説明

低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツの製造方法

本発明は、有機溶媒または精製水を溶媒とし、オルティプラッツ及び水溶性高分子または不溶性高分子を含む混合液を製造する工程と、混合液のオルティプラッツを高分子内で固体分散させる工程とを含む低結晶性を有するか、または無定形のオルティプラッツの製造方法を提供する。固体分散工程は、混合液を、噴霧乾燥器を利用して噴霧乾燥体に製造するか、または流動層顆粒器を利用して顆粒を製造することによって行われうる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツの製造方法に係り、さらに具体的には、溶解度の低いオルティプラッツの溶解度を上昇させて、オルティプラッツの生体利用率を向上させるために、低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、持続的に酵素反応及びエネルギー代謝が起こる生体器官であり、体外から入った物質及び体内の物質の代謝過程で中枢的な役割を担う。現在、肝炎、肝硬変及び肝臓癌は、大韓民国における慢性疾病のうち、循環器系の疾患と共に最も多く発病する疾病であり、疾病による死亡原因としても大きな比重を占めている。したがって、肝組織の損傷を減らし、窮極的に治療に応用できる治療医薬組成物及び予防用医薬組成物の開発が要求されている。
【0003】
多様な合成化合物及び生薬剤を始めとする多様な物質が、試験管内または生体内で肝保護作用を示す。シリマリンやベタインがこれに属し、その作用メカニズムには、サイトカインの抑制やグルタチオンの増加など、多様な作用点が関与すると知られているが、効力が低いという短所によって、要求される程度の治療効果を期待することができないという問題点がある。しかし現実的には、肝疾患に対する適切な治療剤がないので、前記薬物が実際に臨床で使用されている。肝繊維化を適応症とするマロチレート誘導体の場合、肝内の第2相抱合酵素の誘導能及びシトクロムP450酵素を抑制することによって肝毒性を防御する。しかし、マロチレート誘導体は、シトクロムP450系酵素を無差別的に抑制するという点及び予防効果しか期待できないという短所を有する。
【0004】
十字花科に属する蔬菜類に天然に存在する硫黄含有化合物であるジチオールチオンの幾つかの誘導体は、肝保護効果があると知られており、それらのうち、オルティプラッツは、1980年代の初めに住血吸虫の治療剤として使用されたものであって、次の構造式を有する(KR2000−0010540)。

【0005】
このようなオルティプラッツは、TGF−βの生成を抑制することによって肝繊維化及び肝硬変の治療及び予防に効果があると知られている(韓国特許公開第2001−91012号公報、韓国特許公開第2003−67935号公報)。しかし、オルティプラッツは、脂溶性薬物であって、水に対して溶解度が1μg/ml以下である結晶性の高い難溶性薬物であって、効果発現に適正な血中有効濃度に至るまで、相対的に多量の薬物を経口服用しなければならないという問題がある。すなわち、消化管内における溶解度が、体内吸収の速度決定段階になる。
【0006】
従来のオルティプラッツ製剤は、錠剤、散剤、カプセル剤、懸濁液として研究されてきた。具体的には、オルティプラッツと、一定量の乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウムなどとを混合して顆粒化した後に錠剤を製造するか、またはその顆粒をカプセルに充填して硬質のカプセル剤を製造した。
【0007】
または、砂糖、異性化糖、芳香剤などを懸濁して製造した懸濁剤と、ポリエチレングリコール400、濃グリセリン、精製水などを混合して製造した軟質カプセルについての技術が開示されている(韓国特許公開第2003−67935号公報)。
【0008】
前記のような方法により簡単にオルティプラッツ製剤を製造できるが、オルティプラッツの溶解度及び生体利用率を上昇させるための側面においては不適切である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、オルティプラッツの溶解度及び生体利用率を上昇させる方法を提供する。
【0010】
本発明の第1側面によれば、本発明は、有機溶媒または精製水を溶媒として、オルティプラッツ及び水溶性高分子または不溶性高分子を含む混合液を製造する工程と、前記混合液のオルティプラッツを高分子内で固体分散させる工程とを含む結晶性の低下するか、または無定形のオルティプラッツを製造する方法を提供する。
【0011】
本発明のさらに他の側面によれば、製造された低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツを錠剤またはカプセルの製造に使用する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を解決するために、本発明は、有機溶媒または精製水を溶媒とし、オルティプラッツ及び水溶性高分子または不溶性高分子を含む混合液を製造する工程と、前記混合液のオルティプラッツを高分子内で固体分散させる工程とを含む低結晶性または無定形のオルティプラッツを製造する方法を提供する。
【0013】
前記固体分散工程は、前記混合液を、噴霧乾燥器を利用して噴霧乾燥体を製造するか、または流動層顆粒器を利用して顆粒を製造することによって行われうる。
【0014】
前記混合液は、オルティプラッツ、水溶性または不溶性高分子以外に吸収増進剤をさらに含みうる。吸収増進剤としては、アスコルビン酸、クエン酸、キシリトール、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、またはそれらの組合わせを使用できるが、それらに限定されるものではない。
【0015】
前記混合液の製造に使用される有機溶媒としては、塩化メチレン、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、メタノール、またはエタノールが望ましく、そのうち塩化メチレンが最も望ましい。
【0016】
前記混合液の製造に使用される高分子のうち水溶性高分子としては、ポリビニルピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、アルギン酸、アルギン酸塩またはその誘導体、α−シクロデキストリンまたはその誘導体、β−シクロデキストリンまたはその誘導体、γ−シクロデキストリンまたはその誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリエチレングリコールまたはその誘導体、ポリビニルアルコール、キサンタン・ガム、またはアラビア・ガム、またはそれらの組合わせが使用されうるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
前記ポリビニルピロリドンの分子量は、望ましくは、2,500ないし3,000,000である。
【0018】
前記ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体の分子量は、望ましくは、30,000ないし50,000である。
【0019】
前記アルギン酸塩誘導体としては、アルギン酸ナトリウムのエチレンまたはプロピレン化された誘導体を使用でき、その分子量は、20,000ないし200,000であることが望ましい。
【0020】
前記β−シクロデキストリン誘導体としては、プロピレン化されたβ−シクロデキストリン誘導体またはメチル化されたβ−シクロデキストリン誘導体を使用できる。
【0021】
前記ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体は、オキシエチレンの含量が45ないし75%であることが望ましい。
【0022】
前記ポリエチレングリコールまたはその誘導体の分子量は、200ないし90,000であることが望ましい。
【0023】
前記ポリエチレングリコール誘導体は、エステル化誘導体が使用されうるが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記オルティプラッツ及び高分子を含む混合液の製造に使用される高分子のうち不溶性高分子としては、セルロースまたはその誘導体、ポリメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、またはそれらの組合わせがあるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
前記セルロース誘導体としては、 酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピレンセルロースがあるが、これらに限定されるものではない。前記セルロース誘導体は、望ましくは、5ないし50cpsの粘度を有するヒドロキシプロピレンメチルセルロースである。
【0026】
前記オルティプラッツ及び高分子を含む混合液は、オルティプラッツ100重量部に対して、水溶性高分子または不溶性高分子を5ないし90重量部の割合で含むことが望ましい。水溶性高分子または不溶性高分子が5重量部未満である場合には、結晶性の低下したオルティプラッツを得ることが難しく、水溶性高分子または不溶性高分子が90重量部以上では、主薬物と賦形剤との最も適切な比率をなすことができないため、むしろ溶出及び生体利用率で効果が低下する。
【0027】
また、前記混合液が吸収増進剤をさらに含む場合には、前記オルティプラッツ100重量部に対して、水溶性高分子または不溶性高分子5ないし90重量部と吸収増進剤5ないし90重量部とを含むことが望ましい。最も望ましくは、前記オルティプラッツ100重量部に対して、水溶性高分子または不溶性高分子45重量部と吸収増進剤10重量部とを含む。吸収増進剤の含量が多くなれば、溶媒全体の増加によって、噴霧乾燥体の乾燥に長時間かかることがある。前記重量部の範囲内で各構成成分がよく混合されているということを証明する場合、ガラス遷移温度を測定する。
【0028】
前記方法で製造された低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツをそのまま使用してもよいが、錠剤またはカプセルの製造に使用してもよい。
【0029】
以下、本発明が提供する高分子にオルティプラッツを固体分散させる方法についてさらに詳細に説明する。
【0030】
本発明が提供する低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツの製造方法は、肝硬変の治療剤であるオルティプラッツの生体利用率を上昇させるためのものであって、結晶性を有する難溶性薬物であるオルティプラッツを、有機溶媒または精製水に水溶性高分子または不溶性高分子と溶解させるか、またはこれに吸収増進剤を追加して溶解させた後、高分子にオルティプラッツを固体分散させる方法である。
【0031】
固体分散させる方法としては、前記混合液を、噴霧乾燥器を利用して噴霧乾燥体を製造する方法と、流動層顆粒器を利用して顆粒を製造する方法とがある。本発明で提供するオルティプラッツを固体分散させる方法を工程別にさらに詳細に説明すれば、次の通りである。
【0032】
−第1工程:
難溶性のオルティプラッツを有機溶媒または精製水に溶解させる。
【0033】
有機溶媒としては、塩化メチレン、アセトン、クロロホルム、アセトニトリル、メタノール、またはエタノールのような揮発性有機溶媒が望ましく、そのうち、塩化メチレンが最も望ましい。これは、オルティプラッツが塩化メチレンで7.6mg/mlの溶解度を有し、爆発性の危険性がアセトンより少ないためである。
【0034】
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのような油相の液状ポリマー、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンのような油性溶媒は、オルティプラッツの溶解は非常に容易であるが、非常に低い揮発性のために噴霧乾燥体の製造時に問題が発生する。すなわち、オルティプラッツを溶解させる前記有機溶媒としては、オルティプラッツの溶解が容易であるだけでなく、揮発性の高い溶媒を使用することが望ましい。
【0035】
各種有機溶媒及び油相の液状ポリマーに対するオルティプラッツの溶解度を下記表1に表した。
【0036】
【表1】

【0037】
−第2工程:
水溶性高分子または不溶性高分子を単独で有機溶媒または精製水に溶解するか、または水溶性高分子または不溶性高分子を吸収増進剤と共に有機溶媒または精製水に溶解させる。
【0038】
前記水溶性高分子は、ポリビニルピロリドンまたはその誘導体、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、アルギン酸、アルギン酸塩またはその誘導体、α−シクロデキストリンまたはその誘導体、β−シクロデキストリンまたはその誘導体、γ−シクロデキストリンまたはその誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリエチレングリコール及びその誘導体、ポリビニルアルコール、キサンタン・ガム、アラビア・ガム、またはそれらの組合わせが望ましく、さらに望ましくは、4万ないし5万の分子量を有するポリビニルピロリドン、及び3万ないし5万の分子量を有するポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体である。
【0039】
前記不溶性高分子は、セルロースまたはその誘導体、ポリメタクリレート、ポリアルキルアクリレート、またはそれらの組合わせがあるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
前記セルロース誘導体としては、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピレンセルロースがあるが、これらに限定されるものではない。前記セルロース誘導体は、望ましくは、5ないし50cpsの粘度を有するヒドロキシプロピレンメチルセルロースである。前記粘度範囲を逸脱する場合には、過度な粘度の上昇によって、噴霧乾燥体の乾燥が容易ではなく、所望の噴霧乾燥体を得ることができない。
【0041】
前記ポリメタクリレート及びポリアルキルアクリレートは、2種以上の混合体として使用され、例えば、ポリメタアクリレートとポリメチルメタクリレートとが1:1の割合で混合された混合体、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、そして、ポリトリメチルアンモニオエチルメタアクリレート塩化物が1:2:0.1、1:2:0.2の2つの割合で混合された混合体がある。
【0042】
水溶性高分子または不溶性高分子を溶解させる前記溶媒としては、エタノール、メタノール、塩化メチレン、アセトニトリル、アセトン、イソプロピルアルコール、クロロホルム、またはそれらの組合わせを使用でき、精製水は、非イオン化したものを使用する。
【0043】
有機溶媒に水溶性高分子または不溶性高分子を溶解させるとき、高分子以外に吸収増進剤をさらに含ませうる。このとき、使用された吸収増進剤は、水素結合を通じて、主薬物と錯体をなそうとする傾向が強く、無結晶化状態をなすことによって、消化器内の吸収をさらに増進させる役割を行う。
【0044】
吸収増進剤としては、有機酸が使用され、このような有機酸としては、アスコルビン酸またはクエン酸があり、必要に応じては、キシリトールまたはポリエチレングリコールを使用できる。このうち、最も適した吸収増進剤は、クエン酸である。
【0045】
前記第1工程及び第2工程では、オルティプラッツ溶液及び高分子溶液を別途に製造したが、同じ溶媒にオルティプラッツ及び高分子、またはオルティプラッツ、高分子、及び吸収増進剤を同時に溶解させて混合溶液を製造してもよい。
【0046】
−第3工程:
前記製造されたオルティプラッツ溶液と高分子水溶液とを混合する。
【0047】
前記オルティプラッツ溶液と高分子水溶液とを混合するとき、オルティプラッツと水溶性高分子または不溶性高分子との混合比率は、オルティプラッツ100重量部に対して高分子10ないし90重量部になるように混合することが望ましく、最も望ましくは、3:7の割合で混合する。
【0048】
吸収増進剤を添加するときには、オルティプラッツ100重量部に対して、高分子5ないし90重量部、及び吸収増進剤5ないし90重量部になるように混合することが望ましく、最も望ましくは、100:45:10の割合で混合する。
【0049】
−第4工程:
前記オルティプラッツと高分子との混合溶液で噴霧乾燥体または顆粒を製造する。
【0050】
前記オルティプラッツと高分子との混合液を、機械的撹拌器で30ないし60分間混合した後、噴霧乾燥器を利用して、その混合液を微細な粒子を有する噴霧乾燥体に製造できる。
【0051】
まず、よく攪拌されたオルティプラッツと高分子との混合液を、噴霧乾燥器で流入温度60ないし100℃、排気温度40ないし80℃で噴霧乾燥を実施できる。このとき、混合液の流入量は、300ml/時間〜1500ml/時間の速度で噴霧乾燥体の乾燥状態及び排気温度を調節しつつ実施できる。このとき、最も望ましい噴霧条件は、流入温度80ないし85℃、排気温度60ないし65℃、そして、混合液の流入量は720ml/時間である。
【0052】
また、前記オルティプラッツと高分子との混合液は、流動層顆粒器を利用して顆粒に製造できる。
【0053】
一定量の微晶質セルロース、硬質無水硅酸の入った流動層顆粒器を、流入温度60ないし100℃、排気温度40ないし80℃の条件で十分に予熱させて混合した後、よく攪拌されたオルティプラッツと高分子との混合液を、300ml/時間ないし1500ml/時間の流入速度で微晶質セルロース及び硬質無水硅酸に吸着させつつ、顆粒物を乾燥させることによって顆粒を製造できる。このとき、最も望ましくは、流入温度80〜85℃、排気温度60〜65℃、混合液の流入量720ml/hrの噴霧条件を使用する。
【0054】
溶解度の上昇を目的として、ポリソルベート及びその誘導体、またはラウリル硫酸ナトリウムをさらに添加でき、その量は、総顆粒重量において2.5%を超えないことが望ましい。
【0055】
微晶質セルロースと硬質無水硅酸との比率は、オルティプラッツと高分子との混合物の重量を1としたとき、混合物と微晶質セルロースとの混合比率が1:1〜1:3とし、混合物と硬質無水硅酸との混合比率は1:0.1〜1:1とすることが望ましく、このとき、最も望ましくは、混合物、微晶質セルロース、そして硬質無水硅酸の3つの成分の比率が1:2:0.5である。
【0056】
前記のような方法で製造されるオルティプラッツ固体分散体または顆粒は、そのまま使用されうるが、カプセル及び錠剤に製造されて使用されてもよい。
【発明の効果】
【0057】
本発明の方法によれば、結晶性の低下したオルティプラッツを製造でき、これにより、難溶性の結晶性オルティプラッツの溶解度及び生体利用率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0058】
以下、本発明を、実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、それらの実施例は、本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲が、それらの実施例に限定されるものではない。
【0059】
実施例1
噴霧乾燥体の製造(1)
オルティプラッツ30gを塩化メチレン1.8Lに均一に溶解させ、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)70gをエタノール200mlに均一に溶解させた。前記二つの溶液を混合させた混合液を、噴霧乾燥器(Buch B250、スイス)を利用して、流入温度80℃、排気温度60℃の温度条件で混合液を流入速度720ml/時間で噴射させて、有機溶媒の乾燥された約30gの生成物を得た。それにより、オルティプラッツとポリビニルピロリドンとの重量比が3:7である噴霧乾燥体を製造した。
【0060】
実施例2
噴霧乾燥体の製造(2)
前記実施例1で、ポリビニルピロリドンの代わりにポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体を使用する点を除いては同じ方法で製造して、オルティプラッツ及びポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体の重量比が3:7である噴霧乾燥体を製造した。
【0061】
実施例3
噴霧乾燥体の製造(3)
オルティプラッツ30gを塩化メチレン1.8Lに均一に溶解させ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース70gをアセトン200mlに均一に溶解させた。前記二つの混合液を30分間混合した後、その混合液を、噴霧乾燥器を利用して流入温度80℃、排気温度60℃の温度条件で流入速度720ml/時間で噴射させて、有機溶媒の乾燥された生成物を得た。それにより、オルティプラッツとヒドロキシプロピルメチルセルロースとの重量比が3:7である噴霧乾燥体を製造した。
【0062】
実施例4
噴霧乾燥体の製造(4)
オルティプラッツ30gを塩化メチレン1.8Lに均一に溶解させ、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン30gをエタノール500mLに均一に溶解させた。前記二つの混合液を30分間混合した後、その混合液を、噴霧乾燥器を利用して流入温度80℃、排気温度60℃の温度条件で流入速度720ml/時間で噴射させて、有機溶媒の乾燥された生産物を得た。それにより、オルティプラッツとヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンとの重量比が1:1である噴霧乾燥体を製造した。
【0063】
実施例5
噴霧乾燥体の製造(5)
オルティプラッツ10gを塩化メチレン1.8Lに均一に溶解させ、さらに他の容器には、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)30g及びγ−シクロデキストリン60gを50%エタノール1Lに均一に溶解させた。前記二つの混合液を他の一つの容器で30分間混合した後、その混合液を、噴霧乾燥器を利用して流入温度80℃、排気温度60℃の温度条件で流入速度720ml/時間で噴射させて、有機溶媒の乾燥された生成物を得た。それにより、オルティプラッツ、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)、及びγ−シクロデキストリンの重量比が1:3:6である噴霧乾燥体を製造した。
【0064】
実施例6
顆粒の製造(1)
オルティプラッツ30gを塩化メチレン1.8Lに均一に溶解させ、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)70gをエタノール200mlに均一に溶解させた。微晶質セルロース(Avicel PH101)200g及び硬質無水硅酸50gを入れた流動層顆粒器(FREUND Spir−A−Flow、日本)を流入温度60℃及び排気温度40℃の条件で十分に予熱させて混合した後、前記二つの混合液を噴射させて、ポリビニルピロリドンに溶解されたオルティプラッツを微晶質セルロース(Avicel PH101)及び硬質無水硅酸に吸着させ、有機溶媒の完全に乾燥された顆粒を得た。
【0065】
実施例7
顆粒の製造(2)
オルティプラッツ30gを塩化メチレン1.8Lに均一に溶解させ、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体70gをエタノール200mLに均一に溶解させた。微晶質セルロース(Avicel PH101)200g及び硬質無水硅酸50gを入れた流動層顆粒器を、流入温度60ないし100℃、排気温度40ないし80℃の条件で十分に予熱させて混合した後、前記の混合液を噴射させて、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体に溶解されたオルティプラッツを微晶質セルロース(Avicel PH101)及び硬質無水硅酸に吸着させ、有機溶媒の完全に乾燥された顆粒を得た。
【0066】
実施例8
噴霧乾燥体の製造(6)
オルティプラッツ45gを塩化メチレン2.7Lに均一に溶解させ、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)45gをクエン酸60gと共にエタノール300mlに入れた後、高速乳化器で粉砕しつつ溶解させた。前記二つの混合液を約30分間混合した後、その混合液を、噴霧乾燥器を利用して流入温度80℃、排気温度60℃の温度条件で流入速度720ml/時間で噴射させて、有機溶媒の乾燥された生成物を得た。それにより、オルティプラッツ、ポリビニルピロリドン、及びクエン酸の重量比が45:45:60である噴霧乾燥体を製造した。
【0067】
実施例9
噴霧乾燥体の製造(7)
オルティプラッツ45gを塩化メチレン2.7Lに均一に溶解させ、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体45gをクエン酸10gと共にエタノール300mLに入れた後、高速乳化器で粉砕しつつ溶解させた。前記二つの混合液を約30分間混合した後、その混合液を、噴霧乾燥器を利用して流入温度80℃、排気温度60℃の温度条件で流入速度720ml/時間で噴射させて、有機溶媒の乾燥された生成物を得た。それにより、オルティプラッツ、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、及びクエン酸の重量比が45:45:10である噴霧乾燥体を製造した。
【0068】
実施例10
錠剤の製造(1)
実施例1で製造されたオルティプラッツの噴霧乾燥体を含んだ全体100重量部に対して、直接圧縮用微晶質セルロース48.5重量部、グルコン酸ナトリウム6.0重量部、及びステアリン酸マグネシウム1.61重量部を添加して混合した後、硬度が10Kpになるように錠剤を製造した。
【0069】
実施例11
錠剤の製造(2)
実施例2で製造されたオルティプラッツの噴霧乾燥体を含んだ全体100重量部に対して、直接圧縮用微晶質セルロース48.5重量部、グルコン酸ナトリウム6.0重量部、及びステアリン酸マグネシウム1.61重量部を添加して混合した後、硬度が10Kpになるように錠剤を製造した。
【0070】
実施例12
カプセルの製造(1)
実施例1で製造されたオルティプラッツの噴霧乾燥体100gに微晶質セルロース30g、及びステアリン酸マグネシウム3gを加えて混合した後、カプセルに充填してオルティプラッツカプセルを製造した。
【0071】
実施例13
カプセルの製造(2)
実施例6で製造されたオルティプラッツ顆粒350gにステアリン酸マグネシウム5gを加えて混合した後、カプセルに充填した。
【0072】
(比較例1)
オルティプラッツ30gをジェット気流衝突式粉砕機(SANKI Jet−miller、日本)を利用して、5μmの平均粒径に粉砕したものを生理食塩水に懸濁させて使用した。
【0073】
(実験例1)
溶解度及び生体利用率の評価
前記実施例10及び実施例11でそれぞれ製造された錠剤の溶解度、及び前記実施例1及び実施例2でそれぞれ製造された噴霧乾燥体の生体利用率を評価するために、溶出試験法及び動物試験を実施した。
【0074】
A.溶出試験
薬典の一般試験法のうち、溶出試験法2法によって溶出試験を実施した。比較例1のオルティプラッツで製造した錠剤、実施例10で製造された錠剤、及び実施例11で製造された錠剤に対して、3%ラウリル硫酸ナトリウム900mlを溶出液とし、100回転/分の条件下で120分間実施した。
【0075】
溶出試験開始0、15、30、60、90、120分で溶出液を取ってろ過し、その濾液を検液として高速液体クロマトグラフィ法(HPLC)で分析した。
【0076】
その結果を、図1に経時的変化による溶出濃度を表すグラフで表した。その結果によれば、実施例10及び実施例11の場合、溶出速度及び溶出量において比較例1のオルティプラッツで製造した錠剤に比べて顕著に高いということが分かる。
【0077】
B.動物実験
前記実施例1及び実施例2で製造した噴霧乾燥体と、比較例1の生成物とを、絶食した180ないし230gのラットを対象として、50equ.mg/5mL/kgで経口投与して、30時間血漿中のオルティプラッツ濃度を測定した。
その結果を下記表2と図2に表した。
【0078】
【表2】

【0079】
実施例1及び実施例2の噴霧乾燥体は、比較例1の微細化された粉末に比べてCmaxがさらに大きく、Tmaxが速く到達することが分かった。そして、比較例1の微細化された粉末より、実施例1及び2の噴霧乾燥体の場合に、AUCが1.5倍以上さらに大きいということが分かった。
【0080】
このような結果から、比較例のオルティプラッツに比べて、本発明の方法で製造されたオルティプラッツ錠剤の生体利用率が著しく向上したということが分かる。
【0081】
(実験例2)
SEM写真撮影
前記実施例で使用されたオルティプラッツ原料粉末(図3A)、そのオルティプラッツをジェット気流衝突式粉砕機で粉砕したもの(0.70mPaのノズル圧力下で時間当り2.5kg/時間のオルティプラッツを回収)(図3B)、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)(図3C)、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体(図3D)、実施例1で製造された噴霧乾燥体(図3E)、実施例2で製造された噴霧乾燥体(図3F)、実施例5で製造された噴霧乾燥体(図3G)、実施例3で製造された噴霧乾燥体(図3H)、実施例6で製造された顆粒(図3I)、実施例9で製造された噴霧乾燥体(図3J)、及びオルティプラッツ及びポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体を3:7の割合で単純混合したもの(図3K)に対するSEM写真を撮影した。
【0082】
針状の結晶を表すオルティプラッツが、球状の無結晶型のポリビニルピロリドン及びポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体と噴霧乾燥体とを製造することによって、針状の結晶を表すオルティプラッツが見られないことによって無結晶化されることを意味する。
【0083】
この噴霧乾燥体は、図3Kで提供したオルティプラッツ及びポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体を3:7の割合で単純混合したものと比較して、構造においてその差が著しいということが分かる。
【0084】
(実験例3)
X線回折器を利用した結晶性の測定
結晶性の低下を確認するために、前記実施例で原料として使用されたオルティプラッツ、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)、及び微晶質セルロース(図4A)と、実施例1及び実施例5で製造された噴霧乾燥体と、実施例6及び実施例7で製造された顆粒(図4B)とに対し、それぞれX線回折器(Rigaku D/MAX−IIIB)で結晶性を測定した。その結果を、図4A及び図4Bに示した。
【0085】
図4Aから、実施例1-13に適用される各構成成分の結晶性を確認することができる。オルティプラッツは、原料である比較例1は、それ自体が強い結晶性ピークを有していることを表しており、実施例1で適用されるポリビニルピロリドンは、特別のピークなしにブロードなピークを表すことによって、無結晶型のポリマーであることを表している。
【0086】
図4Bによれば、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)で製造した実施例1は、結晶性がほとんど表れず、実施例5は、γ−シクロデキストリンのために、結晶性が表れ、実施例6及び実施例7は、微晶質セルロースの影響によって若干の結晶性が表れる。
【0087】
本発明は、図示された実施例を参照して説明したが、それは例示されたものに過ぎず、当業者ならば、これから多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるということが理解できる。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、特許請求の範囲の技術的思想によって決まらなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
本発明の上記、および他の特徴および利点は、以下に付随の図面に関連したそれらの例証的な態様を詳細に記述することによって、より明らかになるだろう。
【図1】比較例1、実施例10及び実施例11の錠剤を溶出試験した結果を示すグラフである。
【図2】比較例1の微細化された粉末、実施例1、及び実施例2の噴霧乾燥体をラットを対象として経口投与して、経時的変化による血漿内におけるオルティプラッツの濃度変化を示すグラフである。
【図3A】オルティプラッツ原料粉末のSEM写真である。
【図3B】オルティプラッツをジェット気流衝突式粉砕機で粉砕したもののSEM写真である。
【図3C】ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)のSEM写真である。
【図3D】ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体のSEM写真である。
【図3E】実施例1で製造されたオルティプラッツ噴霧乾燥体のSEM写真である。
【図3F】実施例2で製造されたオルティプラッツ噴霧乾燥体のSEM写真である。
【図3G】実施例5で製造されたオルティプラッツ噴霧乾燥体のSEM写真である。
【図3H】実施例3で製造されたオルティプラッツ噴霧乾燥体のSEM写真である。
【図3I】実施例6で製造されたオルティプラッツ顆粒のSEM写真である。
【図3J】実施例9で製造されたオルティプラッツ顆粒のSEM写真である。
【図3K】オルティプラッツ及びポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体を3:7の割合で単純混合したもののSEM写真である。
【図4A】比較例1、ポリビニルピロリドン(分子量:40,000)及び微晶質セルロースに対してX線回折器で結晶性を測定した結果を示すグラフである。
【図4B】実施例1で製造された噴霧乾燥体、実施例5で製造された噴霧乾燥体、実施例6及び実施例7で製造された顆粒に対してX線回折器で結晶性を測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒または精製水を溶媒とし、
オルティプラッツ、及び水溶性高分子または不溶性高分子を含む混合液を製造する工程;および、
前記混合液のオルティプラッツを高分子内で固体分散させる工程
を含む低結晶性または無定形のオルティプラッツの製造方法。
【請求項2】
固体分散工程において、混合液が、噴霧乾燥器を利用した噴霧乾燥体であるか、または流動層顆粒器を利用して顆粒化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
混合液が、吸収増進剤をさらに含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
吸収増進剤が、アスコルビン酸、クエン酸、キシリトール、およびポリエチレングリコール、またはその誘導体からなる群より選択される少なくとも一つの化合物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水溶性高分子が、ポリビニルピロリドンもしくはその誘導体、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、アルギン酸、アルギン酸塩もしくはその誘導体、α−シクロデキストリンもしくはその誘導体、β−シクロデキストリンもしくはその誘導体、γ−シクロデキストリンもしくはその誘導体、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリエチレングリコールもしくはその誘導体、ポリビニルアルコール、キサンタン・ガム、アラビア・ガム、またはそれらの組み合わせからなる群より選択される少なくとも一つの高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリビニルピロリドンの分子量が、2,500ないし3,000,000である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体の分子量が、30,000ないし50,000である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
アルギン酸塩誘導体が、アルギン酸ナトリウムのエチレンまたはプロピレン誘導体であり、その分子量は、20,000ないし200,000である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
β−シクロデキストリン誘導体が、β−シクロデキストリンのプロピレン誘導体、またはβ−シクロデキストリンのメチル化誘導体である、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体が、オキシエチレンを45ないし75%含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
ポリエチレングリコールまたはその誘導体の分子量が、200ないし90,000である、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
ポリエチレングリコール誘導体が、ポリエチレングリコールのエステル化誘導体である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
不溶性高分子が、セルロースまたはその誘導体、ポリメタクリレート、およびポリアルキルアクリレートからなる群より選択される、少なくとも一つの高分子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
セルロース誘導体が、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロース、ヒドロキシプロピレンメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシプロピレンセルロースである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
セルロース誘導体が、5ないし50cpsの粘度を有するヒドロキシプロピレンメチルセルロースである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
オルティプラッツ100重量部に基づいて、水溶性高分子または不溶性高分子の濃度が混合液において、10ないし90重量部である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
オルティプラッツ100重量部に基づいて、それぞれ、水溶性高分子または不溶性高分子の濃度が混合液において、5ないし90重量部であり、かつ吸収増進剤の濃度が混合液において、5ないし90重量部である、請求項3に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法で製造された低結晶性を有するか、または無定形化されたオルティプラッツを錠剤またはカプセルの製造に使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図3J】
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【図3K】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−519714(P2007−519714A)
【公表日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550946(P2006−550946)
【出願日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000232
【国際公開番号】WO2005/070397
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(504309863)シージェイ コーポレーション (16)
【Fターム(参考)】