説明

体表面汚染モニタ

【課題】体表面汚染モニタに必要な放射線検出器の量を減らし、機器構成を簡素化した構成によって被検者の体表面全体の放射能汚染を検出することが可能な体表面汚染モニタを得る。
【解決手段】解体自在な複数の板材によって構成された筐体と、放射能の有無を検出するプラスチックシンチレーションファイバをプレート状に束ねて筐体に固定された検出部と、検出部から検出される放射能を計測する計測手段とを備え、被検者の体表面全体の放射能汚染を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、原子力発電所等の原子力施設で管理区域に入域した作業者などが管理区域外へ退域するときに体表面が放射能汚染されていないことを確認するための放射線検出装置およびこれを用いた体表面汚染モニタに関するものであり、特に臨界事故等、放射能汚染が生じた可能性のある現場に、迅速に設置し、人体への放射能汚染の有無を判定する放射線検出装置およびこれを用いた体表面汚染モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6には、従来より有る体表面ゲートモニタの構成例が示されている。同図に示す体表面ゲートモニタ7は、前面検出器収容部8、後面検出器収容部9、側面検出器収容部10及び、頭部検出器収容部11より構成されている。ゲートモニタ内に入った被検者2bの前面が対面する前面検出器収容部8には放射線検出器81〜86が収納され、被検者2bの後面が対面する後面検出器収容部9には放射線検出器91〜96が収納されている。また、被検者2bの左右側面が対面する左右の側面検出器収容部10は放射線検出器101〜108が収納されている。
なお、左右の側面検出器収容部10は、体表面ゲートモニタ7の左右の出入口に対して、図6(c)に示すように、回転扉に取り付けられている。また、被検者2bの身長に合わせて上下動する頭部検出器収容部11は放射線検出器111〜113が収納されている。
【0003】
かかる体表面ゲートモニタ7では、ゲートモニタ内に入った作業者が、測定位置で静止して測定可状態になると、各放射線検出器にて作業者の全身表面の放射線密度を測定する。表面汚染密度が予め定められた閾値を越えた場合には、放射線管理者に対して警報を発する(例えば特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平8−248134号公報(第3〜4頁、第9図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の体表面汚染モニタでは、被検者の体表面全体の放射能汚染分布を測定するためには、多数の放射線検出器が必要であった。
【0006】
上述したように従来の体表面汚染モニタでは、複数の放射線検出器を必要するため、測定装置全体の構成が大きくなり、臨界事故等の放射能汚染に対応して移動・設置することが困難であった。
【0007】
本発明は、以上のような課題を鑑みてなされたもので、簡単な構成で被検者の体表面全体の放射能汚染を検出することが可能な放射線検出装置を得ること、体表面汚染モニタに必要な放射線検出器の量を減らすことで、機器構成を簡素化することが可能となり、臨界事故等に放射能汚染に対応するために移動・設置することができる体表面汚染モニタを得ること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る体表面汚染モニタは、解体自在な複数の板材によって構成された筐体と、放射能の有無を検出するプラスチックシンチレーションファイバをプレート状に束ねて筐体に固定された検出部と、検出部から検出される放射能を計測する計測手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る体表面汚染モニタは、解体自在な複数の板材によって構成された筐体と、放射能の有無を検出するプラスチックシンチレーションファイバをプレート状に束ねて筐体に固定された検出部と、検出部から検出される放射能を計測する計測手段とを備えたので、簡単な構成で被検者の体表面全体の放射能汚染を検出することが可能な体表面汚染モニタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、この発明に於ける実施例1の適用対象である体表面汚染モニタの一例を示す配置図である。
図に於いて1はプラスチックシンチレーションファイバ1aをプレート状に束ねた検出部であり、この検出部1を被験者の周囲に配置し、被験者の体表面の放射能の有無を検出するように構成することにより放射線検出装置をなすものである。
プラスチックシンチレーションファイバ1aは剛性が低いものであり、ある程度曲げたりすることができるものである。
2aは、放射能汚染を検査される被検者である。
3は、検出部1を固定する筐体であり、この中に被検者2aが入り、体表面の放射能汚染の有無が測定される。
4aは、アンプ等の計測装置である。
【0011】
プラスチックシンチレーションファイバ1aを例えば筐体3の壁面に取り付け、筐体3の中に被検者2aが入ることで、被検者2aの周囲にプラスチックシンチレーションファイバ1aを配置することが可能となる。
これにより、被検者2aの体表面のいずれの部位に放射性物質が付着していたとしても、被験者2aから放射される放射線はプラスチックシンチレーションファイバ1aを通過しこれにより放射能の有無を直接、検出することができる。
【0012】
例えば、被検者2aの背中に放射性物質が付着していた場合、プラスチックシンチレーションファイバ1aが被検者2aの背面にも配置されているため、被検者2a自身によって遮蔽されることなく、直接、放射線を検出することができる。
被検者2aの周囲を検出部1が囲んでいなければ、具体的には、被検者2aの背面にプラスチックシンチレーションファイバ1aが配置されていなければ、被検者2aの体表面に付着した放射性物質からの放射線は被検者2a自身を透過しなければ、検出部へ入射することができないため、放射線の強度が減衰し、被検者2aの体表面の放射能汚染を検知する精度が低下する。
【0013】
図2は、図1に於ける検出部1のより具体的な構成を説明するための図である。
プラスチックシンチレーションフィアバ1aとは、放射線が入射すると蛍光を発する物質であるプラスチックシンチレータを光ファイバに加工したものである。
プラスチックシンチレーションファイバ1aに放射線が入射すると、蛍光を発する。この光はプラスチックシンチレーションファイバ1aが光ファイバであるため、プラスチックシンチレーションフィアバの一端に取り付けられた光検出器5にて検出される。
光検出器5からの出力信号は計測装置4aにて計測される。
上述した放射線検出のメカニズムは、プラスチックシンチレーションファイバ1a上のいずれ位置に於いても同様である。すなわち、プラスチックシンチレーションファイバ1a上のいずれの位置に放射線が入射しても検出することが可能である。
【0014】
プラスチックシンチレーションファイバ1aは、曲げることが可能であるので、環状に曲げて配置することや、図1の様に筐体に沿って配置することが可能である。これにより、プラスチックシンチレーションフィアバ1aの内側から2π方向へ放出される放射線を1本のプラスチックシンチレーションフィアバ1aにて検出することが可能である。
【0015】
プラスチックシンチレーションファイバ1aは、柔らかく、曲げることが可能であるため、上述した体表面汚染モニタに於ける可動部、例えば被検者2aが出入りする扉の付け根部分にも連続してプラスチックシンチレーションファイバ1aが配置されていても問題はない。
【0016】
複数のプラスチックシンチレーションフィアバ1aをプレート状に束ねることで、検出部面積を増大し、感度を向上させることが可能である。また、プラスチックシンチレーションファイバ1aをプレート状に束ねることにより、周方向のみならず、縦方向へ放出される放射線も検出することが可能である。
【0017】
複数のプラスチックシンチレーションフィアバ1aを用いても、プラスチックシンチレーションファイバ1aプレート状に束ねて、一つの光検出器5へ接続することで、一系統の計測装置4aのみで全てのプラスチックシンチレーションファイバ1aへ入射した放射線を検出することが可能である。
【0018】
実施の形態2.
図3は、この発明に於ける実施例2の適用対象である体表面汚染モニタの一例を示す配置図である。
図に於いて1はプラスチックシンチレーションファイバ1aをプレート状に束ねた検出部である。
2aは、放射能汚染を検査される被検者である。
3は、検出部1を固定する筐体であり、この中に被検者2aが入り、体表面の放射能汚染の有無を測定する。
4aは、アンプ等の計測装置である。
【0019】
プラスチックシンチレーションファイバ1aをプレート状に束ね、筐体3に沿って環状に配置した放射線検出部を、図3に示すように複数個、鉛直方向に配置し、各シンチレーションフィアバ1a束ごとに光検出器及び計測装置4aを取り付ける。
【0020】
各シンチレーションファイバ1a束ごとに入射する放射線を計測することで、被検者2aの高さ方向の体表面の汚染分布を測定することが可能である。
【0021】
各シンチレーションファイバ1a束ごとに検出された放射線強度を整理し、図4に示すように被検者2aのどの部位にどの程度の体表面放射能汚染があるかをビジブルに表示することにより、視認性の良い体表面汚染モニタを得ることができる。
【0022】
実施の形態3.
図5は、この発明に於ける実施例3の適用対象である体表面汚染モニタ及び部品の一例を示す配置図である。
図に於いて1はプラスチックシンチレーションファイバ1aをプレート状に束ねた検出部である。
2aは、放射能汚染を検査される被検者である。
3aは、検出部1を固定する筐体であり、この中に被検者2aが入り、体表面の放射能汚染の有無を測定する。
4aは、アンプ等の計測装置である。また、1cは、体表面汚染モニタを移設するために、解体した際のプラスチックシンチレーションファイバ1cを巻き取ったものである。
3bは、体表面汚染モニタの筐体3aを構成する部分を解体した部品である。
【0023】
検出部1を構成するプラスチックシンチレーションファイバ1aは、環状に配置することにより、1つの検出部でプラスチックシンチレーションファイバ1aを配置した内側から放射される放射線を検出することが可能である。
複数のプラスチックシンチレーションファイバ1aをプレート状に束にして、使用する場合でも、まとめて一つの光検出器に挿入するため、計測装置4aは1台でよい。
これにより体表面汚染モニタとして、被検者2aの体表面の放射能汚染を漏らすことなく検出するために必要な放射線検出器の数量を少なくでき、機器構成を簡素化することが可能である。
【0024】
被検者2aの高さ方向の体表面放射能汚染の分布を得るために、複数のプラスチックシンチレーションファイバ1a束を層状に配置した場合でも、高さ方向の分割数だけの計測装置のみでよく、従来の体表面汚染モニタに於いて同等の性能を得るために必要な放射線検出器の数量と比較して大幅に機器構成を簡素化することが可能である。
【0025】
体表面汚染モニタの機器構成を簡素化することで、放射線検出器を保持する筐体の強度を減じることが可能である。
【0026】
以上より、体表面汚染モニタを構成する各部品数及び、重量を大幅に減ずることができ、臨界事故等の放射能汚染が懸念される現場へ、搬入し、設置することが容易に行うことができる。
【0027】
検出部にプラスチックシンチレーションファイバ1aを用いることで可搬型体表面汚染モニタを得ることが可能となる。
【0028】
以上のように、この発明によれば、プラスチックシンチレーションファイバをプレート状に束ねた検出部を被検者の周囲に配置することで、被検者の体表面の放射能の有無を検出するように構成したので、
被検者の体表面に放射能汚染物質が付着していても、これを検出することが可能となるばかりか、プラスチックシンチレーションファイバを用いているため、環状に曲げて被検者を包み込むように配置、設置するのが容易になり、臨界事故等の現場へ容易に搬入し、設置することが可能となる。
【0029】
また、プラスチックシンチレーションファイバをプレート状に束ねた検出部を被検者の周囲に配置することで、被検者の体表面の放射能の有無を検出するように構成した放射線検出装置と、
上記放射線検出装置から検出される放射能を計測する計測手段とを備えたので、
体表面汚染モニタの構成を簡素化することが可能であり、各機器を保持する必要が減るために必要とされる筐体の強度も減じ、例えばブラスチックシンチレーションファイバを取り付けるための筐体自体も簡素化することができる。
よって、例えばバラックといった簡素化した建屋等に体表面汚染もニタを設置することが可能となり、臨界事故等の現場へ、容易に搬入し、設置することが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1による体表面汚染モニタの配置の一例を示す図である。
【図2】実施の形態1の検出部の具体的な構成を説明するための図である。
【図3】実施の形態2における体表面汚染モニタの配置の一例を示す図である。
【図4】実施の形態2における体表面汚染モニタの結果表示の一例を示す図である。
【図5】実施の形態3における体表面汚染モニタ及び部品の一例を示す図である。
【図6】従来技術における放射線撮像装置の概略図である。
【符号の説明】
【0031】
1a プラスチックシンチレーションファイバ、2a 被検者、3a 筐体、3b 筐体の一部、4a 計測装置、5 光検出器、6 出力画面の一例、7 体表面ゲートモニタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体自在な複数の部材によって構成された筐体と、
放射能の有無を検出するプラスチックシンチレーションファイバをプレート状に束ねて前記筐体に固定された検出部と、
前記検出部から検出される放射能を計測する計測手段とを備えたことを特徴とする体表面汚染モニタ。
【請求項2】
筐体の鉛直方向に複数個の検出部が配置されたことを特徴とする請求項1に記載の体表面汚染モニタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−106010(P2006−106010A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−377672(P2005−377672)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【分割の表示】特願2000−90925(P2000−90925)の分割
【原出願日】平成12年3月29日(2000.3.29)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】