説明

低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物及び粘着シート

【課題】非ブリード性で、かつ、凹凸追従性に優れ、透明性、高強度、高伸長率を備えた極めて特にAskerC硬度が30以下における、透明性に優れた超低硬度エラストマー形成性組成物、及びそれを用いた超低硬度エラストマーからなる粘着シートを提供する。
【解決手段】(A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールからなるAskerC硬度が30以下の低硬度エラストマーを形成するための組成物において、(A)ポリイソシアネートに含まれる2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールとの仮想的な水酸基末端プレポリマーの理論分子量(MWc)を2,100〜5,000の範囲内とし、かつ、(A)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と(B)ポリオールの水酸基におけるイソシアネート基/水酸基の当量比が0.50〜0.90の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
低硬度、特にAsker C硬度が30以下における、透明性に優れた超低硬度エラストマー形成性組成物、及びそれを用いた超低硬度エラストマーからなる粘着シートに関するものである。さらに詳しくは、この組成物を使用して製造される、再剥離性に優れ、被着体の凹凸面に追従可能な、自己粘着性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、Asker C硬度30以下の超低硬度ポリウレタンエラストマーは、防振、制振部材、衝撃吸収部材、表面保護部材、粘着シート、医療用マットなどに用いられている。
【0003】
ポリウレタンエラストマーを低硬度化する方法として、従来は、可塑剤を大量に使用する方法が知られているが、可塑剤のブリードにより被着体を汚染または侵食するという問題があった。
【0004】
また、粘着シートとしてはタッキファイヤーなどの成分を添加する必要があるため、被着体への糊残りが発生するという問題があった。さらに、粘着シートにおいては、被着体塗装面の凹凸や 壁紙や自動車ダッシュボードなどのシボ加工による凹凸への追従性と、繰り返し剥離にも耐える強度が求められている。また、衝撃吸収部材などにおいては大変形に耐えられる高い引張強度と伸長率が求められている。
【0005】
特許文献1には、JIS A硬度が10以下の熱硬化性軟質ポリウレタンエラストマーを得る方法が開示されているが、平均分子量の非常に大きいポリオールを使用しており、樹脂中のウレタン基濃度が少なくなることから、十分な強度有しているとはいえない。
【0006】
特許文献2には、凹凸追従性に優れたポリウレタン粘着剤組成物が開示されているが、イソシアネート、ポリオールとも官能基数の高い原料を用いているため十分な引張強度、伸長率、凹凸への追従性をもっているとはいえない。
【0007】
特許文献3には、軟質ポリウレタン樹脂を得る方法が開示されているが、官能基数が2.5〜2.8のポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートを用いているため、架橋密度が高く、十分な伸長率、凹凸への追従性をもっているとはいえない。また、芳香族イソシアネートを用いているため、経時により樹脂が黄変するという問題があり、透明性が求められる用途には使用できない。
【0008】
特許文献4には、無黄変低硬度ポリウレタンエラストマーを得る方法が開示されているが、イソシアネート、ポリオールとも官能基数の高い原料を用いているため、十分な引張強度、伸長率、凹凸への追従性をもっているとはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3415947号公報
【特許文献2】特開2006−182795号公報
【特許文献3】特許3914372号公報
【特許文献4】特開2008−222984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、非ブリード性で、かつ、凹凸追従性に優れ、透明性、高強度、高伸長率を備えた極めて低硬度なポリウレタンエラストマー形成性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールからなるAsker C硬度が30以下の低硬度エラストマーを形成するための組成物において、(A)ポリイソシアネートに含まれる(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールとの仮想的な水酸基末端プレポリマーの理論分子量(MWc)を2,100〜5,000の範囲内とし、(A)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と(B)ポリオールの水酸基におけるイソシアネート基/水酸基の当量比が0.50〜0.90の範囲内で成型することで、極めて低い表面硬度を有しながら、高強度、高伸長率を備え、かつ、凹凸追従性にも優れた低硬度ポリウレタンエラストマーが形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は以下の(1)〜(5)に示されるものである。
【0013】
(1) (A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールからなる、Asker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーを形成するための組成物であって、
(A)ポリイソシアネート化合物が、(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と、(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物とからなり、
下記の式1から求められる樹脂中の(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールとの仮想的な水酸基末端プレポリマーの理論分子量(MWc)が2,100〜5,000の範囲内であり、かつ、
(A)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と(B)ポリオールの水酸基におけるイソシアネート基/水酸基の当量比が0.50〜0.90の範囲内で成型することを特徴とする、低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
式1:
MWc=〔fOH×(WOH+WNCO)×1000〕/〔(ROH×WOH)−(RNCO×WNCO)〕
(式(1)において、
OH:ポリオール(B)の平均官能基数、
OH:ポリオール(B)の水酸基当量(mmol/g)、並びに、
OH:樹脂中のポリオール(B)の含有量(g)、
NCO:2官能ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基当量(mmol/g)
NCO:樹脂中の2官能ポリイソシアネート(a)の含有量(g)、
をそれぞれ示す。なお、記載の「樹脂中」とは(A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールの合計量(g)における、という意味である。)
【0014】
(2) 前記(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物が、
(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート、及び/または、
(a2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとをウレタン化反応させて得られる平均官能基数が2である短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネート
であることを特徴とする、(1)に記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【0015】
(3) 前記(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物が、
(b1)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて、短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られた平均官能基数が3.5〜6.0であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート、及び/または、
(b2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをイソシアヌレート化することによって得られた平均官能基数が3.0〜5.0であるイソシアヌレート変性脂肪族ポリイソシアネート
であることを特徴とする、(1)または(2)のいずれかに記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【0016】
(4) 前記ポリオール(B)が、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリエステルポリオール、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリカーボネートポリオール、数平均分子量300〜5,000のポリエーテルポリオールのいずれか1種以上を含有することを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【0017】
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて得られることを特徴とする、Asker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーからなる粘着シート。
【発明の効果】
【0018】
本発明の形成性組成物によって得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーは、防振・制振、衝撃吸収材などに利用することができる。また、非ブリード性で、自己粘着性を持ち、凹凸追従性、透明性にも優れているため、壁紙、自動車のダッシュボード、塗装面の凹凸に追従し、表面保護部材、緩衝部材として利用することができる。さらに、高い引張強度と、破断伸びを有しているため、繰り返し脱着されるような用途においても耐久性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0020】
<(A)ポリイソシアネート化合物>
本発明に用いられる(A)ポリイソシアネート化合物は、後記する(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物から構成される。
【0021】
<(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物>
本発明に用いられる(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネートモノマーを1原料とする、1分子中にイソシアネート基を2つ有する化合物である。
【0022】
脂肪族イソシアネートモノマーとしては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明においては、本発明により得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーにおいて、前記の一連の優れた効果を奏する必要があるとの観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、必要に応じて「HDI」と略記。)を選択して用いるのが好ましい。
【0023】
本発明においては、本発明により得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーにおいて、前記の一連の優れた効果を奏する必要があるとの観点から、前記の(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物として、(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート、及び/または、(a2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとをウレタン化反応させて得られる平均官能基数が2である短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを用いるのが好ましい。これらのうち、本発明においては、低粘度であり、かつ、Asker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーを得るうえで成形性にも優れるとの観点から、(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネートを選択して用いるのがより好ましい。
【0024】
本発明に用いられる(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、次のような製造方法により得ることができる。分子量300以下の短鎖モノオールと、これに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを、アロファネート化触媒の存在下で70〜150℃に加熱することによりウレタン化反応およびアロファネート化反応させ、所定の反応率に達した時点で反応系に触媒毒を添加して反応を停止させ、必要に応じて、蒸留または抽出等によって、この系に残留する脂肪族イソシアネートモノマーを除去する方法を挙げることができる。
【0025】
分子量300以下の短鎖モノオールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール(各種異性体を含む)、ブタノール(各種異性体を含む)、ペンタノール(各種異性体を含む)、ヘキサノール(各種異性体を含む)、ヘプタノール(各種異性体を含む)、オクタノール(各種異性体を含む)、ノナノール(各種異性体を含む)、デカノール(各種異性体を含む)などの脂肪族モノオール類;シクロヘキサノール、メチル−シクロヘキサノール(各種異性体を含む)、アルキル置換シクロヘキサノール(各種異性体を含む)などの脂環式モノオール類;ベンジルアルコール、アルキル置換ベンジルアルコールなどの芳香族モノオール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル系モノオール類;ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシプロピオン酸などのカルボン酸系モノオール類;ヒドロキシ酢酸エステル、ヒドロキシプロピオン酸エステルなどのエステル系モノオール類等が挙げられる。
【0026】
アロファネート化触媒としては、例えば、特開2002−60459号公報に開示されているカルボン酸の金属塩、またはこれと亜リン酸エステル(助触媒)との混合触媒を挙げることができる。
【0027】
また、触媒毒としては、リン酸、塩酸などの無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基などを有する有機酸およびこれらのエステル類、アシルハライドなどを使用することができる。
【0028】
本発明に用いられる(a2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとをウレタン化反応させて得られる平均官能基数が2である短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、次のような製造方法により得ることができる。分子量300以下の短鎖ジオールと、これに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを、70〜150℃に加熱することによりウレタン化反応させ、必要に応じて、蒸留または抽出等によって、この系に残留する脂肪族イソシアネートモノマーを除去する方法を挙げることができる。
【0029】
分子量300以下の短鎖ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、水素添加ビスフェノールA等が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられる(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基含有量(以下、必要に応じて「NCO含量」と略記。)は、10〜30質量%の範囲内であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。
【0031】
なお、本発明においては、芳香族イソシアネートモノマーを原料としたポリイソシアネートの併用は、得られる形成性組成物、ひいては、得られる低硬度ポリウレタンエラストマーが経時により黄変するため、好ましくない。
【0032】
<(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物>
本発明に用いられる(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物は、脂肪族イソシアネートモノマーを1原料とする、1分子中にイソシアネート基を3つ以上有する化合物である。
【0033】
脂肪族イソシアネートモノマーとしては、前記の脂肪族イソシアネートモノマーとして挙げた化合物を1種単独で、または、2種以上組み合わせて用いて得られる。本発明においては、本発明により得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーにおいて、前記の一連の優れた効果を奏する必要があるとの観点から、HDIを選択して用いるのが好ましい。
【0034】
本発明においては、本発明により得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーにおいて、前記の一連の優れた効果を奏する必要があるとの観点から、前記の(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物として、(b1)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて、短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られた平均官能基数が3.5〜6.0であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート、及び/または、(b2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをイソシアヌレート化することによって得られた平均官能基数が3.0〜5.0であるイソシアヌレート変性脂肪族ポリイソシアネートを選択して用いるのが好ましい。
【0035】
前記の平均官能基数が3.5〜6.0であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート(b1)は、前記の(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネートと同様、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネートモノマーを原料として得られる。これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。本発明においては、本発明により得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーにおいて、前記の一連の優れた効果を奏する必要があるとの観点から、HDIを選択して用いるのが好ましい。
【0036】
アロファネート化触媒としては、前記の(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネートと同様、例えば、特開2002−60459号公報に開示されているカルボン酸の金属塩、またはこれと亜リン酸エステル(助触媒)との混合触媒を挙げることができる。
【0037】
また、触媒毒としては、前記の(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネートと同様、リン酸、塩酸などの無機酸、スルホン酸基、スルファミン酸基などを有する有機酸およびこれらのエステル類、アシルハライドなどを使用することができる。
【0038】
本発明に用いられる平均官能基数が3.5〜6.0であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネートのNCO含量は、10〜30質量%の範囲内であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。
【0039】
本発明に用いられる(b2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをイソシアヌレート化することによって得られた平均官能基数が3.0〜5.0であるイソシアヌレート変性脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、次のような製造方法により得ることができる。分子量300以下の短鎖ジオールと、これに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを、70〜150℃に加熱することによりウレタン化反応させた後、さらに、従来公知の方法によりイソシアヌレート化反応を行い、その後必要に応じて、蒸留または抽出等によって、この系に残留する脂肪族イソシアネートモノマーを除去する方法を挙げることができる。
【0040】
分子量300以下の短鎖ジオールとしては、前記の分子量300以下の短鎖ジオールとして列記した一連の化合物が挙げられる。また、脂肪族イソシアネートモノマーについても、前記の脂肪族イソシアネートモノマーとして列記した一連の化合物が挙げられる。
【0041】
<(B)ポリオール>
本発明に用いるポリオール(B)としては、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリエステルポリオール、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリカーボネートポリオール、数平均分子量300〜5,000のポリエーテルポリオールのいずれか1種以上を含有するのが好ましい。
【0042】
前記の側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000であるポリエステルポリオールとしては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジメチロールヘプタン等の側鎖アルキル基含有グリコールと、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、シュウ酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸又はその誘導体とを、従来公知のエステル交換反応によって得られる、末端水酸基を有するポリエステルポリオールが挙げられる。なお、前記の側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000であるポリエステルポリオールを得るに際して、前記の側鎖アルキル基含有グリコールと共に、例えば1,4−ブタンジオール並びに1,6−ヘキサンジオール等従来公知の側鎖アルキル基非含有のグリコール類を併せ用いても良い。
【0043】
前記の側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000であるポリカーボネートポリオールとしては、上記のポリエステルポリオールに用いられる側鎖アルキル基含有グリコールと、エチレンカーボネートとの脱エタノール反応、または、上記のポリエステルポリオールに用いられる側鎖アルキル基含有グリコールとジフェニルカーボネートとの脱フェノール反応によって得られる、末端水酸基を有するポリカーボネートポリオールが挙げられる。なお、前記の側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000であるポリエステルポリオールと同様、前記の側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000であるポリカーボネートポリオールを得るに際して、前記の側鎖アルキル基含有グリコールと共に、例えば1,4−ブタンジオール並びに1,6−ヘキサンジオール等従来公知の側鎖アルキル基非含有のグリコール類を併せ用いても良い。
【0044】
前記の数平均分子量300〜5,000であるポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(以下、必要に応じて「MPD」と略記。)、グリセリン、トリメチロールプロパン(以下、必要に応じて「TMP」と略記。)、ペンタエリスリトールのような、1分子中にヒドロキシル基を2〜6個、好ましくは2〜5個有する多価アルコールを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加反応させて得られる、末端水酸基を有するポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0045】
その他、ポリオール(B)として、末端水酸基を有するポリカプロラクトンポリオール等、ポリウレタン原料として従来公知の末端水酸基を有するポリオール類も用いることができる。
【0046】
本発明において用いられるポリオール(B)の平均官能基数は、2〜3であることが好ましく、さらに好ましくは2とされる。
【0047】
本発明においては、ポリオール(B)として、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリオールを、ポリオール類全体を100質量%とした場合50質量%以上含有するのが好ましく、さらに好ましくは70質量%以上とされる。側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリオールをポリオール類全体を100質量%とした場合に50質量%未満とし、その他併用するポリオールとして、例えば、側鎖アルキル基を含有しないポリエステルポリオール、側鎖アルキル基を含有しないポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールのような結晶性の高いポリオールを用いた場合、低温で樹脂が白濁し、また、本発明において所望される低硬度のポリウレタンエラストマーが得られない場合がある。
【0048】
なお、ポリオール(B)としてポリプロピレングリコールを用いる場合、本発明において用いられる(A)ポリイソシアネート化合物との相溶性が悪くなる傾向にあり、樹脂が白濁し、さらに、得られる低硬度ポリウレタンエラストマーの強度が小さくなる傾向にある。また、ポリオール(B)として側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000であるポリカーボネートポリオールを用いる場合、得られる低硬度ポリウレタンエラストマーの低温における弾性率が高くなり表面硬度が高くなる傾向にある。
【0049】
<低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物>
本発明の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、得られる低硬度ポリウレタンエラストマーにおけるAsker C硬度が30以下(好ましくは20以下、より好ましくは15以下)であることを必須要件とするものである。
【0050】
本発明の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、下記の式1から求められる樹脂中の(a)下記の2官能脂肪族ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールとの仮想的な水酸基末端プレポリマーの理論分子量(MWc)が2,100〜5,000(好ましくは、2,500〜5,000)の範囲内であることを必須要件とする。
式1:
MWc=〔fOH×(WOH+WNCO)×1000〕/〔(ROH×WOH)−(RNCO×WNCO)〕
(式(1)において、
OH:ポリオール(B)の平均官能基数、
OH:ポリオール(B)の水酸基当量(mmol/g)、並びに、
OH:樹脂中のポリオール(B)の含有量(g)、
NCO:2官能ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基当量(mmol/g)
NCO:樹脂中の2官能ポリイソシアネート(a)の含有量(g)、
をそれぞれ示す。なお、記載の「樹脂中」とは(A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールの合計量(g)における、という意味である。)
【0051】
前記の式1から求められる理論分子量(MWc)は、樹脂中の架橋点間分子量の目安となる数値であり、この数値と樹脂の引張強度と破断時伸びに高い相関がある。この式1から求められる理論分子量(MWc)が2,100未満の場合、伸長率や強度が低くなるため好ましくない。また、この式1から求められる理論分子量(MWc)が5,000を超える場合、伸長率や強度は大きくなるものの、低温において樹脂の弾性率が高くなり、表面硬度が高くなるため好ましくない。また、極端に高い値の場合、樹脂が流動性を持ち実用に適さない。
【0052】
また、本発明の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物は、前記の式1から求められる理論分子量(MWc)が2,100〜5,000の範囲内であることを必須要件とするとともに、(A)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と(B)ポリオールの水酸基におけるイソシアネート基/水酸基の当量比が0.50〜0.90の範囲内で成型することをも併せて必須要件とする。これらの2つの必須要件をともに満たすことにより、本発明において得られる前記一連の優れた効果を奏することが可能となる。
【0053】
<任意成分>
本発明の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物には、本発明において得られる前記一連の優れた効果が損なわれない範囲において、通常のエラストマー形成性組成物(ポリウレタン原料)に使用されている各種の物質を任意成分として含有することができる。かかる任意成分としては、触媒、酸化防止剤、脱泡剤、消泡剤、紫外線吸収剤、反応調整剤、補強材、充填材、着色剤(染料または顔料)、離型材、安定剤、光安定剤、電気絶縁性向上材、防かび剤、有機酸の金属塩、アミド系ワックス、金属酸化物、金属水酸化物、増量剤などを挙げることができる。
【0054】
本発明の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物によれば、可塑剤を含有していなくても、本発明において所望される低硬度ポリウレタンエラストマーを形成することができるが、硬度調整のために少量(例えば、低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物を構成する樹脂全体を100質量%とした場合、10質量%未満)の可塑剤を使用してもよい。
【0055】
<低硬度ポリウレタンエラストマーからなる粘着シート>
本発明のAsker C硬度が30以下(好ましくは20以下、より好ましくは15以下)の低硬度ポリウレタンエラストマーからなる粘着シートは、前記のポリイソシアネート化合物(A)と前記のポリオール(B)(必要に応じてさらに任意成分)とを攪拌混合して、必要に応じて真空脱泡処理することにより、調整した低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物を得た後、従来公知の成形方法により得ることができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において「部」並びに「%」は、それぞれ「質量部」並びに「質量%」を意味する。
【0057】
<2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物(本発明の(a)に相当)の合成>
合成例1:
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを975部、イソプロパノールを25部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。この反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次にジルコニウム系触媒(商品名「オクチル酸ジルコニール」、第一稀元素化学工業(株)製)を0.2部仕込み、110℃にて4時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.01kg仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は40.4%であった。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、未反応のHDIを除去して、平均官能基数2、イソシアネート含量19.4%、25℃の粘度120mPa・sのアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート「ALP−1」(本発明の(a1)に相当)を得た。
【0058】
合成例2:
合成例1と同様な反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを707部、1,3−ブタンジオールを76部、ネオペンチルグリコールを66部、2,2’−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン151部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、未反応のHDIを除去して、平均官能基数2、イソシアネート含量16.2%、25℃の粘度10,000mPa・sの短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネート「AD」(本発明の(a2)に相当)を得た。
【0059】
<3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物(本発明の(b)に相当)の合成>
合成例3:
合成例1と同様な反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを950部、3−メチル−1,5−ペンタンジオールを50部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。この反応生成物をFT−IRにて分析したところ、水酸基は消失していた。次にジルコニウム系触媒(商品名:オクチル酸ジルコニール、第一稀元素化学工業(株)製)を0.2部仕込み、110℃にて4時間反応させた。反応生成物をFT−IR及び13C−NMRにて分析したところ、ウレタン基は消失していた。次いで、リン酸を0.01kg仕込み50℃で1時間停止反応を行った。停止反応後の反応生成物のイソシアネート含量は40.4%であった。この反応生成物を130℃×0.04kPaにて薄膜蒸留を行い、未反応のHDIを除去して、平均官能基数4.8、イソシアネート含量19.2%、25℃の粘度1,700mPa・sのアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート「ALP−2」(本発明の(b1)に相当)を得た。
【0060】
合成例4:
合成例1と同様な反応容器に、ヘキサメチレンジイソシアネートを900部、1,3−ブタンジオールを7.2部仕込み、反応器内を窒素置換して、攪拌しながら反応温度80℃に加温し、2時間反応させた。このときの反応液のイソシアネート含量を測定したところ、48.9%であった。次に、この中にイソシアヌレート化触媒としてカプリン酸カリウムを0.2部、助触媒としてフェノールを1部仕込み、60℃で5時間イソシアヌレート化反応を行った。この反応液に停止剤としてリン酸を0.13kg加え、80℃で1時間攪拌した後、未反応のHDIを120℃、0.04kPaの条件で薄膜蒸留して除去して、平均官能基数3.5、イソシアネート含量21.3%、25℃の粘度2,100mPa・sのイソシアヌレート変性脂肪族ポリイソシアネート「TR」(本発明の(b2)に相当)を得た。
【0061】
<実施例1〜16、比較例1〜10>
表1(実施例1〜16)並びに表2(比較例1〜10)に示す各々の処方(成分並びに質量部)に基づいて、45℃に温調したポリイソシアネート(A)と、60℃に温調したポリオール(B)と触媒としてジオクチルチンジラウレートとを混合して、低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物を得た。該組成物を5mmHgの減圧下で十分に脱泡を行った後、予め80℃に加温された金型に注型し、80℃一定雰囲気下にて1時間で硬化させた。その後、金型から脱型し、さらに常温(25℃)雰囲気下で168時間(7日間)静置して、100mm×600mm×10mm(厚み)(硬度測定用)、100mm×600mm×2mm(厚み)(機械物性並びに光学特性測定用)、30mm×5mm×0.5mm(厚み)(粘弾性測定用)、並びに、50mm×40mm×4mm(厚み)(凹凸追従性測定用)の各々の低硬度ウレタンエラストマーからなる粘着シートを作製した。以下、各々の処方及び測定結果について、表1並びに表2に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
表1並びに表2における各成分の詳細は、各々次のとおり。
<PES−1>
MPDとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール、数平均分子量=1,000、平均官能基数=2.0
<PES−2>
MPDとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール、数平均分子量=2,000、平均官能基数=2.0
<PES−3>
MPDとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール、数平均分子量=3,000、平均官能基数=2.0
<PES−4>
前記のPES−1と後記するPES−5を50部ずつブレンドして100部としたポリエステルポリオール混合物、数平均分子量=1,000、平均官能基数=2.5
<PES−5>
MPDとTMPとアジピン酸から得られるポリエステルポリオール、数平均分子量=1,000、平均官能基数=3.0
<PPG−1>
ポリプロピレングリコール、商品名「サンニックスPP−1000(三洋化成工業(株)製)」、数平均分子量=1,000、平均官能基数=2.0
<PCD−1>
MPDと1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートから得られるポリカーボネートポリオール、数平均分子量=1,000、平均官能基数=2.0
【0065】
表1並びに表2における機械物性の測定方法は、各々次のとおり。
<硬度>
Asker C硬度計(高分子計器(株)製)、Asker C2L硬度計(高分子計器(株)製)を各々用いて、JIS K7312に準拠して10mm厚のエラストマーシートで測定した。
<引張強度、破断伸び、引裂強度、反発弾性率>
JIS K7312に準拠して2mm厚のエラストマーシートで測定した。
<粘着力>
JIS Z0237に準拠して測定されたPETフィルムとの180度引き剥がし粘着力について測定を行った。なおPETフィルムは、商品名「ダイアホイル(登録商標)S−100(厚さ188μm、三菱化学ポリエステルフィルム(株)製)」を使用した。
【0066】
表1並びに表2における粘弾性(動的粘弾性)の測定方法は、各々次のとおり。
<動的粘弾性>
測定周波数10Hz、昇温速度2℃/分の条件にて、−100℃〜150℃まで測定。25℃の時の正接損失の値、−10℃、25℃、100℃における各々の貯蔵弾性率(E´)、正接損失のピーク値、及びその時の温度について、測定を行った。
サンプル形状:30mm×5mm×0.5mm(厚み)。
測定機:動的粘弾性測定装置((株)オリエンテック製、商品名「レオバイブロンDDV−01FP」)
【0067】
表1並びに表2における光学特性の測定方法は、各々次のとおり。
<全光線透過率>
JIS K7361に準拠して2mm厚のエラストマーシートで測定した。
<ヘイズ>
JIS K7136に準拠して2mm厚のエラストマーシートで測定した。
【0068】
表1並びに表2における凹凸追従性の測定方法は、各々次のとおり。
<凹凸追従性>
ポリウレタン製のダッシュボード表面にテストサンプル(50mm×40mm×4mm(厚み))を密着させ、25℃にて1N/cmの荷重を10分間かけた後、荷重を取り除いて室温(25℃)雰囲気下で24時間静置した。静置後、密着の度合い(ダッシュボードとテストサンプルの密着部における空気の混入度合い)について目視にて評価した。評価の基準は次のとおり。
「○」:密着部における空気の混入が全くなく、良好である。
「△」:密着部における空気の混入が僅かながら見受けられ、若干劣る。
「×」:密着部における空気の混入が見受けられ、劣る。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の形成性組成物によって得られるAsker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーは、防振・制振、衝撃吸収材などに利用することができる。また、非ブリード性で、自己粘着性を持ち、凹凸追従性、透明性にも優れているため、壁紙、自動車のダッシュボード、塗装面の凹凸に追従し、表面保護部材、緩衝部材として利用することができる。さらに、高い引張強度と、破断伸びを有しているため、繰り返し脱着されるような用途においても耐久性を有する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールからなる、Asker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーを形成するための組成物であって、
(A)ポリイソシアネート化合物が、(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と、(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物とからなり、
下記の式1から求められる樹脂中の(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールとの仮想的な水酸基末端プレポリマーの理論分子量(MWc)が2,100〜5,000の範囲内であり、かつ、
(A)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基と(B)ポリオールの水酸基におけるイソシアネート基/水酸基の当量比が0.50〜0.90の範囲内で成型することを特徴とする、低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
式1:
MWc=〔fOH×(WOH+WNCO)×1000〕/〔(ROH×WOH)−(RNCO×WNCO)〕
(式(1)において、
OH:ポリオール(B)の平均官能基数、
OH:ポリオール(B)の水酸基当量(mmol/g)、並びに、
OH:樹脂中のポリオール(B)の含有量(g)、
NCO:2官能ポリイソシアネート(a)のイソシアネート基当量(mmol/g)
NCO:樹脂中の2官能ポリイソシアネート(a)の含有量(g)、
をそれぞれ示す。なお、記載の「樹脂中」とは(A)ポリイソシアネート化合物と(B)ポリオールの合計量(g)における、という意味である。)
【請求項2】
前記(a)2官能の脂肪族ポリイソシアネート化合物が、
(a1)分子量300以下の短鎖モノオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖モノオール変性脂肪族イソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られる平均官能基数が2であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート、及び/または、
(a2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとをウレタン化反応させて得られる平均官能基数が2である短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネート
であることを特徴とする、請求項1に記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項3】
前記(b)3官能以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物が、
(b1)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて、短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをアロファネート化することによって得られた平均官能基数が3.5〜6.0であるアロファネート変性脂肪族ポリイソシアネート、及び/または、
(b2)分子量300以下の短鎖ジオールとこれに対して過剰量の脂肪族イソシアネートモノマーとを反応させて短鎖ジオール変性脂肪族ポリイソシアネートを形成すると共に、これをイソシアヌレート化することによって得られた平均官能基数が3.0〜5.0であるイソシアヌレート変性脂肪族ポリイソシアネート
であることを特徴とする、請求項1または請求項2のいずれかに記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(B)が、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリエステルポリオール、側鎖アルキル基を含有する数平均分子量300〜5,000のポリカーボネートポリオール、数平均分子量300〜5,000のポリエーテルポリオールのいずれか1種以上を含有することを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の低硬度ポリウレタンエラストマー形成性組成物を用いて得られることを特徴とする、Asker C硬度が30以下の低硬度ポリウレタンエラストマーからなる粘着シート。




【公開番号】特開2011−74333(P2011−74333A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230181(P2009−230181)
【出願日】平成21年10月2日(2009.10.2)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】