説明

低硫黄留出油の製造方法

本発明は、留出油沸点範囲原料ストリームをバルク金属水素化触媒の存在下に水素化することによる低硫黄留出油生成物の製造方法に関する。前記触媒は、i)モリブデン、タングステンおよびそれらの混合物からなる群から選択される第VIB族金属成分;ii)バナジウム,ニオブ、タンタルおよびそれらの混合物からなる群から選択される第V族金属成分;およびiii)ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの混合物からなる群から選択される第VIII族金属成分を含み、前記金属成分は、酸化物として計算して、触媒の重量を基準として触媒の少なくとも50重量%を構成し、金属成分間のモル比は、式(第VIB族+第V族):(第VIII族)によって表して、0.35:1〜2:1の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留出油範囲内で沸騰する炭化水素原料ストリームの品質向上方法に関する。より詳しくは、本発明は、留出油沸点範囲原料ストリームをバルク金属水素化触媒の存在下に水素化することによる低硫黄留出油生成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環境および規制イニシアチブから、留出油燃料中の硫黄および芳香族の両者について、より低いレベルがずっと求められている。例えば、欧州連盟で2005年に市販される留出油燃料に対する提案硫黄限界値は、50wppm以下である。また、全芳香族のより低いレベル、同様に留出油燃料およびより重質の炭化水素生成物中に見出される多環芳香族のより低いレベルを求めるであろう提案限界値がある。更に、CARB参照ディーゼルおよびスウェーデンのクラスIディーゼルに対する最大許容全芳香族レベルは、それぞれ10および5体積%である。更に、CARB参照燃料は、多環芳香族(PNA)1.4体積%超を許容しない。従って、より多くの検討が、現在、これらの提案規制の理由で、水素化技術に関して為されている。
【0003】
しかし、低硫黄、低窒素の原油の供給が減少するにつれて、製油所では、より多い硫黄および窒素含有量を有する原油が処理されており、同時に環境規制により、生成物中のこれらへテロ原子のより低レベルが義務化されている。従って、活性が改良された水素化触媒、およびますます効率的なディーゼル脱硫および脱窒素方法に対する必要性が、継続している。例えば、所望の最終硫黄含有量において、より活性な触媒は、より穏やかな処理条件(エネルギー節約)下での運転、または再生間の触媒寿命間隔(サイクル間隔)の増大を可能にするであろう。
【0004】
一方法においては、ハイドロタルサイト関連の一群の化合物、例えばモリブデン酸ニッケルアンモニウムが、これらの処理で用いられる触媒として調製されてきた。X−線回折分析では、ハイドロタルサイトは、正荷電されたシートと、シート間のギャラリーに配置された交換可能なアニオンとを有する層状相からなることが示される。関連するモリブデン酸ニッケルアンモニウムは、モリブデン酸アニオンを、層間ギャラリー内に、オキシ水酸化ニッケルのシートに結合されて有する。例えば、非特許文献1を参照されたい。これらの物質の調製はまた、非特許文献2、非特許文献3および非特許文献4、並びに非特許文献5によって報告されている。
【0005】
他の方法においては、特許文献1に、炭化水素原料を水素化するための触媒が記載される。これは、第VIB族金属成分、第V族金属成分、および任意に第VIII族金属成分の混合硫化物を含有する。この文献には、少なくとも一種の混合硫化物0.01〜100%、好ましくは0.05%〜100%、より好ましくは0.1%〜100%を含む塊状触媒が記載される。触媒は、恐らくは、更に、少なくとも一種の第VIII族金属0〜99.99%、好ましくは0〜99.95%、より好ましくは0〜99.9%を含有する。この文献の好ましい担持触媒は、一般に、全触媒質量に関する重量%で、少なくとも一種の母材物質1%〜99.9%、好ましくは5%〜99.5%、より好ましくは10%〜99%、並びに少なくとも一種の第VB族金属および少なくとも一種の第VIB族金属の少なくとも一種の混合硫化物0.1〜99%、好ましくは0.5%〜95%、より好ましくは1%〜90%を含む。触媒は、恐らくは、更に、少なくとも一種の第VIII族金属0〜30%、好ましくは0〜25%、より好ましくは0〜20%を含有する。第VIII族金属成分が、この文献の触媒中に、ともかく存在する場合には、それは、限定された量で存在する。より詳しくは、実施例7において、触媒100g当たり、モリブデン0.070モル、ニオブ0.029モル、およびニッケル0.029モルを含有する触媒が調製される。この触媒は、Mo:Nb:Ni比2.4:1:1を有する。他の実施例においては、第VIII族金属成分の量は、第VIB族および第V族金属成分の量に関して、更により低い。
【0006】
また、依然としてより限定的な環境規制を満たす燃料を製造する方法(水素化など)は、技術的に周知であり、これは、典型的には、石油ストリームを、担持触媒の存在下に水素化条件で水素を用いて処理する工程を必要とする。触媒は、通常、第VI族金属を、助触媒としての一種以上の第VIII族金属と共に耐火性担体上に担持してなる。水素化脱硫、同様に水素化脱窒素に対して特に適切な水素化触媒は、一般に、モリブデンまたはタングステンをアルミナ上に含有する。これは、コバルト、ニッケル、鉄、またはそれらの組み合わせなどの金属に助触される。コバルト助触アルミナ担持モリブデン触媒は、限定的な仕様が水素化脱硫である場合に最も広く用いられ、一方ニッケル助触アルミナ担持モリブデン触媒は、水素化脱窒素、部分芳香族飽和、同様に水素化脱硫に対して最も広く用いられる。
【0007】
しかし、依然として、留出油沸点範囲炭化水素ストリーム中の硫黄および窒素含有量を低減する方法に対する技術的必要性が存在する。
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,071,402号明細書
【特許文献2】米国特許第6,156,695号明細書
【特許文献3】米国特許第6,534,437号明細書
【特許文献4】米国特許第6,162,350号明細書
【特許文献5】米国特許第6,299,760号明細書
【特許文献6】国際公開第00/41810号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6,534,437号明細書
【特許文献8】米国特許第6,162,350号明細書
【非特許文献1】Levin,D.、Soled,S.L.、およびYing,J,Y.著「化学沈殿法によって調製されたニッケルモリブデン酸アンモニウムの結晶構造」(Inorganic Chemistry、第35巻、第14号、第4191〜4197頁、1996年)
【非特許文献2】Teichner、およびAstier著(Appl.Catal.、第72号、第321〜29頁、1991年)
【非特許文献3】Teichner、およびAstier著(Ann.Chim.Fr.、第12号、第337〜43頁、1987年)
【非特許文献4】Teichner、およびAstier著(C.R.Acad.Sci.304(II)、#11、第563〜6頁、1987年)
【非特許文献5】Mazzocchia著(固体状態イオン、第63〜65頁、1993年、第731〜735頁)
【非特許文献6】モリブデン化学(化学データシリーズ、ブレティンCdb−14、1969年2月)
【非特許文献7】モリブデン化学(化学データシリーズ、ブレティンCdb−12a改定、1969年11月)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、低硫黄留出油生成物を留出油沸点範囲原料ストリームから製造するための方法に関する。前記方法は、
a)芳香族、窒素および有機結合硫黄汚染物を含有する留出油沸点範囲原料ストリームを、反応段において、水素含有処理ガスの存在下にバルク金属水素化触媒と接触させて、少なくとも蒸気生成物および液体留出油沸点範囲生成物を含む反応生成物を製造する工程であって、
前記留出油沸点範囲原料ストリームを、前記バルク金属触媒と効果的な水素化条件下で接触させ、前記バルク金属水素化触媒は、
i)モリブデン、タングステンおよびそれらの混合物からなる群から選択される第VIB族金属成分;
ii)バナジウム、ニオブ、タンタルおよびそれらの混合物からなる群から選択される第V族金属成分;並びに
iii)ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの混合物からなる群から選択される第VIII族金属成分
を含み、
前記金属成分(酸化物として計算)は、触媒の少なくとも50重量%を構成し、金属成分間のモル比は、金属成分間のモル比は、式(第VIB族+第V族):(第VIII族)=0.35〜2:1を満たす工程
を含む。
【0010】
本発明の一実施形態においては、前記方法は、
b)前記蒸気生成物を、前記留出油沸点範囲生成物から分離する工程;および
c)前記留出油沸点範囲生成物を回収する工程
を更に含む。
【0011】
本発明の一実施形態においては、前記効果的な水素化条件は、前記窒素および有機結合硫黄汚染物の少なくとも一部を除去し、前記芳香族の少なくとも一部を水素添加し、従って少なくとも、留出油沸点範囲原料ストリ−ムより低濃度の芳香族、並びに窒素および有機結合硫黄汚染物を有する留出油沸点範囲生成物を製造するのに効果的な条件である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
用語「バルク」および「非担持」は、本明細書に記載される水素化触媒に関連して用いられる場合には、同義であり、しばしば、互換的に用いられることが特記されるべきである。
【0013】
本発明は、有機結合硫黄汚染物を含有する留出油沸点範囲原料ストリームを、反応段において、バルク金属水素化触媒と接触させる工程を含む。バルク金属水素化触媒は、モリブデン、タングステン、およびそれらの混合物から選択される第VIB族金属成分、バナジウム、ニオブ、タンタル、およびそれらの混合物から選択される第V族金属成分、並びにニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの混合物から選択される第VIII族金属成分を含む。これらのバルク金属触媒の金属成分(酸化物として計算される)は、触媒の少なくとも50重量%を構成し、ここで金属成分間のモル比は、次式、即ち(第VIB族+第V族):(第VIII族)=0.35〜2:1を満たす。本明細書の発明者は、第VIII族金属成分が、バルク金属触媒中に存在する全金属成分の特定量を構成する場合には、活性が増大された触媒が得られることを見出した。
【0014】
本明細書で用いるのに適切な留出油沸点範囲原料ストリームは、炭化水素質原料材の精製から生じる留出油ストリームである。これらの留出油沸点範囲原料ストリームは、典型的には、145℃〜425℃の範囲で沸騰し、しばしば中間留出油または軽質ガス油と呼ばれる。これには、いわゆるディーゼル燃料が含まれる。従って、本明細書で用いるのに適切な留出油原料ストリームの限定しない例には、中間留出油または軽質ガス油、ナフサ、灯油、ジェット燃料、軽質ディーゼル油、加熱油、および重質ディーゼル油が含まれる。好ましくは、本明細書で用いられる留出油沸点範囲原料ストリームは、ディーゼル範囲内で沸騰する。即ち、ディーゼル沸点範囲原料ストリームであり、これには、上に定義された範囲145℃〜425℃で沸騰するストリームが含まれる。好ましくは、ディーゼル沸点範囲原料ストリームは、230℃〜345℃の範囲内で沸騰する。これらには、水素化されていないディーゼル沸点範囲原料ストリームが含まれる。これは、非水素化ディーゼル沸点範囲原料ストリームの混合物、予め水素化されたディーゼル沸点範囲原料ストリーム、水素化ディーゼル沸点範囲原料ストリームの混合物、並びに非水素化および水素化ディーゼル沸点範囲原料ストリームの混合物である。
【0015】
本明細書で用いるのに適切な留出油沸点範囲原料ストリームはまた、とりわけ、窒素および硫黄汚染物質を含有する。典型的には、これらのストリームの窒素含有量は、窒素50〜1000wppm、好ましくは窒素75〜800wppm、より好ましくは窒素100〜700wppmである。窒素は、塩基性および非塩基性の両窒素種として現れる。塩基性窒素種の限定しない例には、キノリンおよび置換キノリンが含まれてもよく、非塩基性窒素種の限定しない例には、カルバゾールおよび置換カルバゾールが含まれてもよい。留出油沸点範囲原料ストリームの硫黄含有量は、一般に、50wppm〜7000wppm、より典型的には100wppm〜5000wppm、最も典型的には100〜3000wppmの範囲であろう。硫黄は、通常、有機結合硫黄として存在するであろう。即ち、簡単な脂肪族、ナフテン、および芳香族メルカプタン、硫化物、ジおよびポリ硫化物などの硫黄化合物として存在するであろう。他の有機結合硫黄化合物には、チオフェン、テトラヒドロチオフェン、ベンゾチオフェン、並びにそれらのより高級な同族体および類似体などのヘテロ環硫黄化合物の群が含まれる。本明細書で用いるのに適切な留出油沸点範囲原料ストリームはまた、芳香族を含有する。これは、典型的には、留出油沸点範囲原料ストリームを基準として、0.05重量%〜2.5重量%の範囲の量で存在する。
【0016】
上記されるように、本発明を実施するに際して、留出油沸点範囲原料ストリームは、反応段において、水素含有処理ガスの存在下にバルク金属水素化触媒と接触される。反応段は、効果的な水素化条件下で運転される。「効果的な水素化条件」とは、有機結合硫黄汚染物の少なくとも一部を除去するのに効果的な条件を意味する。従って、留出油原料ストリームとバルク金属水素化触媒との接触により、少なくとも、留出油沸点範囲原料ストリームより低濃度の有機結合硫黄汚染物を有する留出油沸点範囲生成物が製造される。これらの条件には、典型的には、150℃〜425℃、好ましくは200℃〜370℃、より好ましくは230℃〜350℃の範囲の温度が含まれる。典型的な重量空間速度(「WHSV」)は、0.1〜20時−1、好ましくは0.5〜5時−1の範囲である。いかなる効果的な圧力も用いられることができる。圧力は、典型的には、4〜70気圧(4.05〜70.93バール)、好ましくは10〜40気圧(10.13〜40.53バール)の範囲である。好ましくは、「効果的な水素化条件」とは、硫黄100wppm未満、より好ましくは硫黄50wppm未満、最も好ましくは硫黄30wppm未満を有する留出油沸点範囲生成物を結果として得られるように選択される条件を意味する。理想的な実施形態においては、効果的な水素化条件は、留出油沸点範囲生成物が製造される時点で実施されている規制標準を満たすのに十分に低い硫黄濃度を有する留出油沸点範囲生成物を製造するように選択される。本発明の一実施形態においては、効果的な水素化条件は、窒素および有機結合硫黄汚染物の少なくとも一部を除去し、かつ留出油沸点範囲原料ストリーム中に存在する芳香族の少なくとも一部を水素添加するのに効果的である。従って、少なくとも、留出油沸点範囲原料ストリームより低濃度の芳香族、並びに窒素および有機結合硫黄汚染物を有する留出油沸点範囲生成物が、この実施形態において製造される。
【0017】
本開示の方法で用いるのに適切な水素含有処理ガスは、実質的な純水素からなることができるか、または精油所水素ストリーム中に典型的に見出される他の成分の混合物であることができる。水素含有処理ガスストリームは、硫化水素を殆ど、より好ましくは全く含有しないことが好ましい。水素含有処理ガスの純度は、水素少なくとも50体積%、好ましくは水素少なくとも75体積%、より好ましくは(最高の結果に対して)水素少なくとも90体積%であるべきである。水素含有ストリームは、実質的な純水素であることが、最も好ましい。
【0018】
上記されるように、留出油沸点範囲原料ストリームとバルク金属水素化触媒との接触は、反応段において生じる。反応段は、一つ以上の反応器または反応域からなることができ、そのそれぞれは、同じか、または異なる上記バルク金属水素化触媒の一つ以上の触媒床を含むことができる。他のタイプの触媒床が用いられることができるものの、固定床が好ましい。これらの他タイプの触媒床には、流動床、沸騰床、スラリー床、および移動床が含まれる。反応器、反応域の間、または同じ反応器中の触媒床の間の段間冷却または加熱が、用いられることができる。水素化中に生成される熱の一部は、回収されることができる。この熱回収の選択肢が利用不可である場合には、従来の冷却が、冷却水または空気など冷却設備によって、または水素クエンチストリームを用いることによって行われるであろう。このように、最適反応温度が、より容易に維持されることができる。
【0019】
本明細書で用いるのに適切なバルク金属水素化触媒は、モリブデン、タングステン、およびそれらの混合物から選択される第VIB族金属成分、バナジウム、ニオブ、タンタル、およびそれらの混合物から選択される第V族金属成分、並びにニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの混合物から選択される第VIII族金属成分を含む。バルク金属水素化触媒の金属成分(酸化物として計算される)は、触媒の少なくとも50重量%を構成し、バルク金属水素化触媒は、更に、金属成分間のモル比が式(第VIB族+第V族):(第VIII族)=0.35〜2:1を満たす点に特徴付けられる。モリブデンおよび/またはタングステンが、全第VIB族金属の少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、更により好ましくは少なくとも90モル%を構成することが好ましい。それは、特に、第VIB族金属が、本質的にモリブデンおよび/またはタングステンからなるように選ばれてもよい。ニオブおよび/またはバナジウムが、全第V族金属の少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、更により好ましくは少なくとも90モル%を構成することが好ましい。それは、特に、第V族金属が、本質的にニオブおよび/またはバナジウムからなるように選ばれてもよい。ニッケルおよび/またはコバルトが、全第VIII族非貴金属の少なくとも50モル%、より好ましくは少なくとも70モル%、更により好ましくは少なくとも90モル%を構成することが好ましい。それは、特に、第VIII族非貴金属が、本質的にニッケルおよび/またはコバルトからなるように選ばれてもよい。ニッケル単身を第VIII族金属成分として用いることが、特に好ましい。
【0020】
従って、本発明の好ましい触媒組成物には、金属成分が、本質的にモリブデン、ニッケル、およびバナジウムからなる触媒組成物、金属成分が、本質的にモリブデン、ニッケル、およびニオブからなる触媒組成物、金属成分が、本質的にタングステン、ニッケル、およびバナジウムからなる触媒組成物、並びに金属成分が、本質的にタングステン、ニッケル、およびニオブからなる触媒組成物が含まれる。本明細書の文脈においては、語句表現「本質的に〜からなる」および「本質的に〜からなっている」とは、当該の組成物が、引用された成分を含むが、その存在が当然に避けられることができない汚染金属を含んでもよいことを意味することが特記されるべきである。
【0021】
本発明の触媒における金属成分のモル比は、式(第VIB族+第V族):(第VIII族)=0.35〜2:1を満たす。好ましくは、第VIB族および第V族金属の全モル量、並びに第VIII族金属のモル量の比率は、少なくとも0.5:1、より好ましくは少なくとも0.6:1、更により好ましくは少なくとも0.75:1である。第VIB族および第V族金属の全モル量、並びに第VIII族金属のモル量の比率は、好ましくは、多くとも1.5:1である。第VIB族および第V族金属の全モル量が、第VIII族金属のモル量に関して非常に高い場合には、触媒の活性は、不十分であろう。第VIB族および第V族金属の全モル量が、第VIII族金属のモル量に関して非常に低いか、または換言すれば、第VIII族金属成分の量が非常に高い場合には、触媒の性能はまた、不十分であろう。最も好ましい範囲内での運転により、より少なく好ましい範囲内の組成の触媒より高活性の触媒がもたらされる。本発明の触媒における第VIB族金属/第V族非貴金属のモル比は、一般に、10:1〜1:10、好ましくは3:1〜1:3の範囲である。
【0022】
本明細書で用いるのに適切なバルク金属水素化触媒は、触媒組成物の全重量を基準として、少なくとも50重量%の金属成分(酸化物として計算される)を含み、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%(酸化物として計算される)含む。金属の重量%を酸化物として計算するに際しては、第VIB族金属は、三酸化物として計算され、第VIII族金属は、一酸化物として計算され、第V族金属は、五酸化物(例えばNbおよびV)として計算される。第VIB族金属、第V族金属、および第VIII族非貴金属の量は、空気中500℃での焼成後、触媒のAASまたはICPによって決定されることができる。
【0023】
上記に議論される金属成分に加えて、本発明で用いられるバルク金属触媒組成物はまた、結合剤またはキャリヤー物質、分解成分、従来の水素処理触媒等の従来の触媒成分を含むことができる。適切な結合剤およびキャリヤー物質の限定しない例には、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、チタニア、チタニア−アルミナ、ジルコニア、ボリア、カチオン性クレーまたはアニオン性クレー(サポナイト、ベントナイト、カオリン、セピオライト、またはハイドロタルサイトなど)、およびそれらの混合物が含まれる。好ましい成分は、シリカ、シリカ−アルミナ、アルミナ、チタニア、チタニア−アルミナ、ジルコニア、ベントナイト、ボリア、およびそれらの混合物であり、シリカ、シリカ−アルミナ、およびアルミナが、特に好ましい。適切な分解成分の限定しない例には、ゼオライトなどの結晶質分解成分(例えば、ZSM−5、(超安定)ゼオライトY、ゼオライトX、ALPO、SAPO、MCM−41)、シリカ−アルミナなどの非晶質分解成分、およびそれらの混合物が含まれる。いくつかの物質(例えば、シリカ−アルミナ)は、結合剤および分解成分として同時に機能してもよいことが特記されるべきである。所望により、触媒組成物は、いかなる更なる物質も含んでもよい。リン含有化合物、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、フッ素含有化合物、更なる遷移金属、希土類金属、またはそれらの混合物などである。
【0024】
本発明で用いられるバルク金属触媒は、多くの異なる形状に形成されることができる。適切な形状の限定しない例には、粉末、球体、柱体、環体、および対称または非対称多葉体(例えば、三および四葉体)が含まれる。押出し成形、ビード化、またはペレット化により生じる粒子は、通常、0.2〜10mmの範囲の直径を有し、それらの長さは、同様に、0.5〜20mmの範囲にある。これらの粒子が、一般に好ましい。粉末(例えば噴霧−乾燥により得られるものを含む)は、一般に、1μm〜100μmの範囲のメジアン粒径を有する。しかし、この一般的な範囲からの偏差はあり得る。
【0025】
本発明で用いるのに適切なバルク金属触媒は、硫黄含有触媒である。硫黄は、触媒中に多くの形態(例えば、全部または一部が金属硫化物の形態)で存在してもよい。それはまた、全部または一部が、金属成分に結合されない硫黄化合物の形態で存在してもよい。この場合には、硫黄は、水素化における触媒の使用中に、または水素の存在下における先行する還元/活性化工程中に、金属硫化物に転化されるであろう。本明細書で用いられるバルク金属触媒の硫黄含有量は、一般に、少なくとも8重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、更により好ましくは少なくとも20重量%である。本明細書で用いられるバルク金属触媒の硫黄含有量は、一般に、70重量%未満、好ましくは60重量%未満である。これは、バルク金属触媒の組成による。本発明で用いるのに適切なバルク金属触媒中に存在する硫黄の全量は、一般に、水素添加の金属を、MoS、WS、CrS、Co、Ni、FeS、NbS、VS、およびTaSにそれぞれ転化するのに必要な化学量論的硫黄量の70〜200%、より好ましくは80〜150%に相当するように選択される。
【0026】
熟練者に明白であろうように、本発明の触媒が、炭化水素原料の水素化で用いられる場合には、金属成分は、硫化形態で存在するであろう。本発明の好ましい実施形態は、従って、金属成分の少なくとも一部が硫化形態で存在する触媒である。この場合には、触媒は、本質的に、第VIII族非貴金属二硫化物を含まないことが好ましい。第VIII族非貴金属は、好ましくは(第VIII族非貴金属)として存在し、a/bは、0.5〜1.5の範囲である。これは、例えばXRDによって決定されることができる。モリブデンおよびタングステンは、好ましくは、少なくとも一部が、硫化触媒中に二硫化物として存在する。これは、例えばXRDによって決定されることができる。クロムは、存在する場合には、好ましくは、少なくとも一部が硫化物(CrSまたはCr)として存在する。これは、例えばXRDによって決定されることができる。第V族金属成分は、好ましくは、少なくとも一部が、それぞれNbS、V、およびTaSとして存在する。
【0027】
上記されるように、本発明で用いるのに適切なバルク金属触媒中の硫黄はまた、触媒の金属成分に結合されない硫黄成分の形態で存在してもよい。それは、例えば、全部または一部が、元素硫黄の形態で、有機硫黄化合物の形態で、または無機硫黄化合物の形態で存在してもよい。これは、第VI族、第V族、および第VIII族金属成分の金属硫化物ではない。後者の場合には、硫黄含有触媒は、活性化工程に付されて、金属成分が少なくとも一部がその硫化物に転化されてもよい。活性化工程は、一般に、触媒と水素とを、温度100〜600℃で適切時間接触させる工程を含む。これらの活性化工程は、現場外、即ち触媒が用いられるであろう水素化装置外か、または現場内、即ち触媒が用いられるであろう水素化装置中で行われることができる。
【0028】
上記されるように、本明細書で用いるのに適切な触媒中に存在することができる硫黄化合物の群には、金属硫化物の形態で金属化合物にまだ結合されていない硫黄化合物がある。好ましい硫黄化合物には、少なくとも一つのメルカプト基を有する有機化合物が含まれる。メルカプト化合物の群には、一般式HS−R−COORで表されるメルカプトカルボン酸がある。式中、Rは、炭素原子1〜10個を有する二価炭化水素基を表し、Rは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、もしくは炭素原子1〜10個を有する線状または分枝アルキル基を表す。この群の限定しない例には、メルカプト酢酸(HS−CH−COOH)、ベータ−メルカプトプロピオン酸(HS−CHCH−COOH)、メチルメルカプトアセテート(HS−CH−COOCH)、エチル2−メルカプトアセテート(HS−CH−COOC)、エチルヘキシルメルカプトアセテート(HS−CH−COOC17)、およびメチル3−メルカプトプロピオネート(HS−CHCH−COOCH)が含まれる。メルカプト化合物の群で好ましい他の化合物には、一般式HN−R−SHで表されるアミノ置換メルカプタンが含まれる。式中、Rは、炭素原子1〜15個を有する二価炭化水素基を表す。これらの化合物の例には、2−アミノエタンチオール(HN−CHCH−SH)、および4−アミノチオフェノール(HN−C−SH)が含まれる。メルカプト化合物の群の更なる化合物は、一般式HS−R−SHで表されるジ−メルカプタンである。式中、Rは、炭素原子1〜15個を有する二価炭化水素基を表す。これらの化合物の例には、エタンジチオール(HS−CHCH−SH)、および1,4−ブタンジチオール(HS−(CH−SH)が含まれる。
【0029】
好ましい硫黄化合物にはまた、式R−COSHのチオ酸が含まれる。式中、Rは、炭素原子1〜15個を有する一価炭化水素基を表す。これらの化合物の例には、チオ酢酸(CH−COSH)およびチオ安息香酸(CCOSH)が含まれる。式HSOC−R−COSHのジチオ酸はまた、適切であってもよい。式中、Rは、炭素原子1〜15個を有する二価炭化水素基である。例は、ジチオアジピン酸(HSOC−C10−COSH)である。また、硫黄化合物の群で好ましくは、一般式RS−R−(OH)のメルカプトアルコールを含む硫黄化合物である。式中、Rは、炭素原子1〜15個を有するアルキル基またはフェニル基を表し、Rは、水素原子または炭素原子1〜2個を有するアルキル基を表し、nは1または2である。これらの化合物の限定しない例には、2−メルカプトエタノール、2−(メチルチオ)エタノール、2−(エチルチオ)エタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、4−メルカプトフェノール、2−(メチルチオ)フェノール、4−(メチルチオ)フェノール、2−(エチルチオ)フェノール、3−メルカプト−1,2,−プロパンジオール、3−メチルチオ−1,2,プロパンジオール、および3−エチルチオ−1,2,プロパンジオールが含まれる。他の適切な硫黄化合物には、式R−SO−Rのスルホキシドが含まれる。式中、RおよびRは、炭素原子1〜5個を有する炭化水素基である。例は、ジメチルスルホキシド(CH−SO−CH)である。
【0030】
アンモニウムチオシアネートおよびチオ尿素がまた、本発明の化合物で用いるのに適切なバルク金属触媒中に存在してもよい。これは、種々のジチオカルバミン酸およびそれらの塩であってもよい。エチレンビスジチオカルバミン酸およびその塩、並びにジメチルジチオカルバミン酸およびその塩などである。他の適切な化合物には、メルカプトジアチアゾールおよびその塩が含まれる。2,5−ジメルカプト−1,3,4−ジアチアゾ−ルおよびその塩などである。
【0031】
本明細書で用いられるバルク金属触媒中に存在してもよい他の硫黄含有化合物は、式R−S−R10のポリ硫化物である。式中、xは1〜15の値であり、RおよびR10は、炭素原子1〜30個を有するアルキル基、好ましくは分枝アルキル基である。関連化合物は、式HO−R11−S−R12−OHを有するものである。式中、xは1〜15の値であり、R11およびR12は、炭素原子1〜8個を有するアルキル基である。更なる硫黄化合物には、元素硫黄、および(NHなどの無機硫黄化合物が含まれる。
【0032】
本明細書で用いられるバルク金属触媒は、バルク金属触媒を形成するための触媒技術で知られるいかなる方法にもよって調製されることができる。本明細書で用いられる触媒組成物を作製する好ましい方法は、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5およびPCT公開出願(特許文献6)により詳細に記載される。これは、それらが本発明の開示および特許請求に矛盾しない範囲で、全ての目的に対して本明細書に引用して含まれる。バルク金属水素化触媒は、好ましくは、使用前に硫化される。最も好ましくは、特許文献7および特許文献8に概略述べられる方法によって作製される。
【0033】
本明細書で用いるのに適切なバルク金属触媒組成物を調製するより好ましい方法は、逐次または同時に、モリブデン、タングステン、およびそれらの混合物から選択される第VIB族金属成分、バナジウム、ニオブ、タンタル、およびそれらの混合物から選択される第V族金属成分、ニッケル、コバルト、鉄、およびそれらの混合物から選択される第VIII族金属成分、並びに硫黄化合物を組み合わせる工程を含む。全てのこれらの成分を単一工程で組み合わせることは可能であることが特記されるべきである。同様に、硫黄化合物を一種以上の金属化合物と組み合わせ、次いで得られた生成物を他の金属化合物と組み合わせることがまた可能であることが特記されるべきである。しかし、硫化物含有物質は、不活性雰囲気中で取扱われて、酸化が防止されなければならない。従って、本明細書で用いるのに適切なバルク金属触媒を調製する好ましい実施形態においては、少なくとも一種の第VIB族金属成分、少なくとも一種の第V族金属成分、および少なくとも一種の第VIII族金属成分は、第一の工程で組み合わされて、酸素安定性生成物が形成される。酸素安定性生成物は、次いで硫黄化合物と組み合わされる。
【0034】
第VIB族金属成分、第V族金属成分、および第VIII族金属成分が組み合わされてもよい種々の方法がある。第一の処理において、金属成分は、プロトン性液体の存在下に組み合わされ、反応され、その後得られた組成物は、単離され、乾燥される。反応を妨げないいかなるプロトン性液体が、用いられてもよい。適切な液体には、水、カルボン酸、低級アルコール(エタノールおよびプロパノールなど)、およびそれらの混合物が含まれる。水を用いることが好ましい。
【0035】
本発明で用いるのに適切な触媒を形成するに際して、少なくとも三種の金属成分、即ち少なくとも一種の第VIII族金属成分、少なくとも一種の第VIB族金属成分、および少なくとも一種の第V族金属成分は、本発明の方法において、溶質状態、または少なくとも一部が固体状態にあってもよい。従って、反応は、三種の溶質成分、二種の溶質成分および一種の少なくとも一部が固体の成分、一種の溶質成分および二種の少なくとも一部が固体の成分、並びに三種の少なくとも一部が固体の成分を含んでもよい。反応は、沈殿を含んでもよく、また種々の成分の状態によっては、溶解および再沈殿を含んでもよい。
【0036】
一般に、本明細書で用いられるバルク金属触媒の金属成分を互いに接触させる二つの可能な方法がある。一つの方法は、金属成分を溶液中で組み合わせ、反応させて、沈殿物を形成する工程を含む(以下、「溶液ルート」として表される)。もう一方の方法は、金属成分を、プロトン性液体の存在下に、少なくとも一部が固体状態で残る金属成分の少なくとも一種と組み合わせ、反応させる工程を含む(以下、「固体ルート」として表される)。
【0037】
溶液ルートにおいては、金属成分は、沈殿物を形成するために組み合わされ、および/または反応される際に、完全に溶解される。例えば、金属成分を、それらが既に溶解状態にある時に組み合わせ、次いでそれらを反応させて、沈殿物を形成することが可能である。しかし、また、一部または全体が固体状態にある一種以上の金属成分を、更なる金属成分と組み合わせ、一方一部または全体が固体状態にある金属成分が、反応混合物中に存在する時に溶解するであろうことを確実にすることが可能である。換言すれば、溶液ルートの処理中少なくとも一度は、全ての金属成分は、完全に溶液として存在しなければならない。
【0038】
触媒粒子の沈殿は、例えば次の工程によって実施されることができる。即ち、
a)pHを、金属成分溶液の組み合わせ中またはその後に、沈殿が誘導される値に変える工程
b)錯化剤を、金属成分溶液の組み合わせ中またはその後に添加し、錯化剤が一種以上の金属と錯体を形成して金属の沈殿を防止し、その後反応条件(温度またはpHなど)を変え、そのために錯化剤が、金属を放出し沈殿する工程
c)温度を、金属成分溶液の組み合わせ中またはその後に、沈殿が誘導される値に調整する工程
d)溶液の量を、金属成分溶液の組み合わせ中またはその後に減少し、そのために沈殿が誘導される工程
e)非溶剤を、金属成分溶液の組み合わせ中またはその後に添加して、その沈殿を非溶剤(沈殿物が、本質的にこの溶剤に不溶解であることを意味する)と共に誘導する工程
f)成分のいずれかを、沈殿が誘導される程度に過剰に添加する工程
である。
【0039】
例えば選択肢a)またはb)におけるpHは、塩基または酸を反応混合物に添加することによって調整されることができる。しかし、また、温度の上昇時に、水酸化物イオンまたはHイオンに分解するであろう化合物を添加することが可能である。これは、それぞれ、pHを増大および減少する。温度の上昇と共に分解し、従って溶液のpHを増大または減少するであろう化合物の限定しない例は、尿素、亜硝酸塩、シアン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、および炭酸アンモニウムである。
【0040】
本発明で用いるのに適切な触媒を形成する固体ルートは、金属成分を、少なくとも一種の金属成分が、少なくとも一部が固体状態で残る条件下で組み合わせ、反応させる工程を含む。より詳しくは、それは、金属成分を互いに添加し、同時におよび/またはその後にそれらを反応させる工程を含む。従って、固体ルートにおいては、少なくとも一種の金属成分は、少なくとも一部が固体状態で添加され、この金属成分は、全反応中、少なくとも一部が固体状態で残る。本明細書で用いられる用語「少なくとも一部が固体状態にある」は、金属成分の少なくとも一部が、固体金属成分として存在し、任意に金属成分の他の部分は、プロトン性液体の溶液として存在することを意味する。この典型的な例は、プロトン性液体中における金属成分の懸濁物である。その際、金属は、少なくとも一部が固体として存在し、任意に一部がプロトン性液体中に溶解される。従って、先ず金属成分の懸濁物をプロトン性液体中に調製し、同時または順次に、溶液、および/またはプロトン性液体中に溶解および/または懸濁される金属成分を含む更なる懸濁物を添加することが可能である。また、先ず溶液を、同時または順次のいずれかで組み合わせ、引続いて更なる懸濁物および任意に溶液を、同時または順次のいずれかで添加することが可能である。
【0041】
少なくとも一種の金属成分が、固体ルートにおいて、少なくとも一部が固体状態にある限り、少なくとも一部が固体状態にある金属成分の数は、重大でない。従って、少なくとも一部が固体ルートで組み合わされる全金属成分が、少なくとも一部が固体状態で適用されることが可能である。別に、少なくとも一部が固体状態にある金属成分は、溶質状態にある金属成分と組み合わされることができる。例えば、金属成分の一種は、少なくとも一部が固体状態で添加され、例えば少なくとも二種、好ましくは二種の金属成分が、溶質状態で添加される。他の実施形態においては、例えば、二種の金属成分が、少なくとも一部が固体状態で添加され、少なくとも一種、好ましくは一種の金属成分が、溶質状態で添加される。金属成分が、「溶質状態で」添加されることは、この金属成分の全量がプロトン性液体の溶液として添加されることを意味することは、特記されるべきである。
【0042】
上記から明らかであろうように、第VIII族金属成分、第V族金属成分、および第VIB族金属成分を、種々の方法で(種々の温度およびpHで、溶液で、懸濁物で、湿潤またはそれ自体で、同時または逐次に)添加することが可能である。金属成分を組み合わせる際に硫化物含有金属成分を用いないことは、これらの成分および得られる生成物が酸素の存在下で安定でないことから好ましいことは特記されるべきである。この不安定性は、この金属成分の添加に引続く全処理工程が、より低温においてさえ、物質の再硫化が避けられるべきである場合には、不活性雰囲気下で行なわれなければならないであろうことを意味する。
【0043】
本明細書で用いるのに適切な触媒を調製する際に用いられるべき適切な水溶性第VIII族金属成分には、硝酸塩、水和硝酸塩、塩化物、水和塩化物、硫酸塩、水和硫酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、または次亜リン酸塩などの塩が含まれる。適切な水溶性ニッケルおよびコバルト成分には、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、ギ酸塩、またはそれらの混合物、同様に次亜リン酸ニッケルが含まれる。適切な水溶性鉄成分には、鉄の酢酸塩、塩化物、ギ酸塩、硝酸塩、硫酸塩、およびそれらの混合物が含まれる。適切な水溶性第VIB族金属成分には、アンモニウムまたはアルカリ金属モノモリブデン酸塩およびタングステン酸塩などの第VIB族金属塩、同様にモリブデンおよびタングステンの水溶性イソプロピル化合物(メタタングステン酸など)、もしくはモリブデンまたはタングステンの水溶性ヘテロポリ化合物が含まれる。これは、更に、例えばP、Si、Ni、またはCo、もしくはそれらの組み合わせを含む。適切な水溶性イソポリ−およびヘテロポリ化合物は、非特許文献6および非特許文献7に示される。適切な水溶性クロム化合物には、クロム酸塩、イソポリクロム酸塩、および硫酸クロムアンモニウムが含まれる。本発明の方法で用いられるべき適切な水溶性第V族金属成分には、硫酸バナジウム、バナジウムへテロポリ酸、ニオブ酸、NbOCl、およびタンタル酸などの水溶性塩および酸が含まれる。
【0044】
本明細書で用いるのに適切な触媒を調製するに際して、プロトン性液体が水である場合は、本発明の方法において少なくとも一部が固体状態にある適切な第VIII族金属成分は、水に低溶解性の第VIII族金属成分を含む。クエン酸塩、蓚酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、リン化物、アルミン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物などである。蓚酸塩、クエン酸塩、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、水酸化物、リン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩、酸化物、またはそれらの混合物が好ましく、ヒドロキシ炭酸塩、および炭酸塩が最も好ましい。一般に、ヒドロキシ炭酸塩中の水酸基および炭酸塩基の間のモル比は、0〜4、好ましくは0〜2、より好ましくは0〜1、最も好ましくは0.1〜0.8の範囲にある。
【0045】
プロトン性液体が水である場合には、少なくとも一部が接触中に固体状態にある適切な第VIB族金属成分は、水に低溶解性の第VIB族金属成分を含む。二および三酸化物、炭化物、窒化物、アルミニウム塩、酸、またはそれらの混合物などである。少なくとも一部が接触中に固体状態にある好ましい第VIB族金属成分は、二および三酸化物、酸、およびそれらの混合物である。適切なモリブデン成分には、モリブデン二および三酸化物、炭化モリブデン、窒化モリブデン、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸(例えばHMoO)、ホスホモリブデン酸アンモニウム、またはそれらの混合物が含まれ、モリブデン酸およびモリブデン二および三酸化物が好ましい。適切なタングステン成分には、タングステン二および三酸化物、炭化タングステン、オルソタングステン酸(HWOO)、窒化タングステン、タングステン酸アルミニウム(またメタ−またはポリタングステン酸塩)、ホスホタングステン酸アンモニウム、またはそれらの混合物が含まれ、オルソタングステン酸、並びにタングステン二および三酸化物が好ましい。
【0046】
プロトン性液体が水である場合には、本発明の方法において、少なくとも一部が固体状態にある適切な第V族金属成分は、水に低溶解性の第V族金属成分を含む。酸化物、ケイ化物、リン化物、およびホウ化物などである。
【0047】
本明細書で用いられるバルク金属触媒を調製する際に、必要に応じて、適切な可溶性または不溶性化合物を選択することは、十分に、熟練者の範囲内にあることが、特記されるべきである。
【0048】
本明細書の文脈においては、全処理中に、少なくとも一部が固体状態にあるであろう物質は、0.05モル/溶剤100mlの溶解性(18℃)を有する。また、所望により、結合物質、従来の水素化触媒、分解成分、またはそれらの混合物からなる群から選択される物質が、金属成分を組み合わせて反応させる前に、その途中に、および/またはそれに続いて添加されることができることは、特記されるべきである。これらの物質は、以下に「キャリヤー物質」として示されるであろう。
【0049】
キャリヤー物質は、金属成分を接触させる前に、例えばそれを一種以上のしかし全てでない金属成分と組み合わせることによって添加されることができる。またはその逆も同様である。引続いて、混合物を、まだ添加されていない金属成分と、同時または逐次のいずれかで組み合わせることによる。キャリヤー物質は、金属成分の接触中に添加されることができる。例えば、キャリヤー物質および金属成分を同時に組み合わせるか、または先ず金属成分を、同時または順次のいずれかで組み合わせ、次いでキャリヤー物質を、組み合わされた金属成分の反応中に添加することによる。キャリヤー物質はまた、金属成分の接触に引続いて添加されることができる。例えば、それを、直接、金属成分の反応後に得られる反応混合物に添加するか、またはそれを、次に詳細に議論されるであろう更なる処理工程のいかなるものの後でも添加することによる。好ましくは、キャリヤー物質は、金属成分の接触に引続いて添加される。任意に、金属成分を組み合わせ、反応させた後に得られる触媒組成物は、キャリヤー物質と複合化される前に、固液分離に付されることができる。例えば、ろ過である。固液分離の後、洗浄工程が行なわれてもよい。更に、触媒組成物を、キャリヤー物質との複合化の前に熱処理することが可能である。キャリヤー物質は、いかなる適切な形態でも、添加されることができる。例えば、熱処理をするか、またはそれをしない乾燥状態、湿潤状態、および/またはろ過ケーキおよび/または溶液としての懸濁状態である。
【0050】
任意に、本明細書で用いるのに適切なバルク金属触媒の調製方法は、噴霧−乾燥、(フラッシュ)乾燥、ミリング、混練、スラリー−混合、乾燥または湿潤混合、成形、および/または焼成の更なる処理工程を含んでもよい。乾燥混合は、触媒組成物を、乾燥状態で、乾燥状態の上記物質のいかなるものとも混合する工程を意味する。湿潤混合は、例えば、触媒組成物および任意に上記物質いかなるものをも、粉末または湿潤ろ過ケーキとして含む湿潤ろ過ケーキを混合して、それらの均質ペーストを形成する工程を含む。成形は、例えば、押出し成形、ペレット化、ビード化、および/または噴霧−乾燥を含む。
【0051】
一般に、本明細書で用いられる触媒を調製するのに選択される方法は、成形工程を含むことが好ましい。成形工程は、好ましくは、金属成分を組み合わせ、反応させた後に行なわれる。キャリヤー物質が本発明の方法で添加されるべきである場合には、それは、好ましくは、成形が行なわれる前に添加される。
【0052】
また、所望により、第VIII族金属成分、第VIB族金属成分、および第V族金属成分を組み合わせることによって得られる生成物は、焼成工程に付されてもよいことが特記されるべきである。この焼成工程は、適用される場合には、一般に、温度100〜600℃、より特には150〜450℃、更より特には250〜450℃で行なわれるであろう。焼成時間は、一般に、0.5〜48時間で変動する。焼成は、窒素などの不活性ガス中で、または空気または純酸素などの酸素含有ガス中で、任意にスチームの存在下で行なわれてもよい。好ましくは、焼成は、酸素含有雰囲気中で行なわれる。
【0053】
上記されるように、硫黄は、種々の金属成分を組み合わせて生成物を形成した後に、触媒組成物中に組込まれることが好ましい。これを行なうのに種々の方法がある。例えば、触媒を、例えば生成物を硫黄含有液体と接触させることによって、一種以上の上記される硫黄化合物と接触させることが可能である。これらの液体は、硫黄成分の液体形態であってもよい。また、硫黄化合物の溶液であってもよい。元素硫黄については、硫黄を、溶融または昇華により触媒中に組込むことが可能である。また、生成物を、それをHSなどの硫黄含有ガスと接触させることによって、ガス相で硫化することが可能である。最後に、また、触媒を、それを硫黄含有原料(例えば二硫化ジメチル(DMDS)などの硫黄含有化合物をスパイクされた炭化水素原料)と接触させることによって、硫化することが可能である。用いられる方法によって、硫化、即ち触媒を硫黄含有化合物と接触させる工程は、現場内および/または現場外で行なわれることができる。生成物と、HSなどのガス状硫黄成分との接触は、現場内および/または現場外で為されることができる。生成物と硫黄含有炭化水素原料との接触は、好ましくは、現場内で行なわれる。触媒と、元素硫黄もしくは上記される液体または溶解硫黄化合物との接触は、現場外で行なわれるであろう。この場合には、しかし、硫黄含有物質を、上記される水素による活性化工程に付すことが望まれてもよい。水素による活性化は、現場内または現場外で行なわれることができる。本明細書の文脈では、記載「現場内」は、触媒が、結局、炭化水素原料を水素化する際に用いられるであろう装置内で行なわれる処理をいうことが特記されるべきである。逆に、「現場外」は、これらの装置内部でなく、行なわれる処理を言う。
【0054】
本方法で用いるのに適切なバルク金属触媒を調製する二つの好ましい実施形態が、次に説明されるであろう。
【0055】
第一の実施形態は、金属成分をプロトン性液体中で組み合わせる工程、任意に、得られた生成物をキャリヤー物質と混合する工程、得られた組成物を、例えば噴霧−乾燥または押出し成形により成形する工程、任意に、得られた組成物を焼成する工程、および得られた生成物を硫黄含有化合物と組み合わせる工程からなる連続工程を含む方法である。この実施形態のより好ましい変型は、金属成分をプロトン性液体中で組み合わせ、反応させる工程、反応生成物を単離する工程、任意に、得られた触媒組成物をキャリヤー物質と混合する工程、得られた組成物を、例えば噴霧−乾燥または押出し成形により成形する工程、得られた組成物を焼成する工程、および得られた物質を硫化する工程からなる工程を含む。
【0056】
本発明を実施するに際して、留出油沸点範囲原料ストリームと、上記されたバルク金属水素化触媒との接触により、少なくとも蒸気生成物および留出油沸点範囲生成物を含む反応生成物が製造される。蒸気生成物は、典型的には、HSなどのガス状反応生成物を含み、液体反応生成物は、典型的には、窒素、芳香族、および硫黄汚染物の低減されたレベルを有する液体留出油沸点範囲生成物を含む。従って、液体生成物は、典型的には、留出油沸点範囲原料ストリームの沸点範囲に凡そ対応する沸点範囲を有する。
【0057】
本発明の一実施形態においては、蒸気生成物および液体生成物は、分離され、液体生成物が回収される。蒸気生成物を液体生成物から分離する方法は、本発明にとって重大でなく、ガス状および液体反応生成物を分離するのに効果的であると知られるいかなる手段によっても、達成されることができる。例えば、ストリッピング塔または反応域が、蒸気生成物を液体生成物から分離するのに用いられることができる。このように回収される液体生成物は、炭化水素質原料ストリームのそれより低い硫黄濃度を有し、好ましくは、その時点または製造時に課される規制要求を満たすのに十分に低い硫黄レベルを有するであろう。
【0058】
上記の記載は、本発明の数種の実施形態に関する。当業者は、等しく効果的である他の実施形態が、この発明の精神を実施するために考案されることができることを理解するであろう。
【0059】
次の実施例により、本発明が説明されるであろう。これは、しかし、いかなる意味においてもそれを限定することを意味しない。
【実施例】
【0060】
実施例1:モリブデン、バナジウム、およびニッケルを含有する触媒の調製
触媒組成物を、次のように調製した。ヒドロキシ炭酸ニッケル78g、MoO 31g、および五酸化バナジウム21gを、水性媒体中で組み合わせた。スラリーを、攪拌しながら、終夜90℃で熟成した。得られた懸濁物を、ろ過し、湿ったろ過ケーキを混合した。混合中、温度を、いくらか上昇して、混合物の水含有量を減少し、押出し成形可能な混合物を得た。混合物を、次いで、押出し成形し、押出し成形物を、120℃で乾燥し、300℃で焼成した。得られた物質は、三酸化物として計算されてモリブデン27.3重量%、五酸化バナジウムとして計算されてバナジウム20.4重量%、および酸化物として計算されてニッケル52.2重量%を含有した。最終生成物のMo:V:Niモル比は、0.27:0.33:1であった。
【0061】
実施例2:タングステン、バナジウム、およびニッケルを含有する触媒の調製
触媒組成物を、ヒドロキシ炭酸ニッケル65g、五酸化バナジウム18g、およびタングステン酸45gから、上記の実施例1に記載されたと類似の方法で調製した。得られた物質は、三酸化物として計算されてタングステン29重量%、五酸化バナジウムとして計算されてバナジウム18.4重量%、および酸化物として計算されてニッケル50.9重量%を含有した。最終生成物のW:V:Niモル比は、0.18:0.30:1である。
【0062】
実施例3:モリブデン、ニオブ、およびニッケルを含有する触媒の調製
触媒組成物を、ヒドロキシ炭酸ニッケル72g、Nb 3HO 32g、および三酸化モリブデン29gから、上記の実施例1に記載されたと類似の方法で調製した。得られた物質は、三酸化物として計算されてモリブデン29.8重量%、五酸化ニオブとして計算されてニオブ26.0重量%、および酸化物として計算されてニッケル45重量%を含んだ。最終生成物のMo:Nb:Niモル比は、0.34:0.33:1であった。
【0063】
実施例4:タングステン、ニオブ、およびニッケルを含有する触媒の調製
触媒組成物を、ヒドロキシ炭酸ニッケル61g、Nb 3HO 27g、およびタングステン酸42gから、上記の実施例1に記載されたと類似の方法で調製した。得られた物質は、三酸化物として計算されてタングステン39.5重量%、五酸化ニオブとして計算されてニオブ22.6重量%、および酸化物として計算されてニッケル38.7重量%を含有した。最終生成物のW:Nb:Niモル比は、0.32:0.33:1であった。
【0064】
実施例5:試験
上記の触媒を、流上管状反応器で試験した。各反応器管は、触媒10mlを含んだ。これは、等量のSiC粒子と混合され、SiC粒子の層間に挿まれた。
【0065】
試験される前に、触媒を、二硫化ジメチルを用いて、全硫黄含有量3.7重量%にスパイクされた次に記載の原料を用いて、液相予備硫化によって予備硫化した。予備硫化触媒を、次いで、次の特性を有するディーゼル原料材の水素化で試験した。
【0066】
【表1】

【0067】
触媒を、二つの条件下で試験した。
【0068】
【表2】

【0069】
試験結果を、次の表に示す。
【0070】
【表3】

【0071】
上記の結果から、本発明で用いられる触媒は、硫黄および窒素の除去が高度に活性である方法を提供することが示される。加えて、多環芳香族および二環芳香族の減少が、特に顕著である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
留出油沸点範囲原料ストリームからの低硫黄液体生成物の製造方法であって、
a)芳香族、窒素および有機結合硫黄汚染物を含有する留出油沸点範囲原料ストリームを、反応段において、水素含有処理ガスの存在下にバルク金属水素化触媒と接触させて、少なくとも蒸気生成物および液体留出油沸点範囲生成物を含む反応生成物を製造する工程であって、
前記留出油沸点範囲原料ストリームを、前記バルク金属触媒と効果的な水素化条件下で接触させ、前記バルク金属水素化触媒は、
i)モリブデン、タングステンおよびそれらの混合物からなる群から選択される第VIB族金属成分;
ii)バナジウム、ニオブ、タンタルおよびそれらの混合物からなる群から選択される第V族金属成分;並びに
iii)ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの混合物からなる群から選択される第VIII族金属成分
を含み、
前記金属成分は、酸化物として計算して、触媒の重量を基準として、触媒の少なくとも50重量%を構成し、金属成分間のモル比は、式(第VIB族+第V族):(第VIII族)によって表して、0.35:1〜2:1の範囲である工程
を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記留出油沸点範囲原料ストリームは、145℃〜425℃の範囲の大気沸点を有し、前記反応段は、一つ以上の反応器または反応域を含み、前記反応器または反応域は各々、流動床、沸騰床、スラリー床、固定床および移動床からなる群から選択される一つ以上の触媒床を含み、前記一つ以上の触媒床は各々、触媒床が配置される反応域に適切な触媒を含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記反応段は、一つ以上の固定触媒床を含み、
前記反応段中に、一つ以上の触媒床、反応器、および/または反応域の間で冷却する工程を更に含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記留出油沸点範囲原料ストリームは、ディーゼル沸点範囲原料ストリームであり、前記ストリームは、
(i)水素化されていないディーゼル沸点範囲原料ストリーム;
(ii)非水素化ディーゼル沸点範囲原料ストリームの混合物;
(iii)予め水素化されたディーゼル沸点範囲原料ストリーム;
(iv)水素化ディーゼル沸点範囲原料ストリームの混合物;および
(v)非水素化および水素化ディーゼル沸点範囲原料ストリームの混合物
からなる群から選択されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記バルク金属水素化触媒は、第VIB族および第V族金属の全モル量と、第VIII族金属のモル量の比を、式(第VIB族+第V族):(第VIII族)で表して、少なくとも0.6:1〜多くても1.5:1の範囲で有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
第VIB族、第V族金属および第VIII族金属の重量パーセントの合計は、酸化物として計算して、触媒の重量を基準として触媒の70重量%〜90重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
バナジウムおよび/またはニオブの量は、触媒の第V族金属について、少なくとも50モル%〜実質的全量までの範囲であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかにも記載の製造方法。
【請求項8】
コバルトおよびニッケルの量は、触媒の第VIII族金属について、少なくとも50モル%〜実質的全量までの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
第VIII族金属は、実質的に全てニッケルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記バルク金属水素化触媒は、モリブデン、タングステンおよびそれらの混合物からなる群から選択される前記第VIB族金属成分、バナジウム、ニオブ、タンタルおよびそれらの混合物からなる群から選択される前記第V族金属成分、ニッケル、コバルト、鉄およびそれらの混合物からなる群から選択される前記第VIII族金属成分、並びに硫黄化合物を、逐次または同時に組み合わせる工程を含む方法によって形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記触媒形成方法は、
第一の工程で、前記第VIB族金属成分、前記第V族金属成分および前記第VIII族金属成分を組み合わせて、酸素安定性生成物を形成する工程;および
第二の工程で、得られた前記酸素安定性生成物を、硫黄化合物と、バルク金属水素化触媒の金属成分の少なくとも一部が各硫化物に転化される条件下で組み合わせる工程
を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
b)前記蒸気生成物を前記液体留出油沸点範囲生成物から分離する工程;および
c)前記液体留出油沸点範囲生成物を回収する工程であって、前記液体留出油沸点範囲生成物は、前記留出油沸点範囲原料ストリームより低い硫黄、窒素および芳香族の濃度を有する工程
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項13】
前記効果的な水素化条件は、前記窒素および有機結合硫黄汚染物の少なくとも一部が、前記留出油沸点範囲原料ストリームから除去され、前記芳香族の少なくとも一部が、水素添加されるように選択されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
前記効果的な水素化条件は、150℃〜425℃の範囲の温度、0.1〜20時−1の範囲の重量空間速度および4〜70気圧(4.05〜70.93バール)の範囲の圧力を含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
前記留出油沸点範囲原料ストリームの窒素含有量は、窒素50〜1000wppmであり、硫黄含有量は50wppm〜7000wppmの範囲であり、芳香族含有量は0.05重量%〜2.5重量%の範囲である(いずれも、留出油沸点範囲原料ストリームを基準とする)ことを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の製造方法。

【公表番号】特表2007−533834(P2007−533834A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509606(P2007−509606)
【出願日】平成17年4月19日(2005.4.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/013511
【国際公開番号】WO2005/105958
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】