説明

作業アシストシステム及び作業アシスト方法並びに該作業アシスト方法を記録した記録媒体

【課題】工場内の生産ラインで移動しながら複数の組立作業を行う作業者が、次の作業位置を正確に把握できるようにする。
【解決手段】工場内の生産ラインにおいて、当該生産ライン上を移動しながら所定の工程順序による複数の組立作業をそれぞれの作業位置で行っている作業者に装着され当該作業者の作業位置を検出する位置センサ2と、作業者の頭部に装着され、架空画像をディスプレイ31の画面上に表示させるヘッドマウントディスプレイ装置3と、位置センサ2で検出された作業者の作業位置と次の作業位置との間隔を算出し、間隔に応じて移動させる次の作業位置を指し示す記号を、架空画像としてヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる作業解析部41を備えているデータ処理装置4とから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場内の生産ラインにおいて、作業者に対して作業指示情報を提示する作業アシストシステム及び作業アシスト方法並びに該作業アシスト方法を記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気製品や自動車の製造メーカーの生産技術部門においては、生産性を向上させる目的のために、大型スクリーンに仮想の作業領域を表示して作業者に作業内容を指導した後に、作業者に対して仮想の作業領域で作業を擬似的に体験させて仮想の作業訓練を施すことができる作業訓練支援システムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、作業訓練支援システムは、モーションキャプチャからの3次元の空間座標位置と、標準作業時間、手の動きのぶれ(蛇行)あるいは手の動きの基準値とを比較して、その基準値から外れる場合には習熟総合判定をNGにするものである。モーションキャプチャは、作業者の動作状態をリアルに反映させることができるので、作業者の作業判定の精度を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−134536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術に記載した作業訓練支援システムでは、大型スクリーンに仮想の作業領域を表示すると共にスピーカから音声を出力して作業者に作業内容を指導した後に、作業者に対して仮想の作業領域で作業を擬似的に体験させているので、この大型スクリーンを工場内の生産ラインに設置すると、画面表示や音声で作業内容を指導してはいるが、作業者は所定の工程順序による複数の組立作業を生産ライン上で所定の作業位置まで順々に移動しているので、いつの時点での作業案内か分からなくなる虞があった。
【0005】
さらに、工場内の生産ラインにおける作業者は、所定の工程順序による複数の組立作業を、生産ライン上で所定の作業位置まで順々に移動しながら行っているので、熟練作業者でも、縦横に複数の棚を有する工具ボックスから必要とされるねじや工具等を確実に取るという保証はなく、また、未熟な作業者ではタクトタイム内で作業することで精一杯になり作業ミスが発生し易くなる。
【0006】
本発明は、このような従来の難点を解消するためになされたもので、工場内の生産ラインで移動しながら複数の組立作業を行う作業者が、次の作業位置を正確に把握することができる作業アシストシステム及び作業アシスト方法並びに該作業アシスト方法を記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成する本発明の第1の態様である作業アシストシステムは、工場内の生産ラインにおいて、当該生産ライン上を移動しながら所定の工程順序による複数の組立作業をそれぞれの作業位置で行っている作業者に装着され当該作業者の作業位置を検出する位置センサと、作業者の頭部に装着され、架空画像をディスプレイ画面上に表示させるヘッドマウントディスプレイ装置と、位置センサで検出された作業者の作業位置と次の作業位置との間隔を算出し、この間隔に応じて移動させる次の作業位置を指し示す記号を、架空画像としてヘッドマウントディスプレイ装置のディスプレイ画面上に表示させる作業解析部を備えているデータ処理装置とから構成されているものである。
【0008】
本発明の第2の態様は第1の態様である作業アシストシステムにおいて、ヘッドマウントディスプレイ装置は、架空画像を作業者の視線方向に応じてディスプレイ画面上に移動可能に表示させるために、作業者の視線方向を検出する視線センサを備え、作業解析部は、位置センサで検出された作業者の作業位置と次の作業位置との間隔と共に視線センサで得られた作業者の視線方向に応じて移動させる次の作業位置を指し示す記号を、架空画像としてヘッドマウントディスプレイ装置のディスプレイ画面上に表示させる作業解析機能を有するものである。
【0009】
本発明の第3の態様は第1の態様又は第2の態様である作業アシストシステムにおいて、データ処理装置は、生産企画台数に基づき設定された生産ラインに流す製品種類の順番の生産情報データを保存する生産情報データベースと、生産情報データベースに保存された生産情報データに基づき生産ラインに流す製品種類に対応する作業の順番、内容の工程順序データを保存する工程順序データベースと、工程順序データベースに保存された工程順序データに対応する複数の作業位置データを保存する作業位置データベースとを有するデータ記憶部を備え、作業解析部は、生産情報データベースから呼び出された生産情報データ及び工程順序データベースから呼び出された工程順序データに対応する作業位置データを作業位置データベースから選択するデータ選択機能を有するものである。
【0010】
本発明の第4の態様は第1の態様乃至第3の態様のうち何れか1つの態様である作業アシストシステムにおいて、ヘッドマウントディスプレイ装置は、外界からの像を透過すると共にディスプレイ画面上に表示された架空画像を反射することで、外界からの像に架空画像を投影するハーフミラーを有する光学透過型である。
【0011】
本発明の第5の態様は第4の態様である作業アシストシステムにおいて、ヘッドマウントディスプレイ装置は眼鏡に組み込まれているものである。
【0012】
本発明の第6の態様は第1の態様乃至第5の態様のうち何れか1つの態様である作業アシストシステムにおいて、位置センサは、組立作業を行っている作業者の手の作業動作を経時的に測定するモーションキャプチャ装置である。
【0013】
また、本発明の第7の態様である作業アシスト方法は、工場内の生産ラインにおいて、当該生産ライン上を移動しながら所定の工程順序による複数の組立作業をそれぞれの作業位置で行っている作業者の作業位置を、当該作業者に装着された位置センサによって測定し、位置センサで検出された作業位置の座標データをデータ処理装置の作業解析部に送信して、作業者の頭部に装着されたヘッドマウント装置のディスプレイ画面上に組立作業のアシスト情報を表示する作業アシスト方法であって、作業解析部は、位置センサから座標データを取得する第1のステップと、第1のステップで取得した座標データから作業者の作業位置を算出する第2のステップと、第2のステップで算出した作業位置と次の作業位置との間隔を算出して間隔データを生成する第3のステップと、第3のステップで算出した間隔に応じて移動する次の作業位置を指し示す記号データを作成する第4のステップと、第4のステップで作成された記号データに基づく記号をヘッドマウントディスプレイ装置のディスプレイ画面上に表示させる第5のステップとを有するものである。
【0014】
本発明の第8の態様は第7の態様である作業アシスト方法において、第2のステップと第3のステップとの間に、ヘッドマウントディスプレイ装置に備えられた視線センサによって検出した作業者の視線方向の視線方向データを取得するステップを有し、第4のステップは、第3のステップで算出した間隔と共にステップで取得した視線方向データに応じて移動させる次の作業位置を指し示す記号データを作成するものである。
【0015】
本発明の第9の態様は第7の態様又は第8の態様である作業アシスト方法において、第1のステップの前に、データ処理装置が備えるデータ記憶部に格納された生産情報データベースから所定の生産情報データを呼び出す第1の呼出ステップと、データ記憶部に格納された工程順序データベースから所定の工程順序データを呼び出す第2の呼出ステップと、各呼出ステップで呼び出された生産情報データ及び工程順序データに対応する所定の工程順序による複数の組立作業の最初の作業位置データをデータ記憶部に格納された作業位置データベースから呼び出す第3の呼出ステップとを有するものである。
【0016】
本発明の第10の態様は第7の態様乃至第9の態様のうち何れか1つである作業アシスト方法において、第5のステップの後に、所定の工程順序による複数の組立作業のうち最初の組立作業以降の残りの組立作業において、第1のステップから第5のステップまでを繰り返す第6のステップを有するものである。
【0017】
さらに、本発明の第11の態様である記録媒体は、第7の態様乃至第10の態様うち何れか1つである作業アシスト方法によって実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能なものである。
【0018】
このような作業アシストシステム及び作業アシスト方法は、所定の工程順序による複数の組立作業の最初の組立作業の作業位置に位置する作業者の当該作業位置を、当該作業者に装着された位置センサによって測定し、その測定結果である座標データを当該位置センサからデータ処理装置に送信すると、データ処理装置の作業解析部は位置センサからの座標データを取得し、その座標データから作業位置を算出し、その算出された作業位置と次の作業位置との間隔を算出して間隔データを生成する。作業解析部は、この間隔データに応じて移動する次の作業位置を指し示す記号データを作成し、この記号データに基づく記号を架空画像として、作業者に装着されたヘッドマウントディスプレイ装置のディスプレイ画面上に表示することができる。記号データは基準となる作業位置と次の作業位置との間隔が変わるとそれに伴って移動するので、作業者は移動していても次の作業位置をヘッドマウントディスプレイ装置で把握することができる。
【0019】
また、作業者がこのようにして次の作業位置まで移動後、ヘッドマウントディスプレイ装置で、その次の作業位置における作業内容をディスプレイ画面上に表示したり、当該ヘッドマウントディスプレイ装置に組み込まれたスピーカ、イヤホーン等によって音声を出力したりすることで、当該作業者は当該作業位置における作業内容を間違えることなく行うことができるようになる。
【0020】
なお、作業者に装着されたヘッドマウントディスプレイ装置に作業者の視線方向を検出する視線センサを備えている場合には、作業位置と次の作業位置との間隔と共に作業者の視線方向に応じて移動させる次の位置を指し示す記号データを作成できるので、作業者はより正確な次の作業位置をヘッドマウントディスプレイ装置で把握することができる。
【0021】
また、ヘッドマウントディスプレイ装置を光学透過型にすると、実像に対して虚像の次の位置を指し示す記号を重畳させることになるので、作業者は違和感の少ない質の高い情報を得ることができる。さらに、ヘッドマウントディスプレイ装置を眼鏡に組み込むことで、実際の生産ラインで使用することができる。
【0022】
また、位置センサを作業者の手の作業動作を経時的に測定するモーションキャプチャ装置にすると、実際の手の位置と次の作業位置との間隔を正確に把握できるようになるので、次の作業位置が縦横に複数の棚を有する工具ボックスから必要とされるねじや工具等を取る作業位置であっても正確に指し示すことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の作業アシストシステム及び作業アシスト方法並びに該作業アシスト方法を記録した記録媒体によれば、工場内の生産ラインで移動しながら複数の組立作業を行う作業者が、次の作業位置を正確に把握することができる。したがって、縦横に複数の棚を有する工具ボックスから必要とされるねじや工具等をミスなく確実に取ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の作業アシストシステムにおける好ましい実施の形態例を示す図で、(A)はシステム構成のブロック図、(B)はデータ処理装置のデータ記憶部の構成図である。
【図2】図1のモーションキャプチャ装置に使用されるセンサのキャリブレーションの例を示す説明図である。
【図3】モーションキャプチャで検出した位置情報の例を示す説明図である。
【図4】工場内における作業の工程順序の例を示す説明図である。
【図5】本発明の作業アシスト方法の好ましい実施の形態例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、作業アシストシステム及び作業アシスト方法並びに該作業アシスト方法を記録した記録媒体を実施するための最良の形態例について、図面を参照して説明する。
【0026】
本発明の作業判定システムは図1(A)に示すように、工場内における生産ラインにおいて、当該生産ライン上を移動しながら所定の工程順序による複数の組立作業をそれぞれの作業位置で行っている作業者に装着され当該作業者の作業位置を検出する位置センサ2と、作業者の頭部に装着され架空画像をディスプレイ31の画面上に表示させるヘッドマウントディスプレイ装置3と、位置センサ2で検出された作業者の作業位置と次の作業位置との間隔を算出し、この間隔に応じて移動させる次の作業位置を指し示す記号を、架空画像としてヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる作業解析部41を備えているデータ処理装置4とから構成されている。
【0027】
ここで、次の作業位置を指し示す記号とは、その作業位置を作業者が容易に把握できるような、人差し指だけを伸ばした状態の手の形状や矢印等が例として挙げることができる。また、作業位置とは、単なる平面上の作業位置だけではなく、実際に、製品を組み立てる部位や、縦横に複数の棚を有する工具ボックスから必要とされるねじや工具等を取る部位も含むものである。
【0028】
位置センサ2は、組立作業を行っている作業者の手の作業動作を経時的に測定するモーションキャプチャ装置が好適である。このモーションキャプチャ装置2は、汎用のものを用いることができ、動体に装着された光学マーカの位置情報により動体の動きを検出する光学式や、動体に装着された磁気センサの動きを検出する磁気式が一般的である。特に、経時的に測定する対象が、部品を組み付ける作業を行っている作業者の作業動作の場合には、モーションキャプチャ装置2としては、作業者の手指に装着されるデバイスである複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21と、磁気式3次元位置姿勢センサ群21で検出された作業者の作業動作情報として受信してデータ処理装置4に送信する信号処理部22とを備えているものが好適である。このモーションキャプチャ装置2の場合、複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21を手指の繊細な動きを検出できるように柔軟性のあるグローブに配置するので、作業者の手の作業動作を精度よく再現することが可能になる。
【0029】
この磁気式3次元位置姿勢センサ21とデータ処理装置4とは、有線、無線の何れの接続手段でもよく、設置状況に応じて選択する。このようなモーションキャプチャ装置として、例えば、特開2007−236602号公報に開示された磁気式位置姿勢センサを用いた手指用モーションキャプチャ装置が好適である。
【0030】
この手指用モーションキャプチャ装置は図2、図3に示すように、例えば親指の先端に位置するセンサ21aの中心に原点を仮定すると、信号処理部22の固定基準点から見たそれらの位置座標(X軸、Y軸、Z軸)及びX軸、Y軸、Z軸の周りの回転角から求められる姿勢を示すオイラー角の情報が得られ、データ処理装置4に記録される。この場合におけるセンサ装着時の位置及び角度のズレのキャリブレーションは、特開2007−236602号公報に詳述されているので、説明は省略する。
【0031】
ヘッドマウントディスプレイ装置3は、データ処理装置4の作業解析部41で作成された架空画像のデータを受信してディスプレイ31の画面上にその情報を表示させる画像処理部32を備えている。また、ヘッドマウントディスプレイ装置3は、外界からの像を透過すると共にディスプレイ31の画面上に表示された架空画像を反射することで、外界からの像に架空画像を投影するハーフミラー(図示せず)を有する光学透過型が好適である。光学透過型のヘッドマウントディスプレイ装置3は、実像に対して虚像の架空画像を重畳させることになるので、作業者は違和感の少ない質の高い情報を得ることができる。このようなヘッドマウントディスプレイ装置3を眼鏡5(図4参照。)に組み込むことで、実際の生産ラインで使用することができる。
【0032】
また、ヘッドマウントディスプレイ装置3に、架空画像を作業者の視線方向に応じてディスプレイ31の画面上に移動可能に表示させるために、作業者の視線方向を検出する視線センサ33を備えるとよい。この視線センサ33をヘッドマウントディスプレイ装置3に備えた場合には、データ処理装置4の作業解析部41に、位置センサ2で検出された作業者の作業位置と次の作業位置との間隔と共に視線センサ33で得られた作業者の視線方向に応じて移動させる次の作業位置を指し示す記号を、架空画像としてヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる作業解析機能を有することになる。この視線センサ33は、眼球の回転角を検出して、その検出回転角度を視線データとしてユーザ・インタフェースに用いることが一般的である。
【0033】
データ処理装置4はコンピュータが好ましく、内部にCPU等の演算処理装置を備えると共に、ブラウン管モニタや液晶ディスプレイ等の表示画面を有する表示装置や、キーボード、マウス等の入力デバイス、さらに、ハードディスクドライブ等の記憶装置等で構成されている。このようなデータ処理装置4は、位置センサ2から受信する座標データや視線センサ33から受信する視線方向データをデータ処理装置4の座標データのデータ形式に変換するデータ形式変換部42を備えている。このデータ形式変換部42は、位置センサ2から受信する座標データや視線センサ33から受信する視線方向データが、データ処理装置4の座標データのデータ形式と同じ場合には、データ形式を変換することなく座標データを作業解析部41に送信する。
【0034】
また、データ処理装置4は図1(A)、(B)に示すように、生産企画台数に基づき設定された生産ラインに流す製品種類の順番の生産情報データを保存する生産情報データベース431と、生産情報データベース431に保存された生産情報データに基づき生産ラインに流す製品種類に対応する作業の順番、内容の工程順序データを保存する工程順序データベース432と、工程順序データベース432に保存された工程順序データに対応する複数の作業位置データを保存する作業位置データベース433とを有するデータ記憶部43を備えている。そして、作業解析部41は、データ記憶部43の生産情報データベース431から呼び出された生産情報データ及び工程順序データベース432から呼び出された工程順序データに対応する作業位置データを作業位置データベース433から選択するデータ選択機能を有している。このように、データ処理装置4のデータ記憶部43に、生産情報データベース431、工程順序データベース432及び作業位置データベース433を格納することで、1つの生産ラインに複数の製品を流しても対応できるようになる。
【0035】
なお、上述したモーションキャプチャ装置2、ヘッドマウントディスプレイ装置3及びデータ処理装置4の各構成部はそれぞれ電気的に接続され、モーションキャプチャ装置2は磁気式3次元位置姿勢センサ21が信号処理部22に接続され、ヘッドマウントディスプレイ装置3はディスプレイ31が画像処理部32に接続され、データ処理装置4はデータ記憶部43が作業解析部41に接続されている。また、モーションキャプチャ装置2とデータ処理装置4との間にデータ形式変換部42を介在させる場合には、データ形式変換部42はモーションキャプチャ2の信号処理部22及び作業解析部41それぞれに接続させる。さらに、ヘッドマウントディスプレイ装置3が視線センサ33を備えている場合には、データ処理装置4のデータ形式変換部42に接続されているが、データ形式変換部42が介在されていない場合には視線センサ33は作業解析部41に接続される。
【0036】
このように構成された作業アシストシステム1におけるデータ処理装置4の各構成は、演算処理装置によって実行されるプログラムによって実現されるものである。このプログラムによるデータ処理手順について図4の動作説明図及び図5のフローチャートに基づき説明する。
【0037】
なお、図4に示す生産ラインには、循環軌道6上を走行自在なトロリ(図示せず。)に吊り下げられた搬送ハンガー7に車両Vが支持されているものとし、また、作業者Wが、例えば利き手である右手の手指にモーションキャプチャ装置2の複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21を装着しているものとする。また、眼鏡5に組み込まれたヘッドマウントディスプレイ装置3は視線センサ33を有するものとする。さらに、データ処理装置4において、データ記憶部43に格納された生産情報データベース431から所定の生産情報データが選択され、その生産情報データに基づく車種に対応する工程順序データが工程順序データベース432から選択され、その工程順序データに基づく車種に対応する複数の作業位置データが作業位置データベースから選択されているものとする。
【0038】
作業アシストシステム1において自動車の組立作業が開始されると(ステップ101)、データ処理装置4の作業解析部41が、データ記憶部43に格納された生産情報データベース431から所定の生産情報データを呼び出し(ステップ102)、データ記憶部43に格納された工程順序データベース432から所定の工程順序データを呼び出し(ステップ103)、ステップ102、ステップ103で呼び出された生産情報データ及び工程順序データに対応する所定の工程順序による複数の組立作業の最初の作業位置データをデータ記憶部43に格納された作業位置データベース433から呼び出す(ステップ104)。なお、所定の工程順序による複数の組立作業は図4に示すように、例えば、作業範囲Aで縦横に複数の棚を有する工具ボックスTBからねじを取り出す作業と、作業範囲Bで車両Vのフロント部分における組立作業と、作業範囲Cで車両Vのリヤドア部分における組立作業の3つの作業とする。
【0039】
そして、作業解析部41は作業範囲Aにおける作業者Wの位置情報を得るために、モーションキャプチャ装置2から座標データを取得する(ステップ105)。作業解析部41は、ステップ105で取得した座標データから作業者Wの作業位置を算出し(ステップ106)、次の作業位置となる作業範囲Aで工具ボックスTBからねじを取り出す作業位置との間隔を算出して間隔データを生成する(ステップ107)。
【0040】
さらに、作業解析部41は、ヘッドマウントディスプレイ装置に備えられた視線センサ33によって検出した作業者の視線方向データを取得する(ステップ108)。作業解析部41は、ステップ105で取得した座標データと共にステップ108で取得した視線方向データに応じて移動させる次の作業位置となる作業範囲Aで工具ボックスTBからねじを取り出す作業位置を指し示す矢印AMの記号データを作成する(ステップ109)。作業解析部41は、ステップ109で作成された記号データに基づく矢印AMを架空画像として、ヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる(ステップ110)。したがって、作業者Wは、縦横に複数の棚を有する工具ボックスの該当部分から必要とされるねじを間違うことなく取ることができる。
【0041】
以下、作業範囲Bで車両Vのフロント部分における組立作業と、作業範囲Cで車両Vのリヤドア部分における組立作業において、ステップ105〜ステップ110を繰り返して、作業範囲Bで車両Vのフロント部分における組立作業を行う作業位置を示す矢印AMを、ヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させ、作業範囲Cでリヤドア部分における組立作業を示す矢印AMを、ヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる(ステップ111)。
【0042】
即ち、作業解析部41は作業範囲Bにおける作業者Wの位置情報を得るために、モーションキャプチャ装置2から座標データを取得する(ステップ105)。作業解析部41は、ステップ105で取得した座標データから作業者Wの作業位置を算出し(ステップ106)、次の作業位置となる作業範囲Bで車両Vのフロント部分における組立作業の作業位置との間隔を算出して間隔データを生成する(ステップ107)。
【0043】
さらに、作業解析部41は、ヘッドマウントディスプレイ装置に備えられた視線センサ33によって検出した作業者の視線方向データを取得する(ステップ108)。作業解析部41は、ステップ105で取得した座標データと共にステップ108で取得した視線方向データに応じて移動させる次の作業位置となる作業範囲Bで車両Vのフロント部分における組立作業の作業位置を指し示す矢印AMの記号データを作成する(ステップ109)。作業解析部41は、ステップ109で作成された記号データに基づく矢印AMを架空画像として、ヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる(ステップ110)。
【0044】
最後に、作業解析部41は作業範囲Cにおける作業者Wの位置情報を得るために、モーションキャプチャ装置2から座標データを取得する(ステップ105)。作業解析部41は、ステップ105で取得した座標データから作業者Wの作業位置を算出し(ステップ106)、次の作業位置となる作業範囲Cで車両Vのリヤドア部分における組立作業の作業位置との間隔を算出して間隔データを生成する(ステップ107)。
【0045】
さらに、作業解析部41は、ヘッドマウントディスプレイ装置に備えられた視線センサ33によって検出した作業者の視線方向データを取得する(ステップ108)。作業解析部41は、ステップ105で取得した座標データと共にステップ108で取得した視線方向データに応じて移動させる次の作業位置となる作業範囲Cで車両Vのリヤドア部分における組立作業の作業位置を指し示す矢印AMの記号データを作成する(ステップ109)。作業解析部41は、ステップ109で作成された記号データに基づく矢印AMを架空画像として、ヘッドマウントディスプレイ装置3のディスプレイ31の画面上に表示させる(ステップ110)。
【0046】
作業解析部41は、この時点で次の生産情報データが選択されていなければ、作業を終了し(ステップ112、ステップ113)、次の生産情報データが選択されていれば、次の作業へと移行するためにステップ102へ戻る(ステップ114)。
【0047】
なお、矢印AMの記号データは基準となる作業位置と次の作業位置との間隔が変わるとそれに伴って移動させることができるので、作業者Wが生産ライン上を移動していても次の作業位置をヘッドマウントディスプレイ装置3で把握することができる。また、モーションキャプチャ装置2からの座標データは、複数の磁気式3次元位置姿勢センサ21による3次元座標データなことから、実際の手の位置と次の作業位置との間隔を正確に把握できるようになるので、次の作業位置が縦横に複数の棚を有する工具ボックスから必要とされるねじや工具等を取る作業位置であっても正確に指し示すことができる。
【0048】
また、作業者がこのようにして次の作業位置まで移動後、ヘッドマウントディスプレイ装置3で、その次の作業位置における作業内容をディスプレイ31の画面上に表示したり、当該ヘッドマウントディスプレイ装置3に組み込まれたスピーカ、イヤホーン等(図示せず。)によって音声を出力したりすることで、当該作業者は当該作業位置における作業内容を間違えることなく行うことができるようになる。
【0049】
このように、作業者が生産ライン上を移動していても次の作業位置をヘッドマウントディスプレイ装置3で把握することができるので、作業訓練だけではなく量産段階においても利用することができる。
【0050】
このようなデータ処理手順がデータ処理装置4の演算処理装置によって実行されるプログラムは、コンピュータ読み取り可能なCD、DVD等の記録媒体に記録させておくことで、複数のデータ処理装置4で利用可能になる。
【0051】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0052】
1……作業アシストシステム
2……モーションキャプチャ装置(位置センサ)
3……ヘッドマウントディスプレイ装置
31……ディスプレイ
33……視線センサ
4……データ処理装置
41……作業解析部
43……データ記憶部
431……生産情報データベース
432……工程順序データベース
433……作業位置データベース
5……眼鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工場内の生産ラインにおいて、当該生産ライン上を移動しながら所定の工程順序による複数の組立作業をそれぞれの作業位置で行っている作業者に装着され当該作業者の前記作業位置を検出する位置センサと、
前記作業者の頭部に装着され、架空画像をディスプレイ画面上に表示させるヘッドマウントディスプレイ装置と、
前記位置センサで検出された前記作業者の前記作業位置と次の前記作業位置との間隔を算出し、前記間隔に応じて移動させる前記次の作業位置を指し示す記号を、前記架空画像として前記ヘッドマウントディスプレイ装置の前記ディスプレイ画面上に表示させる作業解析部を備えているデータ処理装置とから構成されていることを特徴とする作業アシストシステム。
【請求項2】
前記ヘッドマウントディスプレイ装置は、前記架空画像を前記作業者の視線方向に応じて前記ディスプレイ画面上に移動可能に表示させるために、前記作業者の前記視線方向を検出する視線センサを備え、
前記作業解析部は、前記間隔と共に前記視線センサで得られた前記作業者の前記視線方向に応じて移動させる前記次の作業位置を指し示す記号を、前記架空画像として前記ヘッドマウントディスプレイ装置の前記ディスプレイ画面上に表示させる作業解析機能を有することを特徴とする請求項1記載の作業アシストシステム。
【請求項3】
前記データ処理装置は、生産企画台数に基づき設定された前記生産ラインに流す製品種類の順番の生産情報データを保存する生産情報データベースと、
前記生産情報データベースに保存された前記生産情報データに基づき前記生産ラインに流す前記製品種類に対応する作業の順番、内容の工程順序データを保存する工程順序データベースと、
前記工程順序データベースに保存された前記工程順序データに対応する複数の作業位置データを保存する作業位置データベースとを有するデータ記憶部を備え、
前記作業解析部は、前記生産情報データベースから呼び出された前記生産情報データ及び前記工程順序データベースから呼び出された前記工程順序データに対応する前記作業位置データを前記作業位置データベースから選択するデータ選択機能を有することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業アシストシステム。
【請求項4】
前記ヘッドマウントディスプレイ装置は、外界からの像を透過すると共に前記ディスプレイ画面上に表示された前記架空画像を反射することで、前記外界からの像に前記架空画像を投影するハーフミラーを有する光学透過型であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち何れか1項に記載の作業アシストシステム。
【請求項5】
前記ヘッドマウントディスプレイ装置は眼鏡に組み込まれていることを特徴とする請求項4記載の作業アシストシステム。
【請求項6】
前記位置センサは、前記組立作業を行っている前記作業者の手の作業動作を経時的に測定するモーションキャプチャ装置であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のうち何れか1項に記載の作業アシストシステム。
【請求項7】
工場内の生産ラインにおいて、当該生産ライン上を移動しながら所定の工程順序による複数の組立作業をそれぞれの作業位置で行っている作業者の前記作業位置を、当該作業者に装着された位置センサによって測定し、前記位置センサで検出された前記作業位置の座標データをデータ処理装置の作業解析部に送信して、前記作業者の頭部に装着されたヘッドマウント装置のディスプレイ画面上に前記組立作業のアシスト情報を表示する作業アシスト方法であって、
前記作業解析部は、
前記位置センサから前記座標データを取得する第1のステップと、
前記第1のステップで取得した前記座標データから前記作業者の前記作業位置を算出する第2のステップと、
前記第2のステップで算出した前記作業位置と次の前記作業位置との間隔を算出して間隔データを生成する第3のステップと、
前記第3のステップで算出した前記間隔に応じて移動する前記次の作業位置を指し示す記号データを作成する第4のステップと、
前記第4のステップで作成された前記記号データに基づく記号を前記ヘッドマウントディスプレイ装置のディスプレイ画面上に表示させる第5のステップとを有することを特徴とする作業アシスト方法。
【請求項8】
前記第2のステップと前記第3のステップとの間に、前記ヘッドマウントディスプレイ装置に備えられた視線センサによって検出した前記作業者の視線方向の視線方向データを取得するステップを有し、
前記第4のステップは、前記第3のステップで算出した前記間隔と共に前記ステップで取得した前記視線方向データに応じて移動させる前記次の作業位置を指し示す記号データを作成することを特徴とする請求項7記載の作業アシスト方法。
【請求項9】
前記第1のステップの前に、
前記データ処理装置が備えるデータ記憶部に格納された生産情報データベースから所定の生産情報データを呼び出す第1の呼出ステップと、
前記データ記憶部に格納された工程順序データベースから所定の工程順序データを呼び出す第2の呼出ステップと、
前記各呼出ステップで呼び出された前記生産情報データ及び前記工程順序データに対応する前記所定の工程順序による前記複数の組立作業の最初の前記作業位置データを前記データ記憶部に格納された作業位置データベースから呼び出す第3の呼出ステップとを有することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の作業アシスト方法。
【請求項10】
前記第5のステップの後に、
前記所定の工程順序による前記複数の組立作業のうち最初の前記組立作業以降の残りの前記組立作業において、前記第1のステップから前記第5のステップまでを繰り返す第6のステップを有することを特徴とする請求項7乃至請求項9のうち何れか1項に記載の作業アシスト方法。
【請求項11】
請求項7乃至請求項10のうち何れか1項に記載の作業アシスト方法によって実現するためのプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−271928(P2010−271928A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123272(P2009−123272)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(504409543)国立大学法人秋田大学 (210)
【Fターム(参考)】