説明

低粗度を持つ高屈曲性銅箔及びその製造方法

【課題】電解銅箔の耐屈曲性を改善できる新たな方法を提供する。
【解決手段】未処理銅箔に表面処理を行い、電解銅箔のヴィッカース硬度(Vickers Hardnes)が310Hv以下、屈曲因子(F)が0.01以上、粗面Rz1.0〜3.5μm、光沢面Rz0.5〜2.5μm、炭素含有量0.1%以下、硫黄含有量0.05%以下、結晶配向性10〜100%、重量偏差2g/m2以下、ノジュール数20〜200個/100μm2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解銅箔に関し、より詳しくは、耐屈曲性に優れた電解銅箔及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の電子回路にはプリント基板が多く用られているが、その中でも特にフレキシブルプリント基板(FPC)は屈曲性があって基板自体が薄いことからテープキャリアにドライバーICを実装するTAB方式(Tape Automated Bonding)に適用されてきた。近年、より狭い空間でより高密度の実装を行う実装方法としてベアーICチップをフィルムキャリアテープ上に直接搭載するCOF方式(Chip On Film)が開発され、配線の狭ピッチ化に伴って微細加工が可能なフレキシブルプリント基板が求められるようになった。
特に、このようなフレキシブルプリント基板は、ハードディスク内の稼動部や携帯電話のヒンジ部などの屈曲性や柔軟性、高密度の実装が求められる電子機器に広く使われている。これにより、フレキシブルプリント基板を構成する銅箔により高い屈曲性を求めるようになった。
このような実情の下で銅箔の屈曲性を改善する手段として、銅箔の厚さを薄くすることが知られている。この場合、屈曲時の屈曲部外周に生じる変形が減少して屈曲性が向上する。しかし、銅箔を薄くすることだけでは設計に制約を受けるという限界がある。
【0003】
また、屈曲性に優れた銅箔として圧延銅箔が知られている。圧延銅箔の製造方法としては、銅をインゴットに鋳造し、圧延と焼鈍を繰り返して箔状にする。この方法によって製造された銅箔は伸び率も高く、表面が平滑であるため、クラックが生じ難く曲げに対する耐性に優れる。しかし、圧延銅箔は高価であり、製造時の機械的な制約によって銅箔の幅が1m以上のものは製造することが困難であった。また、薄い圧延銅箔を安定的に製造することも困難であり、薄くして屈曲性を高めるためにはハーフエッチングなどの処理を行う必要があった。
一方、安価で厚さの調整も比較的に容易に行える銅箔として電解銅箔がある。該電解銅箔の製造方法は、まず硫酸銅を主成分にした電気分解液の中にドラムと呼ばれる直径2m〜3mの大きい筒状の陰極を半分ほど沈ませて、それを包み囲むように陽極を設ける。そして、ドラム上に銅を電析させながらこれを回転させ、析出した銅を順次引き剥がして巻き取って製造する。
【0004】
しかし、このような電解銅箔は圧延銅箔に比べて著しく屈曲性が落ちるという問題点が存在する。よって、電解銅箔の屈曲性を改善させるためにさまざまな努力が行われた。
特許文献1には、製箔工程を経て製造された未処理銅箔を熱処理して平均結晶粒径を熱処理工程前の2〜8倍に成長させる方法が開示されている。
特許文献2には、熱処理によって結晶粒径を2μm以上に調節し、銅箔の表面粗度(Rz)を2.5μm以下に調節する方法が開示されている。
特許文献3は、カーボン含有量を18ppm以下に調節することによって微細パターン化が可能な電解銅箔を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許公開第2007−14067号公報
【特許文献2】韓国特許公開第2006−129965号公報
【特許文献3】特開平9−272994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電解銅箔の耐屈曲性を改善するための新たな方法を提示することを目的とする。すなわち、電解銅箔の耐屈曲性に影響を及ぼすS面(光沢面)とM面(粗面)の表面粗度、炭素及び硫黄含有量、重量偏差、結晶配向性、屈曲因子、ヴィッカース硬度、単位面積当たりのノジュール数などの因子を調節することで最適の耐屈曲性を具現しようとする。
本発明の他の目的及び長所は、以下の説明によって理解することができ、本発明の実施例によってより明らかに分かるであろう。また、本発明の目的及び長所は、特許請求の範囲に示された手段及びその組合せによって実現できることを容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは電解銅箔の耐屈曲性を改善するために鋭意検討した結果、特定の特性を持つ未処理銅箔を使用し、該未処理銅箔の表面を電気化学的または化学的に処理することで上述した課題を解決できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0008】
本発明の一態様による電解銅箔は、電気分解を通じて生成された未処理銅箔を表面処理することで得られる。このように得られた電解銅箔は、ヴィッカース硬度(Vickers Hardness)が310Hv以下、望ましくは100〜310Hvであることを特徴とする。
また、本発明による電解銅箔は屈曲因子(F)が0.01以上であることを特徴とする(ここで、F=K×E×Tであり、K(屈曲相関係数)=0.001mm/kgf、E:伸び率、T:引張強度を表す)。
さらに、本発明による電解銅箔は、粗面(M面)の表面粗度(Rz)が1.0〜3.5μm、光沢面(S面)の表面粗度(Rz)が0.5〜2.5μm、炭素含有量が0.1%以下、硫黄含有量が0.05%以下、結晶配向性(結晶配向性=[I(200)/Iall]×100、ここで、I(200):銅箔の表面に対してX線回折分析して得られた回折線のうち(200)面の回折線の相対ピーク強度、Iall:(110)、(111)、(200)、(311)各面の回折線の相対ピーク強度の和)が10%〜100%であることが望ましい。
【0009】
さらに、本発明による電解銅箔は、重量偏差が2g/m以下、単位面積当たりのノジュール数が20個/100μm〜200個/100μmであることが望ましい。
【0010】
本発明の他の態様による電解銅箔の製造方法は、結晶配向性(結晶配向性=[I(200)/Iall]×100、ここで、I(200):銅箔の表面に対してX線回折分析して得られた回折線のうち(200)面の回折線の相対ピーク強度、Iall:(110)、(111)、(200)、(311)各面の回折線の相対ピーク強度の和)が10%〜100%である未処理電解銅箔を製造する製箔工程と、前記未処理電解銅箔の表面を電気化学的または化学的に処理することで電解銅箔のヴィッカース硬度が310Hv以下、望ましくは100〜310Hvである値を持つ表面処理電解銅箔を製造する表面処理工程と、を含む。
また、前記表面処理工程を経た電解銅箔は、屈曲因子(F)が0.01以上の値を持つことを特徴とする(ここで、F=K×E×Tであり、K(屈曲相関係数)=0.001mm/Kgf、E:伸び率、T:引張強度を表す)。
さらに、前記表面処理工程を経た電解銅箔は、単位面積当たりのノジュール数が20個/100μm〜200個/100μm、粗面(M面)の表面粗度(Rz)が1.0〜3.5μm、光沢面(S面)の表面粗度(Rz)が0.5〜2.5μm、炭素含有量が0.1%以下、硫黄含有量が0.05%以下、重量偏差が2g/m以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のさらに他の態様は、前述した製造方法によって製造された電解銅箔の少なくとも一表面にポリイミド樹脂層を塗布したフレキシブル銅張積層板、及び銅張積層板を適用したフレキシブルプリント基板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明による電解銅箔は、微細回路加工が可能であり、耐屈曲性に優れる。よって、低コストで圧延銅箔と同等なレベルのフレキシブル回路基板用電解銅箔を具現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の望ましい実施例を例示するものであり、発明の詳細な説明とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図1】電解金属箔製造装置の構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の電解銅箔は、工程の段階に応じて以下のような用語を使う。まず、図1に示された通常の電解製箔装置を通じて製造された銅箔を「未処理銅箔」と称し、該未処理銅箔の表面に電気化学的または化学的表面処理を施したものを「表面処理銅箔」と称する。
まず、本発明による未処理銅箔は図1の電解製箔装置を通じて製造される。図面を参照すれば、電解液10が供給され続ける容器Cの中に陰極として機能するドラム20、及びアノード30が設けられる。前記ドラム20は矢印方向に回転し、ドラム20とアノード30とは電解液10が介在され得るように離隔される。
【0015】
電解銅箔の製造の際には、前記ドラム20とアノード30間に電流が印加される。このとき、ドラム20は矢印方向に回転している状態である。これにより、ドラム20の表面に電解銅箔40が電着された後、ガイドロール50を介して巻き取られる。
前記電解液10は硫酸銅を主成分にし、これにゼラチン、HEC、SPS、及び窒化物のような各種添加剤が添加され、電流密度は10ASD〜80ASDであることが望ましい。このような未処理電解銅箔の製造についての詳細な内容は、本出願人によって先出願された韓国特許登録第0694382号及び第0571561号を参照することができるため、ここでは省略する。
【0016】
前記未処理電解銅箔は、電解液の組成、電流密度、または添加剤の種類及び含量を調節することによって重量偏差、(200)集合組織の割合、炭素含有量、硫黄含有量、表面粗度などの因子を調節することができる。
このように製造された前記未処理銅箔40は結晶配向性が10%〜100%でなければならない。ここで、結晶配向性とは、電解銅箔のS面に対してX線回折分析して得られた回折線のうち(200)面の回折線の相対ピーク強度をI(200)とし、(110)、(111)、(200)、(311)各面の回折線の相対ピーク強度の和をIallとするとき、[I(200)/Iall]の百分率を意味する。
【0017】
このように、未処理銅箔の集合組織のうち(200)集合組織が優勢な場合、応力集中部と結晶組織との配向性が逆になって耐屈曲性が良くなる。
また、前記未処理銅箔はノジュール処理(または粗面化処理)、耐薬品処理、耐熱処理、防錆処理、シラン処理などの表面処理工程を経て表面処理銅箔として完成される。このような表面処理工程については、本出願人によって先出願された韓国特許登録第0610751号に具体的に開示されているため、ここでは省略する。
【0018】
前記表面処理工程で使われる各種有機物質の種類や含量などに応じて銅箔のヴィッカース硬度、重量偏差、炭素含有量、硫黄含有量などに微細な変化があり得る。
このように最終完成された本発明による表面処理電解銅箔は、粗面(M面)の表面粗度(Rz)が1.0〜3.5μm、光沢面(S面)の表面粗度(Rz)が0.5〜2.5μmであることが望ましい。前記M面及びS面の表面粗度が3.5μm以上になれば応力が集中して破断し易く、前記M面の表面粗度が1.0μm以下になれば、銅箔に接着されるポリイミドとの密着力が減少する。
【0019】
また、前記表面処理電解銅箔は、炭素含有量が0.1%以下、硫黄含有量が0.05%以下であることが特徴である。電解銅箔の炭素含有量が0.1%以上になれば、フレキシブル回路基板(FCCL)の製造時、熱を受けて銅箔内部の炭素が二酸化炭素になりながら微細破断が生じる。これと同様に、電解銅箔の硫黄含有量が0.05%以上になれば、フレキシブル回路基板(FCCL)の製造時、熱を受けて銅箔内部の硫黄が二酸化硫黄になりながら微細破断が生じる。
さらに、前記表面処理電解銅箔の耐屈曲性を表す特性値として、下記数式で表される屈曲因子Fを考慮することができる。
【0020】
【数1】

【0021】
ここで、K(屈曲相関係数)=0.001mm/kgf、E:伸び率、T:引張強度を表す。
【0022】
前記屈曲因子Fは良好な耐屈曲性を具現するため、少なくとも0.01以上の値を持たなければならないが、もし前記屈曲因子Fが0.01を下回るようになれば、表面処理電解銅箔の疲労寿命が短くなって屈曲部(bending part)に適用したときに破断され易いという問題点がある。さらに、前記屈曲因子Fは高いほど良好な耐屈曲性の具現が可能であるが、0.7以下であることが望ましい。
【0023】
また、前記表面処理電解銅箔は対面角136度のダイヤモンド製ピラミッド状の圧子で適当な荷重を加えて跡形を作り、接触面の単位面積当たりの圧力を硬度として表したヴィッカース硬度が310Hv以下、望ましくは100〜310Hvの値を持つことが特徴である。電解銅箔のヴィッカース硬度が100Hvを下回る場合には、銅箔製造及びFCCL(Flexible Copper Clad Laminate)の製造過程で表面欠陥が生じて耐屈曲性の低下をもたらし、310Hvを上回る場合には、FCCLの製造時、結晶成長が起こらず屈曲性が低下する。
このような前記表面処理電解銅箔の重量偏差は2g/m以下であり、単位面積当たりのノジュール数は20個/100μm〜200個/100μmであることが望ましい。前記重量偏差が2g/m以上であれば、重量が高い部分に応力が集中して破断され易い。また、前記単位面積当たりのノジュール数が、20個以下であればノジュールの下部に応力が集中して破断され易く、200個以上であれば銅箔とポリイミド間の密着強度が弱くなる。
【0024】
一般に、表面処理工程によって電解銅箔の表面粗度(Rz)(S面及びM面)、屈曲因子、及びヴィッカース硬度は変化するが、(200)集合組織の割合(すなわち、結晶配向性)は変化しない。
また、前記表面処理電解銅箔のM面単独またはM面及びS面の両方にポリイミド樹脂層のような絶縁層を積層することで銅張積層板(片面銅張積層板または両面銅張積層板)を製造することができる。前記ポリイミド樹脂層は公知のジアミンと酸無水物を溶媒の存在下で重合して製造することができる。また、該銅張積層板を適用してフレキシブル回路基板(FCCL)を製造することもできる。
【0025】
上述した製箔工程及び表面処理工程の実施及び銅張積層板の具現についての具体的な例は韓国特許公開第2007−0014067号、韓国特許公開第2006−0129965号、韓国特許公開第2006−0093280号、特開平9−272994号、特開平7−268678号、特開2006−52441号、韓国特許公開第2005−0114701号、特開平8−283886号、及び特開2000−182623号に詳しく記載されている。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例を挙げてより詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されることはない。また、以下の実施例において、特に説明しない限り各種評価は下記によるものである。
【0027】
1)表面粗度(Rz)
M面とS面の表面粗度は10点平均表面粗さであり、JISB 0601−1994規格に従う粗さを表す。超深度形状測定顕微鏡を用いて2000倍で銅箔面の長さ方向に測定した。
2)結晶配向性
銅箔のS面に対してX線回折分析して得られた回折線のうち(200)面の回折線の相対ピーク強度をI(200)とし、(110)、(111)、(200)、(311)各面の回折線の相対ピーク強度の和をIallとするとき、[I(200)/Iall]の百分率を意味する。すなわち、結晶配向性(%)=[I(200)/Iall]×100
3)屈曲因子
0.001mm/kgfの値を持つ屈曲相関係数をK、伸び率をE、引張強度をTとするとき、屈曲因子(F)=[K×E×T]を意味する。
ここで、伸び率(E)と引張強度(T)はIPC−TM−650 Test Methods Manual規格に従って測定した。
4)MIT屈曲試験
MIT屈曲試験装置によってMIT屈曲試験を行った。下記の条件下で屈曲を繰り返し、試験片が断線されるまでの回数を屈曲回数として求めた。
JIS C 6471屈曲半径:0.38mm、荷重:500g、屈曲速度:90回/分、屈曲角度:135゜
5)ヴィッカース硬度(Vickers Hardness)
S面を研磨(Polishing)してからピラミッド型ダイヤモンド製圧子をS面に当て、下記の条件下で押圧してピット(Pit:凹んだ部分)を作って荷重を除去した後、硬度計で測定した。
荷重(Indenting Load):150mN、時間(Dwell Time):15秒
【0028】
[実施例1]
図1に示された装置の電解槽に電解液(硫酸銅を主成分にし、ゼラチン、HEC、SPS、及びチッ化物を添加)を充填した後、その両極間に電流を流して未処理電解銅箔を製造した。このように製造された未処理電解銅箔に表面処理装置を用いてノジュール処理、防錆処理、耐熱処理、耐薬品処理、シラン処理を施し、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0029】
[実施例2]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.0μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0030】
[実施例3]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が2.0μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0031】
[実施例4]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.02%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0032】
[実施例5]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.01%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0033】
[実施例6]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が0.5g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0034】
[実施例7]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が100%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0035】
[実施例8]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.3、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0036】
[実施例9]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.5、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0037】
[実施例10]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が170個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0038】
[実施例11]
前記実施例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が203Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0039】
[比較例1]
図1に示された装置の電解槽に電解液(硫酸銅を主成分にし、ゼラチン、HEC、SPS、及びチッ化物を添加)を充填した後、その両極間に電流を流して未処理電解銅箔を製造した。このように製造された未処理電解銅箔を表面処理装置を用いてノジュール処理、防錆処理、耐熱処理、耐薬品処理、シラン処理のうち少なくともいずれか1つを行い、厚さが12μm、S面表面粗度が3.0μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0040】
[比較例2]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が0.8μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0041】
[比較例3]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が5.7μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0042】
[比較例4]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.5%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0043】
[比較例5]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.2%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0044】
[比較例6]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が4.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0045】
[比較例7]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が5%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0046】
[比較例8]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.005、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0047】
[比較例9]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.002、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0048】
[比較例10]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が15個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0049】
[比較例11]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が314個/100μm、ヴィッカース硬度が145Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0050】
[比較例12]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が25個/100μm、ヴィッカース硬度が78Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0051】
[比較例13]
前記比較例1と同様の方法で製箔工程及び表面処理工程を行い、厚さが12μm、S面表面粗度が2.5μm、M面表面粗度が3.5μm、炭素含有量が0.1%、硫黄含有量が0.04%、重量偏差が2.0g/m、結晶配向性が35%、屈曲因子が0.18、単位面積当たりのノジュール数が28個/100μm、ヴィッカース硬度が352Hvである電解銅箔を得た。
該表面処理電解銅箔に対してMIT屈曲試験を行い、その結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記表1から分かるように、本発明の実施例による電解銅箔はMIT回数が少なくとも100回以上を記録する一方、比較例の電解銅箔はMIT回数が100回を下回っている。すなわち、比較例の電解銅箔に比べて本発明の電解銅箔がより優れた耐屈曲性特性を有する。
以上、本発明を限定された実施例及び図面によって説明したが、本発明はこれに限定されるものでなく、本発明が属する技術分野で通常の知識を持つ者によって本発明の技術思想と特許請求の範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0054】
10 電解液
20 ドラム
30 アノード
40 未処理電解銅箔
50 ガイドロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解を通じて製造された未処理銅箔を表面処理した電解銅箔であって、
前記電解銅箔のヴィッカース硬度(Vickers Hardness)が310Hv以下であることを特徴とする電解銅箔。
【請求項2】
前記ヴィッカース硬度が100〜310Hvであることを特徴とする請求項1に記載の電解銅箔。
【請求項3】
屈曲因子(F)が0.01以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電解銅箔(ここで、F=K×E×Tであり、K(屈曲相関係数)=0.001mm/kgf、E:伸び率、T:引張強度を表す)。
【請求項4】
(1)粗面(M面)の表面粗度(Rz)が1.0〜3.5μm、光沢面(S面)の表面粗度(Rz)が0.5〜2.5μmであり、
(2)炭素含有量が0.1%以下、硫黄含有量が0.05%以下であり、
(3)結晶配向性(結晶配向性=[I(200)/Iall]×100、ここで、I(200):銅箔の表面に対してX線回折分析して得られた回折線のうち(200)面の回折線の相対ピーク強度、Iall:(110)、(111)、(200)、(311)各面の回折線の相対ピーク強度の和)が10%〜100%であることを特徴とする請求項3に記載の電解銅箔。
【請求項5】
重量偏差が2g/m以下であることを特徴とする請求項4に記載の電解銅箔。
【請求項6】
単位面積当たりのノジュール数が20個/100μm〜200個/100μmであることを特徴とする請求項5に記載の電解銅箔。
【請求項7】
電解銅箔の製造方法であって、
(1)結晶配向性(結晶配向性=[I(200)/Iall]×100、ここで、I(200):銅箔の表面に対してX線回折分析して得られた回折線のうち(200)面の回折線の相対ピーク強度、Iall:(110)、(111)、(200)、(311)各面の回折線の相対ピーク強度の和)が10%〜100%である未処理電解銅箔を製造する製箔工程と、
(2)前記未処理電解銅箔の表面を電気化学的または化学的に処理することでヴィッカース硬度が310Hv以下の値を持つ表面処理電解銅箔を製造する表面処理工程と、を含むことを特徴とする電解銅箔の製造方法。
【請求項8】
前記ヴィッカース硬度が100〜310Hvを満足することを特徴とする請求項7に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項9】
前記表面処理工程を通した電解銅箔の屈曲因子(F)が0.01以上の値を持つことを特徴とする請求項8に記載の電解銅箔の製造方法(ここで、F=K×E×Tであり、K(屈曲相関係数)=0.001mm/kgf、E:伸び率、T:引張強度を表す)。
【請求項10】
前記電解銅箔の単位面積当たりのノジュール数が20個/100μm〜200個/100μm、粗面(M面)の表面粗度(Rz)が1.0μm〜3.5μm、光沢面(S面)の表面粗度(Rz)が0.5μm〜2.5μm、炭素含有量が0.1%以下、硫黄含有量が0.05%以下、重量偏差が2g/m以下であることを特徴とする請求項9に記載の電解銅箔の製造方法。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のうち選択されたいずれか1項の製造方法によって製造された電解銅箔の少なくとも一表面にポリイミド樹脂層を塗布したことを特徴とするフレキシブル銅張積層板。
【請求項12】
請求項11の銅張積層板を用いたフレキシブルプリント基板。

【図1】
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【公開番号】特開2009−185384(P2009−185384A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14475(P2009−14475)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(509023012)エル エス エムトロン リミテッド (13)
【氏名又は名称原語表記】LS Mtron Ltd.
【住所又は居所原語表記】1026−6, Hogye−dong, Dong−an−gu, Anyang−city, Gyeonggi−do, Republic of Korea
【Fターム(参考)】