説明

作業機械の走行レバー装置

【課題】走行レバーを任意の操作位置に保持することができるとともに、安全性を高めることができる作業機械の走行レバー装置を提供する。
【解決手段】手動操作可能な走行レバー10を備え、この走行レバー10の操作量に応じた走行速度を指示する作業機械の走行レバー装置において、走行レバー10に接続され走行レバー10と共に回動する回動プレート28と、走行レバー10を中立位置に戻す復帰力を回動プレート28に付与するねじりコイルバネ34と、ペダル38の踏動操作に応じて摩擦板27A,27Bを回動プレート28に押し付け、摩擦板27A,27Bと回動プレート28との間にねじりコイルバネ34の復帰力より大きな摩擦力を生じさせ、回動プレート28の回動位置を保持させる保持機構39とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行レバーの操作量に応じた走行速度を指示する作業機械の走行レバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば作業機械の一つである油圧ショベルは、左右の履帯(又は車輪でもよい)を有する下部走行体(走行装置)と、この下部走行体に旋回可能に設けた上部旋回体と、この上部旋回体に俯仰可能に接続され、ブーム、アーム、及び作業具(例えばバケット、ブレーカ、破砕機等)からなる多関節型の作業機とを備えている。また、上部旋回体の運転室には、前後方向に手動操作可能な左右の走行レバーと、前後方向及び左右方向に手動操作可能な十字操作式の左の旋回・アーム用操作レバーと、前後方向及び左右方向に手動操作可能な十字操作式の右のバケット・ブーム用操作レバーとが設けられている。そして、例えば左の旋回・アーム用操作レバーを左右方向に操作することで、上部旋回体を左右に旋回させ、前後方向に操作することで、アーム17を駆動させる。また、例えば右のバケット・ブーム用操作レバーを左右方向に操作することで、バケットを駆動させ、前後方向に操作することで、ブームを駆動させる。また、例えば左右の走行レバーを共に中立位置から前側又は後側に操作することで、左右の履帯を駆動させ、油圧ショベルを前進又は後進させる。
【0003】
ここで従来、例えば油圧ショベルを長距離走行させる場合に運転者の負担を軽減することを目的とし、走行レバーを任意の操作位置に固定可能な走行レバー装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この走行レバー装置は、例えば、走行レバーの下部に設けられ下方に向けられた円弧状面と、車体側に回動可能に設けられ、走行レバーの円弧状面に対応する摩擦面を有する湾曲状金具と、湾曲状金具に連結されたロック用シリンダと、走行レバーのグリップに設けられ、ロック用シリンダの駆動を指示可能な短小レバーとを備えている。そして、例えば短小レバーを切換操作すると、ロック用シリンダが伸長駆動して湾曲状金具が回動し、湾曲状金具の摩擦面が走行レバーの円弧状面を押圧するので、走行レバーを任意の操作位置に(言い換えれば、無段階的角度で)固定可能としている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−292725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下のような課題が存在する。
すなわち、上記従来技術においては、走行レバーのグリップに短小レバーが設けられ、この短小レバーの切換操作により走行レバーを任意の操作位置に固定するようになっている。そのため、例えば走行レバーを任意の操作位置に固定した際に何らかの理由で油圧ショベルの緊急停止が必要な場合、短小レバーを切換操作してから走行レバーを中立位置に戻さなければならず、手間がかかっていた。したがって、緊急停止を素早く行うことができず、安全性の面で改善の余地があった。
【0006】
本発明の目的は、走行レバーを任意の操作位置に保持することができるとともに、安全性を高めることができる作業機械の走行レバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、手動操作可能な走行レバーを備え、前記走行レバーの操作量に応じた走行速度を指示する作業機械の走行レバー装置において、前記走行レバーに接続され前記走行レバーと共に回動する回動部材と、前記走行レバーを中立位置に戻す復帰力を前記回動部材に付与するレバー復帰機構と、ペダルの踏動操作に応じて摩擦部材を前記回動部材に押し付け、前記摩擦部材と前記回動部材との間に前記レバー復帰機構の復帰力より大きな摩擦力を生じさせ、前記回動部材の回動位置を保持させる保持機構とを備える。
【0008】
本発明においては、例えば運転者が走行レバーを任意の操作位置に手動操作すると、その操作位置に応じた速度で作業機械が走行し、その後、運転者がペダルを踏動操作すると、保持機構により摩擦部材が回動部材に押し付けられ、摩擦部材と回動部材との間に大きな摩擦力が生じて、回動部材の回動位置すなわち走行レバーの操作位置が保持される。これにより、運転者は、走行レバーから手を放し、他の操作レバーを手動操作することができる。一方、例えば走行レバーのみを操作している場合に走行レバーから手を放すか、若しくは例えばペダルを操作して走行レバーを任意の操作位置に保持している場合にペダルから足を外せば、レバー復帰機構により走行レバーが自動的に中立位置に戻る。すなわち、例えば何らかの理由で作業機械の緊急停止が必要な場合、容易にかつ素早く走行レバーを中立位置に戻すことができ、作業機械を停止させることができる。したがって、安全性を高めることができる。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記ペダルを中立位置に戻す復帰力を付与するペダル復帰機構を備える。
【0010】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記保持機構によって押し付けられて前記摩擦部材と前記回動部材との間に生じる摩擦力は、運転者が前記走行レバーを操作して前記回動部材の回動保持位置を変更可能な大きさに設定する。
【0011】
(4)上記(1)において、好ましくは、前記保持機構は、前記ペダルに連結された第1連結ロッドと、スプリングを介し前記第1連結ロッドに連結された第2連結ロッドと、前記第2連結ロッドに連結され、前記第2連結ロッドの動作を前記摩擦部材の押し付け力に変換する押し付け部材とを有する。
【0012】
(5)上記(1)において、好ましくは、前記保持機構は、前記ペダルの踏動操作を検出する検出器と、この検出器の検出結果に応じて駆動し、前記摩擦部材の押し付け力を付与するシリンダとを有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行レバーを任意の操作位置に保持することができるとともに、安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1は、本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態が適用された小型ローダの全体構造を表す側面図であり、図2は、上面図である。なお、以降、運転席に着座した運転者の前側(図1及び図2中左側)、後側(図1及び図2中右側)、左側(図1中紙面に向かって手前側、図2中下側)、右側(図1中紙面に向かって奥側、図2中上側)を、単に前側、後側、左側、右側と称する。
【0016】
図1及び図2において、このローダは、基礎構造をなす車体フレーム1と、この車体フレーム1の下部に設けた走行装置2と、車体フレーム1の後方側に設けたパワーユニット3と、このパワーユニット3の上部に設けた運転席(座席)4と、車体フレーム1の前方側に設けた作業機支持フレーム5及び操作部フレーム6と、作業機支持フレーム5に上下方向に回動可能に(俯仰可能に)設けた作業機(ローダ装置)7とを備えている。操作部フレーム6には、前後方向及び左右方向に手動操作可能な十字操作式の作業機操作レバー8と、前後方向に手動操作可能なHST入力レバー9と、前後方向に手動操作可能な走行レバー10と、前後方向に手動操作可能な左旋回レバー11L及び右旋回レバー11Rとが設けられている。
【0017】
作業機8は、作業機支持フレーム5に回動可能に接続されたアーム12と、このアーム12の先端部に回動可能に接続され、開口部が前方側へ向けられたバケット13(作業具)と、アーム12を駆動するアーム用油圧シリンダ14と、ベルクランク15等を介しバケット13を上下方向に駆動するバケット用油圧シリンダ16とを備えている。
【0018】
走行装置2は、車体フレーム1の下部に設けたトラックフレーム17と、このトラックフレーム17の左右両側後方に回転可能に支持された左右の駆動輪(スプロケット)18と、トラックフレーム17の左右両側前方に回転可能に支持された左右の第1従動輪19と、駆動輪18の下方において回転可能に支持された左右の第2従動輪20と、これら駆動輪18、第1従動輪19、第2従動輪20からなる3つの動輪にそれぞれ巻き回した左右の履帯21と、左右両側の第1従動輪19と第2従動輪20の間に回転自在に支持され、履体21の接地部を支持する左右それぞれ例えば3つの転輪22とを備えている。
【0019】
パワーユニット4は、詳細を図示しないが、原動機としてのエンジンと、このエンジンによって駆動する作業機用油圧ポンプと、この作業機用油圧ポンプからアーム用油圧シリンダ14及びバケット用油圧シリンダ16への圧油の流れをそれぞれ制御するコントロールバルブ装置とを備えている。作業機操作レバー8は、例えばロッド(ワイヤでもよい)を介しコントロールバルブ装置に機械的に連結されている。そして、例えば作業機操作レバー8の前後方向の操作量に応じてコントロールバルブ装置が切り換えられ、アーム用油圧シリンダ11が駆動するようになっている。また、例えば作業機操作レバー8の左右方向の操作量に応じてコントロールバルブ装置が切り換えられ、バケット用油圧シリンダ13が駆動するようになっている。
【0020】
また、パワーユニット4は、詳細を図示しないが、エンジンの動力を左右の駆動輪18に伝達するための油圧式無段変速機(HST)及びギア機構を備えている。この油圧式無段変速機は、メインクラッチ機構を介しエンジンの出力軸に接続された可変容量型の走行用油圧ポンプと、この走行用油圧ポンプと閉回路を構成するように接続され、その吐出圧油により駆動する油圧モータとを内蔵している。ギア機構は、前記油圧モータの動力を所定の減速比で減速しつつ2つに分配し、その分配した動力を左右のクラッチ機構を介し左右の駆動輪18にそれぞれ伝達するようになっている。
【0021】
HST入力レバー9は、例えばロッド(ワイヤでもよい)を介し上記メインクラッチ機構に機械的に連結されている。そして、HST入力レバー9を所定の前方位置に操作することで、メインクラッチ機構を接続位置に切り換え、走行用油圧ポンプを駆動させるようになっている。一方、例えばHST入力レバー9を所定の後方位置に操作することで、メインクラッチ機構を遮断位置に切り換え、走行用油圧ポンプを停止させるようになっている。
【0022】
走行レバー10は、例えばプッシュプルケーブル23(後述の図3参照)を介し走行用油圧ポンプの斜板の傾転を可変に調整する公知の斜板調整機構(図示せず)に機械的に連結されている。そして、例えば走行レバー10を中立位置から前方側に操作することで、その操作量に応じて走行用油圧ポンプの斜板の傾転を一方側に切り換え、走行用油圧ポンプからの圧油を油圧モータに供給し一の方向に回転させて駆動輪17を一の方向に回転させ、対応する速度で走行装置2を前進させる。一方、例えば走行レバー10を中立位置から後方側に操作することで、その操作量に応じて走行用油圧ポンプの斜板の傾転を他方側に切り換え、この走行用油圧ポンプからの圧油を油圧モータに供給し他の方向に回転させて駆動輪18を他の方向に回転させ、対応する速度で走行装置2を後進させるようになっている。
【0023】
左旋回レバー11Lは、例えばロッド(ワイヤでもよい)を介し上記左のクラッチ機構に機械的に連結され、右旋回レバー11Rは、例えばロッド(ワイヤでもよい)を介し上記左のクラッチ機構に機械的に連結されている。そして、例えばローダを走行させつつ左(又は右、以降かっこ内対応同じ)に曲がらせたい場合は、左旋回レバー11L(又は右旋回レバー11R)のみを所定の後方位置に操作することにより、左側(又は右側)駆動輪18への駆動力が伝達が遮断される一方で右側(又は左側)駆動輪18への駆動力が伝達されるので、左(又は右)へ曲がるようになっている。
【0024】
図3は、本実施形態による走行レバー装置の全体構造を表す側面図であり、走行レバー10及び後述のペダルが中立位置にある状態を示す。また、図4は、図3中矢印IVから見た図であり、本実施形態による走行レバー装置の要部構造を表す。
【0025】
これら図3及び図4において、操作部フレーム6には支持ブラケット24が設けられ、この支持ブラケット24には水平方向(図4中左右方向)の支持軸25が接合されている。支持軸25は、基端側(図4中右側)の大径部25a及び先端側(図4中左側)の小径部25bで構成されている。支持軸25の小径部25bには、押さえ板26A、摩擦板27A、回動プレート28、摩擦板27B、及び押さえ板26Bがその順序で重ねられ挿通されており、小径部25bの先端には止め輪29が取り付けられている。支持軸25の小径部25bの断面は、例えば円形の上下を切り欠いた形状で形成されており、押さえ板26A,26Bにそれぞれ形状され支持軸25の小径部25bが挿通する挿通孔は、小径部25bに嵌合する形状で形成されている。これにより、押さえ板26A,26Bは、支持軸25の小径部25bに対し軸方向(図4中左右方向)に移動可能とし、周方向に回動しないようになっている。なお、押さえ板26A,26B及び摩擦板27A,27Bは、同じ大きさで円形状に形成されている。
【0026】
一方、回動プレート28及び摩擦板27A,27Bにそれぞれ形成され支持軸25の小径部25bが挿通する挿通孔は、円形状に形成されている。これにより、回動プレート28及び摩擦板27A,27Bは、支持軸25の小径部25bに対し軸方向に移動可能とし、周方向に回動可能としている。また、回動プレート28は、押さえ板26A,26B及び摩擦板27A,27Bより大きくなるように形成されており、走行レバー10が固定され、プッシュプルケーブル23が接続されている。そして、走行レバー10と共に回動プレート28が回動することで、プッシュプルケーブル23を介し上述した走行用油圧ポンプの斜板調整機構が切り換えられるようになっている。
【0027】
また、回動プレート28には、支持ブラケット24側(図4中右側)に延びた可動軸30が接合されている。支持ブラケット24には例えば2つのボルト31等を介し固定プレート32が取り付けられ、この固定プレート32には回動プレート28側(図4中左側)に延びた固定軸33が接合されている。支持ブラケット24の支持軸25の大径部25aの外周には、ねじりコイルバネ34(レバー復帰機構)と、このねじりコイルバネ34と押さえ板26Bとの間に配置された円筒状のカラー(スペーサ)35とが設けられている。回動プレート28の可動軸30及び固定プレート32の固定軸33は、ねじりコイルバネ34の一方側(図4中左側)の腕と他方側(図4中右側)の腕との間に、支持軸25の径方向に並んで配置されている。なお、固定プレート32に形成されボルト31が挿通する取付穴36は長穴であるので、固定プレート32の取り付け位置すなわち固定軸33の位置を調整可能としている。
【0028】
そして、例えば図5に示すように走行レバー10が中立位置にある場合は、ねじりコイルバネ34のねじり角度がゼロとなる。また、例えば図6に示すように走行レバー10が前方側に操作された場合は、回動プレート28の可動軸32が前方側(図6中左廻り)に回動するので、ねじりコイルバネ34の一方側の腕が固定プレート32の固定軸33に係止されつつ他方側の腕が可動軸32によって回動されてねじり角度が大きくなり、走行レバー10を中立位置に戻す復帰力が生じるようになっている。また、例えば走行レバー10が後方側に操作された場合は、回動プレート28の可動軸32が後方側に回動するので、ねじりコイルバネ34の他方側の腕が固定プレート32の固定軸33に係止されつつ一方側の腕が可動軸32によって回動されてねじり角度が大きくなり、走行レバー10を中立位置に戻す復帰力が生じるようになっている。
【0029】
また、操作部フレーム6の下方側には、水平方向(図3中紙面に対し垂直方向)の支持軸37を中心として回動可能なペダル38が設けられている。そして、ペダル38の踏動操作(回動操作)に応じて摩擦板27A,27Bを回動プレート28に押し付け、回動プレート28の回動位置(すなわち走行レバー10の操作位置)を保持させる保持機構39が設けられている。この保持機構39は、ペダル38に連結された第1連結ロッド40と、この第1連結ロッド40にスプリング41を介し連結された第2連結ロッド42と、スプリング41を覆うコイルカバー43と、第2連結ロッド42に連結され、第2連結ロッド42の動作によって摩擦板27A,27Bと回動プレート28との間に押し付け力を付与する押し付け部材44とを有する。押し付け部材44は、支持ブラケット24の水平方向(図4中紙面に対し垂直方向)のリンク支持軸45を中心として回動可能な円筒状の回動部44aと、この回動部44aから固定プレート32側(図4中右側)に延びて第2連結ロッド41に連結されたアーム部44bと、回動部44aから上側(図4中上側)に延びたアーム部44cと、このアーム部44cから押さえ板26Aに向かって延びた円柱状のブロック部44dと、このブロック部44dを貫通する連結軸44eを介しブロック部44dに連結された押し付けリング44fとで構成されている。
【0030】
そして、例えばペダル38を踏動操作する(すなわち下側に回動操作する)と、第1連結ロッド40が下方側に移動してスプリング41の張力が増加する(詳細には、スプリング41には予め例えば40kgf程度の初期張力が持たされてあり、例えば50kgf程度まで増加する)とともに、第2連結ロッド43が下方側に移動して押し付け部材44が回動し、押し付けリング43fが押さえ板26Aに当接して押し付ける。これにより、回動プレート28に対する摩擦板27A,27Bの押し付け力(例えば60〜100kgf程度)が生じ、摩擦板27A,27Bと回動プレート28との間に大きな摩擦力が生じ、回動部プレート28の回動位置が保持される。このとき、摩擦板27A,27Bと回動プレート28との間に生じる摩擦力(以降かっこ内に、走行レバー10の先端部における力に換算した数値例を示す。例えば10kgf程度)は、ねじりコイルバネ34の最大復帰力(例えば1kgf程度)とプッシュプルケーブル23の復帰力(例えば2kgf程度)との総和(例えば3kgf程度)より大きく、かつ運転者が走行レバー10を操作して回動プレート28の回動保持位置を変更可能な程度になっている(すなわち、例えば7gf程度の操作力で走行レバー10の操作保持位置を変更可能としている)。
【0031】
また、ペダル38と操作部フレーム6との間には引きコイルバネ46(ペダル復帰機構)が設けられており、ペダル38を踏動操作した場合にペダル38を中立位置に戻す復帰力が生じるようになっている。
【0032】
以上のように構成された本実施形態においては、例えば運転者が走行レバー10を任意の操作位置に手動操作すると、その操作位置に応じた速度でローダが走行する。そして、運転者がペダル38を踏動操作すると、保持機構39により摩擦板27A,27Bが回動プレート28に押し付けられ、摩擦板27A,27Bと回動プレートとの間に大きな摩擦力が生じて、回動プレート28の回動位置すなわち走行レバー10の操作位置が保持される。これにより、運転者は、走行レバー10から手を放して例えば左右の旋回レバー11L,11Rを手動操作することができ、ローダを走行させつつ左又は右に曲がらせることができる。また、運転者は、走行レバー10から手を放して例えば作業機操作レバー8を手動操作することができ、ローダを走行させつつ作業機7を駆動させることができる。したがって、操作性が向上する。一方、例えば走行レバー10のみを操作している場合に走行レバー10から手を放すか、若しくは例えばペダル38を操作して走行レバー10を任意の操作位置に保持している場合にペダル38から足を外せば、ねじりコイルバネ34の復帰力により走行レバー10が自動的に中立位置に戻る。すなわち、例えば何らかの理由でローダの緊急停止が必要な場合、容易にかつ素早く走行レバー10を中立位置に戻すことができ、ローダを停止させることができる。したがって、安全性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態では、例えば走行速度の変更を意図して走行レバー10の操作保持位置を微調整したい場合、ペダル38から足を外すことなく、走行レバー10を操作して操作保持位置を変更することができる。したがって、他の操作レバーとの複合操作における操作性をより高めることができる。
【0034】
本発明の他の実施形態を図7及び図8により説明する。本実施形態は、油圧シリンダを有する保持機構を設けた実施形態である。
【0035】
図7は、本実施形態による作業機械の走行レバー装置の要部構造を表す図である。また、図8は、本実施形態による作業機械の走行レバー装置を構成するペダル廻りの構造を表す図であり、ペダルが中立位置にある状態を示す。なお、これら図7及び図8において、上記一実施形態と同等の部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0036】
本実施形態では、保持機構47は、ペダル38の踏動操作を検出するリミットスイッチ48と、押さえ板26Aに向かって伸縮駆動する油圧シリンダ49と、この油圧シリンダ49のロッド先端部に連結軸50を介し連結された押し付けリング51と、リミットスイッチ48からの検出信号に応じて駆動し、油圧シリンダ49に圧油を供給する管路を連通・遮断状態に切り換え可能な電磁弁(図示せず)とを有している。
【0037】
そして、例えば運転者がペダル38を踏動操作すると、リミットスイッチ48からの検出信号により電磁弁が切り換えられて油圧シリンダ49が伸長駆動し、押し付けリング50が押さえ板26Aに当接して押し付ける。これにより、回動プレート28に対する摩擦板27A,27Bの押し付け力(例えば60〜100kgf程度)が生じ、摩擦板27A,27Bと回動プレート28との間に大きな摩擦力が生じ、回動部プレート28の回動位置が保持される。このとき、摩擦板27A,27Bと回動プレート28との間に生じる摩擦力(以降かっこ内に、走行レバー10の先端部における力に換算した数値例を示す。例えば10kgf程度)は、ねじりコイルバネ34の最大復帰力(例えば1kgf程度)とプッシュプルケーブル23の復帰力(例えば2kgf程度)との総和(例えば3kgf程度)より大きく、かつ運転者が走行レバー10を操作して回動プレート28の回動保持位置を変更可能な程度になっている(すなわち、例えば7gf程度の操作力で走行レバー10の操作保持位置を変更可能としている)。
【0038】
このように構成された本実施形態においても、上記一実施形態同様、走行レバー10を任意の操作位置に保持することができるとともに、安全性を高めることができる。
【0039】
なお、上記他の実施形態においては、油圧シリンダ48を有する保持機構39Aを設けた場合を例にとって説明したが、油圧シリンダ48に代えて、例えば空圧シリンダ等を設けてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0040】
なお、以上においては、本発明の適用対象として小型ローダを例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば中型や大型のローダに本発明を適用してもよく、また例えば油圧ショベル等に適用してもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態が適用された小型ローダの全体構造を表す側面図である。
【図2】本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態が適用された小型ローダの全体構造を表す上面図である。
【図3】本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態の全体構造を表す側面図であり、走行レバー及びペダルが中立位置にある状態を示す。
【図4】図3中矢印IV方向から見た図であり、本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態の要部構造を表す。
【図5】本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態における回動プレートの可動軸の位置を表す図であり、走行レバーが中立位置にある状態を示す。
【図6】本発明の作業機械の走行レバー装置の一実施形態における回動プレートの可動軸の位置を表す図であり、走行レバーが前方側の操作位置にある状態を示す。
【図7】本発明の作業機械の走行レバー装置の他の実施形態の要部構造を表す図である。
【図8】本発明の作業機械の走行レバー装置の他の実施形態を構成するペダル廻りの構造を表す図であり、ペダルが中立位置にある状態を示す。
【符号の説明】
【0042】
10 走行レバー
27A 摩擦板(摩擦部材)
27B 摩擦板(摩擦部材)
28 回動プレート(回動部材)
34 ねじりコイルバネ(レバー復帰機構)
39 保持機構
40 第1連結ロッド
41 スプリング
42 第2連結ロッド
44 押し付け部材
46 引きコイルバネ(ペダル復帰機構)
47 保持機構
48 リミットスイッチ(検出器)
49 油圧シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手動操作可能な走行レバーを備え、前記走行レバーの操作量に応じた走行速度を指示する作業機械の走行レバー装置において、
前記走行レバーに接続され前記走行レバーと共に回動する回動部材と、
前記走行レバーを中立位置に戻す復帰力を前記回動部材に付与するレバー復帰機構と、
ペダルの踏動操作に応じて摩擦部材を前記回動部材に押し付け、前記摩擦部材と前記回動部材との間に前記レバー復帰機構の復帰力より大きな摩擦力を生じさせ、前記回動部材の回動位置を保持させる保持機構とを備えたことを特徴とする作業機械の走行レバー装置。
【請求項2】
請求項1記載の作業機械の走行レバー装置において、前記ペダルを中立位置に戻す復帰力を付与するペダル復帰機構を備えたことを特徴とする作業機械の走行レバー装置。
【請求項3】
請求項1記載の作業機械の走行レバー装置において、前記保持機構によって押し付けられて前記摩擦部材と前記回動部材との間に生じる摩擦力は、運転者が前記走行レバーを操作して前記回動部材の回動保持位置を変更可能な大きさに設定したことを特徴とする作業機械の走行レバー装置。
【請求項4】
請求項1記載の作業機械の走行レバー装置において、前記保持機構は、前記ペダルに連結された第1連結ロッドと、スプリングを介し前記第1連結ロッドに連結された第2連結ロッドと、前記第2連結ロッドに連結され、前記第2連結ロッドの動作を前記摩擦部材の押し付け力に変換する押し付け部材とを有することを特徴とする作業機械の走行レバー装置。
【請求項5】
請求項1記載の作業機械の走行レバー装置において、前記保持機構は、前記ペダルの踏動操作を検出する検出器と、この検出器の検出結果に応じて駆動し、前記摩擦部材の押し付け力を付与するシリンダとを有することを特徴とする作業機械の走行レバー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−284924(P2008−284924A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129710(P2007−129710)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】