説明

作業機の操作部材に対する力覚制御装置、力覚発生装置、及び、力覚制御方法

【課題】操作者に対して力覚による報知を的確に行う。
【解決手段】コントローラ1は、レバー2の変位量に係る信号及び外部信号を受信し、これら信号の一方又は両方に基づいてレバー2に付加する圧力を演算する。そしてコントローラ1は、演算した圧力がレバー2に付加されるよう、力覚アクチュエータ33bの駆動を制御する。力覚アクチュエータ33bの駆動により分岐管32x内の流体に圧力が付加され、この圧力が本体管32内の流体に伝達され、さらに支持体2aを介してレバー2に伝達される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機の操作部材に対する力覚制御装置、力覚発生装置、及び、力覚制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械や産業用ロボット、制御器を搭載する作業器具類は、各種作業における作業力の拡大、速度、効率、精度等を向上させるものである。これら作業機は、機械的機構と動力として電動機や内燃機関等を具備しており、駆動力としては油圧式、空圧式、電気式等がある。駆動方式については、一定の処理を繰り返す自動制御方式のものもあるが、人が操作・操縦することによるものもある。後者の一例である建設機械のクレーンやショベルは、操作室内にレバー等の操作部材を有し、操作者が操作部材を操作することで、操作部材の変位量に応じた駆動力(回転トルク、速度等)により駆動するよう構成されている。このような作業機の操作部材に関する技術文献として、特許文献1が知られている。特許文献1の技術は、操作部材(操作レバー)の支持体に、操作部材を付勢する付勢手段と可変粘性流体を収容したダンパとを設け、操作部材の操作速度(変位速度)に応じてダンパ内の流体の粘度を通電により変化させ、ダンパによる減衰力を発生させる。これにより、付勢手段による付勢力を調整し、操作者の操作部材に加える力に対する反力を調整するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−276244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、作業機においては、作業機の姿勢、作業機周辺の環境、作業対象物(荷物等)の位置・重量等の各要素が、作業に影響を及ぼす場合がある。例えば、作業機が静止状態から駆動開始してしばらく経過した後は、操作部材の変位量に応じた駆動力が適時に生じ、作業を円滑に行うことができるが、駆動開始直後は、静摩擦と動摩擦との差異、電気系と機械系とにおける動作の遅延等によって、操作部材の変位量に応じた駆動力が適時に生じず、作業を円滑に行いにくい傾向にある。また、例えば作業機がクレーンであって、作業対象物を保持しつつ旋回する場合や作業対象物の引き揚げのためにブームを伏仰させる場合、作業対象物の重力と旋回やブーム伏仰による回転力との合力とによって作業対象物が振り子運動を行うため、作業を円滑に行いにくい。操作者はこのような問題を考慮しつつ操作を行う必要があり、経験のある操作者であれば、機械が発生する振動や音や吊り荷の位置情報(例えば、旋回動作時における油圧モータの圧力や流量の変化、巻き揚げ動作時における巻き揚げドラムの負荷トルクやワイヤ張力)を自らの五感で感知して精巧な操作を行い得る。このような力覚を操作者に適切に提示することができれば、経験の少ない操作者であっても、経験のある操作者のような精巧な操作が可能となる。そのため、上記各要素について操作者に対して報知を行うことが求められている。
【0005】
報知の方法としては、聴覚による方法(例えば、ブザー音や特殊な音色を発生させる方法)、視覚による方法(例えば、特定の画像を表示する方法)等が挙げられるが、前者では報知音と周辺の環境音との区別が困難であり報知音を把握しにくいという問題、後者では操作者が操作に集中できないという問題がある。その他、力覚による方法として、操作部材を微小振動させることが考えられるが、この場合、特に精密性を要する操作(微操作)において、適切な操作を行えないという問題がある。また、上記特許文献1の技術では、たとえ操作速度に加えて上記各要素を考慮したとしても、ダンパによる減衰力によって付勢力を調整するだけであるため、力覚による報知を的確に行うことができない。
【0006】
本発明の目的は、操作者に対して力覚による報知を的確に行うことが可能な、作業機の操作部材に対する力覚制御装置、力覚発生装置、及び力覚制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1観点によると、作業機の操作者が操作する操作部材の変位量に係る信号及び外部信号の少なくともいずれかを受信する受信手段と、前記受信手段が受信した信号に基づいて、前記操作部材に付加する圧力を演算する演算手段と、前記操作部材の変位に伴い流動可能な流体に生じる圧力を介して前記演算手段により演算された圧力が前記操作部材に付加されるよう、前記流体に圧力を付加する力覚アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段とを備えたことを特徴とする、作業機の操作部材に対する力覚制御装置が提供される。
【0008】
本発明の第2観点によると、上記第1観点に係る力覚制御装置と、前記流体を収容する収容部材と、前記力覚アクチュエータと、前記操作部材を支持すると共に前記収容部材及び前記力覚アクチュエータを内蔵する支持体とを備え、前記流体に生じる圧力が前記支持体を介して前記操作部材に付加されることを特徴とする、作業機の操作部材に対する力覚発生装置が提供される。
【0009】
本発明の第3観点によると、作業機の操作者が操作する操作部材の変位量に係る信号及び外部信号の少なくともいずれかを受信する受信ステップ、前記受信ステップにおいて受信した信号に基づいて、前記操作部材に付加する圧力を演算する演算ステップ、及び、前記操作部材の変位に伴い流動可能な流体に生じる圧力を介して前記演算ステップにおいて演算された圧力が前記操作部材に付加されるよう、前記流体に圧力を付加する力覚アクチュエータの駆動を制御する駆動制御ステップを備えたことを特徴とする作業機の力覚制御方法が提供される。
【0010】
ここで、「外部信号」とは、操作部材の変位量に基づき行われる作業に影響を及ぼす要素(例えば、作業機の姿勢、作業機がこれから行う動作の種類、作業機周辺の環境、作業対象物(荷物等)の位置・移動軌跡・重量、油圧モータの圧力や流量、ウィンチドラムの負荷トルクやワイヤ張力等の各要素)に係るデータ値を示す信号をいう。
【0011】
上記第1〜第3観点によれば、力覚アクチュエータの駆動を制御し、操作部材の変位に伴い流動可能な流体に生じる圧力を介して、操作部材に圧力を付加する。この場合、操作部材に対し、能動的に圧力が付加されることから、操作者に対して力覚による報知を的確に行うことが可能である。
【0012】
変位量に係る信号に基づいた圧力を操作部材に付加する場合、反力を調整する(例えば反力を大きくすることで操作感覚を重くし、慎重に微操作を行うのに好適な設定としたり、反力を小さくすることで操作感覚を軽くし、操作者の疲労を抑制しつつ迅速な操作を行うのに好適な設定としたりする)ことができる。また、外部信号に基づいた圧力を操作部材に付加する場合、力覚による報知が的確に行われることにより、操作経験の少ない者でも、操作に対する注意力が喚起され、円滑な作業を実現し得る。
【0013】
また、本発明の上記第2観点に係る力覚発生装置によれば、操作部材を支持する支持体に流体の収容部材及び力覚アクチュエータを内蔵させたことで、力覚発生に係る部材を外部に設けた場合に比べ、装置全体の小型化を実現することができる。
【0014】
本発明に係る力覚制御装置は、前記流体の収容空間が前記操作部材の変位方向に沿って設けられており、前記収容空間における前記変位方向に対向する位置に設けられたバルブの駆動を制御することにより、前記操作部材に付加される圧力を前記変位方向に関して調整する調整手段をさらに備えてよい。この場合、力覚による報知をより一層効果的に行うことができる。
【0015】
前記調整手段は、複数の前記バルブを個別に制御可能であることが好ましい。この場合、力覚による報知をさらに一層効果的に行うことができる。
【0016】
前記調整手段は、前記演算手段が前記変位量に係る信号に基づいて前記圧力を演算した場合、前記変位方向に関して均一な圧力が前記操作部材に付加されるように調整してよい。この場合、いずれの変位方向についても同様の反力が生じるようにし、操作感覚を重くすることができる。
【0017】
前記調整手段は、前記演算手段が前記外部信号に基づいて前記圧力を演算した場合、前記変位方向に関して不均一な圧力が前記操作部材に付加されるように調整してよい。この場合、不均一な圧力により、力覚による報知を的確に行うことができる。
【0018】
前記操作部材は、作業対象物に回転力を付与する動作(例えば旋回動作や起伏動作)に係るものであってよい。この場合、操作部材を操作した際に、クレーンにおいては、作業対象物の重力と回転力との合力とによって作業対象物が振り子運動を行うため、作業に注意を要することから、力覚による報知を的確に行うことによる効果が特に発揮される。
【0019】
前記操作部材が、前記操作者の操作により傾斜可能な棒状部材であり、前記変位量が、前記操作部材の傾斜角度であってよい。この構成は、建設機械等に適した形態である。
【0020】
前記作業機が油圧式であってよい。この構成は、建設機械等に適した形態である。
【0021】
本発明に係る力覚発生装置は、前記操作部材を付勢すると共に前記変位量に応じた復元力を発生する付勢手段をさらに備えてよい。この場合、付勢手段の復元力によって操作部材を初期位置に漸進的に復帰させることができ、操作性の向上が実現される。
【0022】
本発明に係る力覚発生装置において、前記支持体が、前記操作部材の変位に伴い変位すると共に、前記力覚アクチュエータの駆動により生じた前記流体の圧力に応じて変位し、前記操作部材を変位させてよい。この場合、流体の圧力に応じて支持体が変位し、さらに操作部材が変位するため、操作者に対してより的確に報知を行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によると、力覚アクチュエータの駆動を制御し、操作部材の変位に伴い流動可能な流体に生じる圧力を介して、操作部材に圧力を付加する。この場合、操作部材に対し、能動的に圧力が付加されることから、操作者に対して力覚による報知を的確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る力覚制御装置及び力覚発生装置が適用される、作業機の一例である油圧式クレーンの概略構成図である。
【図2】図1に示す油圧式クレーンの上部旋回体における駆動システムを示す図である。
【図3】図2に示すレバーに対して設けられた力覚発生装置を示す概略図である。
【図4】図3のレバーを後方に倒した場合における力覚発生装置の各要素の状態を示す概略図である。
【図5】力覚発生装置の力覚発生調整ユニットに含まれる力覚発生部及び力覚調整部を示す模式図である。
【図6】図5における一方の力覚調整部のバルブを初期位置に維持しつつ他方の力覚調整部のバルブを切り換えた状態を示す模式図である。
【図7】力覚制御方法を示すフローチャートである。
【図8】力覚発生装置の第1変形例を示す、図5に対応する模式図である。
【図9】力覚発生装置の第2変形例を示す、図5に対応する模式図である。
【図10】力覚発生装置の第3変形例を示す、図5に対応する模式図である。
【図11】力覚発生装置の第4変形例を示す、図5に対応する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、図1を参照し、本発明の一実施形態に係る力覚制御装置及び力覚発生装置が適用される作業機の一例である油圧式クレーン100の概略構成について、説明する。
【0027】
クレーン100は、下部走行体50、下部走行体50の上部に設けられた上部旋回体60、上部旋回体60に接続されたアタッチメント70、及び、作業対象物(荷物等)を引掛け保持するフック80を有する。上部旋回体60は、下部走行体50の平面中心を通り且つ下部走行体50が走行する地面に対し直交する軸Oを回転軸として、旋回可能である。アタッチメント70は、上部旋回体60の上部前方から延出すると共に上部旋回体60との接続点を中心として伏仰可能なブーム71、及び、ブーム71の上部旋回体60とは反対側の端部に接続されると共にブーム71との接続点を中心として伏仰可能なジブ72を含む。ブーム71及びジブ72はワイヤ75を介して上部旋回体60に支持されている。フック80はワイヤ81を介して上部旋回体60に支持されている。ワイヤ81は、一端が上部旋回体60に他端がフック80にそれぞれ接続されており、上部旋回体60からアタッチメント70のブーム71及びジブ72に沿って延在し、そしてジブ72の先端(ブーム71とは反対側の端部)から鉛直方向下方に垂下し、他端においてフック80に接続している。上部旋回体60は、各ワイヤ75,81を巻き揚げるためのウィンチ(図示せず)も具備している。
【0028】
下部走行体50は、走行方向(図1中矢印で示す水平方向)に直交する左右方向(図1の紙面に直交する方向)両側に1つずつ、後述の動力源61(図2参照)により駆動する走行用油圧モータ(図示せず)を有する。
【0029】
上部旋回体60は、図2に示すように、動力源61、作動油を貯留する油圧タンク62、動力源61の駆動により油圧タンク62から作動油を汲み上げる油圧ポンプ63、及び、油圧ポンプ63の駆動により供給された作動油によって駆動する複数の油圧モータを有する。動力源61としては、エンジン等の内燃機関、バッテリ及び電動機の組合せによるもの、内燃機関とバッテリ及び電動機との組合せによるハイブリッド式のもの等が挙げられる。
【0030】
図2には、上記複数の油圧モータのうち旋回用モータ65のみを示すが、上部旋回体60には旋回用モータ65以外にもブーム伏仰用モータ、ジブ伏仰用モータ、ウィンチ用モータ等が設けられている。旋回用モータ65は、その他のモータと直列、並列、又は直列・並列併用で、油圧ポンプ63に対して接続されてよい。これら各油圧モータは、バルブを介して油圧ポンプ63から作動油を受容し、減速機を介してクレーン100の対応する各部を駆動する。図2には、旋回用モータ65に対応したバルブ64、減速機66、及び旋回機構67のみが示されている。
【0031】
本実施形態において、レバー2は旋回動作に用いられるものである。即ち、操作者によるレバー2の操作に応じてバルブ64の経路が切り換わり、これにより旋回用モータ65の回転方向や回転速度が変化する。旋回用モータ65以外のモータは、例えばレバー2以外の操作部材の操作者による操作に応じて、対応するバルブの経路が切り換わり、モータの回転方向や回転速度が変化する。
【0032】
クレーン100の操作者は、作業時においてクレーン100が旋回動作、ブーム伏仰動作、ジブ伏仰動作、ウィンチ動作等の複数の動作を連続的に又は同時に行うよう、各操作部材(レバー2等)を操作する。
【0033】
レバー2は、操作者が操作室内に着座したときに手で握りながら操作可能な、上部旋回体60の操作室内において支持体2aに支持された棒状部材である。レバー2は、初期状態において支持体2aの表面から直交する方向に延在しており(図2参照。このときの位置を中立位置と称す。)、操作者の操作により下端を支点として前後方向(図1中矢印で示すクレーン100の走行方向に沿った水平方向)に傾斜可能である(図3参照)。レバー2の下端には、図3に示すように、レバー2の傾斜角度及び傾斜方向を検出する角度計2bが内蔵されている。角度計2bが検出した傾斜角度及び傾斜方向を示す信号(変位量に係る信号)は、コントローラ1に送信される。
【0034】
角度計2bとしては、ポテンショメータのようなアナログ検出を行うもの、ロータリーエンコーダのようなデジタル検出を行うもの等、任意の検出器を適用可能である。
【0035】
次に、図3及び図4を参照し、本実施形態の力覚発生装置30の概要について説明する。
【0036】
力覚発生装置30は、図3及び図4に示すように、支持体2a、一対のバネ3a,3b、力覚発生調整ユニット31、及びコントローラ1を含む。一対のバネ3a,3b及び力覚発生調整ユニット31は、レバー2に対応して設けられたものである。コントローラ1は、クレーン100全体の動作を制御する。
【0037】
バネ3a,3bはそれぞれ、レバー2の傾斜可能な前後方向に関してレバー2の下端から所定距離離隔した位置において、支持体2aに内蔵されている。バネ3a,3bは、上端が支持体2aの表面近傍、下端が力覚発生調整ユニット31における後述の本体管32の延在部32a,32b上端近傍にそれぞれ固定され、支持体2aを介してレバー2を鉛直方向上方に付勢すると共に、レバー2の傾斜に応じた復元力を発生する。
【0038】
支持体2aは、表面がレバー2の延在方向に対して常に直交する方向に延在し、レバー2の傾斜に応じて傾斜する。例えば図3の中立位置から操作者がレバー2を後方に倒すと、図4に示すように支持体2aも傾斜する。このとき後方のバネ3bは支持体2a表面の下降に伴い圧縮され、前方のバネ3aは支持体2a表面の上昇に伴い伸張する。またこのとき、後述の力覚発生調整ユニット31における後方のロッド36d及びピストン36pが支持体2a表面の下降に伴い下方に移動し、前方のロッド36d及びピストン36pが支持体2a表面の上昇に伴い上方に移動する。また後に詳述するように、支持体2aは、力覚発生調整ユニット31の駆動により生じた流体の圧力に応じて傾斜し、レバー2を傾斜させる。
【0039】
力覚発生調整ユニット31は、流体が収容されているU字状の本体管32、本体管32の底部から下方に延出した分岐管32xに設けられた力覚発生部33、及び、本体管32の2つの延在部32a,32bにそれぞれ対応して設けられた力覚調整部34,35を含む。
【0040】
本体管32は、延在部32a,32bの上端近傍に配置されたピストン36p及び分岐管32x内に配置されたピストン33pによって画定された流体収容空間を有する。各ピストン36pのロッド36dの上端は支持体2aの表面近傍に固定され、下端はピストン36pに固定されている。なお、ピストン36p及びロッド36dは力覚調整部34,35の要素、ピストン33pは力覚発生部33の要素であって、これらの詳細については後に説明する。
【0041】
本体管32及び分岐管32xを含む流体の収容空間は、閉回路を形成している。
【0042】
バネ3a,3b及び力覚発生調整ユニット31の各構成要素は支持体2aに内蔵されており、コントローラ1はクレーン100の適宜の位置に配置されている。
【0043】
コントローラ1は、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM等を含む。ROMには、後述する力覚制御方法を実行するためのプログラム、レバー2の変位量(本実施形態では、レバー2の傾斜角度及び傾斜方向)と旋回用モータ65の回転方向及び回転速度との関係特性、後述のS2(図7参照)においてレバー2に付加する圧力を演算するための演算式等が記憶されている。RAMには、レバー2の角度計2bから送信されてきた変位量に係る信号のデータ、外部信号のデータ、その他プログラム実行のための各種情報が一時的に記憶される。
【0044】
次に、図5及び図6を参照し、力覚発生調整ユニット31に含まれる力覚発生部33及び力覚調整部34,35について説明する。
【0045】
図5及び図6に示すように、力覚発生部33はシリンダ33a及び力覚アクチュエータ33bを有し、力覚調整部34,35はそれぞれシリンダ36、バルブ37、及びアキュムレータ38を有する。力覚アクチュエータ33b及びバルブ37の駆動はコントローラ1により制御される。
【0046】
力覚発生部33のシリンダ33aは、シリンダ33a内に配置されたピストン33pにより画定された流体収容空間33vを有する。当該空間33vは、分岐管32xと連通し、ピストン33pの鉛直方向に沿った移動により容積が増減する。力覚アクチュエータ33bは、ピストン33pに接続し且つコントローラ1の制御により鉛直方向に伸縮可能なロッド33dを有する。
【0047】
シリンダ33aの受圧面積(即ち、空間33vにおける水平方向に沿った断面積であって、ピストン33pの面積)は、後述のような力覚アクチュエータ33bの駆動に応じてシリンダ33a内に生じた流体の圧力を本体管32内の流体に伝達可能なように、本体管32の受圧面積(本体管32の延在方向に直交する方向に沿った断面積であって、ピストン36pの面積)に比べて十分小さい。
【0048】
力覚調整部34,35のシリンダ36は、シリンダ36内に配置されたピストン36pにより画定された流体収容空間36vを有する。当該空間36vは、本体管32の延在部32a,32bとそれぞれ連通し、ピストン36pの移動により容積が増減する。シリンダ36のピストンロッド36dは、上述のとおり、上端が支持体2aの表面近傍、下端がピストン36pに固定されており、支持体2aの傾斜、及び、空間36v内の流体レベルに沿ったピストン36pの位置の変化に応じて、鉛直方向に移動可能である。つまり、支持体2aの表面が上昇又は下降すると、ロッド36dが鉛直方向に移動すると共にピストン36pの位置が変化し、一方、空間36v内の流体レベルの変動によりピストン36pの位置が変化すると、ロッド36dが鉛直方向に移動すると共に支持体2aの表面が上昇又は下降する。
【0049】
バルブ37は、コントローラ1の制御により、(A)及び(B)の2つの位置を選択的に取り得る。(A)(B)の各位置において、シリンダ36に接続するポートPC、アキュムレータ38に接続するポートPA、及び本体管32に接続するポートPBが設けられている。バルブ37が(A)の位置にあるとき、ポートPC,PBが接続し、シリンダ36と本体管32とが接続される。バルブ37が(B)の位置にあるとき、ポートPC,PAが接続し、シリンダ36とアキュミュレータ38とが接続される。初期状態において、バルブ37は(A)の位置にある。
【0050】
ここで、図3〜図6を参照し、レバー2の変位(傾斜)や力覚アクチュエータ33bの駆動に応じた各部の動作について説明する。
【0051】
力覚調整部34,35の両バルブ37が(A)の位置にあり(図5参照)、且つ、力覚アクチュエータ33bが駆動されない状態において、レバー2が図4に示すように後方に傾斜された場合、支持体2aが傾斜すると共に、後方にある力覚調整部35のロッド36d及びピストン36pの下降により、力覚調整部35のシリンダ36の空間36v内の流体がポートPC,PBを介して本体管32に流入し、他方の力覚調整部34のシリンダ36の空間36v内の流体レベルが上昇する。この場合、力覚アクチュエータ33bが駆動されないため、レバー2にはバネ3a,3bの復元力のみが作用する。即ち、操作者がレバー2を図4のように傾斜させた後レバー2から手を離すと、レバー2はバネ3a,3bの復元力によって図3に示す中立位置に戻ろうとする。
【0052】
力覚調整部34,35の両バルブ37が(A)の位置にある状態(図5参照)において、力覚アクチュエータ33bを駆動してロッド33dを上方に伸張させた場合、シリンダ33aの空間33vが収縮し、空間33v内の流体に圧力が付加される。そしてこのとき空間33vが分岐管32xを介して本体管32と連通し、さらに本体管32の2つの延在部32a,32bが分岐管32xを介して互いに接続されているため、2つの延在部32a,32b内の流体に均一に圧力が付加される。そしてさらにロッド36dを介して支持体2aに圧力が伝達され、支持体2aを介してレバー2にも流体圧力に起因した圧力が付加されることとなる。この場合、レバー2には、力覚アクチュエータ33bの駆動による流体圧力に起因した圧力が作用する。
【0053】
またこの場合、支持体2aにおけるレバー2に対して前後両側に均一な圧力が生じ、操作者のレバー2に加える力に対する反力が、当該圧力の分だけ大きくなる。即ち、支持体2aへの圧力付加により、操作者がレバー2を前後方向に傾斜させようと操作するとき、支持体2aに圧力付加がなされていない状態よりも大きな力をレバー2に加えなければ、レバー2を傾斜させることができない。この場合、レバー2の操作感覚が重くなるため、例えば慎重に微操作を行う場合等に好適である。
【0054】
レバー2が図3の中立位置にある状態において、力覚調整部34,35の両バルブ37を(A)の位置に維持しつつ(図5参照)力覚アクチュエータ33bを駆動してロッド33dを上方に伸張させた場合、レバー2には、力覚アクチュエータ33bの駆動による流体圧力に起因した圧力が作用する。一方、レバー2が図4のように後方に傾斜した状態において、力覚調整部34,35の両バルブ37を(A)の位置に維持しつつ(図5参照)力覚アクチュエータ33bを駆動してロッド33dを上方に伸張させた場合、レバー2には、バネ3a,3bの復元力に加え、力覚アクチュエータ33bの駆動による流体圧力に起因した圧力が作用する。
【0055】
ロッド33dに加わる力をf、シリンダ33aの受圧面積をS1、本体管32の受圧面積をS2とすると、空間33v内の流体に付加される圧力は「f/S1」であり、また、流体に付加される圧力はどの位置においても同一であることから、ロッド36dに付加される力は「(f/S1)×S2」となる。上記のように、シリンダ33aの受圧面積S1は本体管32の受圧面積をS2に比べて十分小さいことから(S1≪S2)、小さな力fによって、ロッド36dに大きな力を付加することができる。
【0056】
なお、力覚アクチュエータ33bを駆動する前に、力覚調整部34,35のバルブ37の駆動を制御することで、レバー2に付加される圧力を前後において調整することができる。
【0057】
例えば、図6に示すように、一方(図6右方)の力覚調整部35のバルブ37の位置を(A)に維持したまま、他方(図6左方)の力覚調整部34のバルブ37の位置を(B)に切り換える。その後、力覚アクチュエータ33bを駆動し、ロッド33dを上方に伸張させると、シリンダ33aにおいて発生した圧力が一方(図6右方)の力覚調整部35のみに伝達される。
【0058】
レバー2が図3の中立位置にある状態において、上記のようなバルブ37の切り換え及び力覚アクチュエータ33bの駆動を行った場合、力覚調整部35に対応する一方(図6右方)のピストン36p及びロッド36dが他方(図6左方)のピストン36p及びロッド36dよりも上方に移動することにより、図4とは逆に、支持体2aの表面の後方が隆起するように傾斜し、支持体2aの傾斜に伴ってレバー2も前方に倒れる。一方、レバー2が図4のように後方に傾斜した状態において、上記のようなバルブ37の切り換え及び力覚アクチュエータ33bの駆動を行った場合、前後両方のピストン36p及びロッド36dがそれぞれ初期位置に復帰する方向に移動することにより、支持体2aには表面が水平になる方向の圧力が付加され、レバー2には図3の中立位置に戻る方向の力が付加される。
【0059】
次に、図7を参照し、コントローラ1による力覚制御方法について説明する。図7に示す各処理は、コントローラ1のCPUにより実行されるものである。即ち、コントローラ1のCPUは、ROMからプログラムを読み出した上で、RAMから各種情報を読み出しつつ、下記のような力覚制御方法を実行する。
【0060】
コントローラ1は、先ず、角度計2bから送信される変位量に係る信号、又は、外部信号を受信する(S1)。ここで、「外部信号」とは、レバー2の変位量に基づき行われる作業に影響を及ぼす要素(例えば、クレーン100の姿勢、クレーン100がこれから行う動作の種類、クレーン100周辺の環境、作業対象物(荷物等)の位置・移動軌跡・重量、油圧モータの圧力や流量、ウィンチドラムの負荷トルクやワイヤ張力等の各要素)に係るデータ値を示す信号をいう。
【0061】
S1で変位量に係る信号又は外部信号を受信した後、コントローラ1は、レバー2に付加する圧力を演算する(S2)。このときコントローラ1のCPUは、ROMに記憶されている演算式と、RAMに記憶されているS1で受信した信号のデータとを参照しつつ、演算を行う。
【0062】
圧力の演算方法は特に限定されるものではないが、本実施形態のように油圧式クレーン100の旋回動作を対象とする場合における演算方法の一例について説明する。即ち、本実施形態では、コントローラ1は、旋回用モータ65(図2参照)の出入口での差圧を検出するセンサから、当該差圧に係るデータ値を示す信号を「外部信号」として受信する。そして、この外部信号に基づいてレバー2に付加する圧力を演算する場合、レバー2に付加する圧力を、外部信号が示すデータ値(この場合、差圧の値)が大きいほど大きな圧力、小さいほど小さな圧力としてよい(ポジコン/比例制御)。或いは、外部信号が示すデータ値(この場合、差圧の値)が大きいほど小さな圧力、小さいほど大きな圧力としてもよい(ネガコン/反比例制御)。また、変位量に係る信号に基づいてレバー2に付加する圧力を演算する場合、傾斜角度が大きいほど大きな圧力、小さいほど小さな圧力としてよいし(ポジコン/比例制御)、逆に、傾斜角度が大きいほど小さな圧力、小さいほど大きな圧力としてもよい(ネガコン/反比例制御)。或いは、傾斜角度ではなく、レバー2の変位速度に基づいて圧力を演算してよい。
【0063】
演算(S2)は、変位量に係る信号及び外部信号の少なくともいずれか一方に基づいて行えばよく、一方の信号のみに基づいて行ってもよいし、両方の信号に基づいて複合的な演算を行ってもよい。
【0064】
なお、上記の演算例において、旋回用モータ65(図2参照)の出入口での差圧を考慮することとしたのは、以下の理由による。即ち、旋回用モータ65の駆動開始指令をコントローラ1が受信してからモータ65が実際に回転し始めるまでには、先ず、油圧ポンプ63からの作動油の供給によりモータ65の入口側の圧力が増加し、モータ65の出入口で差圧が生じる。そしてこの差圧が静摩擦力を超えたときに、モータ65が回転し始める。さらに旋回機構67が駆動を開始するには、減速機66の静摩擦力をも考慮する必要がある。
【0065】
演算(S2)の後、コントローラ1は、力覚を発生させる必要があるか否かを判断する(S3)。この判断は任意の条件に基づいて行ってよく、演算(S2)において考慮した信号の種類、レバー2の位置、クレーン100の姿勢、操作者からの指令等に基づいて当該判断を行ってよい。力覚を発生させる必要がないと判断した場合(S3:NO)、コントローラ1は、処理をS1に戻す。力覚を発生させる必要があると判断した場合(S3:YES)、コントローラ1は、レバー2に付加する圧力を前後方向(レバー2の変位方向)に関して調整する必要があるか否かを判断する(S4)。この判断はS3と同様に任意の条件に基づいて行ってよく、演算(S2)において考慮した信号の種類、レバー2の位置、クレーン100の姿勢、操作者からの指令等に基づいて当該判断を行ってよい。
【0066】
S4に関して、例えば、演算(S2)を変位量に係る信号に基づいて行った場合、前後方向に関して均一な圧力がレバー2に付加されるよう、両バルブ37が初期位置である(A)に維持されるよう、バルブ37の駆動制御(S5)を行わないと判断するか、或いは、両バルブ37が初期位置(A)から(B)に切り換わるよう、バルブ37の駆動制御(S5)を行うと判断する。また、例えば、演算(S2)を外部信号に基づいて行った場合、前後方向に関して不均一な圧力がレバー2に付加されるよう、一方のバルブ37を初期位置(A)に維持しつつ他方のバルブ37が(B)に切り換わるよう、バルブ37の駆動制御(S5)を行うと判断する。
【0067】
コントローラ1は、上記調整を行う必要がないと判断した場合(S4:NO)、処理をS6に移行させる。一方、上記調整を行う必要があると判断した場合(S4:YES)、コントローラ1は、バルブ37の駆動を制御する(S5)。即ち、力覚調整部34,35の一方のバルブ37の位置を(A)に維持しつつ他方のバルブ37の位置を(B)に切り換える(図6参照)か、或いは、両バルブ37を初期位置(A)から(B)に切り換える。
【0068】
そしてS6において、コントローラ1は、力覚アクチュエータ33bの駆動を制御する。即ち、力覚アクチュエータ33bのロッド33dを上方に伸張させ、シリンダ33a内の流体に生じた圧力を、分岐管32x、本体管32、支持体2a等を介して、レバー2に付加する。このとき、力覚アクチュエータ33bに対する駆動力は、レバー2に付加される圧力がS2で演算した圧力となるように設定される。
【0069】
S6の後、又は、S3で力覚を発生させる必要がないと判断した場合(S3:NO)、コントローラ1は、処理をS1に戻す。そして新たに信号を受信し(S1)、演算(S2)を行い、前回の演算結果も踏まえた上で、力覚発生の要否判断(S3)、圧力調整の要否判断(S4)等を行う。コントローラ1は、必要に応じてバルブ37の駆動制御(S5)や力覚アクチュエータ33bの駆動制御(S6)を行い、再び処理をS1に戻すという制御を繰り返す。
【0070】
以上に述べたように、本実施形態に係る力覚制御装置(コントローラ1)及び力覚発生装置30によると、力覚アクチュエータ33bの駆動を制御し、レバー2の変位に伴い流動可能な流体(即ち、シリンダ33a及び本体管32内の流体)に生じる圧力を介して、レバー2に圧力を付加する。この場合、レバー2に対し、能動的に圧力が付加されることから、操作者に対して力覚による報知を的確に行うことが可能である。
【0071】
変位量に係る信号に基づいた圧力をレバー2に付加する場合、反力を調整する(例えば反力を大きくすることで操作感覚を重くし、慎重に微操作を行うのに好適な設定としたり、反力を小さくすることで操作感覚を軽くし、操作者の疲労を抑制しつつ迅速な操作を行うのに好適な設定としたりする)ことができる。また、外部信号に基づいた圧力をレバー2に付加する場合、力覚による報知が的確に行われることにより、操作経験の少ない者でも、操作に対する注意力が喚起され、円滑な作業を実現し得る。
【0072】
また、力覚発生装置30によれば、レバー2を支持する支持体2aに、流体の収容部材である本体管32及び分岐管32x並びに力覚アクチュエータ33bを内蔵させたことで、力覚発生に係る部材を外部に設けた場合に比べ、装置全体の小型化を実現することができる。
【0073】
流体の収容空間が、レバー2の前後方向に沿って設けられている。そしてコントローラ1は、図7のS4において調整すると判断した場合(S4::YES)、収容空間における前後方向に対向する位置に設けられたバルブ37の駆動を制御し(S5)、レバー2に付加される圧力を前後方向に関して調整する。これにより、力覚による報知をより一層効果的に行うことができる。
【0074】
上記のような調整にあたり、コントローラ1は、2つのバルブ37を個別に制御可能である。これにより、力覚による報知をさらに一層効果的に行うことができる。
【0075】
コントローラ1は、S2において変位量に係る信号に基づいて圧力を演算した場合、前後方向に関して均一な圧力がレバー2に付加されるように調整してよい。この場合、前後いずれの方向についても同様の反力が生じるようにし、操作感覚を重くすることができる。
【0076】
コントローラ1は、S2において外部信号に基づいて圧力を演算した場合、前後方向に関して不均一な圧力がレバー2に付加されるように調整してよい。この場合、不均一な圧力により、力覚による報知を的確に行うことができる。
【0077】
レバー2は、旋回動作に用いられるものである。作業対象物をフック80に保持したまま旋回動作を行うと、作業対象物に回転力が付与される。即ち、この場合、レバー2を操作して旋回動作を行った際に、作業対象物の重力と回転力との合力とによって作業対象物が振り子運動を行うため、作業に注意を要する。そのため、力覚による報知を的確に行うことによる効果が特に発揮される。
【0078】
本実施形態において、操作部材は操作者の操作により傾斜可能な棒状部材のレバー2であり、操作部材の変位量はレバー2の傾斜角度である。この構成は、建設機械等に適した形態である。
【0079】
本実施形態で適用される作業機は油圧式であり、建設機械等に適した形態である。
【0080】
力覚発生装置30は、レバー2を付勢すると共にレバー2の傾斜角度に応じた復元力を発生するバネ3a,3bを備えている。この場合、バネ3a,3bの復元力によってレバー2を初期位置に漸進的に復帰させることができ、操作性の向上が実現される。
【0081】
力覚発生装置30において、支持体2aは、レバー2の傾斜に伴い傾斜すると共に、力覚アクチュエータ33bの駆動により生じた流体の圧力に応じて傾斜し、レバー2を傾斜させるものである。この場合、操作者に対してより的確に報知を行うことができる。
【0082】
次いで、図8〜図11を参照し、本発明の力覚発生装置の変形例について説明する。
【0083】
図8は、本発明の力覚発生装置の第1変形例を示す。第1変形例では、本体管32における力覚調整部35,36の間に、流路径調整弁40が設けられている。この場合、弁40の駆動を制御することで、本体管32の流路径を変更し、当該部分を流れる流体の圧力を調整することができる。これにより、レバー2の前後における圧力の調整を効果的に行うことができる。例えば本体管32の流路径を縮小することで流体圧力を増大させたり、流路径を拡大することで流体圧力を減少させたりすることができる。なお、流路径調整弁40は、連続的に流路径を変化させるものであってもよいし、複数の異なる流路径のうちのいずれかを選択して切り換えるものであってもよい。
【0084】
図9は、本発明の力覚発生装置の第2変形例を示す。第2変形例では、第1変形例で示した流路径調整弁40が、各力覚調整部34,35のバルブ37に内蔵されている。具体的には、バブル37が初期位置(A)にある場合にポートPC,PBの接続によりシリンダ36と本体管32とを接続する管の途中に、弁40が設けられている。この場合、弁40をバルブ37に内蔵させたことで、構成部品数を抑制しつつ、レバー2の前後における圧力調整を効果的に行うことができる。また、力覚調整部34,35に対して個別に弁40を設けることで、レバー2の前後に設けられた力覚調整部34,35それぞれにおいて個別に流路径を調整することができ、圧力調整をより効果的に行うことができる。
【0085】
図10は、本発明の力覚発生装置の第3変形例を示す。第3変形例では、各力覚調整部34,35のバルブ37の初期位置が(A)ではなく(B)である。この場合、バルブ37を初期位置(B)に維持した状態では、力覚アクチュエータ33bを駆動しても、本体管32における両バルブ37のポートPB間にある流体に圧力が付加されるのみで、レバー2に圧力を付加して力覚を発生させることはできない。レバー2に圧力を付加して力覚を発生させるには、少なくとも一方のバルブ37を初期位置(B)から(A)に切り換えた上で力覚アクチュエータ33bを駆動する必要がある。
【0086】
図11は、本発明の力覚発生装置の第4変形例を示す。第4変形例では、第3変形例の構成において、第1変形例で示した流路径調整弁40が、各力覚調整部34,35のアキュムレータ38とバルブ37のポートPAとを接続する管の途中に設けられている。なお、弁40は、第4変形例ではバルブ37の外部に設けられているが、図9のようにバルブ37に内蔵されてもよい。
【0087】
以上、本発明の好適な実施の形態及び変形例について説明したが、本発明は上述の実施形態及び変形例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な設計変更が可能なものである。
【0088】
クレーン100は、上述の実施形態以外の様々な構成であってよく、例えばブーム71が多段式(即ち、互いに連結された複数の部材を有し、部材をスライドさせることで伸縮自在に構成されたもの)であってよい。
【0089】
作業機は、上述の実施形態の油圧式クレーン100のように油圧式に限定されず、他の方式(例えば空圧式、水圧式、機械式、電気式等)によるものであってよい。
【0090】
本発明において、作業機とは、建設機械の他、原動機から動力の供給を受けて仕事を行う全ての機械を含む概念である。
【0091】
本発明において、流体は、油に限定されず、油以外の液体、気体等であってよい。
【0092】
力覚アクチュエータは、上述の実施形態のような直動型の力覚アクチュエータ33bに限定されず、例えば回転型であってもよい。
【0093】
力覚アクチュエータの位置は、上述の実施形態のように本体管32の下方に限定されず、任意である。
【0094】
本発明に係る力覚発生装置において、バネ3a,3b及び力覚調整部34,35は必須の構成要素ではなく、省略可能である。
【0095】
力覚調整部34,35は、流体の圧力を調整可能である限り、上述の実施形態及び変形例で示した構成以外にも、様々な構成を採り得る。
【0096】
操作部材として、上述の実施形態では建設機械等に適した形態である傾斜可能な棒状のレバー2を例示しているが、操作者の操作によって角度・位置等の変化を変位量として生じさせるものであれば、レバー2以外の様々な部材を適用可能である。
【0097】
操作部材の変位量は、傾斜角度に限定されず、操作部材の構成に応じて、例えば位置の変化量等であってよい。
【0098】
操作部材は、上述の実施形態のように旋回動作に係るものや、ブーム伏仰に係るものに限定されない。例えば、ショベルの操作部材(ブーム、アーム、バケット等の各アクチュエータに対応する操作部材)について、堀力反力等の力覚に、本発明に係る力覚制御装置、力覚発生装置、及び力覚制御方法を適用してよい。
【0099】
操作部材は、一方向(上述の実施形態のように前後方向)のみに変位(傾斜又は移動)可能なものに限定されず、例えば2方向に変位(傾斜又は移動)可能な十字型レバー等であってよい。十字型レバーの場合、2つの動作(例えば旋回動作及び他の動作)が制御可能であり、十字型レバーにおける一の方向の変位が1の動作、他の方向の変位が他の動作に対応する構成であってよい。また、十字型レバーの場合、十字型レバーが変位可能な2方向の各方向に沿って流体の収容空間を設けてよい。
【0100】
変位量に係る信号及び外部信号は共に、電子的信号、電気的信号、機械的信号等のいずれであってもよく、その形態は特に限定されるものではない。
【0101】
図7のS2における演算方法は、上述の実施形態で述べた方法に限定されず、任意である。
【0102】
レバー2に付加される圧力を前後方向に関して調整するためバルブ37の駆動を制御する処理(S5)は、省略してよい。即ち、図7においてS4及びS5を省略してよい。
【0103】
レバー2の変位量の検出は、上述の実施形態ではコントローラ1ではなく操作部材としてのレバー2に含まれる角度計2bが行い、コントローラ1は検出信号を受信するのみであるが、コントローラ1が変位量の検出を行ってもよい。
【0104】
流体の収容空間は、上述の実施形態のようなU字状の本体管32及び分岐管32xによる形態に限定されず、様々な形態であってよい。また、流体の収容空間は、操作部材の変位方向に沿って設けられていなくてもよい。
【0105】
支持体は、操作部材の変位に伴い変位しなくてもよく、また、力覚アクチュエータの駆動により生じた流体の圧力に応じて変位し、操作部材を変位させるものでなくてよい。
【符号の説明】
【0106】
1 コントローラ(力覚制御装置,受信手段,演算手段,駆動制御手段,調整手段)
2 レバー(操作部材)
2a 支持体
2b 角度計
3a,3b バネ(付勢手段)
30 力覚発生装置
31 力覚発生調整ユニット
32 本体管(収容部材)
32x 分岐管(収容部材)
33 力覚発生部
33b 力覚アクチュエータ
34,35 力覚調整部
37 バルブ
100 油圧式クレーン(作業機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の操作者が操作する操作部材の変位量に係る信号及び外部信号の少なくともいずれかを受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した信号に基づいて、前記操作部材に付加する圧力を演算する演算手段と、
前記操作部材の変位に伴い流動可能な流体に生じる圧力を介して前記演算手段により演算された圧力が前記操作部材に付加されるよう、前記流体に圧力を付加する力覚アクチュエータの駆動を制御する駆動制御手段と
を備えたことを特徴とする、作業機の操作部材に対する力覚制御装置。
【請求項2】
前記流体の収容空間が前記操作部材の変位方向に沿って設けられており、
前記収容空間における前記変位方向に対向する位置に設けられたバルブの駆動を制御することにより、前記操作部材に付加される圧力を前記変位方向に関して調整する調整手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の力覚制御装置。
【請求項3】
前記調整手段が、複数の前記バルブを個別に制御可能であることを特徴とする請求項2に記載の力覚制御装置。
【請求項4】
前記調整手段は、前記演算手段が前記変位量に係る信号に基づいて前記圧力を演算した場合、前記変位方向に関して均一な圧力が前記操作部材に付加されるように調整することを特徴とする請求項2又は3に記載の力覚制御装置。
【請求項5】
前記調整手段は、前記演算手段が前記外部信号に基づいて前記圧力を演算した場合、前記変位方向に関して不均一な圧力が前記操作部材に付加されるように調整することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の力覚制御装置。
【請求項6】
前記操作部材が、作業対象物に回転力を付与する動作に係るものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の力覚制御装置。
【請求項7】
前記操作部材が、前記操作者の操作により傾斜可能な棒状部材であり、
前記変位量が、前記操作部材の傾斜角度であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の力覚制御装置。
【請求項8】
前記作業機が油圧式であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の力覚制御装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の力覚制御装置と、
前記流体を収容する収容部材と、
前記力覚アクチュエータと、
前記操作部材を支持すると共に前記収容部材及び前記力覚アクチュエータを内蔵する支持体とを備え、
前記流体に生じる圧力が前記支持体を介して前記操作部材に付加されることを特徴とする、作業機の操作部材に対する力覚発生装置。
【請求項10】
前記操作部材を付勢すると共に前記変位量に応じた復元力を発生する付勢手段をさらに備えたことを特徴とする請求項9に記載の力覚発生装置。
【請求項11】
前記支持体が、前記操作部材の変位に伴い変位すると共に、前記力覚アクチュエータの駆動により生じた前記流体の圧力に応じて変位し、前記操作部材を変位させることを特徴とする請求項9又は10に記載の力覚発生装置。
【請求項12】
作業機の操作者が操作する操作部材の変位量に係る信号及び外部信号の少なくともいずれかを受信する受信ステップ、
前記受信ステップにおいて受信した信号に基づいて、前記操作部材に付加する圧力を演算する演算ステップ、及び、
前記操作部材の変位に伴い流動可能な流体に生じる圧力を介して前記演算ステップにおいて演算された圧力が前記操作部材に付加されるよう、前記流体に圧力を付加する力覚アクチュエータの駆動を制御する駆動制御ステップ
を備えたことを特徴とする作業機の操作部材に対する力覚制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−221617(P2011−221617A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87238(P2010−87238)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】