説明

体液浄化カラム、その製造方法及び製造装置

【課題】人体に有害な溶剤、微粉末片等の残留物はなく、1、2次射出成形が適用されているにも拘わらず接合強度、接合部の気密性、液密性等は高く、医療器具として安全に使用できる体液浄化カラムを提供する。
【解決手段】体液の出入り口(9、9)を有する容器本体と、該容器本体内に設けられている体液浄化用充填材(F)とからなる。容器本体は、1次射出成形により成形された一対の半容器(A、B)が接合部位(C)において2次射出成形により接合されたものである。その接合部位(C)は、本体部(Ah、Bh)から斜め内方に角度θで広がるように傾斜して延びている接合部(At、Bt)の突合せ先端部(T、T)の外周部に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体液の出入り口を有する容器本体と、該容器本体内に設けられている体液浄化用充填材とからなり、前記入口から供給される体液が前記体液浄化用充填材により浄化され、そして前記出口から出ていくようになっている体液浄化カラム、その製造方法及び製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体液浄化カラムの一種である白血球除去フィルターは、概略的には血液の出入り口を有する容器と、該容器内に内装されている濾材とから構成されている。このような白血球除去フィルターは、一般に次のようにして製造されている。すなわち、一対の半容器を開口部あるいは突合部を有するように射出成形し、この半容器内に濾材を内装し、そして一対の半容器の開口部を突き合わせ、突き合わせた部分を接着剤により接着する方法、超音波により溶着する方法、等により製造されている。これらの製造方法により得られる白血球除去フィルターと、その製造例が図4、5に示されている。一対の浅い箱状の半容器A1、B1は、前述したように血液の出入り口管x、yをそれぞれ有するように射出成形により成形されるが、成形された一方の半容器A1が、図4の(イ)の斜視図及び図4の(ウ)の断面図に示されている。一方の半容器A1の平板状の本体部30の4周からは肉厚のフランジ部31が外方へ延在している。このフランジ部31の端縁から内側へ所定量だけ寄った位置において当接部32が開口部の方へ立ち上がっている。そして、この当接部32の所定位置に係止用の凹部33が成形されている。係止用の凹部33は、他方の半容器B1に成形されているフック用の凸部が係止するもので、当接部32の4辺に1個宛成形されている。
【0003】
詳しくは後述するように、上記の一方の半容器A1は固定側金型と可動側金型とで成形されるが、係止用の凹部33、33、…は、型開閉方向と直角方向に窪んでアンダーカット部となっている。したがって、係止用の凹部33、33、…を単純な固定側金型と可動側金型とで成形すると、型は抜けないことになる。他方の半容器B1の全体は示されていないが、図4の(エ)に、図4の(ウ)に相当する部分の断面図が示されている。この断面図に示されているように、一対の半容器A1、B1は相似形にはなっていない。他方の半容器B1の平板状の本体部30’の4周からは肉厚部31’が外方へ延在している。この肉厚部31’の端縁から当接部32’が開口部あるいは突合部の方へ立ち上がっている。そして、この当接部32’の先端部に内側へ曲がったフック用の凸部33’が成形されている。この凸部33’は、一方の半容器A1に成形されている係止用の凹部33に、仮組立時に係止するもので、当接部32’の4辺に1個宛成形されている。これらのフック用の凸部33’も、アンダーカット部となっている。
【0004】
前記のような形状を有する一方の半容器A1を成形するための金型の一部が、図5に示されている。図5において、符号35は固定側金型を、そして40は可動側金型をそれぞれ示している。固定側金型35のパーティング面にはスライドコア45が収まる凹部36と、フランジ部31成形用の凹部37と、本体部30成形用の凹部38とが形成されている。また、パーティング面にはスライドコア45を案内するガイドピン39が設けられている。このガイドピン39は、型開閉方向に対して斜め方向に傾斜している。これにより、型開閉時にスライドコア45は、図5において上方すなわち係止用の凹部33から離れる方向と、下方のキャビティ構成位置へ駆動されることになる。
【0005】
可動側金型40のパーティング面には、スライドコア45を保持して上下方向に案内する凹部41、当接部32の先端面及び下面を成形するための凹部42、本体部30を成形するパーティング面43等が形成されている。スライドコア45の厚みは、当接部32の立ち上がり量と略同じで、その先端部には所定大きさのコア46が形成されている。可動側金型40を型締めすると、スライドコア45はガイドピン39により案内されて、図5において下方へ駆動されるが、型締位置においてスライドコア45の下面と可動側金型40の凹部42との間には所定の間隔があり、所定のキャビティが構成される。このとき、コア46により係止用の凹部33が成形される。また、スライドコア45にはガイドピン39が挿通される透孔47が設けられ、可動側金型40のパーティング面にはガイドピン39に対応してガイド孔49が設けられている。
【0006】
他方の半容器B1を成形するための金型構造は、当業者には容易に理解されるので図示されていないが、前記したような固定側金型と可動側金型とにより本体部30’が成形され、アンダーカット部33’は、エジェクタプレートによりガイドされるスライドコアを兼ねたエジェクタピンにより成形されるようになっている。または、一対の半容器A1、B1が前記したような一組あるいは一葉の金型で実質的に同時に成形されるようになっている。
【0007】
次に、一方の半容器A1の成形例について説明する。図5の(ア)に示されているように、可動側金型40を固定側金型35に対して型締めする。そうすると、スライドコア45は下方へ駆動され、固定側金型35の凹部37、38と、可動側金型40の凹部42とパーティング面43とスライドコア45の下面及びコア46とによりキャビティが構成される。溶融樹脂を射出する。冷却固化を待って可動側金型40を開くと、一方の半容器A1は、形状その他の条件により可動側金型40の方に残って開かれる。開くとき、図5の(イ)に示されているように、スライドコア45は上方へスライドして可動側金型40を開くことができる。他方の半容器B1も同様にして成形する。
【0008】
図示されない治具に、例えば一方の半容器A1をセットし、その内側にフィルターを内装する。他方の半容器B1を、そのフック用の凸部33’、33’、…が、一方の半容器A1の係止用の凹部33、33、…に係合するように突合部T’を突き合わせる。突き合わせて仮組み立てた状態が図4の(オ)の断面図に示されている。所定の押圧力で押さえた状態の突合部T’に超音波振動の発振用ホーンを当てて発振する。超音波振動により突合部T’は溶融して融着される。超音波振動に代えて接着剤によっても略同様にして製造することができる。
【0009】
このような製造方法によると、特に超音波振動により融着すると、一対の半容器A1、B1の開口部あるいは突合部TTを突き合わせるときに仮組立が必要となり、位置合わせのためにも係止用の凹部33、33、…とフック用の凸部33’、33’、…は避けられない構造となっている。これらの構造は、前述したようにアンダーカット部であり、金型は複雑な構造となり、高価になつている。また、アンダーカット部はスライドコア等で成形されるが、可動側金型を開くときスライドコアが成形品と接触してスライドするので、成形品から微粉が発生するという問題があり、また接触により成形品に擦れ傷が付くという問題もある。さらには、超音波振動により成形品から微粉が発生するという問題もある。スライドコアにより生じる微粉は、フィルターを内装する前に除去することもできるが、突合部Tを超音波振動により融着するときに生じる微粉は除去することができないので、そのまま製品として出荷することになる。また、超音波振動の発振用ホーンのセットのように、人手による手作業が多いという問題もある。要するに、一対の半容器A1、B1は射出成形方法により製造され、そして一対の半容器A1、B1の接合には接着方法あるいは超音波融着方法のような別の方法によらざるを得ないので、製造工程が煩雑になりコスト高になる。また、白血球除去フィルターは医療機器で、接合部は高度な気密性及び液密性が要求されるが、超音波融着のような接合方法では、このような要求を必ずしも満たすことはできない。
【0010】
そこで、一対の半容器の突合部も射出成形により接合する白血球除去フィルターの製造方法が特許文献1により提案されている。同文献1には、1次成形により、一対の半容器の一方の容器には血液の入口を、他方の半容器には出口を有するように射出成形し、1次成形された半容器内に濾材を内装し、そして一対の半容器の開口部を突き合わせ、突き合わせた全周部に2次成形により溶融樹脂を射出して、一対の半容器を一体化する、白血球除去フィルターの製造方法が示されている。
【0011】
接着方法あるいは融着方法の他に、2次射出成形により開口部あるいは突合部を接合する方法も従来周知である。すなわち、一対の半中空体を、その開放端に突合部を有するように成形する1次成形と、この1次成形された半中空体の突合部を突き合わせ、突き合わせることにより構成される接合用のキャビティに溶融樹脂を射出する2次成形とから中空体を成形する製造方法は従来周知である。この射出成形法によると、精度の高い中空成形品を得ることができる、自動成形できる、複雑な形状にも対応できる、等の数々の利点が得られるが、接合強度が落ちることがある。図6の(ア)により、その理由を説明する。一対の半中空体A2,B2は、それぞれの金型50、51により1次成形され、ある程度固化した後に型開され、そして金型50、51に残った状態で一方の金型50をスライド的に駆動して一対の半中空体A2、B2の開口部が突き合わされるが、固化するとき合成樹脂は収縮する。特に、開口部近傍は肉厚になっているので、収縮量は大きく、また開口部近傍は自由端になっているので、図6の(ア)においてd、dで示されているように、開放端部は収縮して金型50、51の面から離れる。そうすると、2次成形用の溶融樹脂を接合用キャビティcに充填するとき、樹脂が隙間d、dに流れ込むことになる。隙間に流れ込むと、充填不足になり、強度が落ちることになる。あるいは、接合部の外観形状が損なわれることになる。そこで、特許文献2により、一対の半中
空体の接合部が改良された中空体の製造方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2001−226271号公報
【特許文献2】特公平7−10541号公報
【0013】
特許文献2には、図6の(イ)に示されているようにして一対の半中空体A3、B3から中空体を製造する製造方法が示されている。図6の(イ)は2次成形をするために型閉めている途中の段階を示す図であるが、この図に示されているように、一対の半中空体A3、B3を1次成形するとき、その突合部a’、b’の先端部を金型50’、51’のパーティングラインP’よりも多少突き出るように成形し、2次成形のために型締めするときパーティングラインP’が当接する前に突合部a’、b’が互いに当接するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載の製造方法によると、突合部も射出成形により接合されるので、人体に有害な溶剤、微粉末片等の残留物の少ない白血球除去フィルターが得られ、また1、2次成形とも射出成形により実施されるので、精度の高い白血球除去フィルターを安価に自動的に製造することができる利点はある。しかしながら、1、2次の射出成形により中空体を製造するときの、一般的な特長が生かされているだけで、接合部の強度に関しては改良の余地が認められる。一方、特許文献2に記載の製造方法によると、金型50’、51’のパーテイングP’間に隙間d’が残っている時に、突合部a’、b’の先端部が当接するので、隙間d’が無くなるように型締めすると、突合部a’、b’は、反作用により互いに矢印X’、Y’方向に押されることになる。押されると、一対の半中空体A3、B3の本体部分と金型50’、51’の表面との間に隙間Dが生じていると、一対の半中空体A3、B3は隙間Dを埋めるように水平方向に移動する。移動すると、接合部a’、b’の肉厚部の外側の斜面s’、s’は金型50’、51’の内表面に接するようになる。これにより、一対の半中空体A3、B3の冷却時の収縮分は吸収され、接合部a’、b’の肉厚部の斜面s’、s’と金型50’、51’の内表面は密接し、この部位から接合用キャビティc’に充填される2次成形用の溶融樹脂が漏れるのは防止される。しかしながら、冷却による収縮は自由端部に生じやすく、すなわち接合部の開放端部近傍に生じ易く、半中空体A3、B3の本体部分と金型50’、51’の内表面との間に隙間Dは生じていないので、突合部a’、b’が互いに矢印X’、Y’方向に押されても、移動しない。移動しないので、接合部a’、b’の肉厚部の斜面s’、s’と金型50’、51’の内表面との間は密接しない。以上のような理由により、特許文献2に示されている中空体の製造方法を血液液浄化装置あるいは白血球除去フィルターの製造にそのまま適用しても効果はあまり期待できない。
【0015】
従って、本発明は、人体に有害な溶剤、微粉末片等の残留物はなく、1、2次射出成形が適用されるにも拘わらず接合強度、接合部の気密性、液密性等は高く、医療器具として安全に使用できる体液浄化カラムを提供することを目的としている。また、上記のような特徴を有する体液浄化カラムの製造方法及び製造装置を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、1次射出成形により一対の、円形、方形等の半容器を成形し、1次成形された一対の半容器の内部に体液浄化用充填材を内装し、そして2次射出成形により一対の半容器の接合部あるいは突合部を接合して体液浄化カラムを製造するように構成される。このとき、1次成形された一対の半容器の突合部の近傍に熱収縮が生じていても、2次成形のために型閉じすると、熱収縮分が補償されるように構成される。すなわち、請求項1に記載の発明は、体液の出入り口を有する容器本体と、該容器本体内に設けられている体液浄化用充填材とからなり、前記入口から供給される体液が前記体液浄化用充填材により浄化され、そして前記出口から出ていくようになっている体液浄化カラムであって、前記容器本体は、1次射出成形により成形された一対の半容器が、接合部位において2次射出成形により接合されたもので、前記接合部位は本体部から斜め内方に広がるように傾斜して延びている接合部の突合せ先端部の外周部に位置するように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカラムにおいて、前記一対の半容器の一方の半容器に体液の出入管が一体的に成形されている。
【0017】
請求項3に記載の発明は、スライド金型と可動金型とを使用して、一対の半容器を成形するとき、前記一対の半容器を本体部と、該本体部から斜め内方に広がるように傾斜して延びている接合部と、該接合部の突合せ先端部と、該先端部近傍の外周に成形されている接合用キャビティの半分とを有し、前記突合せ先端部が前記金型のパーティングラインよりも所定量だけ突き出るように成形する1次射出成形と、前記1次射出成形後に、前記一対の半容器がそれぞれの金型に残った状態で型を開いて前記一対の半容器内に体液浄化用充填材を内装し、それぞれの金型に残っている前記一対の半容器の接合部の突合せ先端部を整合させ、そして型締めすることにより、前記一対の半容器の接合部の先端部近傍を前記金型の内面に圧接して、そして接合用キャビティに射出充填する2次射出成形とにより製造するように構成される。
【0018】
請求項4に記載の発明は、第1、2の成形位置を採るように駆動されるスライド金型と、該スライド金型に対して、少なくとも体液浄化用充填材を内装することができる間隔に開くことができると共に、型締めされる可動金型とからなり、
前記可動金型には、パーティングラインから所定量引っ込んだ可動側凹部とパーティングラインから所定量突き出た可動側コアとが設けられ、前記スライド金型には、前記可動側凹部に対応してパーティングラインから同様に所定量突き出たスライド側コアと、前記可動側コアに対応してパーティングラインから所定量引き込んだスライド側凹部とが設けられ、前記スライド金型を第1の成形位置にして型締めすると、前記可動金型の可動側凹部と前記スライド金型のスライド側コアとにより第1の半容器を成形するための第1のキャビティと、前記可動金型の可動側コアと前記スライド金型のスライド側凹部とにより第2の半容器を成形するための第2のキャビテとが構成され、前記スライド金型を第2の成形位置にすると、前記可動金型の凹部の開口部と前記スライド金型の凹部の開口部とが整合するようになっている製造装置であって、前記可動側凹部は、可動側底部と、該可動側底部からテーパ状にパーテイングライン側に向かって拡径している可動側傾斜部と、該傾斜部の終端部からパーテイングライン側に水平に延びている可動側水平部とからなり、前記スライド側コアは、前記可動側底部に対応したスライド側頂部と、前記可動側傾斜部に対応したスライド側テーパ部と、パーテイングラインと平行で該パーテイングラインよりも所定量だけ深く切り込んでいるスライド側切込部と、該スライド側切込部の外側の、前記可動側水平部に対応したスライド側環状小コアとからなり、前記可動側コアは、可動側頂部と、可動側テーパ部と、パーテイングラインと平行で該パーテイングラインよりも所定量だけ深く切り込んでいる可動側切込部と、該可動側切込部の外側の可動側環状小コアとからなり、前記スライド側凹部は、前記可動側頂部に対応したスライド側底部と、前記可動側テーパ部に対応し、前記スライド側底部からテーパ状にパーテイングライン側に向かって拡径しているスライド側傾斜部と、前記可動側環状小コアに対応し、前記スライド側傾斜部の終端部からパーテイングライン側に水平に延びているスライド側水平部とからなるように構成される。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る体液浄化カラムは1、2次の射出成形により製造されているので、人体に有害な溶剤、微粉末片等の残留物はない。また、1次射出成形により成形された一対の半容器が、接合部位において2次射出成形により接合されたもので、その接合部位は本体部から斜め内方に広がるように傾斜して延びている接合部の突合せ先端部の外周部に位置しているので、2次成形するとき型締めすると接合部の先端部は金型の内表面に圧着されている。したがって、2次成形用の溶融樹脂を射出するとき、熱収縮が生じていても、溶融樹脂が漏れることなく、本発明に係る体液浄化カラムは、接合強度、接合部の気密性、液密性等は高く、医療器具として安全に使用できる。
【0020】
また、他の発明によると、1次射出成形により、一対の半容器を成形するとき、半容器を本体部と、該本体部から斜め内方に傾斜して延びている接合部と、該接合部の突合せ先端部と、該先端部近傍の外周に成形されている接合用キャビティの半分とを有し、前記突合せ先端部が前記金型のパーティングラインよりも所定量だけ突き出るように成形するので、2次成形のために型締めすると、突合せ先端部が先に当接して型締される。接合部は傾斜しているので、接合部に水平方向に作用する力には外方に作用する力も含まれ、この外方に作用する力により曲げモーメントが働き、接合用キャビティの近傍の接合部の表面は可動金型及びスライド金型のそれぞれの内面に圧着する。これにより、熱収縮が起こっていても2次射出成形用の樹脂が漏れることはないという、本発明に特有の効果が得られる。請求項4の製造装置の発明によると、スライド側切込部と可動側切込部は、パーティングラインよりも所定量だけ深く切り込んでいるで、該製造装置により1次成形される半容器の突合せ先端部は、パーティングラインよりも所定量だけ突き出ている。したがって、2次射出成形のために型締めすると、前述したように接合部には曲げモーメントが働き、たとえ接合部の先端部近傍に熱収縮により剥離が生じていても、接合部の先端部近傍を金型の表面に圧着することができる。すなわち、本発明の製造装置によると、前記したように安全に使用できる体液浄化コラムを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造装置を示す図で、その(ア)は全体を一部断面にして示す正面図、その(イ)は図1の(ア)において点線イで囲まれた部分の拡大図、その(ウ)は図1の(ア)において点線ウで囲まれた部分の拡大図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る製造装置の金型の各状態を示す図で、その(ア)は1次成形している状態を示す断面図、その(イ)は1次成形が終わって可動金型を開いた状態を示す断面図、その(ウ)はスライド金型を2次成形位置へスライドさせた状態を示す断面図、その(エ)は2次成形が終わった状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る製造装置の作用状態を示す図で、その(ア)は図2の(ウ)において点線で囲まれている部分(ア)の拡大詳細図、その(イ)は図2の(エ)において点線で囲まれている部分(イ)の拡大詳細図である。
【図4】従来の白血球除去フィルターを示す図で、その(ア)は全体を示す斜視図、その(イ)は一方の半容器を拡大して示す斜視図、その(ウ)は図4の(イ)において矢視ウ−ウ方向に見た断面図、その(エ)は他方の半容器の要部を断面にして示す、図4の(ウ)に相当する断面図、その(オ)は一対の半容器を仮組み立てた状態で示す要部断面図である。
【図5】図4に示されている従来の一方の半容器を成形するための金型を示す図で、その(ア)は型閉じして一方の半容器を成形した状態を示す断面図、その(イ)は型開してスライドコアが上方へ駆動された状態を示す断面図である。
【図6】従来の接合部の例を示す図で、その(ア)一般的な従来例を、その(イ)は特許文献2に示されている従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
最初に、製造装置の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る製造装置は、図1に示されているように、概略的には可動金型1と、スライド金型11とからなっている。可動金型1は、図には示されていないが射出機ベッド上に型開閉方向に移動可能に設けられている可動盤に取り付けられ、スライド金型11は射出機ベッド上に固定されている固定盤20に、図1の(ア)において上下方向にスライド可能に設けられている。
【0023】
可動金型1の上方寄りには、パーティングラインPに開口した可動側凹部2kが形成されている、また、下方寄りにはパーティングラインP側から所定量突き出た可動側コア12kが形成されている。これらの可動側凹部2kと可動側コア12kと、後述するスライド金型11のスライド側コアと凹部とにより、一対の半容器を成形するための第1、2のキャビティCa、Cbが構成されることになる。
【0024】
可動側凹部2kは、パーティングラインPに平行な所定大きさの略方形を呈する可動側底部3kと、この底部3kの端部からテーパ状にパーティングラインP側に向かって拡径している可動側傾斜部4kと、該傾斜部4kの終端部からパーティングラインP側に水平に延びている可動側水平部5kと、該水平部5kの終端部からパーティングラインPに平行に延びている可動側垂直部6kとからなっている。可動側垂直部6kは、本実施の形態では型合面すなわちパーティングラインPとなっている。前記可動側傾斜部4kが水平線あるいは水平面となす傾斜角度θは望ましくは3°以上に選定されている。このように構成されている可動側底部3kの上下の両端部近傍には、該底部3kから所定深さのボア7、7が形成され、このボア7、7内に可動金型1を貫くようにして、抜き勾配が付けられた柱状コア8、8が抜き差し自在に設けられている。ボア7、7の内径は、柱状コア8、8の外径よりも所定量だけ大きい。このボア7、7と柱状コア8、8とにより一方の半容器に体液の出入り口管9、9が成形されることになる。
【0025】
スライド金型11のパーティングラインP側の上方寄りには、可動側凹部2kに対応し、この凹部2kよりも所定寸法だけ小さく同じ形状をしたスライド側コア12sが形成されている。同じ形状をしているので詳しい説明はしないが、スライド側コア12sは、スライド側頂部13sと、スライド側テーパ部14sと、パーティングラインPと平行で該パーティングラインPよりも所定量だけ切り込んでいるスライド側切込部15sとからなっている。スライド側切込部15sの外側にスライド側環状小コア17sが形成されている。この環状小コア17sの外側の面は、スライド側垂直部16sすなわちパーティングラインPとなっている。スライド側切込部15sは、スライド側垂直部16sよりも所定量だけ深い。このようなスライド側切込部15sとスライド側垂直部16sとを接続するようにして、所定幅のスライド側環状小コア17sが形成されている。後述するように、1次成形位置で、可動金型1をスライド金型11に対して型締めすると、可動金型1の可動側垂直部6kはスライド金型11のスライド側垂直部16sに当接し、可動金型1の可動側水平部5kの内周部に、スライド側環状小コア17sの外周部が密接するようになっている。このとき、スライド側切込部15sはパーティングラインPよりも所定量だけ引き込んだ位置になる。これにより、後述するように、可動側水平部5kとスライド側環状小コア17sとにより、接合用キャビティの半分が成形される。このとき、接合用キャビティの突合部の先端部はパーティングラインPよりも所定量だけ突き出た状態で成形されることになる。
【0026】
可動金型1の下方位置には、本実施の形態では、前述したスライド金型11のスライド側コア12sと同じ形状をした、同じ大きさの可動側コア12kが形成されている。大きさ及び形状において同じであるので詳しい説明はしないが、可動側コア12kは、可動側頂部13kと、可動側テーパ部14kと、パーティングラインPと平行で該パーティングラインPよりも深く切り込んでいる可動側切込部15kと、パーティングラインPに平行に延びている可動側垂直部16kとからなっている。可動側垂直部16kは、パーティングラインPとなっている。可動側切込部15kは、可動側平行部16kよりも所定量だけ深い。このような可動側切込部15kと可動側平行部16kとにまたがって可動側環状小コア17kが形成されている。
【0027】
スライド金型11の下方寄りには可動金型1の可動側コア12kに対応し、前述した可動金型1の可動側凹部2kと同じ形状をした、同じ大きさのスライド側凹部2sが形成されている。スライド側凹部2sは、パーティングラインPに平行な所定大きさのスライド側底部3sと、この底部3sの端部からテーパ状にパーティングラインP側に向かって拡径しているスライド側傾斜部4sと、該傾斜部4sの終端部からパーティングラインP側に水平に延びているスライド側水平部5sと、該水平部5sの終端部からパーティングラインPに平行に延びているスライド側垂直部6sとからなっている。後述するように、可動金型1をスライド金型11に対して型締めすると、可動金型1の可動側垂直部16kはスライド金型11のスライド側垂直部16sに当接し、可動側環状小コア17kの外周部は、スライド金型11の水平部5sの内周面に密接し、切込部15sはパーティングラインPよりも所定量引き込んだ位置になる。これにより、前述したように、接合用キャビティの他の半分が構成される。このとき、接合用キャビティの突合部の先端部はパーティングラインPよりも所定量だけ突き出た状態で成形されることになる。なお、本実施の形態によると、体液の出入り口管は一方の半容器に形成されるので、スライド側凹部2sにはボア、柱状コア等は設けられていない。
【0028】
スライド金型11には、該金型11を横切るようにして1次成形用の第1、2のスプル21、22と、2次成形用の第3のスプル23が形成されている。第1、2のスプル21、22の一方の端部は、スライド金型11が図1の(ア)に示されている1次成形位置にあるときは、共通のランナ24を介して固定盤20の主スプル25に連通し、第1のスプル21の他方はゲートを介してスライド側コア12sの頂部13sに開口している。第2のスプル22の他方はゲートを介してスライド側凹部2sの底部3sに開口している。第3のスプル23の一方は、2次成形位置では固定盤20の主スプル25に連通し、他方はゲートgを介して接合用キャビティに連通するようになっている。
【0029】
固定盤20の上端部には、支柱26が固定され、この支柱26から支持アーム27がスライド金型11の方へ延びている。そして、この支持アーム27に、そのロッド29がスライド金型11の上端に固定されているピストンシリンダ・ユニット28が取り付けられている。これにより、スライド金型11は、図1の(ア)に示されている1次成形位置と、後述する2次成形位置との間を駆動される。
【0030】
次に、図2も参照しながら上記製造装置を使用した製造例について説明する。図1の(ア)は、スライド金型11が1次成形位置にある状態を示す断面図であるが、この状態で可動金型1をスライド金型11に対して型締めする。そうすると、可動金型1の可動側凹部2kとスライド金型11のスライド側コア12sとにより、1次成形用の第1のキャビティCaが構成される。この第1のキャビティCaには、図2の(ア)には充填された状態で示されているが、第1の半容器Aの本体部Ahを成形するためのキャビティと、接合部Atを成形するためのキャビティと、図3の(ア)に示されているように接合用キャビティCの半分Ckを成形するためのキャビティとが含まれている。同時に可動金型1の可動側コア12kとスライド金型11のスライド側凹部2sとにより、1次成形用の第2のキャビティCbが構成される。この第2のキャビティCbにより第2の半容器Bが同様に成形される。このようにして第1、2のキャビティCa、Cbが構成され、そして充填された状態が図2の(ア)に示されている。
【0031】
射出ユニットSUから溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、主スプル25、共通のランナ24、第1、2のスプル21、22及びゲートを通って第1、2のキャビティCa、Cbにそれぞれ充填され、第1、2の半容器A、Bが実質的に同時に成形される。この1次射出成形により、第1、2の半容器A、Bが成形された状態は図2の(ア)に示されている。このとき、図3の(ア)に拡大して示されているように、接合部At、Btの開放端部の外周部には接合用キャビティCk、Csが成形される。また、接合部At、Btの突合せ先端部T、TはパーティングラインPよりも所定量だけ突き出て成形される。さらには、第1の半容器Aの本体部Ahの両端部近傍には体液の出入り口管9(9)が形成される。しかし、体液の出入り口管9(9)は、図2では省略されている。
【0032】
第1、2の半容器A、Bが変形しない程度の温度に下がったら可動金型1を開く。第1、2の半容器A、Bがそれぞれの金型1、11に残って開かれた状態が図2の(イ)に示されている。次いで、スライド金型11をピストンシリンダ・ユニット28に作動流体を供給して、図1の(ア)において上方の2次成形位置へ駆動する。そうして、第1、2の半容器A、Bの内側の、上下の体液出入り口管9、9の間に体液液浄化用充填材Fを内装する。体液液浄化用充填材Fには、特開2003−225304に開示されているような、血液、血漿、腹水等の体液から蛋白結合物質の除去や、エンドトシキンのような体液中の有害物質の吸着、イオン交換、酸素反応などにより浄化する能力を有する、例えば布帛が適用される。
【0033】
1次成形された第1、2の半容器A、Bは、冷却される過程で熱収縮して、自由端になっている接合部At、Btの開放端部の近傍の外側は、図3(ア)に示されているように、可動側傾斜部4k及びスライド側傾斜部4sから剥離している。この状態で型締めする。そうすると、接合部At、Btの突合せ先端部T、TはパーティングラインP、Pよりも所定量だけ突き出ているので、突合せ先端部T、Tが先に当接して型締される。接合部At、Btは、水平線とθだけ傾斜しているので、接合部At、Btに水平方向に作用する力Fh、Fhには外方に作用する力Fuも含まれている。この外方に作用する力Fuにより、図3の(イ)に示されているように、接合部At、Btには点Ok、Osを支点として曲げモーメントM、Mが働き、接合用キャビティCk、Csの近傍の接合部At、Btの表面は可動金型1及びスライド金型11のそれぞれの内面に圧着する。これにより、熱収縮が起こっていても2次射出成形用の樹脂が漏れることはない。主スプル25及び第3のスプル23から2次成形用の溶融樹脂を接合用キャビティC(Ck+Cs)に射出する。2次射出成形している状態が図2の(エ)に示されている。順序は格別に問わないが、柱状コア9、9を抜く。従来周知のようにして可動金型1を開いて体液浄化カラムを取り出す。以下同様にして製造する。
【0034】
上記実施の形態では、一対の第1、2の半容器A、Bの平面形状は、略方形を呈することが想定されているが、本体部Ah、Bhが半円筒状でも同様に実施できる。また、一対の第1、2の半容器A、Bは、開口部あるいは接合部の形状及び大きさが一致すれば、本体部分の形状、大きさ等が異なっていても同様にして製造できる。さらには、上記実施の形態では、体液の出入り口管9、9は、ともに第1の半容器Aの方に成形されているが、図4の(ア)に示されている従来例のように第1、2の半容器A、Bに分けてコーナ部に成形することもできる。また、図には示されていないが、第1、2の半容器を1次成形するとき、2つ割り構造の半管として一体的に成形し、2次成形時に一対の半管も突き合わせて2次成形により一体化することもできる。
【符号の説明】
【0035】
1 可動金型 2k 可動側凹部
2s スライド側凹部 7 ボア
8 柱状コア 11 スライド金型
12k 可動側コア 12s スライド側コア
15k 可動側切込部 15s スライド側切込部
17k 可動側環状小コア 17s スライド側環状小コア
A、B 第1、2の半容器 Ah、Bh 本体部
At、Bt 接合部 Ca、Cb 第1、2のキャビテ
C 接合用キャビティ T、T 突合せ先端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液の出入り口を有する容器本体と、該容器本体内に設けられている体液浄化用充填材とからなり、前記入口から供給される体液が前記体液浄化用充填材により浄化され、そして前記出口から出ていくようになっている体液浄化カラムであって、
前記容器本体は、1次射出成形により成形された一対の半容器が、接合部位において2次射出成形により接合されたもので、前記接合部位は本体部から斜め内方に広がるように傾斜して延びている接合部の突合せ先端部の外周部に位置していることを特徴とする体液浄化カラム。
【請求項2】
請求項1に記載のカラムにおいて、前記一対の半容器の一方の半容器に体液の出入管が一体的に成形されていることを特徴とする体液浄化カラム。
【請求項3】
スライド金型と可動金型とを使用して、一対の半容器を成形するとき、前記一対の半容器を本体部と、該本体部から斜め内方に広がるように傾斜して延びている接合部と、該接合部の突合せ先端部と、該先端部近傍の外周に成形されている接合用キャビティの半分とを有し、前記突合せ先端部が前記金型のパーティングラインよりも所定量だけ突き出るように成形する1次射出成形と、
前記1次射出成形後に、前記一対の半容器がそれぞれの金型に残った状態で型を開いて前記一対の半容器内に体液浄化用充填材を内装し、
それぞれの金型に残っている前記一対の半容器の接合部の突合せ先端部を整合させ、そして型締めすることにより、前記一対の半容器の接合部の先端部近傍を前記金型の内面に圧接して、そして接合用キャビティに射出充填する2次射出成形とにより製造する、体液浄化カラムの製造方法。
【請求項4】
第1、2の成形位置を採るように駆動されるスライド金型と、該スライド金型に対して、少なくとも体液浄化用充填材を内装することができる間隔に開くことができると共に、型締めされる可動金型とからなり、
前記可動金型には、パーティングラインから所定量引っ込んだ可動側凹部とパーティングラインから所定量突き出た可動側コアとが設けられ、
前記スライド金型には、前記可動側凹部に対応してパーティングラインから同様に所定量突き出たスライド側コアと、前記可動側コアに対応してパーティングラインから所定量引き込んだスライド側凹部とが設けられ、
前記スライド金型を第1の成形位置にして型締めすると、前記可動金型の可動側凹部と前記スライド金型のスライド側コアとにより第1の半容器を成形するための第1のキャビティと、前記可動金型の可動側コアと前記スライド金型のスライド側凹部とにより第2の半容器を成形するための第2のキャビテとが構成され、
前記スライド金型を第2の成形位置にすると、前記可動金型の凹部の開口部と前記スライド金型の凹部の開口部とが整合するようになっている製造装置であって、
前記可動側凹部(2k)は、可動側底部(3k)と、該可動側底部からテーパ状にパーテイングライン側に向かって拡径している可動側傾斜部(4k)と、該傾斜部の終端部からパーテイングライン側に水平に延びている可動側水平部(5k)とからなり、
前記スライド側コア(12s)は、前記可動側底部(3k)に対応したスライド側頂部(13s)と、前記可動側傾斜部(3k)に対応したスライド側テーパ部(14s)と、パーテイングラインと平行で該パーテイングラインよりも所定量だけ深く切り込んでいるスライド側切込部(15s)と、該スライド側切込部の外側の、前記可動側水平部(5k)に対応したスライド側環状小コア(17s)とからなり、
前記可動側コア(12k)は、可動側頂部(13k)と、可動側テーパ部(14k)と、パーテイングラインと平行で該パーテイングラインよりも所定量だけ深く切り込んでいる可動側切込部(15k)と、該可動側切込部の外側の可動側環状小コア(17k)とからなり、
前記スライド側凹部(2s)は、前記可動側頂部(13k)に対応したスライド側底部(3s)と、前記可動側テーパ部(14k)に対応し、前記スライド側底部(3s)からテーパ状にパーテイングライン側に向かって拡径しているスライド側傾斜部(4s)と、前記可動側環状小コア(17k)に対応し、前記スライド側傾斜部(4s)の終端部からパーテイングライン側に水平に延びているスライド側水平部(5s)とからなる、体液浄化カラムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−80966(P2012−80966A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−227905(P2010−227905)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【出願人】(500065244)株式会社坂本金型工作所 (2)
【Fターム(参考)】