説明

低粘度組成物

【課題】単独では搬送方法、保管場所等、取り扱いに注意を要する高粘度ポリオールを含有する組成物であって、取り扱いの容易な低粘度組成物及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを含有してなり、25℃での粘度が1000mPa・s以下である低粘度組成物、並びに25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを混合する、請求項1〜5いずれか記載の低粘度組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上のポリオールからなる低粘度組成物及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、インク、潤滑油、化粧品、香料、医薬品等に用いられる低粘度組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオールは、インクジェットプリンタ用インク、染色剤等の分野で汎用されている(特許文献1、2等参照)。しかしながら、常温で粘度が高い液体は、搬送方法、保管場所等、取り扱いに注意を要する。
【特許文献1】特表平06−504576号公報
【特許文献2】特開2006−104218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、単独では搬送方法、保管場所等、取り扱いに注意を要する高粘度ポリオールを含有する組成物であって、取り扱いの容易な低粘度組成物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
高粘度のポリオールは、複数個の水酸基により、複数分子が水素結合することにより、分子運動が抑制され、粘度が上昇した結果と考えられ、ポリオールを加熱して分子に運動エネルギーを与えると粘度が低下する現象からも、水酸基の分子間水素結合の存在が示唆されている。また、25℃において、1,2,6-ヘキサントリオールの粘度は1587mPa・sであるのに対し、1,2-ヘキサンジオールでは57mPa・sであることから、1つの水酸基で粘度に大きな差があり、1,2,6-ヘキサントリオールにおける分子間水素結合が粘度に影響していることがわかる。このような現象を鑑み、水酸基による分子間水素結合を抑制し、高粘度ポリオールの粘度を低下させるため、水酸基を有する他の成分を混合し鋭意検討したところ、類似構造のポリオールを混合して新たな分子間結合を形成することにより、得られた組成物が混合比率に依存せず低粘度になることを見出し、本発明の低粘度組成物を発明するに至った。
【0005】
本発明は、
〔1〕 25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを含有してなり、25℃での粘度が1000mPa・s以下である低粘度組成物、並びに
〔2〕 25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを混合する、前記〔1〕いずれか記載の低粘度組成物の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の低粘度組成物は、単独では搬送方法、保管場所等、取り扱いに注意を要する高粘度液体のポリオールを含有していても、粘度が低く、取り扱いが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の低粘度組成物は、25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを含有するものである。25℃での粘度が1000mPa・s以下、好ましくは100〜700mPa・sである。高粘度液体のポリオールは、単独では、搬送や保管に煩雑な操作が必要とされ、特に取り扱い難い物質であるが、本発明のように他のポリオールBと混合して粘度を低くすることにより、取り扱いが格段に容易になる。
【0008】
ポリオールAは、3価以上のポリオールであることが好ましく、また、他のポリオールとの相溶性の観点から、炭素数4〜12のアルカンポリオールであることが好ましい。従って、ポリオールAは、炭素数4〜12のアルカントリオールが好ましく、なかでも、隣接する炭素原子に結合した2個の水酸基を末端に有するアルカントリオール、特に、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2,6-ヘキサントリオール等のように、一方の末端に隣接する炭素原子に結合した2個の水酸基を、他方の末端にもう1個の水酸基を有する直鎖状のα,β,ω−アルカントリオールは、他のアルカントリオールに比べて分子間水素結合が強く、粘度が高い傾向があるため、本発明による効果がより顕著に奏される。
【0009】
一方、ポリオールBは、ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールである。ポリオールAとの相溶性の観点から、ポリオールAとの炭素数の差は、好ましくは8以下、より好ましくは3以下であり、また、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール等の炭素数6〜13のアルカンジオールが好ましい。なかでも、常温で嵩高いわた状の形状をした固体の1,2-オクタンジオールは、それ自体取り扱いが煩雑であるため、ポリオールAと組み合わせて本発明の低粘度組成物とすることにより、両者の欠点が解決される。
【0010】
ポリオールBは、ポリオールAと類似の構造を有していることが好ましい。例えば、ポリオールAが直鎖状のアルカンポリオールであれば、ポリオールBも直鎖状のアルカンポリオールであることが好ましく、より具体的には、ポリオールAが前記直鎖状のα,β,ω−アルカントリオールである場合は、アルカントリオールと同様に、隣接する炭素原子に結合した1組の水酸基を末端に有する直鎖状のα,β-アルカンジオールであることが好ましい。
【0011】
ポリオールAとポリオールBの重量比(ポリオールA/ポリオールB)は、10/90〜90/10が好ましく、70/30〜80/20がより好ましい。
【0012】
本発明の低粘度組成物は、ポリオールAとポリオールBとを混合して得られる。具体的には、例えば、ポリオールAと1,2-オクタンジオールのように25℃において固体であるポリオールBとを混合する場合は、ポリオールAに加温して融解したポリオールBを添加し、混合することが好ましい。この際、加温するポリオールBの温度は、40〜50℃程度が好ましい。
【実施例】
【0013】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
【0014】
実施例1〜4及び比較例1、2
攪拌機及び温度計を備えた50mL容のフラスコに、常温下、表1に示すポリオールAを仕込み、これに表1に示すポリオールBを液温40〜45℃になるように加温しながら、5分間かけて少しずつ添加して溶解させた。その後、25℃まで冷却して、組成物を得た。
【0015】
表1に示すポリオール及び組成物の粘度及び融点は以下の方法により測定したものである。
【0016】
〔粘度の測定方法〕
デジタル回転粘度計(25℃、TV-22形粘度計、東機産業株式会社製)を用いて測定する。
【0017】
〔融点の測定方法〕
全自動融点測定装置(METTLER TOLEDO社製)を用いて測定する。
【0018】
【表1】

【0019】
以上の結果より、取り扱いの煩雑な高粘度液体のポリオールを他のポリオールと組み合わせて、低粘度組成物が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の低粘度組成物は、インク、潤滑油、化粧品、香料、医薬品等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを含有してなり、25℃での粘度が1000mPa・s以下である低粘度組成物。
【請求項2】
ポリオールAが3価以上のポリオールである、請求項1記載の低粘度組成物。
【請求項3】
ポリオールAが炭素数4〜12のアルカンポリオールである、請求項1又は2記載の低粘度組成物。
【請求項4】
アルカンポリオールがアルカントリオールである、請求項3記載の低粘度組成物。
【請求項5】
ポリオールBが炭素数6〜13のアルカンジオールである請求項1〜4いずれか記載の低粘度組成物。
【請求項6】
25℃での粘度が1200mPa・s以上の高粘度液体であるポリオールA及び該ポリオールAよりも水酸基の個数が少ないポリオールBを混合する、請求項1〜5いずれか記載の低粘度組成物の製造方法。

【公開番号】特開2009−280707(P2009−280707A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134364(P2008−134364)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000205638)大阪有機化学工業株式会社 (101)
【Fターム(参考)】