説明

低表面エネルギーのハードコートレンズを有する、レスピレータ、溶接用ヘルメット、又はフェイスシールド

レンズ及びレンズを固定するための支持構造を含む個人安全保護具。このレンズは、基材、及びレンズの基材上にあるハードコート層を含む。このハードコート層は低表面エネルギー外表面を有し、これはa)i)加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタンと、ii)少なくとも1つのペルフルオロポリエーテル部分及び少なくとも1つの加水分解性シラン基を含むアクリレートポリマーとのうち少なくとも1つを含む、添加剤、及びb)シルセスキオキサン系ハードコート組成物、から誘導される。このようなレンズを個人安全保護具に備えることにより、レンズの磨耗に対する耐久性が得られ、レンズの耐用寿命を短縮し得る溶媒の使用を伴わずに容易に洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低表面エネルギーのハードコートレンズを有する、フルフェイスレスピレータ、溶接用ヘルメット、又はフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
個人保護具(例えば、フルフェイスピースレスピレータ、溶接用ヘルメット、及びフェイスシールド)に一般的に使用されているレンズは、ポリカーボネート樹脂で製造されるのが通常である。この樹脂は、優れた視覚的透明性を提供し、非常に良好な耐衝撃性を示す。しかしながらポリカーボネート製レンズは、容易に傷が付きやすく、一部の一般的な化学溶媒に曝されると壊れる可能性があるという独特の欠点を呈する。したがって、ポリカーボネート製レンズはしばしば、シルセスキオキサン系保護ハードコート組成物(水とアルコール性溶媒との混合液内で、コロイドシリカの存在下で加水分解した、メチルトリメトキシシランなど)でコーティングされ、この例は、GEシリコーンズ(GE Silicones)(ニューヨーク州ウォーターフォード(Waterford))からGE SHC 1200の商標表記で市販され、傷と化学的破損との両方に対する保護を提供する。
【0003】
フルフェイスピースレスピレータなどの個人保護具を着用している作業者にとって別の問題は、レンズ上にペンキ及び他の物質の飛沫が付き、着用者の視界を妨げ得る汚れパターンを作ることである。一般的な対処方法は、溶媒を浸した布でこの汚れを拭き取ることである。レンズに保護ハードコートが含まれている場合、この溶媒がハードコートを損傷し、レンズの耐用期間を短縮することがあり、又は、この溶媒によってハードコートの一部又は全てが摩滅してしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハードコート層は、化学的曝露による磨耗及び劣化に対する基質の耐性を高めるため、様々な基質に適用されている。しかしながら、既知のハードコートは、耐汚染性及び洗浄性に関する問題には対処されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ハードコート層を表面に有するレンズと、そのレンズを固定する支持構造を含む、個人安全保護製品を特徴とする。このハードコート層は、a)i)加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタンと、ii)少なくとも1つのペルフルオロポリエーテル部分及び少なくとも1つの加水分解性シラン基を含むアクリレートポリマーとのうち少なくとも1つを含む、添加剤、及びb)シルセスキオキサン系ハードコート組成物との、反応生成物を含む。このハードコート層は好ましくは低表面エネルギーを呈する。
【0006】
発明者は、レンズのハードコート層に低表面エネルギー外表面をもたらすことにより、良好な耐スクラッチ性及び耐化学性を呈するだけでなく、良好な耐汚染性及び容易な洗浄性を呈するレンズを実現できることを見出した。
【0007】
本発明は、耐汚染性及び洗浄性と共に、耐スクラッチ性及び耐化学性の改善を呈することが可能なコーティングに関するものである。本発明は、幅広い基材に対して、その基材に層として形成されたときに、撥油性及び撥水性、汚れ放出性、耐汚染性、又はこれらの組み合わせを付与することができるようなコーティングを特徴とする。
【0008】
本発明は従って、光学的に透明で、低表面エネルギーであり、耐汚染性、耐スクラッチ性、耐化学性、及び洗浄性を、個人保護具に使用されるレンズに付与し得る、ハードコートに関連するものである。
【0009】
低表面エネルギーコーティングは、ペイント及びスプレーされた組成物がレンズに付着し汚染するのを防ぐ性質を示し、好ましくはこれらを防ぐ。低表面エネルギーコーティングにより、ペイント及びスプレーされた組成物がコーティングに接触すると、その表面に広がって濡らすのではなく、玉状に丸くなる。その結果、既存のフルフェイスレスピレータ及び溶接ヘルメットに比べ、長期間にわたってレンズを通した視界が障害のない状態を保ち得る。本発明は更に、溶媒又は他の洗浄剤の必要なしに、拭き取ることで汚染物質を容易に除去することができる利点も有する。よって、レンズの洗浄が容易になり、レンズを強い洗浄剤に曝す必要が減少又は排除されるため、レンズの耐用期間が延長され得る。
【0010】
用語解説
本書に使用されている用語は、下記の定義に従って解釈される:
「a」、「an」、及び「the」は、その内容が明確に別途に示しているのでない限り、複数の指示物を含む(よって例えば、「a compound」という言葉を含む文章には、2つ以上のcompoundの混合物が含まれ得る)。
【0011】
「アルキル」は、直鎖又は分枝鎖、環式状又は非環式(acylic)の、飽和一価炭化水素ラジカルを意味し、この例としてはメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、及びペンチルが挙げられる。
【0012】
「アクリロイル」は、アクリレート、チオアクリレート、又はアクリルアミドを意味する。
【0013】
「アルキレン」は、直鎖飽和二価炭化水素ラジカル、又は分枝鎖飽和二価炭化水素ラジカルを意味し、この例としてはメチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレンが挙げられる。
【0014】
「アルコキシ」は末端酸素原子を有するアルキルを意味し、この例としてはCH−O−及びC−O−が挙げられる。
【0015】
「アラルキレン」は上記で定義されているアルキレンラジカルに芳香基がついたものを意味し、この例としてはベンジル及び1−ナフチルエチルが挙げられる。
【0016】
「硬化」は、乾燥(例えば、周囲温度若しくは高温で、水若しくは有機溶媒の蒸発によって)、架橋、又はそれらの組み合わせを意味する。
【0017】
「清浄な空気」は、本質的に汚染物質を除外するため、フィルター又は他の処理を行った大気周囲空気の塊を意味する。
【0018】
「外部気体空間」は、吐き出された気体がマスク本体及び/又は呼気弁を通過した後に入る、周囲の大気中の気体空間を意味する。
【0019】
「フェイスシールド」は、人間の目、鼻、及び口の前側に広がる透明なレンズを含むものであり、作業環境において着用者の顔を保護する物品を意味する。
【0020】
「フルフェイスレスピレータ」は、人間の鼻、口、及び目を覆って着用するレスピレータを意味する。
【0021】
「ハードコート層」は、物体の外表面にある層又はコーティングで、その層又はコーティングが、少なくともその物体を磨耗から保護するよう設計されているものを意味する。
【0022】
「HFPO−」は、メチルエステルF(CF(CF)CFO)CF(CF)C(O)OCHにある末端基F(CF(CF)CFO)CF(CF)−を示し、ここで「u」は平均で1から50までの値であり、米国特許第3,250,808号(ムーア(Moore)ら)に開示されている方法に従って、分留による精製により調製することができる。ここで、終点による数値範囲の詳細説明には、この範囲内に包含される全ての数値が含まれる(例えば1〜50の範囲には、1,1.5、3.33、及び50が含まれる)。
【0023】
「加水分解性シラン基」は、水と反応してSi−OH部分を形成する置換反応を生じる基であり、これが更に反応してシロキサン基を形成し得る。加水分解性基の具体的な例としては、メトキシ、エトキシ及びプロポキシ基、塩素基、及びアセトキシ基が挙げられる。
【0024】
「内部気体空間」は、レンズと人間の顔との間にある空間を意味する。
【0025】
「レンズ」は、着用者の顔の前に配置されるよう形成された光透過性構造で、着用者がこの構造を通して見たときに周囲環境を見ることができるものを意味する。
【0026】
「一価のペルフルオロポリエーテル部分」は、ペルフルオロアルキル基が終端となる1つの末端を有するペルフルオロポリエーテル鎖を指す。
【0027】
「求核性フッ素含有化合物」又は「求核性フッ素化化合物」は、イソシアネート反応性の求核性官能基(この例としてはヒドロキシル基及びアミン基が挙げられる)、並びにペルフルオロオキシアルキル基又はペルフルオロオキシアルキレン基(この例としてはCO(CO)CFCONHCOHが挙げられる)を少なくとも1つ有する化合物を意味する
【0028】
「又は」は一般に、その内容が明確に別途示しているのでない限り、常識において使用され、「及び/又は」の意味を含む。
【0029】
「オキシアルコキシ」は、本質的には先に挙げたアルコキシと同じ意味を有するが、ただし少なくとも1つの酸素原子がアルキル鎖に存在する。この例としてはCHCHOCHCHO−、COCHCHOCHCHO−、及びCHO(CHCHO)1〜100Hが挙げられる。
【0030】
「オキシアルキル」は、本質的には先に挙げたアルキルと同じ意味を有するが、ただし少なくとも1つの酸素ヘテロ原子がアルキル鎖に存在し、ヘテロ原子同士が互いに少なくとも1つの炭素原子で隔てられている。この例としてはCHCHOCHCH−、CHCHOCHCHOCH(CH)CH−、及びCCHOCHCH−が挙げられる。
【0031】
「オキシアルキレン」は、本質的には先に挙げたアルキレンと同じ意味を有するが、ただし少なくとも1つの酸素ヘテロ原子がアルキレン鎖に存在し、ヘテロ原子同士が互いに少なくとも1つの炭素原子で隔てられている。この例としては−CHOCHO−、−CHCHOCHCH−、及び−CHCHOCHCHCH−が挙げられる。
【0032】
「ペルフルオロアルキル」は、本質的には先に挙げたアルキルと同じ意味を有するが、ただし、アルキルラジカルの水素原子の全て、又は本質的に全てが、フッ素原子で置換されている。この例としてはペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、及びペルフルオロオクチルが挙げられる。
【0033】
「ペルフルオロアルキレン」は、本質的には先に挙げたアルキレンと同じ意味を有するが、ただし、アルキレンラジカルの水素原子の全て、又は本質的に全てが、フッ素原子によって置換されている。この例としてはペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレンが挙げられる。
【0034】
「ペルフルオロオキシアルキル」は、本質的には先に挙げたオキシアルキルと同じ意味を有するが、ただし、オキシアルキルラジカルの水素原子の全て、又は本質的に全てが、フッ素原子によって置換されている。この例としてはCFCFOCFCF−、CFCFO(CFCFO)CFCF−、及びCO(CF(CF)CFO)CF(CF)CF−が挙げられ、ここでsは約1〜約50である。
【0035】
「ペルフルオロオキシアルキレン」は、本質的には先に挙げたオキシアルキレンと同じ意味を有するが、ただし、オキシアルキレンラジカルの水素原子の全て、又は本質的に全てが、フッ素原子によって置換されている。この例としては−CFOCF−及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−が挙げられ、式中、r及びsは約1〜約50である。
【0036】
「ペルフルオロアルキレンオキシ」は、本質的には先に挙げたペルフルオロオキシアルキレンと同じ意味を有するが、ただし、左から右へと記されているように、その基の末端が酸素原子である必要がある。
【0037】
「ペルフルオロ基」は、炭素原子に結合している水素原子の全て、又は本質的に全てが、フッ素原子によって置換されている、有機基を意味する。この例としてはペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキルが挙げられる。
【0038】
「ペルフルオロポリエーテルウレタン(Pefluoropolyether)」は、後述の式1の化合物を指し、それ自体にウレタン結合、尿素結合、及び/又はチオ尿素結合を有する化合物が挙げられる。
【0039】
「多官能性イソシアネート」又は「ポリイソシアネート化合物」は、平均で1つを超えるイソシアネート基(すなわち−−NCO)が多価有機基に付随している化合物を意味する。
【0040】
「個人安全保護具」は、フルフェイスレスピレータ、溶接用ヘルメット、又はフェイスシールドを意味する。
【0041】
「プラスチック」は、ポリマー及び所望により他の成分を含む材質を意味する。
【0042】
「レスピレータ」は、装置の着用者に清浄な空気を供給することができる装置を意味する。
【0043】
「シルセスキオキサン系ハードコート組成物」は、コロイドシリカの存在下で形成されたアルコキシシランの凝縮物(すなわち水解物)を含む組成物を意味する。
【0044】
「シルセスキオキサン共凝縮物」は、ジアルコキシシランとトリアルコキシシランの凝縮物である。
【0045】
「基質」は固体層を意味する。
【0046】
「支持構造」は、レンズを支持する任意のシステム、装置、部品、又は部品の組み合わせを意味する。
【0047】
「透明」は、ASTM D 1003−00に準拠して試験を行った場合に視感透過率値が少なくとも85%を示すことを意味する。
【0048】
「溶接ヘルメット」は、溶接機から発せられる光から着用者の目を保護するための、濃い色のレンズ、又は黒化することができるレンズを有するヘルメットを意味する。
【0049】
「〜から誘導される」は、それから調製されることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に従い、レンズ12を有するフルフェイスレスピレータ10の斜視図。
【図2】本発明に従い、レンズ32を有する溶接ヘルメット30の斜視図。
【図3】本発明に従い、レンズ42を有するフェイスシールド40の斜視図。
【図4】本発明に従い、表面に位置するハードコート層54を有するレンズ52の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0051】
フルフェイス呼吸マスク、溶接ヘルメット、又はフェイスシールドには、低表面エネルギーハードコート層を含むレンズを含む。このレンズには所望により、レンズとハードコート層との間に、レンズ上に配置されたプライマーが含まれる。ハードコート層は好ましくは、このプライマー層に接触している。
【0052】
このレンズは、フルフェイス呼吸マスク、溶接ヘルメット、又はフェイスシールドでの使用に適している。低表面エネルギー外表面は、ハードコート層に一体化した部分であり得る(すなわち、ハードコート層が磨耗耐性と低表面エネルギー特性を提供し得る)か又は、この低表面エネルギー外表面は、別個の層とすることもできる。表面エネルギーとは、凝集力(その材質自体のもの)と接着力(別の材質に対するもの)とのバランスを意味する。一般に、低表面エネルギーを有する材質に接触した液体は、その表面を濡らすよりもむしろ、表面の上で玉状になる。表面の表面エネルギーを測定する1つの方法には、固体表面と液滴との間の接触角を測定することが含まれ、これについては「接触角の測定方法」の項に記載されている。ハードコート層の表面は望ましくは、少なくとも95度、少なくとも100度、又は更には少なくとも105度の静的水接触角、及び、少なくとも50度、少なくとも60度、又は更には少なくとも65度の静的ヘキサデカン接触角を示す。
【0053】
図1は、レスピレータ着用者が周囲環境を見ることができる、レンズ12を支えるフルフェイス呼吸マスク10を示す。レンズ12は透明であり、着用者の前にある物体を見るのに十分な可視性を着用者に提供し、また好ましくは、頭をほとんど回転させずに着用者の側方の可視性も提供する。作業場で生じ得る磨耗からレンズを守るため、レンズ12の前側表面上にはハードコート層がある。このハードコート層は、例えばプラスチックなどの下側基材の上に配置される。ハードコート層は、低表面エネルギー外表面を提供し、これにより、作業場で使用され得るさまざまなスプレー及び溶媒による汚染からレンズを保護する。フルフェイスレスピレータ10はまた、レスピレータ10上にレンズ12を支えるためのフレーム14のような支持構造も含む。レスピレータ10は更に、着用者に清浄な空気を供給するための1つ以上のフィルタカートリッジを含み得る。フィルタカートリッジはポート16でレスピレータ10に取り付けられる。フィルタカートリッジは、例えば米国特許第6,277,178号又は米国再発行特許第39493号に示されているように構成することができ、これらは本明細書に組み込まれる。あるいは、清浄な空気の供給を呼吸マスク10の流入口ポート16に接続し、清浄な空気の供給を着用者に提供することができる。清浄な空気の供給は、動力による空気浄化システム(例えば、米国特許第6,895,960号(ファビン(Fabin))を参照)であることができ、又は、加圧タンクなどの加圧システムを利用する自給式呼吸器であることもできる。レスピレータ10は、フルフェイスレスピレータ10の内部気体空間から呼気を排出させるための呼気バルブシステム18も有することがある。呼気バルブには通常、呼気による圧力に応じて開く隔膜が含まれる。この隔膜には、マスクの内部気体空間内の圧力増大に対応して、密封表面から持ち上がる可撓性フラップが含まれ得る。呼気はまず、ノーズカップ24内に集まり得る。ノーズカップ24には、適合するフェイス接触部材26及び吸気バルブ28が含まれ得る。着用者が息を吐くとき吸気バルブ28が閉じ、呼気によってレンズ12が曇らないようになっている。呼気はその結果、呼気バルブ18を通り抜け、外部の気体空間に出る。本発明に関連して使用することが可能な他のフルフェイス呼吸マスクの例は、米国特許第5,924,420号(ライシェル(Reischel)ら)、同第6,763,835号(グローブ(Grove)ら)、同第5,303,701号(ハインズ(Heins)ら)、及び同第6,978,782号(タイエビ(Tayebi))に示されており、これらは本明細書に組み込まれる。
【0054】
図2は、ヘルメット着用者が周囲環境を見ることができるレンズ32を含む溶接ヘルメット30を示す。しばしば、溶接ヘルメットのレンズは、溶接トーチからの光に曝露すると黒化する自動黒化レンズである。黒化した状態でも、溶接ヘルメットの着用者は依然として作業環境を見ることができるが、着用者の目はトーチの強い光から保護されている。自動黒化レンズの例は米国特許第5,825,441号(ホーネル(Hornell)ら)に記載されており、これらは本明細書に組み込まれる。フルフェイス呼吸マスクと同様、溶接ヘルメットも、明瞭な視野スクリーンを提供するレンズの性能に有害な影響をもたらし得る材質に曝露されることがある。レンズ32は、溶接ヘルメット30上にレンズを支えるためのフレーム34のような支持構造を有する。溶接ヘルメット30は更に、着用者の頭部の上側と側面を保護するため、それぞれ上側パネル36及び側面パネル38を有する外殻構造35を有している。溶接ヘルメット30を着用者の頭部で支えるため、この溶接ヘルメット30には更に、着用者の頭頂の上に収まり外殻構造35に接続される、ハーネス又は頭頂部材が含まれ得る。通常、この外殻構造35は上方向に旋回し、着用者は使用していないときは着用者の顔の上方にヘルメットを持ち上げることができる。このような頭部ハーネスの例は、米国特許第5,191,468号(メーゼズ(Mases))に示されている。本発明に関連しての使用に適し得る他の溶接ヘルメットの例は、米国特許第6,055,666号(エクルンド(Eklund)ら)、同第3,868,727号(パッシャール(Paschall))、同第4,707,860号(ホルストローム(Holstrom))、同第4,863,244号(フュルスバウワー(Fuerthbauer)ら)に示されており、これらは本明細書に組み込まれる。
【0055】
図3は、着用者が周囲環境を見ることができるレンズ42を有するフェイスシールド40を示す。フレーム44がレンズ42の周囲を取り囲んでいる。他のフェイスシールドが、米国特許第7,077,128号(ウィルソン(Wilson)ら)、同第5,446,926号(ベーカー(Baker)ら)、同第5,303,423号(ガッザーラ(Gazzara)ら)、Des.第416,649号(バーンズ(Burns)ら)、及び欧州特許第1,410,775(A2)号(キエル(Kjell)ら)に開示されている。
【0056】
図4は、基材56上に配置されたハードコート層54を含むレンズ52の断面図を示す。プライマー層58は、基材56とハードコート層54との間にあり、これら2つの層の間に良好な結合を可能にする。
【0057】
このレンズは任意の好適な材質から形成することができ、例えばプラスチック(ポリカーボネート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせなど)、さまざまな無機材質(例えば、ガラス及びサファイヤなど)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0058】
ハードコート層は好ましくは、撥油性及び撥水性、汚れ放出性、耐汚染性、又はこれらの組み合わせを示す。ハードコート層には、添加剤とシルセスキオキサン系ハードコート組成物との反応生成物が含まれる。ハードコート層が誘導されるハードコートコーティング組成物は、好ましくは、ハードコートコーティング組成物の総固体含有量に基づき、約0.01重量%〜約10重量%、約0.1重量%〜約1重量%、又は更には約0.2重量%〜約0.5重量%の量の添加剤を含み、及び、ハードコート組成物の総固体含有量に基づき、約50重量%〜約99.99重量%、約90重量%〜約99.99重量%、約99重量%〜約99.9重量%、又は更には99.5重量%〜約99.8重量%の量のシルセスキオキサン系ハードコート組成物を含む。
【0059】
さまざまな添加剤が、ハードコート組成物に含めるのに適しており、例えば、加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタン、フッ素性化学物質化合物オリゴマー(例えば、少なくとも1つのペルフルオロポリエーテル部分及び少なくとも1つの加水分解性シラン基を含むアクリレートポリマー)、及びこれらの混合物が挙げられる。適した添加剤の例は、以下に詳しく記載される。
【0060】
添加剤の1つの有用な部類には、式(1)の加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタンが挙げられる:
(R−[−R−(R (1)
式中、
は、ペルフルオロオキシアルキル基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
はx+yの価数を有する、ポリイソシアネートの残基であり、
は、式:
−NH−C(O)−X1a−Q−(Si(Y)(R3−p
のシラン含有部分であり、式中、
Qは価数が少なくとも2の接続基であり、
1aはO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、1〜4個の炭素原子の低級アルキル、又はQ−(Si(Y)(R3−pであり、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、
qは、1〜6であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、かつ、
zは少なくとも1である。
【0061】
式(1)の添加剤の1つの有用な例は式(1A):
−(NHC(O)XQRm,−(NHC(O)X1aQ(Si(Y(R3−p (1A)
を有し、式中、
はマルチイソシアネートの残基であり、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
1aはO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、1〜4個の炭素原子の低級アルキル、又はQ−(Si(Y(R3−p
は、式F(RfcO)2d−の基を含む一価のペルフルオロポリエーテル部分であり、
式中、
各Rfcは独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基であり、
各wは独立して、少なくとも2の整数であり、かつ
dは1〜6の整数であり、
Qは独立して、少なくとも2の価数の接続基であり、
は−OR及び−OC(O)Rから選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
pは1、2又は3であり、
qは1〜6であり、
m+nは2〜10であり、かつ、
下付き文字m付きのユニット及び下付き文字n付きのユニットはそれぞれRユニットに結合している。
【0062】
Qは直鎖若しくは分枝鎖、又は環含有接続基である。Qには共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、又はアルカリーレンが含まれ得る。Qは所望により、O、N、及びSなどのヘテロ原子並びにこれらの組み合わせを包含することができる。Qは所望により、カルボニル又はスルホニルなどのヘテロ原子含有官能基、並びにこれらの組み合わせを包含することもできる。
【0063】
式(1)の添加剤は、その合成方法により、必然的に混合物である。例えば式(1A)は、イソシアネート基のモル分率を便宜的に値1.0とすると、式(1A)の添加剤生成に使用されるm及びnユニットの合計モル分率は、少なくとも1.0となる。m:nのモル分率は、0.95:0.05〜0.05:0.95、0.50:0.50〜0.05:0.95、0.25:0.75〜0.05:0.95、又は更には0.25:0.75〜0.10:0.95である。モル分率m:nの合計が1を超える場合、例えば0.15:0.90となっている場合は、mユニットがイソシアネートと最初に反応し、わずかに過剰なnユニット(例えば0.05モル分率)が使用されている。
【0064】
処方において、例えばmのモル分率0.15、nユニットのモル分率0.85が導入された場合、生成物の分布が形成され、ここにおいて、形成される生成物の一部はmユニットを含有しない。しかしながら、この生成物分布において、式(1)及び(1A)の添加剤が存在する。
【0065】
イソシアネート反応性である加水分解性シラン基を含むさまざまな化合物、又は、不飽和二重結合へのフリーラジカル結合による付加又はマイケル付加を起こすことができるさまざまな化合物が好適であり、これには例えばHN(CHSi(OCH、H(CH)N(CHSi(OCH、HS(CHSi(OCH、及びHN((CHSi(OCHが挙げられる。
【0066】
更に、加水分解性シラン基を含むイソシアネート反応性オリゴマーの別の群、式(OSi)があり、これを式(1)の材料を生成するのに使用することができる。
X−Mj1k1−S−Q−OH (OSi)
式中、
Xは反応開始剤の残基又は水素であり、
は非フッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は式
Si(Y(R3−p、
で表わされるシリル基を有するモノマーから誘導されたユニットであり、式中、
は−OR及び−OC(O)Rの群から選択される加水分解性基であり、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、及び
pは1、2又は3であり、
Q1は二価の有機連結基であり、
j1は0〜20であり、かつ、
k1は2〜20である。
【0067】
有用なMモノマーには、アクリレートが挙げられ、これには例えばオクタデシルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びブチルアクリレートが挙げられる。
【0068】
有用なMモノマーには、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、及びアルコキシシランの官能基化したアクリレート及びメタクリレートが挙げられ、これには例えばメタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0069】
式(OSi)のオリゴマーは、さまざまな方法で得ることができ、例えば、熱反応開始剤(例えばVAZO−67熱反応開始剤、デュポン(DuPont)社から市販)と共に、3モルのHC=C(CH)C(O)O(CHSi(OCH)と1モルのHSCHCHCHOHとを、窒素脱気した溶媒(酢酸エチルなど)中、約70℃で10時間にわたって、重合させることが挙げられる。
【0070】
式(1)の添加剤の1つの有用な例は、式(1A’):
−(NHC(O)XQRm,−(O−Q−S−Mj1k1X) (1A’)
を有する添加剤であり、式中、全ての基は上記で定義されている。
【0071】
更に、イソシアネート反応性である加水分解性シラン基を含むさまざまな化合物を用いて、式(OSi)のオリゴマーの一部を置き換え、加水分解性シラン(これは一部、式(OSi)のオリゴマーから誘導される)を有するペルフルオロポリエーテルウレタンを生成することができる。このような化合物の例としては、HN(CHSi(OCH、H(CH)N(CHSi(OCH、HS(CHSi(OCH、及びHN((CHSi(OCHが挙げられる。
【0072】
式(1)の添加剤を生成する1つの有用な方法としては、まずポリイソシアネートと求核性フッ素含有化合物(例えば、ペルフルオロポリエーテル含有のアルコール、チオール、又はアミン)と反応させ、次に、通常、ヒドロキシ基を含まない溶媒中で、有機スズ化合物などの触媒の存在下において、アルコール、チオール、アミン官能性シランと反応させることが挙げられる。
【0073】
式(1)の添加剤を生成する別の有用な方法としては、ポリイソシアネートをアルコール、チオール、又はアミン官能性シランと反応させ、次に、通常、ヒドロキシ基を含まない溶媒中で、有機スズ化合物などの触媒の存在下において、求核性フッ素含有化合物と反応させることが挙げられる。更にこの添加剤は、通常、ヒドロキシ基を含まない溶媒中で、有機スズ化合物などの触媒の存在下において、3つのコンポーネント全てを同時に反応させることによって生成することもできる。
【0074】
式(1)の添加剤の別の例を、下記の構造(1B)として示す:
【化1】

【0075】
これは1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレットと、1当量のHFPOオリゴマーアミドール(例えば、F(CF(CF)CFO)xxCF(CF)C(O)NHCHCHOH、式中、xxの平均値は約6.5)との反応生成物であり、2当量の3−アミノプロピルトリメトキシシランとの反応が続く。式(1)の添加剤の別の例を、下記の構造(1C)として示す:
【化2】

【0076】
これはHDIのビウレットと、1当量のHFPOオリゴマーアミドール(例えば、F(CF(CF)CFO)xxCF(CF)C(O)NHCHCHOH、式中、xxの平均値は約6.5)との反応生成物であり、2当量のビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンとの反応が続く。
【0077】
式(1)の有用な添加剤及びその生成方法は、米国特許出願第2005/0054804(A1)号(ダムズ(Dams)ら)、同第2005/0121644(A1)号(ダムズら)、米国特許第7,097,910号(ムーア(Moore)ら)及び米国特許出願第2004/014718(A1)号(ジョンソン(Johnson)ら)に開示されており、これらは本明細書に組み込まれる。
【0078】
式(1)の添加剤の別の例は、式(1D):
(R−[−R−(R (1D)
の、加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタンの部類であり、式中、
は、ペルフルオロオキシアルキル基、又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、x+yの価数を有するポリイソシアネートの残基であり、
は、式
【化3】

を有し、式中、
は、O、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は多価の基で、アルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせ(例えばアルカリーレン基)が挙げられ、所望によりこのアルキレン基は少なくとも1つのカテナリー酸素原子(catenary oxygen atom)を含み、
は二価のアルキレン基であり、所望によりこのアルキレン基は少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含み、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、かつ、
qは、1〜6であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、かつ、
zは少なくとも1である。
【0079】
式(1D)のペルフルオロポリエーテルウレタンは、部分的に、イソシアネート反応性の求核性官能基と、少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを有する、求核性エチレン性不飽和化合物(以降、「求核性不飽和化合物」)から誘導される。エチレン性不飽和基は、ビニル、アリル又はアリルオキシであり得、求核性官能基は、アミノ又はヒドロキシ基であり得る。好ましくは、エチレン性不飽和基は、ビニルオキシ基、例えばCH=CHO−ではない。好ましくは、求核性不飽和化合物は、ヒドロキシル基及び少なくとも2つの不飽和基を有する多不飽和化合物である。このような化合物としては式(1a):
HX−R−(CH=CH (1a)、
の化合物が挙げられ、式中、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は多価の基で、アルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせ(例えばアルカリーレン基)が挙げられ、所望によりこのアルキレン基は少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含み、
かつ、
qは1〜6であり、好ましくは1より大きい。
【0080】
生じた求核性多不飽和化合物は、ウレタン化合物に複数のシラン基を付加することができる。シラン基と−NH−C(O)−X−基とのモル比は、1:1を超えることがあり、又は2:1を超えることがある。好ましくはHX−は、芳香環(例えばフェノール化合物)に、直接は結合しない。
【0081】
式(1a)の化合物としては、例えば、ポリオールの末端モノ−、ジ−又はポリ不飽和エーテルが挙げられ、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール−A、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリシクロデカンジメタノール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールがある。
【0082】
有用な求核性不飽和化合物としては、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、アリルオキシエチルアルコール、2−アリルオキシメチルプロパノール(ジメチロールエタンから)、及び2,2−ジ(アリルオキシメチル)ブタノール(トリメチロールプロパンから)のようなヒドロキシアルケン、並びにそれらに対応するアミンが挙げられる。
式(1a)の求核性不飽和化合物、及び求核性フッ素含有化合物は、ポリイソシアネートのイソシアネート基と反応して、側鎖不飽和基を有するペルフルオロポリエーテルウレタン化合物を生成し、これが次にチオシランと反応して式(1D)の化合物を形成し得る。
【0083】
求核性不飽和化合物と求核性フッ素含有化合物とポリイソシアネートとの反応生成物は、一般式(1b):
(R−[RNHC(O)X(CH=CH (1b)
を有し、式中、
はフッ素を含む基であり、ペルフルオロオキシアルキル基、又はペルフルオロオキシアルキレン基が含まれ、
は、ポリイソシアネートの残基であり、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は多価の基で、アルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせ(例えばアルカリーレン基)が挙げられ、所望によりこのアルキレン基は少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含み、
xは、1又は2であり、
zは少なくとも1であり、
qは1〜6、好ましくは2〜5である。
【0084】
ペルフルオロポリエーテルウレタン化合物は、部分的に、チオシランと、式(1a)又は(1b)の化合物の不飽和基とのフリーラジカル付加反応生成物を含む。このチオシランは式(1c):
HS−R−Si(Y)(R3−p(1c)
のチオシランであり、式中、
は二価のアルキレン基であり、所望によりこのアルキレン基はカテナリー酸素原子を含み、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、かつ、
Yは式(1c)における加水分解性基であり、例えばハロゲン化物、C〜Cアルコキシ基、アシロキシ基、又はポリオキシアルキレン基(例えばポリオキシエチレン基)などが挙げられ、これは米国特許第5,274,159号に開示されており、本明細書に組み込まれる。Rは好ましくは非加水分解性である。
【0085】
チオシランは、化合物(1a)の求核性不飽和化合物と反応して、付加化合物を生成することができ、これが更にポリイソシアネートと(求核性フッ素化化合物による官能化の前又は後のいずれかに)反応し得る。あるいは、式(1a)の求核性不飽和化合物は、最初にポリイソシアネートと反応して式(1b)のウレタン化合物を形成し、次に、このウレタン化合物のエチレン性不飽和基側鎖に対するチオシランへのフリーラジカル付加を行うことができる。好ましくは、求核性不飽和化合物は、最初にポリイソシアネートと(ここでも、求核性フッ素化化合物によって官能化される前又は後に)反応して、側鎖不飽和基を有するウレタン化合物を形成し、そのウレタン化合物にフリーラジカル付加によってチオシランが付加される。
【0086】
有用なチオシランとしては、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0087】
式(1c)のメルカプトシランを式(1a)又は(1b)のエチレン性不飽和化合物に対して付加することは、フリーラジカル反応開始剤を用いて達成し得る。有用なフリーラジカル反応開始剤としては、無機及び有機の過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、アゾ化合物、還元系(例えばKとNaの混合物)、及びフリーラジカル光反応開始剤が挙げられ、これはK.K.ディートライカー(K.K. Dietliker)著「コーティング、インク、ペイント用のUV&EB処方の化学と技術(Chemistry & Technology of UV EB Formulation for Coatings, Inks & Paints)第3巻、276〜298ページ、SITAテクノロジー社(SITA Technology Ltd.)、ロンドン(1991年)に記載されており、本明細書に組み込まれる。有用な例としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルベンゾアート、クメンヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(VAZO 67)、及びアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が挙げられる。当業者は、反応開始剤の選択は、具体的な反応条件、例えば、溶媒の選択に応じて決定されることを理解するだろう。
【0088】
チオシランのフリーラジカル付加は、エチレン性不飽和基のうち最も置換されていない炭素原子、又は、エチレン性不飽和基のより高度に置換されている炭素原子のいずれかに付加し得る。
【0089】
ペルフルオロポリエーテルウレタン化合物は、求核性不飽和化合物、フッ素含有求核性化合物、及びポリイソシアネート化合物を混合し、次に不飽和基にチオシランをフリーラジカル付加することによって、生成することができる。当業者であれば理解するように、混合の順序又は工程の順序には制限はなく、所望のペルフルオロポリエーテルウレタン化合物を製造するために変更することができる。1つの実施形態において、例えば、ポリイソシアネート化合物及び求核性フッ素性化学物質化合物は、最初に、イソシアネート基のある部分と反応し、次に、求核性不飽和化合物が残っているイソシアネート基の一部と反応し、次に、側鎖不飽和基に対しチオシランのフリーラジカル付加が行われる。
【0090】
式(1D)の有用な添加物の1つの例を、式(1E)の構造として下記に示す:
−(NHC(O)XQRm,−(NHC(O)XQ(OCHCHCHS−R−Si(Y(R3−p (1E)
式中、全ての基は上記で定義されている。
【0091】
式(1D)の有用な添加物の別の例を、式(1F)の構造として下記に示す:
【化4】

【0092】
これは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレットと1当量のHFPOオリゴマーアミドール(例えば、F(CF(CF)CFO)xxCF(CF)C(O)NHCHCHOH、式中、xxの平均値は約6.5)とを反応させ、次にペンタエリスリトールトリアリルエーテルと反応させ、更にそのアリルエーテルにHS(CHSi(OCHをフリーラジカル付加させることによって得ることができる。
【0093】
式(1D)の添加物の他の有用な例が、3M整理番号第62784US002号、米国特許仮出願第60/870,300号(2006年12月15日提出)に記載されており、これらは本明細書に組み込まれる。
【0094】
式(1)の添加剤の別の例は、式(1G)の、加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタンの部類である:
(R−[−R−(R (1G)
式中、
は、ペルフルオロオキシアルキル基、又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、x+yの価数を有するポリイソシアネートの残基であり、
は、求核性アクリロイル化合物とアミノシランとのマイケル反応から誘導されたシラン含有部分であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、かつ、
zは少なくとも1である。
【0095】
好ましくは、Rは式
−(NHC(O)XQX(C(O)CHCH−NRSi(Y)(R3−p
で表わされ、式中、Rは、RSi(Y)(R3−p又はRであり、Xは、−O−又は−S−であり、好ましくは−Oであり、他の基は全て上記で定義されている。
【0096】
式(1G)による有用な添加剤の1つの例は、式(1H):
−(NHC(O)XQRm,−(NHC(O)XQX(C(O)CHCH−NRSi(Y(R3−p(1H)、
の添加剤であり、式中、全ての基は上記で定義されている。
【0097】
式(1G)の添加剤は、部分的に、イソシアネート反応性の求核官能基及び少なくとも1つのアクリロイル基を有する、求核性アクリロイル化合物(以下、「求核性アクリロイル化合物」)から誘導される。アクリロイル部分はアクリレート又はアクリルアミドであり得、及び求核性官能基はアミノ基又はヒドロキシ基であり得る。好ましくは、求核性アクリロイル化合物は、ヒドロキシル基と、少なくとも2つのアクリロイル基とを有する、ポリアクリル化合物である。
【0098】
このような化合物としては、式(1I)が挙げられる:
HX−R−(X−C(O)CH=CH (1I)、
式中、全ての基は上記で定義されている。
【0099】
生じた複数のアクリロイル基は、ウレタン化合物に複数のシラン基を付加することができる。シラン基と−NH−C(O)−X−基とのモル比は、1:1を超えてよく、又は更には2:1を超えてもよい。好ましくは、HX−は芳香環、例えば、フェノール化合物と、直接は結合しない。
【0100】
有用な求核性アクリロイル化合物には、例えばアクリレート化合物、例えば、(a)モノアクリロイル含有化合物、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノアクリレート、1,3−ブチレングリコールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、アルコキシル化脂肪族モノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールモノアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールモノアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、エトキシル化ビスフェノール−Aモノアクリレート、ヒドロキシピバルアルデヒド修飾トリメチロールプロパンモノアクリレート、ネオペンチルグリコールモノアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、及びトリプロピレングリコールモノアクリレート、(b)複数アクリロイル含有化合物、例えばグリセロールジアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパンジアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化ジアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルジアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルジアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパンジアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパンジアクリレート)、トリメチロールプロパンジアクリレート、高官能性(メタ)アクリル含有化合物(例えば、ジトリメチロールプロパントリアクリレート)、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートが挙げられる。このような化合物は、例えば、ペンシルバニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)、ジョージア州スマーナ(Smyrna)のUCBケミカルズ社(UCB Chemicals Corporation)、及びウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)のような供給業者から広く入手可能である。他の有用なアクリレート材料には、ジヒドロキシヒダントイン部分含有ポリアクリレートが挙げられ、これは例えば米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載されている。
【0101】
代表的な求核性アクリロイル化合物に関して、対応するアクリルアミドも使用することができることが理解されよう。更に、示されているヒドロキシル基は、対応するチオール基で置換することができる。
【0102】
式(1G)の添加剤は、部分的に、アミノシランとアクリロイル基とのマイケル反応生成物を含む。アミノシランは、求核性アクリロイル化合物と反応してマイケル付加物を生成することができ、これが次に(求核性フルオロケミカル化合物による官能化の前又は後のいずれかに)ポリイソシアネートと反応することができる。好ましくは、求核性アクリロイル化合物は、最初にポリイソシアネートと(ここでも、求核性フルオロケミカル化合物との反応の前又は後に)反応して、側鎖アクリロイル基を有するウレタン化合物を形成し、そのウレタン化合物にマイケル付加によってアミノシランが付加される。
【0103】
好ましいアミノシランは、一般式(1J):
HN(R)−R−Si(Y)(R3−p (1J)、
のアミノシランであり得、
式中、Rは、RSi(Y)(R3−p、H、又はRであり、pは1、2又は3で、望ましくは3であり、他の基は全て上記で定義されている。
【0104】
式(1J)のアミノシランに関して、RがHである第一級アミンは、マイケル付加反応によって2つのアクリロイル基と反応することができ、これにより式(1G)の添加剤に架橋が生じ得ることに留意すべきである。更に、第一級アミンは、アクリロイル基に対し、アミノシランのマイケル付加とも競合し得る。これらの理由から、R=Hは好ましくなく、しかしながらこのような第一級アミノシランは20モルパーセントを使用することが可能である。
【0105】
いくつかの有用なアミノシランが米国特許第4,378,250号(トレッドウェイ(Treadway)ら)(参照により本明細書に組み込まれる)に記述されており、これには例えば、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、2−アミノエチルトリメトキシシラン、2−アミノエチルトリブトキシシラン、2−アミノエチルトリプロポキシシラン、2−アミノエチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリブトキシシラン、及び3−アミノプロピルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0106】
少量の(すなわち20モルパーセント未満の)カテナリー窒素含有アミノシランも使用することができ、例えば、米国特許第4,378,250号(トレッドウェイ(Treadway)ら)に記述されているものが挙げられ、これは参照により本明細書に組み込まれる。有用なカテナリー窒素含有アミノシランとしては、例えば、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリエトキシシラン、及びN−(3−アミノプロピル)−2−アミノエチルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0107】
式(1K)の添加剤、式(1G)の前駆体は、求核性アクリロイル化合物、フッ素含有求核性化合物、及びポリイソシアネート化合物の単純な混合によって生成することができ、ここで式(1K)は:
(R−[RNHC(O)X−R−(XC(O)CH=CH(1K)
であり、式中、
は、ペルフルオロオキシアルキル基、又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、ポリイソシアネートの残基であり、
は−O−又は−S−であり、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は多価の基で、アルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせ(例えばアルカリーレン基)が挙げられ、所望によりこのアルキレン基は少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含み、
xは、1又は2であり、
qは、1〜6であり、かつ、
zは少なくとも1である。
【0108】
この次に、式(1K)のアクリロイル基に対して、式(1J)のアミノシランのマイケル付加を行う。混合の順序、又は工程の順序には制限はなく、所望される式(1G)の添加剤を生成するために変更することができる。
【0109】
好ましい実施形態において、ポリイソシアネート化合物、及び式(1N)(後述)のフッ素含有求核性化合物は、まず、一部のイソシアネート基と反応し、これにより側鎖フッ素含有基が、イソシアネート官能性ウレタン化合物に結合する。この次に、式(1I)の求核性アクリロイル化合物が、残ったイソシアネート基の一部と反応し、次に、その側鎖アクリロイル基に対し、式(1J)のアミノシランのマイケル付加反応を行う。
【0110】
一般的に、反応成分及び溶媒は、乾燥反応槽中に、引き続いて直ちに充填するか、又は予め調製した混合物として充填する。均質な混合物又は溶液が得られると、触媒が任意に添加され、反応混合物は、ある温度で、反応が発生するのに十分な時間、加熱される。反応の進行は、IR中のイソシアネートピークの消失を観察することにより判断できる。
【0111】
式(1N)(後述)の求核性化合物R−[Q(XH)は、利用可能なイソシアネート官能基の約5モルパーセント〜約50モルパーセントと反応するのに十分な量で使用される。好ましくは、式(1N)の化合物は、イソシアネート基の約10モルパーセント〜約30モルパーセントと反応するよう使用される。残るイソシアネート基のうち、約50モルパーセント〜約95モルパーセント、又は更には約70モルパーセント〜約90モルパーセントが、式(1I)の求核性アクリロイル化合物によって官能化され、次に式(1J)のアミノシランのマイケル付加が行われ、結果として側鎖フルオロケミカル基と加水分解性側鎖シラン基の両方を有するウレタン化合物が得られる。
【0112】
あるいは、式(1J)のアミノシランと式(1I)の求核性アクリロイル化合物を、予め反応させ、式(1L)
HX−R−[X−C(O)CHCHNR−R−Si(Y)(R3−p (1L)
のマイケル反応付加物を生成してもよく、式中、全ての基は上記で定義されている。
【0113】
この式(1L)のマイケル反応付加物(全ての基は上記で定義されている)は、ポリイソシアネート化合物と式(1N)のフッ素含有求核性化合物との反応により得られた生成物の、残っているイソシアネート基と反応する。式(1G)に対応するフルオロケミカルウレタンは、一般に、IRにより、残るイソシアネート基は実質的に有していない。
【0114】
式(1G)の添加剤の別の例を、下記の構造(1M)として示す:
【化5】

【0115】
これは、HDIビウレットと、1当量のHFPOオリゴマーアミドール(例えば、F(CF(CF)CFO)xxCF(CF)C(O)NHCHCHOH、式中、xxの平均値は約6.5)との反応生成物であり、2当量のヒドロキシエチルアクリレートとの反応が続き、アクリレート基とビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミンとのマイケル反応が続く。
【0116】
式(1G)の添加物の他の有用な例が、3M整理番号第62752US002号に開示されており、これは米国特許仮出願第60/871,034号(2006年12月20日提出)であり、これらは本明細書に組み込まれる。
【0117】
アミノシランのアクリロイル基に対するマイケル付加反応には触媒は必要ないが、このマイケル反応に好適な触媒としては、共役酸が好ましくはpKa12〜14であるような塩基が挙げられる。この塩基は好ましくは有機である。このような塩基の例としては、1,4−ジヒドロピリジン、メチルジフェニルホスファン、メチル−ジ−p−トリルホスファン、2−アリル−N−アルキルイミダゾリン、テトラ−t−ブチルアンモニウムヒドロキシド、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカー7−エン)及びDBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン)、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、並びに水酸化ナトリウムが挙げられる。好ましい触媒は、DBU及びテトラメチルグアニジンである。マイケル付加反応に使用する触媒の量は、固体に基づいて、好ましくは約0.05重量%〜約2重量%、又は更には約0.1重量%〜約1.0重量%である。
【0118】
式(1)〜(1H)及び(1M)の添加剤生成に有用なポリイソシアネート化合物は、多価有機基(R)、(R)又は(R)に結合したイソシアネートラジカルを含み、この有機基には、多価脂肪族、脂環族、又は芳香族部分、又はビウレット、イソシアヌレート、又はウレトジオンに結合した多価脂肪族、脂環族、又は芳香族部分、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい多官能性イソシアネート化合物は、平均で少なくとも2つのイソシアネート(−NCO)ラジカルを含む。少なくとも2つの−NCOラジカルを含む化合物は、好ましくは、−NCOラジカルが結合するための二価及び三価の脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、又は芳香族基を含有する。脂肪族の二価又は三価の基が好ましい。
【0119】
適したポリイソシアネート化合物の代表的な例としては、本明細書で定義したポリイソシアネート化合物の、イソシアネート官能性誘導体が挙げられる。有用なイソシアネート官能性誘導体としては、例えば尿素、ビウレット、アロファネート、イソシアネート化合物の二量体、及び三量体(ウレトジオン及びイソシアヌレートなど)、並びにこれらの混合物が挙げられる。好適な有機ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族、脂環族、芳香脂肪族、及び芳香族ポリイソシアネートが挙げられ、単独で、又は少なくとも2つの混合物中でのいずれかで用いることができる。
【0120】
好適な芳香族ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、TDIのトリメチロイルプロパン付加物(ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のバイエル社(Bayer Corporation)からデスモデュア(DESMODUR)CBの商品名で市販)、TDIのイソシアヌレート三量体(ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル社からデスモデュアILの商品名で市販)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0121】
有用な脂環族ポリイソシアネート化合物の例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、これは、ペンシルバニア州ピッツバーグのバイエル社からデスモデュアの商品名で入手可能、4,4’−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、二量体酸ジイソシアネート(バイエル社から入手可能)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0122】
有用な脂肪族ポリイソシアネート化合物の例としては、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、二量体ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの尿素、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(例えば、バイエル社からデスモデュアN−100及びN−3200の商品名で市販)、HDIのイソシアヌレート(例えば、バイエル社からデスモデュアN−3300及びデスモデュアN−3600の商品名で市販)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオン(例えば、バイエル社からデスモデュアN−3400の商品名で市販)との配合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0123】
有用な芳香脂肪族ポリイソシアネートの例としては、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)フェニルイソシアネート、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0124】
好ましいポリイソシアネートとしては、例えば、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0125】
上述の好ましいポリイソシアネートで生成された化合物又はオリゴマーを含む、式(1)〜(1H)及び(1M)の添加剤は、水及びヘキサデカンの両方について大きな接触角を付与し、これは典型的に、良好な撥水性及び撥油性が予測される。
【0126】
式(1)〜(1H)及び(1M)の添加剤は、部分的に、一官能性又は二官能性のペルフルオロ化基と、少なくとも1つの求核性のイソシアネート反応性官能基とを有する、フルオロケミカル化合物の反応生成物を含む。このような化合物には、式(1N):
−[Q(XH) (1N)
が挙げられ、式中、Rは一価のペルフルオロオキシアルキル基(zが1の場合)又は二価のペルフルオロオキシアルキレン基(zが2の場合)であり、他の全ての基は上記で定義されている。
【0127】
有用なペルフルオロオキシアルキル及びペルフルオロオキシアルキレンR基は、式(1O):
W−R−O−R−(Rq1− (1O)
に対応し、式中、
Wは、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開放価数(open valence)(「−」)であり、
は、ペルフルオロアルキレン基であり、
は、1、2、3又は4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基又はこのようなペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基であり、
は、ペルフルオロアルキレン基であり、
q1は0又は1である。
【0128】
式(1O)のペルフルオロアルキレン基R及びRは、直鎖又は分枝鎖であり得、1〜10個の炭素原子、又は更には1〜6個の炭素原子を含み得る。有用な一価ペルフルオロアルキル基の1つの例は、CF−CF−CF−である。有用な二価ペルフルオロアルキレン基の例としては、−CF−CF−CF−、−CF−、及び−CF(CF)CF−が挙げられる。
【0129】
ペルフルオロアルキレンオキシ基Rは、同じペルフルオロアルキレンオキシユニットを含むことができ、又は、異なるペルフルオロアルキレンオキシユニットの混合物でもよい。ペルフルオロアルキレンオキシ基に異なるペルフルオロアルキレンオキシユニットが含まれる場合、それらのユニットは、ランダム配置で、交互配置で、又はブロックとして、存在することができる。ペルフルオロアルキレンオキシ基の有用な例としては
−[CF−CF−O]−;−[CF(CF)−CF−O]−、−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]、及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−が挙げられ、式中、r、s、t及びuはそれぞれ1〜50の整数であり、更には2〜25の整数である。式(1O)に対応する好ましいペルフルオロアルキル基は、CF−CF−CF−O−[CF(CF)−CFO]−CF(CF)CF−であり、式中、sは2〜25の整数である。
【0130】
ペルフルオロオキシアルキル及びペルフルオロオキシアルキレン化合物は、末端カルボニルフルオリド基をもたらす、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により、得ることができる。このカルボニルフルオリドを、当業者に周知の反応によって、酸、エステル又はアルコールに変換してもよい。次に、カルボニルフルオリド又はそれらから誘導される酸、エステル若しくはアルコールを更に反応させて、既知の手順に従って、所望のイソシアネート反応性基を導入してもよい。
【0131】
式(1)、(1D)及び(1G)に関して、式中、y又はzは1であり、フルオロケミカル一官能性化合物、好ましくはモノアルコール及びモノアミンが想到される。有用なフルオロケミカル一官能性化合物の代表的な例としては、CC(O)N(H)CHCHOH;CO(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)CHOH及びCO(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)C(O)N(H)CHCHOH、及びこれらの混合物が挙げられる。所望される場合には、他のイソシアネート反応性官能基が、記載されたものの代わりに使用されてもよい。
【0132】
式(1)、(1D)及び(1G)に関して、式中、y又はzは2であり、フッ素化ポリオールが好ましい。好適なフッ素化ポリオールの代表的な例としては、CFCF(OCFCFOCFC(O)N(CH)CHCH(OH)CHOH、フォンブリンZDOL(FOMBLIN ZDOL)HOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH(イタリア、ミラノ(Milan)のソルベイ・ソレクシス社(Solvay-Solexis)から市販)、HOCHCF(CF)O(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)CHOH、及びHOCHCHN(H)C(O)CF(CF)O(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)C(O)N(H)CHCHOHが挙げられる。
【0133】
反応条件(例えば反応温度、及び/又は使用するポリイソシアネートのタイプと量など)に応じて、反応混合物の、約0.5重量%以下、約0.00005重量%〜約0.5重量%、又は更には約0.02重量%〜0.1重量%の触媒濃度を使用して、イソシアネートとの縮合反応を生じさせることができる。一般に、求核性基がアミン基である場合、触媒は不要である。
【0134】
好適な触媒の例としては例えば第三級アミン及びスズ化合物がある。有用なスズ化合物の例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、及びジブチルスズオキシドなどの、スズII及びスズIV塩が挙げられる。有用な第三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチルモルホリン及び2,2’−ジモルホリンジエチルエーテルなどのモルホリン化合物、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(この例は、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)から商品名DABCOとして入手可能)、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ−7−エン(この例は、アルドリッチ・ケミカル社から商品名DBUとして入手可能)が挙げられる。スズ化合物が好ましい。酸触媒が使用される場合、酸触媒は、反応後に生成物から除去されるか、中和されるのが好ましい。
【0135】
少なくとも1つのペルフルオロポリエーテル部分と少なくとも1つの加水分解性シラン基タイプを含むアクリレートポリマーの有用な添加物としては、式(2):
【化6】

のアクリレートポリマーの部類が挙げられ、式中、
Xは反応開始剤の残基又は水素であり、
はフッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は非フッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は、式
Si(Y(R3−p、
によって表わされるシリル基を有するユニットであり、式中、
は、−OR及び−OC(O)Rの群から選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、かつ、
pは1、2又は3であり、
Gは連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、
iは1〜100の値であり、
jは0〜100の値であり、
kは0〜100の値であり、かつ、
i+j+kは少なくとも2であり、ただし、次の条件:
a)Gが、式:
Si(Y(R3−p、
のシリル基を含む一価の有機基であり、式中、
は、−OR及び−OC(O)Rから選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、かつ、
pは、1、2又は3であるという条件と、
b)kは少なくとも1であるという条件と、のうちの少なくとも1つが充足されるものとする。
【0136】
いくつかの実施形態において、Gは式(2A):
−SQC(O)NHQSi(Y)(Y)(Y)−− (2A)、
に対応し、式中、
及びQはそれぞれ独立して、有機二価結合基であり、
はO又はNRであり、ただし、Rは水素、アリール、又はC〜Cのアルキル基であり、かつ、
、Y及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、又は加水分解性基であり、ただし、Y、Y及びYの少なくとも1つが加水分解性基である。
【0137】
フルオロケミカルシランのユニットMは一般に、式(2B):
−Q−E (2B)、
に対応するフルオロケミカルモノマーから誘導され、式中、
は、ペルフルオロオキシアルキル基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
Qは独立して、少なくとも2の価数を有する接続基であり、かつ、
はフリーラジカル重合可能な基である。
【0138】
フルオロケミカルモノマーの好適な例としては、
O(CF(CF)CFO)CF(CF)CHOC(O)CH=CH
O(CF(CF)CFO)CF(CF)CHOC(O)C(CH.3)=CH
CH=CHC(O)OCHCF(OCF(OCFCFOCFCHOC(O)CH=CH、及び
CH=C(CH)C(O)OCHCF(OCF(OCFCFOCFCHOC(O)C(CH)=CHが挙げられ、式中、u及びvは独立して1〜50である。
【0139】
フルオロケミカルシランのユニットMは(存在する場合)、一般に、非フッ素化モノマー、好ましくは重合可能基及び炭化水素部分からなるモノマーから誘導される。炭化水素含有モノマーは周知であり、一般に市販されている。有用な炭化水素含有モノマーとしては、式(2C):
−(Q−E (2C)、
によるモノマーが挙げられ、式中、
は炭化水素基であり、
6は二価結合基であり、
sは、0又は1であり、及び、
はフリーラジカル重合可能な基である。
【0140】
有用な結合基Qの具体例としては、オキシ、カルボニル、カルボニルオキシ、カルボンアミド、スルホンアミド、オキシアルキレン、及びポリ(オキシアルキレン)基が挙げられる。ユニットMを誘導することができる非フッ素化モノマーの具体例としては、フリーラジカル重合が可能なエチレン系化合物の一般的な部類、例えばアリルエステル(例えば、アリルアセテート及びアリルヘプタノエート)、アルキルビニルエーテル又はアルキルアリルエーテル(例えば、セチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル、及びエチルビニルエーテル)、不飽和酸(アクリル酸、メタクリル酸、α−クロロアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びこれらの無水物並びにこれらのエステル(ビニル、アリル、メチル、ブチル、イソブチル、ヘキシル、ヘプチル、2−エチルヘキシル、シクロヘキシル、ラウリル、ステアリル、及びイソボルニルなど)など)、並びにアルコキシエチルアクリレート及びメタクリレート、α−β不飽和ニトリル(アクリロニトリル、メタクリロニトリル、2−クロロアクリロニトリル、2−シアノエチルアクリレート、アルキルシアノアクリレートなど)、α,β−不飽和カルボン酸誘導体(アリルアルコール、アリルグリコレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、n−ジイソプロピルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−n−ブチルアミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレートなど)、スチレン及びその誘導体(ビニルトルエン、α−メチルスチレン、及びα−シアノメチルスチレン)、ハロゲンを含有することができる低級オレフィン系炭化水素(エチレン、プロピレン、イソブテン、3−クロロ−1−イソブテン、ブタジエン、及びイソプレンなど)、クロロ及びジクロロブタジエン、並びに2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、並びにアリル又はビニルハロゲン化物(ビニル及びビニリデンクロライドなど)が挙げられる。好ましい非フッ素化モノマーとしては、オクタデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ブチルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、イソブチルメタクリレート、エチルヘキシルアクリレート及びエチルヘキシルメタクリレート、並びにビニルクロライド及びビニリデンクロライドなどの炭化水素基含有モノマーが挙げられる。
【0141】
フルオロケミカルシランは一般に、少なくとも1つの加水分解性基を有するシリル基を有するユニットMを更に含む。有用なMユニットの具体的な例としては、一般式(2D):
【化7】

に対応するユニットが挙げられ、式中、
、R及びR10はそれぞれ独立して、水素、アルキル基(例えば、メチル及びエチル)、ハロゲン、又はアリール基であり、
Zは有機二価結合基であり、かつ、
、Y及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、アリール基、又は加水分解性基である。
【0142】
式(2D)による有用なモノマーの例としては、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、並びにアルコキシシラン官能化のアクリレート及びメタクリレート(メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど)が挙げられる。
【0143】
フルオロケミカルシランは、フッ素化モノマー、所望により非フッ素化モノマー、及びシリル基を含むモノマーと、連鎖移動剤の存在下でフリーラジカル重合させることによって調製することができる。フリーラジカル反応開始剤は、重合又はオリゴマー化反応を開始するために使用することができる。フリーラジカル重合反応開始剤としては、例えば、アゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリル(ABIN)及びアゾ−2−シアノバレリアン酸など)、ヒドロ過酸化物(例えば、ヒドロ過酸化クメン、ヒドロ過酸化t−ブチル及びヒドロ過酸化t−アミルなど)、過酸化ジアルキル(過酸化ジ−t−ブチル及び過酸化ジクミルなど)、ペルオキシエステル(t−ブチルペルベンゾエート及びジ−t−ブチルペルオキシフタレートなど)、過酸化ジアシル(過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなど)が挙げられる。
【0144】
オリゴマー化反応は、有機フリーラジカル反応に適した任意の溶媒中で行うことができる。反応物質は、任意の適した濃度、例えば、反応混合物の総重量を基準として約5重量%〜約90重量%などで、溶媒中に存在できる。好適な溶媒としては、例えば、脂肪族及び脂環族炭化水素(例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン)、芳香族溶媒(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、グリム、ジグリム、ジイソプロピルエーテル)、エステル(例えば、エチルアセテート、ブチルアセテート)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド)、メチルクロロホルム、フレオン(FREON)(商標)113、トリクロロエチレン、α,α,α−トリフルオロトルエンのようなハロゲン化溶媒、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0145】
オリゴマー化反応は、有機フリーラジカル反応を導くのに適した任意の温度で行うことができる。使用のための特定の温度及び溶媒は、試薬の溶解度、特定の反応開始剤を用いるために必要とされる温度、望ましい分子量などの要件に基づいて、容易に選択することができる。全ての反応開始剤及び全ての溶媒に好適な特定の温度を列挙することは現実的ではないが、一般に好適な温度は約30℃〜約200℃である。
【0146】
フルオロケミカルオリゴマーは、連鎖移動剤の存在下で調製される。好適な連鎖移動剤は、例えばヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、及びハロゲン基を含む。連鎖移動剤には、このようなヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基、及びハロゲン基の少なくとも2つが含まれ得る。フルオロケミカルオリゴマーを調製するのに有用な連鎖移動剤の具体的例としては、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−2−ブタノール、3−メルカプト−2−プロパノール、3−メルカプト−1−プロパノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−エチルアミン、ジ(2−メルカプトエチル)サルファイド、オクチルメルカプタン、及びドデシルメルカプタンが挙げられる。
【0147】
1つの有用な実施形態において、少なくとも1つの加水分解性基を有するシリル基を含む連鎖移動剤が、フルオロケミカルオリゴマーを生成するためのオリゴマー化に使用される。そのようなシリル基を含む有用な連鎖移動剤には、式(2E):
HLSi(Y)(Y)(Y) (2E)
の連鎖移動剤が挙げられ、式中、
Lは二価結合基であり、かつ、
、Y及びYはそれぞれ独立して、アルキル基、好ましくはC〜Cアルキル基(メチル、エチル及びプロピルなど)、シクロアルキルを含むアルキル基(シクロへキシル及びシクロペンチルなど)、アリール基(フェニルなど)、アルキルアリール基、アラルキル基、及び加水分解性基(ハロゲンなど)又はアルコキシ基(メトキシ、エトキシ又はアリールオキシ基など)であり、式中、Y、Y及びYは加水分解性基である。
【0148】
単一の連鎖移動剤、又は異なる連鎖移動剤の混合物を使用することができる。有用な連鎖移動剤は、2−メルカプトエタノール、オクチルメルカプタン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランである。好ましくは、連鎖移動剤は、オリゴマー中の重合モノマーユニットの数を制御するため、及び所望の分子量のオリゴマーフルオロケミカルシランを得るために十分な量で存在する。一般に連鎖移動剤は、フッ素化及び非フッ素化モノマーを含むモノマーの1当量当たり、約0.05当量〜約0.5当量、好ましくは約0.25当量で使用される。市販の有用な連鎖移動剤の1つの例は、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のシグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)からのA−160 HS(CHSi(OCHである。
【0149】
モノマー又は連鎖移動剤に含まれる官能基と反応するのに好適な化合物としては、以下の式(2F)
A−Q−Si(Y)(Y)(Y) (2F)
による化合物が挙げられ、式中、
Aは、モノマー又は連鎖移動剤に含有される官能基と縮合反応を行うことができる官能基、特に、ヒドロキシ又はアミノ官能性オリゴマーとの縮合が可能な官能基であり(Aの例としてはイソシアネート基又はエポキシ基が挙げられる)、
は有機二価結合基であり、かつ、
、Y及びYは上記に定義されている。
【0150】
有機二価結合基Qは、好ましくは、1〜約20個の炭素原子を含む。Qは、所望により、酸素、窒素、若しくはイオウ含有基、又はこれらの組み合わせを含むことができる。好適な連結基Qの具体例としては、直鎖、分枝鎖及び環状の、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシアルキレン、カルボニルオキシアルキレン、オキシカルボキシアルキレン、カルボキシアミドアルキレン、ウレタニレンアルキレン、ウレイレンアルキレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。好ましい結合基としては、アルキレン、オキシアルキレン及びカルボニルオキシアルキレンが挙げられる。
【0151】
式(2F)による有用な化合物の例としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン及び3−エポキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。ヒドロキシ又はアミノ官能化された連鎖移動剤が使用され、その次にAがイソシアナト基である式(2F)による化合物と反応した場合、結果として得られるフルオロケミカル化合物内の一価の有機基Gは一般に、式(2H)の基であることができる。
−−SQC(O)NHQSi(Y)(Y)(Y) (2H)
式中、
、Q、Y、Y及びYは上記で定義されており、かつ、
はO又はNRであり、式中、Rは水素、アリール、又はC〜Cのアルキル基である。
【0152】
式(2)による他の有用な添加剤及びその製造方法は、例えば、米国特許第7,166,329号に記載されており、本明細書に組み込まれる。
【0153】
ハードコート組成物での使用に好適な他の有用な組成物及び添加剤は、米国特許第7,097,910号、米国特許公開第2004/0147188(A1)号、同第2005/0121644(A1)号、及び同第2006/0216524(A1)号、並びに米国特許出願第60/871,034号及び同第60/870,300号に開示されており、これらは本明細書に組み込まれる。
【0154】
発明者らは理論に束縛されるのを望むものではないが、式(1)及び(2)の添加剤は、それら自体とシルセスキオキサン系ハードコート組成物との縮合反応を行って、これらの加水分解性「Y」基の加水分解又は置換により、架橋シロキサン層を形成すると考えられる。この文脈において、「シロキサン」とは−Si−O−Si−構造ユニットであり、これに式(1)及び(2)の化合物は結合する。水の存在下において、「Y」基は加水分解して「Si−OH」基となり、更に縮合してシロキサンとなる。基材が、加水分解性又は加水分解したシラン基と反応性のある官能基を有する場合、ガラス表面と同様に、その添加剤、シルセスキオキサン系ハードコート組成物、及びそれらの組み合わせも、その表面上で共有結合を形成し得る。
【0155】
式(1)及び(2)の添加剤を含むハードコート組成物から調製されたハードコートは、式(1)と(2)の添加剤それ自体、並びに、式(1)及び(2)の添加剤自体から、シルセスキオキサン系ハードコート組成物から、及び、式(1)及び(2)の添加剤とシルセスキオキサン系ハードコート組成物との組み合わせから生成されたシロキサン誘導体を含む。ハードコートはまた、未反応又は未縮合の「Si−Y」基、非シラン材料(オリゴマーのペルフルオロオキシアルキル一水素化物など)、開始材料、ペルフルオロオキシアルキルアルコール、エステル、及びこれらの組み合わせが含むことができる。
【0156】
シルセスキオキサン
有用なシルセスキオキサン系ハードコート組成物には、例えば、トリアルコキシシラン(又はこれらの加水分解物)及びコロイドシリカ;式R12Si(OR13のジオルガノオキシシランの共縮合体(又はこれらの加水分解物)、トリアルコキシシラン(又はこれらの加水分解物)、及びコロイドシリカ、並びにこれらの混合物が挙げられる。縮合体及び共縮合体は、式R12SiO3/2を有し、式中、各R12は1〜6個の炭素原子のアルキル基又はアリール基であり、及び、R13は1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルである。シルセスキオキサン系ハードコート組成物の有用な製造方法には、コロイドシリカ分散液の存在下で、水とアルコール性溶媒の混合液内において、アルコキシシランの加水分解を行うことが挙げられる。コロイドシリカ分散液は、好ましくは5nm〜150nm、更には10nm〜30nmの粒径を有する。有用なコロイドシリカ分散液は、E.I.デュポン(E.I. duPont)及びナルコ・ケミカル(Nalco Chemical)などからさまざまな商品名で市販されており、例えば、E.I.デュポン・ド・ネムール社(E.I. duPont de Nemours and Co., Inc.)(デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))からの商品名ルドックス(LUDOX)、及びナルコ・ケミカル社(Nalco Chemical Co.)(イリノイ州オークブルック(Oak Brook))からの商品名ナルコ(NALCO)が挙げられる。有用なシルセスキオキサンは、さまざまな技法によって製造することができ、例えば、米国特許第3,986,997号(クラーク(Clark))、同第4,624,870号(アンソニー(Anthony))、及び同第5,411,807号(パテル(Patel)ら)に記載されている技法が挙げられ、これらは参照により本明細書に組み込まれる。シルセスキオキサン系ハードコート組成物は、ハードコート組成物の総固体に基づき、約90重量%〜約99.9重量%の量で、ハードコート組成物内に存在する。
【0157】
シルセスキオキサン系ハードコート組成物を調製する別の有用な方法としては、コロイドシリカ分散液と、水と、所望により表面活性剤及び水混和性有機溶媒などの材料との混合物に、酸性又は塩基性条件下でその混合物を攪拌しながら、加水分解性シランを加えることが挙げられる。加えることができるシランの正確な量は、置換基Rによって、及び、使用した界面活性剤がアニオン性であるか若しくはカチオン性であるかによって、変化する。シルセスキオキサンの共縮合体は、その中のユニットがブロック状で存在してもランダム分布で存在してもよいが、シランの同時加水分解によって形成される。テトラオルガノシラン(例えば、テトラアルコキシシラン及びこれらの加水分解物(例えば、式Si(OH)のテトラアルコキシシラン、及びこのオリゴマー))の量は、シルセスキオキサン系ハードコート組成物の固体に基づき、10重量%未満、5重量%未満、又は更には約2重量%未満である。加水分解の完了後、この生成物を追加の溶媒で希釈することができ、これに添加剤を添加することができる。好適な添加剤としては、例えば紫外線吸収剤、緩衝剤(例えば、メチルトリアセトキシシラン(例えば、塩基性コロイドシリカで製造したシルセスキオキサン系ハードコート組成物用))、抗酸化剤、硬化触媒(例えば、エチルアミンカルボキシレートなどのアミンカルボキシレート、及び、酢酸ベンジルトリメチルアンモニウムなどの第四級アンモニウムカルボキシレート)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0158】
シルセスキオキサン系ハードコート組成物の調製に有用なシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン、2−エチルブトキシトリエトキシシラン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0159】
任意の添加剤
ハードコートコーティング組成物は、所望により、例えば溶媒(すなわち有機溶媒)、水及び酸などの他の添加剤を含むことができる。いくつかの実施形態において、ハードコートコーティング組成物は、添加剤と溶媒の混合物を含む。特に有用な溶媒としては、例えば、有機溶媒が挙げられ、これには例えばアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール及びジアセトンアルコール)、トルエン、ケト類(例えば、メチルエチルケトン)、エステル、グリコールエステル、アミド、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、クロロ炭化水素、クロロカーボン、エーテル(テトラヒドロフランなど)、水、及びこれらの混合物が挙げられる。トリアルコキシシラン(メチルトリメトキシシランなど)及びテトラアルコキシシラン(テトラエトキシシランなど)も加えることができる。
【0160】
ハードコートコーティング組成物は、さまざまな形態で存在でき、これには、例えば、添加剤及びシルセスキオキサン系ハードコート組成物の、溶媒又は水性の、懸濁液、分散液及び溶液が挙げられる。更に、添加剤は、シルセスキオキサン系ハードコート組成物と組み合わせるのに先立って又はその後に、さまざまな溶媒中に溶解、懸濁、又は分散させることができる。溶媒溶液の形態での有用なハードコートコーティング組成物は、組成物の総重量に基づいて、約0.1重量%〜約50重量%、又は更には90重量%以下の溶媒を含む。ハードコートコーティング組成物は好ましくは、総固体に基づいて、約0.1重量%〜約10重量%、約0.1重量%〜約5重量%、又は更には約0.2重量%〜約1重量%の添加剤を含む。
【0161】
製造の容易さとコストの理由から、ハードコートコーティング組成物は、本明細書に開示されている少なくとも1つの添加剤の濃縮物を希釈することによって、使用直前に調製することができる。この濃縮物には一般に、有機溶媒中の添加剤の濃縮溶液が含まれる。濃縮物は好ましくは、数週間、少なくとも1ヶ月間、又は更には少なくとも3ヶ月間、安定である。添加剤の多くは、高濃度で有機溶媒に容易に溶解することができる。したがって、この希釈した濃縮物を、使用の前に、シルセスキオキサン系ハードコート組成物と組み合わせることができる。
【0162】
使用方法
ハードコートコーティング組成物は、その添加剤、シルセスキオキサン系ハードコート組成物、溶媒、及び所望により水と酸を含むハードコートコーティング組成物と、基材を接触させることを含む、コーティング方法に使用するのに適している。1つの実施形態において、この方法は、添加剤と溶媒を含むハードコートコーティング組成物と基材を接触させることと、次に、その基材を水性酸に接触させることを含む。
【0163】
ハードコートコーティング組成物は、任意の好適な手法又は技法を用いて基材に適用することができ、これには例えば、スプレー、ブラシ、ワイプ、ナイフコーティング、ノッチコーティング、リバースロールコ−ティング、グラビアコーティング、浸漬、ディップコーティング、バーコーティング、フラッドコーティング、スピンコーティング及びこれらの組み合わせが挙げられ、連続層又は不連続層を含む任意の適した形態で適用することができる。結果として得られるハードコートは同様に、例えば連続層又は不連続層(例えばパターン、ドット、縞及び渦巻き)などのさまざまな形態で存在することができ、層同士を重ねて配置した多層の結果であることもできる。結果として得られるハードコートは比較的丈夫で、ハードコートのない基材表面に比べ、汚染に対する耐性が高く、容易にきれいにできる。
【0164】
ハードコート組成物は、水、油、汚れ、及び汚泥をはじく望ましいレベルを提供するため、任意の厚さにすることができる。ハードコートは好ましくは、下側にある基材の外観及び光学的特性を実質的に変えることのない量で、基材上に存在する。典型的には、ハードコートコーティング組成物が単独のハードコートとして使用される場合、乾燥硬化したコーティングの厚さは1マイクロメートル〜100マイクロメートル、1マイクロメートル〜10マイクロメートル、又は更には2マイクロメートル〜5マイクロメートルである。ハードコートコーティング組成物が少なくとも2層の最上層として適用される場合(例えば、その少なくとも2つの層が互いに同じであっても異なっていてもよく、そのハードコートコーティング組成物と同じであっても異なっていてもよい)、そのハードコート最上層は、はるかに薄い層として適用してもよい。そのようなハードコート最上層は、乾燥したときに、厚さが例えば20オングストローム〜1マイクロメートル、又は好ましくは40ナノメートル〜100ナノメートルであり得る。ハードコートの有用な合計厚さ(多層コーティングの全層を含む)は、例えば約1マイクロメートル〜約5マイクロメートルの、任意の好適な厚さにすることができる。
【0165】
ハードコートコーティング組成物は、基材(例えば、レンズ(例えば、プラスチック又はガラス))上にコーティングすることができ、少なくとも部分的に硬化して(例えば、乾燥、架橋、及びこれらの組み合わせ)、コーティングされた物品を提供する。存在する任意の所望による溶媒は、典型的には少なくとも部分的に除去され(例えば、強制空気オーブンを用いる、高温での蒸発による、周囲温度での蒸発による、及びこれらの組み合わせ)、次にその組成物が少なくとも部分的に硬化して、丈夫なコーティングを生成する。
【0166】
ハードコートコーティング組成物をコーティングする好ましい方法には、ディップコーティングが挙げられる。コーティングする基材は、室温(典型的には約20℃〜約25℃)でハードコートコーティング組成物に接触させることができる。あるいは、ハードコートコーティング組成物を、例えば60℃〜150℃などの高温に予熱した基材に適用することができる。これは、基材を生産ラインの終わりに、ベーキングオーブン直後に処理することができる工業生産にとって、特に利点となる。適用後、処理された基材を、室温又は高温(例えば、約40℃〜約300℃)において、乾燥に十分な時間にわたって、乾燥及び硬化させることができる。このプロセスには、磨き工程が必要になることがある。
【0167】
ハードコートコーティング組成物は、基材(例えば、レンズ、プラスチック基材又はガラス基材)をプライミングした表面上にコーティングすることもできる。好適なプライマー組成物の例としては、ポリ(メチルメタクリレート)プライマーが挙げられ、この例は、ウェストバージニア州フレンドリー(Friendly)の現モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials, Inc.)、旧ゼネラル・エレクトリック社(General Electric Company)のシリコーン部門から商品名SHC401シリーズとして市販されている。他の有用なプライマー組成物及びその製造方法は、例えば、米国特許第5,041,313号(パテル(Patel))に記載されており、本明細書に組み込まれる。プライマー層は、連続層又は不連続層(例えば、パターン、ドット、縞及び渦巻き)、単層、層同士を重ねて配置した多重プライマー層など、さまざまな形態であり得る。
【0168】
本発明はここで、下記の実施例によって説明される。特に指定がない限り、全ての重量は、重量パーセントに基づく。
【実施例】
【0169】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
H及び19FのNMRスペクトルを、バリアンユニティプラス(Varian UNITYplus)400フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ(Varian NMR Instruments)(カルフォルニア州パロアルト(Palo Alto))から入手可能)で測定する。
【0170】
IR分光法(IR)
IRスペクトルは、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)のサーモ・エレクトロン社(Thermo Electron Corporation)から入手可能なサーモ−ニコレー、アバター370 FTIR(Thermo-Nicolet, Avatar 370 FTIR)で測定する。
【0171】
インク反発性試験
この試験はポリカーボネート製プラーク上のコーティングのインク反発性を測定するために使用される。コーティングされたポリカーボネート製プラークは、前述のように調製される。コーティングされたポリカーボネート製プラークの表面に、シャーピー(Sharpie)マーカー(イリノイ州ベルウッド(Bellwood)のサンフォード(Sanford)から市販されている)で1本の線を引く。外観と、黒のシャービーマーカーをはじく能力について、サンプルが評価される。
【表1】

【0172】
インク反発性耐久試験
改変された振動砂方法(ASTM F 735−94)が、コーティングされたポリカーボネート製プラークのインク反発性の耐久性測定のために使用される。コーティングされたポリカーボネート製プラーク(すなわち、上記で調製された試験サンプル)を、未使用の20〜30メッシュのオタワサンド(コネチカット州ブリストル(Bristol)のVWR社)を50グラム含有する、内径87mmのVWR 36318−860ジャー(コネチカット州ブリストルのVWR社)上で、ビニールテープと輪ゴムを使って固定する。試験サンプルを含有する側を底にして、このジャーを、VWR DS−500Eシェーカー(コネチカット州ブリストルのVWR社)内に入れる。シェーカーは、225rpmの振動速度で10分間作動させる。10分間の終了時に、ポリカーボネート製プラークを取り出し、砂が接触していた表面に、シャーピー永久マーカーを使用して1本の線を引く。87mmのインク線のうち、丸まっていない部分の標準化(%)長さを測定し、インク反発性の損失率として報告する。報告されるデータは、独立した3回の試験の平均である。
【0173】
テーバー曇り試験
この試験は、上記のようにコーティングされたポリカーボネート製プラークで実施される。この試験手順は、米国労働安全衛生研究所による2005年10月24日付けの手順番号第CET−APRS−STP−0316号、改訂1.1のものである。曇りの平均増加は、4%未満が所望される。
【0174】
汚れ洗浄レベル試験
この試験は、上記のようにコーティングされたポリカーボネート製プラークで実施される。この試験手順は、ASTM D 6578−00、落書き抵抗性判定のための標準実施(Standard Practice for Determination of Graffiti Resistance)のものである。この標準では、ペンキ及び溶媒系インクで汚した後の洗浄性について下記のレベルがある。
【表2】

【0175】
スチールウール耐久性試験
コーティング及び硬化されたポリカーボネート製プラーク(上記に従い調製)の耐磨耗性が、フィルムの表面に対し、スタイラスに接着されたスチールウールシートを振動させることができる機械装置を使用することにより、コーティング方向に対しクロスウェブで試験される。スタイラスは、315mm/秒(ワイプが3.5回/秒)の速度において90mmの掃引幅にわたって振動した(ここで1回の「ワイプ」は、90mmの1回の移動として定義される)。スタイラスは、直径3.2cmの平らな円筒形ベース部の形状を有していた。このスタイラスは、フィルムの表面に対して垂直にスチールウールによってかかる力を増加させるため、追加のおもりを取り付けることができる設計になっていた。サンプルは、500gの荷重で、ワイプ25回で試験される。#0000スチールウールシートは、「マジックサンド−サンディングシート(Magic Sand-Sanding Sheets)」(ハットプロダクツ(Hut Products)社、ミズーリ州フルトン(Fulton))である。#0000は、600〜1200グリットのサンドペーパーの規定グリットと同等性を有する。3.2cmスチールウール円盤を、サンディングシートからダイカットし、3Mブランドのスコッチ・パーマネント・アドヒーシブ・トランスファー(Scotch Permanent Adhesive Transfer)テープ(3M、ミネソタ州セントポール(St. Paul))で3.2cmのスタイラスベース部分に接着する。スチールウール磨耗後に、磨耗痕上、及び磨耗痕の隣接部分のプラーク領域(スチールウール痕で影響を受けていない部分、すなわち、スチールウール試験前)上で、接触角を測定する。接触角測定は、下記の「接触角の測定方法」を使用して行う。特に記載のない限り、データは、3枚のプラーク上で行った測定の平均に基づいて報告される。各プラークには3滴の液滴が、滴下される。接触角は、各液滴の右側と左側で測定される。
【0176】
接触角の測定方法
ハードコート層が処理されたポリカーボネート製基材を、少量のイソプロピルアルコールで前処理し、これを蒸発させてから、表面の接触角を測定する。測定は、試薬グレードn−ヘキサデカン(購入状態のまま)、及び濾過システム(ミリポア社(Millipore Corporation)、マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica))で濾過した脱イオン水を使用して、ビデオ接触角アナライザー(製品番号VCA2500XE、ASTプロダクツ(AST Products)社、マサチューセッツ州ビルリカ)上で別個に行われる。液滴の体積は、静的測定では5マイクロリットル(μL)である。報告された値は、特に記載のない限り、少なくとも3滴のn−ヘキサデカン及び3滴の水の測定値の平均である。液滴の右側と左側の両方において測定が行われる。
【0177】
溶媒耐性試験
4つの容器をそれぞれ異なる溶媒(エタノール、イソプロパノール、トルエン及びMEK)で満たす。上記のように調製したプラークを、この4つの容器内に入れて60秒間置く。ラミネーション剥がれ、ひび、変色、コーティングにおける何らかの他の変化などの観察結果が記録される。次に、各プラークを、更に300秒間、溶媒容器中に置く。全ての観察結果が記録される。
【0178】
材料
ヘキサメチレンジイソシアネートビウレット(デスモデュア(DESMODUR)N100又はDESN100)(バイエル・ポリマーズ社(Bayer PolymersLLC)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))
ヘキサメチレンジイソシアネートイソシアヌエート(DESMODUR N3300又はDESN3300)(バイエル・ポリマーズ社(Bayer PolymersLLC)、ペンシルバニア州ピッツバーグ)
イソホロン(Isophonone)ジイソシアネート(IPDI)、98%(MW=222.29)(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))
HFPO−C(O)N(H)CHCHOH及びHFPO−C(O)N(H)CHCHOC(O)CMe=CH(HFPO−MAr、平均分子量1344)は、米国特許公開第2004−0077775号、表題「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物、及びそれを用いた繊維状基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記述されているものに類似の手順によって調製された。
SR444C ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(サートマー社(Sartomer Company)、ペンシルバニア州ウォリントン(Warrington))
SHP401 ポリ(メチルメタクリレート)プライマー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials, Inc.)、ニューヨーク州ウォーターフォード(Waterford))
SHC 1200 メチルシルセスキオキサンハードコート溶液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials, Inc.))
N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)(ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.)、コネチカット州ダンベリー(Danbury))
A−174 メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))
シルクエスト(Silquest)A−1170 ビス(プロピル−3−トリメトキシシラン)アミン(HN((CHSi(OCH)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials, Inc.)、ウェストバージニア州フレンドリー(Friendly))
アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、HN(CHSi(OCH、(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))
ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))
ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))
シルクエスト(Silquest)A−160 メルカプトプロピルトリメトキシシラン(HS(CHSi(OCH)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社(Momentive Performance Materials, Inc.))
ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、70%工業銘柄溶液(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))
GE LEXAN101ポリカーボネート(インディアナ州マウントバーノン(Mount Vernon))プラーク(ミネソタ・モールド・アンド・エンジニアリング(Minnesota Mold & Engineering)鋳造、ミネソタ州ヴァドナイスハイツ(Vadnais Heights))
DABCO 33LV 1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(エア・プロダクト・アンド・ケミカルズ社(Air Product and Chemicals, Inc.)、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown))
VAZO 67 2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(E.I.デュポン・ド・ネムール社(E.I. duPont de Nemours& Co., Inc.、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington))
MeFBSE(CSON(CH)CHCHOH)は、米国特許第6,664,354号(サヴ(Savu)ら)、実施例2、パートAに記載されている手順に本質的に準拠して調製された。
メチルイソブチルケトン(MIBK)(バーディック・アンド・ジャクソン(Burdick & Jackson)、ミシガン州マスキーゴン(Muskegon))
テトラヒドロフラン(THF)(EMDケミカルズ(EMD Chemicals)、ニュージャージー州ギブズタウン(Gibbstown))
酢酸エチル(EtOAc)(EMDケミカルズ(EMD Chemicals)社、ニュージャージー州ギブズタウン(Gibbstown))
メチルエチルケトン(MEK)(EMDケミカルズ(EMD Chemicals)社、ニュージャージー州ギブズタウン(Gibbstown))
チオエタノール(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))
NOVEC HFE−7100、COCH(スリーエム(3M)社、ミネソタ州セントポール(St. Paul))
ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)(シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich))
【0179】
調製及び実施例は、使用されたフルオロケミカルシランウレタンに対応する。実施例(コーティングされたプラーク)は、同じ調製で異なる量によって調製することができる。
【0180】
調製1〜19のタイトルに確認される比率はモルに基づくものであり、一方、調製20〜23のタイトルに確認される比率は、重量に基づくものである。
【0181】
調製1
ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製 DESN100/0.10 HFPO−C(O)N(H)CHCHOH/0.90 APTMS
【0182】
磁気攪拌棒を装備した100mL丸底フラスコに、6.25g(0.0327当量、1.00モル分率)のDESN100、17.69gのテトラヒドロフラン(THF)、及び0.00079gのDBTDL(投入した総固体に基づいて50ppm、メチルエチルケトン中にDBTDLの10%固形分溶液から添加)を入れ、窒素雰囲気下で摂氏55度のオイルバスに置いた。この反応物に、4.30g(0.0033当量、分子量1314、0.10モル分率)のHFPO−C(O)N(H)CHCHOHを滴下漏斗経由で約10分間かけて添加した。HFPO−C(O)N(H)CHCHOHの添加が完了してから2時間後に、5.28g(0.0295当量、0.90モル分率、分子量179.3)のAPTMSを滴下漏斗経由で約15分間かけて反応物に添加した。APTMSの添加が完了してから2時間後、FTIRが2265cm−1のイソシアネートピークがないことを示した。0.47gのTHFの添加により反応物を50%固形分まで調整し、次に21.11gイソプロパノールの添加により30%固形分まで希釈した。
【0183】
ペルフルオロポリエーテルウレタンシラン2、3及び4は、調製1で使用した方法により、表1に列挙した成分のモル分率の相対数を使用して50%固形分に調製し、イソプロパノールを使用して30%固形分まで希釈した。
【表3】

【0184】
調製5
30g、0.15当量のイソシアネートデスモデュア(DESMODUR)N3300A、40.3g、0.03モルのHFPO−C(O)N(H)CHCHOH、43.8g溶液、31g、0.12モルのペンタエリスリトールトリアリルエーテル、及び445gのMIBKを、1Lのフラスコに入れた。この混合物を攪拌しながら80℃に加熱し、溶液を形成した。この溶液をNで1分間パージし、DBTDL及びDABCO 33LVのそれぞれ3滴ずつを添加した。次に、結果として得られた溶液を、15時間、110℃に加熱した。15時間終了後、サンプルのIRスペクトルに、NCO基に対応するピークがなかった。この溶液を70℃まで冷まし、次に、70.7g、0.36モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランを添加した。この溶液をNで3分間パージし、0.7gVAZO 67を添加し、この溶液を70℃で16時間加熱した。この時間の終了後、サンプルのIRスペクトルから、アリル基が残っていないことが判定された。生成物のフルオロケミカルウレタンシランは金色の溶液で、28%の固体含有量を有した。
【0185】
調製6
30g、0.15当量のイソシアネートデスモデュア(DESMODUR)N3300A、40.3g、0.03モルのHFPO−C(O)N(H)CHCHOH、10.7g、0.03モルのMeFBSE、33g溶液、23g、0.09モルのペンタエリスリトールトリアリルエーテル、及び445gのMIBKを、1Lのフラスコに入れた。この混合物を攪拌しながら80℃に加熱し、溶液を生じた。この溶液をNで1分間パージし、DBTDL及びDABCO 33LVのそれぞれ3滴ずつを添加した。得られた溶液を110℃に15時間加熱した。15時間終了後、サンプルのIRスペクトルに、NCO基に対応するピークがなかった。この溶液を70℃まで冷まし、53g、0.26モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランを添加した。得られた溶液をNで3分間パージし、0.7gVAZO 67を添加し、この溶液を70℃で16時間加熱した。この時間の終了後、サンプルのIRスペクトルから、アリル基が残っていないことが判定された。生成物のフルオロケミカルウレタンシランは金色の溶液で、25%の固体含有量を有した。
【0186】
調製7
28.6g、0.15当量のイソシアネートデスモデュア(DESMODUR)N100、40.3g、0.03モルのHFPO−C(O)N(H)CHCHOH、43.8g溶液、31g、0.12モルのペンタエリスリトールトリアリルエーテル、及び445gのMIBKを、1Lのフラスコに入れた。この混合物を攪拌しながら80℃に加熱し、溶液を形成した。この溶液をNで1分間パージし、DBTDL及びDABCO 33LVのそれぞれ3滴ずつを添加した。得られた溶液を110℃に15時間加熱した。15時間終了後、サンプルのIRスペクトルに、NCO基に対応するピークがなかった。この溶液を70℃まで冷まし、70.7g、0.36モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランを添加した。得られた溶液をNで3分間パージし、0.7g VAZO 67を添加し、この溶液を70℃で16時間加熱した。この時間の終了後、サンプルのIRスペクトルから、アリル基が残っていないことが判定された。生成物のフルオロケミカルウレタンシランは金色の溶液で、27.2%の固体含有量を有した。
【0187】
調製8
28.6g、0.15当量のイソシアネートデスモデュア(DESMODUR)N100、40.3g、0.03モルのHFPO−C(O)N(H)CHCHOH、10.7g、0.03モルのMeFBSE、33g溶液、23g、0.09モルのペンタエリスリトールトリアリルエーテル、及び445gのMIBKを、1Lのフラスコに加えた。この混合物を攪拌しながら80℃に加熱し、溶液を生じた。この溶液をNで1分間パージし、DBTDL及びDABCO 33LVのそれぞれ3滴ずつを添加した。得られた溶液を110℃に15時間加熱した。15時間終了後、サンプルのIRスペクトルに、NCO基に対応するピークがなかった。次に、この溶液を70℃まで冷まし、53g、0.26モルのメルカプトプロピルトリメトキシシランを添加した。この溶液をNで3分間パージし、0.7g VAZO 67を添加し、この溶液を70℃で16時間加熱した。この時間の終了後、サンプルのIRスペクトルから、アリル基が残っていないことが判定された。生成物のフルオロケミカルウレタンシランは金色の溶液で、25.6%の固体含有量を有した。
【0188】
調製9
a)[DESN100/0.15 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.90 HEA]中間体の調製
磁気攪拌棒を装備した200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654当量、1.0モル分率、191.0イソシアネート当量)のDESN100、1.6mg(固体に関して50ppm)のDBTDL、0.05gのBHT、及び32.24gのTHFを入れ、混合物を形成した。このフラスコを55℃のバスに入れ、12.90g(0.0098当量、0.15モル分率、分子量1314)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを均圧滴下漏斗経由で10分間かけて混合物に添加した。添加が完了してから2時間後、6.84g(0.0589当量、0.90モル分率)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、この混合物を一晩置いて反応させた。一晩反応させた後、サンプルのIRスペクトルで、2265cm−1のNCO基に対応するピークがなかった。反応生成物を、5.48gのTHFを加えることにより希釈し、この組成物を50%固形分に調整した。
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した25mL丸底フラスコに、上記a)で調製した中間体5g(アクリレート官能基0.004565モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。1.56g(0.004565モル)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で、フラスコに滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、次に55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
【0189】
調製10
a)[DESN100/0.30 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.75 HEA]中間体の調製
磁気攪拌棒を装備した200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654当量、1.0モル分率)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び44.0gのTHFを入れた。このフラスコを55℃のバスに入れ、25.80g(0.0196当量、0.30モル分率、分子量1314)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを均圧滴下漏斗経由で10分間かけてフラスコに添加した。添加が完了してから2時間後、5.70g(0.0491当量、0.75モル分率)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、この混合物を一晩置いて反応させた。一晩反応させた後、サンプルのIRスペクトルで、2265cm−1のNCO基に対応するピークがなかった。反応生成物を、11.44gのTHFを加えることにより希釈し、この組成物を50%固形分に調整した。
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した25mL丸底フラスコに、上記a)で調製した中間体5g(アクリレート官能基0.00278モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。0.9493g(0.00278モル)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で、フラスコにし滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
【0190】
調製11
a)[DESN100/0.50 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.55 HEA]中間体の調製
磁気攪拌棒を装備した200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654当量、1.0モル分率)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び59.88gのTHFを入れた。このフラスコを55℃のバスに入れ、43.0g(0.0327当量、0.50モル分率、分子量1314)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを均圧滴下漏斗経由で10分間かけてフラスコに添加した。添加が完了してから2時間後、4.18g(0.0360当量、0.55モル分率)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、この混合物を一晩置いて反応させた。一晩反応させた後、サンプルのIRスペクトルで、2265cm−1のNCO基に対応するピークがなかった。反応生成物を、29.62gのTHFを加えることにより希釈し、この組成物を50%固形分に調整した。
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した25mL丸底フラスコに、上記a)で調製した中間体5g(アクリレート官能基0.0015モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。0.5138g(0.0015モル)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で、フラスコに滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
【0191】
調製12
a)[DESN100/75% HEA/15% PETA/15% HFPOC(O)NHCHCHOH]中間体の調製
磁気攪拌棒を装備した200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654当量、1.0モル分率)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び35.24gのTHFを入れた。このフラスコを55℃のバスに入れ、12.9g(0.0098当量、0.15モル分率、分子量1314)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを均圧滴下漏斗経由で10分間かけてフラスコに添加した。添加が完了してから2時間後、4.13g(0.0098当量、0.15モル分率)のPETAを混合物に添加した。添加が完了してから2時間後、5.70g(0.0491当量、0.75モル分率)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、この混合物を一晩置いて反応させた。一晩反応させた後、サンプルのIRスペクトルで、2265cm−1のNCO基に対応するピークがなかった。反応生成物を、5.48gのTHFを加えることにより希釈し、この組成物を50%固形分に調整した。
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した100mL丸底フラスコに、上記12a)で調製した中間体35.24g(アクリレート官能基0.046モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。15.77g(1.417当量、0.046モル分率)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で、フラスコに滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
使用されているビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンの当量数は、まず、使用されているOH当量420.94のPETAが、70%ペンタエリスリトールトリアクリレート(298/421.4)及び30%ペンタエリスリトールテトラアクリレートであると仮定することによって決定された。次に、OH当量のモル毎に存在するアクリレート部分の数を、次の式の計算によって決定した:[(構成成分に存在するアクリレート部分の数)(全種類のヒドロキシル当量)(全種類の構成成分の分率)の全構成成分の合計]/構成成分の分子量。例えば、この式でペンタエリスリトールトリアクリレートの値は:
[(3)×(420.94)×(0.7)/(298)]+[(4)×(420.94)×(0.3)/352]=4.40となる。よって、調製12a)におけるPETA及びHEAからのアクリレートの当量数は、(0.0098×4.40)+(0.0491)=0.0922であった。溶液の半分が調製12b)のために使用されたため、反応物中のアクリレートのモル数は0.046である。同様の計算が、調製13、14b)、及び15について行われた。
【0192】
調製13
ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した100mL丸底フラスコに、上記12a)に従い調製した中間体35.24g(アクリレート官能基0.046モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。8.92g(0.046当量、1.417分率)のMAPTMSを、室温で、フラスコに滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
【0193】
調製14
a)[DESN100/60% HEA/30% PET3A/15% HFPOC(O)NHCHCHOH]中間体の調製
磁気攪拌棒を装備した200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654当量、1.0モル分率)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び35.24gのTHFを入れた。このフラスコを55℃のバスに入れ、12.9g(0.0098当量、0.15モル分率、分子量1314)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを均圧滴下漏斗経由で10分間かけてフラスコに添加した。添加が完了してから2時間後、8.26g(0.0196当量、0.30モル分率)のPETAを混合物に添加した。添加が完了してから2時間後、4.56g(0.0393当量、0.6モル分率)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、この混合物を一晩置いて反応させた。一晩反応させた後、サンプルのIRスペクトルで、2265cm−1のNCO基に対応するピークがなかった。反応生成物を、5.48gのTHFを加えることにより希釈し、この組成物を50%固形分に調整した。
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した100mL丸底フラスコに、上記a)で調製した中間体38.23g(アクリレート官能基0.063モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。21.49g(0.063当量、1.927モル分率)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で、フラスコに滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
【0194】
調製15
ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
磁気攪拌棒を装備した100mL丸底フラスコに、上記14a)に従い調製した中間体38.23g(アクリレート官能基0.063モル)を入れた。このフラスコをオイルバスに入れ、フラスコの内容物を窒素雰囲気下においた。12.16g(0.63当量、1.927モル分率)のMAPTMSを、室温で、フラスコに滴下して添加した。この反応混合物を室温で15分間攪拌し、55℃に4時間加熱した。反応の完了は、H NMRスペクトルにおいてアクリレートのピークが消失することによって判定された。この生成物を琥珀色の瓶に入れ、コーティング直前まで、冷蔵庫内で窒素雰囲気下に保存した。
オリゴマーシラン(OSi−1)の合成 H(A−174)−SCHCHOH(平均分子量=822):
200mLの瓶に、14.90gのA−174(MW=248.4、60mmol)、1.56gのHSCHCHOH(MW=78、20mmol)、38.4gのEtOAc及び0.3gのVAZO−67を入れた。窒素での1分間の通気後、密閉した瓶を、磁気攪拌を行いながら70℃のオイルバスで24時間加熱し、30%固形分で透明な溶液を得た。FTIR分析によりCH=CMeC(O)−信号が観察されず、これはオリゴマー化が完了したことを意味した。
オリゴマーシラン(OSi−2)の合成
H(A−174)(ODA)0.7−SCHCHOH(平均分子量=1294):
200mLの瓶に、39.74gのA−174(MW=248.4、160mmol)、8.70gのオクタデシルアクリレート(ODA)(MW=324、26.8mmol)、3.12gのHSCHCHOH(MW=78、40mmol)、103.3gのEtOAc及び10gのVAZO−67を入れた。窒素での1分間の通気後、密閉した瓶を、磁気攪拌を行いながら70℃のオイルバスで10時間加熱した。更に0.70gのVAZO−67を添加し、オリゴマー化を更に14時間継続させ、33%固形分で透明な溶液を得た。FTIR分析によりCH=CMeC(O)−信号が観察されず、これはオリゴマー化が完了したことを意味した。
【0195】
調製16
ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製 DESN100/0.33 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.33 OSi−1/ 0.33 APTMS
200mLの瓶に、5.73gのDESN100(EW=190、30mmol)、13.14gのHFPOC(O)N(H)CHCHOH(MW=1314、10mmol)、27.4gの30% OSi−1(8.22g固体、10mmol)、49.5gのEtOAc溶媒、及び5滴のDBTDL触媒を入れた。密閉した瓶を、磁気攪拌を行いながら70℃のオイルバスで4時間加熱した。次に2.21gのAPTMS(10mmol)を室温で添加し、この混合物を室温で0.5時間反応させ、次いで70℃のオイルバスで更に4時間反応させた。30%固形分で透明な溶液を得た。FTIR分析により、未反応の−NCO信号が観察されず、これは反応が完了したことを意味した。
【0196】
調製17
ペルフルオロポリエーテルウレタンシラン DESN3300/0.33 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.33 OSi−1/0.33 APTMS
調製17は、調製16と同様の手順で行われ、ただしDESN100の代わりに5.76gのDESN3300が使用された。
【0197】
調製18
ペルフルオロポリエーテルウレタンシラン DESN100/0.33 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.66 OSi−2
200mLの瓶に、2.93gのDESN100(EW=190、15.34meq)、6.71gのHFPOC(O)N(H)CHCHOH(MW=1314、5.1meq)、38.90gの33%固形分OSi−2(12.99g固体、10meq OH)、22.5gのEtOAc溶媒、及び4滴のDBTDL触媒を入れた。密閉した瓶を、磁気攪拌を行いながら70℃のオイルバスで8時間加熱した。FTIR分析により、未反応の−NCO信号が観察されず、これは反応が完了したことを意味した。
【0198】
調製19
ペルフルオロポリエーテルウレタンシラン:DESN100/0.23 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.75 OSi−2
200mLの瓶に、2.55gのDESN100(EW=190、13.35meq NCO)、4.20gのHFPOC(O)N(H)CHCHOH(MW=1344、3.12meq)、38.90gの33%固形分OSi−2(12.99g固体、10meq OH)、20gのEtOAc溶媒、及び4滴のDBTDL触媒を入れた。密閉した瓶を、磁気攪拌を行いながら70℃のオイルバスで8時間反応させた。FTIR分析により、未反応の−NCO信号が観察されず、これは反応が完了したことを意味した。
【0199】
調製20
ペルフルオロポリエーテルアクリレートシラン、重量比 1.0 HFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH/9.0 A−174/0.2 A−160
100mLの瓶に、1.0gのHFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH(MW約1344、0.744mmol)、9.0gのA−174(MW=248、36.3mmol)、0.2gのA−160(MW=198、1.02mmol)、30gのMEK、及び0.2gのVAZO−67を入れた。この溶液中に窒素を1分間通気し、次に瓶を70℃に24時間加熱した。
【0200】
調製21
ペルフルオロポリエーテルアクリレートシラン、重量比 2.0 HFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH/8.0 A−174/0.2 A−160
100mLの瓶に、2.0gのHFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH(MW約1344、1.48mmol)、8.0gのA−174(MW=248、32.2mmol)、0.2gのA−160(MW=198、1.02mmol)、30gのMEK、及び0.2gのVAZO−67を入れた。この溶液中に窒素を1分間通気し、次に瓶を70℃に24時間加熱した。
【0201】
調製22
ペルフルオロポリエーテルアクリレートシラン、重量比 4.0 HFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH/6.0 A−174/0.2 A−160
100mLの瓶に、4.0gのHFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH(MW約1344、2.97mmol)、6.0gのA−174(MW=248、24.2mmol)、0.2gのA−160(MW=198、1.02mmol)、30gのMEK、及び0.2gのVAZO−67を入れた。この溶液中に窒素を1分間通気し、次に瓶を70℃に24時間加熱した。
【0202】
調製23
ペルフルオロポリエーテルアクリレートシラン、重量比 6.0 HFPOC(O)N(H)CHCHOC(O)CH(CH)=CH/4.0 A−174/0.2 A−160
100mLの瓶に、6.0gのHFPO−MAr(MW約1344、4.46mmol)、4.0gのA−174(MW=248、16.1mmol)、0.2gのA−160(MW=198、1.02mmol)、30gのMEK、及び0.2gのVAZO−67を入れた。この溶液中に窒素を1分間通気し、次に瓶を70℃で24時間加熱した。70℃での反応後に透明な溶液が得られたが、しかしながら、室温では濁りが生じたため、15gのHFE−401を添加して、処方用に透明な溶液を作製した。
【0203】
(実施例1)
コーティングしたプラークは、次の手順に従って調製された:
ポリカーボネート基材(10cm×10cm)を、ディップコーティングプロセスを用いて、ハードコートコーティング組成物でコーティングした。コーティングを形成するために、各ポリカーボネート基材を最初に、毎分90cmの速度でSHP 401プライマー溶液に浸した。ひとたび基材全体がプライマーに浸ったならば、基材をプライマーから毎分90cmの速度で取り出し、室温で10分間空気乾燥させた。次に、乾燥した基材を、SHC−1200溶液、又は0.3重量パーセントのフッ素化ウレタンシラン(特に記載のない限り)を含有するSHC−1200溶液に毎分90cmの速度で浸し、毎分19cmの速度で引き上げて、室温で20分間空気乾燥し、最後にオーブンにおいて130℃で30分間加熱した。
【0204】
実施例の番号は、前のセクションの調製番号に対応している。各実施例について、対応する調製物の少量を、適量のSHC−1200と混ぜ合わせて、調製物の固体重量がSHC−1200の0.3%となるようにした。例えば、調製1は30%固形分であるため、1グラムの調製1は0.3グラムの固体を含有する。SHC−1200は19%固形分であるため、526グラムのSHC−1200は100グラムの固体を含有する。1グラムの調製1を526グラムのSHC−1200と混合することにより、固体重量パーセント0.3%を得る。この混合物を使用して、実施例1のプラークのコーティングが行われた。
【0205】
調製2では3つの実施例が行われ、これらは実施例2a、2b、及び2cとして同定される。実施例2aでは、SHC−1200中の調製2の固体重量パーセントは0.2%、であった。実施例2bでは、固体重量パーセントは0.3%であった。並びに、実施例2cでは、固体重量パーセントは0.4%であった。
変更を加えていないSHC−1200でプラークをコーティングすることにより、比較例も調製された。
【0206】
下記の表1には、比較例について及び調製1〜15から作製された実施例について、テーバー曇り試験、インク反発性試験及びインク反発性耐久試験の結果をまとめる。
【表4】

【0207】
下記の表2には、比較例1について及び調製1〜15から作製される実施例について、スチールウール試験の結果をまとめる。
【表5】

【0208】
下記の表3には、スチールウール試験前の選択実施例について測定されたヘキサデカン接触角をまとめる。
【表6】

【0209】
下記の表4には、比較例1について、及び、調製1〜11から作製された選択実施例について、溶媒試験の結果をまとめる。
【表7−1】

【表7−2】

【0210】
下記の表5には、比較例1について、及び、調製1〜15から作製された選択実施例について、汚れ洗浄レベル試験の結果をまとめる。
【表8】

【0211】
下記の表6には、調製16〜19から作製された実施例について、スチールウール試験の結果をまとめる。全ての実施例について、スチールウール試験の前及び後で、インク反発性試験評価が1であった。スチールウール試験前の接触角値は、2回の測定の平均から得られた。スチールウール試験後の接触角値は、1回の測定から得られた。
【表9】

【0212】
下記の表7には、調製20〜23から作製された実施例について、スチールウール試験の結果をまとめる。全ての実施例について、スチールウール試験の前及び後で、インク反発性試験評価が1であった。スチールウール試験前の接触角値は、2回の測定の平均から得られた。スチールウール試験後の接触角値は、1回の測定から得られた。
【表10】

【0213】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。本明細書における全ての参照は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ、及び
該レンズ上に配置されたハードコートを含み、
該ハードコートが
a)
i)加水分解性シラン基を含むペルフルオロポリエーテルウレタンと、
ii)少なくとも1つのペルフルオロポリエーテル部分及び少なくとも1つの加水分解性シラン基を含むアクリレートポリマーと、
のうちの少なくとも1つを含む添加剤と、
b)少なくとも50重量%のシルセスキオキサン系ハードコート組成物と、
の反応生成物を含む、レスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項2】
前記レンズと前記ハードコートとの間に配置されたプライマーコーティングを更に含む、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項3】
前記反応生成物が約0.01重量%〜約10重量%の添加剤を含む、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項4】
前記反応生成物が約0.1重量%〜約1重量%の添加剤を含む、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項5】
前記レンズが、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項6】
前記レンズがガラスを含む、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項7】
前記ハードコートが前記ペルフルオロポリエーテルウレタンとシルセスキオキサン系ハードコート組成物との反応生成物を含み、該ペルフルオロポリエーテルウレタンが式
(R−[−R−(R
のペルフルオロポリエーテルウレタンであり、式中、
は、ペルフルオロオキシアルキル基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、x+yの価数を有するポリイソシアネートの残基であり、
は、式:
−NH−C(O)−X1a−Q−(Si(Y)(R3−p
の基であり、式中、
Qは少なくとも2の価数の接続基であり、
1aはO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、1〜4個の炭素原子の低級アルキル、又はQ−(Si(Y)(R3−pであり、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、
qは、1〜6であり、
x及びyはそれぞれ独立に少なくとも1であり、かつ、
zは少なくとも1である、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項8】
前記ハードコートが前記ペルフルオロポリエーテルウレタンと前記シルセスキオキサン系ハードコート組成物との反応生成物を含み、該ペルフルオロポリエーテルウレタンが式
−(NHC(O)XQR,−(NHC(O)X1aQ(Si(Y(R3−p
のペルフルオロポリエーテルウレタンであり、式中、
はマルチイソシアネートの残基であり、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
1aはO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、1〜4個の炭素原子の低級アルキル、又はQ−(Si(Y)(R3−pであり、
は、式F(RfcO)2d−を含む基から構成される一価のペルフルオロポリエーテル部分であり、
式中、
各Rfcは独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基であり、
各wは独立に、少なくとも2の整数であり、かつ、
dは1〜6の整数であり、
Qは独立して少なくとも2の価数の接続基であり、
は−OR及び−OC(O)Rからなる群から選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
mは少なくとも1であり、
nは少なくとも1であり、
pは1、2又は3であり、
qは1〜6であり、
m+nは2〜10であり、かつ、
下付き文字m付きのユニット及び下付き文字n付きのユニットはそれぞれRユニットに結合している、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項9】
Qが直鎖接続基、分枝鎖接続基、環含有接続基、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、アルカリーレン、O、N、若しくはSを含むヘテロ原子、カルボニル若しくはスルホニルを含むヘテロ原子含有官能基、又はこれらの組み合わせを含む、請求項7に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項10】
前記ペルフルオロポリエーテルウレタンが
【化1】

のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項11】
前記ハードコートが前記ペルフルオロポリエーテルウレタンと前記シルセスキオキサン系ハードコート組成物との反応生成物を含み、該ペルフルオロポリエーテルウレタンが式
(R−[−R−(R
の化合物を含み、式中、
はペルフルオロオキシアルキル基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、x+yの価数を有するポリイソシアネートの残基であり、
は、式
【化2】

を有し、式中、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
はアルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせを含む多価の基であり、該アルキレン基は所望により少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含み、
は二価のアルキレン基であり、該アルキレン基は所望により少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含み、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、かつ、
qは、1〜6であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、かつ、
zは少なくとも1である、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項12】
前記ペルフルオロポリエーテルウレタンが
【化3】

を含む、請求項11に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項13】
前記ハードコートが前記ペルフルオロポリエーテルウレタンと前記シルセスキオキサン系ハードコート組成物との反応生成物を含み、該ペルフルオロポリエーテルウレタンが式
(R−[−R−(R
の化合物を含み、式中、
はペルフルオロオキシアルキル基又はペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
は、x+yの価数を有するポリイソシアネートの残基であり、
は、求核性アクリロイル化合物とアミノシランとの間のマイケル反応から誘導されたシラン含有部分であり、
x及びyはそれぞれ独立して少なくとも1であり、かつ、
zは少なくとも1である、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項14】
が、アクリロイル基に対するアミノシランのマイケル付加反応によって誘導され、かつ次式
−(NHC(O)XQX(C(O)CHCH−NR Si(Y)(R3−p
の基であり、式中、
はRSi(Y)(R3−p又はRであり、
Qは少なくとも2の価数の接続基であり、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は−O−又は−S−であり、
は、所望により少なくとも1つのカテナリー酸素原子を含む、アルキレン、アリーレン、又はこれらの組み合わせを含む多価の基であり、
Yは、加水分解性基であり、
は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは1、2又は3であり、
qは1〜6であり、かつ、
nは少なくとも1である、請求項13に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項15】
前記ペルフルオロポリエーテルウレタンが
【化4】

を含む、請求項13に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項16】
前記ハードコートが、アクリレートポリマーとシルセスキオキサン系ハードコート組成物との反応生成物を含み、該アクリレートポリマーが一般式
【化5】

で表わされ、式中、
Xは反応開始剤の残基又は水素であり、
はフッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は非フッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は、式
Si(Y(R3−p
によって表わされるシリル基を有するユニットであり、式中、
は−OR及び−OC(O)Rからなる群から選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、かつ、
pは1、2又は3であり、
Gは連鎖移動剤の残基を含む一価の有機基であり、
iは1〜100の値であり、
jは0〜100の値であり、
kは0〜100の値であり、かつ、
i+j+kは少なくとも2であり、ただし次の条件:
a.Gが、式
Si(Y(R3−p
のシリル基を含む一価の有機基であり、式中、
は−OR及び−OC(O)Rからなる群から選択される加水分解性基であり、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、かつ
pは、1、2、又は3であるという条件と、
b.kは少なくとも1であるという条件と、のうちの少なくとも1つが充足されるものとする、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項17】
前記ハードコートが少なくとも95度の静的水接触角を呈する、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項18】
前記ハードコートが少なくとも100度の静的水接触角を呈する、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項19】
前記ハードコートが少なくとも50度の静的ヘキサデカン接触角を呈する、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項20】
が式
X−Mj1k1−S−Q−OH
の構造から誘導され、式中、
Xは反応開始剤の残基又は水素であり、
は非フッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は、式
Si(Y(R3−p
によって表わされるシリル基を有するユニットであり、式中、
は−OR及び−OC(O)Rからなる群から選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、かつ、
pは1、2又は3であり、
は二価有機連結基であり、
j1は0〜20であり、かつ、
k1は2〜20である、請求項7に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。
【請求項21】
反応性シランアクリレートオリゴマーを有するペルフルオロポリエーテルウレタンが、式
−(NHC(O)XQR,−(O−Q−S−Mj1k1X)
のペルフルオロポリエーテルウレタンであり、式中、
はマルチイソシアネートの残基であり、
はO、S、又はNRであり、式中、RはH、アリール、又は1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は、式F(RfcO)2d−を含む基から構成される一価のペルフルオロポリエーテル部分であり、
式中、
各Rfcは独立して、1〜6個の炭素原子を有するフッ素化アルキレン基であり、
各wは独立して、少なくとも2の整数であり、かつ、
dは1〜6の整数であり、
Qは独立して、少なくとも2の価数の接続基であり、
Xは反応開始剤の残基又は水素であり、
は非フッ素化モノマーから誘導されたユニットであり、
は、式
Si(Y(R3−p
によって表わされるシリル基を有するユニットであり、式中、
は−OR及び−OC(O)Rからなる群から選択される加水分解性基であり、式中、Rは1〜4個の炭素原子の低級アルキルであり、
は一価のアルキル又はアリール基であり、かつ、
pは1、2又は3であり、
は、二価有機連結基であり、
j1は0〜20であり、かつ、
k1は2〜20である、請求項1に記載のレスピレータ、溶接ヘルメット又はフェイスシールド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−534863(P2010−534863A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518248(P2010−518248)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/064315
【国際公開番号】WO2009/014798
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】