説明

低Co水素吸蔵合金

Coの含有率が極めて低く、かつ出力特性(特にパルス放電特性)、活性(活性度)及び寿命特性を高水準に維持可能な水素吸蔵合金を提供せんとする。一般式MmNiMnAlCo又はMmNiMnAlCoFeで表される合金組成となるように、各水素吸蔵合金原料を秤量、混合した上で、結晶格子のa軸長及びc軸長がともに所定範囲になるように製造方法及び製造条件を調整して水素吸蔵合金を製造する。結晶格子のa軸長は499pm以上、c軸長は405pm以上であればよいが、ABxの値によってa軸長及びc軸長を更に細かく規定することにより、高耐久性を備えた水素吸蔵合金にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CaCu型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金に関し、詳しくは合金中のコバルトの含有割合が極めて少なく、それでいて電気自動車及びハイブリッド自動車用途等で特に要求される出力特性、活性、寿命特性を備えた低Co水素吸蔵合金に関する。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金は、水素と反応して金属水素化物となる合金であり、室温付近で多量の水素を可逆的に吸蔵・放出するため、ハイブリッド自動車やデジタルスチルカメラに搭載されるニッケル・水素電池等、様々な分野で実用化が研究されている。
【0003】
水素吸蔵合金としては、LaNiに代表されるAB型合金、ZrV0.4Ni1.5に代表されるAB型合金、そのほかAB型合金やAB型合金など様々な合金が知られている。その多くは、水素との親和性が高く水素吸蔵量の多い元素グループ(Ca、Mg、希土類元素、Ti、Zr、V、Nb、Pt、Pdなど)と、水素との親和性が比較的低く吸蔵量は少ないが、水素化反応が速く反応温度を低くする元素グループ(Ni、Mn、Cr、Feなど)との組合せで構成される。いずれの型の合金も、組成によって特性が大きく変るため、最大水素吸蔵量及び有効水素吸蔵量の向上(高容量化)、長寿命化、高出力化などを目的として様々な合金組成が研究されている。
【0004】
本発明者らの研究グループは、中でもCaCu型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金、詳しくはAサイトに希土類系の混合物であるMm(ミッシュメタル)を用い、BサイトにNi、Al、Mn、Coの4元素を用いてなるMm−Ni−Mn−Al−Co合金に着目し研究を進めてきた。この種のMm−Ni−Mn−Al−Co合金は、La系の合金に比べて比較的安価な材料で負極を構成でき、しかもサイクル寿命が長く、過充電時の発生ガスによる内圧上昇が少ない密閉型ニッケル水素蓄電池を得ることができるなどの特徴を備えている。
【0005】
ところで、Mm−Ni−Mn−Al−Co合金の構成元素において、Coは合金の微粉化を抑制し、寿命特性の向上に効果を発揮する重要な元素であったため、従来は10重量%程度のCo(モル比で0.6〜1.0)が配合するのが一般的であった。しかし、Coは非常に高価な金属であり、今後の水素吸蔵合金の利用拡大を考慮するとCoを低減することが好ましいが、Coを低減すれば出力特性や寿命特性の低下につながるため、出力特性及び寿命特性を維持しつつCoを低減することが研究課題であった。特に電気自動車(EV:Electric Vehicle)及びハイブリッド自動車(HEV:HybridElectricVehicle;電気モータと内燃エンジンという2つの動力源を併用した自動車)用電源等への利用開発を進めるには、出力特性及び寿命特性を高水準に維持することが必須の課題であった。
【0006】
かかる課題に鑑み、Co量を低減しつつ、それでいて電池特性を維持するための提案が種々開示されている。
例えば、特許文献1(特開平9−213319号)は、Mm−Ni−Mn−Al−Co系合金の組成を変化させ、これにさらに少量の1元素を加えることを提案している。
【0007】
また、特許文献2(特開2002−294373)は、従来のCo量が多い合金に比して安価で、リサイクル性も考慮しうる二次電池用負極用水素吸蔵合金を提供すべく、式(1)の組成を有し、実質的に単相で、かつ結晶の平均長径が30〜160μm、若しくは5μm〜30μm未満である水素吸蔵合金を提案している。
RNiCo…(1)(R:希土類元素等、M:Mg、Al、Mn等、3.7≦x≦5.3、0.1≦y≦0.5、0.1≦z≦1.0、5.1≦x+y+z≦5.5)
【0008】
また、本発明者が属する研究グループも、例えば特許文献3(特開2001−18176)において、コバルトの含有割合を少なくすることと同時に水素吸蔵特性に優れ、微粉化特性や良好な初期特性や出力特性を有し、しかも耐久性や保存性について高い信頼性を有する水素吸蔵合金として、一般式MmNia Mnb Coc Cud(式中、Mmはミッシュメタル、3.7≦a≦4.2、0.3<b≦0.6、0.2≦c≦0.4、0<d≦0.4、5.00≦a+b+c+d≦5.35)で表されるCaCu型の結晶構造を有する水素吸蔵合金を提案し、
特許文献4(特開2001−40442)においては、コバルトの含有割合を少なくすることと同時に水素吸蔵特性に優れると共に、微粉化特性や良好な初期特性や出力特性を有し、しかも耐久性や保存性について高い信頼性を有する水素吸蔵合金として、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、XはFe及び/又はCu、3.7≦a≦4.2、0≦b≦0.3、0≦c≦0.4、0.2≦d≦0.4、0≦e≦0.4、5.00≦a+b+c+d+e≦5.20、但しb=c=0の場合を除く、また0<b≦0.3、かつ0<c≦0.4の場合は、b+c<0.5である)で表されるCaCu型の結晶構造を有する水素吸蔵合金を提案し、
特許文献5(特開2001−348636)においては、コバルトの含有割合を極めて少なくすることによって製造コストを低減し、かつ微粉化特性及び水素吸蔵特性に優れると共に、良好な出力特性及び保存特性を有する水素吸蔵合金として、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、4.1<a≦4.3、0.4<b≦0.6、0.2≦c≦0.4、0.1≦d≦0.4、5.2≦a+b+c+d≦5.45)もしくは一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、XはCu及び/又はFe、4.1<a≦4.3、0.4<b≦0.6、0.2≦c≦0.4、0.1≦d≦0.4、0<e≦0.1、5.2≦a+b+c+d+e≦5.45)で表されるCaCu5型の結晶構造を有するAB型水素吸蔵合金であって、c軸の格子長が406.2pm以上であることを特徴とする水素吸蔵合金を提案している。
【0009】
【特許文献1】特開平9−213319
【特許文献2】特開2002−294373
【特許文献3】特開2001−18176
【特許文献4】特開2001−40442
【特許文献5】特開2001−348636
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、本発明者が属する研究グループは、以前に低Co組成の水素吸蔵合金であってもc軸の格子長を所定の範囲に制御することにより電池の寿命特性を維持できることを提案したが、次世代電気自動車及びハイブリッド自動車のための開発を進めるうち、Coをさらに低減し、かつ出力特性(特にパルス放電特性)、活性(活性度)及び寿命特性を高水準に維持するためには「c軸の格子長を制御する」という発想では限界があることが分かってきた。
そこで本発明の目的は、Coの含有率を更に低い水準まで低減させたとしても、出力特性(特にパルス放電特性)、活性(活性度)及び寿命特性を高水準にすることができる低Co水素吸蔵合金を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題に鑑み本発明者が鋭意研究を重ねた結果、一般式MmNiMnAlCoで示される合金の組成において、Coの組成割合(モル比)を0.35以下に低減させた場合であっても、水素触媒能を備えたNiの組成割合(モル比)を4.0以上に高め、かつMnの組成割合(モル比)が所定範囲に入るように合金組成を調整した上で、結晶格子のa軸長、c軸長がともに一定範囲に入るように製造条件を制御することにより、出力特性(特にパルス放電特性)、活性(活性度)及び寿命特性をいずれも高水準にすることができることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を想到したものである。また、一般式MmNiMnAlCoFeで示される合金の組成についても、ほぼ同様或いはそれ以上好ましい結果が得られることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を想到したものである。
【0012】
本発明は、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、5.2≦a+b+c+d≦5.5)又は一般式MmNiMnAlCoFe(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、0<e≦0.11、5.2≦a+b+c+d+e≦5.5)で表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金であって、当該CaCu型結晶構造の結晶格子のa軸長が499pm以上であり、かつc軸長が405pm以上であることを特徴とする低Co水素吸蔵合金を提案するものである。
【0013】
このようにMmNiMnAlCo(4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、5.2≦a+b+c+d≦5.5)又は一般式MmNiMnAlCoFe(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、0<e≦0.11、5.2≦a+b+c+d+e≦5.5)で表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金であって、結晶格子のa軸長が499pm以上であり、かつc軸長が405pm以上の範囲にある低Co水素吸蔵合金であれば、Coの含有率を従来より更に低い水準まで低減させたとしても、出力特性(特にパルス放電特性)、活性(活性度)及び寿命特性をいずれも高水準にすることができる。具体的には、電気自動車及びハイブリッド自動車用途(具体的には電気自動車及びハイブリッド自動車に搭載される電池の負極活物質)に要求される程度にCo量を低減でき、しかも寿命特性を維持でき、かつ活性度を80%以上に向上させることができる。
【0014】
なお、本発明において「結晶格子のa軸長及びc軸長」は、インゴット状の水素吸蔵合金を粉砕、分級して−20μm(20μmφの篩目を通過する粒子径)に調整した合金粉を、粉末X線回折装置を使用し、CuKα線により1°/minの走査速度、100−150°の角度で測定し、誤差関数測定法(wilson&pike法)により格子定数の精密化を行った上で算出した値であり、本発明で特定するa軸長及びc軸長の値には±0.1pmのばらつきが含まれる。尚、精密化するのに使用したピークは以下の通りである。
・100〜104°付近にあるミラー指数(303)で指数付けされるピーク。
・105〜106°付近にあるミラー指数(321)で指数付けされるピーク。
・106〜107°付近にあるミラー指数(402)で指数付けされるピーク。
・110〜114°付近にあるミラー指数(411)で指数付けされるピーク。
・116〜118°付近にあるミラー指数(313)で指数付けされるピーク。
・126〜129°付近にあるミラー指数(412)で指数付けされるピーク。
・129〜132°付近にあるミラー指数(501)で指数付けされるピーク。
・139〜142°付近にあるミラー指数(331)で指数付けされるピーク。
また、本発明が特定する数値範囲の上限値及び下限値は、特定する数値範囲から僅かに外れる場合であっても、当該数値範囲内と同様の作用効果を備えている限り本発明の範囲に含まる意を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
[図1]サンプル1〜30を、横軸:a軸長、縦軸:c軸長からなる座標中にプロットした図である。
[図2]サンプル1〜30をMn割合(モル比)で区分し、各Mn割合毎、Alの割合(横軸)とa軸長(縦軸)との関係をプロットした図である。
[図3]サンプル1〜30をMn割合(モル比)で区分し、各Mn割合毎、Alの割合(横軸)とc軸長(縦軸)との関係をプロットした図である。
[図4]サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)が0.35のサンプル26(Ni4.50Mn0.35Al0.35Co0.10)を抽出し、このサンプルのMmの割合(モル比)を変えてABx5.20〜5.40の合金を作製し、得られた合金のABx(横軸)とa軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図5]図4と同じ合金のABx(横軸)とc軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図6]サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)が0.40のサンプル9(Ni4.45Mn0.40Al0.35Co0.10)を抽出し、このサンプルのMmの割合(モル比)を変えてABxABx5.20〜5.40の合金を作製し、得られた合金のABx(横軸)とa軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図7]図6と同じ合金のABx(横軸)とc軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図8]サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)が0.45のサンプル14(Ni4.40Mn0.45Al0.35Co0.10)を抽出し、このサンプルのMmの割合(モル比)を変えてABxABx5.20〜5.40の合金を作製し、得られた合金のABx(横軸)とa軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図9]図8と同じ合金のABx(横軸)とc軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図10]サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)が0.50のサンプル22(Ni4.35Mn0.50Al0.35Co0.10)を抽出し、このサンプルのMmの割合(モル比)を変えてABx5.20〜5.40の合金を作製し、得られた合金のABx(横軸)とa軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図11]図10と同じ合金のABx(横軸)とc軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図12]サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)が0.55のサンプル6(Ni4.30Mn0.55Al0.35Co0.10)を抽出し、このサンプルのMmの割合(モル比)を変えてABxABx5.20〜5.40の合金を作製し、得られた合金のABx(横軸)とa軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図13]図12と同じ合金のABx(横軸)とc軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図14]サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)が0.60のサンプル10(Ni4.25Mn0.60Al0.35Co0.10)を抽出し、このサンプルのMmの割合(モル比)を変えてABxABx5.20〜5.40の合金を作製し、得られた合金のABx(横軸)とa軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図15]図14と同じ合金のABx(横軸)とc軸長(縦軸)との関係を示した図である。
[図16]図4と同じ合金のABx(横軸)と、50サイクル後の微粉化残存率(縦軸)との関係を示した図である。
[図17]図6と同じ合金のABx(横軸)と、50サイクル後の微粉化残存率(縦軸)との関係を示した図である。
[図18]図8と同じ合金のABx(横軸)と、50サイクル後の微粉化残存率(縦軸)との関係を示した図である。
[図19]図10と同じ合金のABx(横軸)と、50サイクル後の微粉化残存率(縦軸)との関係を示した図である。
[図20]図12と同じ合金のABx(横軸)と、50サイクル後の微粉化残存率(縦軸)との関係を示した図である。
[図21]図14と同じ合金のABx(横軸)と、50サイクル後の微粉化残存率(縦軸)との関係を示した図である。
[図22]縦軸:c軸長、横軸:a軸長からなる座標中に、5.20≦ABx(a+b+c+d)<5.25のサンプルをプロットし、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となる領域を示した図である(但し、この図中には50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となるものが存在しないので、領域は示されていない)。
[図23]縦軸:c軸長、横軸:a軸長からなる座標中に、5.25≦ABx(a+b+c+d)<5.30のサンプルをプロットし、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となる領域を示した図である。
[図24]縦軸:c軸長、横軸:a軸長からなる座標中に、5.30≦ABx(a+b+c+d)<5.35のサンプルをプロットし、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となる領域を示した図である。
[図25]縦軸:c軸長、横軸:a軸長からなる座標中に、5.35≦ABx(a+b+c+d)<5.40のサンプルをプロットし、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となる領域を示した図である。
[図26]縦軸:c軸長、横軸:a軸長からなる座標中に、5.40≦ABx(a+b+c+d)<5.45のサンプルをプロットし、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となる領域を示した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本発明の実施形態について詳細に述べるが、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明の水素吸蔵合金は、一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、5.2≦a+b+c+d≦5.5)又は一般式MmNiMnAlCoFe(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、0<e≦0.11、5.2≦a+b+c+d+e≦5.5)で表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金であって、当該CaCu型結晶構造の結晶格子のa軸長が499pm以上であり、かつc軸長が405pm以上の範囲にあるCaCu型結晶構造を有するABx型の低Co水素吸蔵合金である。
【0018】
本発明の低Co水素吸蔵合金は、ABx組成におけるAサイトを構成する元素の合計モル数に対するBサイトを構成する元素の合計モル数の比率a+b+c+d(この比率をABxとも称する)が、5.2≦ABx≦5.5であるから、Bサイトリッチの非化学量論組成からなるものである。この範囲のABxであれば、電池寿命や微粉化特性を維持することができ、しかも水素吸蔵特性及び出力特性も維持することができる。ただし、中でもABxが5.25以上が好ましく、又5.45以下であるのが好ましい。
【0019】
また、本発明の低Co水素吸蔵合金において、a軸長は499以上であるのが好ましく、503pm以下であるのが好ましい。特に499.7以上であるのがより好ましく、502.7pm以下であるのがより好ましい。他方、c軸長は405以上であるのがより好ましく、408pm以下であるのがより好ましい。中でも特に405.6以上であるのがより好ましく、407.4pm以下であるがより好ましい。
例えば、a軸長が499.7〜501.2pmであり、c軸長が405.6〜406.2pmである場合は好ましい一例である。
【0020】
本発明者はさらに、ABxのレベルによって好ましいa軸長及びc軸長が異なることを見出し、この知見に基づき、ABx範囲毎に好ましいa軸長及びc軸長を提案する。一般式MmNiMnAlCoで表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金に関しては、
(イ)5.25≦ABx<5.30の組成においては、a軸長が500.5pm以上502.7pm以下であり、かつc軸長が405.6pm以上406.9pm以下であるのが好ましい。
(ロ)5.30≦ABx<5.35の組成においては、a軸長が500.0pm以上502.4pm以下であり、かつc軸長が405.9pm以上407.2pm以下であるのが好ましい。
(ハ)5.35≦ABx<5.40の組成においては、a軸長が499.8pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が406.0pm以上407.3pm以下であるのが好ましい。
(ニ)5.40≦ABx<5.45の組成においては、a軸長が499.7pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が406.1pm以上407.4pm以下であるのが好ましい。
また、一般式MmNiMnAlCoFeで表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金に関しては、
(ホ)5.25≦ABx<5.30の組成においては、a軸長が500.5pm以上502.7pm以下であり、かつc軸長が406.6pm以上407.9pm以下であるのが好ましい。
(ヘ)5.30≦ABx<5.35の組成においては、a軸長が500.0pm以上502.4pm以下であり、かつc軸長が406.9pm以上408.2pm以下であるのが好ましい。
(ト)5.35≦ABx<5.40の組成においては、a軸長が499.8pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が407.0pm以上408.3pm以下であるのが好ましい。
(チ)5.40≦ABx<5.45の組成においては、a軸長が499.7pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が407.1pm以上408.4pm以下であるのが好ましい。
【0021】
それぞれのABxの範囲によって上記の範囲のa軸長及びc軸長に制御することにより、ハイブリッド自動車に求められる寿命特性、すなわち、水素吸蔵合金を粉砕し、篩い分けして粒度20〜53μmの範囲に調整して水素吸蔵合金粉末とし、この水素吸蔵合金粉末の平均粒径(;サイクル前粒度、D50)を粒度分布測定装置により測定した後、この水素吸蔵合金粉末2gを秤量してPCTホルダー中に入れ、1.75Mpaの水素圧で2回表面洗浄し、次いで3MPaの水素を導入するようにして活性化を2回行い、次に、PCT装置により、水素吸蔵合金粉末2.0gに3MPaの水素ガスを導入して水素を吸蔵させ、45℃にて水素脱着を50回繰り返すサイクル試験を行い、50サイクル試験後の水素吸蔵合金粉末の平均粒径(;サイクル後粒度、D50)を粒度分布測定装置により測定したときの、サイクル前粒度に対するサイクル後粒度の割合(微粉化残存率(%))が50%以上を示す寿命特性、を備えた水素吸蔵合金とすることができる。
ハイブリッド自動車の用途には高耐久性が求められ、かかる水準の高耐久性を維持するためには、50サイクル後の微粉化残存率(%))が50%以上であることが必要がある。上述のようにABxの範囲毎にa軸長及びc軸長を制御することにより、Coの組成割合(モル比)が0.35以下であるから安価で、しかも上述のように次世代ハイブリッド自動車用電池の負極活物質に要求される高耐久性を満足する水素吸蔵合金を提供することができる。
【0022】
Ni、Mn、Al及びCoの組成割合に関しては、上述のように5.2≦a+b+c+d≦5.5、中でも好ましくは5.25≦a+b+c+d又はa+b+c+d≦5.45の範囲内で適宜調整すればよいが、本発明の低Co水素吸蔵合金の特徴を考えると、Coの組成割合(モル比)を低くし、その代わりNiの組成割合(モル比)を高め、さらにはMnの割合を所定範囲に入るように合金組成を調整した上で、あとは製造条件を調整することによって結晶格子のa軸長さ及びc軸長さ一定範囲に調製するのがよいから、先ずCo及びNiの組成割合(モル比)を決め、次にMnの組成割合が所定範囲内に入るようにMn及びAlの組成割合を変えてABxを調整するようにして合金組成を決定するのが好ましい。
【0023】
Coの割合(d)は、0<d≦0.35、好ましくは0<d≦0.3、更に好ましくは0<d≦0.2の範囲内で調整するのがよい。0<d≦0.35の範囲内であれば、水素吸蔵特性や微粉化特性を劣化させることもなく、しかも充分にコスト削減の利益を享受できる。
Niの割合(a)は、4.0≦a≦4.7、好ましくは4.1≦a≦4.6、更に好ましくは4.2≦a≦4.5の範囲内で調整するのがよい。4.0≦a≦4.7の範囲内であれば、充分な出力特性を得ることができ、しかも微粉化特性や寿命特性に悪影響を与えることもない。
Mnの割合(b)は、0.3≦b≦0.65、好ましくは0.35≦b≦0.60、更に好ましくは0.4≦b≦0.55の範囲内で調整するのがよい。本発明の合金においては、Mnの割合も重要な要素であり、Mnの割合を0.3≦b≦0.65の範囲に調整しないと、50サイクル後の微粉化残存率を50%以上に確保することは難しい。
Alの割合(c)は、0.2≦c≦0.5、好ましくは0.3≦c≦0.5、更に好ましくは0.3≦c≦0.45の範囲内で調整するのがよい。0.2≦c≦0.5の範囲内であれば、プラトー圧力が必要以上に高くなって充放電のエネルギー効率を悪化させる影響が少なく、しかも水素吸蔵量を低下させる影響も少ない。
Feの割合(e)は、0<e≦0.11、好ましくは0.001<e≦0.11、更に好ましくは0.002<e≦0.11の範囲内で調整するのがよい。0<e≦0.11の範囲内であれば、活性度を低下させる影響も少なく、微粉化特性を向上させることができる。
【0024】
なお、上記組成において「Mm」は、La、Ce、Pr、Nd、Sm等の希上類系の混合物であるミッシュメタルである。例えばCe(40〜50%)、La(20〜40%)、Pr、Ndを主要構成元素とした希土類を挙げることができる。Mm中のLaの含有量は、一般的には水素金属合金に対して15〜30重量%、特に18〜30重量%であるのが好ましい。
【0025】
(低Co水素吸蔵合金の製造方法)
本発明の低Co水素吸蔵合金の製造方法は特に限定するものではないが、一般式MmNiMnAlCo(4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、5.2≦a+b+c+d≦5.5)又は一般式MmNiMnAlCoFe(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、0<e≦0.11、5.2≦a+b+c+d+e≦5.5)の合金組成となるように、各水素吸蔵合金原料を秤量、混合した上で、結晶格子のa軸長及びc軸長がともに所定範囲になるように製造方法及び製造条件を調整して水素吸蔵合金を製造すればよい。
【0026】
例えば、水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、この混合物を鋳造し、次いで熱処理するようにして水素吸蔵合金を製造すればよく、この際、鋳造条件(鋳造方法、鋳造温度、冷却速度など)、熱処理条件などの製造条件を合金組成に合わせて適宜選択、制御することによって、結晶格子のa軸長及びc軸長を所定範囲に調整することができる。一般的には鋳造における冷却速度を速くすれば結晶格子のc軸長を成長させることができ、また、熱処理温度を高くしても一般的には結晶格子のc軸長を成長させることができる。但し、合金種によっては熱処理温度が低温であってもc軸長が成長するものもあるから、合金種によって適宜制御することが必要である。
また、結晶格子のa軸長及びc軸長をともに所定範囲内に入るように調整するには、結晶を均質に成長させることも重要な要素の一つである。結晶の均質化を図るためには、熱処理のほかにも、例えば特開2002−212601号に開示されているように、熱処理前の合金を分級して合金粉末の粒径を制御することも有効であるとも考えられる。よって、このような手段も結晶格子のa軸長及びc軸長を所望の範囲に調整する手段の一つとして採用することが可能である。
【0027】
鋳造方法としては、鋳型鋳造法が好ましいが、例えばツインロール法(具体的には特願2002−299136の段落[0013]〜[0016]参照)、その他の鋳造法でも製造可能である。
【0028】
ここでは、鋳型鋳造法による製造方法の一例について説明する。
先ず、所望の合金組成となるように、水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、例えば誘導加熱による高周波加熱溶解炉を用いて、上記水素吸蔵合金原料を溶解して溶湯となす。これを鋳型、例えば水冷型の鋳型に流し込んで水素吸蔵合金を1350〜1550℃で鋳造し、所定の冷却速度(所定の冷却水量)で冷却する。この際の鋳湯温度は1200〜1450℃とする。なお、ここでいう鋳造温度とは、鋳造開始時のルツボ内溶湯温度であり、鋳湯温度とは鋳型注ぎ込み口温度(鋳型前温度)である。
次に、得られた水素吸蔵合金を不活性ガス雰囲気中、例えばアルゴンガス中で熱処理する。熱処理条件は1040〜1080℃、3〜6時間が好ましい。
【0029】
(低Co水素吸蔵合金の利用)
得られた水素吸蔵合金(インゴット)は、粗粉砕、微粉砕により必要な粒度の水素合金粉末とし、必要に応じ、金属材料や高分子樹脂等により合金表面を被覆したり、酸やアルカリで表面を処理したりするなど適宜表面処理を施し、各種の電池の負極活物質として用いることができる。
電池用負極の調製は、負極活物質に公知の方法により終着剤、導電助剤などを混合、成形すれば水素吸蔵合金負極を製造できる。
このようにして得られる水素吸蔵合金負極は、二次電池のほか一次電池(燃料電池含む)にも利用することができる。例えば、水酸化ニッケルを活物質とする正極と、アルカリ水溶液よりなる電解液と、セパレータからニッケル−MH(Metal Hydride)二次電池を構成することができ、電気自動車、ハイブリッド自動車、小型又は携帯型の各種電気機器、電動工具などの電源用途に好適に利用することができる。中でも、本発明の低Co水素吸蔵合金は、低価格・高出力・高耐久性が要求される次世代用電気自動車及びハイブリッド自動車用電池の負極活物質として特に好適である。
なお、ヒートポンプ、太陽・風力などの自然エネルギーの貯蔵、水素貯蔵、アクチュエータなどの利用も可能である。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
【0031】
[サンプルの作製]
表1に示した合金組成となるように、各水素吸蔵合金原料を秤量、混合し、その混合物をルツボにいれて高周波溶解炉に固定し、10−4Torr以下まで真空状態にした後、アルゴンガス雰囲気中で加熱溶解して水冷式銅鋳型に流し込み、表2に示した鋳造温度で鋳造を行い、表2に示した冷却水量で冷却を行い、合金を得た。さらに、この合金をアルゴン雰囲気中で1060℃、6時間の熱処理を行い、インゴット状の水素吸蔵合金(サンプル1〜33)を得た。
【0032】


【0033】
[特性及び物性評価]
上記で得られたサンプル1〜33について、下記に示す方法によって諸物性値及び諸特性値を測定し、結果を表2に示した。
【0034】
<a軸長><c軸長>
水素吸蔵合金(インゴット)を粉砕し、篩い分けして−20μm(20μmφの篩目を通過する粒子径)、20μm〜53μm(20μmφの篩目を通過しないが、53μmφの篩目を通過する粒子径)、53μm以上(53μmφの篩目を通過しない粒子径)に分級し、このうちの−20μmのものをガラスホルダーに詰めて粉末X線回折装置(RIGAKU製XRD)に供した。CuKα線により1°/minの走査速度、100−150°の角度で測定を行い、誤差関数測定法(wilson&pike法)により格子定数の精密化を行った上、a軸長(pm)及びc軸長(pm)を算出した。算出したa軸長及びc軸長の値には±0.1pmのばらつきがある。
尚、精密化するのに使用したピークは以下の通りである。
・100〜104°付近にあるミラー指数(303)で指数付けされるピーク。
・105〜106°付近にあるミラー指数(321)で指数付けされるピーク。
・106〜107°付近にあるミラー指数(402)で指数付けされるピーク。
・110〜114°付近にあるミラー指数(411)で指数付けされるピーク。
・116〜118°付近にあるミラー指数(313)で指数付けされるピーク。
・126〜129°付近にあるミラー指数(412)で指数付けされるピーク。
・129〜132°付近にあるミラー指数(501)で指数付けされるピーク。
・139〜142°付近にあるミラー指数(331)で指数付けされるピーク。
【0035】
<微粉化残存率(10−D/%)(50−D/%)>
水素吸蔵合金(インゴット)を粉砕し、篩い分けして粒度20〜53μmの範囲に調整して水素吸蔵合金粉末とした。この水素吸蔵合金粉末を粒度分布測定装置(日揮装(株)製マイクロトラック)により平均粒径(D50)を測定し、これをサイクル前粒度とした。次に、水素吸蔵合金粉末2gを秤量し、PCTホルダー中に試料を入れ、1.75Mpaの水素圧でMH合金表面を2回表面洗浄後、3MPaの水素を導入するようにして活性化を2回行った。
活性化処理後、PCT装置(自動ジーベルツ装置(鈴木商館製))により、前記水素吸蔵合金粉末2.0gに3MPaの水素ガスを導入して水素を吸蔵させ、その後45℃にて水素脱着を10回又は50回繰り返すサイクル試験を行った(温度条件45℃)。
その後、回収して再び平均粒径(D50)を測定した時の平均粒径(D50)をサイクル後粒度とし、両平均粒径(D50)を使用して次式から10サイクル後の微粉化残存率(%)及び50サイクル後の微粉化残存率(%)を算出した。
微粉化残存率(%)=(サイクル後粒度/サイクル前粒度)×100
【0036】
<PCT容量(H/M)>
PCT装置(自動ジーベルツ装置(鈴木商館製))により、45℃にてPCT曲線を測定した時の0.5MPaにおける水素吸蔵量(H/M)を求めた。
【0037】
<プラトー圧(PH2/MPa)>
PCT装置(自動ジーベルツ装置(鈴木商館製))により、45℃にてPCT曲線を測定した時のH/M0.5における平衡水素圧(MPa)を求めた。
【0038】
<電極セルの作製>
平均粒径45μmに調整した水素吸蔵合金粉末を、ニッケル粉末(導電材)及びポリエチレン粉末(結合材)と共に3.12g混合し、得られた混合粉をプレスして直径15mm、厚さ1.8mmのペレットを作製し、150℃×1時間真空焼成を行って焼結させてペレット電極を作製した。
このペレット電極を負極とし、十分な容量の正極(焼結式水酸化ニッケル)でセパレータ(日本バイリーン製)を介して挟み込み、比重1.30のKOH水溶液中に浸漬させて開放型試験セルを作製した。
【0039】
<初期容量(1∞/mAh/g)><20サイクル容量(20∞/mAh/g)>
上記の開放型試験セルを充放電装置(HOKUTO製充放電試験機)に接続し、充電:0.2C×6時間、放電:0.2C−0.7Vカット、温度25℃で充放電を行い、1サイクル目の放電容量(mAh/g)を初期容量とし、初期活性を表す指標とした。また、20サイクル目の放電容量(mAh/g)を20サイクル容量とした。
【0040】
<0℃・21サイクル目容量(0℃、1C、Cap/mAh/g)><パルス>
上記サイクル試験において20サイクル初期容量(mAh/g)測定後、0℃にて0.2C×6時間充電し、1Cで放電させた時の21サイクル目容量(mAh/g)を測定した。容量が大きい方が低温特性が良好であることを示す。
また、21サイクル目容量測定後、0.2C×6時間充電し、0.2C×2.5時間放電し、30分静置した後、2C放電させた時の10Sの電圧値(V)をパルスとした。電圧が高い方が、低温時の出力特性が良好であることを示す指標となる。
【0041】
<活性度>
上記の開放型試験セルを充放電装置(HOKUTO製充放電試験機)に接続し、セルを温度調整可能な恒温槽(YAMATO製)中に入れた。充電:0.2C×6時間、放電:0.2C−0.7Vカット、温度25℃で3サイクル充放電実施後、25℃にて充電:0.2C×6時間した後、恒温槽を0℃に切り替えて放電:1C−0.7Vカットさせたときの容量を4サイクル目容量(mAh/g)とした。
その後、1C×1時間12分充電後、放電:1C−0.7Vカットさせた時の容量を5サイクル目容量(mAh/g)とした。
また、15〜17サイクル目にも同様の試験を行い、各サイクル(15〜17)目の目容量(mAh/g)を測定した。
そして、活性度(%)を次の式により算出した。
活性度(%)=5サイクル目容量/17サイクル目容量×100
【0042】

【0043】
図1は、サンプル1〜30のa軸長及びc軸長を、横軸:a軸長、縦軸:c軸長からなる座標中にプロットした図である。
図1及び表2の結果より、a軸長及びc軸長がある範囲内にあれば、活性、出力特性及び寿命特性のいずれも良好になることが分かった。中でも、サンプル2、17、22及び24は活性、出力特性、寿命特性の点で特に良好なものと評価することができた。また、サンプル31〜33に着目すると、鉄(Fe)を含有させても活性、出力特性及び寿命特性のいずれも良好になり、寿命特性は特に優れたものになることが分った。さらにまた、冷却水量を多くすると、つまり冷却速度を高めると、c軸長が大きくなり寿命特性も上昇する傾向があることが分かった。
【0044】
図2及び図3は、サンプル1〜30をMn割合(モル比)で区分し、Mn割合毎、Alの割合(横軸)とa軸長(縦軸)又はc軸長(縦軸)との関係をプロットしたグラフである。
また、図4〜図21並びに表3〜表5は、サンプル1〜30の中から、Mn割合(モル比)の異なるサンプル(サンプル6、9、10、14、22、26)を抽出し、抽出したサンプルの合金組成においてMmの割合(モル比)を変えてABx5.2〜5.4の合金を作製し(作製条件は抽出したサンプルに同じ)、抽出したサンプル毎、言い換えればMn割合毎に、ABxとa軸長(縦軸)又はc軸長(縦軸)との関係を示したのが図4〜図15並びに表3及び表4であり、ABxと50サイクル後の微粉化残存率との関係を示したのが図16〜図21並びに表5である。
これより、ABxとa軸長及びc軸長との間には相関があり、ABxが大きくなると、a軸長は小さくなり、c軸長は大きくなる傾向があることが分かった。
【0045】

【0046】

【0047】


【0048】
また、図22〜図26及び表6〜表9は、サンプル1〜30をABxで区分し、それぞれのABx毎にa軸長とc軸長さとの関係を示すと共に、更に50サイクル後の微粉化残存率50%以上の領域を示したグラフである。
例えば図22の場合、すなわち5.20≦ABx<5.25の場合は、50サイクル後の微粉化が50%を上回るサンプルは存在しなかった。これに対し、図23〜図26の場合は、例えば図23に示されるように、a軸長が500.5pm以上502.7pm以下であり、かつc軸長が405.6pm以上406.9pm以下の範囲(図中の枠)内のサンプルは、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となり、枠外のサンプルは50%を下回る結果となった。他の図についても同様のことが言えた。
このように、AB比(ABx)範囲を細かく区分し、各AB比(ABx)範囲毎にa軸長及びc軸長さの範囲を特性することにより、50サイクル後の微粉化残存率が50%以上となる低Co水素吸蔵合金を特定できることが判明した。
【0049】

【0050】


【0051】

【0052】

【0053】


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式MmNiMnAlCo(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、5.2≦a+b+c+d≦5.5)で表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金であって、
当該CaCu型結晶構造の結晶格子のa軸長が499pm以上であり、かつc軸長が405pm以上であることを特徴とする低Co水素吸蔵合金。
【請求項2】
5.25≦a+b+c+d<5.30の組成においては、結晶格子のa軸長が500.5pm以上502.7pm以下であり、かつc軸長が405.6pm以上406.9pm以下であることを特徴とする請求項1記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項3】
5.30≦a+b+c+d<5.35の組成においては、結晶格子のa軸長が500.0pm以上502.4pm以下であり、かつc軸長が405.9pm以上407.2pm以下であることを特徴とする請求項1記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項4】
5.35≦a+b+c+d<5.40の組成においては、結晶格子のa軸長が499.8pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が406.0pm以上407.3pm以下であることを特徴とする請求項1記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項5】
5.40≦a+b+c+d<5.45の組成においては、結晶格子のa軸長が499.7pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が406.1pm以上407.4pm以下であることを特徴とする請求項1記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項6】
一般式MmNiMnAlCoFe(式中、Mmはミッシュメタル、4.0≦a≦4.7、0.3≦b≦0.65、0.2≦c≦0.5、0<d≦0.35、0<e≦0.11、5.2≦a+b+c+d+e≦5.5)で表すことができるCaCu型結晶構造を有する低Co水素吸蔵合金であって、
当該CaCu型結晶構造の結晶格子のa軸長が499pm以上であり、かつc軸長が405pm以上であることを特徴とする低Co水素吸蔵合金。
【請求項7】
5.25≦a+b+c+d+e<5.30の組成においては、結晶格子のa軸長が500.5pm以上502.7pm以下であり、かつc軸長が406.6pm以上407.9pm以下であることを特徴とする請求項6記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項8】
5.30≦a+b+c+d+e<5.35の組成においては、結晶格子のa軸長が500.0pm以上502.4pm以下であり、かつc軸長が406.9pm以上408.2pm以下であることを特徴とする請求項6記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項9】
5.35≦a+b+c+d+e<5.40の組成においては、結晶格子のa軸長が499.8pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が407.0pm以上408.3pm以下であることを特徴とする請求項6記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項10】
5.40≦a+b+c+d+e<5.45の組成においては、結晶格子のa軸長が499.7pm以上502.3pm以下であり、かつc軸長が407.1pm以上408.4pm以下であることを特徴とする請求項6記載の低Co水素吸蔵合金。
【請求項11】
水素吸蔵合金を粉砕し、篩い分けして粒度20〜53μmの範囲に調整して水素吸蔵合金粉末とし、この水素吸蔵合金粉末の平均粒径(;サイクル前粒度、D50)を粒度分布測定装置により測定した後、この水素吸蔵合金粉末2gを秤量してPCTホルダー中に入れ、1.75Mpaの水素圧で2回表面洗浄し、次いで3MPaの水素を導入するようにして活性化を2回行い、次に、PCT装置により、水素吸蔵合金粉末2.0gに3MPaの水素ガスを導入して水素を吸蔵させ、45℃にて水素脱着を50回繰り返すサイクル試験を行い、50サイクル試験後の水素吸蔵合金粉末の平均粒径(;サイクル後粒度、D50)を粒度分布測定装置により測定したときの、下記の式で得られる微粉化残存率が50%以上であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか又は請求項7〜10のいずれかに記載の低Co水素吸蔵合金。
微粉化残存率(%)=(サイクル後粒度/サイクル前粒度)×100
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の低Co水素吸蔵合金を負極活物質として用いてなる構成を備えた電池。

【国際公開番号】WO2005/014871
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512978(P2005−512978)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011378
【国際出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】