説明

低硝酸態窒素野菜およびその栽培方法と栽培システム

【課題】水耕栽培により硝酸態窒素の含有量が低くて、人体に悪影響を及ぼさない低硝酸態窒素野菜を提供する。
【解決手段】培養液の供給および循環システム1は、培養液貯留タンク11から制御弁111を介してポンプ13により培養液供給間21より、植物を各穴に植え込んだ多孔水耕栽培管に供給し、培養液回収管23から回収した培養液を該培養液貯留タンクに回収する。
一定期間培養液を供給して植物を成長させ、収穫期の前に培養液の供給を停止した回収し、潅水貯留タンクから水を供給して栽培することにより植物体内に蓄積された硝酸態窒素を消費させ、硝酸態窒素濃度を450ppm以下に低下させて収穫する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低硝酸態窒素野菜に関し、特に水耕栽培により生産された硝酸態窒素の含有量が450ppm以下の低硝酸態窒素野菜に関する。
【背景技術】
【0002】
硝酸態窒素(NO3−―N)を含有する野菜が人間の健康にとって有害であることは、農業専門家を長期間にわたって悩ましている課題であるが、農業生産者にとっても、有効な解決方法を見付けることができず、技術的な難題となっている。今まで、硝酸態窒素(NO3−―N)の含有量の制御について、考察した著作はほとんどなく、ましてや技術的な進歩など論ずるまでもない。本発明の申請まで、遺伝子組替え技術を利用して、野菜などの農作物の遺伝子や成分を変化させようとする以外に、野菜が含有する有害物質に対して、量的制御を加える実験や考察はほとんどなかった。遺伝子組替え技術を利用して生産された農産物は人体に悪影響を及ぼすのか、遺伝子組替え技術が農業および生態系に及ぼす影響はどのようなものか、発生するであろう予期することができないリスクはどのようなものであるかなど、すべて長期間の観察を経ずして知ることのできない困難な問題である。今のところ、学会および業界では、人々を納得させる論文、データまたは研究などは一切発表されていない。
【0003】
本発明の「低硝酸態窒素野菜」の栽培および生産は、遺伝子組替え技術やその他の関連技術により硝酸態窒素の検出量を450ppm以下にするのではなく、「水耕栽培装置」および「培養液供給中断栽培法」が野菜に充分な光合成を行なわせた結果によるものである。自然界の法則を利用して、低硝酸態窒素野菜を生産するのである。本発明は、野菜が含有する人体に悪影響を及ぼす有害物質に対して、量的制御を加えるものであって、これまで、本発明と関連性や類似性がある技術、報道または論文は、全くなかった。
【0004】
狩猟社会、放牧社会および農耕社会など人類の社会形態は進歩してきたが、ここ二百年においては、産業革命および産業革命に起因する農業革命(緑の革命)により農作物の生産効率は大幅に向上した。農作物の収穫の増加は、多くの人々を飢餓から救い出した。今のところ、農業革命に対する評価は、一般的に利点が欠点を上回っていると考えられるが、農業革命は、過度の土地開発および利用が土壌の劣化を早々に招き、土壌の劣化は大量の化学肥料を使用させ、収穫を改善しようとする一方で効率が悪化した。このような悪循環に陥ると、耕作地の酸化に拍車を掛け、土地の本来の力は完全に失われてしまう。また、従来の農耕は、大量の灌漑用水を消費するが、水資源がますます貴重になる今日において、収穫効率がさらに高い水耕栽培が出現し、現在において、重要な農耕方法の一つとされている。地球の気温は20世紀の僅か百年の間に0.6℃も上昇しており、ある地球温暖化の影響に関するコンピュータシュミレーションでは、今世紀末には3.3℃上昇すると試算され、南極および北極の氷が溶け出し、海面を上昇させ、沿海の農業地を減少させたり、消失させてしまったりする。世界七大河川のアマゾン川およびコンゴー川以外では、水量の減少が発生し、中国の黄河ではここ50年で部分的に河が枯れる現象が17回も起きている。地球温暖化の結果、激しい暴風雨などの極端な気象現象が頻繁に発生し、気象は短い周期で著しい変化を起こし、雨水が土地を潤す降水の自然法則を乱し、従来の農業経営および、農産物の収穫と価格に深刻な影響を及ぼすものと考えられる。そこで、生産効率の高い水耕栽培が、生産者が生産効率を高めるための選択肢の一つになったのである。水耕栽培は、耕地の減少、灌漑用水の大量消費、化学肥料の乱用による土地の劣化などの問題を改善したが、培養液の垂れ流しによる河川の酸化の悪影響、水耕栽培野菜の含有する硝酸態窒素の高残留量が人々の健康を損ねるなどの悪影響を生み出した。本発明は、上記の環境破壊、灌漑用水の浪費、安全で衛生的な野菜を提供することができない従来の農耕、水耕栽培または有機栽培に対して、独創的で、効果的な改善方法を提供する。
【特許文献1】特許第3687455号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水耕栽培により硝酸態窒素の含有量が低く、人体に悪影響を及ぼさない低硝酸態窒素野菜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明は、低硝酸態窒素野菜およびその栽培システムと方法を提供する。本発明の低硝酸態窒素野菜は、硝酸態窒素の検出量が450ppm以下であることを特徴とする。本発明の一実施形態による野菜の硝酸態窒素含有量の減少方法は、「水耕栽培装置」および「培養液供給中断栽培法」を本実施形態の説明における範例となす。この方法は、野菜の硝酸態窒素含有量を450ppm以下に減少させる能力(〔図1〕参照)があり、灌漑用水の節約、培養液の回収およびび再利用の簡単さ、水耕廃液の垂れ流し根絶、野菜の成長速度の増進、野菜の単位面積当たりの収穫効率の増加など、その特徴及び作用効果において、新規性、進歩性および産業における実用性などの発明構成要件に該当し、その特徴は以下のとおりである。
(1)野菜の硝酸態窒素含有量を450ppm以下に減少させることが可能である。
(2)培養液の回収および再利用が簡単にできる。
(3)灌漑用水の節約が可能である。
(4)培養液のEC/ph値を正確に制御することが可能である。
(5)多層の栽培方法により土地利用効率を高めることが可能である。
(6)耕作に必要な人力を大幅に減少させることが可能である。
(7)土壌を原因とする害虫の根絶が可能である。
【0007】
本発明の一実施形態による野菜の硝酸態窒素含有量の減少方法は、水耕栽培技術を採用している。培養液の供給、回収および貯蔵に配水管を利用しているのが特徴で、野菜の成長過程で配水管内の培養液を野菜の根に供給し吸収させ、培養液のph値が上昇すると、すぐph値を低下させ、培養液のEC値が上昇すると、すぐEC値を低下させ、培養液の成分を常に野菜の吸収に最適な状態に維持する。本発明は、灌漑用水の節約、水耕廃液の垂れ流し根絶および土壌を原因とする害虫の根絶など進歩性および実用性を兼ね備え、農業栽培技術上すぐれた効果を発揮する。
【0008】
本実施形態は、配水管を利用しているのが特徴で、従来の水耕栽培と異なり、効果的に培養液および水の使用量を減少させることができる(〔図5〕参照)。また、培養液の供給、回収および再利用の簡単さという利点があるが、水耕栽培野菜の成長に必要な培養液を常に十分供給する(〔図1〕参照)。本実施形態の水耕栽培技術は、塩化ビニル樹脂管を基礎にしており、培養液回収の便利さという特性を持っている。これにより、培養液の廃液の垂れ流しを根絶でき、さらに有効に野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素の含有量を450ppm以下に抑えることができる。また、本実施形態の水耕栽培技術は、不透光材質である塩化ビニル樹脂管を基礎にしているため、日光が直接培養液に照射しないので、各種の藻類や細菌が培養液内で繁殖するのを防ぎ、各種の藻類や細菌が栽培過程において野菜と培養液中の栄養分を争い合うのも防ぐことができる。これにより、藻類や細菌が分泌するアルカリ物質が培養液に溶け出すのをさらに防ぎ、培養液のph値を安定して維持し、ph値が上昇して野菜の根が培養液を吸収する効率を低下させるのを防ぐ(ph値が5.5〜6.5の時、植物の根の吸収効率が最も良い)。
【0009】
上記のように、本実施形態の野菜の硝酸態窒素含有量の減少方法は、従来の水耕栽培および土地耕作とは異なる。本実施形態は、以下の六つの特色を持ち、農業栽培技術向上の利点といえる。
(1)灌漑用水を70%節約可能である
(2)水耕廃液垂れ流しの根絶。
(3)土地を酸化させない。
(4)土壌を原因とする害虫の根絶が可能である。
(5)野菜の硝酸態窒素含有量の減少が可能である。
(6)野菜が成長する速度を速めることが可能である。
【0010】
本実施例の第一の特色は、従来の農業において農作物に大量の灌漑用水を供給することにより、最終的に良好なる収穫が得られることが期待できるという不合理な状況に着目したことである。従来の農業において灌漑用水がどこに使われるかを詳細に分析してみると、大量の灌漑用水はすべて農作物に吸収されたわけでなかったことがわかった。実際に野菜の成長周期において必要な水の量を計測し統計してみると、一株の野菜が一日に必要な水は平均で僅か100C.C.で十分であることがわかった。しかし、従来は一日に平均約200C.C.〜500C.C.(土壌の水はけにより異なる)使用し、貴重な水資源を無駄に浪費していた。従来の農業では、灌漑用水が大体50%〜90%の割合で地下に沁み込んで流出したり、太陽熱により蒸発したりして無駄に浪費されていた。従来の農業における灌漑用水の浪費は、日増しに水不足が深刻になる現在において、解決が待たれる問題である。本実施例による野菜栽培は、大量の灌漑用水を節約することができる。必要な水は従来の僅か25%〜30%程度で、野菜が吸収し切れなかった水や培養液はすべて回収および再利用することができる。
【0011】
本実施例の第二の特色は、従来の水耕栽培の重大欠点である廃液垂れ流しによる悪影響を解決したことである。従来の水耕栽培の培養液は、太陽光線を浴びるのを防ぐのが困難で、培養液内で藻類や細菌が繁殖することを避けることができず、太陽光線および細菌の繁殖が培養液内の硝酸塩類を急速に分解(発酵)し、培養液の温度を上昇させてしまい、野菜の根腐れを生じる原因の一つであった。このため、使用できなくなった廃液は頻繁に河川に垂れ流される一方で、新しい培養液に交換することが水耕栽培の一般的な作業になってしまい、河川の水質を酸化させる主な原因になっている。上記の原因により、台湾政府の農業管理機関は、法律をもって水耕栽培を禁止してはいないが、水耕栽培を主要な栽培方法として農民に勧めてもいない。本実施例の水耕栽培は、培養液の回収および再利用が可能で、従来の水耕栽培に付きものの廃液の垂れ流しという問題は一切存在しない。また、培養液は回収および再利用が可能なので、効果的に生産コストを下げることができる。
【0012】
本実施例の第三の特色は、化学肥料を土壌内に一切使用しない栽培方法を提供し、土壌を酸化または劣化させないことである。土壌栽培は、肥料の使用量を正確に制御することが困難で、灌漑用水または雨水により肥料が土壌から無駄に流失するため、肥料の使用不足を心配するあまり、過度に使用してしまうことがよくある。本実施例は、定時、定量および野菜の異なる成育段階に応じて必要な培養液を供給する。また、本実施例の水耕栽培方法は、野菜の根に直接培養液を供給するため、経済的であるばかりでなく、化学肥料の過度の使用によって、土壌を酸化および劣化させることを防ぐことができる。本実施例の野菜栽培工程は、全く土壌と接触しないため、化学肥料による土壌汚染を完全に防ぐことができる。
【0013】
本実施例の第四の特色は、従来の水耕栽培では全体的および専門的知識に欠け、好ましくない後遺症が多かったが、本実施例はそれらの問題を解決した。水耕栽培野菜の栽培過程では、根は常に培養液に浸漬しているため、空気に接触できず、呼吸を行なうことができない。これにより、野菜内部の硝酸態窒素含有量が土壌栽培の野菜より遥かに高くなり、硝酸態窒素が超過する原因の一つとなっている。水耕栽培野菜は根が呼吸できないため、野菜内部の酵素が硝酸態窒素に対し効果的に新陳代謝を行うのに十分な酸素を提供できない。また、水耕栽培の培養液は、濃度が高すぎることが多く、水耕栽培野菜の正常な光合成メカニズムが負荷できる量を遥かに越えてしまい、野菜の茎葉内に過量の硝酸基(NO3−)が蓄積し、アミノ酸(amino acid)に転化したり、最終的にタンパク質(protein)に合成したりすることができない。硝酸基(NO3−)は、人体が代謝できない元素の一つで、多量の硝酸基(NO3−)が食用されて、人体の消化器官に入ると、消化器官内の消化酵素の化学作用により、亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)に転化される。亜硝酸アンモニウムは、発がん性物質であると考えられ、過度の摂取は健康に悪影響を与えてしまう。また、臨床医学により、ブルーベビー症候群になる可能性があることがわかっている。幼児が硝酸塩を多量に摂取すると、硝酸基(NO3−)が血液中に混入し、ヘモグロビンに酸素と結合する機能を失わせ、血液は青紫色を呈し、呼吸困難を起こし、場合によっては窒息してしまうこともある。ブルーベビー症候群以外に、胃腸癌を引き起こす原因の一つでもある。亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)は、人体の赤血球を破壊し、細胞を急速に老化させてしまうことさえある。先進諸国では、消費者の健康を守るため、既に野菜の硝酸含有率の規制値が設けられており、例えばドイツでは幼児が食用するホウレンソウは、250ppmを越えてはならない。WHOが提唱する体重1Kgあたりの硝酸塩の摂取量は、一日3.6mg以下で、体重60Kgの人が一日に摂取できる硝酸塩の安全残留量は500ppmを越えてはならない。
【0014】
EUでは既に食用野菜の硝酸含有率の規制値が設けられており、2,000〜3,000ppm以下である。中国の規制値はさらに厳しく、450ppm以下である。台湾では冬に生産される野菜は、日照不足、化学肥料の使用過度、および市場に供給するため、夜明け前に収穫されてしまうという要因があり、野菜の硝酸基(NO3−)残留量は3,000〜4,000ppmになってしまうことさえ多々ある。政府当局は、現時点では依然として硝酸基(NO3−)残留量の規制値についていかなる態度も示していない。これにより、本発明が採用する規制値は、世界で最も厳しい中国の規制値(450ppm以下)を基準としており、本発明が達成する硝酸基(NO3−)残留量は、世界の農業関係者が想像できなかった数値で、世界で唯一、野菜が含有する有害物質に定量制御を実現する。
注:硝酸基(NO3−)濃度=硝酸態窒素(NO3− −N)濃度×4.43
【0015】
本実施例は、野菜に蓄積された過料の硝酸基(NO3−)の安全性に対して、改善を加えたもので、従来の土壌栽培および水耕栽培野菜が含有する可能性がある過度の硝酸基(NO3−)の残留を防ぎ、健康に悪影響を及ぼす事態を避けることができる。一般の土壌栽培野菜は、根が土壌の土砂間に隙間を有するため、空気の流れがあり、自由に呼吸ができる。根の呼吸により野菜内部に取り入れられた酸素(O2)は、野菜に硝酸態窒素(NO3−―N)を急速に消費させ、太陽光が充分でさえあれば、ふつう硝酸基(NO3−)が過度に蓄積(約1,500〜2,000ppm)されるのを防ぐが、収穫時に天候不順に見まわれ、光合成が充分行なえないと、土壌栽培野菜の茎葉内の硝酸基(NO3−)含有量が超過(約2,500〜3,500ppm)することがよくある。従来の水耕栽培野菜は、根が培養液内に長時間浸り、直接酸素呼吸できない。また、培養液内の硝酸塩類の濃度が高いため、収穫時期になっても、状況は変わらない。土壌栽培が野菜の収穫前の随分前に、肥料の使用を停止しているのとは異なっている。従来の水耕栽培装置は、培養液の供給を段階的に分けて制御することができなかった。これにより、水耕栽培野菜内に過度の硝酸基(NO3−)(約3,000〜4,500ppm)が含有されることがよくあった。野菜の硝酸態窒素(NO3−―N)残留量が過度に高いと、茎葉部分の硝酸基(NO3−)濃度は4,500ppmを越えてしまう。本実施例は、本発明の制御方法により実際に実験を行なった。サンプル野菜の硝酸態窒素(NO3−―N)含有量(サンプル野菜は乾燥されクロロフィルを破壊された後、硝酸態窒素が測定できる。サンプル野菜の重量と乾燥後の重量との比率は4.8%であった。)に対し制御を加えた結果、実際に測定した硝酸態窒素(NO3−―N)含有量は、僅か358ppm(国立中興大学農業及自然資源学院分析結果報告書を参照)で、EUが定めた食用野菜の硝酸含有率の規制値(EUの食用野菜の硝酸含有率の規制値を参照)を下回り、従来の土壌栽培および有機栽培野菜の硝酸含有率を遥かに下回っている。
注:検査方法については、NIEA W415.52Bを参照。
【0016】
従来の土壌栽培野菜が必要とする窒素(N2)は、尿素[CO(NH22]が主な供給源であるが、ふつう植物の根は、尿素を直接吸収することができない(少数の根粒類植物を除く)。窒素(N2)元素は、自然界の循環において、まず土壌内の細菌または真菌により、尿素[CO(NH22]中の窒素(N2)をアンモニア(NH3)または硝酸塩類に転化し、その後、アンモニア(NH3)または硝酸塩類は更に、亜硝化細菌の発酵を経て、亜硝酸基(NO2)に分解される。最後に、硝化細菌は、再び亜硝酸基(NO2)に対し、二度目の発酵分解を行ない、最後に硝酸基(NO3−)に転化する。転化後、尿素[CO(NH22]中の窒素(N2)元素は、完全に硝酸基(NO3−)に分解されてはじめて植物の根に吸収されると共に、光合成により硝酸基(NO3−)をアミノ酸(amino acid)および二酸化炭素(CO2)に転化して、最後に、アミノ酸(amino acid)は野菜に有用なタンパク質(protein)に合成される。その転換のメカニズムは、尿素[CO(NH22]が細菌または真菌により初期分解(発酵)されてアンモニア(NH3)となり、土壌内の特殊な細菌により数回分解(発酵)され、アンモニア(NH3)が硝酸基(NO3−)に転化される。硝酸基(NO3−)になり、ようやく野菜に吸収利用され、アミノ酸(amino acid)に転化され、最後に、野菜の光合成により、アミノ酸を野菜の茎根骨幹内部に有用なタンパク質(protein)に合成する。自然界では、一部の根粒類植物は、その根粒内に寄生する「窒素固定細菌」群落により、直接、自然界のアンモニア(NH3)や空気中の窒素(N2)を吸収利用することができる。アンモニア(NH3)が植物に吸収される化学過程を硝化作用と称し、その化学反応式は、以下のようになっている。
[(NO4+)→(亜硝化細菌分解)→(NO2−)→(硝化細菌分解)→(NO3−)]
【0017】
従来の水耕栽培が使用する培養液(肥料)は、窒素、リン、カリウム、カルシウム、硫などである。窒素は、培養液内に調合された硝酸カルシウム[Ca(NO3−)2]や硝酸カリウムK(NO3)など硝酸塩類を主な供給源としている。水耕栽培野菜の根は、長時間、培養液内に直接浸され、硝酸基(NO3−)などの成分を吸収し続け、効果的に新陳代謝を行なうことができず、野菜内部の硝酸態窒素(NO3−―N)含有量は必然的に極めて高くなる。この問題の解決策として、培養液内の硝酸基(NO3−)の濃度を適切に制御したり、各成長段階での供給量を設定したりすることが挙げられる。日照量の多寡、温度の高低、または野菜生長過程の違いにより、適時に培養液の供給量や濃度を調整する。例えば、快晴の日照時間が長い状況下では、硝酸基(NO3−)濃度が少し高めの培養液を提供して野菜の速い生長を促す。活発な光合成作用が野菜に吸収された硝酸基(NO3−)をアミノ酸(amino acid)に還元させ、タンパク質(protein)に合成することができるからである。反対に、天候不順の場合は、培養液内の硝酸基(NO3−)の濃度を低くして、不十分な光合成により、硝酸基(NO3−)が野菜の内部に過度に残留するのを防ぐ。硝酸基(NO3−)が人体に摂取されると、消化器官と消化酵素に作用が生じた後、人体に有害な亜硝酸アンモニウム(NH4NO2)に転化される。本発明は、上記した水耕栽培野菜の問題点を解決する。野菜の収穫前の数日間、培養液(硝酸塩類)の供給を完全に中断して、野菜が基本的な新陳代謝が維持できるように、水のみ供給する。これが本実施形態の「培養液供給中断栽培法」である。野菜に新陳代謝を行なわせ、野菜内部に蓄積した硝酸基(NO3−)を収穫日の前までに、強制的にアミノ酸(amino acid)に還元させる。つまり、野菜に十分な光合成(総日照量は900,000LUX.以上)を行なわせ、野菜内のアミノ酸(amino acid)をタンパク質(protein)に転化させることにより、市販されている野菜の硝酸基(NO3−)含有量が過度に高いという状況を根本的に解決することができる。市販されている野菜の硝酸基(NO3−)含有量が過度に高いのは、主に野菜が過度に硝酸基(NO3−)を吸収したからである。また、野菜が生長期間に行なった光合成(6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2↑)の時間または活発性の不足が、野菜にATM酵素を十分に作らせることができず、吸収された硝酸基(NO3−)を円滑にアミノ酸(amino acid)に転化させたり、タンパク質(protein)に合成することができなかったことも、重要な原因である。野菜が、蓄積した硝酸基(NO3−)を消費してアミノ酸(amino acid)に転化させたり、タンパク質(protein)に合成したりする前に、早々と収穫されてしまっているからである。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明は、硝酸態窒素が含まれる培養液により野菜を水耕栽培して、野菜をある程度生育させた後、野菜の収穫前の一定期間、水のみで野菜を水耕栽培することにより、野菜の内部に残留する硝酸態窒素をほとんど消費させ、人体に悪影響を及ぼさない低硝酸態窒素野菜を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて、本発明の低硝酸態窒素野菜の栽培法を説明する。図1は、本発明の一実施形態による野菜の硝酸態窒素含有量の制御方法のシステムを示した模式図である。図1に示すように、本発明は、野菜の特定成分に対して、定量制御を加えるシステムで、培養液供給および循環システム1および水耕栽培部2から成る。
【0020】
図2は、本発明の一実施形態による培養液供給および循環システムを示した模式図である。培養液の供給および循環システム1は、水耕栽培部2内で栽培する野菜に対して、培養液の供給および循環を行なう。まず、培養液の供給および循環システム1は、水耕栽培部2内の野菜の培養液のEC値およびph値を常時検出し、必要に応じて、培養液のEC値およびph値を調節し、2内の野菜に最適で充分な栄養を与え、迅速に成長させ、単位面積当たりの収穫効率を高める。野菜をある程度生育させた後、つまり収穫前の一定期間(本実施形態では72時間)、培養液の供給および循環システム1が培養液を回収し、水だけを提供し、水耕栽培部2内の野菜に基本的な新陳代謝を行なわせる。水耕栽培部2内の野菜に十分に光合成を行なわせ、野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を迅速に消費させると、健康指向の低硝酸態窒素野菜を順調に栽培することができる。
【0021】
培養液の供給および循環システム1は、培養液貯留タンク11、灌水貯留タンク12、培養液加圧ポンプ13、培養液回収ポンプ14、培養液調整ポンプ15、EC/ph値検知制御装置16、UV紫外線殺菌灯17および精密濾過器18を備える。培養液貯留タンク11の上方に培養液液位制御装置112が配置され、培養液液位制御装置112の機能は培養液貯留タンク11の容量を制御することで、培養液を回収するのに必要な空間を確保する。培養液貯留タンク11の下方には、培養液制御弁111が配置され、培養液制御弁111は培養液を供給する弁である。培養液貯留タンク11と培養液供給管21との間には培養液加圧ポンプ13が配置され、培養液加圧ポンプ13の機能は培養液に圧力を加え、精密濾過器18を通過させ、不純物を濾過した後、多孔水耕栽培管22に送って野菜を成育させるのに用いる。灌水貯留タンク12の上方には灌水水位制御装置122が配置され、灌水水位制御装置122の機能は灌水貯留タンク12の通常の容量を制御することである。灌水貯留タンク12の下方には、灌水制御弁121が配置され、灌水制御弁121は灌水を供給する弁である。灌水制御弁121がオンに設定されると、培養液制御弁111もオフに設定され、多孔水耕栽培管22が野菜に水を供給し、野菜が光合成を行なうのを助け、茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を消費させる。これとは逆に、培養液は、多孔水耕栽培管22に供給されて、野菜を迅速に成長させる。培養液回収ポンプ14は、培養液回収管23から循環して来た培養液に圧力を加え、UV紫外線殺菌灯17を通過させ、殺菌処理を行なった後、培養液貯留タンク11に回収し再利用に備える。培養液貯留タンク11の外側にはEC/ph値検知制御装置16が配置され、培養液のEC値およびph値の変化を常時検出するために、EC/ph値検知線165と培養液貯留タンク11の出口とは接続されている。EC/ph値制御線166により信号を送信し、EC液容器161またはph液容器162を作動させ、培養液のEC値およびph値を調整する。EC液容器161またはph液容器162は、EC/ph値検知制御装置16から送信されてくる信号を受信すると、作動し、EC液はEC液注入管163を介し、ph液はph液注入管164を介して培養液貯留タンク11内に送り込まれて培養液に混合され、培養液のEC値およびph値を常に設定したレベルに維持する。EC値またはph値が上昇すると、培養液調整ポンプ15が作動し、灌水貯留タンク12から水を培養液貯留タンク11に送り、培養液のEC値またはph値を下げる。灌水貯留タンク12の水が不足すると、灌水制御弁123がオンされ、水を灌水貯留タンク12に貯蔵し、必要に備える。
【0022】
図3は、本発明の一実施形態による水耕栽培部を示した模式図である。水耕栽培部2は、培養液供給管21、多孔水耕栽培管22、培養液回収管23および人工照明装置24を備える。培養液供給管21および培養液平衡管211の機能は、培養液加圧ポンプ13から供給される培養液を迅速に多孔水耕栽培管22内の培養液設定液位まで満たし、野菜を迅速に成長させることである。野菜の収穫前の一定期間、同じように培養液加圧ポンプ13を利用して、本来培養液を満たす空間に水を供給し、野菜に基本的な新陳代謝を行なわせ、光合成を行なわせ、野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を迅速に消費させる。多孔水耕栽培管22は、直線を呈し、一定の間隔をあけて一列に並んだ複数の円形栽培孔221があり、野菜の根部を一列に並んだ複数の円形栽培孔221の1つに通して多孔水耕栽培管22内に入れ、培養液を吸収させ、迅速に成長させる。収穫前の一定期間、水だけを吸収させ、野菜に基本的な新陳代謝を行なわせ、十分に光合成を行なわせ、野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を迅速に消費させ、硝酸態窒素の含有量を450ppm以下に抑える。培養液の供給を停止した収穫前の一定期間内において、曇りや雨などの天気が連続し、深刻な日照不足になり、野菜が浴びる一日の累積日照量が300,000LUX./hr.に満たないと、人工照明装置24が作動し、多孔水耕栽培管22の日照量を300,000LUX./hr.まで増加させる。人工照明装置24の作動は、光センサ241が日照量を測定し、光信号伝達線242を介して信号を人工照明装置24に送信し計算を行なう。日中の12時間において、日照量を計算するが、不足している場合は、夜間の12時間を利用して、日照量を補充する(本実施形態では15,000LUX./hr.)。電線243を介して電源を高出力水銀灯群244に供給し高出力水銀灯群244を作動させ、不足した日照量を補充し、野菜に人工照明のエネルギーを吸収させ、茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を迅速に消費させると、天候の変化の影響を受けずに、健康に良くて、自然の環境下または従来の技術では生産することができない低硝酸態窒素野菜を毎日収穫することができる。人工照明システムは、特殊な不良天候下において作動し、当日の日照量が不足した場合にのみ、不足量を補充し、むやみに人工照明システムを作動させ、貴重なエネルギーを浪費しているわけではない。培養液回収管23は、培養液回収弁231を介して培養液回収ポンプ14に接続していて、培養液回収弁231は常時オン状態に設定されて、培養液の回収およびEC値およびph値調整液の補充を行なう。システムが循環に設定されていない場合、培養液回収弁231はオフ状態で、排水弁232が排水のため、オン状態に設定され、多孔水耕栽培管22内で使用された水は水処理装置(本発明の申請内容にない)に送られ、消毒、殺菌および濾過処理後、再利用される。
【0023】
本実施形態の野菜の硝酸態窒素含有量を制御する方法は、自然法則を利用した技術の高度な発明で、そのメカニズムは本発明の特許請求範囲に採用されている。水耕栽培システムに培養液供給中断法を用いて、野菜を収穫する前の一定期間、光合成を行なわせ、野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を充分に消費させる。また、野菜を収穫する前の一定期間内に、培養液の回収を行ない、水のみを野菜に供給する。本発明の「培養液供給停止法」は、野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素を強制的に消費させるもので、そのメカニズムは以下のようになっている。
(硝酸基NO3−)((光合成の転化)((アミノ酸amino acid)((光合成の合成)((タンパク質protein)
注:本実施形態の培養液供給中断法期間内における総日照量は、900,000LUX.以上である。培養液供給中断法の期間は、収穫前の72時間である。生産された野菜の茎葉内に蓄積された硝酸態窒素含有量は、358ppmである。検査方法については、NIEA W415.52Bを参照。検査機関は、国立中興大学農業及自然資源学院である。
【0024】
本発明では好適な実施形態を前述の通りに開示したが、これらは決して本発明を限定するものではなく、当該技術を熟知する者は誰でも、本発明の精神と領域を脱しない範囲内で各種の変更や修正を加えることができる。従って、本発明の保護の範囲は、特許請求の範囲で指定した内容を基準とする。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による野菜の硝酸態窒素含有量の制御方法のシステムを示した模式図である。
【図2】本発明の一実施形態による培養液の供給および循環システムを示した模式図である。
【図3】本発明の一実施形態による水耕栽培部を示した模式図である。
【図4】本発明の一実施形態による多孔水耕栽培管の側面図。
【図5】本発明の一実施形態および従来の水耕栽培の水需要量の比較図。
【符号の説明】
【0026】
1 培養液の供給および循環システム
11 培養液貯留タンク
111 培養液制御弁
112 培養液液位制御装置
12 灌水貯留タンク
121 灌水制御弁
122 灌水水位制御装置
13 培養液加圧ポンプ
14 培養液回収ポンプ
15 培養液調整ポンプ
16 EC/ph値検知制御装置
161 EC液容器
162 ph液容器
163 EC液注入管
164 ph液注入管
165 EC/ph値検知線
166 EC/ph値制御線
17 UV紫外線殺菌灯
18 精密濾過器
2 水耕栽培部
21 培養液供給管
211 培養液平衡管
22 多孔水耕栽培管
221 一列に並んだ複数の円形栽培孔
23 培養液回収管
231 培養液回収弁
232 排水弁
24 人工照明装置
241 光センサ
242 光信号伝達線
243 電線
244 高出力水銀灯群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水耕法により栽培された野菜であって、
培養液を供給して成長させ、収穫に先立って培養液の供給を止めて、水により栽培して植物体内に蓄積された硝酸態窒素を消費させることにより、硝酸態窒素の含有量を450ppm以下に低下させた、
ことを特徴とする低硝酸態窒素野菜。
【請求項2】
水耕法による野菜栽培において、
培養液により野菜を成育して一定期間栽培後、その収穫に先立って培養液の供給を停止、回収し、
替わって水を供給して光合成を行なわせて植物体内に蓄積された硝酸態窒素を消費させて、
硝酸態窒素の含有量を450ppm以下に減少させることを特徴とする低硝酸態窒素野菜栽培方法。
【請求項3】
培養液を水耕栽培部に供給して回収すると共に、培養液に替えて水を供給して回収する培養液供給及び循環システムと水耕栽培部とからなることを特徴とする低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項4】
前記培養液供給および循環システムは、培養液貯留タンク、灌水貯留タンク、培養液加圧ポンプ、培養液回収ポンプ、培養液調整ポンプ、EC/ph値検知制御装置、UV紫外線殺菌灯および精密濾過器を備えることを特徴とする請求項3に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項5】
前記水耕栽培部は、培養液供給管、野菜を植え込む孔を備えた多孔水耕栽管、培養液回収管および人工照明装置を備えることを特徴とする請求項3に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項6】
前記培養液貯留タンクは、培養液制御弁および培養液液位制御装置を備えることを特徴とする請求項4に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項7】
灌水貯留タンクは、灌水制御弁および灌水水位制御装置を備えることを特徴とする請求項4に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項8】
前記EC/ph値検知制御装置は、EC液容器、ph液容器、EC液注入管、ph液注入管、EC/ph値検知線およびEC/ph値制御線を備えることを特徴とする請求項4に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項9】
前記培養液供給管は、培養液平衡管を備えることを特徴とする請求項5に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項10】
前記多孔水耕栽管は、一列に並んだ複数の円形栽培孔を備えることを特徴とする請求項5に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項11】
前記培養液回収管は、培養液回収弁および排水弁を備えることを特徴とする請求項5に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。
【請求項12】
前記人工照明装置は、光センサ、光信号伝達線、電源および高出力水銀灯群を備えることを特徴とする請求項5に記載の低硝酸態窒素野菜栽培システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−61570(P2008−61570A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242680(P2006−242680)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(506304185)康泉生物科技股▲ふん▼有限公司 (1)
【Fターム(参考)】