説明

作業機械の制御装置

【課題】 機械を操作する上で必要となる複数の操作情報を予めユーザ毎に設定し登録しておくことにより、ユーザ毎の盗難予防用の識別情報と前記複数の操作情報とをリンクさせて活用することができるようにする。
【解決手段】 コントローラ47は、テンキーパッド41により各ユーザ毎に個別に割当てられた解除IDに従って盗難予防制御装置40の施錠を解除すると共に、各ユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bにより個別に選択した特定の操作情報に従って作業装置等の作動を制御する。これにより、油圧ショベルに搭乗したユーザは、テンキーパッド41によりユーザ毎の解除IDを入力するだけで、ユーザが好みに応じて設定する複数の操作情報も自動的に設定することができ、複数の操作情報を盗難予防用の解除IDとリンクさせて活用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の作業機械を制御するのに好適に用いられる作業機械の制御装置に関し、特に、盗難予防用の操作と操作情報の設定操作等を自動的に行い得るようにした作業機械の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の作業機械には、盗難防止を行うためにロック装置を設け、テンキー等の操作によってロック装置の施錠を解除する構成としたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、ブーム、アームおよびバケット等からなる作業装置が設けられる油圧ショベルには、運転席の左,右両側にそれぞれ操作レバー装置が設けられ、左,右の操作レバーを前,後方向、左,右方向に傾転操作することにより、例えば旋回用、アーム用、ブーム用またはバケット用の方向制御弁を切換制御する構成としている。
【0004】
そして、これらの旋回用、アーム用、ブーム用またはバケット用の方向制御弁を切換制御する操作パターンとしては、複数種類のパターンが存在し、ユーザ等の要望に応じて複数の操作パターンのうちから、一つの操作パターンを任意に選択して設定する操作パターン切換装置を搭載したものが知られている(例えば、特許文献2,3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−76479号公報
【特許文献2】特開2004−270363号公報
【特許文献3】特開2005−264613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術では、例えば油圧ショベルの運転席に搭乗したオペレータが盗難防止装置による施錠を解除した後に、例えば複数の操作パターンから一つの操作パターンを選択して設定するという煩雑な操作が必要となり、オペレータの負担が増大するという問題がある。
【0007】
また、操作レバーを傾転操作するオペレータによっては、例えば油圧シリンダ等のアクチュエータを、レバー操作に対してきびきびと速く反応して動くようにしたり、逆にレバー操作に対してアクチュエータを比較的ゆっくりと遅く動くように安全性を重視したり、または標準的な操作フィーリングに設定したい等の種々の要望がある。
【0008】
そして、このように操作フィーリングを速くしたり、遅くしたりする設定操作を、オペレータが運転席に搭乗する度毎に行うようにすると、この場合にもそれぞれの設定操作が煩わしくなり、オペレータの負担を増大させる原因となってしまう。しかも、操作フィーリングの設定操作、または操作パターンの選択操作等を場合によっては誤って行うこともあり、これによって誤作動を誘発させる原因になる等の問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、機械を操作する上で必要となる複数の操作情報を予めユーザ毎に設定し登録しておくことにより、盗難予防用のユーザ毎の識別情報と前記複数の操作情報とをリンクさせて活用でき、ユーザであるオペレータの負担等を軽減することができるようにした作業機械の制御装置を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、例えばオペレータが操作フィーリングを速くしたり、遅くしたり、または標準に戻したりして操作情報の内容を変更したときに、この変更内容を不揮発性のメモリに更新可能に記憶させ、次回の機械運転時にも盗難予防用の識別情報と複数の操作情報とをリンクさせて活用することができるようにした作業機械の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、請求項1の発明による作業機械の制御装置は、各ユーザに個別に割当てられた識別情報の入力に従って機械の施錠、解除を行う盗難予防手段と、前記機械を操作する上で必要な複数の情報を選択的に入力するための情報入力手段と、該情報入力手段で入力された情報に従って前記機械の作動を制御する制御手段とを備え、該制御手段は、各ユーザが前記情報入力手段により個別に選択して入力した特定の操作情報と前記識別情報とを関連させて記憶する構成とし、かつ前記制御手段は、前記情報入力手段により前記識別情報が入力されたときに前記盗難予防手段の施錠を解除し、前記ユーザによる個別の操作情報に従って前記機械の作動を制御する構成としたことにある。
【0012】
また、請求項2の発明によると、前記情報入力手段は、各ユーザ毎に個別に割当てられた前記識別情報を入力する第1の入力手段と、前記操作情報を選択的に入力して設定する第2の入力手段とを含んで構成している。
【0013】
また、請求項3の発明によると、前記制御手段は、更新可能に書込まれた情報を電源の遮断後にも記憶する不揮発性メモリを備え、前記情報入力手段により各ユーザが前記操作情報の内容を変更したときには、その変更内容を前記不揮発性メモリに記憶させる構成としている。
【0014】
また、請求項4の発明によると、前記制御手段は、前記情報入力手段によりユーザが前記操作情報の内容を変更しても、当該ユーザが前記識別情報を入力するまでは前記不揮発性メモリへの変更内容の書込みを禁止し、前記識別情報の入力に従って前記変更内容を不揮発性メモリに記憶させる構成としている。
【0015】
さらに、請求項5の発明によると、前記制御手段は、前記情報入力手段によりユーザが前記操作情報の内容を変更しても、前記電源が遮断されるまでは前記不揮発性メモリへの変更内容の書込みを禁止し、前記電源が遮断されるときに前記変更内容を不揮発性メモリに記憶させる構成としてなる構成としている。
【発明の効果】
【0016】
上述の如く、請求項1に記載の発明によれば、情報入力手段で入力された情報に従って機械の作動を制御する制御手段は、前記情報入力手段によりユーザ毎に個別に割当てられた専用の識別情報に従って盗難予防手段の施錠を解除すると共に、各ユーザが個別に選択した特定の操作情報に従って前記機械の作動を制御する構成としているので、例えば複数の操作パターンから一つの操作パターンをユーザが選択して設定する操作情報、レバー操作に対するアクチュエータ側の作動(反応)を速くしたり、遅くしたりする操作フィーリングの操作情報等を、盗難予防用の各ユーザ毎の識別情報とを関連付け、リンクさせて活用することができ、作業機械の運転席に搭乗したユーザ(オペレータ)は、例えば専用の識別情報を入力するだけで複数の操作情報も自動的に設定しておくことができる。
【0017】
このため、オペレータは作業機械の運転操作前に、複数の操作情報を逐一入力するという煩雑な設定作業を不要にすることができ、オペレータの負担等を大幅に軽減することができる。そして、このように予め特定された各操作情報に従って作業機械の作動を制御することができ、誤った操作情報が入力される等の不具合をなくし、誤作動を誘発させる等の問題も解消することができる。
【0018】
また、請求項2の発明によれば、情報入力手段を第1,第2の入力手段により構成しているので、例えばオペレータは一方で第1の入力手段を操作してユーザ毎に個別に割当てられた専用の識別情報を入力することができ、他方では第2の入力手段を操作してユーザ毎に特定すべき複数の操作情報を選択的に入力し、操作情報の変更作業等を容易に行うことができる。
【0019】
また、請求項3の発明によれば、情報入力手段によりユーザが前記操作情報の内容を変更したときには、その変更内容を不揮発性メモリに記憶させる構成としているので、例えばオペレータが操作フィーリングを速くしたり、遅くしたり、または標準に戻したりして操作情報の内容を変更したときには、この変更内容を不揮発性のメモリに更新可能に記憶することができ、次回の機械運転時にも盗難予防用の識別情報と複数の操作情報とをリンクさせて活用することができる。
【0020】
また、請求項4の発明によれば、ユーザが専用の識別情報を情報入力手段によって入力したときに、前記ユーザによる操作情報の変更内容を不揮発性メモリに記憶させる構成としているので、例えば操作情報の変更内容を記憶(登録)するか否かを、専用の識別情報を入力するか否かによって選択することができ、操作情報の変更が一過性の変更の場合には、前記識別情報の再入力を省略することにより、変更前の操作情報を登録しておくことができる。これにより、不揮発性メモリへの情報の書込み回数を減らすことが可能であり、不揮発性メモリの耐久性、寿命を向上することができる。
【0021】
さらに、請求項5の発明によれば、ユーザによる操作情報の変更内容を電源が遮断されるときに不揮発性メモリに記憶させる構成としているので、この場合にはユーザ(オペレータ)が作業途中に機械の操作情報を、仮に複数回変更したときでも、その度毎に変更内容を不揮発性メモリに書込むことなく、機械の運転操作を続けることができ、機械の運転を終了するために電源を遮断するときにのみ変更内容を不揮発性メモリに登録することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態による作業機械の制御装置を、小型の油圧ショベルに適用した場合を例に挙げて、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
ここで、図1ないし図8は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は作業機械としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、前,後方向に自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載され、下部走行体2と共に油圧ショベル1の車体を構成する上部旋回体3と、後述の作業装置11等とにより構成されている。
【0024】
4は上部旋回体3のフレームを構成する旋回フレームで、該旋回フレーム4の前部側には、後述の作業装置11がスイングポスト12を介して左,右方向に揺動可能に取付けられている。また、旋回フレーム4の後部側にはカウンタウエイト5が設けられ、該カウンタウエイト5は、前部側の作業装置11との間で上部旋回体3の重量バランスをとるものである。
【0025】
6は旋回フレーム4上に設けられた外装カバーで、該外装カバー6は、図1に示すようにカウンタウエイト5の上側に位置して旋回フレーム4の前側へと延びるように配設されている。そして、外装カバー6は、例えば後述のエンジン21、ラジエータ等の熱交換器(図示せず)、油圧源となる油圧ポンプ22等の機器を上側から覆うように形成され、所謂ボンネットを兼用しているものである。
【0026】
また、外装カバー6の上部側には、オペレータが着席するための運転席7が設けられている。そして、該運転席7の前側には、旋回フレーム4の上側に位置して床板8が設けられ、オペレータは該床板8上に乗降することにより運転席7に搭乗するものである。
【0027】
また、床板8上には、運転席7の前側に位置して左,右の走行レバー9等が設けられ、これらの走行レバー9は、油圧ショベル1(車両)を走行させるときにオペレータが前後方向に傾転操作するものである。一方、運転席7の左,右両側には、後述の操作レバー装置30,31がそれぞれ設けられている。さらに、上部旋回体3には、床板8上で運転席7等を上側から覆う建屋としてのキャノピ10が設けられている。
【0028】
11は上部旋回体3の前部側に設けられた作業装置で、該作業装置11は、旋回フレーム4の前部側に左,右方向へと揺動可能に取付けられたスイングポスト12と、基端側が該スイングポスト12に俯仰動可能に取付けられたブーム13と、該ブーム13の先端側に俯仰動可能に取付けられたアーム14と、該アーム14の先端側に回動可能に取付けられた作業具としてのバケット15等とにより構成されている。
【0029】
また、作業装置11のスイングポスト12とブーム13との間には、ブーム13を旋回フレーム4に対して上,下方向に俯仰動させるブームシリンダ16が設けられ、ブーム13とアーム14との間には、アーム14を上,下方向に俯仰動させるアームシリンダ17が設けられている。そして、アーム14とバケット15との間には、バケット15を回動するためのバケットシリンダ18がリンク19,20等を介して設けられている。
【0030】
21は原動機としてのエンジンで、該エンジン21は、図2に示す如く後述の油圧ポンプ22を駆動する原動機を構成し、例えば図1に示す運転席7の下側等に位置して外装カバー6内に収容されている。そして、エンジン21は、後述のエンジン制御装置37を介して起動、運転停止等の制御が行われるものである。
【0031】
22はタンク23と共に油圧源を構成する油圧ポンプで、この油圧ポンプ22は、エンジン21により回転駆動され、例えば図2中に示すブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18および後述の旋回用モータ24等に向けて圧油を供給するものである。
【0032】
24は上部旋回体3を旋回駆動する旋回用モータで、該旋回用モータ24は、例えば固定容量型の油圧モータ等により構成され、それぞれ一対の主管路等を介して油圧ポンプ22,タンク23に接続されている。そして、旋回用モータ24は、旋回フレーム4上に旋回用の減速機(図示せず)等を介して設けられ、下部走行体2上で上部旋回体3を左,右に旋回動作させるものである。
【0033】
25は上部旋回体3の旋回フレーム4上に設けられる多連弁で、該多連弁25は、例えばブーム用の制御弁26、アーム用の制御弁27、バケット用の制御弁28および旋回用の制御弁29等を含んで構成されている。そして、これらの制御弁26〜29は、例えば電磁パイロット式の方向制御弁(比例ソレノイド弁)等を用いて構成され、後述するコントローラ47からの制御信号により中立位置と左,右の切換位置(いずれも図示せず)とのいずれかに選択的に切換制御されるものである。
【0034】
30,31は運転席7の左,右両側に設置された一対の操作レバー装置で、該操作レバー装置30,31は、図2中に示すように操作レバー30A,31Aを有した電気レバー装置により構成されている。そして、操作レバー装置30,31は、運転席7に座ったオペレータが操作レバー30A,31Aをそれぞれ前,後方向または左,右方向に傾転操作すると、これに対応した電気信号を後述のコントローラ47(レバー入力部48)に出力することにより、コントローラ47からの制御信号に従って作業装置11を作動させたり、上部旋回体3を左,右に旋回動作させたりするものである。
【0035】
ここで、操作レバー30A,31Aの操作方向と各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ16、アームシリンダ17、バケットシリンダ18、旋回用モータ24)の作動方向との関係は、後述の操作パターン1,2(図5参照)等のように複数の操作パターンが存在している。そして、オペレータは、後述する操作情報設定器42のパターン切替スイッチ46A,46B,46C,46Dを指先等で選択的に入力操作することにより、操作パターンの設定、変更操作等を適宜に行うものである。
【0036】
32,33はブームシリンダ16内の圧力を検出する圧力センサで、これらの圧力センサ32,33のうち一方の圧力センサ32は、例えばブームシリンダ16のボトム側油室の圧力を検出し、他方の圧力センサ33は、ブームシリンダ16のロッド側油室の圧力を検出するものである。
【0037】
34はアーム14の俯仰動角度を検出する角度センサ、35はブーム13の俯仰動角度を検出する角度センサを示している。そして、これらの角度センサ34,35は、例えば上部旋回体3の旋回フレーム4に対してブーム13、アーム14がどのような角度位置にあるかを検知することにより、後述のMLクレーン機能を用いた吊荷作業時に作業半径、定格荷重等を演算するときのデータを提供するものである。
【0038】
36は上部旋回体3に設けられる回転灯を示し、この回転灯36は、例えばMLクレーン機能を用いた吊荷作業時において、吊荷の重量が定格荷重を越えたとき等に警報を発し、オペレータ等に対して即時に作業を中断すべきことを報知するものである。
【0039】
37はエンジン21を駆動制御するエンジン制御装置を示し、該エンジン制御装置37は、例えばエンジン21の回転数を調節するガバナ、ステッピングモータ(図示せず)等を含んで構成され、所謂CAN通信に用いるハーネス38等を介して後述の盗難予防制御装置40、コントローラ47等と接続されている。そして、エンジン制御装置37は、盗難予防制御装置40から許可信号が出力されたときにエンジン21の起動を許し、許可信号が出力されないときにはエンジン21の起動(稼働)自体を禁止する構成となっている。
【0040】
39はエンジン21の回転数を指令する回転数指令手段としての制御ダイヤルを示し、該制御ダイヤル39は、例えば運転席7の側方位置等に設けられ、オペレータが指先等で回転操作することにより、目標回転数をエンジン制御装置37に出力する。そして、エンジン制御装置37は、エンジン21の実際の回転数が目標回転数に近付くようにエンジン21の回転数制御を行うものである。
【0041】
40は盗難予防手段を構成する盗難予防制御装置を示し、該盗難予防制御装置40は、前記CAN通信用のハーネス38等を介して後述のコントローラ47等に接続され、後述のテンキーパッド41には無線で接続されている。そして、盗難予防制御装置40は、テンキーパッド41から入力された後述の解除IDが予め格納された暗証番号と一致したときに、機械(例えば、エンジン21等)の施錠を解除する許可信号を出力し、一致しないときには機械を施錠したまま、ロック状態に保持するものである。
【0042】
即ち、盗難予防制御装置40には、後述の解除IDに対応して複数の暗証番号(施錠、解除データ)等が更新可能に格納されている。そして、これらの暗証番号のいずれか一つが、後述する解除IDの入力値と一致したときに、盗難予防制御装置40は許可信号を出力するものである。
【0043】
41は情報入力手段の一部(第1の入力手段)を構成するテンキーパッドで、該テンキーパッド41は、図4に示すように掌サイズの入力装置からなり、盗難予防制御装置40に対して無線通信等の手段で接続されている。また、テンキーパッド41には、図4に示す如く複数の数値キー41A,41A,…と、「F」と表記された確定キー41Bと、「C」と表記された取消キー41Cとが設けられている。
【0044】
そして、この場合の取消キー41Cは、複数の数値キー41Aで選択的に入力した数値を取消したり、修正したりするとき等に押圧操作され、確定キー41Bは、入力した数値を確定するとき等に押下されるものである。ここで、テンキーパッド41は、ユーザであるオペレータが夫々個別に割当てられた専用の識別情報(即ち、図5に例示した解除ID)を、例えば「19999」、「28888」、「37777」、「46666」として、数値キー41A等の押下操作により入力するものである。
【0045】
この場合、図5に例示した解除IDのうち左から1桁目は、各ユーザ(オペレータ)毎に個人を識別するためのサブIDであり、2桁から5桁まではランダムな暗証番号で入力設定されている。そして、図5中に例示した4名のオペレータに対しては、それぞれの操作情報が特性設定値の特性A、特性B、特性C、特性Dとして個別に登録されている。なお、これらの特性A〜Dの内容については後述する通りである。
【0046】
42は情報入力手段の一部(第2の入力手段)を構成する操作情報設定器で、該操作情報設定器42は、例えば運転席7の側方位置等にテンキーパッド41から離間して配置され、盗難予防制御装置40および後述のコントローラ47等に前記CAN通信用のハーネス38等を介して接続されている。そして、操作情報設定器42は、図3に示すように略四角形のボックス構造をなし、液晶の表示部42Aと、特性入力部42Bとにより構成されている。
【0047】
そして、操作情報設定器42の特性入力部42Bには、後述する低振動モードのモード選択スイッチ43と、操作フィーリングの選択スイッチ44A,44B,44Cと、MLクレーンの作動スイッチ45と、操作パターンの切替スイッチ46A,46B,46C,46Dとが設けられている。また、特性入力部42Bには、モード選択スイッチ43に近接した位置に該モード選択スイッチ43のON,OFF操作(閉,開成操作)に従って点灯,消灯される表示ランプ43aが設けられている。
【0048】
また、操作フィーリングの選択スイッチ44A,44B,44Cに近接した位置には、それぞれのスイッチ操作に従って選択的に点灯,消灯される表示ランプ44a,44b,44cが設けられている。また、MLクレーンの作動スイッチ45に近接した位置には、該作動スイッチ45の操作に従って点灯,消灯される表示ランプ45aが設けられ、操作パターンの切替スイッチ46A,46B,46C,46Dに近接した位置には、それぞれのスイッチ操作に従って選択的に点灯,消灯される表示ランプ46a,46b,46c,46dが設けられている。
【0049】
47はマイクロコンピュータ等からなる制御手段としてのコントローラで、該コントローラ47は、その入力側が操作レバー装置30,31、圧力センサ32,33、角度センサ34,35、盗難予防制御装置40および操作情報設定器42等に接続され、その出力側はブーム用の制御弁26、アーム用の制御弁27、バケット用の制御弁28、旋回用の制御弁29、回転灯36、盗難予防制御装置40および操作情報設定器42等に接続されている。
【0050】
ここで、コントローラ47は、図2に示す如く操作レバー装置30,31から操作レバー30A,31Aの操作信号等が入力されるレバー入力部48と、前記制御弁26〜29に対してそれぞれ独立した制御信号(電気信号)を出力する出力部49と、レバー入力部48からの操作信号等に従って出力部49から出力すべき制御信号の演算、制御を行う制御部50と、ROM,RAM等からなる記憶部51とを含んで構成されている。
【0051】
そして、この場合の記憶部51は、データ、情報等を更新可能に一時的に記憶する所謂RAMからなる揮発性メモリ51Aと、例えばイーイーピーロム(EEPROM)と呼ばれ、データ、情報等を更新可能に記憶すると共に電源の遮断後にも記憶内容を保持可能な不揮発性メモリ51Bとを含んで構成されている。
【0052】
また、コントローラ47は、図2中に「電源SW入力」、「自己保持出力」、「主電源」として表示された電源部52を備え、この電源部52は、電源としてのバッテリ53に電源スイッチ54を介して接続されると共に、これと並列に遅延リレー55を介してバッテリ53に接続されている。このため、電源部52は、電源スイッチ54の閉成(ON)操作に伴ってコントローラ47への給電が行われた後に、仮に電源スイッチ54を開成(OFF)しても遅延リレー55により所定の遅延時間だけ給電が継続され、その遅延時間が経過した後に給電が停止されるものである。
【0053】
また、コントローラ47の記憶部51には、図8に示す制御処理用のプログラム等が格納されると共に、各ユーザ(オペレータ)毎の解除IDが図5に示すように予め設定して、例えば不揮発性メモリ51Bに記憶されている。そして、解除IDが「ID=19999」として設定されたオペレータに対しては、操作情報の操作パターンに該当する特性設定値の特性Aが、後述の操作パターン1として設定されている。
【0054】
また、操作情報の低振動モードに該当する特性設定値の特性Bは、「ON」となり、例えば作業装置11を後述の低振動モードで作動させる操作情報が選択的に設定されている。そして、操作情報の操作フィーリングに該当する特性設定値の特性Cは、「標準」が選択され、後述の図7に示す特性線59の如くレバー操作に対して作業装置11の動作速度を、中間の標準的な速さで作動させるように操作設定が行われている。また、操作情報のMLクレーン機能に該当する特性設定値の特性Dは、「ON」となり、例えば作業装置11によって吊荷作業等を行うときに後述のMLクレーン機能が作動するように操作情報が選択的に設定されている。
【0055】
一方、解除IDが「ID=28888」として設定された他のオペレータに対しては、特性設定値の特性Aが、後述の操作パターン2として設定され、特性設定値の特性Bは「OFF」となり、後述の低振動モードを解除し無効とする設定が行われている。そして、特性設定値の特性Cは、操作フィーリングが「遅い」設定となるように選択され、後述の図7に示す特性線60の如くレバー操作に対して作業装置11の動作速度を、遅くするように操作設定が行われている。また、特性設定値の特性Dは「OFF」となり、後述のMLクレーン機能を無効とするように操作情報が選択的に設定されている。
【0056】
また、解除IDが「ID=37777」として設定された別のオペレータに対しては、特性設定値の特性Aが、後述の操作パターン2として設定され、特性設定値の特性Bは「OFF」となり、後述の低振動モードを解除し無効とする設定が行われている。そして、特性設定値の特性Cは、操作フィーリングが「遅い」設定となるように選択されている。また、特性設定値の特性Dは「ON」となり、後述のMLクレーン機能が有効となるように操作情報が選択的に設定されている。
【0057】
さらに、解除IDが「ID=46666」として設定された別のオペレータに対しては、特性設定値の特性Aが、後述の操作パターン1として設定され、特性設定値の特性Bは「OFF」となり、後述の低振動モードを解除し無効とする設定が行われている。そして、特性設定値の特性Cは、操作フィーリングが「速い」設定となるように選択され、後述の図7に示す特性線58の如くレバー操作に対して作業装置11の動作速度を、速くするように操作設定が行われている。また、特性設定値の特性Dは「ON」となり、後述のMLクレーン機能を無効とするように操作情報が選択的に設定されている。
【0058】
本実施の形態による油圧ショベル1の制御装置は、上述の如き構成を有するもので、次にその作動について説明する。
【0059】
まず、上部旋回体3の運転席7に搭乗した各オペレータは、図2、図4に示すテンキーパッド41を操作して各人に割当てられた解除ID(識別情報)を、例えば図5に示すように入力する。また、操作情報である特性設定値の特性A〜Dを、最初に入力するときには、図3に例示した操作情報設定器42の特性入力部42Bを指先等で選択的に操作し、下記のようにそれぞれの操作情報を、コントローラ47の記憶部51(例えば、不揮発性メモリ51B)に各オペレータ(ユーザ)が個別に選択した特定の特性設定値として記憶させる。
【0060】
(1).低振動モード
低振動モードとは、作業装置11の機械的な衝突音や振動を低減するための制御モードである。そして、作業装置11の作動等を低振動モードに設定するときには、操作情報設定器42の特性入力部42Bのうち低振動モードのモード選択スイッチ43をオペレータが押圧操作すればよい。そして、低振動モードの設定動作中は、図3に示す表示ランプ43aが点灯し続ける。
【0061】
これにより、コントローラ47は、操作レバー30A,31Aからの操作信号(入力信号)を時間的に遅延させ、ブームシリンダ16、アームシリンダ17およびバケットシリンダ18等の動作がレバー操作に対して緩慢になるように、ブーム用,アーム用およびバケット用の制御弁26〜28を制御する。この結果、例えばブーム13、アーム14およびバケット15の動作ショックを抑えることができ、バケット15の動作時等に発生する機械的な衝突音や振動を低減することができる。
【0062】
即ち、図6中に点線で示す特性線56のように、例えば操作レバー30A(または31A)をオペレータが時間T1 で急操作し、時間T2 でレバー操作を急に停止させた場合にも、低振動モードの設定時には、コントローラ47がレバー操作を、図6中に実線で示す特性線57の如く時間ΔT(ΔT=T3 −T2 )分だけ遅延させるものである。
【0063】
このため、低振動モードの設定時には、ブームシリンダ16、アームシリンダ17またはバケットシリンダ18の動作速度が、図6中の特性線57のようにレバー操作に対して緩慢になるように制御され、時間T1 〜T3 にわたって比較的ゆっくりと動作することにより、機械的な衝突音や振動を低減することができる。なお、低振動モードの非設定時には、図6中に点線で示す特性線56のように、レバー操作に対してシリンダの動作速度が制御されるものである。
【0064】
(2).操作フィーリングの特性
操作フィーリングの特性とは、操作レバー30A(または31A)の操作量、即ち傾転操作の角度に対するシリンダ(ブームシリンダ16、アームシリンダ17またはバケットシリンダ18)の動作速度の特性を可変に設定するものである。即ち、オペレータが特性入力部42Bの選択スイッチ44A,44B,44Cのうち、例えば選択スイッチ44Aを選択して閉成すると、レバー操作量に対してシリンダの動作速度は、図7中に示す特性線58のように速い特性に設定される。そして、このときには図3中の表示ランプ44aが点灯される。
【0065】
また、選択スイッチ44Bを選択して閉成操作したときには、レバー操作量に対してシリンダの動作速度は、図7中に示す特性線59のように中間の標準的な特性に設定される。そして、このときには図3中の表示ランプ44bが点灯される。一方、選択スイッチ44Cを選択して閉成操作したときには、レバー操作量に対してシリンダの動作速度は、図7中に示す特性線60のように遅い特性に設定される。そして、このときには図3中の表示ランプ44cが点灯されるものである。
【0066】
(3).MLクレーンの設定
MLクレーンとは、所謂モーメントリミッタ(moment limiter)を作動させながら吊荷作業を行う動作特性を表したものである。例えばアーム14の先端側で吊荷用フック(図示せず)等を用いて重量物を吊上げる作業を行う場合に、オペレータがMLクレーンの作動スイッチ45を閉成操作すると、該作動スイッチ45の近傍の表示ランプ45aが点灯し、MLクレーン機能が作動中であることを知らせる。
【0067】
そして、このときには操作情報設定器42の表示部42Aに、前記重量物を吊上げる作業に伴う定格荷重、実荷重、作業半径(例えば、特公平4-41289号公報参照)等が表示され、吊荷の重量が定格荷重を越えるような場合には、過負荷警報装置(図示せず)が作動して回転灯36が警報を発するものである。この場合、コントローラ47の制御部50等は、前記圧力センサ32,33および角度センサ34,35からの検出信号に基づいて定格荷重、実荷重、作業半径等の計測、演算を行うものである。
【0068】
また、MLクレーン機能の作動中は、エンジン21の回転数が通常2000rpmであるところが、例えば1500rpmまで低減され、油圧アクチュエータ(各シリンダ16〜18等)全体のスピードを抑える。これにより、操作レバー30A(または31A)を急操作した場合でも、吊荷に荷振れ等が発生するのを防ぐことができるものである。
【0069】
(4).操作パターンの設定
操作パターンの設定とは、左,右の操作レバー30A,31Aを前,後方向、左,右方向に傾転操作することにより、例えば旋回用,アーム用,ブーム用またはバケット用の制御弁26〜29のいずれを切換制御するかの操作パターンを設定するものである。そして、操作パターンの切替スイッチ46A〜46Dのうち、例えば切替スイッチ46Aを選択したときには、操作パターンが下記の操作パターン1に設定される。
【0070】
また、オペレータが切替スイッチ46Bを選択したときには、下記の操作パターン2が設定され、切替スイッチ46Cを選択したときには、下記の操作パターン3が設定される。また、切替スイッチ46Dを選択したときには、下記の操作パターン4が設定されるものである。そして、切替スイッチ46A〜46Dのいずれかで操作パターンが選択されると、これに伴って表示ランプ46a,46b,46c,46dが選択的に点灯,消灯されるものである。
【0071】
(a)操作パターン1
操作パターン1では、オペレータが左側の操作レバー30Aを前,後方向に傾転操作したときに、アーム用の制御弁27が切換制御され、アームシリンダ17が伸縮することによりアーム14が俯仰動される。そして、左側の操作レバー30Aを左,右方向に傾転操作したときに、旋回用の制御弁29が切換制御され、上部旋回体3の旋回動作が行われる。また、右側の操作レバー31Aを前,後方向に傾転すると、ブーム用の制御弁26が切換制御され、ブームシリンダ16によりブーム13が俯仰動される。そして、右側の操作レバー31Aを左,右方向に傾転すると、バケット用の制御弁28が切換制御され、バケットシリンダ18によりバケット15が回動される。
【0072】
(b)操作パターン2
操作パターン2では、オペレータが左側の操作レバー30Aを前,後方向に傾転操作すると、旋回用の制御弁29が切換制御され、上部旋回体3の旋回動作が行われる。そして、左側の操作レバー30Aを左,右方向に傾転操作すると、アーム用の制御弁27が切換制御され、アームシリンダ17によりアーム14が俯仰動される。また、右側の操作レバー31Aを前,後方向に傾転操作すると、ブーム用の制御弁26が切換制御されてブーム13が俯仰動され、右側の操作レバー31Aを左,右方向に傾転すると、バケット用の制御弁28が切換制御されてバケット15が回動される。
【0073】
(c)操作パターン3
操作パターン3では、オペレータが左側の操作レバー30Aを前,後方向に傾転操作すると、ブーム用の制御弁26が切換制御され、ブームシリンダ16によりブーム13が俯仰動される。そして、左側の操作レバー30Aを左,右方向に傾転すると、バケット用の制御弁28が切換制御され、バケットシリンダ18によりバケット15が回動される。また、右側の操作レバー31Aを前,後方向に傾転操作すると、アーム用の制御弁27が切換制御され、アームシリンダ17によりアーム14が俯仰動される。そして、右側の操作レバー31Aを左,右方向に傾転操作すると、旋回用の制御弁29が切換制御され、上部旋回体3の旋回動作が行われる。
【0074】
(d)操作パターン4
操作パターン4の場合には、右側の操作レバー31Aを前,後方向に傾転操作したときに、前記操作パターン3とはアーム14を上,下で逆向きに俯仰動させるものであり、これ以外の操作パターンは、前記操作パターン3と同一に設定されている。
【0075】
次に、運転席7に搭乗したオペレータが盗難予防制御装置40による施錠の解除と複数の操作情報(特性設定値)に基づいた運転操作を行う場合のコントローラ47による制御処理について、図8を参照して説明する。
【0076】
まず、処理動作がスタートすると、ステップ1では、電源スイッチ54が投入されON(閉成)操作されているか否かを判定する。そして、ステップ1で「YES」と判定したときには、ステップ2に移ってオペレータ(ユーザ)がテンキーパッド41を用いて入力した解除IDを読込み、例えば記憶部51の揮発性メモリ51Aに一時的に記憶させる。
【0077】
そして、次なるステップ3では、テンキーパッド41から入力されたオペレータの解除IDが、コントローラ47の記憶部51(不揮発性メモリ51B)に予め格納された解除IDの暗証番号と一致しているか否かを判定する。そして、ステップ3で「NO」と判定したときには、例えば図5中に示す解除IDのいずれにも一致しない場合であるから、ステップ2に戻って機械(盗難予防制御装置40)を施錠したままの状態に保持する。
【0078】
一方、ステップ3で「YES」と判定したときには、オペレータの解除IDが図5中に例示する解除IDのいずれかと一致しているので、ステップ4に移って盗難予防制御装置40に機械(例えば、エンジン21等)の施錠を解除する許可信号を出力する。そして、エンジン制御装置37は、盗難予防制御装置40から許可信号が出力されたときにエンジン21の起動を許し、これによりエンジン21の稼働が開始される。なお、以下の説明では、オペレータの解除IDが図5中の「ID=19999」である場合を例に挙げるものとする。
【0079】
次に、ステップ5では、ユーザ(オペレータ)が予め設定した操作情報の特性設定値(特性A〜D)を不揮発性メモリ51Bから読出し、この操作情報を揮発性メモリ51Aに更新可能に記憶させる。そして、ステップ6では、このときのユーザが個別に選択した特定の操作情報(例えば、図5中の特性A〜D)に従って作業装置11等が作動されるように、ユーザによる運転操作を許可する。
【0080】
また、次なるステップ7では、この段階でユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bを操作しているか否かを判定するために、特性入力部42Bからの操作信号を読込み、ステップ8で操作情報の特性設定値が変更操作されているか否かを判定する。そして、ステップ8で「NO」と判定する間は、前回の特性設定値に従ってエンジン21および各制御弁26〜29等を作動制御する場合であるから、次なるステップ9でリターンする。
【0081】
即ち、解除IDが「ID=19999」であるオペレータの場合には、操作パターンの特性Aが前述した操作パターン1に設定され、低振動モードの特性Bは「ON」に設定され、操作フィーリングの特性Cは「標準」に設定され、MLクレーンの特性Dも「ON」状態に設定されるものである。
【0082】
しかし、このような油圧ショベル1の運転途中にも、ユーザは操作情報設定器42の特性入力部42Bを指先等で操作し、操作情報の特性設定値を変更することがある。そして、このような場合には、ステップ8で「YES」と判定されるから、この場合にはステップ10に移って、特性設定値の変更内容を読出す。
【0083】
そして、ユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bのうち、例えば操作フィーリングの選択スイッチ44Aを押圧操作した場合には、操作フィーリングの特性Cを、これまでの「標準」設定から「速い」設定に切換えて変更するように、ステップ11で揮発性メモリ51Aの特性設定値が更新される。このため、作業装置11の作動は、レバー操作に対して図7中の特性線58に示す如く動作速度を速く特性に変更されるものである。
【0084】
次に、ステップ12では、このユーザに専用の識別情報である解除IDが、例えば「19999」としてテンキーパッド41により再入力されたか否かを判定する。そして、ステップ12で「YES」と判定したときには、次なるステップ13に移って前記特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに書込んで記憶させ、次回の運転時にも変更内容が更新された特性設定値(変更後の特性A〜D)に従って運転操作を再開できるように登録する。
【0085】
一方、ステップ12で「NO」と判定するときには、ユーザが解除IDの再入力を行わなかった場合であり、この場合には前記特性設定値の変更内容を揮発性メモリ51Aに記憶させるだけにとどめ、不揮発性メモリ51Bへの書込みを禁止する。これにより、例えば次回の運転時には、変更内容が更新される前の特性設定値(図5の特性A〜D)に従って運転操作を再開されるものである。
【0086】
かくして、本実施の形態によれば、テンキーパッド41と操作情報設定器42とを用いて入力された情報に従って機械の作動を制御するコントローラ47は、テンキーパッド41によりユーザ毎に個別に割当てられた解除ID(専用の識別情報)と、各ユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bにより個別に選択して入力した特定の操作情報とを互いに関連させて記憶部51に記憶し、例えばテンキーパッド41から予め登録されたユーザの識別情報が入力されると、これに従って盗難予防制御装置40の施錠を解除すると共に、該当するユーザによる個別の操作情報に従って機械の作動を制御する構成としている。
【0087】
これにより、油圧ショベル1の運転席7に搭乗したユーザ(オペレータ)は、テンキーパッド41によりユーザ毎の解除IDを入力するだけで、それぞれのユーザが好みに応じて設定する複数の操作情報(例えば、図5中に示す特性設定値の特性A〜D等)も自動的に設定しておくことができ、これらの操作情報を盗難予防用の解除IDとリンクさせて活用することができる。
【0088】
このため、オペレータは油圧ショベル1の運転操作前に、複数の操作情報(図5中の特性A〜D)を逐一入力するという煩雑な設定作業を不要にすることができ、オペレータの負担等を大幅に軽減することができる。そして、このように予め特定された各操作情報に従って作業装置11等の作動を制御することができ、誤った操作情報が入力される等の不具合をなくし、誤作動を誘発させる等の問題も解消することができる。
【0089】
また、図5に示す解除IDと特性設定値の特性A〜Dを入力するとき等には、例えばオペレータは一方の手でテンキーパッド41を操作してユーザ毎に個別に割当てられた解除IDを、専用の識別情報(数値情報)として入力することができる。そして、他方の手では操作情報設定器42の特性入力部42Bを操作してユーザ毎に特定すべき複数の操作情報を選択的に入力でき、操作情報の変更作業等を容易に行うことができる。
【0090】
また、操作情報設定器42の特性入力部42Bを操作してユーザが特性設定値の特性A〜D等を変更したときには、ユーザが専用の解除IDを再入力したときにのみ変更内容を不揮発性メモリ51Bに記憶させ、これ以外のときには不揮発性メモリ51Bへの書込みを禁止しているので、例えば特性設定値の変更内容を記憶(登録)するか否かを、解除IDを再入力するか否かによって選択することができる。
【0091】
そして、特性設定値(操作情報)の変更が一過性の変更の場合には、解除IDの再入力を行わないようにすれば、変更前の操作情報を不揮発性メモリ51Bに登録しておくことができる。これにより、不揮発性メモリ51Bへの情報の書込み回数を減らすことが可能であり、不揮発性メモリ51Bの耐久性、寿命を向上することができる。
【0092】
次に、図9は本発明による第2の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0093】
然るに、本実施の形態の特徴は、操作情報設定器42の特性入力部42Bを操作してユーザが特性設定値の特性A〜D等を変更したときに、この特性設定値の変更内容を電源スイッチ54が遮断されるときに、遅延リレー55を作動させることにより不揮発性メモリ51Bに記憶させる構成としたことにある。
【0094】
即ち、図9に示す制御処理では、ステップ21〜ステップ28にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ1〜8(図8参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ28で「YES」と判定したときには、例えば油圧ショベル1の運転前、または運転途中等にユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bを指先等で操作し、操作情報の特性設定値を変更した場合である。
【0095】
そこで、ステップ28で「YES」と判定した場合には、次なるステップ29に移って、特性設定値の変更内容を読出す。即ち、ユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bのうち、例えば操作フィーリングの選択スイッチ44Aを押圧操作した場合には、操作フィーリングの特性Cを、これまでの「標準」設定から「速い」設定に切換えて変更するように、ステップ30で揮発性メモリ51Aの特性設定値が更新される。このため、作業装置11の作動は、レバー操作に対して図7中の特性線58に示す如く動作速度を速くする特性に変更される。
【0096】
次に、ステップ31では、図2に示す電源スイッチ54がOFF操作(遮断)されたか否かを判定し、「NO」と判定する間はステップ33に移ってリターンし、例えばステップ21以降の処理を繰返すようにする。また、ステップ28で「NO」と判定したときには、操作情報の特性設定値が変更されていないので、前記ステップ31に移って電源スイッチ54がOFF操作されているか否かを判定し、「NO」と判定する間はステップ33に移ってリターンする。
【0097】
一方、ステップ31で「YES」と判定したときには、例えば油圧ショベル1の運転を停止するために電源スイッチ54がOFF操作された場合である。そこで、この場合には次なるステップ32に移り、前記特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに書込んで記憶させる。この場合、コントローラ47の電源部52は、図2に例示したようにバッテリ53に電源スイッチ54を介して接続されると共に、これと並列に遅延リレー55を介してバッテリ53に接続されている。
【0098】
これにより、電源部52は、電源スイッチ54をOFF(開成)しても、遅延リレー55により所定の遅延時間だけ給電が継続される。このため、ステップ32では、所定の遅延時間を利用して前記特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに書込んで記憶させるものである。そして、その後はステップ33に移ってリターンする。
【0099】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、複数の操作情報を盗難予防用の解除IDとリンクさせて活用することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。しかも、本実施の形態では、例えば油圧ショベル1の運転を停止するために電源スイッチ54をOFF(開成)操作したときに、遅延リレー55による遅延時間を利用して特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに書込んで記憶させる構成としているので、下記のような作用効果を得ることができる。
【0100】
即ち、ユーザ(オペレータ)が油圧ショベル1の作業途中に操作情報(特性設定値)を仮に複数回変更したときでも、その度毎に変更内容を不揮発性メモリ51Bに書込むことなく、油圧ショベル1の運転操作を続けることができ、運転を終了するために電源スイッチ54を遮断するときにのみ、特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに登録することができる。
【0101】
このため、不揮発性メモリ51Bへの情報の書込み回数を確実に減らすことができ、不揮発性メモリ51Bの耐久性、寿命を向上することができる。しかも、次回の運転時には、変更内容が更新された特性設定値(変更後の特性A〜D)に従って運転操作を再開することができるので、オペレータが設定変更を再び行う必要がなく、オペレータの負担を軽減することができる。
【0102】
次に、図10は本発明による第3の実施の形態を示し、本実施の形態では、前記第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0103】
然るに、本実施の形態の特徴は、操作情報設定器42の特性入力部42Bを操作してユーザが特性設定値の特性A〜D等を変更したときに、この特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに記憶させる構成としたことにある。
【0104】
即ち、図10に示す制御処理では、ステップ41〜ステップ49にわたる処理を、第1の実施の形態で述べたステップ1〜9(図8参照)の処理と同様に行う。そして、ステップ48で「YES」と判定したときには、例えば油圧ショベル1の運転前、または運転途中等にユーザが操作情報設定器42の特性入力部42Bを指先等で操作し、操作情報の特性設定値を変更した場合である。
【0105】
そこで、ステップ48で「YES」と判定した場合には、次なるステップ50に移って特性設定値の変更内容を読出す。そして、次なるステップ51では、このときの変更内容に従って揮発性メモリ51Aの特性設定値を更新する。次に、ステップ52では、前記特性設定値の変更内容を不揮発性メモリ51Bに書込んで記憶させる。そして、その後はステップ49に移ってリターンし、例えばステップ41以降の処理を繰返すようにする。
【0106】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、複数の操作情報を盗難予防用の解除IDとリンクさせて活用することができ、前記第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。そして、本実施の形態では、操作情報設定器42の特性入力部42Bを操作し、操作情報の特性設定値を変更した場合には、これを不揮発性メモリ51Bに書込んで記憶させることができる。
【0107】
なお、前記各実施の形態では、図2に示すブーム用の制御弁26、アーム用の制御弁27、バケット用の制御弁28および旋回用の制御弁29をコントローラ47(出力部49)からの電気的な制御信号により制御する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図11に示す変形例のように、ブーム用の制御弁26′、アーム用の制御弁27′、バケット用の制御弁28′および旋回用の制御弁29′を油圧パイロット式の方向制御弁により構成してもよい。
【0108】
そして、この場合には、コントローラ47(出力部49)からの電気的な制御信号を電気・油圧変換器71により油圧信号(パイロット圧)に変換し、操作レバー30A,31Aの操作量に対応したストロークで制御弁26′,27′,28′,29′を油圧的に切換制御する構成としてもよい。
【0109】
また、前記各実施の形態では、テンキーパッド41を用いてユーザに専用の識別情報(解除ID)を入力する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば磁気カード、ICカードまたはバーコード等の手段(第1の入力手段)を用いて、各ユーザ(オペレータ)毎に専用の識別情報を入力し、これに伴って各ユーザ毎の特定の操作情報等を読込む構成してもよいものである。
【0110】
また、前記各実施の形態では、図5に示す如く合計4名のユーザを登録した場合を例に挙げて説明した。しかし、しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば5名以上のユーザを登録する構成としてもよく、逆に1〜3名のユーザを登録する構成としてもよいものである。
【0111】
また、前記各実施の形態では、上部旋回体3の前側に左,右方向に揺動可能なスイング式の作業装置11を設けてなる油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばオフセットブーム式の作業装置、または標準タイプの作業装置を備えた形式のものでもよく、キャノピ10に替えて所謂キャブを設ける構成とした油圧ショベルに適用してもよい。
【0112】
さらに、本発明の適用対象は油圧ショベルに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ、ブルドーザまたは荷役機械等のように、種々の作業機械にも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態による制御装置が適用された油圧ショベルを示す全体図である。
【図2】左,右の操作レバー装置、エンジン制御装置、盗難予防制御装置、テンキーパッド、操作情報設定器およびコントローラ等を示す制御回路図である。
【図3】図2中の操作情報設定器を拡大して示す正面図である。
【図4】図2中のテンキーパッドを拡大して示す正面図である。
【図5】ユーザ毎の解除IDと操作情報の特性設定値との関係を示す特性図である。
【図6】油圧ショベルを低振動モードに設定した場合の時間と動作速度との関係を示す特性線図である。
【図7】操作レバーによってシリンダを動作させるときの操作フィーリング特性を示す特性線図である。
【図8】第1の実施の形態によるコントローラの制御処理を示す流れ図である。
【図9】第2の実施の形態によるコントローラの制御処理を示す流れ図である。
【図10】第3の実施の形態によるコントローラの制御処理を示す流れ図である。
【図11】本発明の変形例による複数の制御弁等を示す制御回路図である。
【符号の説明】
【0114】
1 油圧ショベル(作業機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 旋回フレーム
7 運転席
8 床板
11 作業装置
13 ブーム
14 アーム
15 バケット
16 ブームシリンダ
17 アームシリンダ
18 バケットシリンダ
21 エンジン
22 油圧ポンプ
23 タンク
24 旋回用モータ
25 多連弁
26,26′ ブーム用の制御弁
27,27′ アーム用の制御弁
28,28′ バケット用の制御弁
29,29′ 旋回用の制御弁
30,31 操作レバー装置
30A,31A 操作レバー
37 エンジン制御装置
39 制御ダイヤル(回転数指令手段)
40 盗難予防制御装置(盗難予防手段)
41 テンキーパッド(第1の入力手段)
42 操作情報設定器(第2の入力手段)
42A 表示部
42B 特性入力部
43 低振動モードのモード選択スイッチ
44A,44B,44C 操作フィーリングの選択スイッチ
45 MLクレーンの作動スイッチ
46A,46B,46C,46D 操作パターンの切替スイッチ
47 コントローラ(制御手段)
51 記憶部
51A 揮発性メモリ
51B 不揮発性メモリ
53 バッテリ(電源)
54 電源スイッチ
55 遅延リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各ユーザに個別に割当てられた識別情報の入力に従って機械の施錠、解除を行う盗難予防手段と、前記機械を操作する上で必要な複数の情報を選択的に入力するための情報入力手段と、該情報入力手段で入力された情報に従って前記機械の作動を制御する制御手段とを備え、
該制御手段は、各ユーザが前記情報入力手段により個別に選択して入力した特定の操作情報と前記識別情報とを関連させて記憶する構成とし、
かつ前記制御手段は、前記情報入力手段により前記識別情報が入力されたときに前記盗難予防手段の施錠を解除し、前記ユーザによる個別の操作情報に従って前記機械の作動を制御する構成としてなる作業機械の制御装置。
【請求項2】
前記情報入力手段は、各ユーザ毎に個別に割当てられた前記識別情報を入力する第1の入力手段と、前記操作情報を選択的に入力して設定する第2の入力手段とを含んで構成してなる請求項1に記載の作業機械の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、更新可能に書込まれた情報を電源の遮断後にも記憶する不揮発性メモリを備え、前記情報入力手段により各ユーザが前記操作情報の内容を変更したときには、その変更内容を前記不揮発性メモリに記憶させる構成としてなる請求項1または2に記載の作業機械の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記情報入力手段によりユーザが前記操作情報の内容を変更しても、当該ユーザが前記識別情報を入力するまでは前記不揮発性メモリへの変更内容の書込みを禁止し、前記識別情報の入力に従って前記変更内容を不揮発性メモリに記憶させる構成としてなる請求項3に記載の作業機械の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記情報入力手段によりユーザが前記操作情報の内容を変更しても、前記電源が遮断されるまでは前記不揮発性メモリへの変更内容の書込みを禁止し、前記電源が遮断されるときに前記変更内容を不揮発性メモリに記憶させる構成としてなる請求項3に記載の作業機械の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−68164(P2009−68164A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234106(P2007−234106)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】