説明

低血糖混合物

本発明はL−カルニチン及び低血糖スクロース異性体を含む混合物及び製品、その製造方法並びに混合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はL−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含む混合物、この混合物を含む製品、その製造方法及び混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
L−カルニチン(3−ヒドロキシ−4(トリメチルアンモニオ)酪酸ベタイン)は、とりわけ脂肪酸代謝においてミトコンドリア膜を通るアシル基伝達体の役割をする、無色の、水に溶けやすい物質である。脂肪酸が代謝されるミトコンドリア内に活性化した長鎖脂肪酸を移動させることによるヒト又は動物の身体でのエネルギー産生のために脂肪を利用することにおいて、L−カルニチンは重要な役割を果たす。脂肪代謝におけるL−カルニチンの上記の役割は、一連の食品、嗜好品及び飲料において体重減少又は少なくとも体重維持効果のある製品を提供するために利用される。例えば国際公開WO97/49304は、とりわけL−カルニチンを含むスポーツ及びエネルギー飲料を記述しており、その消費によって高エネルギー基質、例えば中鎖及び長鎖遊離脂肪酸の優先的な代謝が生じる。
【0003】
ところが体内のエネルギー産生のための上記の脂肪の優先的利用は、L−カルニチンの上記の効果を利用することだけでなく、別途の方法でも得られる。このような別途の方法は低血糖物質、特に低血糖炭水化物の使用である。これらの物質は、その消費が体内のインスリン濃度の上昇を比較的抑制するから、脂肪の酸化が炭水化物の酸化より優先するという特徴がある。周知の低血糖糖類は例えばフルクトース又はイソマルツロースである。スポーツ飲料中のL−カルニチン及びフルクトースの混合物がすでに欧州特許出願公開EP0652012A又は国際公開W97/49304により知られている。
【0004】
ところが上記のL−カルニチン含有製品は、消費者が味覚又は嗅覚に関してあまり魅力的に感じないのが特徴である。その原因は僅かなアミン臭を伴うL−カルニチンの独特な甘味である。L−カルニチンはまた、特定の還元糖、例えばフルクトースと混合されると安定性が低下することが知られている。最後に、L−カルニチン/フルクトース含有飲料は、改善の余地のある重量オスモル濃度(等張性)が特徴である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明の根底にあるのは、上記の欠点を克服するL−カルニチン含有製品、その製造方法及び使用を提供し、特に例えば食品、嗜好品、医薬品又は飲料に使用した場合、消費者に大いに受け入れられ、特に味と匂いが改善され、貯蔵安定性が増したL−カルニチン含有混合物を提供するという技術問題である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、L−カルニチンと少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、好ましくはL−カルニチンと1種又は2種の低血糖スクロース異性体を含み、即ち特にL−カルニチンとロイクロースを含むか、又はL−カルニチンとイソマルツロースを含むか、又はL−カルニチンとロイクロース及びイソマルツロースを含む混合物を提供することによって、根底にある技術問題を解決する。
【0007】
本発明に関連して、低血糖スクロース異性体とは、人体内で低血糖炭水化物として作用し、即ち消費の後に比較的低い呼吸商をもたらすスクロースの異性体、即ち構造異性体を意味する。呼吸商は呼気のCO2/O2比を反映し、どのような栄養物が燃焼されるかの尺度である。純炭水化物燃焼は呼吸商1をもたらすが、純脂肪燃焼は呼吸商0.7となる。こうして低血糖炭水化物は、インスリン濃度をあまり上昇させず、従って脂肪酸化を促進するから、体内のエネルギー産生のための脂肪の利用を受動的に助ける。
【0008】
本発明に関連して、低血糖スクロース異性体とは、特にロイクロース及びイソマルツロースを意味する。従って本発明の枠内で「低血糖スクロース異性体」の概念は、特にa)低血糖炭水化物としてイソマルツロースが本発明のL−カルニチン含有混合物に配合され、又はb)ロイクロースが本発明のL−カルニチン含有混合物に配合され、又はc)ロイクロース及びイソマルツロースが好ましくは1:99重量%〜99:1重量%、好ましくは30:70重量%〜70:30重量%の比率(2種の異性体の全乾燥物含量に対して)でL−カルニチン含有混合物に使用されることを表す。
【0009】
混合物中のL−カルニチンと低血糖スクロース異性体、特にイソマルツロース及び/又はロイクロースとの組み合わせによって、意外なことに、消費者が独特な甘さと感じるL−カルニチンの味覚がマスクされ、得られる混合物は、特にこの混合物で製造された製品でも快適な甘味を持つようになる。さらに、多くの消費者が不快に感じるL−カルニチンの僅かなアミン臭もマスクされる。意外なことに、水溶液、即ち飲料中のイソマルツロースは、多くの消費者が不都合に感じるL−カルニチンの苦味と渋味を、特にフルクトースと比較して驚くほど大変よくマスクすることが判明した。フルクトースはイソマルツロースよりはるかに甘いのだが、渋味と苦味に対するマスク効果がはるかに小さい。最後に、意外なことに、少なくとも1種の低血糖スクロース異性体、特にイソマルツロース、ロイクロース又はイソマルツロースとロイクロースの組み合わせの存在下で、L−カルニチンの安定性が特にL−カルニチン・フルクトース混合物と比較して大幅に高められることを観察することができた。最後に、L−カルニチン及びロイクロース及び/又はイソマルツロース含有混合物をベースとして作られた飲料は、L−カルニチンを含む既知の単糖含有飲料と比較して、重量オスモル濃度(等張性)が良好であることが示される。
【0010】
本発明に関連して、良い味とは、被験者群が、イソマルツロース及びL−カルニチン含有製品の味を、イソマルツロース及び/又はロイクロースを添加しないL−カルニチン含有比較製品の独特な甘味と異なり、快適な甘味であると統計的に有意な程度に感じることを意味する。
【0011】
本発明に関連して、改善された匂いとは、被験者群が、イソマルツロース及びL−カルニチン含有製品において、イソマルツロース及び/又はロイクロースを添加しないL−カルニチン含有比較製品で感知される僅かなアミン臭を感知しないことを意味する。この結果は統計的に有意である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
好ましい形態では、本発明に基づく混合物は、固形、例えば粒状、顆粒状、塊状、結晶質(特にイソマルツロースの場合)、非晶質(特にロイクロースの場合)、ガラス状又は独特な形態である。また混合物は、液状、例えば水に溶解していることも可能である。
【0013】
特に好ましい実施形態では、本発明は、0.05〜5重量%のL−カルニチン、好ましくは0.1〜5重量%のL−カルニチン、好ましくは0.1〜4重量%のL−カルニチン、特に1〜5重量%のL−カルニチン、特に0.5〜3重量%のL−カルニチン(それぞれ混合物の全乾燥物に対して)を含む上記の混合物に関する。
【0014】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.1重量%、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、95、96、97、98、99又は99.5〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体、好ましくは5〜80重量%の低血糖スクロース異性体、特に50〜75重量%又は10〜60重量%の低血糖スクロース異性体を含む(それぞれ混合物の全乾燥物に対して)上記の混合物に関する。
【0015】
また本発明は、0.05〜5重量%のL−カルニチン及び0.1重量%、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、好ましくは95重量%〜99.95重量%の低血糖スクロース異性体、好ましくは0.1〜4重量%のL−カルニチン及び0.1重量%、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、好ましくは96重量%〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体、好ましくは0.1〜4重量%のL−カルニチン及び5重量%、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、好ましくは96重量%〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体、特に0.1〜4重量%のL−カルニチン及び50重量%、好ましくは96重量%〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体又は0.1〜4重量%のL−カルニチン及び10重量%、好ましくは96重量%〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体(それぞれ混合物の全乾燥物に対して)を含む上記の混合物に関する。
【0016】
別の好ましい実施形態では、本発明は、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4重量%のL−カルニチン及び0.1重量%、好ましくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、好ましくは95重量%〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体及び/又は96重量%〜99.5重量%の低血糖スクロース異性体、好ましくは0.5〜3重量%のL−カルニチン及び97〜99.5重量%の低血糖スクロース異性体、特に0.5〜4重量%のL−カルニチン及び50重量%、好ましくは96重量%〜99.5重量%の低血糖スクロース異性体又は0.5〜4重量%のL−カルニチン及び10重量%、好ましくは96重量%〜99.5重量%の低血糖スクロース異性体(それぞれ混合物の全乾燥物に対して)を含む上記の混合物に関する。
【0017】
別の好ましい実施形態では、本発明の混合物は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体のほかに、混合物の全乾燥重量に対して特に1〜99重量%、好ましくは2〜85重量%、3〜70重量%、5〜60重量%、10〜50重量%、20〜40重量%又は25〜38重量%の量の少なくとも1種の添加物を含有する。
【0018】
サプリメントとは、特に、混合物の外観、味、官能的性質、栄養価、栄養生理学的性質、加工性、貯蔵性又は即時可用性に影響する物質を意味する。
【0019】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物はプレバイオティクスである。
【0020】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物はプロバイオティクスであるとする。
【0021】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物はサプリメントである。
【0022】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物は脂肪含有成分である。
【0023】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物は乳製品である。
【0024】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物は甘味料である。
【0025】
本発明に関連して、「甘味料」の概念は、甘味度を有し、甘味を喚起するために、例えば食品又は飲料に添加される物質を意味する。本発明に関連して、「甘味料」は、こく(Koerper(body))と甘味度を付与する「糖」、例えばイソマルツロース、スクロース、グルコース又はフルクトースと、「甘味物質」、即ち糖ではないが甘味度を有する物質に分けられる。この甘味物質はさらに「糖代替物」、即ち甘味度に加えてこくと生理的熱量を有する甘味物質(こくのある(Koerpergebende(bodying))甘味物質)及び「強力甘味物質」、即ち通常きわめて高い甘味度を有するが、こくがなく、通常まったく又はごく僅かしか生理的熱量を持たない物質に区分される。強力甘味物質は例えばスクラロースである。
【0026】
そこで特に好ましい実施形態では甘味料は糖、強力甘味物質又は糖代替物である。
【0027】
別の好ましい実施形態では、強力甘味物質は、スクラロース、シクラミン酸ナトリウム、アセスルファームK、ネオヘスペリジン−ジヒドロカルコン、グリチルリチン、ステビオシド、モネリン、タウマチン、アスパルテーム、ズルチン、サッカリン、ナリンギン−ジヒドロカルコン、ネオテーム及びこれらのうちの2種以上の混合物からなる群から選ばれる。別の好ましい実施形態では、糖代替物は、イソマルト、1,1-GPM (1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール)、1,6-GPS (6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)、1,1-GPS(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)、マルトデキストリン、ラクチトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトールシロップ、水素化及び非水素化デンプン加水分解物及びこれらのうちの2種以上の混合物からなる群から選ばれる。
【0028】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の添加物は糖、特にスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース又はこれらのうちの2種以上の混合物である。
【0029】
もちろん本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、その少なくとも1種の低血糖スクロース異性体が混合物中に唯一存在する、こくのある甘味料である混合物にも関する。別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、その少なくとも1種の低血糖スクロース異性体が混合物中に唯一存在する糖である上記の混合物に関する。別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、その少なくとも1種の低血糖スクロース異性体が混合物中に唯一存在する甘味料である混合物に関する。
【0030】
特に、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み又はこれらからなる混合物及びこの混合物を含む製品に関し、この混合物及び製品は糖尿病患者に適ししている。
【0031】
別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、スクロースを含まず、又はグルコースを含まず、又はラクトースを含まず、又はフルクトースを含まず、又はソルビトールを含まず、又はキシリトールを含まず、又はマンニトールを含まず、又は上記の糖又は糖アルコールの1種又は幾つか又はすべてを含まない上記の混合物に関する。
【0032】
別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、添加物としてプレバイオティクス、特にイヌリン、オリゴフルクトース又はガラクトオリゴ糖を含む混合物に関する。
【0033】
別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、その少なくとも1種の添加物が乳製品、特に無乳糖乳製品、例えば脱脂粉乳、全粉乳、無乳糖脱脂粉乳、無乳糖全粉乳、ホエー製品又はこれらのうちの2種以上の混合物である混合物に関する。
【0034】
別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、その少なくとも1種の添加物が麦芽エキス、香料、着色料、風味物質、流動剤、無機質、例えばナトリウム及びカルシウム、特に塩、例えば塩化ナトリウム、ビタミン、葉酸、乳化剤、食物繊維、レシチン、オメガ−3−脂肪酸、中鎖トリグリセリド、フィトエストロゲン及びアスコルビン酸塩からなる群から選ばれるサプリメントである混合物に関する。
【0035】
別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含み、添加物としてプロバイオティクス、例えば乳酸桿菌(Lactobacteria)又はビフィズス菌(Bifidobacteria)が存在する混合物に関する。
【0036】
本発明の特殊な実施形態では、本発明は、ガルシニア抽出物を含まない、即ち特にガルシニア、例えばガルシニア・カンボジア(Garcinia cambogia)、ガルシニア・インディカ(Garcinia indica)、ガルシニア・アトロヴィリデス(Garcinia atrovirides)等の樹皮の抽出物を含まない上記の混合物のいずれか1種に関する。
【0037】
別の好ましい実施形態では、本発明に基づく混合物はカフェインを含まない。
【0038】
本発明の特に好ましい実施形態では、本発明に基づく混合物はカフェイン及びガルシニア抽出物を含まない。
【0039】
また本発明は、上記の混合物の少なくとも1種及び好ましくは上記の添加物の少なくとも1種、即ち例えばプレバイオティクス、プロバイオティクス、サプリメント、脂肪含有成分、乳製品又は甘味料を含む製品に関する。
【0040】
特に好ましい実施形態では、製品は固形又は液状製品である。
【0041】
本発明の特に好ましい実施形態では、製品は液状製品、特に上記の混合物の少なくとも1種と溶剤、例えば水又はミルクを含む製品である。飲料はアルコール飲料又は非アルコール飲料である。好ましい実施形態では、飲料は糖尿病患者に適したものである。特に好ましい実施形態では、製品は飲料、例えばスポーツ飲料、エネルギー飲料、経腸調合物、清涼飲料、コーラ含有飲料等である。
【0042】
特に好ましい実施形態では、飲料は2〜40重量%、特に3〜35重量%、特に4〜30重量%、特に10〜30重量%(それぞれ飲料の全重量に対して)の混合物を含む。
【0043】
別の好ましい実施形態では、本発明の混合物は、食品、嗜好品又は医薬品として調製された製品に含まれている。
【0044】
本発明に基づき、本発明の混合物を食品、嗜好品又は医薬品に使用し、その際食品、嗜好品又は医薬品が1〜99重量%、2〜99重量%、特に20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%、好ましくは40〜55重量%(食品、嗜好品又は医薬品の全乾燥物に対して)の混合物を含むことが好ましい。特殊な実施形態では、食品、嗜好品又は医薬品はグルコース、フルクトース、ラクトース、スクロース、ソルビトール、キシリトール及び/又はマンニトールを含まない。しかし本発明に基づき、グルコース、フルクトース、スクロース及び/又はその他の甘味料を含むこともできる。
【0045】
本発明に関連して、「食品」の概念は、主としてヒトの栄養のために使用され、主として不変の又は調理済みの又は加工した状態でヒトが飲食するための固形、液状、溶解又は懸濁状の製品又は物質混合物を意味する。食品は天然成分のほかに、天然又は合成由来の別の成分を含むことができる。食品は固形でも液状でも存在する。「嗜好品」とは、主として費消したときに起こるヒト又は動物の身体の快楽のために用いられる固形、液状、溶解又は懸濁状の物質又は物質混合物を意味する。
【0046】
発明の好ましい実施形態では、本発明に基づく食品は、乳製品又はミルク加工品、例えばチーズ、バター、ヨーグルト、ケフィア、クワルク、サワーミルク、バターミルク、クリーム、コンデンスミルク、ドライミルク、ホエー、混合ミルク、ローファットミルク、混合ホエー、乳糖、乳タンパク質及び乳脂製品である。本発明の別の好ましい実施形態では、本発明に基づく食品は焼成品、特にクッキーを含むパン及び保存焼成品を含むケーキ類である。本発明の別の好ましい実施形態では、本発明に基づく食品はパンのスプレッド、マーガリン製品及びショートニング並びにインスタント製品及びブイヨン製品である。本発明の別の好ましい実施形態では、本発明に基づく食品は果実製品、特にジャム、マーマレード、ゼリー、果物缶詰、果実パルプ、果実ピューレ、果汁、濃縮果汁、果肉飲料及び果実粉末である。また本発明によれば、本発明の製品は、野菜製品、特に野菜缶詰、野菜ジュース及び野菜ピューレである。粉末飲料、例えばインスタント粉末飲料、例えばココア、ティー又はコーヒー製品粉末飲料も本発明の意味での食品である。
【0047】
嗜好品の概念は、例えば甘味品、特にチョコレート製品、ハードキャラメル、ソフトキャラメル、フォンダン製品、ゼリー製品、リコリス、発泡砂糖製品、ココナッツフレーク、ドラジェ、圧縮成形品、砂糖漬け果実、クロカン、ヌガー製品、アイスキャンデー、マジパン、チューインガム、ミューズリーバー及びアイスクリームを意味する。
【0048】
本発明に関連して、「ダイエット食品又は飲料」とは、所定の割合又は所定の性状の特定の栄養素又はその他の栄養生理学的作用物質を供給するという所定の栄養目的のために使用される食品又は飲料を意味する。ダイエット食品又は飲料はその組成又は性質が、比較可能な種類の食品又は飲料と決定的に相違する。ダイエット食品は、疾病、機能不全又は個々の食品又はその含有物に対するアレルギー反応の故に、所定の栄養所要量が満たされなければならない場合に使用することができる。ダイエット食品は固形のものも液状のもの(飲料)もある。
【0049】
また本発明は上記の混合物及び製品の製造方法に関する。そこで本発明に基づき、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を用意し、所望の割合で混合することによって、上記の混合物を製造するための方法を提供する。
【0050】
別の好ましい実施形態では、この混合物を含む製品の製造を提供し、L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体とともにこの製品の所望の成分を用意し、互いに接触させ、当業者に周知の製造条件で所望の製品を得る。
【0051】
別の好ましい実施形態では、本発明は、L−カルニチン含有製品における、製品中にあるL−カルニチンの味の改善又は味のマスクのための、少なくとも1種の低血糖スクロース異性体、特にイソマルツロース及び/又はロイクロースの使用に関する。
【0052】
また本発明は、L−カルニチン含有製品における、製品、特に飲料中のカルニチンの安定性を高めるための、少なくとも1種の低血糖スクロース異性体、特にイソマルツロース及び/又はロイクロースの使用に関する。
【0053】
本発明のその他の有利な実施態様は従属請求項で明らかである。
【0054】
下記の例及び添付の図面に基づいて本発明を詳述する。
【実施例】
【0055】
実施例1
L−カルニチン水溶液の味覚プロフィル
試料: 試料1:0.01%L−カルニチン
試料2:0.01%L−カルニチン、5%パラチノースTM
試料3:0.01%L−カルニチン、5%フルクトース
結果:
経験のある被験者が試料を試食した。その際、下記の統計的に確認された、図示の結果を得た。大いに注目されたのは、味覚に影響を与える唯一の成分としてL−カルニチンを含む水溶液が、2種の別の糖入り溶液より明らかに苦く、渋味があると認められたことである。驚いたことに、イソマルツロース(パラチノースTM)含有L−カルニチン溶液は、L−カルニチンの苦味と渋味成分をフルクトースよりはるかにマスクすることが分かった。但しフルクトースを含む溶液はイソマルツロースを含む溶液より著しく甘い。従ってイソマルツロースのマスク効果は、フルクトースの高い甘味度によるものでなく、又は少なくとも高い甘味度だけによるものでない。
【0056】
実施例2
L−カルニチン含有イソマルツロース溶液の安定性
カルニチン入りイソマルツロース溶液の化学的安定性に関して、加熱試験を行った。対照として、これをフルクトースでも行った。特に注目したのは、少量で存在する場合でさえ発色及び「異味(off-taste)」(望ましくない味覚成分)の原因となる反応産物の分析である。
【0057】
試験条件:
モデル溶液A:パラチノース溶液(10%)+0.5%カルニチン
モデル溶液B:フルクトース溶液(10%)+0.5%カルニチン
温度:80℃
加熱時間:2時間
HPLC(高性能液体クロマトグラフィー)分析によって、カルニチン入りイソマルツロース溶液が化学的に非常に安定であるとみなすことができることを確認した。試験により生じる副産物は0.007g/100mlであった。同じ条件で処理したカルニチン入りフルクトース溶液は0.031g/100mlという著しく高い値の副産物を示した。
【0058】
これらのデータが示すところでは、イソマルツロースの安定性は意外なことに対照L−カルニチン溶液より著しく高いから、イソマルツロースはカルニチンを含む製品の製造に特に好適である。
【0059】
実施例3:オレンジ飲料の配合表
【表1】

【0060】
実施例4:スポーツ飲料の配合表
【表2】

【0061】
実施例5:ACE飲料の配合表
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】イソマルツロース(パラチノースTM)及びL−カルニチンを含む水溶液並びに対照溶液の味覚プロフィルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
L−カルニチン及び少なくとも1種の低血糖スクロース異性体を含む混合物。
【請求項2】
低血糖スクロース異性体がイソマルツロース又はロイクロースである請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
0.05〜5重量%のL−カルニチン及び0.1重量%、好ましくは95〜99.9重量%の低血糖スクロース異性体(それぞれ混合物の全乾燥物に対して)を含む請求項1に記載の混合物。
【請求項4】
少なくとも1種の添加物を含む請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項5】
少なくとも1種の添加物がプレバイオティクス、プロバイオティクス、サプリメント、脂肪含有成分、乳製品又は甘味料である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項6】
甘味料が糖、強力甘味物質又は糖代替物である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項7】
プレバイオティクスがイヌリン、オリゴフルクトース及び/又はガラクトオリゴ糖である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項8】
強力甘味物質がスクラロース、シクラミン酸ナトリウム、アセスルファームK、ネオヘスペリジンジヒドロカルコン、グリチルリチン、ステビオシド、モネリン、タウマチン、アスパルテーム、ズルチン、サッカリン、ナリンギン−ジヒドロカルコン、ネオテーム及びこれらのうちの2種以上の混合物からなる群から選ばれる上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項9】
糖代替物がイソマルト、1,1-GPM(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-マンニトール)、1,6-GPS(6-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)、1,1-GPS(1-O-α-D-グルコピラノシル-D-ソルビトール)、マルトデキストリン、ラクチトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ソルビトール、マルチトールシロップ、水素化及び非水素化デンプン加水分解物及びこれらのうちの2種以上の混合物からなる群から選ばれる上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項10】
少なくとも1種の添加物が糖、特にスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース又はこれらのうちの2種以上の混合物である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項11】
少なくとも1種の添加物が乳製品、特に無乳糖乳製品である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項12】
乳製品が脱脂粉乳、全粉乳、無乳糖脱脂粉乳、無乳糖全粉乳、ホエー製品又はこれらのうちの2種以上の混合物である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項13】
少なくとも1種の添加物が麦芽エキス、香料、着色料、風味物質、流動剤、無機質、例えばナトリウム及びカルシウム、特に塩、例えば塩化ナトリウム、ビタミン、葉酸、乳化剤、食物繊維、レシチン、オメガ−3−脂肪酸、中鎖トリグリセリド、フィトエストロゲン及びアスコルビン酸塩からなる群から選ばれるサプリメントである上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項14】
プロバイオティクスが乳酸桿菌(Lactobacilli)又はビフィズス菌(Bifidobacteria)である請求項7〜13のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項15】
低血糖スクロース異性体が混合物中に唯一存在する、こくのある甘味料である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項16】
低血糖スクロース異性体が混合物中に唯一存在する糖である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項17】
低血糖スクロース異性体が混合物中に唯一存在する甘味料である上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項18】
複数の添加物が存在する上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項19】
50〜75重量%(混合物の全乾燥物重量に対して)の低血糖スクロース異性体を含む上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項20】
1〜5重量%(混合物の全乾燥物重量に対して)のL−カルニチンを含む上記請求項のいずれか1項に記載の混合物。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合物を含む製品。
【請求項22】
食品、嗜好品又は医薬品である請求項21に記載の製品。
【請求項23】
食品、嗜好品又は医薬品が2〜99重量%(製品の全乾燥物重量に対して)の請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合物を含む請求項22に記載の製品。
【請求項24】
錠剤、圧縮成形品、エネルギーバー、チューインガム、ハードキャラメル、ソフトキャラメル、チョコレート、クッキー、焼成品、板チョコレート、ミューズリーバー、シリアル製品、インスタント・コーヒー、ティー又はココア調合物である請求項21〜23のいずれか1項に記載の製品。
【請求項25】
請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合物及び溶剤から製造され、かつこれらを含む製品。
【請求項26】
溶剤が水又はミルクである請求項25に記載の製品。
【請求項27】
飲料である請求項25又は26に記載の製品。
【請求項28】
飲料が2〜40重量%(飲料の全重量に対して)の請求項1〜20のいずれか1項に記載の混合物を含む請求項27に記載の製品。
【請求項29】
飲料がスポーツ飲料、コーラ飲料、エネルギー飲料、経腸調合物又は清涼飲料である請求項27又は28に記載の製品。
【請求項30】
少なくとも1種の添加物を含む請求項21〜29のいずれか1項に記載の製品。
【請求項31】
特に請求項21〜30のいずれか1項に記載のL−カルニチン含有製品において製品中にあるL−カルニチンの風味を改善し又は風味をマスクするための、低血糖スクロース異性体の使用。
【請求項32】
特に請求項21〜30のいずれか1項に記載のL−カルニチン含有製品において製品中のL−カルニチンの安定性を高めるための、低血糖スクロース異性体の使用。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2009−501536(P2009−501536A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521871(P2008−521871)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007041
【国際公開番号】WO2007/009742
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(500175772)ズートツッカー アクチェンゲゼルシャフト マンハイム/オクセンフルト (47)
【Fターム(参考)】