説明

低軌道衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法

地球上空を周回する複数(S)個の低軌道の衛星を一定間隔でリング状に配置した衛星軌道面を,衛星間で衝突が発生しない所定の軌道傾斜角を持って経度方向に一定の間隔を置いて複数(P)個配置し,各衛星は同一衛星軌道面を構成する隣接する衛星と順次光リンクにより接続したネットワークを構成すると共に,各衛星は先行する隣接軌道面の各衛星に対し位相差係数(F)を持って配置され,各衛星は,東側に隣接する衛星軌道面の衛星との軌道面間接続で,自衛星軌道面内の衛星番号nより1少ない衛星番号n−1の衛星へ接続して8字型のリング状のネットワークを形成し,各衛星軌道面内のネットワークと衛星軌道面間接続のネットワークによりマンハッタンストリートネットワークを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は,低軌道(LEO:Low Earth Orbit)衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法に関する。
【背景技術】
第10図は衛星コンステレーション(配列)の種類を示す図であり,衛星の軌道を地球の回転軸延長上の北極側から俯瞰した場合の構造であり,Aはπコンステレーションを示し,従来の低軌道衛星群を用いて全地球をカバーする衛星通信システムとして知られているイリジウムシステムで採用されている。具体的には,イリジウムシステムでは,地球上を周回する軌道面配置を地球の経度方向180度を6軌道面で分割して,各軌道面を構成するリングに複数の衛星が配置され各軌道上を周回移動する方法を採用している。そして,各衛星間は電波を用いて数拾M(メガ)bpsの速度の通信が行われている。なお,各衛星は地球上の携帯端末と通信を行う。このAのπコンステレーションの方法では,隣接軌道の衛星が経度180度おきに逆方向(各軌道上の衛星は一方の面では南下するが地球の反対側では北上する)に移動するシーム(Seam)があり,隣接する軌道の衛星間通信は不可能である。
第10図のBは2πコンステレーションを示し,地球の経度方向360度を軌道面数で分割する方法であり,各衛星軌道は軌道傾斜角に沿って,各衛星はそれぞれの軌道を周回している。この2πコンステレーションはグローバルスターシステムで採用されている。この方法では,隣接軌道上を同一方向に進行する衛星との衛星間通信は可能であり,地表面を均一にカバーすることができる。
この2πコンステレーションを採用する次世代低軌道(次世代LEO)システムの研究が進められており,電子情報通信学会論文誌B,Vol.J84−B No.6 pp963−972(2001年6月)に開示されている。その中で,次世代LEOシステムにおける軌道選定の条件として,次の点を考慮することが記載されている。
(1)サービスエリアは,南北の両極域を除く地球表面をサービスエリアとする。
(2)バンアレン帯について,衛星に搭載する半導体の放射線耐量を5×10とし,衛星高度を1200Kmとする。
(3)衛星高度は,仰角10度以上での可視衛星数2個以上とする。
(4)最低仰角は,南緯70度から北緯70度の範囲で20度以上とする。
(5)衛星間通信と軌道の関係は,衛星間通信ネットワークの制御を簡単化するためシームのない傾斜軌道と2πコンステレーションの組み合わせを用い,2πコンステレーションで衛星間通信の距離を考慮し,衛星間通信距離を5000Km以内とする。
これらの諸条件を考慮して,上記文献の次世代LEOシステムとして提案されている軌道パラメータは次のように設定されている。
総衛星数 120個
軌道面数 10面
同一軌道面内の衛星数 12個
衛星の軌道高度 1,200Km
軌道離心率 0:円軌道
衛星軌道周期 109.4分
各軌道面の軌道傾斜角 55度
隣接軌道面の昇交点赤経角度差 36度
隣接軌道面の衛星の中心角位相差 3度
また,軌道面間隣接衛星の相対方向は,衛星のYaw軸方向を仰角で直下方向,Roll軸方向を方位角0度方向として表すと,方位角で−55〜+55度,仰角で−11〜−19度となる。相対距離の変動範囲は3,000〜5,000Kmに維持される。従って,隣接軌道面間の衛星通信用アンテナの指向方向は方位角方向で120度程度,仰角方向(地上から衛星を見る角度)で10度の制御範囲が実現できる。
第11図は提案された次世代LEOシステムの概念を示す。このシステムでは複数の低軌道衛星を用いたネットワークを構築し,地球上の任意の地点間で携帯型の各種端末(携帯電話,通信機能を持つパーソナルコンピュータ,通信機能を持つビデオカメラ等)とのマルチメディア通信を衛星ネットワーク経由で提供する。図中,10a1,10a2,10b1,10b2……は衛星を表し,11a1,11a2,…,11b1,11b2,…,11ab1,11ab2,…は衛星間光リンク(Optical ISL(Inter Satellite Link))を表し,12は各衛星と地球上の端末と通信を行うためのスポットビーム(Spot Beam),13は地球上の端末であり,端末として,携帯電話,パーソナルコンピュータ,ビデオカメラ,PDA等がある。
第11図では,複数の衛星10a1,10a2により軌道aの軌道面内の衛星を構成し,衛星10b1〜10b3は隣接する他の軌道bの軌道面内の衛星を構成し,各軌道面の衛星はそれぞれの軌道に沿って地球上空を周回する。各衛星は同一軌道面内の衛星間光リンク及び隣接する軌道の衛星との軌道面間光リンクにより双方向の通信リンクが形成され,11a1,11a2,11a3,11a4は軌道aの軌道面内リンク,11b1,11b2,11b3は軌道bの軌道内リンクを構成し,11ab1,11ab2は軌道面間リンクである。地球上の端末13は,一定の仰角の範囲に含まれる衛星との間で通信を行い,他の地域の相手端末とは相手端末と通信が可能な衛星と,中継を行う衛星との衛星間通信リンクを介して双方向の通信を行う。
第12図は提案された衛星の概略のブロック構成を示す。衛星間の光通信を行うための光アンテナ20a〜20dが設けられ,光ISL接続に使用する。すなわち,この中の2つの光アンテナは軌道内の隣接する2つの衛星との通信用であり,他の2つの光アンテナは隣接する2つの軌道に属する2つの衛星との通信用である。この光アンテナは隣接する衛星との距離は3000Km〜5000Km程度離れており,そのために光アンテナの精密指向制御技術と光変復調技術の開発が行われている。具体的な例としては,前面1平面鏡駆動方式を改良したアクティブユニバーサルジョイント(AUJ)方式の光アンテナが作成されており,AUJ方式では,前面鏡のEI方向の角度制御のためにAz軸とα度傾いた回転軸を制御する。衛星間の光通信では10Gbps程度の伝送が可能である。
また,光モデム21は送信光の変調,受信光の復調を行い,セルベーススイッチ22はATM(Asynchronous Transfer Mode),IP(Internet Protocol),MPLS(Multiprotocol Label Switching)等の各種プロトコルに対応したセルベースの信号を衛星間の光ISLの光アンテナに対応した信号とユーザリンクの信号との相互のスイッチングを行う機構である。マルチポートモデム23はユーザリンクに対応した信号形式と衛星間リンクの信号形式との相互変換を行う機構であり,ディジタル・ビーム・フォーミング回路24は,アンテナ高周波(RF)回路25からの信号をマルチポートモデム23へ変換し,マルチポートモデム23からの信号を個別のユーザへの信号に変換する回路である。また,アンテナ・高周波回路25は,地上の個別の地点の端末に対しアンテナから地上固定走査スポットビームを送信すると共に端末から送信した高周波信号を受信したアンテナからの信号を受信する。第13図は次世代低軌道システムとして提案された軌道パラメータによる衛星配置と衛星間通信接続構成である。第13図のAは同一軌道面内衛星間通信(Intra−Plane ISL(Inter Satelite Link))の構成を示し,第13図のBは衛星配置と隣接軌道間衛星間通信(Inter−Plane ISL)の構成を示す。
両図において,黒点は衛星を表し,縦軸は緯度(Latitude(deg.)で表示)を表し,この例では北緯60〜南緯60(−60)の範囲で衛星が周回していることを表し,横軸は経度(Longitude(deg.)で表示)を表し,0,60,90,…330,0,の各経度(東経,西経ではなく,0〜360度で表す)に対応する数字が示されている。
図13のAの場合,一つ衛星軌道面は一定の軌道傾斜角を持った軌道上の12個の衛星により構成され,このような衛星軌道面が経度上に一定間隔をおいて10個配置されている。各衛星軌道面上の12個の衛星は点線で示すように隣接衛星間が双方向の通信を行うためのリンクにより順番に接続されてリング状のネットワークを構成する。第13図のBは隣接軌道間衛星間の通信構成を示し,各衛星は隣接する両方の衛星軌道面の衛星と一定の位相差があり(軌道面間衛星中心角位相差は3度:360度/120(全衛星数)=3度に基づく),隣接する軌道面の衛星を順次接続すると,らせん型の接続となって,地球を複数回巡る経路により,全衛星(12×10=120)がリング状に接続されている。
上記第13図のAのネットワークにより同一軌道面内の衛星間の通信が形成され,第13図のBのネットワークにより隣接軌道間衛星間の通信が形成され,これらの両方のネットワークにより全ての衛星間での通信が形成されるが,このような通信ネットワークをマンハッタンストリートネットワークと呼ばれる。 第14図はコンステレーションを構成する衛星間距離を示す。衛星コンステレーションにおいて,衛星の衝突を避けるために衛星の位相角パラメータFを適切に選定する必要があり,次世代低軌道衛星システムの軌道面数(P=10)及び軌道面内衛星数(S=12)では,軌道面間の位相差を0にすると赤道道上で交差する軌道面の衛星が衝突する可能性がある。第14図のAに衛星周回における他衛星との相対距離変動を示す。軌道位相0度と180度のところで,昇交点経度が180度異なる軌道面の衛星と接近する。また,ここに示すように軌道位相30,150,210及び330度のところでも他の衛星に接近しているが,この接近は軌道傾斜角を変更することで避けることができる。
また,第14図のBはコンステレーションを構成する衛星間距離を示す。これは,F=1とした場合の衛星間距離を示す。この場合,120個の衛星が数100km以下に接近することはなく安全である。
一方,衛星通信システムの技術において,動的な衛星配列を備え,軌道面を移動する多数の低軌道衛星を含み,各衛星はそれぞれ独立して自主的に隣接する衛星の位置を識別してスイッチを行うと共に地上からの制御を受けることなく独立に通信量を操作する機能を備え,更に各衛星は携帯可能,移動可能なユーザ及び固定無線端末及びスイッチできる公衆電話ネットワークのユーザへゲートウェイを介して直接呼を搬送することができ,配列された衛星間の直接通信を提供し,軽量で携帯型の電話機を使用した個別の通信を提供する技術が,WO 93/09613号公報に開示されている。
【発明の開示】
上記第13図のA及びBに示す従来の周回衛星によるマンハッタンストリート通信ネットワークによると,南北に分布するエリア(地域)に位置するユーザ間の通信を行う場合,上記第13図に示すように南北のエリアの一方に属する地上のユーザ端末からの信号は,そのエリアの上空の衛星と通信が行われ,その衛星は少しずつ上方(北方向)または下方(南方向)にらせん型の衛星軌道面の軌道内の通信を介し,南北のエリアの他方のエリアに属する相手ユーザ端末と通信を行う他の衛星軌道面の何れかの衛星と軌道面間通信により通信を行う必要があるので,その経路選択の制御が複雑になるという問題があり,伝送距離も長くなるため伝送遅延が大きいという問題もある。
本発明は上記の問題を解決し,南北に分布するエリアに位置するユーザ間の通信リンクの形成を簡単に実現すると共に遅延時間を少なくすることができる低軌道周回衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法を提供することを目的とする。
本発明は,衛星軌道面数(P)と軌道内の衛星数(S)及び位相差係数(F)のパラメータについて,接近,衝突を防止する条件に適合するパラメータを用い,P個の衛星軌道面は同じ軌道傾斜角を備え,その角度はサービスエリアの最大緯度に対応して変化し,45度〜70度の範囲であり,仰角についても接近,衝突を回避する数値を備え,軌道面間の回線接続は,各軌道面内の衛星に南端から北端へ順番に1,2,……と番号を付与した場合,軌道面上のn番目の衛星を東側に隣接する軌道面上のn−1番目の衛星に順に回線接続することでリング接続を形成し,全ての軌道面のそれぞれを構成する各衛星について順番に回線接続を行うことで,地球上のほぼ同じ経度の南北のエリアを8の字型で結ぶリング接続が衛星軌道面の個数分形成することを原理とする。
第1図は本発明による衛星軌道面間の衛星接続の構成例である。図中,縦軸は地球の緯度,横軸は地球の経度を表し,黒丸は衛星,黒丸の間を接続する実線は衛星軌道面間の双方向の回線接続を表し,3−1〜3−11は本発明により衛星軌道面間の衛星接続により形成される複数の8の字型のネットワーク,F−11,G−10,H−9,……,D−2,E−1は8の字型のネットワーク3−11を構成する衛星を表す。
第1図の構成例は,衛星軌道面数P=11,軌道面内衛星数S=11,位相差係数F=0の場合である。P個(11個)の各衛星は低軌道周回型であり,同一軌道面内の複数(S=11)の衛星を順番に接続する軌道内のリング接続のネットワークが形成されるが(第1図では省略),第1図に示すような衛星軌道面間を接続するネットワークが同時に形成され,第2図に衛星軌道面間の回線接続の論理構造を示す。
衛星軌道面間の回線接続は,P個(11個)の衛星軌道上の各衛星(S=11個)はその位置(n)に対し,右側に隣接する軌道(東側に隣接する軌道)の1段下の位置(n−1)の衛星に接続し,その衛星から更に右側に隣接する衛星軌道上の1段下の位置に接続して,以下順番に同様の接続をして最後に同じ元の衛星に戻って,8の字型のリング接続のネットワークが一つの軌道面内の衛星の個数分(S個)形成される。第1図には,11個の衛星軌道面に対してA,B,C,…,J,Kと符号が付けられ(第2図参照),各衛星軌道面内の衛星に対してある時点における同一軌道内の南北方向の一方の端に位置する衛星に番号1を付与し,他方の端に位置する衛星に番号11が付与された場合(第2図を参照すると各番号が丸の中の1〜11の番号で示す)の,衛星軌道面間の衛星接続の8の字型のネットワークを示す。
第1図の8の字型ネットワーク3−11は,衛星F−11(衛星軌道面Fの11番の衛星)から衛星G−10(衛星軌道面Gの10番の衛星)へ接続し,更に衛星H−9,衛星I−8,衛星J−7,衛星K−6,衛星A−5,衛星B−4,衛星C−3,衛星D−2,衛星E−1と順次接続されて地球を一回りし,衛星E−1から衛星F−11に接続してリング接続が形成される。他の8の字型ネットワーク3−1〜3−10についても同様の原理で形成される。
このように,8の字型のリング接続により,南北のエリアの端末間での通信を簡単に構成することができる。
なお,各衛星には同一軌道内の隣接する衛星との双方向の通信と,隣接する軌道の衛星との双方向の通信及び地上の端末との双方向の通信の機能を備えると共に,衛星から及び衛星への信号,端末から及び端末への信号のスイッチング機能や変復調の機能を備えている。
第2図は第1図の構成例における衛星間通信回線の論理構造を示す。図中,A〜Kは11個の衛星軌道であり,各軌道内の11個の衛星が○の中の数字1〜11で表される。第2図では,衛星軌道Fの最上段(北端)の11番の衛星についての衛星間のリング接続だけ太線により表示し,他の衛星についての軌道間接続及び各衛星軌道内のリング接続(垂直方向)も示されている。この第2図では各衛星軌道が垂直方向に描かれているが,実際には各衛星軌道は,上記第11図(従来例の図)に示すように軌道傾斜角だけ傾いているため,軌道間を接続するリングは上記第1図に示すように南北間を結ぶ8の字型になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明による衛星軌道面間の衛星接続の構成例を示す図である。
第2図は第1図の構成例における衛星間通信回線の論理構造を示す図である。
第3図は軌道面間衛星間接続がn→n−1の場合の配列を示す図である。
第4図はP>Sの場合の軌道面間接続構成を示す図である。
第5図はP<Sの場合の軌道面間接続構成を示す図である。
第6図はマンハッタンストリートネットワークとなるP,S,Fの組合せの例を示す図である。
第7図は衛星の接近,衝突のないマンハッタンストリートネットワーク構造となる各パラメータの組合せの例を示す図である。
第8図は軌道面間衛星間接続構成(P=11,S=12,F=−1の場合)を示す図である。
第9図は軌道面間衛星間接続構成(P=9,S=11,F=−2の場合)を示す図である。
第10図は衛星コンステレーションの種類を示す図である。
第11図は提案された次世代LEOシステムの概念を示す図である。
第12図は提案された衛星の概略のブロック構成を示す図である。
第13図は次世代低軌道システムとして提案された軌道パラメータによる衛星配置と衛星間通信接続構成を示す図である。
第14図はコンステレーションを構成する衛星間距離を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
第3図は軌道面間衛星間接続がn→n−1の場合の配列を示す。図中,Pは軌道面数,Sは軌道面内衛星数,Fは位相差係数(360度/(P×S)を単位とする整数)とすると,縦を同一軌道面内の衛星の列,横方向に軌道面間接続の衛星を配置し,軌道面間接続経路は第3図のようになる。図中,jは0,…,P−1の数である軌道面の番号を表し,kは0,…,S−1の数である軌道面内衛星の番号を表す。なお,第3図の配列は,−P/2<F<P/2という条件の場合である。
第3図について斜め方向の接続配置を横方向に整列して書き直すと,第4図及び第5図のような配置となる。
第4図はP>Sの場合の軌道面間接続構成を示す。第4図の縦方向に配置された(0,S−1)〜(0,0),(1,S−2)〜(1,S−1),……,(P−1,2S−P)〜(P−1,2S−P+1)は,それぞれ1,2,…Pの番号が付与されたP個の各衛星軌道面のそれぞれを構成する衛星軌道面内のS個の衛星を表し,全体はP×S個の衛星で構成される。第4図の軌道面Pの衛星は,右端に示す衛星番号に相当する軌道面1の衛星に接続される。一方,逆に軌道面1の衛星は,左端に示す衛星番号に相当する軌道面Pの衛星に接続されることも示す。
第5図はP<Sの場合の軌道面間接続構成を示す。この場合も,上記第4図と同様に図の右端の各衛星は左端の縦方向に配列された各衛星の同じ番号と接続される。
上記第4図,第5図において,衛星軌道面数をP,軌道面内衛星数をS,位相差係数をF,というパラメータを用いて,マンハッタンストリートネットワーク構造となる条件は,右端と左端が同じ行に接続されることになるので,第4図,第5図の(k+1)行に着目すると,双方とも次の式になる。
(0,mod(S−P+k+F,S))=k
従って,S−P+k+F<Sの条件では,
S−P+k+F=kであるため,S−P+F=0となる。
なお,S=Pの場合はマンハッタンストリート構造となることは第2図に示す通り明らかであるので,任意のP,Sについて上記の式が適用できる。
第6図はマンハッタンストリートネットワークとなるP,S,Fの組合せの例を示す。
この第6図の組合せにおいても,パラメータの組合せによって,衛星が接近,衝突する条件があり,以下のようになる。
衛星赤道と交差する点で他の軌道面の衛星と接近する条件は,(1),(2)のようになる。
(1)軌道面数Pが奇数の場合,昇交点経度が180度異なる軌道面が存在しないので軌道位置180度での衛星接近はない。
(2)軌道面数Pが遇数の場合,昇交点経度が180度異なる軌道面が存在するので,
a.軌道面内衛星数Sが奇数でFが奇数の時,接近条件となる。
b.軌道面内衛星数Sが偶数でFが偶数の時,接近条件となる。
すなわち,第6図において,Pが偶数の場合は全てのFで衛星衝突の可能性があるため,このパラメータを使用することはできない。この結果,衛星の接近,衝突のないマンハッタンストリートネットワーク構造となる各パラメータの組合せの例は第7図に示される。
第7図に示すように,軌道面数Pが偶数の条件では成立しないので,マンハッタンストリートネットワーク構造で,衛星軌道面の数Pが奇数(7,9,11,13)に対し,軌道面内の衛星数Sの各数(6〜13)について,Fの値として図に示す各値を用いることで衝突を避けることができる。
上記第1図に示す構成例は,P=11,S=11,F=0の場合に相当する。
第8図は軌道面間衛星間接続構成(P=11,S=12,F=−1の場合)を示し,軌道傾斜角I=57.9度である。第8図のAは同一軌道面内衛星間接続の場合であり,軌道傾斜角を持つ11個のリング接続が形成される。第8図のBはnを各衛星軌道面内の衛星番号とすると,隣接軌道面間衛星間接続(n→n−1)であり,本発明により緯度方向に11衛星で構成される8の字型のリング接続が経度方向に12個並ぶ構造となっている。すなわち,同一軌道面内衛星間接続のリングと合わせて,双方向マンハッタンストリートネットワーク構造となる。
第9図は軌道面間衛星間接続構成(P=9,S=11,F=−2の場合)を示し,軌道傾斜角1=54.9度である。第9図のAは同一軌道面内衛星間接続を示し,9つの軌道面内のリング接続が形成される。第9図のBは隣接軌道面間接続構成であり,緯度方向に9衛星で構成される8の字型のリング接続が経度方向に11個ならぶ構造となっている。これらのAに示す同一軌道内衛星間接続と,Bに示す隣接軌道面間衛星間接続(n→n−1接続)を示す。
上記第1図,第8図及び第9図に示す本発明による隣接軌道面間の衛星間を8の字型のリング接続を用い,各軌道面内のリング接続との組合せによりマンハッタンストリートネットワーク構造が実現される。具体的に各衛星は,同一軌道面内の隣接する衛星及び両隣の隣接軌道面の上記8の字型のリングを形成する2つの衛星との光リンクにより双方向の通信リンクが形成され,衛星間の通信及び地上の端末との通信接続が実行される。
【産業上の利用可能性】
本発明によれば,地球上の同じ経度の範囲に含まれる南北のエリアの間の通信が短いルートで形成することができ,接続のための制御を簡単化でき,伝送の遅延時間を減少することができ,携帯端末等の音声,画像,データ等のマルチメディアの南北のエリア間で効率的に提供することが可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低軌道衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法であって,
地球上空を周回する複数(S)個の衛星を一定間隔をおいて順次リング状に配置した衛星軌道面を,衛星間で衝突が発生しない所定の軌道傾斜角を持って経度方向に一定の間隔を置いて複数(P)個配置し,
衛星軌道面の各衛星は,先行する隣接衛星軌道面の各衛星に対して位相差(F:360度/(P×S)を単位とする整数)を持って配置し,
各衛星は,同一衛星軌道面を構成する隣接する衛星間を双方向で通信する光リンクにより順次接続したリング状のネットワークを構成すると共に,各衛星は,東側に隣接する衛星軌道面の衛星との軌道面間接続において,自衛星軌道面内の衛星番号(n)より1少ない衛星番号(n−1)の衛星と双方向で通信する光リンクで接続して8の字型のリング状のネットワークをS個形成し,
前記各衛星軌道面内のネットワークと前記各衛星軌道面間のネットワークとによりマンハッタンストリートネットワークを構成することを特徴とする低軌道衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法。
【請求項2】
請求の範囲第1項の記載において,
衛星の接近・衝突を避けるため前記衛星軌道面の数(P)と前記軌道面内衛星の数(S)について,
P=2n+1(nは自然数)
S−P+F=0
の条件を満たす位相差係数(F)を使用することを特徴とする低軌道衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法。
【請求項3】
請求の範囲第1項の記載において,
前記軌道傾斜角は45度〜70度の範囲とすることを特徴とする低軌道衛星によるマンハッタンストリートネットワークの構成方法。

【国際公開番号】WO2005/083903
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510357(P2006−510357)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002337
【国際出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(301022471)独立行政法人情報通信研究機構 (1,071)
【Fターム(参考)】