説明

作動要因データ記憶装置

【課題】車両の異常挙動の原因を解明し得る有用な作動要因データを適切に記憶する。
【解決手段】ECU1は、作動要因データを第1コードデータへと置換し、その置換した第1コードデータのうち車両の正常挙動を特定可能であると特定した複数の第1コードデータからなる第1コードデータ群を、作動要因データを特定可能で且つ当該作動要因データよりも容量サイズが小さい第2コードデータへと置換して記憶する。車両挙動が正常であるときの複数の第1コードデータをそのまま記憶するのではなく1つの第2コードデータとして纏めて記憶することで、車両挙動が正常であるときの第2コードデータを長く記憶し続けたとしても、車両挙動が正常でないときの第1コードデータを記憶可能な記憶領域を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両挙動の作動要因を特定可能な作動要因データを時系列で入力する作動要因データ記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両挙動の作動要因を特定可能な作動要因データを時系列で(時刻データと対応付けて)不揮発性メモリに記憶し、車両の異常挙動(不具合)が発生したときに、その車両の異常挙動が発生するまでに記憶した作動要因データを解析することで、車両の異常挙動の原因を解明することを可能とする構成が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−205368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている構成では、作動要因データが記憶される不揮発性メモリの記憶領域が有限であることから、不揮発性メモリの記憶領域に空き領域がなくなるまで作動要因データを記憶した以降では、古い作動要因データを消去しながら新しい作動要因データを記憶する、即ち、作動要因データを循環的に記憶する(上書き更新する)ようになっている。
【0005】
しかしながら、作動要因データを循環的に記憶する構成であるとしても、車両挙動が正常であるときの作動要因データを長く記憶し続けると、車両挙動が異常であるときの作動要因データ、即ち、車両の異常挙動の原因を解明し得る有用な作動要因データを記憶することが困難となり、その結果、車両の異常挙動の原因を解明することが困難になるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、有限である記憶手段の記憶領域を有効に利用することで、車両の異常挙動の原因を解明し得る有用な作動要因データを残し得る可能性を高めることができ、車両の異常挙動の原因を適切に解明することができる作動要因データ記憶装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明によれば、車両挙動の作動要因を特定可能な作動要因データを時系列で作動要因データ入力手段により入力すると、比較判定手段は、作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データと、正常挙動データ記憶手段に記憶されている車両挙動が正常であると特定可能な正常挙動データとを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定する。ここで、データ変換手段は、各々が比較判定手段により正常挙動を特定可能なデータであると判定された複数の作動要因データからなる作動要因データ群を、当該作動要因データ群を特定可能で且つ当該作動要因データ群よりも容量サイズが小さい変換データへと変換する。そして、記憶制御手段は、データ変換手段により変換された変換データを記憶手段に記憶すると共に、比較判定手段により正常挙動を特定可能なデータでないと判定された作動要因データを記憶手段に記憶する。
【0008】
これにより、正常挙動を特定可能なデータであると判定された複数の作動要因データからなる作動要因データ群を、当該作動要因データ群を特定可能で且つ当該作動要因データ群よりも容量サイズが小さい変換データへと変換して記憶し、即ち、車両挙動が正常であるときの複数の作動要因データをそのまま記憶するのではなく変換データへと変換して記憶することで、車両挙動が正常でないときの作動要因データを記憶可能な記憶領域を確保することができる。その結果、車両の異常挙動の原因を解明し得る有用な作動要因データを残し得る可能性を高めることができ、車両の異常挙動の原因を適切に解明することができる。又、車両挙動が正常であるときの複数の作動要因データを変換した変換データを記憶すると共に、車両挙動が正常でないときの作動要因データを記憶することで、車両挙動が正常から異常へと切換わった前後や、車両挙動が異常から正常へと切換わった(復帰した)前後での作動要因データを特定することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明によれば、比較判定手段は、作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データの内容と、正常挙動データにより規定されている内容とを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定する。これにより、正常挙動データにより規定されている内容と合致しない作動要因データを記憶することで、作動要因データの内容が正常でないことに起因する車両の異常挙動の原因を解明することができる。
【0010】
請求項3に記載した発明によれば、比較判定手段は、作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データの発生順序と、正常挙動データにより規定されている発生順序とを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定する。これにより、正常挙動データにより規定されている発生順序と合致しない作動要因データを記憶することで、作動要因データの発生順序が正常でないことに起因する車両の異常挙動の原因を解明することができる。
【0011】
請求項4に記載した発明によれば、比較判定手段は、作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データの発生間隔と、正常挙動データにより規定されている発生間隔とを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定する。これにより、正常挙動データにより規定されている発生間隔と合致しない作動要因データを記憶することで、作動要因データの発生間隔が正常でないことに起因する車両の異常挙動の原因を解明することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示す機能ブロック図
【図2】フローチャート
【図3】作動要因データを記憶する態様を示す図
【図4】図3相当図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を、車両に搭載されているECUに適用した一実施形態について図面を参照して説明する。車両に搭載されているECU1は、車両LAN2を介して各種スイッチ3や各種センサ4と相互接続されている。各種スイッチ3としては例えばイグニッション(IG)スイッチやアクセサリ(ACC)スイッチ等であり、各種センサ4としては例えば加速度センサやアクセルセンサ等である。
【0014】
ECU1は、マイクロコンピュータを主体とするユニットであり、制御部5と、制御部5とは別に設けられた外部メモリ6(記憶手段に相当)とを有する。制御部5は、信号入力部7(作動要因データ入力手段に相当)と、作動要因データ抽出部8と、作動要因データ記憶部9と、第1コード置換部10と、正常挙動データ記憶部11(正常挙動データ記憶手段に相当)と、比較判定部12(比較判定手段に相当)と、第2コード置換部13(データ変換手段に相当)と、記憶制御部14(記憶制御手段に相当)とを有する。
【0015】
信号入力部7は、車両LAN2との間での通信機能(入力機能)を有し、各種スイッチ3や各種センサ4から出力された信号を車両LAN2を介して入力し、その入力した信号を作動要因データ抽出部8へ出力する。作動要因データ抽出部8は、信号入力部7から出力された信号を入力すると、その入力した信号を復調して作動要因データを抽出し、その抽出した作動要因データを作動要因データ記憶部9へ出力する。作動要因データについては後述する。
【0016】
作動要因データ記憶部9は、NVRAM又はSRAMから構成され、作動要因データ抽出部8から出力された作動要因データを入力すると、その入力した作動要因データを時刻データと共に記憶する。時刻データは、作動要因データの発生順序及び発生間隔が時系列で特定可能なデータであれば良く、作動要因データが格納されている信号が信号入力部7へ入力された時刻を表すデータであっても良いし、作動要因データが作動要因データ記憶部9に記憶された時刻を表すデータであっても良い。
【0017】
作動要因データ記憶部9は、ECU1の電源がオン状態(通常起動状態)にあるときには、作動要因データ抽出部8から入力した作動要因データを時系列で記憶し続けることで、複数の作動要因データを記憶し、ECU1の電源がオン状態からオフ状態(低消費起動状態)へと切換わったタイミングで、その時点で記憶している作動要因データを第1コード置換部10へ出力する。又、作動要因データ記憶部9は、作動要因データを記憶可能な記憶領域が有限であり、作動要因データを記憶可能な空き領域がなくなるまで作動要因データを記憶した以降では、古い作動要因データを消去しながら新しい作動要因データを記憶する、即ち、作動要因データを循環的に記憶する(上書き更新する)。
【0018】
第1コード置換部10は、作動要因データの各々に対応する第1コードデータのテーブルを記憶しており、作動要因データ記憶部9に記憶されている作動要因データを入力すると、その入力した作動要因データを、対応する第1コードデータへと置換し、その置換した第1コードデータを比較判定部12へ出力する。
【0019】
正常挙動データ記憶部11は、車両挙動が正常である(例えば運転者が一連の運転操作を正常に実施した)と特定可能な正常挙動データを記憶している。正常挙動データは、作動要因データの内容、発生順序及び発生間隔を規定するものであり、作動要因データを置換した第1コードデータと同一のデータ形式である。
【0020】
比較判定部12は、第1コード置換部10から出力された第1コードデータを入力すると、正常挙動データ記憶部11に記憶されている正常挙動データを読出し、第1コード置換部10から入力した第1コードデータと、正常挙動データ記憶部11から読出した正常挙動データとを比較する。ここで、車両挙動が正常であれば(例えば運転者が一連の運転操作を正常に実施している期間で不具合がなければ)、第1コードデータの内容、発生順序及び発生間隔の全てが、正常挙動データにより規定されている内容、発生順序及び発生間隔の全てと合致することになり、一方、車両挙動が異常であれば(正常でなければ)(例えば運転者が一連の運転操作を正常に実施している期間で不具合があれば、又は運転者が誤った運転操作を実施すれば)、第1コードデータの内容、発生順序及び発生間隔の何れかが、正常挙動データにより規定されている内容、発生順序及び発生間隔の何れかと合致しないことになる。
【0021】
そして、比較判定部12は、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致する第1コードデータが所定個数(複数)連続したか否かを判定し、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致する第1コードデータが所定個数連続したと判定すると、それら連続する所定個数の第1コードデータを、正常挙動を特定可能なデータであると特定し、それら正常挙動を特定可能なデータであると特定した連続する所定個数の第1コードデータからなる第1コードデータ群(作動要因データ群に相当)を第2コード置換部13へ出力する。一方、比較判定部12は、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致する第1コードデータが所定個数連続しなかったと判定すると、又は内容、発生順序及び発生間隔の何れかが正常挙動データと合致しなかったと判定すると、その第1コードデータを、正常挙動を特定可能なデータでないと特定し、その正常挙動を特定可能なデータでないと特定した第1コードデータを記憶制御部14へ出力する。
【0022】
第2コード置換部13は、連続する所定個数の(複数の)第1コードデータからなる第1コードデータ群に対応する(連続する所定個数の第1コードデータを纏めて表現する)第2コードデータ(変換データに相当)を記憶している。即ち、第2コードデータは、連続する所定個数の第1コードデータからなる第1コードデータ群に対応する作動要因データ群を特定可能で且つ当該作動要因データ群よりも容量サイズが小さいデータである。第2コード置換部13は、比較判定部12から出力された第1コードデータ群を入力すると、その入力した第1コードデータ群を、当該第1コードデータ群を纏めて表現する第2コードデータへと置換して記憶制御部14へ出力する。
【0023】
記憶制御部14は、第2コード置換部13から出力された第2コードデータ、即ち、車両の正常挙動を特定可能なデータである第1コードデータ群を纏めて表現する第2コードデータを入力すると、その入力した第2コードデータを外部メモリ6へ出力すると共に、比較判定部12から出力された第1コードデータ、即ち、車両の正常挙動を特定可能なデータでない第1コードデータを入力すると、その入力した第1コードデータを外部メモリ6へ出力する。
【0024】
外部メモリ6は、EEPROM(不揮発性メモリ)から構成され、記憶制御部14から出力された第1コードデータや第2コードデータを入力すると、その入力した第1コードデータや第2コードデータを記憶する。この場合、外部メモリ6は、第1コードデータや第2コードデータを記憶可能な記憶領域が有限であり、第1コードデータや第2コードデータを記憶可能な空き領域がなくなるまで第1コードデータや第2コードデータを記憶した以降では、古い第1コードデータや第2コードデータを消去しながら新しい第1コードデータや第2コードデータを記憶する、即ち、第1コードデータや第2コードデータを循環的に記憶する(上書き更新する)ようになっている。
【0025】
専用ツール15は、外部メモリ6に記憶されている第1コードデータや第2コードデータを読出す機器であり、専用ツール15とECU1との間でデータ通信を行うことで、外部メモリ6から送信された第1コードデータや第2コードデータを受信し、その第1コードデータや第2コードデータを作業者が認識可能に出力する。車両の異常挙動の原因を解明する作業者は、このようにして外部メモリ6に記憶されている第1コードデータや第2コードデータが専用ツール15へと転送され、その転送された第1コードデータや第2コードデータが認識可能に出力されることで、ECU1に記憶されていた第1コードデータや第2コードデータを解析することが可能となり、その解析した第1コードデータや第2コードデータに基づいて作動要因データを特定することで、車両の異常挙動の原因を解明することが可能となる。
【0026】
次に、上記した構成の作用について、図2乃至図4を参照して説明する。
制御部5は、ECU1の電源がオン状態にあるときには、その状態を継続しているか否か、即ち、ECU1の電源がオン状態からオフ状態へと切換わったか否かを判定している(監視している)(ステップS1)。制御部5は、ECU1の電源がオン状態にあると判定すると(ステップS1にて「YES」)、各種スイッチ3や各種センサ4から出力された信号を信号入力部7により入力すると、その入力した信号から作動要因データを作動要因データ抽出部8により抽出し、その抽出した作動要因データを時刻データと共に作動要因データ記憶部9に記憶する(ステップS2)。
【0027】
制御部5は、ECU1の電源がオン状態からオフ状態へと切換わったと判定すると(ステップS1にて「NO」)、作動要因データ記憶部9に記憶している作動要因データを、対応する第1コードデータへと第1コード置換部10により置換する(ステップS3)。次いで、制御部5は、作動要因データを置換した第1コードデータと、正常挙動データ記憶部11に記憶されている正常挙動データとを比較判定部12により比較する(ステップS4)。
【0028】
ここで、制御部5は、第1コードデータと正常挙動データとを比較した結果として、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致する第1コードデータが所定個数連続したと判定すると(ステップS5にて「YES」)、それら連続する所定個数の第1コードデータを、正常挙動を特定可能なデータであると特定し(ステップS6)、それら正常挙動を特定可能なデータであると特定した連続する所定個数の第1コードデータからなる第1コードデータ群を第2コードデータへと第2コード置換部13により置換し(ステップS7)、その置換した第2コードデータを記憶制御部14により外部メモリ6に記憶する(ステップS8)。
【0029】
一方、制御部5は、第1コードデータと正常挙動データとを比較した結果として、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致する第1コードデータが所定個数連続しなかった、又は内容、発生順序及び発生間隔の何れかが正常挙動データと合致しなかったと判定すると(ステップS5にて「NO」)、その第1コードデータを、正常挙動を特定可能なデータでないと特定し(ステップS9)、その正常挙動を特定可能なデータでないと特定した第1コードデータを記憶制御部14によりそのまま外部メモリ6に記憶する(ステップS10)。
【0030】
そして、制御部5は、作動要因データ記憶部9に記憶されている全ての作動要因データを第1コードデータへと置換して第2コードデータへと変換して又はそのまま外部メモリ6に記憶したか否かを判定し(ステップS11)、作動要因データ記憶部9に記憶されている全ての作動要因データを第1コードデータへと置換して第2コードデータへと変換して又はそのまま外部メモリ6に記憶していないと判定すると(ステップS11にて「NO」)、上記したステップS3へと戻り、ステップS3以降の処理を繰返して実行する。一方、制御部5は、作動要因データ記憶部9に記憶されている全ての作動要因データを第1コードデータへと置換して第2コードデータへと変換して又はそのまま外部メモリ6に記憶したと判定すると(ステップS11にて「YES」)、一連の処理を説明する。
【0031】
上記した一連の処理の具体例について、図3及び図4を参照して説明する。
図3及び図4に示すように制御部5が作動要因として、
「スイッチオン操作によるアクセサリオン」
「スイッチオン操作によるイグニッションオン」
「スイッチオン操作によるパーキングブレーキ制御開始」
「スイッチオン操作によるオールオフ」
「パーキングブレーキ制御正常終了」
を規定しており、作動要因を示す作動要因データと、第1コードデータとの対応として、
「スイッチオン操作によるアクセサリオン」:「10」
「スイッチオン操作によるイグニッションオン」:「20」
「スイッチオン操作によるパーキングブレーキ制御開始」:「30」
「スイッチオン操作によるオールオフ」:「40」
「パーキングブレーキ制御正常終了」:「50」
「イグニッション回路異常によるオールオフ」:「A0」
を第1コード置換部10により規定しており、車両の正常挙動を特定可能な第1コードデータ群と、第2コードデータとの対応として、
「10」〜「50」:「0x01」
を第2コード置換部13により規定している場合を説明する。
【0032】
正常挙動データ記憶部11は、正常挙動データとして、「10」、「20」、「30」、「40」、「50」の内容、それら「10」、「20」、「30」、「40」、「50」の発生順序(「20」の直前が「10」であること、「30」の直前が「20」であること、「40」の直前が「30」であること、「50」の直前が「40」であること)、発生間隔(「20」の発生が「10」の発生から予め設定されている第1時間内であること、「30」の発生が「20」の発生から予め設定されている第2時間内であること、「40」の発生が「30」の発生から予め設定されている第3時間内であること、「50」の発生が「40」の発生から予め設定されている第4時間内であること)を規定している。
【0033】
この場合、制御部5は、ECU1の電源が「3時06分00秒」〜「4時58分20秒」でオン状態にあれば、その「3時06分00秒」〜「4時58分20秒」で発生した作動要因データを作動要因データ記憶部9に記憶する。制御部5は、ECU1の電源が「4時58分20秒」以降でオン状態からオフ状態へと切換わると、その時点で作動要因データ記憶部9に記憶されている作動要因データ、即ち、ECU1の電源がオン状態からオフ状態へと切換わる直前まで作動要因データ記憶部9に記憶された作動要因データを時刻データと対応付けて第1コードデータへと変換する。そして、制御部5は、時刻データと対応付けた第1コードデータについて、その内容、発生順序及び発生間隔を時刻データの古い順に順次判定し、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致している第1コードデータが所定個数(この場合であれば5個)連続するか否かを判定する。
【0034】
即ち、制御部5は、時刻データ「t1」〜「t5」と対応付けた第1コードデータ「10」〜「50」について、その内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致しており、その内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致している第1コードデータ「10」〜「50」が所定個数(この場合であれば5個)連続すると、それら第1コードデータ「10」〜「50」を第2コードデータ「0x01」へと置換し、その置換した第2コードデータ「0x01」を外部メモリ6に記憶する。同様に、時刻データ「t6」〜「t10」と対応付けた第1コードデータ「10」〜「50」についても、それら第1コードデータ「10」〜「50」を第2コードデータ「0x01」へと置換し、その置換した第2コードデータ「0x01」を外部メモリ6に記憶する。
【0035】
一方、制御部5は、時刻データ「t11」〜「t13」と対応付けた第1コードデータ「10」、「20」、「A0」については、その内容、発生順序及び発生間隔を時刻データの古い順に(時刻データ「t11」に対応付けた第1コードデータ「10」から)順次判定するが、この場合は、時刻データ「t13」と対応付けた第1コードデータ「A0」が正常挙動データの内容と合致していないので、それら第1コードデータ「10」、「20」、「A0」をそのまま外部メモリ6に記憶する。
【0036】
又、制御部5は、同様に、時刻データ「t4」〜「t18」と対応付けた第1コードデータ「10」〜「50」についても、それら第1コードデータ「10」〜「50」を第2コードデータ「0x01」へと置換し、その置換した第2コードデータ「0x01」を外部メモリ6に記憶する。
【0037】
即ち、従来では、図4に示すように、作動要因データを置換した全ての第1コードデータをそのまま外部メモリ6に記憶するが、本実施形態では、作動要因データを置換した第1コードデータと正常挙動データとを比較し、図3に示すように、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致している第1コードデータが所定個数連続すると、それら連続する所定個数の第1コードデータを第2コードデータへと置換して外部メモリ6に記憶することで、その分、外部メモリ6に空き領域を確保する(省バイト化する)ことができ、内容、発生順序及び発生間隔の全てが正常挙動データと合致しているものの所定個数連続しない第1コードデータや、内容、発生順序及び発生間隔の何れかが正常挙動データと合致しない第1コードデータを記憶可能な記憶領域を確保することができる。
【0038】
ところで、上記した具体例では、「スイッチオン操作によるアクセサリオン」の作動要因が発生し、「スイッチオン操作によるイグニッションオン」の作動要因が発生し、正常であれば「スイッチオン操作によるパーキングブレーキ制御開始」の作動要因が発生するところを、正常挙動データにより規定されていない内容の「イグニッション回路異常によるオールオフ」の作動要因が発生した場合に、その正常挙動データにより規定されていない内容の作動要因データを置換した第1コードデータをそのまま外部メモリ6に記憶することを説明したが、以下のようにしても良い。即ち、正常挙動データにより規定されている内容の作動要因が正常挙動データにより規定されている発生順序とは異なる発生順序で発生した(内容は合致するが発生順序が合致しない)場合や、正常挙動データにより規定されている内容の作動要因が正常挙動データにより規定されている発生間隔とは異なる発生間隔で発生した(内容は合致するが発生間隔が合致しない(発生間隔が異常に長過ぎたり短過ぎたりする))場合等でも、その正常挙動データにより規定されていない発生順序
や発生間隔で発生した作動要因データを置換した第1コードデータをそのまま外部メモリ6に記憶するようにしても良い。そのように構成すれば、内容は合致するものの発生順序や発生間隔が合致しない作動要因データを残すことができる。
【0039】
以上に説明したように本実施形態によれば、ECU1において、作動要因データを第1コードデータへと置換し、その置換した第1コードデータのうち車両の正常挙動を特定可能であると特定した複数の第1コードデータからなる第1コードデータ群を、作動要因データを特定可能で且つ当該作動要因データよりも容量サイズが小さい第2コードデータへと置換して記憶し、即ち、車両挙動が正常であるときの複数の第1コードデータをそのまま記憶するのではなく1つの第2コードデータとして纏めて記憶するように構成したので、車両挙動が正常であるときの第2コードデータを長く記憶し続けたとしても、車両挙動が正常でないときの第1コードデータを記憶可能な記憶領域を確保することができる。その結果、車両の異常挙動の原因を解明し得る有用な第1コードデータを残し得る可能性を高めることができ、車両の異常挙動の原因を適切に解明することができる。
【0040】
又、車両挙動が正常であるときの複数の第1コードデータを1つの第2コードデータとして纏めて記憶すると共に、車両挙動が正常でないときの第1コードデータをそのまま記憶することで、車両挙動が正常から異常へと切換わった前後や、車両挙動が異常から正常へと切換わった(復帰した)前後での作動要因データを特定することができる。
【0041】
本発明は、上記した実施形態にのみ限定されるものではなく、以下のように変形又は拡張することができる。
作動要因データは、他の事象を特定可能なデータであっても良い。
正常挙動データと合致するコードデータ「10」〜「50」に対応する第2コードデータ「0x01」を連続して記憶する場合には、その第2コードデータ「0x01」の全てを記憶することに代えて、その第2コードデータ「0x01」が連続する回数を示す回数データを生成し、第2コードデータ「0x01」、時刻データ、回数データとを対応付けて記憶するようにしても良い。そのように構成すれば、第2コードデータ「0x01」を個々に記憶する必要をなくすことで、車両挙動が正常でないときの第1コードデータを記憶可能な記憶領域をより一層確保することができる
【符号の説明】
【0042】
図面中、1はECU(作動要因データ記憶装置)、6は外部メモリ(記憶手段)、7は信号入力部(作動要因データ入力手段)、10は正常挙動データ記憶部(正常挙動データ記憶手段)、12は比較判定部(比較判定手段)、13はコード置換部(データ変換手段)、14は記憶制御部(記憶制御手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両挙動の作動要因を特定可能な作動要因データを時系列で入力する作動要因データ入力手段と、
車両挙動が正常であると特定可能な正常挙動データを記憶する正常挙動データ記憶手段と、
前記作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データと、前記正常挙動データ記憶手段に記憶されている正常挙動データとを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定する比較判定手段と、
各々が前記比較判定手段により正常挙動を特定可能なデータであると判定された複数の作動要因データからなる作動要因データ群を、当該作動要因データ群を特定可能で且つ当該作動要因データ群よりも容量サイズが小さい変換データへと変換するデータ変換手段と、
変換データ及び作動要因データを記憶可能であり、記憶している変換データ及び作動要因データを外部へ出力可能な記憶手段と、
前記データ変換手段により変換された変換データ及び前記比較判定手段により正常挙動を特定可能なデータでないと判定された作動要因データを前記記憶手段に記憶する記憶制御手段と、を備えたことを特徴とする作動要因データ記憶装置。
【請求項2】
請求項1に記載した作動要因データ記憶装置において、
前記比較判定手段は、前記作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データの内容と、正常挙動データにより規定されている内容とを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定することを特徴とする作動要因データ記憶装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載した作動要因データ記憶装置において、
前記比較判定手段は、前記作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データの発生順序と、正常挙動データにより規定されている発生順序とを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定することを特徴とする作動要因データ記憶装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載した作動要因データ記憶装置において、
前記比較判定手段は、前記作動要因データ入力手段により時系列で入力された作動要因データの発生間隔と、正常挙動データにより規定されている発生間隔とを比較し、その作動要因データが正常挙動を特定可能なデータであるか否かを判定することを特徴とする作動要因データ記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−173848(P2012−173848A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33209(P2011−33209)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】