説明

体内の物理量の検出方法および検出装置

【課題】 放射線検出器を血管内に挿入し、この検出器を血管内で移動させつつ体内の放射性物質を検出して検査を行うに当たり、迅速かつ正確に病変部を特定できるようにする。
【解決手段】 検出器5をカテーテル移動装置2により血管内で所定速度で連続的に移動させつつ体内の放射性物質を検出するに当たり、検出器による体内の放射性物質の計測値に基づいて、検出器の移動速度を制御する。また、検出器をカテーテル移動装置により血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器が停止したときに検出器で体内の放射性物質を検出することを繰り返すに当たり、検出器による体内の放射性物質の計測値に基づいて、検出器の1回当たりの移動距離を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体内に放射性医薬品を投与した後に、検出器を冠動脈等の血管内に挿入して、体内の組織に集積した放射性物質を検出する核医学検査などに好適に使用される体内の物理量の検出方法および検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病疾患の核医学検査では、放射性医薬品が血管内に生じた病変部に集積することを利用する。このような核医学検査に使用される放射線検出装置として、従来、検出器を備えたカテーテルを冠動脈等の血管内に挿入し、カテーテルを血管内で移動させながら体内の組織に集積した放射性物質を検出するものがある(特許文献1参照)。また、カテーテルを一定速度で自動的に移動させるカテーテル自動移動装置も提案されている。このカテーテル自動移動装置は、移動速度を速度切換スイッチにより幾段階かに切り換えることができるものである(特許文献2参照)。
【0003】
上述した放射線検出装置では、検査医師は、検出器を備えたカテーテルを血管内に挿入し、体内の組織における放射性物質の集積量を測定することにより、病変部を特定する。この際、病変部であるか否かを検査医師が判断するためには、検出器の位置および放射性物質の集積量を正確に把握する必要がある。また、患者の検査による負担を軽減するために、検査時間を極力短縮することが求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−98259号公報
【特許文献2】米国特許第5709661号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前述した放射線検出装置およびカテーテル自動移動装置は、下記の問題を有するものであった。
a.血管内における検出器の位置データと放射性物質の検出データがそれぞれ別々に発生するため、放射性物質の検出データの血管内における位置関係がはっきりせず、病変部の特定を正確に行うことが難しい。
b.検査医師が放射性物質の検出データを読み取りながら手動操作によりカテーテルを移動し、放射性物質の集積の有無を判断しようとした場合、病変部の位置を正確に特定することが困難である。
c.病変部を正確に特定する場合、検出器の移動速度を低速にして測定する必要があるが、前述した従来のカテーテル自動移動装置では速度切換スイッチはあるものの、基本的には一定速度でカテーテルを移動するため、正確に病変部の位置を特定するために移動速度を低速にすると、病変部でない部分でも検出器の移動に時間がかかり、そのため検査時間が長くなって患者の負担が大きくなる。
d.血管内における検出器の位置データと放射性物質の検出データに基づいて検査医師が放射性物質の集積の有無を判断し、病変部の特定を行うので、検査医師の熟練と経験が必要となる。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、放射線検出器などの体内の物理量の検出器を血管内に挿入し、この検出器を血管内で移動させつつ体内の物理量を検出して検査を行う方法および装置であって、迅速かつ正確に病変部を特定することができる方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成するために種々検討を行った結果、血管内における検出器の位置データおよび測定対象である物理量の検出データを同時に演算し、上記物理量が予め設定した闘値未満の箇所では病変部でないと判断してそれほど精密な測定を行わず、予め設定した闘値以上の箇所では病変部であると判断して精密な測定を行うことにより、迅速かつ正確に病変部を特定できることを見出した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記1〜10に示す体内の物理量の検出方法および検出装置を提供する。
1.血管内に体内の物理量の検出器を挿入し、この検出器を血管内で所定速度で連続的に移動させつつ体内の物理量を検出する方法であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の移動速度を制御することを特徴とする体内の物理量の検出方法。
2.検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器を高速で移動させ、闘値以上のときには検出器を低速で移動させることを特徴とする1の体内の物理量の検出方法。
3.血管内に体内の物理量の検出器を挿入し、この検出器を血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器が停止したときに検出器で体内の物理量を検出することを繰り返す方法であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の1回当たりの移動距離および1回当たりの停止時間の一方または両方を制御することを特徴とする体内の物理量の検出方法。
4.検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの移動距離を大きくし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの移動距離を小さくすることを特徴とする3の体内の物理量の検出方法。
5.検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの停止時間を短くし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの停止時間を長くすることを特徴とする3の体内の物理量の検出方法。
6.血管内に挿入される体内の物理量の検出器と、該検出器を血管内で移動させる移動手段とを具備し、前記検出器を血管内で所定速度で連続的に移動させつつ体内の物理量を検出する装置であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の移動速度を制御することを特徴とする体内の物理量の検出装置。
7.検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器を高速で移動させ、闘値以上のときには検出器を低速で移動させることを特徴とする6の体内の物理量の検出装置。
8.血管内に挿入される体内の物理量の検出器と、該検出器を血管内で移動させる移動手段とを具備し、前記検出器を血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器が停止したときに検出器で体内の物理量を検出することを繰り返す装置であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の1回当たりの移動距離および1回当たりの停止時間の一方または両方を制御することを特徴とする体内の物理量の検出装置。
9.検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの移動距離を大きくし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの移動距離を小さくすることを特徴とする8の体内の物理量の検出装置。
10.検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの停止時間を短くし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの停止時間を長くすることを特徴とする8の体内の物理量の検出装置。
【0009】
本発明において、検出器により検出する体内の物理量としては、例えば、体内における放射性物質の集積量に対応する物理量、体内における超音波の反射波に対応する物理量等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る体内の物理量の検出方法および検出装置によれば、迅速かつ正確に病変部を特定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、血管内に放射線検出器を挿入して核医学検査を行う場合を中心に本発明を詳述する。図1は本発明に係る放射線検出装置の一実施形態を示す構成図である。図1において、2はカテーテル移動装置(移動手段)、4はカテーテル、5はカテーテル4の先端に設けられた放射線検出器、6はアウターチューブ、8はアウターチューブホルダ、10はアウターチューブコネクタ、12はカテーテルホルダ、14は移動ステージ、16はスクリュー、18はカップリング、20はステッピングモータ、22はコネクタ、24は計測ユニット、26はモータドライバ、28はマイクロコンピュータ、30はカテーテル移動装置2に接続されたパーソナルコンピュータを示す。放射線検出器5としては、放射線の入射により発光する棒状のシンチレータが使用されている。
【0012】
本例の装置は、検出器5を血管内で所定速度で連続的に移動させつつ体内の放射性物質を検出する動作、および検出器5を血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器5が停止したときに検出器5で体内の放射性物質を検出することを繰り返す動作の両方を行うことができるようになっている。そして、前者の動作の場合には、検出器5による体内の放射性物質の計測値が闘値未満のときには検出器5を高速で移動させ、闘値以上のときには検出器5を上記高速のときより低速で移動させるようになっている。また、後者の動作の場合には、検出器5による体内の放射性物質の計測値が闘値未満のときには検出器5の1回当たりの移動距離を大きくし、闘値以上のときには検出器5の1回当たりの移動距離を上記計測値が闘値未満のときより小さくするようになっている。
【0013】
本例の放射線検出装置を用いた核検査の工程の一例を以下に示す。
(1)アウターチューブ6にカテーテル4を貫通しておく。
(2)医師の操作によりカテーテル4を患者の検査部位に挿入する。
(3)アウターチューブ6をカテーテル4の患者側挿入点およびカテーテル移動装置2にアウターチューブホルダ8で接続する。
(4)移動ステージ14上のカテーテルホルダ12にカテーテル4を固定する。
(5)X線撮影で検出器5のスタート位置を確認する。
(6)カテーテル移動装置2を制御するソフトウエアが組み込まれたパーソナルコンピュータ30より移動距離、測定時間、高速移動速度、低速移動速度等の測定条件を入力し、測定開始ボタンを押す。
(7)カテーテル4を連続的に高速移動しながら測定を開始する。この場合、移動ステージ14は、カップリング18でステッピングモータ20と接続されたスクリュー16の動作により移動する。スッテッピングモータ20は、マイクロコンピュータ28で制御されたモータドライバ26により駆動される。
(8)所定時間における測定値の平均値を逐次計算し、そのデータを例えば1秒間で更新記憶していく。測定データの更新タイミングと同時にカテーテル4の移動距離データも逐次記憶し、それらをパーソナルコンピュータ30のディスプレイに表示する。この場合、検出器5が検出した信号は、コネクタ22を経て計測ユニット24に入力され、計測ユニット24により通信信号に変換される。
(9)予め設定しておいた闘値と測定値とを比較することにより、カテーテル4の移動速度をコントロールすると同時に放射性物質の集積箇所、すなわち病変部を特定する。この場合、マイクロコンピュータ28は、計測ユニット24で通信信号に変換されたデータを読み取り、演算処理した後、モータドライバ26に移動速度命令を出力する。
(10)放射性物質の集積箇所、すなわち病変部はディスプレイのグラフ上にピークとして現れ、グラフおよび数値データとして病変部の位置を特定することができる。
【0014】
上述したように、本例の放射線検出装置では、計測を開始すると、予め設定しておいた所定時間における測定値の平均値をマイクロコンピュータで逐次計算し、例えば1秒毎に更新記憶する。また、測定値の更新に同期してカテーテルの位置データも同時に記憶し、記憶した測定値とカテーテルの位置データを表示する。この操作を順次繰り返し行い、設定されている移動距離の間を測定する。したがって、検出器による放射線測定データと検出器の位置データは常に一対に記憶、表示されるので、病変部の位置を正確に把握することができる。
【0015】
また、本例の放射線検出装置では、検査時間を短縮するために、より具体的には以下に述べる手段を用いている。すなわち、カテーテルを移動する際、常に一定速度で移動するのではなく、測定結果をマイクロコンピュータにより演算し、その結果より放射性物質集積の有無を判定して移動速度をコントロールしている。すなわち、放射性物質の集積を検出した場合には、カテーテルの移動速度を低速として精密測定を行い、放射性物質の集積が検出されなかった場合には、カテーテルの移動速度を高速とする。この操作により、病変部位置を特定する際の位置分解能を向上させると同時に、検査時間を短縮することができる。
【0016】
放射性物質の集積の判定方法、すなわち闘値の設定方法に特に制限はないが、下記(A)の統計処理による方法、(B)のバックグラウンド計数率との比較による方法、(C)の放射性物質集積判定計数率値による方法のいずれかを好適に用いることができる。
【0017】
(A)統計処理による放射性物質集積判定方法
計測を開始すると、カテーテルが高速移動しながら測定を始める。予め設定した測定時間Tsにおける測定値の平均値を逐次マイクロコンピュータで計算し、例えば1秒毎に更新する。また、測定値は測定開始直前の測定値をバックグラウンド計数率Nbとし、下記の検出限界を求める式により逐次計算した検出限界値Yと比較し、検出限界未満の場合はカテーテルは高速のまま移動を続ける。しかし、測定値が直前測定値より求めた検出限界値Y以上の場合は、放射性物質の集積があると判断し、カテーテルの移動速度を低速にして精密測定を行う。精密測定中は検出限界値は更新せず、再び測定値が検出限界未満になるまでカテーテル移動速度は低速とし、精密測定を続行する。測定値が検出限界未満となった場合は、再びカテーテルを高速移動し、直前測定値から計算した検出限界値Yと比較しながら測定を続行する。図2〜図4に動作フロー図を示す。この方法では、現在測定値(計数率)の直前の測定値(計数率)をバックグランド計数率とし、その標準偏差のN倍より求めた検出限界値と比較することで、緩やかなバックグランドの変化は無視され、放射性物質集積のある病変部のみの有無を判定することができる。
【0018】
(検出限界を求める式)
Y=N/2・
{N/Ts+〔(N/Ts)+4Nb(1/Ts+1/Tb)〕1/2
Y 検出限界値(Bq)
Ts 測定時間(sec)
Tb バックグラウンド測定時間(sec)
Nb バックグラウンド計数率(c/s)
N 標準偏差の倍率
【0019】
式中、Nは標準偏差の倍率を示し測定の確度を表している。通常、Nの値は測定確度が高い3を選択する(3σ法)が、測定環境によっては3を選択しない場合もある。
【0020】
(B)バックグラウンド計数率との比較による方法
核医学検査において放射性医薬品、例えば18F−FDGを患者に投与した場合、正常組織に対し病変部では約5倍程度の放射性物質集積率であることが知られている。本法では、(A)の方法と同様に計測を開始すると、カテーテルが高速移動しながら測定を始め、予め設定した測定時間における測定値の平均値を逐次マイクロコンピュータで計算し、更新していく。また、測定値は測定開始直前の測定値をバックグラウンド計数率とし、バックグラウンド計数率のN倍を放射性物質集積有無の判定レベルとし、判定レベル未満の場合はカテーテルを高速で移動する。しかし、測定値が判定レベル以上の場合は放射性物質の集積があると判断し、カテーテルの速度を低速として精密測定を行う。測定値が判定レベル未満となった場合は、再びカテーテルを高速で移動し測定を続行する。また、倍率Nは任意に設定できるようになっている。この方法では、現在測定値(計数率)の直前の測定値(計数率)をバックグランド計数率とし、そのN倍より求めた放射性物質集積判定レベルと比較することで、緩やかなバックグランドの変化は無視され、放射性物質集積のある病変部のみの有無を判定することができる。
【0021】
(C)放射性物質集積判定計数率値による方法
前述のように、特定の放射性医薬品を投与した場合における病変部の放射性物質集積率は既知である。そこで、放射性医薬品の投与量から病変部に集積する放射性物質量を予め計算にて求めておき、これを基に放射性物質集積の有無の判定レベル計数率を設定しておく。計測を開始するとカテーテルが高速移動しながら測定を始め、予め設定した測定時間における測定値の平均値を逐次マイクロコンピュータで計算し、更新する。測定値が放射性物質集積の有無の判定レベル未満の間は、カテーテルは高速のまま移動を続けるが、測定値が判定レベル以上の間は放射性物質の集積があると判断し、カテーテルの速度を低速として精密測定を行う。この方法では、放射性物質集積判定レベル(計数率)を設定し、それと比較することで、緩やかなバックグランドの変化は無視され、放射性物質集積のある病変部のみの有無を判定することができる。
【実施例】
【0022】
体重20Kgの雄イヌを用い、次の動物実験を行った。まず、麻酔後に296MBqの18F−FDGを静脈投与した。開胸して冠動脈に1000Bqの18F−FDG溶液(4μL)を封入した微小線源1個を結び付けた。18F−FDG投与1時間後に、図1に示した装置のカテーテルを冠動脈内に挿入した。カテーテル移動装置によりカテーテルを操作してカウントを測定した。
【0023】
本実験は、動物モデルとしてのイヌの冠動脈に適切な動脈硬化巣(プラーク)を作成することができないため、それを模して微小線源を結び付けたものである。また、動脈硬化巣に集積した18F−FDGの検出には、心臓、肺、肝臓その他の組織の放射性物質がバックグラウンドとしてかなり影響するので、そのことを考慮に入れて、ヒトにおける臨床投与量とほぼ等しい296MBqの18F−FDGを静脈投与した。測定結果を図5〜図10のグラフに示す。
【0024】
図5〜図7は、カテーテルを連続移動し、放射線測定もレートメータ(計数率計)方式で連続的に行う測定方法である。この測定方式では信号の欠落はないが、測定値(計数値)が平均化されてしまうため、放射性物質集積が低量の場合はピークを捕らえにくい欠点がある。
【0025】
図8〜図10は、カテーテルを断続移動し、放射線測定地点ではカテーテルを止めて測定し、測定が終わったら再びスッテプ移動をする測定方式である。この方法ではスッテップ移動する間に放射性物質の集積がある場合、信号を取りこぼしてしまう可能性がある欠点はあるが、測定値は平均化されていないため、放射性物質集積の位置分解能は図5〜図7の方法より高い。また、ステップ間隔を検出器(シンチレータ)の長さ(本実施例では3mm)より短く設定した場合には、データ欠落もなく正確な測定ができる。しかし、この場合は測定時間が長くなるので注意が必要となる。
【0026】
以下、図5〜図10に示した測定における設定条件等を示す。
[図5:比較例]
図5は、1mm/secの一定速度でカテーテルを連続移動した場合の出力グラフである。カテーテルを移動させながら、5秒ごとに計算結果をプロットしている。本例では、トータル測定時間は短いが、測定が粗く放射性物質集積ピークがはっきりしていない。
(設定条件)
集積判定機能 使用せず
移動速度 一定速度:1(mm/sec)
移動距離 50(mm)
測定時間 5(sec)
トータル測定時間 50(sec)
【0027】
[図6:比較例]
図6は、0.2mm/secの一定速度でカテーテルを連続移動した場合の出力グラフである。カテーテルを移動させながら、5秒ごとに計算結果をプロットしている。本例では、放射性物質集積ピークはきれいに現れているが、トータル測定時間が長く実用的ではない。
(設定条件)
集積判定機能 使用せず
移動速度 一定速度:0.2(mm/sec)
移動距離 50(mm)
測定時間 5(sec)
トータル測定時間 250(sec)
【0028】
[図7:実施例]
図7は、放射性物質集積判定機能を使用してカテーテルを連続移動した場合の出力グラフである。3σ法による放射性物質集積判定レベルは51.7(カウント)である。また、図中(A)から(B)および(C)から(D)の間はカテーテルを高速で移動し、(B)から(C)の間はカテーテルを低速で移動して精密測定を行っている。本例では、トータル測定時間は図6の測定と比較して約1/3までに短縮されているが、放射性物質集積ピークはきれいに現れている
(設定条件)
集積判定機能 統計処理による放射性物質集積判定法(N=3σ)
移動速度 高速移動速度:1(mm/sec)
低速移動速度:0.2(mm/sec)
測定時間 50(mm)
トータル測定時間 80(sec)
【0029】
[図8:比較例]
図8は、5mmの一定ステップ間隔でカテーテルを断続移動した場合の出力グラフである。本例では、トータル測定時間は短いが、測定が粗いため、放射性物質集積ピークの位置があいまいで、放射性物質集積位置を特定するためには不十分である。なお、カテーテルの移動に要する時間はごく僅かなので、トータル測定時間には入っていない。
(設定条件)
集積判定機能 使用せず
ステップ間隔 一定:5(mm)
移動距離 50(mm)
測定時間 5(sec)
トータル測定時間 55(sec)
【0030】
[図9:比較例]
図9は、0.5mmの一定ステップ間隔でカテーテルを断続移動した場合の出力グラフである。本例では、放射性物質集積ピークはきれいに現れているが、トータル測定時間が長く実用的ではない。なお、カテーテルの移動に要する時間はごく僅かなので、トータル測定時間には入っていない。
(設定条件)
集積判定機能 使用せず
ステップ間隔 一定:0.5(mm)
移動距離 50(mm)
測定時間 5(sec)
トータル測定時間 505(sec)
【0031】
[図10:実施例]
図10は、放射性物質集積判定機能を使用してカテーテルを断続移動した場合の出力グラフである。3σ法による放射性物質集積判定レベルは51.7(カウント)である。また、図中(A)から(B)および(C)から(D)の間はステップ間隔を長くして計測時間を短縮し、(B)から(C)の間はステップ間隔を短くして精密測定を行っている。本例では、トータル測定時間は図9の測定と比較して約1/3までに短縮されているが、放射性物質集積ピークはきれいに現れている。なお、カテーテルの移動に要する時間はごく僅かなので、トータル測定時間には入っていない。
(設定条件)
集積判定機能 統計処理による放射性物質集積判定法(N=3σ)
ステップ間隔 2(mm)または0.5(mm)
測定時間 50(mm)
トータル測定時間 165(sec)
【0032】
以上の実験からわかるように、図1に示した本発明の放射線検出装置によれば、迅速かつ正確に体内の病変部を特定することができる。すなわち、図1の放射線検出装置は、カテーテル移動装置、検出器、カテーテルおよび演算処理装置(マイクロコンピュータ)を一体化し、検出器による放射性物質の検出データと検出器の位置データとを対応させること、および放射性物質の検出データを演算処理することで、放射性物質集積の有無を判断する。そして、放射性物質集積のない部位では検出器の移動速度を高速にしたり、1回当たりの移動距離を大きくしたりすることにより、検査時間を短縮させる。また、放射性物質集積があると判断した部位では検出器の移動速度を低速にしたり、1回当たりの移動距離を小さくしたりすることにより、精密測定を行い、病変部位置の位置分解能を向上させる。したがって、本装置により、病変部の有無と病変部位置の特定を自動的かつ正確に行い、検査時間を短縮することで、従来の問題点を解決することができる。
【0033】
なお、図1の放射線検出装置において、検出器を血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器が停止したときに検出器で放射性物質を検出する場合には、放射性物質集積のない部位では検出器の1回当たりの停止時間を短くし、放射性物質集積があると判断した部位では検出器の1回当たりの停止時間を上記計測値が闘値未満のときより長くすることにより、精密測定を行い、病変部位置の位置分解能を向上させるようにしてもよい。
【0034】
放射性核種の壊変は常に一定の時間間隔で繰り返される現象ではなく、偶発的に起こる現象であり、したがってこのような壊変に伴って放出される放射線も偶発的なものとなる。このような偶発的に発生する放射線を検出器で一定の計数時間で繰り返し測定する場合の測定誤差は、測定値の標準偏差(測定値の平方根)で与えられる。すなわち、測定時間を長くとればとるほど「標準偏差/測定値」の値が小さくなり、測定値の誤差が小さく信頼性のある値となる。本発明の場合、検出器の移動を遅くすることや、検出器の停止時間を長くすることで、測定時間を長くすることができ、測定誤差を小さくして信頼性のある測定を行うことができるのである。
【0035】
また、本発明は、核医学検査用の検査機器以外にも、血管内に検出器を挿入して検出器を移動させる検査機器、例えば血管内視鏡や血管内超音波カテーテルを使用する検査機器に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る放射線検出装置の一実施形態を示す構成図である。
【図2】統計処理による放射性物質集積判定方法の一例の動作フロー図である。
【図3】統計処理による放射性物質集積判定方法の一例の動作フロー図である。
【図4】統計処理による放射性物質集積判定方法の一例の動作フロー図である。
【図5】実験例おいて、1mm/secの一定速度でカテーテルを連続移動した場合の出力グラフである。
【図6】実験例おいて、0.2mm/secの一定速度でカテーテルを連続移動した場合の出力グラフである。
【図7】実験例おいて、放射性物質集積判定機能を使用してカテーテルを連続移動した場合の出力グラフである。
【図8】実験例おいて、5mmの一定ステップ間隔でカテーテルを断続移動した場合の出力グラフである。
【図9】実験例おいて、0.5mmの一定ステップ間隔でカテーテルを断続移動した場合の出力グラフである。
【図10】実験例おいて、放射性物質集積判定機能を使用してカテーテルを断続移動した場合の出力グラフである。
【符号の説明】
【0037】
2 カテーテル移動装置
4 カテーテル
5 放射線検出器
6 アウターチューブ
8 アウターチューブホルダ
10 アウターチューブコネクタ
12 カテーテルホルダ
14 移動ステージ
16 スクリュー
18 カップリング
20 ステッピングモータ
22 コネクタ
24 計測ユニット
26 モータドライバ
28 マイクロコンピュータ
30 パーソナルコンピュータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内に体内の物理量の検出器を挿入し、この検出器を血管内で所定速度で連続的に移動させつつ体内の物理量を検出する方法であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の移動速度を制御することを特徴とする体内の物理量の検出方法。
【請求項2】
検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器を高速で移動させ、闘値以上のときには検出器を低速で移動させることを特徴とする請求項1に記載の体内の物理量の検出方法。
【請求項3】
血管内に体内の物理量の検出器を挿入し、この検出器を血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器が停止したときに検出器で体内の物理量を検出することを繰り返す方法であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の1回当たりの移動距離および1回当たりの停止時間の一方または両方を制御することを特徴とする体内の物理量の検出方法。
【請求項4】
検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの移動距離を大きくし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの移動距離を小さくすることを特徴とする請求項3に記載の体内の物理量の検出方法。
【請求項5】
検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの停止時間を短くし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの停止時間を長くすることを特徴とする請求項3に記載の体内の物理量の検出方法。
【請求項6】
血管内に挿入される体内の物理量の検出器と、該検出器を血管内で移動させる移動手段とを具備し、前記検出器を血管内で所定速度で連続的に移動させつつ体内の物理量を検出する装置であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の移動速度を制御することを特徴とする体内の物理量の検出装置。
【請求項7】
検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器を高速で移動させ、闘値以上のときには検出器を低速で移動させることを特徴とする請求項6に記載の体内の物理量の検出装置。
【請求項8】
血管内に挿入される体内の物理量の検出器と、該検出器を血管内で移動させる移動手段とを具備し、前記検出器を血管内で所定距離移動させた後に所定時間停止させ、検出器が停止したときに検出器で体内の物理量を検出することを繰り返す装置であって、検出器による体内の物理量の計測値に基づいて、検出器の1回当たりの移動距離および1回当たりの停止時間の一方または両方を制御することを特徴とする体内の物理量の検出装置。
【請求項9】
検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの移動距離を大きくし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの移動距離を小さくすることを特徴とする請求項8に記載の体内の物理量の検出装置。
【請求項10】
検出器による体内の物理量の計測値が闘値未満のときには検出器の1回当たりの停止時間を短くし、闘値以上のときには検出器の1回当たりの停止時間を長くすることを特徴とする請求項8に記載の体内の物理量の検出装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−3223(P2006−3223A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179976(P2004−179976)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000230250)日本メジフィジックス株式会社 (75)
【出願人】(594118958)株式会社ユニバーサル技研 (11)
【出願人】(501209357)有限会社 エスディー技研 (9)
【Fターム(参考)】