延伸加工としては、予熱又は加熱して、2本ロール間で不織布を挟み、ロール間で表面速度差を設けて、1段又は2段以上の多段延伸加工する装置、又はピンテンター、クリップテンターなどの拡幅加工機でヨコ方向延伸加工する装置とを組み合わせて行うことである。
延伸加工方法としては、タテ方向、又はヨコ方向の延伸を別々に行う1軸延伸加工、又は、タテ方向と、ヨコ方向を同時に行う2軸延伸加工がある。加熱温度としては、70〜160℃で、延伸倍率としては1.2〜5倍、好ましくは、1.2倍〜3.5倍延伸加工である。
熱セット加工としては、ピンテンター、クリップテンター、シリンダーロール、フエルトカレンダーなどの緊張化の熱処理装置を用いて行われる。熱セット温度としては、耐熱性を有する配向性、結晶性にする条件で、例えば、温度を120℃〜230℃、時間は、1秒〜1
20秒、好ましくは、150℃〜230℃、時間は3秒〜80秒である。
【実施例】
【0022】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、下記の実施例に制限されるものではない。
1.目付(g/m2):JIS-L-1906 準処して測定
タテ20cm×ヨコ25cmの試験片を試料の幅1mあたり3箇所採取し
て質量を測定し、その平均値を単位面積あたりの質量に換算して求める。2.厚み(mm):JIS-L-1906 準処して測定
接圧荷重100g/cm2にて幅方向に10箇所測定し、その平均値を厚みとし
た。厚み計は、PEACOCK社製NO.207を用いた。
【0023】
3.繊維径(μm): 繊維ウェブ、不織布などの試料の両端部10cmを除いて、布帛の
幅20cm毎の区域からそれぞれ1cm角の試験片を切り取ってサンプル
とした。各試験片についてマイクロスコープで繊維の直径を30点測定
し、該測定値の平均値を算出して繊維径とした。
4.引張強力(N/50mm):JIS-L-1906 準処して測定
(タテ+ヨコ)方向の得られた値を単位目付け当たりに換算して示す。
5.平均みかけ密度(g/cm3):(目付け)/(厚み)から計算して得られる。
6.複屈折率(Δn):偏向顕微鏡で5箇所測定し、平均値で示す。
オリンパス製偏向顕微鏡コンペンセーターを用いて、干渉縞法でより、レ
ターデーションと繊維径より、繊維の複屈折率を測定した。
【0024】
7.結晶化度(%):示差走査熱量測定装置(DSC)を用いて、発熱ピークと吸熱ピークの熱量
を測定し、下記式で計算して求める
結晶化度(%)=(融解熱量―吸熱熱量)J/g/結晶繊維の融解熱量140J/g×100
8.繊維交絡点の接着数(個/mm2):不織布の試料の両端部10cmを除いて、布帛の幅
20cm毎の区域からそれぞれ1cm角の試験片を切り取ってサンプルとし
た。各試験片についてマイクロスコープで繊維の交絡点の接着数を測定し、
該測定値の平均値を算出して示した。
9.ボイル収縮率(%):試料25cm角を取り、タテ、ヨコそれぞれ3箇所に正確に20cmの
長さに印をつけ、沸騰水中に10分間浸漬してから取り出し、風乾後の寸法
を測定して、寸法変化を収縮率として求める。
【0025】
スパンボンド製造例Aとしては、本発明の熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレート(融点265℃、PET))を、スパンボンド法で、温度300℃の紡糸口金から吐出、紡糸速度1800m/minで延伸、冷却、開繊、目付け50g/m2の繊維ウェブを捕集ネット上に積層し、熱圧着率25%エンボスロールを用いて、線圧350N/cm、上下温度を65℃/70℃で熱圧着して仮圧着不織布Aを得る。(繊維径23μm、複屈折率Δn0.01)
【0026】
[実施例1、2]
仮圧着不織布Aを温度105℃のフエルトカレンダーで予熱熱処理後、タテ方向に2倍、2.5倍延伸加工してから、次いでピンテンターを用いて、ヨコ方向に2倍延伸加工―熱セット加工を行った。加工条件としては、温度100℃〜180℃、時間30秒で行い、本発明の低目付け不織布を得た。
表−1に記載の本発明の低目付け不織布は、熱収縮性が小さく、且つ、タテ、ヨコ方向
の差が小さく、配向性、結晶化度が高くなり、耐熱性に優れ、強度の高い不織布であった。
【0027】
[実施例3]
仮圧着不織布Aを温度105℃のフエルトカレンダーで予熱熱処理後、2軸延伸加工装置を用いて、温度100℃で、タテ方向に2.5倍、ヨコ方向に3.5倍延伸加工した後、ピンテンターの温度180℃、20秒で熱セット加工して、本発明の低目付け不織布を得た。
表−1に記載の本発明の低目付け不織布は、熱収縮性が小さく、且つ、タテ、ヨコ方向の差が小さく、配向性、結晶化度が高くなり、耐熱性に優れ、強度の高い不織布であった。
スパンボンド製造例Bとしては、本発明の熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレート(融点265℃、PET))を、スパンボンド法で、温度300℃の紡糸口金から吐出、紡糸速度1950m/minで延伸、冷却、開繊、目付け25g/m2の繊維ウェブを捕集ネット上に積層し、熱圧着率25%エンボスロールを用いて、線圧350N/cm、上下温度を70℃/75℃で熱圧着して仮圧着不織布Bを得る。(繊維径20μm、複屈折率Δn0.02)
【0028】
[実施例4、5]
仮圧着不織布Bを温度90℃のフエルトカレンダーで熱処理、とタテ方向に1.5倍、2倍延伸加工してから、次いでピンテンターを用いて、ヨコ方向に2倍延伸加工―熱セット加工を行った。加工条件としては、温度100℃〜180℃、時間30秒で行い、本発明の低目付け不織布を得た。
表−1に記載の本発明の低目付け不織布は、熱収縮性が小さく、且つ、タテ、ヨコ方向の差が小さく、配向性、結晶化度が高くなり、耐熱性に優れ、強度の高い不織布であった。
【0029】
[実施例6]
仮圧着不織布Bを温度90℃のフエルトカレンダーで熱処理し、2軸延伸加工装置を用いて、温度100℃で、タテ方向に1.5倍、ヨコ方向に2倍延伸加工した後、ピンテンターの温度200℃、20秒で熱セット加工して、本発明の低目付け不織布を得た。
表−1に記載の本発明の低目付け不織布は、熱収縮性が小さく、且つ、タテ、ヨコ方向の差が小さく、配向性、結晶化度が高くなり、耐熱性に優れ、強度の高い不織布であった。
【0030】
[比較例1]
一般的なポリエチレンテレフタレート(PET)を用い、実施例1と同じスパンボンド法で、紡糸温度300℃で平均化繊維径14μm、目付け30g/m2の熱可塑性繊維ウェブを捕集ネット上に作成し、圧着面積率が25%エンボスロールで、線圧350N/cm、上下温度を230℃/235℃で熱圧着して不織布を得た。
表-1に記載の比較例1は、繊維交絡点で繊維同士の接着がなく、凹凸エンボス部分での融着による不織布であり、配向性、結晶性が高く、熱収縮しない耐熱性を有する不織布である。
【0031】
[比較例2]
スパンボンド製造例Aとしては、本発明の熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレート(融点265℃、PET))を、スパンボンド法で、温度300℃の紡糸口金から吐出、紡糸速度1800m/minで延伸、冷却、開繊、目付け50g/m2の維ウェブを捕集ネット上に積層し、熱圧着率25%エンボスロールを用いて、線圧350N/cm、上下温度を65℃/70℃で熱圧着して仮圧着不織布を得る。
表-1に記載の比較例2は、繊維交絡点で繊維同士の接着がなく、凹凸エンボス部分での融着による不織布であり、低配向性、低結晶性であり、熱収縮が大きく耐熱性のない不織布である。
【0032】
[比較例3]
スパンボンド製造例Bとしては、本発明の熱可塑性繊維は、ポリエチレンテレフタレー
ト(融点265℃、PET))を、スパンボンド法で、温度300℃の紡糸口金から吐出、紡糸速度2000m/minで延伸、冷却、開繊、目付け25g/m2の維ウェブを捕集ネット上に積層し、熱圧着率25%エンボスロールを用いて、線圧350N/cm、上下温度を70℃/75℃で熱圧着して仮圧着不織布Bを得る。
表-1に記載の比較例3は、繊維交絡点で繊維同士の接着がなく、凹凸エンボス部分での融着による不織布である。
表-1に記載の比較例1は、繊維交絡点で繊維同士の接着がなく、凹凸エンボス部分での融着による不織布であり、低配向性、低結晶性であり、熱収縮が大きく耐熱性のない不織布である。
【0033】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の低目付け不織布は、凹凸エンボス模様の融着部分がなく、繊維交絡む点で表面同士の点状接着からなり、繊維が弱く固定化され寸法安定性に優れた、高い強度の不織布である。各種包装資材、各種フイルター材、車両用支持体、又は補強材、テープ基材、又
は支持体、樹脂シート、発泡体シート、複数枚重ねて使用する断熱材などとの複合シートなどに広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパンボンド方式からなる熱可塑性合成長繊維不織布であって、該繊維の交絡点において、繊維表面同士が互いに融着接合で接着しており、目付けが1〜25g/m2、繊維径が10〜50μm、単位目付け当たりに換算した引張強度が0.1N/50mm以上、タテ及びヨコ方向のボイル収縮率が10%以下であることを特徴とする低目付け不織布。
【請求項2】
前記不織布のタテ方向とヨコ方向のボイル収縮率の差が5%以下であることを特徴とする請求項1に記載の低目付け不織布。
【請求項3】
前記熱可塑性合成長繊維がポリエステル系長繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の低目付け不織布。
【請求項4】
前記不織布の目付けが1〜10g/m2であることを特徴とする請求項1〜3に記載の低目付け不織布。
【請求項5】
前記不織布の構成繊維の複屈折率(Δn)が0.02〜0.11であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の低目付け不織布。
【請求項6】
前記不織布の厚みが0.2mm以下、平均みかけ密度が0.25g/cm3以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の低目付け不織布。
【請求項7】
前記不織布の融着接合個数が10〜10000個/mmであることを特徴とする請求項1〜6に記載の低目付け不織布。
【請求項8】
スパンボンド法で熱可塑性合成長繊維の熱圧着した仮圧着不織布を製造した後、温度70〜160℃に予熱又は加熱して、縦方向及び/又は横方向に1.2〜5倍延伸加工し、温度120〜230℃で熱セット処理することを特徴とする請求項1〜7に記載の低目付け不織布の製造方法。

【公開番号】特開2009−228154(P2009−228154A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73545(P2008−73545)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】